説明

収納庫

【課題】種々の収納物の出し入れを好適に管理することができる収納庫を提供する。
【解決手段】センサSを用いて構成され且つ固有の識別子を記憶した識別子記憶媒体を付帯してしないボックスファイルFのファイル収納空間BSからの持出及び返却を検知する検知手段1を具備し、メイン収納庫本体B1に、ボックスファイルFを検知手段1が検知可能な検知可能位置に案内するガイド部B16aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納空間に収納した収納物の持出及び返却状況を管理し得る収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボックスファイル等の収納物を収納可能な収納空間を有する種々の収納庫が知られており、収納空間内に収納した収納物の勝手な持ち出しを禁止する必要がある場合には、収納空間を開閉し得る開閉体を施錠可能に構成したタイプが広く利用されている。このような従来の収納庫を説明するにあたっては、敢えて文献を例示するまでもない。
【0003】
ところが、従来の収納庫は、ファイルを個別管理することは難しい。特に近時におけるオフィス等では、機密性の高いファイルを管理するために収納状態を厳格にすることが求められているが、収納庫に管理機能が全くない場合、或いは収納庫全体としてのみ錠などにより管理機能を発揮できるに過ぎない場合は、誰がどのファイルを持出又は返却したかを管理することは困難である。
【0004】
そこで、例えば無線交信(例えばRFID:Radio Frequency IDentification)技術を利用した管理システムも考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した無線交信技術を適用した収納庫は、構造の複雑化を招来する上、ICタグ等の識別子記憶媒体を付帯させた収納物しか検知することができないため、当該収納庫を利用して管理可能な収納物は必然的に限定され、収納物の出し入れ状況を簡単に管理することができず、汎用性に劣るものである。また、無線交信が上手く行えない状況下では、収納物の出し入れを検知することができず、検知の確実性にも劣るものである。さらに、収納庫に専用のリーダを装備しなければならないため、収納庫自体のコストが高くなるとともに、全ての収納物にICタグを取り付けなければならため、システム全体のコストが高くなり、導入し難いという面もある。加えて、無線交信に支障を来たす物品を収納することはできないという不具合も生じる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、構造の複雑化を招来することなく、しかも、収納物の種類(ICタグを付帯しているか否か等)にとらわれることをなく、種々の収納物の出し入れを簡単且つ好適に管理することができる汎用性に優れた収納庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の収納庫は、ファイル等の収納物が収納可能な収納空間を有する収納庫本体と、前記収納空間を外部に連通させた開放位置と収納空間を外部と隔離し得る閉止位置との間で前記収納庫本体に対して相対移動可能な開閉体と、ユーザ認証を通じて前記開閉体を前記閉止位置にロックするロック状態又は当該ロック状態を解除したロック解除状態にし得る電気錠とを具備した収納庫であって、ユーザを認証するユーザ認証手段と、
当該ユーザ認証手段による認証結果に基づいて前記ロック状態にある前記開閉体を前記ロック解除状態にすべきか否かを判定する判定手段と、当該判定手段により前記開閉体を前記ロック解除状態にすべき判定がなされた場合に前記開閉体がロック解除状態を取り得るように前記電気錠を駆動させる電気錠駆動手段と、センサを用いて構成され且つ前記収納物の前記収納空間からの持出及び前記収納物の前記収納空間への返却を検知する検知手段と、当該検知手段によって検知された検知結果と前記ユーザ認証手段によって認証された認証結果とを関連付けて記憶して管理する記憶管理手段とを具備してなり、前記収納庫本体に、前記収納物を載置し得る載置板を設け、当該載置板に、前記収納物を前記検知手段が検知可能な検知可能位置に案内するガイド部を設けていることを特徴とする。
【0008】
