説明

受信機器及び画像形成装置

【課題】周波数を周期的に増減させた拡散クロック信号を用いてデータを受信する場合に生じ得る通信の不成立を未然に防止でき、確実にEMI低減効果を得ることができる受信機器及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】拡散クロック信号に基づいて、複数のビットを含むフレーム単位でデータを受信する際、受信速度に基づいて受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出し、該ビット当たりの受信時間に応じて前記拡散クロック信号の変更周期を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号の周波数を周期的に増減させた拡散クロック信号を出力するクロック発生部を備える受信機器、及び該受信機器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における、電子機器のEMI(ElectroMagnetic Interference:電磁妨害雑音)対策回路においては、該電子機器のクロック信号そのものの高調波成分を濾波する方法、リターン接地(GND)を有効に確保する方法、クロック信号をスペクトラム拡散して放射エネルギを分散する方法等が用いられている。
【0003】
上述した、クロック信号をスペクトラム拡散して放射エネルギを分散する方法は、クロック信号の周波数を経時的に変更させることにより行われる。クロック信号の周波数を経時的に変更させる方式としては、PLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)を用いるアナログ方式と、可変遅延回路(可変ディレイライン)を用いるディジタル方式とが知られている。
【0004】
特許文献1では、光電変換手段及びアナログ処理の駆動クロックにスペクトラム拡散クロック信号(以下、拡散クロック信号という。)による変調をかける上で、該拡散クロック信号の変調周期の位相を、主走査ライン同期信号LSYNCに対応させて揃えて、変調周波数の位相を一致させることで、主走査ラインの周期的なノイズを次の主走査ライン以降に対しても等しくすることにより、後段のシェーディング処理手段で取り除くことができ、EMI規制をクリアし得る画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−268355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、クロック信号の周波数を経時的に変更させる方法としては、元のクロック信号の周波数を周期的に増加及び減少させる方法が一般的に行われている。しかしながら、このような場合においては、拡散クロック信号を用いたシリアル通信の際、通信が成立しなくなる場合が生じ得るという問題があった。
【0007】
以下、前記問題について詳しく説明する。説明の便宜上、受信側が921.6kBPSの通信速度で、送信側と調歩同期式通信を行い、スタートビットが1ビット、データビットが8ビット、ストップビットが1ビットである1フレームを受信する場合を例として説明する。
【0008】
調歩同期式によるシリアル通信においては、受信側が、送信側から受信するデータのレベルがHighからLowに変化するスタートビットのエッジを検出することにより、受信を開始する。斯かる際、前記受信側は、自己のクロック信号を同期させ、該クロック信号に応じて、受信される信号(データビット)を検出(データサンプリング)することになる。その後、Highレベルのストップビットを受信することによって、前記受信側は1フレームの受信を完了する。
【0009】
図6は従来、受信側における、信号の受信とデータサンプリングとの関係を説明する説明図である。上述したように、通信速度が921.6kBPSであるので、1ビット当たりの受信(送信)時間は1.09μsであり、1フレーム(10ビット)全体の受信時間は10.8μsとなる。受信側は、スタートビットのエッジを検出してから、各ビットの中心を予測して、データサンプリングのタイミングを自己のクロック信号によって決定する。例えば、元のクロック信号に対してスペクトラム拡散が施されていない場合は受信側及び送信側ではクロック信号の周波数が同一であり、図6の例で示すように、受信側は、スタートビットのエッジを検出してから0.54μs後にデータサンプリングをはじめ、1.09μs毎にデータサンプリングを行う。
【0010】
一方、受信側がEMIの対策として、元のクロック信号に対してスペクトラム拡散を施した場合は、元のクロック信号の周波数は周期的に増加(例えば、+n%)及び減少(例えば、−n%)する拡散クロック信号とになり、該拡散クロック信号を用いて当該信号の受信(データサンプリング)を行う。
【0011】
前記拡散クロック信号における、周波数の一回の増加(又は減少)と、これに続く一回の減少(又は増加)とを前記拡散クロック信号の1変更周期とした場合、1変更周期内には、元の周波数より周波数が高い「周波数の増加領域」と、元の周波数より周波数が低い「周波数の減少領域」とが存在する。一方、1変更周期内での平均周波数は、周波数の増加分及び減少分の相殺により前記元のクロック信号の周波数と同じになる。以下の説明においては、前記受信側において、元のクロック信号の周波数は3.68MHzであり、10%の周波数の増加及び減少を施す場合、すなわち、前記nは10である場合、いわゆる拡散率が10%である場合を例として説明する。
