取付構造
【課題】ルーフ強度を減ずることなく、作業性の高い車体装備の取付構造、及び取付方法の提供。
【解決手段】自動車のルーフ(1)に部材を取り付けるための取付構造において、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、伝道格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されていることを特徴としている。
【解決手段】自動車のルーフ(1)に部材を取り付けるための取付構造において、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、伝道格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体装備の車体への取付構造及び取付方法であり、特に、自動車のキャブルーフへの部材の取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブ装備として、ルーフ前端部には車外清掃の際に作業者が体を支えるために用いるグリップや、サイドミラー取付ブラケットが取り付けられている。
【0003】
そのような装備は、図10の斜視図及び図11の断面図に示すように、ルーフ1の前端部1fの内部側に図示しない溶接ナットを取り付けた補強部材30を例えば、スポット溶接で取り付けるフ前端1fの該溶接ナットの投影位置に図示しない貫通孔を設け、図示しない取付ボルトによって当該装備、例えば作業用グリップ2の図示しない取付孔及び図示しない貫通孔を貫通させ、補強部材30の図示しない溶接ナットに螺合させることによって、ルーフパネル1に取付ていた。
【0004】
然るに、補強部材30を取り付けるルーフ1は1枚構成である上、板厚は極めて薄い。従って、装備、例えばグリップ2をルーフ1に装着しても取付箇所の剛性が不足することが多く、強度上懸念材料となっていた。
【0005】
更に、図11に示すように、前記補強材30を取り付けた直ぐ後にはルーフに強度を持たせるために、キャブの幅方向全幅に亙って、補強用ルーフレール550が溶接によって組みつけられている。したがって、前記装備取付用の補強材30はルーフ前端部1fとルーフレール50によって袋状に囲まれた位置100に取付なくてはならない。
スポット溶接機械は、例えば速度表示灯を格納するための孔部200(図10参照)から溶接機械の腕の一部を挿入して溶接作業を行うこととなるが、作業者は補強部材が見えないために物の確認が出来ない状態の所謂「盲作業」となっており、一部の熟練工にのみ頼らざるを得ない状態であった。
【0006】
その他の従来技術として、回転収納型のアシストグリップを取り付ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
しかし、当該従来技術は、自動車室内壁へグリップを取り付けるための技術であり、前記問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2004−136733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、ルーフ強度を減ずることなく、作業性の高い車体装備の取付構造、および取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車体装備の取付構造は、自動車のルーフに部材を取り付けるための取付構造において、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、伝道格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されていることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材はグリップ(2)である(請求項2)。
【0011】
自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである(請求項3)。
【0012】
本発明の車体装備の取付構造は、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用補強部材(3,8)をルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に溶接して固定する工程と、取付用補強部材(3,8)が溶接されたルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)をルーフ(ルーフパネル1)の内側に溶接して固定する工程と、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)を溶接したルーフ(ルーフパネル1)をキャブの骨組み(6)に載置し固定する工程と、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用螺子を取付用補強部材(3,8)に固定されているナット(溶接ナット4)に螺合する工程、とを有する(請求項4)。
