受信装置、周波数偏差算出方法及びコンピュータプログラム
【課題】異なるタイミングで受信されるリファレンス信号間の相関から推定できる周波数偏差の範囲を拡大する。
【解決手段】受信装置12は、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行する制御部17を備える。
【解決手段】受信装置12は、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行する制御部17を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、受信信号に生じる周波数偏差の推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で移動する移動局装置と基地局装置との間に遮蔽物がない場合には、電波の伝搬環境がいわゆるライスフェージング環境となる。この場合には受信信号に対するドップラー効果の影響が周波数偏差となって現れ、通信品質に大きく影響を与えることが知られている。
【0003】
受信信号の周波数を推定する方法として、異なる受信タイミングで受信されたリファレンス信号間の相関を算出することにより、受信間隔における位相回転量すなわち位相差を推定する方法が知られている。時刻kにおける送信信号をsk、伝搬路による歪みをhk、周波数偏差をΔf、白色ガウス雑音をnkとすると、受信信号は次式(1)により与えられる。
【0004】
【数1】
【0005】
搬送波を除去すると周波数偏差分が残るため、上記の位相回転が式中に現れる。このとき、時刻kの受信信号rkと時刻k+τの受信信号rk+τの相関z(k,τ)は次式(2)のように表される。
【0006】
【数2】
【0007】
伝搬路がτの間不変であり、送信信号skとsk+τが同一であると仮定し、相関z(k,τ)の平均について考えると、2項目以降は白色ガウス雑音の性質から平均が0となることから、次式(3)が得られる。
【0008】
【数3】
【0009】
ここまでの結果から周波数偏差Δfは、次式(4)のように推定できる。なお、送信信号skとsk+τが既知の場合ににも、簡単な数式変形によって同様に周波数偏差Δfを推定できる。
【0010】
【数4】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP(Third Generation Partnership Project) 寄書, R4-060149, “Discussion on AFC problem under high speed train environment”, NTT DoCoMo, USA, February 13-17, 2006.
【非特許文献2】P. Moose, “A Technique for Orthogonal Frequency Division Multiplexing Frequency Offset Correction”, IEEE Trans. Commun., vol. 42, no. 10, October. 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
逆正接関数の値域が−π<tan-1x<πであることから、上記の推定方法によると、周波数偏差Δfの推定可能な範囲が-1/2τ<Δf<1/2τに制限される。したがって、受信間隔τで受信されたリファレンス信号間の位相回転量の推定値がθであった場合、期間τの間にゆっくりとθだけ回転したのか、より高速にθ+2π回転したのかを判別することはできない。
【0013】
開示の装置及び方法は、推定可能な周波数偏差の範囲を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
装置の一観点によれば、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行する制御部を備える受信装置が与えられる。
【0015】
方法の一観点によれば、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する周波数偏差算出方法が与えられる。
【0016】
コンピュータプログラムの一観点によれば、受信回路が備える制御部に、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行させるコンピュータプログラムが与えられる。
【発明の効果】
【0017】
本件開示の装置又は方法によれば、推定可能な周波数偏差の範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】周波数偏差の算出方法の説明図である。
【図2】基地局装置のハードウエア構成例を示す図である。
【図3】受信回路の第1例の機能ブロック図である。
【図4】拡大範囲偏差推定部の第1例の機能ブロック図である。
【図5】受信回路の処理の一例の説明図である。
【図6】拡大範囲偏差推定部の第2例の機能ブロック図である。
【図7】評価値の算出方法の一例の説明図である。
【図8】拡大範囲偏差推定部の第3例の機能ブロック図である。
【図9】拡大範囲偏差推定部の第4例の機能ブロック図である。
【図10】拡大範囲偏差推定部の第5例の機能ブロック図である。
【図11】拡大範囲偏差推定部の処理の一例の説明図である。
【図12】受信回路の第2例の機能ブロック図である。
【図13】拡大範囲偏差推定部の第6例の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.周波数偏差算出方法>
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。初めに、図1を参照して周波数偏差の算出方法を説明する。図1は、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号について、各受信間隔と、それぞれの受信間隔で生じるリファレンス信号の位相回転量との関係を示す。なお、以下の説明においてある受信間隔で受信されるリファレンス信号間に生じる位相回転量を「位相差」と表記することがある。
【0020】
参照符号1aは、受信間隔τ1で受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された受信間隔τ1における位相差θ1を示す。参照符号2aは、受信間隔τ1より長い受信間隔τ2で受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された受信間隔τ2における位相差θ2を示す。以下の説明において、添字「n」をリファレンス信号が受信される受信間隔を識別する番号として使用する。受信間隔τnで受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された位相差をθnと表記する。
【0021】
位相差θnには、回転方向や一回転以上の回転について任意性が残る。このため、本実施例では、位相差の候補θn(m)が次式(5)のように定められる。
【0022】
【数5】
【0023】
以下の説明において、位相差の候補を「位相差候補」と表記することがある。また、受信間隔τnにおいて推定された位相差から定めた位相差候補を、「受信間隔τnに対する位相差候補」と表現することがある。図1に示す例では、参照符号1a〜1eが受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)を示す。位相差候補1a、1b、1c、1d及び1eは、それぞれθ1(0)、θ1(1)、θ1(2)、θ1(−1)及びθ1(−2)に対応する。同様に、参照符号2b〜2eが受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)を示す。位相差候補2a、2b、2c、2d及び2eは、それぞれθ2(0)、θ2(1)、θ2(2)、θ2(−1)及びθ2(−2)に対応する。
【0024】
mは、任意の整数であるが、mの範囲に応じて推定可能な周波数偏差の範囲が定められる。このため、所望の範囲に応じてmの範囲が決定される。例えば推定したい周波数偏差の範囲が±Δfmaxである場合には、mの範囲は、少なくとも次式(6)の条件を満たすように定められる。各受信間隔τn毎に定めた複数の位相差候補同士は整数mにより識別できるので、以下の説明において整数mを「候補番号」と呼ぶことがある。
【0025】
【数6】
【0026】
例えば、τmaxが500μ秒でありΔfmaxが2000Hzである場合には、上式(6)により候補番号mの範囲は、−1≦m≦1となる。この場合、候補番号mの範囲は少なくとも−1、0及び1を含む。
【0027】
次に、各受信間隔τnに対する位相差候補θn(m)の中から、各受信間隔τnにおいて受信信号に生じる位相差に最も近い候補を選択する。周波数偏差が一定の場合には受信間隔に比例して位相差が増加する。そして、受信間隔が0であれば位相差も0となる。したがって、受信間隔とその受信間隔において周波数偏差により生じる位相差との間は正比例関係にある。
【0028】
本実施例では、複数の受信間隔τnに対するそれぞれの位相差候補θn(m)同士の組合せを形成する。図1には、受信間隔τ1に対する位相差候補1c(位相差候補θ1(2))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2e(位相差候補θ2(−2))との組合せが例示されている。また、受信間隔τ1に対する位相差候補1a(位相差候補θ1(0))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2b(位相差候補θ2(1))との組合せが例示されている。また、受信間隔τ1に対する位相差候補1e(位相差候補θ1(−2))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2c(位相差候補θ2(2))との組合せが例示されている。他の位相差候補の組合せも同様に形成される。