【0012】
図7は従来、拡散クロック信号における、周波数の増減及び1つの変更周期を表すグラフである。横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表している。図の例においては、128clkごとの変更周期であり、換言すれば変更周期は34.7μs(又は28.75kHz)である。
【0013】
拡散クロック信号の周波数は、漸次10%まで増加してから、漸次元の周波数まで戻り、この間が周波数の増加領域となる。それから拡散クロック信号の周波数は、漸次−10%まで減少してから、再び元の周波数まで戻り、この間が周波数の減少領域となる。前記周波数の増加領域では、元の周波数より早いタイミングでデータのサンプリングが行われ、前記周波数の減少領域では、元の周波数より遅いタイミングでデータのサンプリングが行われる。
【0014】
図8は従来、通信が成立しなくなる一例における、拡散クロック信号の変更周期と、受信するフレームとの関係を例示する例示図であり、図9は従来、拡散クロック信号を用いた場合のデータサンプリングにおけるズレを説明する説明図である。図の例においては、1フレーム(10ビット)の受信時間が、前記拡散クロック信号の1/2変更周期より短く、周波数の増加領域内で受信終了している。すなわち、周波数が増加した拡散クロック信号を用いて前記フレームのデータサンプリングが行われる。従って、データサンプリングが、元のクロックを用いる場合に比べて、早くなり、これは、時間の経過と共に累積され、信号(フレーム)の受信の後部、すなわちストップビット近くなることにつれて蓄積が大きくなる。
【0015】
例えば、受信側が元のクロック信号を用いたデータサンプリングをする場合には、スタートビットのエッジを検出してから、10.35μs(0.54+1.09×9)の経過後にストップビットをデータサンプリングする。
【0016】
一方、図8の例では前記フレームが、時間軸において、前記拡散クロック信号の周波数が最大となる点を基準に対称しており、上述したようにフレームの受信(送信)時間は10.8μsであるので、該フレームの受信における拡散クロック信号の平均周波数が+6.89%となる。従って、受信側はスタートビットのエッジを検出してから、9.636885μs{(0.54+1.09×9)×(1−0.0689)}の経過後にストップビットをデータサンプリングするようになる。すなわち、元のクロック信号を用いてデータサンプリングをする場合と、拡散クロック信号を用いてデータサンプリングをする場合とはストップビットをデータサンプリングする際、0.713115μs(10.35−9.636885)のズレが発生し、これだけ受信側は早くストップビットをデータサンプリングする。
【0017】
このように、拡散クロック信号を用いた場合、元のクロック信号を用いてデータサンプリングをする場合より、0.7134595μs早くデータサンプリングするが、これは、1つのビットの中心からエッジまでの時間(0.54μsより)より長い。従って、受信側はストップビットをデータサンプリングすべきタイミングで、データビット(D7)をデータサンプリングしてしまい、送信側との通信が成立しなくなる。
【0018】
また、このように通信の不成立が生じるのは、上述した例のように、拡散クロック信号の「周波数の増加領域」内で受信が完了した場合のみならず、「周波数の減少領域」内で受信が完了した場合も同一の理由により生じる。しかしながら、特許文献1の画像読取装置では、このような問題に対応できない。
【0019】
本発明は、斯かる事情に鑑みてされたものであり、その目的とするところは、拡散クロック信号に基づいて、複数のビットを含むデータを受信する際、前記ビット当たりの受信時間に応じて前記拡散クロック信号の変更周期を調整することにより、拡散クロック信号を用いてデータを受信する場合に生じ得る通信の不成立を未然に防止でき、確実にEMI低減効果を得ることができる受信機器及び画像形成装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る受信機器は、周波数を周期的に増減させた拡散クロック信号に基づいてデータを受信する受信機器において、前記拡散クロック信号に基づいて、複数のビットを含むデータを受信する受信部と、ビット当たりの受信時間に応じて前記拡散クロック信号の周波数の変更周期を調整する周期調整部とを備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、前記周期調整部がビット当たりの受信時間に応じて前記拡散クロック信号の変更周期を調整し、調整された拡散クロック信号に基づいて、前記受信部がデータを受信する。
【0022】
本発明に係る受信機器は、受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出する算出部を備え、前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間の1/N(N:自然数)となるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、前記算出部は前記受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出し、前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間の1/Nとなるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整する。
