説明

収納庫及び冷蔵庫

【課題】金属製の筐体内全体を無線タグ読み取り可能領域としてカバーできるようにし、無線タグの検出精度を向上することが可能な収納庫及び冷蔵庫に関する。
【解決手段】アンテナの複数のアンテナエレメントから収納庫本体内に電波を放射し、無線タグと無線通信して、無線タグに記憶されている無線タグ情報をリーダー/ライター51で読み取り、収納庫本体内の無線タグから読み取った無線タグ情報を制御手段54で処理する構成を有し、収納庫本体内の電波状態を電波状態変更手段53で変更することにより、収納庫本体内部全体を、無線タグの読み取り可能領域としてカバーする。電波状態変更手段53は、アンテナの複数の給電点が設けられた給電線に結合される複数の導波管を有し、複数の導波管のうち、複数の給電点の何れかに結合された導波管に切り替えて給電点を変えることによりアンテナの指向性を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に貼付された無線タグからアンテナを介して情報を読み取る無線タグ読み取り機能を備えた収納庫及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の収納庫は、無線タグ読み取り用のアンテナを備えており、アンテナから放射された電波により無線タグ側で電力を発生させ、この電力を利用して無線タグ側がメモリ内に記憶されている情報を読み出す。そして、読み出した情報を無線タグ側からアンテナ側に送信することで無線タグの読み取りが行われるようになっている。そして、収納庫の具体例として、冷蔵庫の場合では、各食品それぞれに貼付した無線タグからアンテナにより情報を読み取り、冷蔵庫内の食品などの物品情報を管理するようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−164054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような無線タグ読み取り機能を備えた冷蔵庫では、庫内全体の物品情報を正確に管理することが望まれるが、冷蔵庫の筐体は金属製の閉空間であることから、アンテナから放射される電波の多重反射を引き起こし、マルチパスにより無線タグ読み取り不能領域が形成されてしまうという問題があった。また、冷蔵庫内には、水分を多く含む食品や、缶詰などの金属が収容されるが、水分は電波を吸収し、また、金属は電波を反射することから、それらの物品と無線タグとの位置関係によっては、読み取り不可能な無線タグが出てきてしまうという問題もあった。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、金属製の筐体内全体を無線タグ読み取り可能領域としてカバーできるようにし、無線タグの検出精度を向上することが可能な収納庫及び冷蔵庫に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る収納庫は、無線タグが貼付された物品を収納する収納庫であって、複数のアンテナエレメントを有するアレイアンテナであり、複数のアンテナエレメントから収納庫本体内に電波を放射し、無線タグと無線通信するアンテナと、アンテナから無線タグに記憶されている無線タグ情報を読み取る無線タグリーダと、収納庫本体内の電波状態を変更することにより、収納庫本体内部全体を、無線タグの読み取り可能領域としてカバーする電波状態変更手段と、収納庫本体内の無線タグから読み取った無線タグ情報を処理する制御手段とを備え、電波状態変更手段は、アンテナの複数の給電点が設けられた給電線に結合される複数の導波管を有し、複数の導波管のうち、複数の給電点の何れかに結合された導波管に切り替えて給電点を変えることによりアンテナの指向性を変更する手段であるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収納庫本体内の電波状態を変更することで、収納庫本体内部全体を、無線タグリーダによる無線タグの読み取り可能領域としてカバーすることができ、無線タグの検出精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態の収納庫の一例としての冷蔵庫の正面図である。
【図2】図1の側面縦断面図である。
【図3】本発明の冷蔵庫における電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】冷蔵庫の透過概略斜視図である。
【図5】具体例1−Aの電波状態変更手段を示す図である。
【図6】具体例1−Bにおける電波状態変更手段の概略図である。