【0013】
前記自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき部材はグリップ(2)である(請求項5)。
【0014】
前記自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである(請求項6)。
【発明の効果】
【0015】
上述の本発明の、によれば、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されているので、ルーフ全体の強度を減ずることはない。即ち、従来タイプに比べ、相対的に合成及び強度は大幅に向上する。
【0016】
剛性及び強度の大幅な向上は、当該構造部の変形等の発生を抑制し、長期に亙り高品質を維持出来る。
【0017】
取付用補強部材(3、8)のルーフ側への取付は、開放されたルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)にスポット溶接するため、従来生産性の阻害要因となっていた、所謂「盲作業」も不要となり、作業には熟練の必要はなくなる。したがって、盲作業を廃止することが出来、作業精度の均一化が図られ、品質の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
先ず、図1〜図6を参照して、第1実施形態を説明する。第1実施形態ではルーフパネル1に取り付けるべき装備(部品)がグリップ2(図2参照、グリップは公知の装備)である。
【0020】
図1において、グリップ2をルーフパネル1に取り付ける場合に、詳細を図3〜図5で後述するグリップ用補強部材3の底部31をルーフ前方用骨格部材であるフロントルーフレール5の下部の平面部51に例えばスポット溶接によって取り付ける。
【0021】
図3〜図5を参照して、グリップ用補強部材3を説明する。
グリップ取付用補強部材3は、左右対称形であり、前部31と底部32と左右両端のリブ33とを有し、一体でプレス成形されている。
【0022】
図4で示すように、前部31と底部32は連続しており、断面(図3のX−X断面)は凡そ「く」字状を成している。図4における矢印Fは、キャブ(車両)の前方を示している。
【0023】
前部31は軽量化のため、高さが減じられた中央部31aと両袖部31bとを有し、図5に示すように、剛性を上げるため、中央部31aと両袖部31bとの境界部には段差部31cを設けている。
【0024】
前部31の両袖部31bの表面形状は、ルーフパネル1において、グリップ取付用補強部材3を取り付ける位置のルーフパネル1の内部表面と概略同様に形成されている。
又前部31の中央部31aは、補強部材3が取付くルーフパネル1の曲面と一定の隙間を有する様に曲面に形成されている。
【0025】
底部32の左右両端近傍には、位置決め用の孔34a,34bが形成されている。図示の例では右側の孔34aの方が左側の孔34bよりも大きく形成されている。
【0026】
左右の両袖部31bの裏面には、グリップ2を固定するための溶接ナット4が取り付けられている。また、左右の両袖部31bには溶接ナット4の中心点を投影する位置に取付孔35が形成されている。
【0027】
次に図6の工程図を参照して、キャブメイン組立工程からグリップ2をキャブルーフに取り付けるまでの工程を説明する。
【0028】
先ず、工程6−1において、フロントルーフレール5の所定の位置にグリップ用補強部材3を載置し、P1位置をスポット溶接する。
又、図示はしていないが、ルーフパネル1のグリップ用補強部材の溶接ナット4の中心点の投影位置に、取付用螺子を挿通させる取付孔が予め形成されている。
【0029】
次の工程6−2では、ルーフパネル1の所定の位置にフロントルーフレール5を位置合わせし、P2位置、P3位置を順次スポット溶接する。
尚、P2位置、P3位置は、共に図示の紙面の表裏方向に複数有る。そして、この時は、グリップ用補強部材3はルーフパネル1には固定されていない。
【0030】
工程6−3では、フロントルーフレール5を一体化したルーフパネル1をキャブ骨格6の上方の所定位置に載せ、次の工程6−4では所定の溶接箇所をスポット溶接して、ホワイトキャブ(キャブアッセンブリ)に仕立てる。
【0031】
工数6−5では、取付用螺子7をグリップ2の図示しない取付孔に通し、その螺子7の先端を前記ルーフパネルに形成した図示しない取付孔に挿通し、そのまま螺子7を押込めば、グリップ取付用補強部材3の溶接ナット4に螺子7の先端は係合する。そしてそのままドライバ、或いはレンチで螺子7を螺合させれば、グリップ2は確実にルーフパネル1を介して、グリップ取付用補強部材3に固定される。
【0032】
ルーフパネル1とフロントルーフレール5と補強部材3は、グリップ2を仲介として、一体に組上げられており、その一体に組上げられたルーフパネル1は剛性が格段に向上する。従って、例えばグリップ2に作業者がぶら下がったとしても、ルーフパネル1は十分過ぎる強度が確保されている。