ここで、センサは、接触型センサ又は非接触型センサの何れであってもよい。また、載置板は、収納物を載置し得るものであればよく、棚板や底板等が該当する。
【0009】
このようなものであれば、センサを用いて構成した検知手段により収納物の持出・返却を検知する態様であるため、ICタグ等の識別子記憶媒体を付帯させていない周知のボックスファイルやバインダ等の収納物の出し入れを好適に管理することができ、当該収納庫を利用して管理可能な収納物の適用範囲を拡大し、広い汎用性を付与することができる。また、無線交信技術を適用した場合と比較して、電波の送受信の確保等を考慮する必要もなく、電波に影響するものであっても収納することができる。さらに、市販されている周知のセンサ等を適用すれば収納庫自体のコストも抑えることができ、当該収納庫を用いた管理システムを導入し易い。加えて、ガイド部を利用することにより収納物を検知可能位置にスムーズ且つ簡単に位置付けることができ、検知の確実性をより向上させることが可能となる。
【0010】
特に、前記センサが、光学式近接センサであり、複数の前記収納物を前記載置板の巾方向に沿って隣接配置させてなり、前記ガイド部が、隣接する収納物の間に立設し且つ遮光性を有する壁状のものであり、前記光学式近接センサを、前記収納庫本体のうち収納状態にある前記収納物が当接又は近接し得る位置であって且つ前記ガイド部の上端部よりも低い位置に設けていれば、各センサの受光領域が明確になり、一の収納物に対応するセンサが、当該一の収納物に隣接する他の収納物の動作(持出・返却)を誤って検知することを防止することができる。また、このようなガイド部であれば指向性に劣る光学式センサであっても適用でき、センサの選択自由度を高めることができる。
【0011】
検知手段による検知の確実性をさらに向上させるには、前記ガイド部を利用して前記収納物を前記検知可能位置に強制的に移動させる強制移動手段を具備すればよい。
【0012】
具体的な実施様態としては、前記開閉体が、前記開放位置と前記閉止位置との間で前記収納庫本体に対して回転移動するものであり、前記強制移動手段が、前記収納空間において前記載置板の奥行き寸法と前記収納物の奥行き寸法とを略一致させ、前記開閉体を前記開放位置から前記閉止位置へ移動させる操作により前記開閉体の内面部を前記収納物に当接させて当該収納物を前記ガイド部に案内させながら前記検知可能位置に移動させるものが挙げられる。
【0013】
また、本発明の別の好適な実施態様としては、ファイル等の収納物が収納可能な収納空間を有する収納庫本体と、前記収納空間を外部に連通させた開放位置と収納空間を外部と隔離し得る閉止位置との間で前記収納庫本体に対して相対移動可能な開閉体と、ユーザ認証を通じて前記開閉体を前記閉止位置にロックするロック状態又は当該ロック状態を解除したロック解除状態にし得る電気錠とを具備した収納庫であって、ユーザを認証するユーザ認証手段と、当該ユーザ認証手段による認証結果に基づいて前記ロック状態にある前記開閉体を前記ロック解除状態にすべきか否かを判定する判定手段と、当該判定手段により前記開閉体を前記ロック解除状態にすべき判定がなされた場合に前記開閉体がロック解除状態を取り得るように前記電気錠を駆動させる電気錠駆動手段と、センサを用いて構成され且つ前記収納物の前記収納空間からの持出及び前記収納物の前記収納空間への返却を検知する検知手段と、当該検知手段によって検知された検知結果と前記ユーザ認証手段によって認証された認証結果とを関連付けて記憶して管理する記憶管理手段とを具備してなり、前記検知手段を構成するセンサが非接触式のセンサであることを特徴とする収納庫が挙げられる。
【0014】
このようなものであっても、センサを用いて構成した検知手段により収納物の持出・返却を検知する態様であるため、ICタグを付帯させていない周知のボックスファイルやバインダ等の収納物の出し入れを好適に管理することができ、当該収納庫を利用して管理可能な収納物の適用範囲を拡大し、広い汎用性を付与することができる等の前述した効果を得ることができるとともに、検知手段を構成するセンサが非接触式のセンサであるため、接触式のセンサを採用した態様に起こり得る不具合、つまり収納物とセンサとが相互に接触することにより収納物又はセンサの一方又は両方が損傷・変形するという不具合を回避することができ、その結果、検知手段による検知を確実に行うことができる。なお、この場合、前述のガイド部材の有無は問わない。
【0015】