【図7】電動ダンパー装置60の構成を示す斜視図である。
【図8】具体例1−Cにおける電波状態変更手段の概略図である。
【図9】具体例1−Dにおける電波状態変更手段の概略図である。
【図10】具体例1−Eにおける電波状態変更手段を構成する平面アンテナの平面図である。
【図11】平面アンテナ90を設置した棚12の斜視図である。
【図12】図11の平面アンテナが接続される冷蔵庫本体側の構成説明図である。
【図13】棚12側の導波管と冷蔵庫本体1側の導波管との接続を説明するための要部断面図である。
【図14】具体例1−Fにおける電波状態変更手段の概略図である。
【図15】図14の平面アンテナ100の平面図である。
【図16】具体例2−Aにおける電波状態変更手段の概略斜視図である。
【図17】具体例2−Bにおける電波状態変更手段を含む冷凍室30部分の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1〜図17を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態では、収納庫の一例として冷蔵庫について説明する。本例の冷蔵庫は、内部に収容された食品などの物品に付けられた無線タグから、無線ID等の無線タグ情報を読み取り、冷蔵庫内の物品の管理を行うものである。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態の収納庫の一例としての冷蔵庫の正面図、図2は、図1の側面断面図である。
この冷蔵庫は、冷蔵庫本体1内に、冷蔵室10、野菜室20、冷凍室30を有している。冷蔵室10は、開閉扉11によって開閉され、内部には、食品等の物品を設置するための複数の棚12が設けられている。野菜室20及び冷凍室30は、引き出し式になっており、それぞれ引き出し扉21、31により開閉される。野菜室20及び冷凍室30の内部には、それぞれ収納かご22,32が設けられており、引き出し扉21,31を手前に引くことにより冷蔵庫本体1に対し前後に摺動するようになっている。
【0011】
また、冷蔵庫本体1の奥側には、冷却器40、冷気を庫内に強制的に循環させる電動ファン41、冷蔵室10へ冷気を送る連通ダクト42、連通ダクト42への冷気の供給量を制御する電動ダンパー装置60が設けられている。
【0012】
以下、冷蔵庫の電気的な構成について説明する。
図3は、本発明の冷蔵庫における電気的な構成を示すブロック図である。
冷蔵庫本体1内には、各種制御回路等が搭載された冷蔵庫基板50が備えられている。冷蔵庫基板50には、物品に付けられた無線タグ200に記憶されている無線タグ情報を読み取るためのリーダー/ライター51と、リーダー/ライター51に接続され、無線タグ検出対象空間である冷蔵庫本体1内に電波を放射するアンテナ52と、冷蔵庫本体1内の電波状態を変化させ、冷蔵庫本体1内部全体を、リーダー/ライター51による読み取り領域としてカバーする電波状態変更手段53と、冷蔵庫本体1内の無線タグ200から読み取った無線タグ情報を処理するとともに、冷蔵庫全体を制御する制御手段54とを備えている。
【0013】
リーダー/ライター51は、マイコン、メモリ、発振器、増幅器、フィルタなどを含むRF部51aを備えている。また、制御手段54は、マイクロプロセッサ(MPU)で構成され、内部にRAM54a及びROM54bを備えており、RAM54a及びROM54bに記憶されているプログラムに従って動作し、冷蔵庫を制御する。なお、図3には、これらを同一基板上に設けた例を示しているが、機能ごとに基板を分けて設置する事も可能であり、例えばリーダー/ライター51及びアンテナ52をそれぞれ別部品として設けることもできる。
【0014】
アンテナ52は、後述の図10に示す平面アンテナ等、適宜選択可能である。なお、アンテナ52から1波長内の範囲では、アンテナ52の検出原理上、読み取り不能であるたため、アンテナ52から食品等の物品まで1波長以上の距離をとれるよう、アンテナ52を配置することが望ましい。具体的には、例えばアンテナ52を冷蔵庫本体1の側壁に埋設する場合、側壁1から1波長以上、離れた位置にアンテナ52を配設すればよい。この場合、冷蔵庫本体1内どの位置に食品等の物品を置いても、アンテナ52から1波長以上離れた位置とすることができる。
【0015】
ここで、冷蔵庫本体1は金属製であり、金属で囲まれた環境では、上述したように、電波の逃げ道がなくマルチパスにより電波が干渉し合って相殺され、読み取り不能な領域が必ず複数発生する。更に、冷蔵庫本体1内には、例えば金属製の缶詰や、水分を含む物品が散在しているため、従来技術で説明したように、無線タグとの位置関係によっては、読み取り不能な無線タグが出てくる。