【0029】
このように形成された位相差候補の組合せの中から、上述した受信間隔と位相差との関係を満たすものが選択される。ある実施例では、位相差候補の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せが選択される。図1には、位相差候補の組合せ1c及び2eを結ぶ近似直線3a、位相差候補の組合せ1a及び2bを結ぶ近似直線3b、位相差候補の組合せ1e及び2cを結ぶ近似直線3cが例示されている。これらの位相差候補の組合せのうち、位相差候補の組合せ1a及び2bを結ぶ近似直線3bの切片が原点に最も近いため、位相差候補の組合せ1a及び2bが選択される。
【0030】
以下の説明において、選択された位相差候補の組合せを(m^1,m^2,…)と表記することがある。m^n(n=1、2、…)は、選択された位相差候補の組合せの中に含まれる受信間隔τnに対する位相差候補を示す候補番号である。
【0031】
他の実施例では、位相差候補の各組合せについて、各組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との関係の近似直線をそれぞれ定めたときの最小二乗誤差が算出される。そして、位相差候補の各組合せのうち最小二乗誤差が最小となる組合せが選択される。他の実施例では、位相差候補の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との比の差が最も小さい組合せが選択される。
【0032】
このようにして選択された組合せに含まれる位相差候補は、各受信間隔τnにおいて周波数偏差により生じる実際の位相差に最も近いことが期待される。その後、選択された組合せのうちの受信間隔τnにおいて定めた位相差候補θn(m^n)の値を、受信間隔τnで除算することによって周波数偏差が算出される。
【0033】
以上のように本実施例では、異なる受信間隔のリファレンス信号間の相関に基づいて各受信間隔に対する位相差候補を定め、異なる受信間隔に対する位相差候補同士の関係に基づいて位相差候補の中から各受信間隔における実際の位相差を選択する。したがって、位相差候補の範囲を広げることによって、ある受信間隔のリファレンス信号間の相関から推定された位相差と実際の位相差とが1回転以上異なっても実際の位相差を推定できる。このため、推定可能な周波数偏差の範囲が拡大される。
【0034】
<2.第1実施例>
<2.1.受信装置のハードウエア構成例>
続いて、上述の周波数偏差の算出方法を適用する受信装置の実施例を説明する。本明細書では、受信装置の一例として移動通信システムで使用される基地局装置の例を挙げる。しかしながら、以下の説明は、本明細書で説明される周波数偏差の算出方法が基地局装置に限って適用されることを意図するものではない。本明細書で説明される周波数偏差の算出方法は、他の種類の受信装置に適用することが可能である。
【0035】
図2は、基地局装置のハードウエア構成例を示す図である。基地局装置10は、例えば、3GPP(Third Generation Partnership Project)において標準化作業が行われるLTE(Long Term Evolution)方式の移動通信システムで使用される基地局装置であってよい。基地局装置10は、制御回路11と、ベースバンド処理回路12と、無線インタフェース回路13と、ネットワークインタフェース14を備える。制御回路11は、基地局装置10の全体の動作を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)15及びメモリ16を備える。CPU15は、メモリ16に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、基地局装置10の動作の為の各種処理を行う。
【0036】
ベースバンド処理回路12は、移動局装置との間で送受信される信号のベースバンド処理を実行する。さらにベースバンド処理回路12は、以下に説明する周波数偏差の算出処理を実行する。例えば、ベースバンド処理回路12は、DSP(Digital Signal Processor)17と、DSP17によって実行されるファームウエアが格納されるメモリ18を備えていてよい。DSP17は、メモリ18に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、ベースバンド処理及び周波数偏差の算出処理を実行する。
【0037】
他の実施例では、ベースバンド処理回路12は、ベースバンド処理のためのLSI(large scale integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等の論理回路を備えていてもよい。以下に説明する周波数偏差の算出処理は、これらの論理回路によって実行されてもよい。
【0038】
無線インタフェース回路13は、基地局装置10と移動局装置との間の無線通信のためのインタフェース回路である。ネットワークインタフェース14は、基地局装置10と他の基地局装置との間、及び基地局装置10と上位ノードと間の通信のための通信インタフェース回路である。
【0039】
<2.2.受信装置の機能構成>
続いて、基地局装置10において移動局装置からの無線信号を受信する受信回路について説明する。図3は、受信回路の第1例の機能ブロック図である。なお、図3は、以下の説明に関係する機能を中心として示している。受信回路20は、図示の構成要素以外の他の構成要素を含んでいてよい。受信回路20による信号処理は、ベースバンド処理回路12のDSP17がメモリ18に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより行われる。他の実施例では、受信回路20による信号処理を、ベースバンド処理回路12が備えるLSI、ASIC又はFPGAといった論理回路で行ってもよい。
【0040】
受信回路20は、高速フーリエ変換部21と、信号分離部22a及び22bと、第1チャネル受信部23aと、第2チャネル受信部23bと、拡大範囲偏差推定部24を備える。添付する図面において高速フーリエ変換を「FFT」と表記することがある。高速フーリエ変換部21は、高速フーリエ変換によって無線インタフェース回路13から受信したベースバンド信号を周波数領域信号に変換する。高速フーリエ変換部21は、周波数領域信号をチャネル毎に分離し、第1チャネルの信号を分離部22aへ入力し、第2チャネルの信号を分離部22bへ入力する。ある実施例は、第1チャネル及び第2チャネルとして、LTE方式におけるPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)及びPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)を使用する。
【0041】
信号分離部22aは、第1チャネルの信号をユーザ毎に分離し、各ユーザの信号をさらにデータとリファレンス信号に分離する。信号分離部22aは、分離された信号を第1チャネル受信部23aへ出力する。同様に、信号分離部22bは、第2チャネルの信号をユーザ毎に分離し、各ユーザの信号をデータとリファレンス信号に分離する。信号分離部22bは、分離された信号を第2チャネル受信部23bへ出力する。なお、信号分離部22a及び信号分離部22bの信号処理は、時分割処理によって同一回路で行ってもよい。第1チャネル受信部23a及び第2チャネル受信部23bの信号処理も、時分割処理によって同一回路で行ってもよい。
【0042】
第1チャネル受信部23aは、偏差推定部30aと、補償部31aと、チャネル推定部32aと、検波部33aと、復号部34aを備える。偏差推定部30aは、第1チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、第1チャネルのリファレンス信号の受信間隔における位相差を推定する。偏差推定部30aは、推定した位相差を拡大偏差推定部24に出力する。
【0043】
補償部31aは、上記「1.周波数偏差算出方法」で説明した周波数偏差の算出方法により拡大偏差推定部24が推定した受信信号の周波数偏差に従って、第1チャネルのデータの周波数偏差を補償する。チャネル推定部32aは、第1チャネルのリファレンス信号に基づいてチャネル推定を行う。検波部33aは、チャネル推定部32aにより推定された伝搬路推定値に従って第1チャネルのデータのチャネル等化を行い、データの復調処理を行う。復号部34aは、復調されたデータを復号する。
【0044】
第2チャネル受信部23bは、第1チャネル受信部23aと同様の構成を有しており、第2チャネルのリファレンス信号による周波数偏差推定及びチャネル推定と、第2チャネルのデータに対する周波数偏差補償、チャネル等化、復調及び復号を行う。
【0045】
拡大範囲偏差推定部24は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔における位相差に基づいて、上記「1.周波数偏差算出方法」で説明した周波数偏差の算出処理を行う。以下の説明において「1.周波数偏差算出方法」に記載した算出処理を、「拡大範囲偏差推定」と表記することがある。
【0046】