また、上述した本発明の係る「収納庫」には、開閉体として回転扉(観音開き式を含む)やスライド式扉等の扉体、或いは抽斗等を適用したロッカーやワゴン等、収納空間を有する様々な態様のものが含まれる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、センサを用いて構成した検知手段により収納物の持出・返却を検知するため、ICタグ等の識別子記憶媒体を付帯させていないボックスファイルやバインダ等の収納物の出し入れを好適に管理することができ、広い汎用性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る収納庫Aは、図1〜図3(図1は収納庫Aの全体斜視図であり、図2は扉体A2を省略した収納庫Aの正面図であり、図3は要部拡大図である)等に示すように、収納物たるボックスファイルF等が収納可能なファイル収納空間BSを有する一台のメイン収納庫Bと、メイン収納庫Bに連設され制御盤収納空間CSを有するサブ収納庫Cとを備え、ファイル収納空間BSに収納されるボックスファイルFの出し入れを管理するファイル管理システムとしての機能を発揮するものである。
【0019】
メイン収納庫Bは、書庫やロッカー等として使用される既存の収納庫と同様の構成を有するものであり、主として、前方に開放し得るファイル収納空間BSを有する収納庫本体B1と、ファイル収納空間BSを外部に連通させた開放位置とファイル収納空間BSを外部と隔離し得る閉止位置との間で収納庫本体B1に対して相対移動可能な開閉体たる扉体B2と、ユーザ認証を通じて扉体B2を前記閉止位置にロックするロック状態又は当該ロック状態を解除したロック解除状態にし得る電気錠B3とを具備したものである。
【0020】
収納庫本体B1は、左右一対の側板B11、天板B12、底板B13及び背板B14を組み付けてボックスファイルFを収納し得るファイル収納空間BSを形成し得るものであり、ファイル収納空間BSを高さ方向に沿って2つに区成する仕切板B15を備え、仕切板B15によって区成されたそれぞれのファイル収納空間BSをさらに複数に区成し得る本発明の載置板たる棚板B16を取付可能にしたものである。ここで、ボックスファイルFは、上方に開放した概略箱状をなす周知のものであり、各ボックスファイルFを識別するためのICチップ等のファイル識別媒体を付帯させたものではない。なお、本実施形態では、仕切板B15及び底板B13にもそれぞれ棚板B16を載置した状態で取り付けている。各棚板B16には、図4(a)等に示すように、巾方向に沿って所定間隔で複数のガイド部B16aを設けている。本実施形態では、隣り合うガイド部B16a間の離間距離を、ボックスファイルFの背巾寸法より僅かに大きく設定している。各ガイド部B16aは、棚板B16の長手方向に対して略直交する方向に起立させた遮光性を有する壁状のものであり、これら複数のガイド部B16aによって一の棚板B16におけるボックスファイルFの収納場所を複数に区分けしている。また、本実施形態に係る収納庫本体B1は、背板B14に重合し得る位置に検知パネルB17を取付可能にしている。検知パネルB17は、図4(b)等に示すように、例えば板金素材から形成され、内部にセンサSを収容し得るセンサ収容空間を有するものであり、その高さ寸法を、高さ方向に隣り合う棚板B16間の離間寸法より若干小さく設定している。このような検知パネルB17を、高さ方向に沿って複数設け、各検知パネルB17の下端部位と各棚板B16の後端部とが相互に当接し得るように適宜の手段で収納庫本体B1に取り付けている。そして、各検知パネルB17のセンサ収容空間に複数のセンサSを巾方向に沿って設けている。本実施形態では、センサSとして、周知の光学式近接センサSを適用し、各センサSを、図3に示すように、隣り合うガイド部B16a間(両端に位置するガイド部B16aにあっては、各ガイド部B16aと、各ガイド部B16aと対面する側板B11との間)であって、且つ各ガイド部B16aの上端部よりも低い位置に設けており、検知パネルB17の前面部には、各センサSの配置箇所に対応させてセンサS用の窓部B17aを形成してある。各センサSには、それぞれ固有の識別コード(センサ識別子)が付与され、各センサ識別子と、当該センサSの配置場所(ファイル収納空間BSの何段目、左又は右から何列目)に関する情報とを関連付けてセンサ配置情報として、後述する記憶管理手段5によりCPUC11や内部記憶装置C12等で構成されるデータベースDBにおいて管理される(図6参照)。