【0016】
そこで、本発明では、冷蔵庫本体1内の電波状態を電波状態変更手段53により変化させ、電波状態変化前に読み取り不能であった領域を、読み取り可能領域に変えて、冷蔵庫本体1内部全体を、読み取り可能領域となるようにカバーするものである。すなわち、少なくとも電波状態変化前と変更後の1回ずつ、無線タグ読み取り動作をすることで、冷蔵庫本体1内の全ての無線タグの読み取りを可能とするものである。
【0017】
以下、電波状態変更手段53による電波状態変更方法について説明する。電波状態変更方法としては、大きく分けて3つの方法があり、アンテナ52に対策を施すことで、冷蔵庫内に放射される電波の放射方向を変更する方法(方法1)と、冷蔵庫本体1内の物品の位置を変更することで、冷蔵庫内部の電波状態を変更する方法(方法2)と、アンテナ52の設置位置とは別の位置に、高周波を放射する放射部を設け、放射部からの放射のON/OFFにより冷蔵庫内部の電波状態を変更する方法(方法3)とがある。以下、それぞれの方法の具体的な構成例について順に説明する。
【0018】
(方法1)
(具体例1−A)
図4は、冷蔵庫の透過概略斜視図で、具体例1−Aの電波状態変更手段の冷蔵庫本体内の設置位置の説明図である。図5(a)は、具体例1−Aの電波状態変更手段の平面図、図5(b)は、具体例1−Aの電波状態変更手段の断面図である。これらの図4及び図5、並びに後述の各図において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
図4に示すように、この具体例1−Aでは、アンテナ52が冷蔵室10の上部空間に設けられている。そして、開閉扉11の回転軸11aには、回転軸11aと連動して回転する連動軸11bが同軸上に固定されている。さらに、連動軸11bとアンテナ52の回転軸52aとの間に伝達ベルト55が設けられており、開閉扉11の回転が、連動軸11b及び伝達ベルト55を介してアンテナ52の回転軸52aに伝達され、アンテナ52が回転するようになっている。なお、ここでは、開閉扉11の回転によってアンテナ52が回転するようにしたが、アンテナ52の回転軸52aにモータ(図示せず)のモータ軸を接続し、モータにより回転駆動されるようにしても良い。
【0019】
このように、具体例1−Aでは、アンテナ52を回転させることで、冷蔵庫本体1内に放射される電波の放射方向を変更する。また、アンテナ52の回転を、手動の可動部(ここでは、開閉扉11)と連動させることにより、アンテナ52を回転する電力不要で、冷蔵庫内の電波状態を変化させ、読み取り不能であった領域を読み可能領域とすることが可能になる。なお、従来の冷蔵庫で、開閉扉や引き出し扉の正面に設けた開閉ボタンを押下すると、所定の位置まで扉が開閉するタイプのものがあるが、それらの可動部と連動させるようにしてもよい。
【0020】
(具体例1−B)
具体例1−Bは、アンテナ52を回転させる別の例を示すものである。
図6は、具体例1−Bにおける電波状態変更手段の概略図で、冷蔵庫本体1内の電動ダンパー装置60部分で切断した横断面図である。図7は、電動ダンパー装置60の構成を示す斜視図である。
電動ダンパー装置60は、バッフル61と、バッフル61を開閉駆動するステッピングモータ62とを有しており、バッフル61の開閉によって冷蔵室10内への冷気供給量を調整するものである。電動ダンパー装置60は、従来の冷蔵庫に一般的に設けられているものであり、具体例1−Bにおける電波状態変更手段53は、電動ダンパー装置60にアンテナ52を設けるようにしたものである。このように既存の可動部に設けることにより、アンテナ52を駆動するための機構を新たに設けることなく、冷蔵庫本体1内の電波状態を変化させ、読み取り不能であった領域を読み取り可能領域とすることが可能になる。なお、図6において符号13は、冷蔵庫本体1内に設けられた断熱材である。
【0021】
なお、上記具体例1−A及び1−Bは、冷蔵庫に既存の可動部に連動してアンテナ52を移動させるものであったが、このような可動部に、電波吸収体(図示せず)を設けるようにしても良い。すなわち、冷蔵庫は金属筐体で電波の影響を受けやすい物体であるため、内部に電波吸収体を設ける事により、不要なマルチパスを減少させる事ができ、また、電波吸収体の位置を変更することで、電波吸収位置も変化することから、冷蔵庫本体1内の電波状態を意図的に変化させることが可能となる。
なお、アンテナ52を半波長以上移動させられる仕様とすることで、読み取り不能領域を、読み取り可能領域に変更することが可能である。
【0022】
(具体例1−C)