【0024】
本発明に係る受信機器は、前記受信部は、M個(M:自然数)のビットを含むフレーム単位でデータを受信し、受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出する算出部を備え、前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間のM倍になるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整するように構成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、前記算出部は前記受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出し、前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間のM倍になるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整する。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、前述の発明の何れか一つに記載の受信機器を備え、該受信機器の周期調整部によって変更周期が調整された拡散クロック信号に基づいてデータの受信を行い、受信したデータに基づいて画像をシート状の記録媒体に形成するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、前記受信機器の周期調整部によって変更周期が調整された拡散クロック信号に基づいてデータの受信を行い、該データに基づいて、画像をシート状の記録媒体に形成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、EMI対策として拡散クロック信号を用いてデータを受信する場合に生じ得る通信の不成立を未然に防止でき、確実にEMI低減効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1の複合機の要部構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における、前記拡散クロック信号を用いた通信の一例を説明するための機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1の複合機のクロック拡散デバイスの要部構成を示すブロック図である。
【図4】拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間の1/Nである場合における、拡散クロック信号の変更周期と、フレームとの関係を示すグラフである。
【図5】拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間のM倍である場合における、拡散クロック信号の変更周期と、フレームとの関係を示すグラフである。
【図6】従来、受信側における、信号の受信とデータサンプリングとの関係を説明する説明図である。
【図7】従来、拡散クロック信号における、周波数の増減及び1つの変更周期を表すグラフである。
【図8】従来、通信が成立しなくなる一例における、拡散クロック信号の変更周期と、受信するフレームとの関係を例示する例示図である。
【図9】従来、拡散クロック信号を用いた場合のデータサンプリングにおけるズレを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態に係る、受信機器及び画像形成装置を、複合機に適用した場合を例として、図面に基づいて詳述する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の複合機の要部構成を説明する機能ブロック図である。
【0032】
本発明の実施の形態1の複合機1は、画像入力装置3と、画像出力装置5と、画像処理装置4と、通信装置6と、画像表示装置8と、記憶部9(記憶手段)と、操作パネル10とを備えており、これらのハードウェアはバスNによって制御部2に接続されている。
【0033】
画像入力装置3は、読み取り用の原稿に光を照射する光源、CCD(Charge Coupled Device)のようなイメージセンサ等を有し、該原稿の画像データの光学的読み取りを行う。また、画像入力装置3では、所定の読取り位置にセットされた原稿からの反射光像を当該イメージセンサに結像させ、RGB(R : Red, G : Green, B : Blue)のアナログデータを出力する。
【0034】
画像出力装置5は、画像処理装置4から出力される画像データに基づく画像を記録用紙、OHPフィルム等の記録媒体上に印刷する。画像出力装置5は、感光体ドラム、該感光体ドラムを所定の電位に帯電させる帯電器、外部から受付けた画像データに応じてレーザ光を発して感光体ドラム上に静電潜像を生成させるレーザ書込装置、感光体ドラム表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像化する現像器、感光体ドラム表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写器等を備えており、例えば、電子写真方式にて画像を記録媒体上に形成する。
【0035】
通信装置6は、外部から原稿データ受信取得するネットワークカード、モデム等を備えており、例えば、これらを介して画像処理装置4にて処理した後の画像データを外部へ送信する。