【0021】
扉体B2は、図示しないヒンジ機構を利用して開放位置と閉止位置との間で回転移動するいわゆる観音開き式のものであり、一方の扉体B2(図示例では正面視右側)の内面部に、背面側に突出する略リング状の引っ掛け部B21を設け、閉止位置にある扉体B2の引っ掛け部B21に電気錠B3の閂B31が挿通し得るようにしている。なお、他方の扉体(図示例は正面視左側)B2の自由端側に設けた薄板状の縁部(図示省略)を、一方の扉体B2の自由端側縁部の内側に前後方向に重合させることで、一方の扉体B2のみを直接的に収納庫本体B1に係脱し得るようにしている。
【0022】
本実施形態では、電気錠B3として、例えば通電時解錠型(電気信号を入力することで解錠され、電気信号を遮断することで施錠されるのもの)を適用しており、具体的には、図3に示すように、仕切板B15の前面部に設けられ巾方向に沿って突没可能にスライド移動する閂B31が扉体B2の引っ掛け部B21に挿通した場合に扉体B2をロック状態にし、閂B31が没入して引っ掛け部B21に挿通し得ない場合に扉体B2をロック解除状態にするものを適用している。そして後述するCPUC11が、所定のプログラムに従い、この電気錠B3の施開錠に関する制御を実行する。なお、本実施形態では、電気錠B3に、扉体B2がロック状態又はロック解除状態にあるかを示す表示用LEDB32を設けている。
【0023】
サブ収納庫Cは、制御盤収納空間CSを有し且つメイン収納庫Bの収納庫本体B1と略同一の高さ寸法を有するサブ収納庫本体C1と、制御盤収納空間CSを開閉し得る上下一対の上前面パネルC2及び下前面パネルC3とを備えたものであり、メイン収納庫Bに接続して使用されるものである。制御盤収納空間CSには、CPUC11、内部記憶装置C12(メモリ等)及び入出力装置C13から構成されるマイクロコンピュータとしての一般的機能部品を搭載した制御盤等を配し、上前面パネルC2に、テンキー等からなるデータ入力部C21と、ユーザを識別し得るユーザ識別媒体Q(例えば磁気カード)の内容を読み取るリーダC22と、扉体B2の開閉状態及び日時等を表示するディスプレイ部C23とを設け、上前面パネルC2及び下前面パネルC3に、施錠状態にある各前面パネルC2、C3を施開錠するための鍵が挿入可能な鍵挿入孔C24、C31をそれぞれ設けている。
【0024】
図5は、このような収納庫Aを用いてなるファイル管理システムのハード機器の構成を示すものであり、前述した各部品に加え、本実施形態では、制御盤等に、USBメモリ等の外部記憶媒体が接続可能な外部記憶媒体用インターフェースC14と、ユーザ認証に応じて電気錠B3を駆動させる電気錠駆動制御部C15とを搭載している。
【0025】
内部記憶装置C12には、後述するボックスファイルFの持出・返却状況や在庫状況等を管理するために必要なプログラムや、このプログラムを実行する上で必要なユーザ情報、センサ配置情報及びファイル管理情報等がそれぞれ格納される。
【0026】
以上の構成を前提として、本実施形態の内部記憶装置C12には、ボックスファイルFの持出・返却情報、扉体B2の施開錠情報、ユーザ情報、センサ配置情報及びファイル管理情報を管理する管理プログラムが格納してあり、CPUC11は逐次これらを読み込んで所定の演算・加工処理を施す。そして、CPUC11が周辺ハードリソースと協働して、図7に示す本発明のユーザ認証手段1と、判定手段2と、電気錠駆動手段3と、検知手段4と、記憶管理手段5としての役割を果たす。
【0027】
ユーザ認証手段1は、データ入力部C21及びリーダC22等を用いて構成され、ユーザを識別するユーザ識別子をユーザが提示するユーザ識別媒体Qに基づいて取得するとともに、データ入力部C21に入力されたユーザ認証用データ(暗証番号等)が、データベースDBにおいて当該ユーザ識別子に関連付けて記憶されているユーザ認証用データと一致するか否かを判定することによりユーザを認証するものである。ユーザ識別媒体Qは、図示しないが、データを送受信する送受信部と、ユーザ識別子及びユーザ認証用データを含むユーザ識別情報を記憶した記憶部とを備え、接触あるいは非接触で記憶部に記憶されているユーザ識別情報を外部に出力する周知のものである。具体的には、一般に広く普及している磁気カードやICカード(JIS規格のもの)等を用いることができる。なお、リーダC22については、ユーザが利用するユーザ識別媒体Qに対応したリーダC22を上前面パネルC2(又は下前面パネルC3)に設ければよい。ユーザ識別子は、ユーザ識別媒体Qの記憶部に予め記憶される当該ユーザ識別媒体Qに固有のコードであり、本実施形態におけるユーザ情報とは、図6に示すように、各ユーザの氏名、部署、ユーザ識別子及びユーザ認証用データ等を相互に関連付けてなる各ユーザに係る情報であり、CPUC11や内部記憶装置C12等で構成されるデータベースDBにおいて管理されるものである。