また、第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔をそれぞれτ1及びτ2とし、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差をそれぞれθ1及びθ2であるとする。第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔τ1及びτ2の長さは互いに異なっている。
【0047】
図4は、拡大範囲偏差推定部24の第1例の機能ブロック図である。拡大範囲偏差推定部24は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差θ1及びθ2に基づいて、拡大範囲偏差推定を行う。拡大範囲偏差推定部24は、位相差候補決定部40a及び40bと、組合せ選択部41と、周波数偏差算出部42を備える。
【0048】
位相差候補決定部40aは、偏差推定部30aが推定した位相差θ1に基づいて、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)を決定する。同様に位相差候補決定部40b、偏差推定部30bが推定した位相差θ2に基づいて、受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)を決定する。以下の説明では、整数mの範囲として{−M、−(M−1)、…−1、0、1、…M−1、M}を使用する。
【0049】
組合せ選択部41は、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)と受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)との組合せを形成し、形成した組合せの中から、受信間隔τ1及びτ2における受信信号の位相差を示す組合せ(m^1,m^2)を選択する。組合せ選択部41は、評価値算出部43と、評価値選択部44と、位相差選択部45を備える。
【0050】
評価値算出部43は、位相差候補θ1(m)と位相差候補θ2(m)との組合せのそれぞれについて、位相差候補の組合せが受信間隔τ1及びτ2において受信信号に生じる実際の位相差にどれ位近いかを推定する評価値を算出する。例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信間隔と位相差候補との関係の近似直線を定めたときの近似直線の切片の値でよい。また例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との関係の近似直線を定めたときの最小二乗誤差であってよい。例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補間の受信間隔と位相差候補との比の差であってもよい。
【0051】
評価値選択部44は、各組合せについて算出された評価値のうち、最良の評価値、すなわち実際の位相差に最も近い位相差候補の組合せについて算出された評価値を選択する。位相差選択部45は、最良の評価値が得られた位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0052】
周波数偏差算出部42は、位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することにより、単位時間当たりの位相回転量(θ1(m^1)/τ1)を算出し、周波数偏差として補償部31a及び31bへ出力する。他の実施例では周波数偏差算出部42は、周波数偏差そのものを算出して出力してもよい。以下の説明では、単位時間当たりの位相回転量を「周波数偏差」と呼ぶ。
【0053】
<2.3.受信装置の処理>
続いて、受信回路20の処理を説明する。図5は、受信回路20の処理の一例の説明図である。以下、図5を参照して説明する一連の処理は複数の手順を含む方法と解釈してよい。この場合に「オペレーション」を「ステップ」と読み替えてもよい。図7及び図11の場合も同様である。
【0054】
オペレーションAAにおいて偏差推定部30aは、第1チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、受信間隔τ1における受信信号の位相差θ1を推定する。偏差推定部30bは、第2チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、受信間隔τ2における受信信号の位相差θ2を推定する。
【0055】
オペレーションABにおいて位相差候補決定部40a及び40bは、偏差推定部30a及び偏差推定部30bが推定した位相差θ1及びθ2に基づいて、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及びθ2(m)を決定する。オペレーションACにおいて組合せ選択部41は、位相差候補θ1(m)と位相差候補θ2(m)との組合せの中から、受信間隔τ1及びτ2における受信信号の位相差を示す組合せ(m^1,m^2)を選択する。
【0056】
オペレーションADにおいて周波数偏差算出部42は、選択された位相差候補の組合せ(m^1,m^2)に含まれる、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0057】
<2.4.実施例の効果>
上述の通り、単一の受信間隔τのリファレンス信号に基づいて推定された位相回転量の推定値は、回転方向や一回転以上の回転について任意性が残るため、推定可能は周波数偏差Δfの範囲は-1/2τ<Δf<1/2τに制限される。本実施例によれば、異なる複数の受信間隔のリファレンス信号に基づいて各受信間隔における複数の位相差候補を定め、これら位相差候補の中から各受信間隔における実際の位相差を選択することができる。このため、各受信間隔においてリファレンス信号間の相関から推定された位相差と実際の位相差とが1回転以上異なっても実際の位相差を推定できる。このため、推定可能な周波数偏差の範囲が拡大される。
【0058】
例えば、周波数偏差の推定にPUSCH及びPUCCHのリファレンス信号を用いる場合を想定する。PUSCH及びPUCCHのリファレンス信号の信号間隔はそれぞれ500μ秒及び285.417μ秒である。このためPUSCHのリファレンス信号単独で推定可能な周波数偏差は±1000Hzであり、PUCCHのリファレンス信号単独で推定可能は周波数偏差は約±1751Hzである。時速350km/hrでユーザが移動する場合の周波数偏差は、2GHz帯及び3.6GHz帯で、それぞれ約1300Hz及び約2300Hzにも達するため、状況によって周波数偏差の推定範囲が不足する恐れがある。
【0059】
本実施例の周波数偏差の算出方法によれば、例えばmの範囲を{−1,0,1}とすれば、推定可能な周波数偏差の範囲は、PUSCHのリファレンス信号で推定可能な周波数偏差の3倍にあたる±3000Hzまで拡大される。同様にmの範囲を{−2,−1,0,1,2}とすれば、推定可能な周波数偏差の範囲は±5000Hzまで拡大される。このように、mの範囲を拡大することよって推定可能範囲を増加することができるので、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することが可能である。
【0060】
なお、上記の第1実施例では、異なる受信間隔τ1及びτ2のリファレンス信号として、それぞれ異なるチャネルである第1チャネル及び第2チャネルで送信されるリファレンス信号を使用した。これに代えて、同一チャネル上でおいて異なる信号間隔で送信されるリファレンス信号を使用してもよい。以下に説明する他の実施例においても同様である。また、上記の第1実施例では、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号を使用したが、受信間隔及びリファレンス信号の種類の数は3種類以上でもよい。以下に説明する第3実施例〜第7実施例においても同様である。
【0061】
<3.第2実施例>
続いて、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合のより具体的な構成の一例を説明する。本実施例では、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及びθ2(m)の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せが選択され、選択された組合せに含まれる位相差候補から周波数偏差が算出される。
【0062】
受信間隔τ1に対する複数の位相差候補θ1(m)のうちのいずれかを指定する候補番号をm1とし、受信間隔τ2に対する複数の位相差候補θ2(m)のうちのいずれかを指定する候補番号をm2と表記する。位相差候補θ1(m1)及びθ2(m2)の組合せについて、位相差候補θ1(m1)及びθ2(m2)を通るような受信間隔と位相差候補との関係の近似直線は、次式(7)で与えられる。
【0063】
【数7】
【0064】
次式(7)は、近似直線の切片を示す。したがって、切片が原点に最も近くなる組合せ(m^1,m^2)は、次式(8)により与えられる。
【0065】
【数8】
【0066】
上式(8)に従って位相差候補の組合せを選択する拡大範囲偏差推定部24の機能ブロックの例を図6に示す。図6は、mの範囲が{−1,0,1}の場合の構成例であるが、必要に応じてmの範囲を増加してもよい。
【0067】