【0033】
当該補強部材3のキャブルーフ側への取付においても、開放されたフロントルーフレール5にスポット溶接するため、従来生産性の阻害要因となっていた、所謂「盲作業」も不要となり、作業には熟練の必要はなくなる。
【0034】
次に、図7〜図9を参照して、第2実施形態を説明する。
図7〜図9の第2実施形態は、ルーフパネル1に取り付けるべき装備(部品)が図示しない電動格納式ミラーである。
【0035】
図7〜図9の第2実施形態は、図1〜図6の第1実施形態に対して取り付けるべき装備は変わるものの、取付方法及び取付工程は、第1実施形態と実質的に同様であるので、当該補強部材である電動格納式ミラー用補強部材8の構造について説明する。
【0036】
図7〜図9において、電動格納式ミラー取付用補強部材8は、左右対称形であり、前部81と底部82とを有し、一体でプレス成形されている。
【0037】
図8で示すように、前部81と底部82は連続しており、凡そ「く」字状を成している。図8における矢印Fは、キャブ(車両)の前方を示している。
【0038】
前部81は上方のコーナ部81aが4半円状であり、前部81の上下方向中央81bから下方及び底部82にかけて幅が漸増するように形成されている。
【0039】
前部81の左右方向の中央には、剛性及び強度を確保するために、上端から下方向に一定形状のビード81cが底部82の途中まで形成されている。
【0040】
底部82の左右両端近傍には、位置決め用、或いは他部品との共締めのための孔84が形成されている。又、底部82の後端部は、フロントルーフレール(図1参照)の傾斜部に合わせるように、斜め上方に折れ曲がった折れ曲がり部82eを有している。
前部81の裏面の上方2箇所には、溶接ナット4が取り付けられており、前部81のその溶接ナット4の中心点の投影面には取付孔85が形成されている。
【0041】
第2実施形態の作用効果は、第1実施形態と凡そ同じである。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではなないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態の取付構造を示した要部断面図。
【図2】本発明の第1実施形態のキャブルーフにおける当該取付構造体の位置を示した斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態であるグリップ取付用補強部材の正面図。
【図4】図3に対する側面図。
【図5】図3に対する平面図。
【図6】本発明の第1実施形態における組立工程を説明する工程説明図。
【図7】本発明の第2実施形態である電動格納式ミラー取付用補強部材の正面図。
【図8】図7に対する側面図。
【図9】図7に対する平面図。
【図10】従来技術におけるキャブルーフ前端の構造を示す斜視図。
【図11】従来技術における当該部位の要部断面図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ルーフパネル
2・・・グリップ
3・・・グリップ取付用補強部材
4・・・溶接ナット
5・・・フロントルーフレール
6・・・キャブ骨格
7・・・取付用螺子
8・・・電動格納式ミラー取付用補強部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体装備の車体への取付構造及び取付方法であり、特に、自動車のキャブルーフへの部材の取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブ装備として、ルーフ前端部には車外清掃の際に作業者が体を支えるために用いるグリップや、サイドミラー取付ブラケットが取り付けられている。
【0003】
そのような装備は、図10の斜視図及び図11の断面図に示すように、ルーフ1の前端部1fの内部側に図示しない溶接ナットを取り付けた補強部材30を例えば、スポット溶接で取り付けるフ前端1fの該溶接ナットの投影位置に図示しない貫通孔を設け、図示しない取付ボルトによって当該装備、例えば作業用グリップ2の図示しない取付孔及び図示しない貫通孔を貫通させ、補強部材30の図示しない溶接ナットに螺合させることによって、ルーフパネル1に取付ていた。
【0004】
然るに、補強部材30を取り付けるルーフ1は1枚構成である上、板厚は極めて薄い。従って、装備、例えばグリップ2をルーフ1に装着しても取付箇所の剛性が不足することが多く、強度上懸念材料となっていた。
【0005】
更に、図11に示すように、前記補強材30を取り付けた直ぐ後にはルーフに強度を持たせるために、キャブの幅方向全幅に亙って、補強用ルーフレール550が溶接によって組みつけられている。したがって、前記装備取付用の補強材30はルーフ前端部1fとルーフレール50によって袋状に囲まれた位置100に取付なくてはならない。