【0028】
判定手段2は、ユーザ認証手段1による認証結果、すなわちデータ入力部C21に入力されたユーザ認証用データが、取得したユーザ識別子に関連付けて記憶されているユーザ認証用データと一致するか否かをの認証結果に基づき、ロック状態にある扉体B2をロック解除状態にすべきか否かを判定するものである。具体的には、認証結果が真(ユーザ認証用データが、取得したユーザ識別子に関連付けて記憶されているユーザ認証用データと一致する)の場合に、前記電気錠駆動制御部C15にロック解除命令を出力するものである。
【0029】
電気錠駆動手段3は、電気錠駆動制御部C15を用いてなり、判定手段2により扉体B2をロック解除状態にすべき判定がなされた場合に扉体B2がロック解除状態を取り得るように電気錠B3を駆動させるものである。具体的には、電気錠駆動制御部C15が、前記ロック解除命令を受け付けた場合に、前記電気錠B3の閂B31と扉体B2の引っ掛け部B21との引っ掛け状態を解除するように閂B31を没入する方向に駆動させて、扉体B2をロック解除状態にし得るものであり、本実施形態では、扉体B2をロック解除状態にした際に、電気錠B3に設けた表示用LEDB32を点滅又は点灯させるようにしている。
【0030】
検知手段4は、前記センサSを用いて構成され、ボックスファイルFのファイル収納空間BSからの持出及びボックスファイルFのファイル収納空間BSへの返却を検知するものである。具体的には、ボックスファイルFがファイル収納空間BSから持ち出された場合、すなわちボックスファイルFがセンサSから所定距離離間した場合に、ボックスファイルFがファイル収納空間BSから持ち出された事実に関する持出ログ情報を当該ボックスファイルFの移動を検知したセンサSのセンサ識別子に関連付けて出力し、一方、ボックスファイルFがファイル収納空間BSに返却された場合、すなわちボックスファイルFがセンサSに所定距離近接した場合に、ボックスファイルFがファイル収納空間BSに返却された事実に関する返却ログ情報を当該ボックスファイルFの移動を検知したセンサSのセンサ識別子に関連付けて出力するものである。ここで、棚板B16に設けたガイド部B16aが、ボックスファイルFを返却する際にボックスファイルFを検知手段4により検知され得る検知可能位置に案内し得るものであり、本実施形態では、ガイド部B16aを利用してボックスファイルFを検知可能位置に強制的に移動させる強制移動手段を具備している。強制移動手段は、棚板B16の奥行き寸法とボックスファイルFの奥行き寸法とを略一致させ、扉体B2を開放位置から閉止位置へ移動させる操作により、扉体B2の内面部をボックスファイルFに当接させてボックスファイルFをガイド部B16aに案内させながらボックスファイルFをその後端部が前記検知パネルB17に形成した窓部B17aに当接または近接する位置、つまり検知可能位置に移動させるものである。これにより、ボックスファイルFを返却する際に、たとえボックスファイルFを十分に奥方に寄せきれず検知手段4によって返却の事実を検知できない場合であっても、扉体B2を閉じる動作に関連付けてボックスファイルFを検知可能位置に移動させることができ、確実に返却の事実を検知することが可能となる。
【0031】
記憶管理手段5は、検知手段4によって検知された検知結果とユーザ認証手段1によって認証された認証結果とを関連付けて記憶して管理するものである。具体的には、検知手段4によって検知された検知結果、つまり検知手段4によって出力された前記持出ログ情報及び前記返却ログ情報を、ユーザ認証手段1によって認証したユーザ情報に基づくユーザ識別子に関連付けてファイル管理情報としてデータベースDBに記憶して管理するものである(図6参照)。
【0032】