位相差候補決定部40aは、減算器50a及び加算器50bを備える。位相差候補決定部40bは、減算器50c及び加算器50dを備える。減算器50aは、偏差推定部30aが推定した位相差θ1から2πを引くことにより、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(−1)を算出する。加算器50bは、位相差θ1に2πを加えることにより位相差候補θ1(1)を算出する。位相差候補決定部40aは、位相差候補θ1(0)である位相差θ1と、位相差候補θ1(−1)及び位相差候補θ1(1)を出力する。同様に位相差候補決定部40bは、位相差候補θ2(0)、位相差候補θ2(−1)及び位相差候補θ2(1)を出力する。
【0068】
評価値算出部43は、乗算器51a〜51fと、減算器52a〜52iと、絶対値演算器53a〜53iを備え、それぞれの位相差候補の組合せについて評価値v=|τ1θ2(m2)−τ2θ1(m1)|を算出する。評価値選択部44は、評価値算出部43が算出した評価値のうちの最小値を選択する最小値選択部54を備える。位相差選択部45は、評価値算出部が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せ(m^1,m^2)に含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0069】
本実施例によれば、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定する場合において、推定可能範囲を増加することが可能となり、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することができる。
【0070】
<4.第3実施例>
続いて、2つ又はそれより多い異なる受信間隔のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合のより具体的な構成の一例を説明する。本実施例では、異なる複数の受信間隔に対する位相差候補同士の組合せのうち、各組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との近似直線をそれぞれ定めたときの最小二乗誤差が最小となる組合せが選択される。そして、選択された組合せに含まれる位相差候補から周波数偏差が算出される。以下、N個のチャネル(Nは2以上の整数)においてそれぞれ異なるN個の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合について説明する。
【0071】
位相差候補θ1(m)のいずれかを指定する候補番号、位相差候補θ2(m)のいずれかを指定する候補番号、…位相差候補θN(m)のいずれかを指定する候補番号を、それぞれm1、m2、…mNと表記する。位相差候補θ1(m1)、θ2(m2)、…及びθN(mN)の組合せに基づいて最小二乗法により算出される切片0の近似直線は、次式(9)により与えられる。
【0072】
【数9】
【0073】
上式(9)の近似直線に対する最小二乗誤差は次式(10)により与えられる。
【0074】
【数10】
【0075】
このため、本実施例では、評価値算出部43は、複数の位相差候補の組合せのそれぞれについて最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)を評価値として算出する。評価値選択部44は、評価値算出部43が算出した最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)のうち最小の評価値を選択する。
【0076】
図7は、評価値の算出方法の一例の説明図である。オペレーションBAにおいて評価値算出部43は、位相差候補θ1(m)のいずれかを指定する変数m1、位相差候補θ2(m)のいずれかを指定する変数m2、…位相差候補θN(m)のいずれかを指定する変数mNの値を「−M」に初期化する。オペレーションBBにおいて評価値算出部43は、上式(9)に示す近似直線を算出する。オペレーションBCにおいて評価値算出部43は、最小二乗誤差を算出する変数の値を「0」に初期化する。
【0077】
オペレーションBDにおいて評価値算出部43は、ループ変数nの値を「1」に初期化する。オペレーションBEにおいて評価値算出部43は、最小二乗誤差を算出する変数Errに、次式(11)の計算値を累積する。
【0078】
【数11】
【0079】
オペレーションBFにおいて評価値算出部43は、ループ変数nがN以下であるか否かを判断する。ループ変数nがN以下である場合には(オペレーションBF:Y)処理はオペレーションBEへ戻る。ループ変数nがNより大きい場合には(オペレーションBF:N)処理はオペレーションBEへ戻る。変数1〜NについてオペレーションBEを繰り返すことによって、変数Errには1つの位相差候補の組合せについての最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)が格納される。
【0080】
オペレーションBGにおいて評価値算出部43は、1つの位相差候補の組合せについて算出した最小二乗誤差Errを出力する。オペレーションBHNにおいて評価値算出部43は、変数mNがM以下であるか否かを判断する。変数mNがM以下である場合には(オペレーションBHN:Y)処理はオペレーションBBに戻る。変数mNがMより大きい場合には(オペレーションBHN:N)評価値算出部43は、次の変数mN−1がM以下であるか否かを判断する分岐処理を行う。以下、変数mN−1、mN−2、…m2、m1の順に、オペレーションBH2及びBH1で変数m2及びm1がM以下である否かを判定するまで、オペレーションBHNと同様の分岐処理を繰り返す。
【0081】
本実施例によれば、3つ以上の異なる受信間隔でそれぞれ受信されるリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定する場合において、推定可能範囲を増加することが可能となり、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することができる。
【0082】
<5.第4実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のうち、最後に受信されたリファレンス信号に基づいて推定した位相差から定められた位相差候補を選択して、周波数偏差を算出する。
【0083】
図8は、拡大範囲偏差推定部24の第3例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。拡大範囲偏差推定部24は、ラッチ回路50a及び50bと、最終推定偏差記憶部51を備える。組合せ選択部41は、位相差選択部52と、受信間隔選択部53を備える。
【0084】
ラッチ回路50a及び50bは、偏差推定部30a及び30bから最後に受信した位相差θ1及びθ2をそれぞれラッチする。最終推定偏差記憶部51は、位相差θ1及びθ2の何れが最後に受信されたかを記憶する。すなわち最終推定偏差記憶部51は、第1チャネル及び第2チャネルでそれぞれ受信されるリファレンス信号のうち最後に受信されたリファレンス信号に基づいて推定された位相差が、位相差θ1及びθ2の何れであるかを記憶する。
【0085】
位相差選択部52は、最終推定偏差記憶部51を参照することにより位相差θ1及びθ2の何れが最後に受信されたかを判断する。位相差選択部52は、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及び位相差候補θ2(m)のうち、最後に受信された位相差から定めた位相差候補を選択して位相差選択部45へ出力する。位相差選択部45は、位相差選択部52が選択した位相差候補のうち、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれているものを選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0086】
受信間隔選択部53は、最終推定偏差記憶部51を参照することにより第1チャネル及び第2チャネルのうち、最後にリファレンス信号を受信したのはいずれのチャネルであるかを判断する。受信間隔選択部53は、受信間隔τ1及びτ2うち最後に受信したリファレンス信号の受信間隔を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。周波数偏差算出部42は、位相差選択部45が選択した位相差候補を、受信間隔選択部53が選択した受信間隔で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0087】
本実施例によれば、最新のリファレンス信号に基づいて推定された周波数偏差を用いて周波数偏差の補償をすることができるため、周波数偏差の変動に対する追従性能を向上することが可能となる。なお、第4実施例は、上述の第2実施例及び第3実施例と組み合わせることが可能である。
【0088】
<6.第5実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のそれぞれから算出した周波数偏差の平均値を補償部31a及び31bへ出力する。
【0089】
図9は、拡大範囲偏差推定部24の第4例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。組合せ選択部41は、位相差選択部60a及び60bを備える。周波数偏差算出部42は、除算器61a及び61bと、平均値算出器62を備える。
【0090】
位相差選択部60aは、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して除算器61aへ出力する。位相差選択部60bは、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m^2)を選択して除算器61bへ出力する。