具体例1−Cは、アンテナ52長を変更するものであり、具体的には、アンテナ52を一対の放射型漏洩同軸ケーブル70で構成し、それぞれの一端を連結する位置を変更することにより、アンテナ52長を変更してアンテナ52から放射される電波の放射方向を変更するものである。
図8は、具体例1−Cにおける電波状態変更手段の概略図である。
図8に示すように、例えば変形自由度の高い一対の放射型漏洩同軸ケーブルを平行に配線し、それぞれの一端をリーダー/ライターに接続し、他端を複数(ここでは、3つ)の終端部71a〜71cの何れかに接続する。各終端部71a〜71cはそれぞれ放射型漏洩同軸ケーブル70の長さを変更するためのもので、71c、71a、71bの順にケーブル長が長くなる。具体例1−Cでは、放射型漏洩同軸ケーブル70の他端の接続先を各終端部71a〜71cの何れかに切り替えることにより、放射型漏洩同軸ケーブルの長さ(有効長さ)を変化させ、電波状態を変化させることができる。他端の接続先の切り替えは、駆動装置(図示せず)で物理的に行っても良いし、スイッチなど電気的に移動させることにより行っても良い。また、リーダー/ライター51は、上述したように、各種電子部品を搭載した冷蔵庫基板50上に配置されるが、放射型漏洩同軸ケーブル70及び終端部71a〜71cの配置位置は任意であり、冷蔵庫本体1の筐体に設けても良い。また、開閉扉11などの可動部と連動させ長さを変化させるようにしてもよい。これにより電波状態が変化し、マルチパスなどにより読み取れなかった物品貼付の無線タグ200が読み取り可能となる。
【0023】
(具体例1−D)
具体例1−Dは、具体例1−Cの変形例を示すものである。
図9は、具体例1−Dにおける電波状態変更手段の概略図である。図8と同一部分には同一符号を付している。
図9に示すように、例えば、平行に配線された一対の放射型漏洩同軸ケーブル70の自由端側を金属製のスライダー81で連結するようにし、そのスライダー81をスライダー機構80で物理的に動かして放射型漏洩同軸ケーブル70の有効長さを変更するようにしたものである。スライダー機構80の具体的な構成については任意に構成可能である。
【0024】
(具体例1−E)
図10は、具体例1−Eにおける電波状態変更手段を構成する平面アンテナの平面図である。
図10に示すように、まず、アンテナ52を、平面アンテナで構成する。本例の平面アンテナ90は、複数のアンテナエレメント91と給電線92とを有するアレイアンテナで、アンテナ中央ライン93に対して面対称となるように複数のアンテナエレメント91及び給電線92が配置されている。また、ここでは、2つの導波管93a,93bを2つ設け、スイッチ95でどちらか一方に切り替えて使用する。そして、それぞれの導波管93a,93bに結合される給電線上の給電点94a,94bが、アンテナ中央ライン93を中心して対称位置に設けられている。このように構成された平面アンテナ90においては、導波管93a側に通電し給電点94aから給電される場合と、導波管93b側に通電し給電点94bから給電される場合とでは、給電点から図示右側のアンテナエレメント群と、図示左側のアンテナエレメント群までの距離が異なるため、位相ズレが生じ、電波の指向性を変えることができる。すなわち、導波管を切り替えて、切り替えられた導波管から電波を受ける複数のアンテナエレメント91までの長さを変え、複数のアンテナエレメント91から放射される電波の位相を調整することで、合成波の進行方向を制御する。すなわち、電波に指向性を持たせることができる。これにより1つのアンテナ52で異なる方向の無線タグ200を読み取ることが可能になる。
なお、上述したように2つの導波管93a,93bをスイッチ95で切り替え選択するようにした場合、導波管それぞれに発振部を設けなくても、一つの発振部を共通利用できる。
【0025】
ここで、平面アンテナ90の具体的な冷蔵庫への設置構造について説明する。
図11は、平面アンテナ90を設置した棚12の斜視図である。図12は、図11の平面アンテナが接続される冷蔵庫本体側の構成説明図で、冷蔵庫の概略斜視図を示している。図13は、棚12側の導波管と冷蔵庫本体1側の導波管との接続を説明するための要部断面図である。
平面アンテナ90を、ここでは例えば棚12の透明樹脂内に埋設する。そして、導波管93a,93bも同様に棚12に埋設し、導波管93a,93bの一端が棚12の側面に開口するように構成する。そして、冷蔵庫本体1にも導波管96a,96bを埋設しておき、棚12が冷蔵室10内に正しくセットされた状態で、導波管93a,93bの一端が、冷蔵庫本体側の導波管96a,96bに結合するように構成する。このような構造とすることにより、アンテナ52に通電するためのケーブルが不要で、構造が単純となり、冷蔵庫本体の軽量化に寄与できる。