スポット溶接機械は、例えば速度表示灯を格納するための孔部200(図10参照)から溶接機械の腕の一部を挿入して溶接作業を行うこととなるが、作業者は補強部材が見えないために物の確認が出来ない状態の所謂「盲作業」となっており、一部の熟練工にのみ頼らざるを得ない状態であった。
【0006】
その他の従来技術として、回転収納型のアシストグリップを取り付ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
しかし、当該従来技術は、自動車室内壁へグリップを取り付けるための技術であり、前記問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2004−136733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、ルーフ強度を減ずることなく、作業性の高い車体装備の取付構造、および取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車体装備の取付構造は、自動車のルーフに部材を取り付けるための取付構造において、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、伝道格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されていることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材はグリップ(2)である(請求項2)。
【0011】
自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである(請求項3)。
【0012】
本発明の車体装備の取付構造は、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用補強部材(3,8)をルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に溶接して固定する工程と、取付用補強部材(3,8)が溶接されたルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)をルーフ(ルーフパネル1)の内側に溶接して固定する工程と、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)を溶接したルーフ(ルーフパネル1)をキャブの骨組み(6)に載置し固定する工程と、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用螺子を取付用補強部材(3,8)に固定されているナット(溶接ナット4)に螺合する工程、とを有する(請求項4)。
【0013】
前記自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき部材はグリップ(2)である(請求項5)。
【0014】
前記自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、自動車のルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである(請求項6)。
【発明の効果】
【0015】
上述の本発明の、によれば、ルーフ(ルーフパネル1)に取り付けるべき当該部材(グリップ2、電動格納式ミラー)の取付用螺子(7)がルーフ(ルーフパネル1)内側に配置された取付用補強部材(3,8)に固定されたナット(4)に螺合しており、取付用補強部材(3,8)はルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)に固定されており、ルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)はルーフ(ルーフパネル1)内側に固定されているので、ルーフ全体の強度を減ずることはない。即ち、従来タイプに比べ、相対的に合成及び強度は大幅に向上する。
【0016】
剛性及び強度の大幅な向上は、当該構造部の変形等の発生を抑制し、長期に亙り高品質を維持出来る。
【0017】
取付用補強部材(3、8)のルーフ側への取付は、開放されたルーフ前方用骨格部材(フロントルーフレール5)にスポット溶接するため、従来生産性の阻害要因となっていた、所謂「盲作業」も不要となり、作業には熟練の必要はなくなる。したがって、盲作業を廃止することが出来、作業精度の均一化が図られ、品質の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
先ず、図1〜図6を参照して、第1実施形態を説明する。第1実施形態ではルーフパネル1に取り付けるべき装備(部品)がグリップ2(図2参照、グリップは公知の装備)である。
【0020】
図1において、グリップ2をルーフパネル1に取り付ける場合に、詳細を図3〜図5で後述するグリップ用補強部材3の底部31をルーフ前方用骨格部材であるフロントルーフレール5の下部の平面部51に例えばスポット溶接によって取り付ける。
【0021】