次に、このようなファイル管理システムにおけるボックスファイルFの持出・返却に関する手順をフローチャートを用いて説明する。
【0033】
ボックスファイルFの持出に関する処理手順について、図8を参照して説明する。
【0034】
先ず、ユーザがユーザ識別媒体QをリーダC22に挿し通すことにより当該ユーザ識別媒体Qに記憶されているユーザ識別子を取得するとともに、データ入力部C21を介して入力されたユーザ認証用データを受け付け(S1)、当該ユーザ認証用データが、当該ユーザ識別子に関連付けて記憶されているユーザ認証用データと一致するか否かを判定する(S2)。すなわちこれらS1及びS2によりユーザを認証する。次いで、S2による判定結果(認証結果)に基づき、ロック状態にある扉体B2をロック解除状態にすべきか否かを判定し(S3)、認証結果が真(受け付けたユーザ認証用データが、取得したユーザ識別子に関連付けて記憶されているユーザ認証用データと一致する)の場合(S3:Y)に、電気錠駆動制御部C15にロック解除命令を出力し、当該命令に基づいて電気錠B3を駆動させて扉体B2をロック解除状態にするとともに、表示用LEDB32を点滅又は点灯させる(S4)。そして、ボックスファイルFのファイル収納空間BSからの持出を検知した場合(S5:Y)、持出ログ情報を当該ボックスファイルFの移動を検知したセンサSのセンサ識別子に関連付けて出力する(S6)。最後に、当該持出ログ情報及びセンサ識別子を、S1において取得したユーザ識別子に関連付けてファイル管理情報としてデータベースDB及び外部記憶媒体用インターフェースC14に接続したUSBメモリ等の外部記憶媒体に記憶する(S7)。
【0035】
一方、ボックスファイルFの返却に関する処理手順は、図9に示すように、前記持出に関する処理手順におけるS1〜S4と略同様のS11〜S14を経た後、ボックスファイルFのファイル収納空間BSへの返却を検知した場合(S15:Y)、返却ログ情報を当該ボックスファイルFの移動を検知したセンサSのセンサ識別子に関連付けて出力する(S16)。この際、強制移動手段により、ボックスファイルFの返却を確実に検知し得るようにしている。そして、当該返却ログ情報及びセンサ識別子を、S1において取得したユーザ識別子に関連付けてファイル管理情報としてデータベースDB及び外部記憶媒体用インターフェースC14に接続したUSBメモリ等の外部記憶媒体に記憶する(S8)。なお、ボックスファイルFの持出及び返却に関する処理は、扉体B2の施錠時に電気錠駆動制御部C15等から出力される施錠した旨の信号を受け付けて終了する。
【0036】
以上の手順を経てボックスファイルFの持出・返却に関する情報を、各センサSごと、換言すれば各ボックスファイルFの収納場所ごとに好適に管理することができる。
【0037】
このように本実施形態に係る収納庫Aは、センサSを用いて構成した検知手段4によりボックスファイルFの持出・返却を検知するため、RFID等の無線交信技術を適用した態様と比較して、構成を簡素なものとしつつ、ICタグ等の識別子記憶媒体を付帯させていないボックスファイルFの出し入れを好適且つ簡単に管理することができる。また、電波の送受信の確保等を考慮する必要がないため、電波に影響するものであっても収納することができる。さらに、市販されている周知のセンサを適用すれば収納庫A自体のコストも抑えることができ、当該収納庫Aを用いた管理システムを導入し易い。加えて、棚板B16に、ボックスファイルFを検知手段4が検知可能な検知可能位置に案内するガイド部B16aを設けているため、このガイド部B16aを利用することによりボックスファイルFを検知可能位置にスムーズ且つ簡単に位置付けることができ、検知手段4による検知の確実性をより向上させることが可能となる。
【0038】
特に、前記ガイド部B16aが、隣接するボックスファイルFの間に立設し且つ遮光性を有する壁状のものであり、光学式近接センサSを、収納庫本体B1のうち収納状態にあるボックスファイルFの背部が当接又は近接し得る位置であって且つガイド部B16aの上端部よりも低い位置に設けているため、各ガイド部B16aによって各センサSに対する光の到達領域が明確となり、一のボックスファイルFに対応するセンサSが、このボックスファイルFに隣接する他のボックスファイルFの動作(持出・返却)を誤って検知することを防止することができ、指向性に劣る光学式センサSであっても適用可能であるため、センサSの選択自由度を広げる。