【0026】
なお、冷蔵庫本体1側の導波管を一つとし、棚12を前後に自動で動かして、棚12に設けた二つの導波管93a,93bのうちの一方を、冷蔵庫本体1側の導波管と結合するように構成してもよい。また、平面アンテナ90の設置数は任意であり、例えば、棚12毎に設けてもよい。
【0027】
(具体例1−F)
図14は、具体例1−Fにおける電波状態変更手段の概略図、図15は、図14の平面アンテナ100の平面図である。
図14及び図15に示すように、まず、アンテナ52を、平面アンテナ100で構成する。平面アンテナ100は、複数のアンテナエレメント101と給電線102とを有している。そして、開口部110aを有する誘電体110を、平面アンテナ100に対向して配置し、誘電体110を移動機構(図示せず)により図14の左右方向に移動させる。誘電体110で覆われた部分の平面アンテナ100からの電気力線が減少するため、電波に指向性が出る。これにより余計な電波の放射もなくマルチパスが最小に抑えられる他、誘電体を移動することにより電波状態を変化させることができる。なお、図中の符号103は平面アンテナ100を冷蔵庫本体1に固定するためのアンテナ固定穴である。
【0028】
(方法2)
(具体例2−A)
具体例2−Aは、棚12を自動で上下方向に移動させるものである。
図16は、具体例2−Aにおける電波状態変更手段の概略斜視図で、(a)は電波状態変更手段を構成する移動棚の移動機構部分の斜視図、(b)は(a)の矢印部の拡大図である。
具体例2−Aは、棚12を自動で上下方向に移動する移動棚とし、移動棚を自動で動かすことで、冷蔵庫本体1内の電波状態を変更するものである。移動棚の具体的な構成については、例えば特開2003−262462号公報に記載のものを採用できる。ここで図16を用いて簡単に説明すると、モータ121が回転すると、モータ軸と連結されたスクリュー形軸122aが回転する。スクリュー形軸122aの回転は、タイミングベルト123によって他の3本のスクリュー形軸122b,122c,122dにも伝えられる。これにより、スクリュー形軸に連結された棚載置用フレーム124が上下動し、棚載置用フレームに着脱自在に装着される移動棚が上下動する。このように移動棚を動かして冷蔵室10内の物品の位置を変化させることで、冷蔵室10内の電波状態を変更することができる。
【0029】
(具体例2−B)
具体例2−Bは、物品を収容した収納かご32を自動で動かすものである。
図17は、具体例2−Bにおける電波状態変更手段を含む冷凍室30部分の概略図である。
図17に示すように、この具体例2−Bでは、冷凍室30の引き出し扉31を閉めた状態で、収納かご32が冷凍室30内でスライド機構130により前後方向にスライドするものである。スライド機構130は、ここでは、冷蔵庫本体1側に固定された回転ギア131と、回転ギア131を駆動するモータ(図示せず)と、収納かご32の上部に設けられて回転ギア131と噛み合う直線ギア132とから構成され、モータの回転により回転ギア131が回転すると、収納かご32が冷凍室30内で前後にスライドするようになっている。このように収納かご32を動かして冷凍室30内の物品の散在状態を変化させることで、冷凍室30内の電波状態を変更することができる。
【0030】
上記の具体例2−A及び2−Bによれば、物品の位置を変化させることで、すなわち電波を吸収又は反射する物品の位置を変えることで、冷蔵庫本体1内の電波状態を変更することができる。また、物品を動かすことによる利点としては、他に、物品自体を読み取り不能領域から読み取り可能領域に移動させることができる点がある。この移動により、物品に貼付された無線タグ200が電波を受信できる位置に移動するため、無線タグ200のICが給電可能となり、IC内部の情報をリーダー/ライター51に返信できる状態とすることができる。
【0031】
(方法3)
方法3は上述したように、アンテナ52の設置位置とは別の位置に、高周波を放射する放射部を設け、放射部からの放射のON/OFFにより冷蔵庫本体1内の電波状態を変更するものである。具体的な図示は省略するが、高周波発生器を冷蔵庫本体内に設け、高周波発生器から出力される高周波を、冷蔵庫本体1内の金属部分に通電して当該金属部分から放射する。そして、高周波発生器の駆動をON/OFFすることにより、冷蔵庫本体1内の電波状態を変更することができる。なお、冷蔵庫本体1内の金属部分とは、例えば、棚に設けられた金属部分(例えば棚の枠体、棚の支持部など)や、熱交換器などが該当する。また、庫内照明用の庫内設置基板など庫内にある基板から高周波を発生させても良い。