図3〜図5を参照して、グリップ用補強部材3を説明する。
グリップ取付用補強部材3は、左右対称形であり、前部31と底部32と左右両端のリブ33とを有し、一体でプレス成形されている。
【0022】
図4で示すように、前部31と底部32は連続しており、断面(図3のX−X断面)は凡そ「く」字状を成している。図4における矢印Fは、キャブ(車両)の前方を示している。
【0023】
前部31は軽量化のため、高さが減じられた中央部31aと両袖部31bとを有し、図5に示すように、剛性を上げるため、中央部31aと両袖部31bとの境界部には段差部31cを設けている。
【0024】
前部31の両袖部31bの表面形状は、ルーフパネル1において、グリップ取付用補強部材3を取り付ける位置のルーフパネル1の内部表面と概略同様に形成されている。
又前部31の中央部31aは、補強部材3が取付くルーフパネル1の曲面と一定の隙間を有する様に曲面に形成されている。
【0025】
底部32の左右両端近傍には、位置決め用の孔34a,34bが形成されている。図示の例では右側の孔34aの方が左側の孔34bよりも大きく形成されている。
【0026】
左右の両袖部31bの裏面には、グリップ2を固定するための溶接ナット4が取り付けられている。また、左右の両袖部31bには溶接ナット4の中心点を投影する位置に取付孔35が形成されている。
【0027】
次に図6の工程図を参照して、キャブメイン組立工程からグリップ2をキャブルーフに取り付けるまでの工程を説明する。
【0028】
先ず、工程6−1において、フロントルーフレール5の所定の位置にグリップ用補強部材3を載置し、P1位置をスポット溶接する。
又、図示はしていないが、ルーフパネル1のグリップ用補強部材の溶接ナット4の中心点の投影位置に、取付用螺子を挿通させる取付孔が予め形成されている。
【0029】
次の工程6−2では、ルーフパネル1の所定の位置にフロントルーフレール5を位置合わせし、P2位置、P3位置を順次スポット溶接する。
尚、P2位置、P3位置は、共に図示の紙面の表裏方向に複数有る。そして、この時は、グリップ用補強部材3はルーフパネル1には固定されていない。
【0030】
工程6−3では、フロントルーフレール5を一体化したルーフパネル1をキャブ骨格6の上方の所定位置に載せ、次の工程6−4では所定の溶接箇所をスポット溶接して、ホワイトキャブ(キャブアッセンブリ)に仕立てる。
【0031】
工数6−5では、取付用螺子7をグリップ2の図示しない取付孔に通し、その螺子7の先端を前記ルーフパネルに形成した図示しない取付孔に挿通し、そのまま螺子7を押込めば、グリップ取付用補強部材3の溶接ナット4に螺子7の先端は係合する。そしてそのままドライバ、或いはレンチで螺子7を螺合させれば、グリップ2は確実にルーフパネル1を介して、グリップ取付用補強部材3に固定される。
【0032】
ルーフパネル1とフロントルーフレール5と補強部材3は、グリップ2を仲介として、一体に組上げられており、その一体に組上げられたルーフパネル1は剛性が格段に向上する。従って、例えばグリップ2に作業者がぶら下がったとしても、ルーフパネル1は十分過ぎる強度が確保されている。
【0033】
当該補強部材3のキャブルーフ側への取付においても、開放されたフロントルーフレール5にスポット溶接するため、従来生産性の阻害要因となっていた、所謂「盲作業」も不要となり、作業には熟練の必要はなくなる。
【0034】
次に、図7〜図9を参照して、第2実施形態を説明する。
図7〜図9の第2実施形態は、ルーフパネル1に取り付けるべき装備(部品)が図示しない電動格納式ミラーである。
【0035】
図7〜図9の第2実施形態は、図1〜図6の第1実施形態に対して取り付けるべき装備は変わるものの、取付方法及び取付工程は、第1実施形態と実質的に同様であるので、当該補強部材である電動格納式ミラー用補強部材8の構造について説明する。
【0036】
図7〜図9において、電動格納式ミラー取付用補強部材8は、左右対称形であり、前部81と底部82とを有し、一体でプレス成形されている。
【0037】
図8で示すように、前部81と底部82は連続しており、凡そ「く」字状を成している。図8における矢印Fは、キャブ(車両)の前方を示している。
【0038】
前部81は上方のコーナ部81aが4半円状であり、前部81の上下方向中央81bから下方及び底部82にかけて幅が漸増するように形成されている。
【0039】
前部81の左右方向の中央には、剛性及び強度を確保するために、上端から下方向に一定形状のビード81cが底部82の途中まで形成されている。
【0040】
底部82の左右両端近傍には、位置決め用、或いは他部品との共締めのための孔84が形成されている。又、底部82の後端部は、フロントルーフレール(図1参照)の傾斜部に合わせるように、斜め上方に折れ曲がった折れ曲がり部82eを有している。
前部81の裏面の上方2箇所には、溶接ナット4が取り付けられており、前部81のその溶接ナット4の中心点の投影面には取付孔85が形成されている。
【0041】