【0091】
除算器60aは、位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することにより、周波数偏差(θ1(m^1)/τ1)を算出する。除算器60bは、位相差候補θ2(m^2)を受信間隔τ2で除算することにより、周波数偏差(θ2(m^2)/τ2)を算出する。平均値算出器62は、(θ1(m^1)/τ1)及び(θ2(m^2)/τ2)の平均値を算出して、周波数偏差として補償部31a及び31bへ出力する。
【0092】
本実施例によれば、複数のリファレンス信号に基づいて推定された周波数偏差を平均することにより、周波数偏差の推定精度を高めることが可能となる。なお、第5実施例は、上述の第2実施例及び第3実施例と組み合わせることが可能である。
【0093】
<7.第6実施例>
<7.1.受信装置の機能構成>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、ユーザ毎に拡大範囲偏差推定を行うか否かを動的に切り替える。図10は、拡大範囲偏差推定部24の第5例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。
【0094】
拡大範囲偏差推定部24は、偏差算出部70と、遅延素子71と、判定部72と、選択部73を備える。偏差算出部70は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差θ1及びθ2を、それぞれ受信間隔τ1及びτ2で除算することによって算出される周波数偏差のいずれか一方又はこれらの平均値を、選択部73に出力する。
【0095】
遅延素子71は、拡大範囲偏差推定部24が補償部31a及び31bへ前回出力した周波数偏差を遅延した後に判定部72へ入力する。判定部72は、前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超過するか否かを判定する。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超える場合には、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を有効にする。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超えない場合には、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を無効にする。また、判定部72は、一定期間ΔTの間に亘って拡大範囲偏差推定が無効である場合にも拡大範囲偏差推定を有効にする。
【0096】
拡大範囲偏差推定が有効である場合には、選択部73は、周波数偏差算出部42により算出された周波数偏差を補償部31a及び31bへ出力する。拡大範囲偏差推定が無効である場合には、選択部73は、偏差算出部70により算出された周波数偏差を補償部31a及び31bへ出力する。
【0097】
<7.2.受信装置の処理>
図11は、拡大範囲偏差推定部24の処理の一例の説明図である。オペレーションCAにおいて判定部72は、前回に拡大範囲偏差推定を実行してからの経過時間tを算出する。オペレーションCBにおいて判定部72は、前回に拡大範囲偏差推定を実行してから一定期間ΔTが経過したか否かを判定する。一定期間ΔTが経過した場合には(オペレーションCB:N)処理はオペレーションCEへ進む。一定期間ΔTが経過しない場合には(オペレーションCB:Y)処理はオペレーションCCへ進む。
【0098】
オペレーションCCにおいて判定部72は、前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超過するか否かを判定する。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超える場合には(オペレーションCC:Y)処理はオペレーションCEへ進む。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超えない場合には(オペレーションCC:Y)処理はオペレーションCDに進む。
【0099】
オペレーションCDにおいて判定部72は、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を無効にする。その結果、偏差算出部70により算出された周波数偏差が補償部31a及び31bへ出力される。その後処理はオペレーションCAに戻る。オペレーションCEにおいて判定部72は、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を有効にする。その結果、周波数偏差算出部42により算出された周波数偏差が補償部31a及び31bへ出力される。判定部72は、拡大範囲偏差推定を実行した時刻として現在時刻を記憶して、処理をオペレーションCAに戻す。
【0100】
<7.3.実施例の効果>
拡大範囲偏差推定を実行した場合は、位相差候補を誤って選択することによる推定誤りのために特性が劣化するおそれもあり、また処理量が増加する。本実施例によれば、ユーザ毎に拡大範囲偏差推定を実行するか否かを動的に切り替えることができるため、拡大範囲偏差推定を実施する場合を限定することにより、推定誤りの可能性や処理量を低減することができる。なお、第6実施例は、上述の第1実施例〜第5実施例と組み合わせることが可能である。
【0101】
<8.第7実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のうち、受信品質がより良いリファレンス信号に基づいて推定した位相差から定められた位相差候補を選択して、周波数偏差を算出する。
【0102】
図12は、受信回路の第2例の機能ブロック図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には図3で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。チャネル推定部32a及び32bは、それぞれ第1チャネル及び第2チャネルで受信したリファレンス信号から推定される伝搬路推定値に基づいて、各チャネルのSIR(Signal to Interference Ratio)を算出する。チャネル推定部32a及び32bは、算出したSIRを拡大範囲偏差推定部24へ入力する。
【0103】
図13は、拡大範囲偏差推定部24の第6例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。拡大範囲偏差推定部24は比較部80を備える。組合せ選択部41は、位相差選択部81と、受信間隔選択部82を備える。
【0104】
比較部80は、第1チャネル及び第2チャネルの受信品質を比較し、比較結果を位相差選択部81及び受信間隔選択部82に出力する。位相差選択部81は、位相差候補θ1(m)及び位相差候補θ2(m)のうち、受信品質がより良いチャネルで受信されたリファレンス信号から推定された位相差から定めた位相差候補を選択して位相差選択部45へ出力する。位相差選択部45は、位相差選択部52が選択した位相差候補のうち、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれているものを選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0105】
受信間隔選択部82は、受信間隔τ1及びτ2うち受信品質がより良いチャネルでリファレンス信号を受信する受信間隔を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。周波数偏差算出部42は、位相差選択部45が選択した位相差候補を、受信間隔選択部53が選択した受信間隔で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0106】
本実施例によれば、より良い受信品質のリファレンス信号に基づいて周波数偏差を推定するため、周波数偏差の推定精度を高めることが可能となる。なお、第7実施例では受信品質を示す指標値としてSIRを使用したが、他の実施例では、位相差候補を選択するために受信品質を示す他の種類の指標値を使用してもよい。また、第7実施例は、上述の第2実施例、第3実施例及び第5実施例と組み合わせることが可能である。
【0107】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行する制御部を備えることを特徴とする受信装置。
(付記2)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線が、受信間隔と周波数偏差による位相差との関係の直線に最も近い組合せを選択することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記3)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、前記近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せを選択することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
(付記4)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、原点を通るように前記近似直線を定めたときの最小二乗誤差が最小となる組合せを選択することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