【0032】
以上により、電波状態変更手段53の構成が明らかになったところで、次に、本実施の形態の冷蔵庫における無線タグ読み取り動作について説明する。
無線タグの読み取り動作は、具体的には例えば冷蔵庫内の物品の収容状態に変化があった場合に行う。ここで、開閉扉11及び引き出し扉21、31にはそれぞれ図示しない開閉検出センサが設けられており、開閉検出センサにより各扉の開閉が検出されるようになっている。そして、扉の開放が検出され、冷蔵庫内に物品の出し入れがあった後、扉の閉塞が検出されると、リーダー/ライター51は、無線タグ200の読み取り処理を行う。そして、電波状態変更手段53により庫内の電波状態を変更した後、再度無線タグ200の読み取り処理を行う。この一連の動作を少なくとも1サイクル、好ましくは更に複数回繰り返し、冷蔵庫本体1内の全ての無線タグ情報を読み取る。そして、読み取った無線タグ情報を処理して、冷蔵庫本体1内の物品数や、物品情報の把握を行う。
【0033】
このように、本実施の形態では、電波状態変更手段53により冷蔵庫本体1内の電波状態を変更して再度無線タグ200の読み取りを行うので、電波状態変更前に読み取り不能であった領域を、読み取り可能領域に変更することができる。このため、前回読み取り時に読み取り不可領域に配置されていて読み取りできなかった無線タグを読み取ることが可能となり、冷蔵庫本体1内全体の無線タグ情報を精度良く把握することが可能となる。
【0034】
ところで、物品が出し入れされ、読み取れなくなった無線タグ200があった場合、電波障害で貼付された無線タグ200が読み取れなくなったのか、物品が取り出されて読み取れなくなったのか不明である。そこで、冷蔵庫に別途、カメラを取り付け、そのカメラにより物品の移動方向、移動回数、大きさ等を判断し、読み取った物品の無線タグの情報と整合を取り、正確な出し入れや読み取りエラーを把握するようにしてもよい。具体的には、例えばカメラもしくは複眼カメラにより物体の移動方向距離を把握するようにする。そして、そのカメラで手を認識し、それ以外の移動部分を食品と認識するようにする。カメラは、食品形状などの把握のし易さの観点から、冷蔵庫本体内の上部から下方を撮影するように設置するのが好ましい。そして、カメラにより食品の有無を判断し、物品が出されたのか入れられたのかを判断する。棚12自体をカメラでセンシングし、棚12の食品の有無から判断する方法もある。その場合も大きさ、色などの食品自体の情報とリアルタイムでの移動方向を捉えておけば出し入れの判断が可能となる。その他、センサでは焦電センサを冷蔵庫内入口の手前と奥に並列に設け、手の移動方向を把握するようにしてもよい。同時に無線タグの読み取り数の変化を記録し、物品の出し入れを判断する事も可能である。
【0035】
上述したような本発明の冷蔵庫の機能は、同様の電波状態(マルチパス等)が起こるシステム、具体的には、金庫や工場・倉庫などの金属筐体内部に収容された無線タグを読み取るシステムや、他の家電に応用でき、この場合も冷蔵庫の場合と同様の効果を得られる。また、上記機能を備えた機器がネットワークに繋がっている場合、別の機器と連動させることにより無線タグの認識率を向上することが可能である。例えば冷蔵庫では、冷蔵庫の扉の外側、または連動したキッチンの食品棚、シンク、ゴミ箱などにそれぞれリーダー/ライター51を設け、冷蔵庫の各扉の開閉後のそれぞれのリーダー/ライター51の読み取り結果の変化の有無を冷蔵庫とやり取りし、どの食品がどこに移動した、どのくらい使われたかなどのエビデンスを残すことが可能となり、また、あるリーダー/ライター51で認識できなかったとしても、別の場所のリーダー/ライター51で認識可能となることで、物品の存在を把握することが可能となる。
【0036】
また、重量センサ等の各種センサを搭載し、給電している間にセンシングを行い、認識結果を返す仕組みであれば様々な情報を得ることが可能となる。例えば圧力センサを容器の底に搭載した物品の場合は、それぞれの重量を把握できるので、棚12ごとの総重量を計算できる。また、温度センサや湿度センサを搭載し、これらセンサの検出結果により定期的に食品の保存状態を把握し、それを無線タグに書き込むようにすれば、無線タグと一緒に食品を次の業者に渡すことにより、食品鮮度のエビデンスを次の業者に通知することも可能である。
【0037】