【0036】
記憶部9は、例えば、ハードディスク等の不揮発性の半導体メモリであり、画像入力装置3を介して取得した原稿の画像データ、又は通信装置6を介して受信した原稿データを記憶する。
【0037】
また、操作パネル10は、複合機1における「ファックス」、「複写」、「印刷」、「メール」等の機能を切り替える機能ボタン、テンキー、受け付けた指示を確定するためのエンターキー、画像入力装置3を介して読み取った原稿の画像をシート状の記録媒体上に画像形成するための「出力」キー又は「コピー」キー等を備えている。
【0038】
画像表示装置8は、例えば液晶ディスプレイからなり、複合機1の状態、ジョブ処理の状況、画像入力装置3が読み取った原稿の画像及び操作パネル10の操作内容の確認等、利用者に対して報知すべき情報を表示する。
【0039】
画像処理装置4は、例えば画像入力装置3から入力されるアナログデータを基にディジタル形式の画像データを生成し、又は記憶部9に記憶されている画像データを読み出し、夫々の画像の種類に応じた処理を施した後、出力(画像形成)用画像データを生成する。画像処理装置4によって生成された出力用画像データは、画像出力装置5又は通信装置6に出力される。
【0040】
制御部2はCPU、ROM及びRAM(図示せず)を備えている。ROMには各種の制御プログラム、データ等が予め格納されており、RAMはデータを一時的に記憶し、記憶順、記憶位置等に関係なく読み出すことが可能である。また、RAMは、例えば、ROMから読み出されたプログラム、該プログラムを実行することにより発生する各種データ、外部から受信した各種データを記憶する。
【0041】
本発明の実施の形態1の複合機1は、内部通信又は外部との通信の際、EMIの対策として、クロック信号をスペックトラム拡散させた拡散クロック信号を用いて通信を行うことができるように構成されている。拡散クロック信号とは、クロック信号の周波数を増加及び減少させ、かつクロック信号の周波数の一回の増加(又は減少)と、これに続く一回の減少(又は増加)とからなる変更周期が繰り替えされるようにすることによりクロック信号の周波数が所定の幅を有するようにスペックトラム拡散させたものであり、詳しい説明は上述したとおりであるので、省略する(図7の説明参照)。
【0042】
以下、本発明の実施の形態1の複合機1における、前記拡散クロック信号を用いた通信について説明する。図2は本発明の実施の形態1における、前記拡散クロック信号を用いた通信の一例を説明するための機能ブロック図である。説明の便宜上、画像入力装置3と画像出力装置5との間においては既に通信速度が設定されており、該通信速度での調歩同期式通信であって、画像出力装置5側からのフレーム単位のデータ送信を、画像入力装置3側で拡散クロック信号を用いて受信する場合を例として説明する。
【0043】
画像出力装置5は、画像データに基づく画像の記録用紙への印刷を行うエンジン部51と、エンジン部51の制御を行うエンジン制御部52とを備えており、クロック信号の出力する発信素子13からのクロック信号を用いて、エンジン制御部52が、例えば読取制御部32にデータを送信する。
【0044】
画像入力装置3は、光学ユニット31、及び制御ASIC(図示せず)を介して光学ユニット31による画像読取を制御する読取制御部32(受信部)を備えており、読取制御部32はエンジン制御部52から送信されるデータを受信する。読取制御部32のデータの受信に用いられるクロック信号を出力する発信素子11から出力されたクロック信号は、クロック拡散デバイス12(周期調整部)がスペックトラム拡散させ、拡散クロックを出力する。なお、実施の形態1においては、発信素子11及び発信素子13は同一周波数のクロック信号を出力する。
【0045】
光学ユニット31はミラー、レンズ及びCCDを備え、光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の波長の光を出す3つの光源からの光が原稿によって反射された光を、電気信号に変換するよう構成されている。
【0046】
更に、読取制御部32は、算出部321を備えている。算出部321は受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出する。すなわち、読取制御部32とエンジン制御部52との間には、予め通信速度が設定されているので、算出部321は該通信速度に基づき、ビット当たりの受信時間を算出する。
【0047】
画像入力装置3及びクロック拡散デバイス12は、本発明の実施の形態1に係る受信機器(図2中、点線にて表示)を構成してある。また、画像入力装置3の読取制御部32は、画像出力装置5のエンジン制御部52から送信されたフレーム単位のデータを受信する際、スタートビットのエッジを検出し、クロック拡散デバイス12からの拡散クロック信号を同期させて受信を行う。
【0048】
図3は本発明の実施の形態1の複合機1のクロック拡散デバイス12の要部構成を示すブロック図である。
クロック拡散デバイス12は、公知技術であるPLL回路を用いる。クロック拡散デバイス12は位相比較器121(Phase Frequency Detector)、フィルタ122、電圧制御発振機123(Voltage Controlled Oscillator)、分周器124、及び変調部125を備えており、受信するデータのビット当たりの受信時間に応じて、出力すべき拡散クロック信号の変更周期を調整する。
【0049】