第2実施形態の作用効果は、第1実施形態と凡そ同じである。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではなないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態の取付構造を示した要部断面図。
【図2】本発明の第1実施形態のキャブルーフにおける当該取付構造体の位置を示した斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態であるグリップ取付用補強部材の正面図。
【図4】図3に対する側面図。
【図5】図3に対する平面図。
【図6】本発明の第1実施形態における組立工程を説明する工程説明図。
【図7】本発明の第2実施形態である電動格納式ミラー取付用補強部材の正面図。
【図8】図7に対する側面図。
【図9】図7に対する平面図。
【図10】従来技術におけるキャブルーフ前端の構造を示す斜視図。
【図11】従来技術における当該部位の要部断面図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ルーフパネル
2・・・グリップ
3・・・グリップ取付用補強部材
4・・・溶接ナット
5・・・フロントルーフレール
6・・・キャブ骨格
7・・・取付用螺子
8・・・電動格納式ミラー取付用補強部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフに部材を取り付けるための取付構造において、ルーフに取り付けるべき当該部材の取付用螺子がルーフ内側に配置された取付用補強部材に固定されたナットに螺合しており、取付用補強部材はルーフ前方用骨格部材に固定されており、ルーフ前方用骨格部材はルーフ内側に固定されていることを特徴とする取付構造。
【請求項2】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材はグリップである請求項1の取付構造。
【請求項3】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである請求項1の取付構造。
【請求項4】
自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、ルーフに取り付けるべき当該部材の取付用補強部材をルーフ前方用骨格部材に溶接して固定する工程と、取付用補強部材が溶接されたルーフ前方用骨格部材をルーフの内側に溶接して固定する工程と、ルーフ前方用骨格部材を溶接したルーフをキャブの骨組みに載置し固定する工程と、ルーフに取り付けるべき前記部材の取付用螺子を取付用補強部材に固定されているナットに螺合する工程、とを有することを特徴とする取付方法。
【請求項5】
自動車のルーフに取り付けるべき部材はグリップである請求項4の取付方法。
【請求項6】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである請求項4の取付方法。
【請求項1】
自動車のルーフに部材を取り付けるための取付構造において、ルーフに取り付けるべき当該部材の取付用螺子がルーフ内側に配置された取付用補強部材に固定されたナットに螺合しており、取付用補強部材はルーフ前方用骨格部材に固定されており、ルーフ前方用骨格部材はルーフ内側に固定されていることを特徴とする取付構造。
【請求項2】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材はグリップである請求項1の取付構造。
【請求項3】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである請求項1の取付構造。
【請求項4】
自動車のルーフに部材を取り付けるための取付方法において、ルーフに取り付けるべき当該部材の取付用補強部材をルーフ前方用骨格部材に溶接して固定する工程と、取付用補強部材が溶接されたルーフ前方用骨格部材をルーフの内側に溶接して固定する工程と、ルーフ前方用骨格部材を溶接したルーフをキャブの骨組みに載置し固定する工程と、ルーフに取り付けるべき前記部材の取付用螺子を取付用補強部材に固定されているナットに螺合する工程、とを有することを特徴とする取付方法。
【請求項5】
自動車のルーフに取り付けるべき部材はグリップである請求項4の取付方法。
【請求項6】
自動車のルーフに取り付けるべき前記部材は電動格納式ミラーである請求項4の取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−123742(P2006−123742A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315145(P2004−315145)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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