【0039】
さらに、棚板B16の奥行き寸法とボックスファイルFの奥行き寸法とを略一致させ、扉体B2を開放位置から閉止位置へ移動させる操作により扉体B2の内面部をボックスファイルFに当接させて当該ボックスファイルFをガイド部B16aに案内させながら検知可能位置に移動させる強制移動手段を設けているため、簡単な構成を採用しつつ、ボックスファイルFの移動、特に返却に伴うボックスファイルFの移動を検知手段4によって確実に検知することが可能となり、実用性に富むものとなる。
【0040】
また、検知手段4を構成するセンサSが非接触式センサであれば、接触式センサを採用した態様に起こり得る不具合、つまりボックスファイルFと接触式センサとが相互に接触することによりボックスファイル又は接触式センサの一方又は両方が損傷するという不具合を回避することができ、その結果、検知手段4による検知を確実に行うことができる。なお、このようなセンサSを適用する場合、ガイド部材B16aの有無は問わない。
【0041】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0042】
前記実施形態では、単一のメイン収納庫と単一のサブ収納庫とから一の収納庫を構成した態様を例示したが、これに限らず、単一のサブ収納庫に対して複数のメイン収納庫を増連することにより一の収納庫を構成してもよい。このように、制御部として機能するサブ収納庫を一体用意し、この単一のサブ収納庫によって管理可能なメイン収納庫の数を、収納規模や配置場所に応じて適宜変更可能とすることにより種々の使用態様に柔軟に対応できる収納庫となる。この場合、各収納庫本体を床面に設置したベース上に配置することにより、このバースの内部空間を利用して適宜配線処理等を行えばよい。
【0043】
また、センサとして、上述した光学式近接センサ以外のものを用いてもよく、接触式又は非接触式何れのタイプであっても構わない。一方、ガイド部材も、適用するセンサの感度を劣化させないものであれば、どのような形状・素材であってもよい。
【0044】
また、仕切板及び底板に棚板を取り付けず、これら仕切板及び底板に収納物を直接載置する態様を採用しても構わない。この場合、仕切板及び底板にそれぞれガイド部を設ければ、仕切板及び底板が本発明の「載置板」として機能することになる。これにより部品点数及びコストの削減に資する。
【0045】
また、前記実施形態では、センサを設けた検知パネルを背板に重合させるように取り付けた態様を示したが、検知パネルを使用せず、背板に直接センサを設けた態様を採用してもよい。
【0046】
収納物としてボックスファイルを例示したが、これに限らず、パイプ式の綴じ具(いわゆるチューブファイル)やバインダ等を収納物して適用しても構わない。
【0047】
また、強制移動手段として、棚板等の載置板を、奥行き方向に沿って漸次下方に傾斜するように設定しておき、この傾斜させた載置板に収納物を載置し、収納物の自重によって収納物をガイド部に案内させながら検知可能位置に強制移動させる態様を採用してもよい。
【0048】
また、収納庫が、開閉体として開き扉(観音開き式を含む)やスライド式扉等の扉体、或いは抽斗等を適用したロッカーやワゴンであってもよい。
【0049】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る収納庫の概略全体斜視図。
【図2】同実施形態に係る収納庫を一部省略して示す正面図。
【図3】同実施形態に係る収納庫の要部拡大図。
【図4】同実施形態における棚板及び検知パネルの概略斜視図。
【図5】同実施形態に係る収納具のハード機器構成図。
【図6】同実施形態において活用される種々のデータを示す図。
【図7】同実施形態におけるファイル管理システムの概略構成図。
【図8】同実施形態におけるボックスファイルの持出の手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態におけるボックスファイルの返却の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0051】
A…収納庫
B…メイン収納庫
B1…収納庫本体
B16…載置板(棚板)
B16a…ガイド部
B2…扉体
B3…電気錠
BS…収納空間(ファイル収納空間)