(付記5)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との比の差が最も小さい組合せを、各受信間隔における位相差を示す組合せとして選択する処理を実行することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記6)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、最後に受信したリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記7)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、受信品質に基づき選択されるリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記8)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる複数の位相差候補に基づいて推定される周波数偏差の平均値を、受信信号の周波数偏差として算出する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記9)
前記制御部は、受信信号について以前に推定された周波数偏差の大きさに応じて、前記候補決定処理、前記選択処理及び前記推定処理を実行するか否かを切り替える処理を実行することを特徴とする付記1〜8のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記10)
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する、
ことを特徴とする周波数偏差算出方法。
(付記11)
受信装置の制御部に、
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0108】
20 受信回路
24 拡大範囲偏差推定部24
40a、40b 位相差候補決定部
41 組合せ選択部
42 周波数偏差算出部
43 評価値算出部
44 評価値選択部
45 位相差選択部
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、受信信号に生じる周波数偏差の推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で移動する移動局装置と基地局装置との間に遮蔽物がない場合には、電波の伝搬環境がいわゆるライスフェージング環境となる。この場合には受信信号に対するドップラー効果の影響が周波数偏差となって現れ、通信品質に大きく影響を与えることが知られている。
【0003】
受信信号の周波数を推定する方法として、異なる受信タイミングで受信されたリファレンス信号間の相関を算出することにより、受信間隔における位相回転量すなわち位相差を推定する方法が知られている。時刻kにおける送信信号をsk、伝搬路による歪みをhk、周波数偏差をΔf、白色ガウス雑音をnkとすると、受信信号は次式(1)により与えられる。
【0004】
【数1】
【0005】
搬送波を除去すると周波数偏差分が残るため、上記の位相回転が式中に現れる。このとき、時刻kの受信信号rkと時刻k+τの受信信号rk+τの相関z(k,τ)は次式(2)のように表される。
【0006】
【数2】
【0007】
伝搬路がτの間不変であり、送信信号skとsk+τが同一であると仮定し、相関z(k,τ)の平均について考えると、2項目以降は白色ガウス雑音の性質から平均が0となることから、次式(3)が得られる。
【0008】
【数3】
【0009】
ここまでの結果から周波数偏差Δfは、次式(4)のように推定できる。なお、送信信号skとsk+τが既知の場合ににも、簡単な数式変形によって同様に周波数偏差Δfを推定できる。
【0010】
【数4】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP(Third Generation Partnership Project) 寄書, R4-060149, “Discussion on AFC problem under high speed train environment”, NTT DoCoMo, USA, February 13-17, 2006.
【非特許文献2】P. Moose, “A Technique for Orthogonal Frequency Division Multiplexing Frequency Offset Correction”, IEEE Trans. Commun., vol. 42, no. 10, October. 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
逆正接関数の値域が−π<tan-1x<πであることから、上記の推定方法によると、周波数偏差Δfの推定可能な範囲が-1/2τ<Δf<1/2τに制限される。したがって、受信間隔τで受信されたリファレンス信号間の位相回転量の推定値がθであった場合、期間τの間にゆっくりとθだけ回転したのか、より高速にθ+2π回転したのかを判別することはできない。
【0013】
開示の装置及び方法は、推定可能な周波数偏差の範囲を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
装置の一観点によれば、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行する制御部を備える受信装置が与えられる。
【0015】
方法の一観点によれば、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する周波数偏差算出方法が与えられる。
【0016】
コンピュータプログラムの一観点によれば、受信回路が備える制御部に、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、推定された位相差に基づいて、複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される位相差候補の複数の組合せの中から、複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理を実行させるコンピュータプログラムが与えられる。
【発明の効果】
【0017】
本件開示の装置又は方法によれば、推定可能な周波数偏差の範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】周波数偏差の算出方法の説明図である。
【図2】基地局装置のハードウエア構成例を示す図である。
【図3】受信回路の第1例の機能ブロック図である。
【図4】拡大範囲偏差推定部の第1例の機能ブロック図である。
【図5】受信回路の処理の一例の説明図である。
【図6】拡大範囲偏差推定部の第2例の機能ブロック図である。
【図7】評価値の算出方法の一例の説明図である。
【図8】拡大範囲偏差推定部の第3例の機能ブロック図である。
【図9】拡大範囲偏差推定部の第4例の機能ブロック図である。
【図10】拡大範囲偏差推定部の第5例の機能ブロック図である。
【図11】拡大範囲偏差推定部の処理の一例の説明図である。
【図12】受信回路の第2例の機能ブロック図である。
【図13】拡大範囲偏差推定部の第6例の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.周波数偏差算出方法>
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。初めに、図1を参照して周波数偏差の算出方法を説明する。図1は、異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号について、各受信間隔と、それぞれの受信間隔で生じるリファレンス信号の位相回転量との関係を示す。なお、以下の説明においてある受信間隔で受信されるリファレンス信号間に生じる位相回転量を「位相差」と表記することがある。
【0020】
参照符号1aは、受信間隔τ1で受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された受信間隔τ1における位相差θ1を示す。参照符号2aは、受信間隔τ1より長い受信間隔τ2で受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された受信間隔τ2における位相差θ2を示す。以下の説明において、添字「n」をリファレンス信号が受信される受信間隔を識別する番号として使用する。受信間隔τnで受信されたリファレンス信号間の相関を算出することによって推定された位相差をθnと表記する。
【0021】
位相差θnには、回転方向や一回転以上の回転について任意性が残る。このため、本実施例では、位相差の候補θn(m)が次式(5)のように定められる。
【0022】
【数5】
【0023】
以下の説明において、位相差の候補を「位相差候補」と表記することがある。また、受信間隔τnにおいて推定された位相差から定めた位相差候補を、「受信間隔τnに対する位相差候補」と表現することがある。図1に示す例では、参照符号1a〜1eが受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)を示す。位相差候補1a、1b、1c、1d及び1eは、それぞれθ1(0)、θ1(1)、θ1(2)、θ1(−1)及びθ1(−2)に対応する。同様に、参照符号2b〜2eが受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)を示す。位相差候補2a、2b、2c、2d及び2eは、それぞれθ2(0)、θ2(1)、θ2(2)、θ2(−1)及びθ2(−2)に対応する。