位相比較器121は、入力信号(発信素子11からのクロック信号)と、分周器124を介してフィードバックされた信号との位相差を比較し、入力された2つの信号の位相差を電圧に変換して出力する。例えば、前記入力信号に比べてフィードバックされた信号が遅れているときは、斯かる位相差に応じた幅の正のパルスを出力し、前記入力信号に比べてフィードバックされた信号が進んでいるときは負のパルスを出力する。
【0050】
フィルタ122は、例えば、ローパスフィルタであり、位相比較器121からの信号を制御信号化して電圧制御発振機123に送出する。
【0051】
電圧制御発振機123は、入力された電圧によって出力周波数を制御することができる回路を有し、フィルタ122からの信号に応じて出力する信号の周波数を変化させる。
【0052】
分周器124は、電圧制御発振機123と位相比較器121との間に位置して電圧制御発振機123が出力する信号を位相比較器121にフィードバックする。詳しくは、分周器124は電圧制御発振機123から入力された信号の周波数を整数分の1にして出力する。
【0053】
変調部125は分周器124の出力側に設けられており、分周器124から出力される信号の周波数を調整する。
例えば、変調部125が分周器124からの信号に対して所定値だけ周波数を減少させた場合、位相比較器121では前記入力信号に比べてフィードバックされた信号が遅れている旨の比較結果が得られるので、斯かる位相差に応じた幅の正のパルスが出力される。また、電圧制御発振機123では、該パルスに応じて出力する信号の周波数を変化させるので、結果として、入力信号より周波数の高いクロック信号(拡散クロック信号)が出力される。なお、このようなループが繰り返されることにより、ループ毎に出力される拡散クロック信号の周波数が高くなる。
【0054】
一方、変調部125が分周器124からの信号に対して所定値だけ周波数を増加させた場合、位相比較器121では前記入力信号に比べてフィードバックされた信号が進んでいる旨の比較結果が得られるので、結果として、前記入力信号より周波数の低いクロック信号(拡散クロック信号)が出力される。
【0055】
変調部125が、以上のような操作を周期的に行うことにより、発信素子11からのクロック信号(以下、元のクロック信号と言う。)は、図7に示すように、周波数か周期的に変更する拡散クロック信号として出力される。
【0056】
なお、変調部125は、読取制御部32から受信すべきデータのビット当たりの受信時間を取得し、該受信時間に基づき、分周器124から出力される信号の周波数を調整して、電圧制御発振機123で出力される拡散クロック信号の変更周期が、前記ビット当たりの受信時間の1/N(N:自然数)となるようにする。
【0057】
すなわち、変調部125は、前記受信時間に基づき、分周器124から出力される信号の周波数を調整して、調整された周波数の信号(以下、調整周波数信号と言う。)を位相比較器121に送出する。位相比較器121では該調整周波数信号と前記元のクロック信号とを比べて比較結果に係る位相差を電圧に変換して出力する。また、電圧制御発振機123が、該電圧に応じて出力する信号の周波数を変化させることにより、出力される拡散クロック信号の変更周期は、前記ビット当たりの受信時間の1/Nとなる。
【0058】
図4は、拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間の1/Nである場合における、拡散クロック信号の変更周期と、フレームとの関係を示すグラフである。図4の例においては、前記Nは2である。すなわち、1つのビットの受信時間内に、変更周期が2回繰り返される。更に、拡散クロック信号は、周波数の増加領域で周波数が元のクロック信号に対して+10%まで増加し、周波数の減少領域で周波数が元のクロック信号に対して−10%まで減少する。
【0059】
斯かる場合、1つのビットの受信時間内で拡散クロックの変更周期が一致している。すなわち、1つのビットの受信時間内で、前記元のクロック信号より周波数が増加している周波数の増加領域、及び前記元のクロック信号より周波数が減少している周波数の減少領域を経過しているので、周波数の増加領域での周波数の増加の累積分と、周波数の減少領域での周波数の減少の累積分とが相殺され、各ビットのデータサンプリングのタイミングにズレが発生しない。
【0060】
すなわち、図9の説明で述べたように、例えば、拡散クロック信号の周波数の増加領域内、又は周波数の減少領域内で受信が完了した場合は、周波数の増加の累積、又は減少の累積によって、データサンプリングのタイミングにズレが生じ、かつ該ズレはストップビットに近くなるほど大きくなり、ストップビットのデータサンプリングが出来なくなることによるいわゆる通信の不成立の問題があるが、本発明の実施の形態1の複合機1では、このような通信の不成立の問題を未然に防止できる。
【0061】
以上の説明においては、前記Nが2である場合を例として説明したがこれに限るものでなく、Nが自然数である場合には、前述したように、周波数の増加領域での周波数の増加の累積分と、周波数の減少領域での周波数の減少の累積分との相殺が生じるので、拡散クロック信号を用いて調歩同期式通信を行う際の、通信の不成立の問題を未然に防止できる。