なお、無線タグ200の読み取りのタイミングは、上述したように、物品の出し入れが行われたときの他に、冷蔵庫本体1に設けたボタン(図示せず)の押下操作が行われたときに行うことも可能に構成され、ボタン操作1つで無線タグの読み取り指示が可能となっている。このような無線タグ200の読み取りによる冷蔵庫本体1内の物品管理の仕組みは、扉の開閉を行なわなくとも冷蔵庫本体1内の中身を確認可能とするため、省エネルギー化に寄与することが可能である。なお、無線タグ200から読み取った情報の具体的な利用方法は、特に限定するものではなく任意であるが、例えば、無線タグ200に、その無線タグが貼付される食品の内容に関する食品情報を記憶しておき、無線タグ200から読み取った食品情報を、冷蔵庫の運転制御に反映させるようにしてもよい。具体的には、食品の鮮度を保つために急速冷凍期間や保存期間などの設定値に反映することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 冷蔵庫本体、10 冷蔵室、11 開閉扉、12 棚、51 リーダー/ライター(無線タグリーダ)、52 アンテナ、52a 回転軸、53 電波状態変更手段、54 制御手段、60 電動ダンパー装置、70 放射型漏洩同軸ケーブル、81 スライダー、90 平面アンテナ、91 アンテナエレメント、93a,93b 導波管、95 スイッチ、96a,96b 導波管、100 平面アンテナ、101 アンテナエレメント、110 誘電体、200 無線タグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグが貼付された物品を収納する収納庫であって、
複数のアンテナエレメントを有するアレイアンテナであり、前記複数のアンテナエレメントから収納庫本体内に電波を放射し、前記無線タグと無線通信するアンテナと、
該アンテナから前記無線タグに記憶されている無線タグ情報を読み取る無線タグリーダと、
前記収納庫本体内の電波状態を変更することにより、前記収納庫本体内部全体を、前記無線タグの読み取り可能領域としてカバーする電波状態変更手段と、
前記収納庫本体内の前記無線タグから読み取った無線タグ情報を処理する制御手段と
を備え、
前記電波状態変更手段は、前記アンテナの複数の給電点が設けられた給電線に結合される複数の導波管を有し、前記複数の導波管のうち、前記複数の給電点の何れかに結合された導波管に切り替えて給電点を変えることにより前記アンテナの指向性を変更する手段であることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記収納庫内は、前記アンテナから放射された電波が多重反射する環境にあり、
前記電波状態変更手段は、前記アンテナの指向性を変更するにあたり、前記指向性の変更前に前記多重反射の影響で読み取り不能であった領域を、読み取り可能領域に変えるように前記アンテナの指向性を変更することで、前記収納庫本体内部全体を、前記無線タグの読み取り可能領域としてカバーすることを特徴とする請求項1記載の収納庫。
【請求項3】
前記収納庫本体内に着脱自在に装着され、物品を収容する棚を有し、該棚に前記アレイアンテナを設け、前記複数の導波管それぞれを2つに分けたうちの一方が前記棚に埋設され、その埋設された前記一方の一端が前記棚の側面に開口するように構成し、前記棚が前記収納庫本体内にセットされた状態で、前記一方の一端が、前記冷蔵庫本体側に埋設した他方の一端に結合するように構成され、前記収納庫本体内に、前記複数の導波管の何れかに切り替えるスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の収納庫。
【請求項4】
前記物品の移動方向を検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果と前記無線タグ情報とに基づいて前記収納庫本体内の無線タグ情報を処理することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の収納庫。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の収納庫を備えた冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−127647(P2012−127647A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52122(P2012−52122)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2008−96910(P2008−96910)の分割
【原出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】