【0024】
mは、任意の整数であるが、mの範囲に応じて推定可能な周波数偏差の範囲が定められる。このため、所望の範囲に応じてmの範囲が決定される。例えば推定したい周波数偏差の範囲が±Δfmaxである場合には、mの範囲は、少なくとも次式(6)の条件を満たすように定められる。各受信間隔τn毎に定めた複数の位相差候補同士は整数mにより識別できるので、以下の説明において整数mを「候補番号」と呼ぶことがある。
【0025】
【数6】
【0026】
例えば、τmaxが500μ秒でありΔfmaxが2000Hzである場合には、上式(6)により候補番号mの範囲は、−1≦m≦1となる。この場合、候補番号mの範囲は少なくとも−1、0及び1を含む。
【0027】
次に、各受信間隔τnに対する位相差候補θn(m)の中から、各受信間隔τnにおいて受信信号に生じる位相差に最も近い候補を選択する。周波数偏差が一定の場合には受信間隔に比例して位相差が増加する。そして、受信間隔が0であれば位相差も0となる。したがって、受信間隔とその受信間隔において周波数偏差により生じる位相差との間は正比例関係にある。
【0028】
本実施例では、複数の受信間隔τnに対するそれぞれの位相差候補θn(m)同士の組合せを形成する。図1には、受信間隔τ1に対する位相差候補1c(位相差候補θ1(2))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2e(位相差候補θ2(−2))との組合せが例示されている。また、受信間隔τ1に対する位相差候補1a(位相差候補θ1(0))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2b(位相差候補θ2(1))との組合せが例示されている。また、受信間隔τ1に対する位相差候補1e(位相差候補θ1(−2))と、受信間隔τ2に対する位相差候補2c(位相差候補θ2(2))との組合せが例示されている。他の位相差候補の組合せも同様に形成される。
【0029】
このように形成された位相差候補の組合せの中から、上述した受信間隔と位相差との関係を満たすものが選択される。ある実施例では、位相差候補の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せが選択される。図1には、位相差候補の組合せ1c及び2eを結ぶ近似直線3a、位相差候補の組合せ1a及び2bを結ぶ近似直線3b、位相差候補の組合せ1e及び2cを結ぶ近似直線3cが例示されている。これらの位相差候補の組合せのうち、位相差候補の組合せ1a及び2bを結ぶ近似直線3bの切片が原点に最も近いため、位相差候補の組合せ1a及び2bが選択される。
【0030】
以下の説明において、選択された位相差候補の組合せを(m^1,m^2,…)と表記することがある。m^n(n=1、2、…)は、選択された位相差候補の組合せの中に含まれる受信間隔τnに対する位相差候補を示す候補番号である。
【0031】
他の実施例では、位相差候補の各組合せについて、各組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との関係の近似直線をそれぞれ定めたときの最小二乗誤差が算出される。そして、位相差候補の各組合せのうち最小二乗誤差が最小となる組合せが選択される。他の実施例では、位相差候補の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との比の差が最も小さい組合せが選択される。
【0032】
このようにして選択された組合せに含まれる位相差候補は、各受信間隔τnにおいて周波数偏差により生じる実際の位相差に最も近いことが期待される。その後、選択された組合せのうちの受信間隔τnにおいて定めた位相差候補θn(m^n)の値を、受信間隔τnで除算することによって周波数偏差が算出される。
【0033】
以上のように本実施例では、異なる受信間隔のリファレンス信号間の相関に基づいて各受信間隔に対する位相差候補を定め、異なる受信間隔に対する位相差候補同士の関係に基づいて位相差候補の中から各受信間隔における実際の位相差を選択する。したがって、位相差候補の範囲を広げることによって、ある受信間隔のリファレンス信号間の相関から推定された位相差と実際の位相差とが1回転以上異なっても実際の位相差を推定できる。このため、推定可能な周波数偏差の範囲が拡大される。
【0034】
<2.第1実施例>
<2.1.受信装置のハードウエア構成例>
続いて、上述の周波数偏差の算出方法を適用する受信装置の実施例を説明する。本明細書では、受信装置の一例として移動通信システムで使用される基地局装置の例を挙げる。しかしながら、以下の説明は、本明細書で説明される周波数偏差の算出方法が基地局装置に限って適用されることを意図するものではない。本明細書で説明される周波数偏差の算出方法は、他の種類の受信装置に適用することが可能である。
【0035】
図2は、基地局装置のハードウエア構成例を示す図である。基地局装置10は、例えば、3GPP(Third Generation Partnership Project)において標準化作業が行われるLTE(Long Term Evolution)方式の移動通信システムで使用される基地局装置であってよい。基地局装置10は、制御回路11と、ベースバンド処理回路12と、無線インタフェース回路13と、ネットワークインタフェース14を備える。制御回路11は、基地局装置10の全体の動作を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)15及びメモリ16を備える。CPU15は、メモリ16に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、基地局装置10の動作の為の各種処理を行う。
【0036】
ベースバンド処理回路12は、移動局装置との間で送受信される信号のベースバンド処理を実行する。さらにベースバンド処理回路12は、以下に説明する周波数偏差の算出処理を実行する。例えば、ベースバンド処理回路12は、DSP(Digital Signal Processor)17と、DSP17によって実行されるファームウエアが格納されるメモリ18を備えていてよい。DSP17は、メモリ18に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、ベースバンド処理及び周波数偏差の算出処理を実行する。
【0037】
他の実施例では、ベースバンド処理回路12は、ベースバンド処理のためのLSI(large scale integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等の論理回路を備えていてもよい。以下に説明する周波数偏差の算出処理は、これらの論理回路によって実行されてもよい。
【0038】
無線インタフェース回路13は、基地局装置10と移動局装置との間の無線通信のためのインタフェース回路である。ネットワークインタフェース14は、基地局装置10と他の基地局装置との間、及び基地局装置10と上位ノードと間の通信のための通信インタフェース回路である。
【0039】
<2.2.受信装置の機能構成>
続いて、基地局装置10において移動局装置からの無線信号を受信する受信回路について説明する。図3は、受信回路の第1例の機能ブロック図である。なお、図3は、以下の説明に関係する機能を中心として示している。受信回路20は、図示の構成要素以外の他の構成要素を含んでいてよい。受信回路20による信号処理は、ベースバンド処理回路12のDSP17がメモリ18に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより行われる。他の実施例では、受信回路20による信号処理を、ベースバンド処理回路12が備えるLSI、ASIC又はFPGAといった論理回路で行ってもよい。
【0040】
受信回路20は、高速フーリエ変換部21と、信号分離部22a及び22bと、第1チャネル受信部23aと、第2チャネル受信部23bと、拡大範囲偏差推定部24を備える。添付する図面において高速フーリエ変換を「FFT」と表記することがある。高速フーリエ変換部21は、高速フーリエ変換によって無線インタフェース回路13から受信したベースバンド信号を周波数領域信号に変換する。高速フーリエ変換部21は、周波数領域信号をチャネル毎に分離し、第1チャネルの信号を分離部22aへ入力し、第2チャネルの信号を分離部22bへ入力する。ある実施例は、第1チャネル及び第2チャネルとして、LTE方式におけるPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)及びPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)を使用する。
【0041】
信号分離部22aは、第1チャネルの信号をユーザ毎に分離し、各ユーザの信号をさらにデータとリファレンス信号に分離する。信号分離部22aは、分離された信号を第1チャネル受信部23aへ出力する。同様に、信号分離部22bは、第2チャネルの信号をユーザ毎に分離し、各ユーザの信号をデータとリファレンス信号に分離する。信号分離部22bは、分離された信号を第2チャネル受信部23bへ出力する。なお、信号分離部22a及び信号分離部22bの信号処理は、時分割処理によって同一回路で行ってもよい。第1チャネル受信部23a及び第2チャネル受信部23bの信号処理も、時分割処理によって同一回路で行ってもよい。