【0062】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の複合機1は、実施の形態1の複合機1と略同様の構成を有するが、クロック拡散デバイス12の変調部125の作用において異なる。説明の便宜上、実施の形態1の場合と同様、画像入力装置3と画像出力装置5との間において、調歩同期式通信であって、画像出力装置5側からのフレーム単位のデータ送信を画像入力装置3側で拡散クロック信号を用いて受信する場合を例として説明する。なお、前記フレームはM個のビットを有する。
【0063】
また、画像入力装置3の読取制御部32は、画像出力装置5のエンジン制御部52から送信されたフレーム単位のデータを受信する際、スタートビットのエッジを検出し、クロック拡散デバイス12からの拡散クロック信号を同期させて受信を行う。
【0064】
本発明の実施の形態2の複合機1において、クロック拡散デバイス12の変調部125は、読取制御部32から受信すべきデータのビット当たりの受信時間を取得し、該受信時間に基づき、分周器124から出力される信号の周波数を調整して、電圧制御発振機123で出力される拡散クロック信号の変更周期が、前記ビット当たりの受信時間のM倍(M:自然数)となるようにする。
【0065】
すなわち、変調部125は、前記受信時間に基づき、分周器124から出力される信号の周波数を調整して、調整された周波数の信号(以下、調整周波数信号と言う。)を位相比較器121に送出する。位相比較器121では該調整周波数信号と前記元のクロック信号とを比べて比較結果に係る位相差を電圧に変換して出力する。また、電圧制御発振機123が、該電圧に応じて出力する信号の周波数を変化させることにより、出力される拡散クロック信号の変更周期は、前記ビット当たりの受信時間のM倍となる。換言すれば、拡散クロック信号の変更周期は、前記フレームの全受信時間と等しくなる。
【0066】
図5は、拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間のM倍である場合における、拡散クロック信号の変更周期と、フレームとの関係を示すグラフである。図5の例においては、前記Mは10である。すなわち、該拡散クロック信号の変更周期は、前記フレーム(10個のビット)の全受信時間と等しい。更に、拡散クロック信号は、周波数の増加領域で周波数が元のクロック信号に対して+10%まで増加し、周波数の減少領域で周波数が元のクロック信号に対して−10%まで減少する。
【0067】
斯かる場合、フレームの全受信時間と拡散クロックの変更周期が一致している。すなわち、フレームの全受信時間内で、周波数の増加領域及び周波数の減少領域を経過しているので、周波数の増加領域での周波数の増加の累積分と、周波数の減少領域での周波数の減少の累積分とが相殺されることになり、ストップビットのデータサンプリングのタイミングにズレが発生しない。従って、ストップビットのデータサンプリングが出来なくなることによる上述した通信の不成立の問題が、本発明の実施の形態2の複合機1では、未然に防止できる。
【0068】
なお、各ビットのデータサンプリングにおいても、データサンプリングのタイミングが一般的許容範囲(時間軸方向において、ビットの中心から、前後15%〜20%)内に収まるので、通信に障害が生じない。
【符号の説明】
【0069】
1 複合機
2 制御部
32 読取制御部
12 クロック拡散デバイス
321 算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を周期的に増減させた拡散クロック信号に基づいてデータを受信する受信機器において、
前記拡散クロック信号に基づいて、複数のビットを含むデータを受信する受信部と、
ビット当たりの受信時間に応じて前記拡散クロック信号の周波数の変更周期を調整する周期調整部と
を備えていることを特徴とする受信機器。
【請求項2】
受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出する算出部を備え、
前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、
前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間の1/N(N:自然数)となるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の受信機器。
【請求項3】
前記受信部は、M個(M:自然数)のビットを含むフレーム単位でデータを受信し、
受信速度に基づいて、受信すべきデータのビット当たりの受信時間を算出する算出部を備え、
前記周期調整部は、前記算出部が算出した受信時間に基づき、
前記拡散クロック信号の変更周期が前記ビット当たりの受信時間のM倍になるように、前記拡散クロック信号の変更周期を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の受信機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の受信機器を備え、
該受信機器の周期調整部によって変更周期が調整された拡散クロック信号に基づいてデータの受信を行い、
受信したデータに基づいて画像をシート状の記録媒体に形成するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−234120(P2011−234120A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102425(P2010−102425)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】