F…収納物(ボックスファイル)
S…センサ
1…ユーザ認証手段
2…判定手段
3…電気錠駆動手段
4…検知手段
5…記憶管理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイル等の収納物が収納可能な収納空間を有する収納庫本体と、前記収納空間を外部に連通させた開放位置と収納空間を外部と隔離し得る閉止位置との間で前記収納庫本体に対して相対移動可能な開閉体と、ユーザ認証を通じて前記開閉体を前記閉止位置にロックするロック状態又は当該ロック状態を解除したロック解除状態にし得る電気錠とを具備した収納庫であって、
ユーザを認証するユーザ認証手段と、
当該ユーザ認証手段による認証結果に基づいて前記ロック状態にある前記開閉体を前記ロック解除状態にすべきか否かを判定する判定手段と、
当該判定手段により前記開閉体を前記ロック解除状態にすべき判定がなされた場合に前記開閉体がロック解除状態を取り得るように前記電気錠を駆動させる電気錠駆動手段と、
センサを用いて構成され且つ前記収納物の前記収納空間からの持出及び前記収納物の前記収納空間への返却を検知する検知手段と、
当該検知手段によって検知された検知結果と前記ユーザ認証手段によって認証された認証結果とを関連付けて記憶して管理する記憶管理手段とを具備してなり、
前記収納庫本体に、前記収納物を載置し得る載置板を設け、当該載置板に、前記収納物を前記検知手段が検知可能な検知可能位置に案内するガイド部を設けていることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記センサが、光学式近接センサであり、複数の前記収納物を載置板の巾方向に沿って隣接配置させてなり、前記ガイド部が、隣接する収納物の間に立設し且つ遮光性を有する壁状のものであり、前記光学式近接センサを、前記収納庫本体のうち収納状態にある前記収納物が当接又は近接し得る位置であって且つ前記ガイド部の上端部よりも低い位置に設けている請求項1記載の収納庫。
【請求項3】
前記ガイド部を利用して前記収納物を前記検知可能位置に強制的に移動させる強制移動手段を具備している請求項2記載の収納庫。
【請求項4】
前記開閉体が、前記開放位置と前記閉止位置との間で前記収納庫本体に対して回転移動するものであり、前記強制移動手段が、前記収納空間において前記載置板の奥行き寸法と前記収納物の奥行き寸法とを略一致させ、前記開閉体を前記開放位置から前記閉止位置へ移動させる操作により前記開閉体の内面部を前記収納物に当接させて当該収納物を前記ガイド部に案内させながら前記検知可能位置に移動させるものである請求項3記載の収納庫。
【請求項5】
ファイル等の収納物が収納可能な収納空間を有する収納庫本体と、前記収納空間を外部に連通させた開放位置と収納空間を外部と隔離し得る閉止位置との間で前記収納庫本体に対して相対移動可能な開閉体と、ユーザ認証を通じて前記開閉体を前記閉止位置にロックするロック状態又は当該ロック状態を解除したロック解除状態にし得る電気錠とを具備した収納庫であって、
ユーザを認証するユーザ認証手段と、
当該ユーザ認証手段による認証結果に基づいて前記ロック状態にある前記開閉体を前記ロック解除状態にすべきか否かを判定する判定手段と、
当該判定手段により前記開閉体を前記ロック解除状態にすべき判定がなされた場合に前記開閉体がロック解除状態を取り得るように前記電気錠を駆動させる電気錠駆動手段と、
センサを用いて構成され且つ前記収納物の前記収納空間からの持出及び前記収納物の前記収納空間への返却を検知する検知手段と、
当該検知手段によって検知された検知結果と前記ユーザ認証手段によって認証された認証結果とを関連付けて記憶して管理する記憶管理手段とを具備してなり、
前記検知手段を構成するセンサが非接触式のセンサであることを特徴とする収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−62863(P2007−62863A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247816(P2005−247816)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(304046982)コクヨファニチャー株式会社 (112)
【Fターム(参考)】