【0042】
第1チャネル受信部23aは、偏差推定部30aと、補償部31aと、チャネル推定部32aと、検波部33aと、復号部34aを備える。偏差推定部30aは、第1チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、第1チャネルのリファレンス信号の受信間隔における位相差を推定する。偏差推定部30aは、推定した位相差を拡大偏差推定部24に出力する。
【0043】
補償部31aは、上記「1.周波数偏差算出方法」で説明した周波数偏差の算出方法により拡大偏差推定部24が推定した受信信号の周波数偏差に従って、第1チャネルのデータの周波数偏差を補償する。チャネル推定部32aは、第1チャネルのリファレンス信号に基づいてチャネル推定を行う。検波部33aは、チャネル推定部32aにより推定された伝搬路推定値に従って第1チャネルのデータのチャネル等化を行い、データの復調処理を行う。復号部34aは、復調されたデータを復号する。
【0044】
第2チャネル受信部23bは、第1チャネル受信部23aと同様の構成を有しており、第2チャネルのリファレンス信号による周波数偏差推定及びチャネル推定と、第2チャネルのデータに対する周波数偏差補償、チャネル等化、復調及び復号を行う。
【0045】
拡大範囲偏差推定部24は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔における位相差に基づいて、上記「1.周波数偏差算出方法」で説明した周波数偏差の算出処理を行う。以下の説明において「1.周波数偏差算出方法」に記載した算出処理を、「拡大範囲偏差推定」と表記することがある。
【0046】
また、第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔をそれぞれτ1及びτ2とし、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差をそれぞれθ1及びθ2であるとする。第1チャネル及び第2チャネルのリファレンス信号の受信間隔τ1及びτ2の長さは互いに異なっている。
【0047】
図4は、拡大範囲偏差推定部24の第1例の機能ブロック図である。拡大範囲偏差推定部24は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差θ1及びθ2に基づいて、拡大範囲偏差推定を行う。拡大範囲偏差推定部24は、位相差候補決定部40a及び40bと、組合せ選択部41と、周波数偏差算出部42を備える。
【0048】
位相差候補決定部40aは、偏差推定部30aが推定した位相差θ1に基づいて、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)を決定する。同様に位相差候補決定部40b、偏差推定部30bが推定した位相差θ2に基づいて、受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)を決定する。以下の説明では、整数mの範囲として{−M、−(M−1)、…−1、0、1、…M−1、M}を使用する。
【0049】
組合せ選択部41は、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m)と受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m)との組合せを形成し、形成した組合せの中から、受信間隔τ1及びτ2における受信信号の位相差を示す組合せ(m^1,m^2)を選択する。組合せ選択部41は、評価値算出部43と、評価値選択部44と、位相差選択部45を備える。
【0050】
評価値算出部43は、位相差候補θ1(m)と位相差候補θ2(m)との組合せのそれぞれについて、位相差候補の組合せが受信間隔τ1及びτ2において受信信号に生じる実際の位相差にどれ位近いかを推定する評価値を算出する。例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信間隔と位相差候補との関係の近似直線を定めたときの近似直線の切片の値でよい。また例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との関係の近似直線を定めたときの最小二乗誤差であってよい。例えば、評価値は、組合せに含まれる位相差候補間の受信間隔と位相差候補との比の差であってもよい。
【0051】
評価値選択部44は、各組合せについて算出された評価値のうち、最良の評価値、すなわち実際の位相差に最も近い位相差候補の組合せについて算出された評価値を選択する。位相差選択部45は、最良の評価値が得られた位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0052】
周波数偏差算出部42は、位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することにより、単位時間当たりの位相回転量(θ1(m^1)/τ1)を算出し、周波数偏差として補償部31a及び31bへ出力する。他の実施例では周波数偏差算出部42は、周波数偏差そのものを算出して出力してもよい。以下の説明では、単位時間当たりの位相回転量を「周波数偏差」と呼ぶ。
【0053】
<2.3.受信装置の処理>
続いて、受信回路20の処理を説明する。図5は、受信回路20の処理の一例の説明図である。以下、図5を参照して説明する一連の処理は複数の手順を含む方法と解釈してよい。この場合に「オペレーション」を「ステップ」と読み替えてもよい。図7及び図11の場合も同様である。
【0054】
オペレーションAAにおいて偏差推定部30aは、第1チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、受信間隔τ1における受信信号の位相差θ1を推定する。偏差推定部30bは、第2チャネルのリファレンス信号間の相関を算出することによって、受信間隔τ2における受信信号の位相差θ2を推定する。
【0055】
オペレーションABにおいて位相差候補決定部40a及び40bは、偏差推定部30a及び偏差推定部30bが推定した位相差θ1及びθ2に基づいて、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及びθ2(m)を決定する。オペレーションACにおいて組合せ選択部41は、位相差候補θ1(m)と位相差候補θ2(m)との組合せの中から、受信間隔τ1及びτ2における受信信号の位相差を示す組合せ(m^1,m^2)を選択する。
【0056】
オペレーションADにおいて周波数偏差算出部42は、選択された位相差候補の組合せ(m^1,m^2)に含まれる、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0057】
<2.4.実施例の効果>
上述の通り、単一の受信間隔τのリファレンス信号に基づいて推定された位相回転量の推定値は、回転方向や一回転以上の回転について任意性が残るため、推定可能は周波数偏差Δfの範囲は-1/2τ<Δf<1/2τに制限される。本実施例によれば、異なる複数の受信間隔のリファレンス信号に基づいて各受信間隔における複数の位相差候補を定め、これら位相差候補の中から各受信間隔における実際の位相差を選択することができる。このため、各受信間隔においてリファレンス信号間の相関から推定された位相差と実際の位相差とが1回転以上異なっても実際の位相差を推定できる。このため、推定可能な周波数偏差の範囲が拡大される。
【0058】
例えば、周波数偏差の推定にPUSCH及びPUCCHのリファレンス信号を用いる場合を想定する。PUSCH及びPUCCHのリファレンス信号の信号間隔はそれぞれ500μ秒及び285.417μ秒である。このためPUSCHのリファレンス信号単独で推定可能な周波数偏差は±1000Hzであり、PUCCHのリファレンス信号単独で推定可能は周波数偏差は約±1751Hzである。時速350km/hrでユーザが移動する場合の周波数偏差は、2GHz帯及び3.6GHz帯で、それぞれ約1300Hz及び約2300Hzにも達するため、状況によって周波数偏差の推定範囲が不足する恐れがある。
【0059】
本実施例の周波数偏差の算出方法によれば、例えばmの範囲を{−1,0,1}とすれば、推定可能な周波数偏差の範囲は、PUSCHのリファレンス信号で推定可能な周波数偏差の3倍にあたる±3000Hzまで拡大される。同様にmの範囲を{−2,−1,0,1,2}とすれば、推定可能な周波数偏差の範囲は±5000Hzまで拡大される。このように、mの範囲を拡大することよって推定可能範囲を増加することができるので、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することが可能である。
【0060】
なお、上記の第1実施例では、異なる受信間隔τ1及びτ2のリファレンス信号として、それぞれ異なるチャネルである第1チャネル及び第2チャネルで送信されるリファレンス信号を使用した。これに代えて、同一チャネル上でおいて異なる信号間隔で送信されるリファレンス信号を使用してもよい。以下に説明する他の実施例においても同様である。また、上記の第1実施例では、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号を使用したが、受信間隔及びリファレンス信号の種類の数は3種類以上でもよい。以下に説明する第3実施例〜第7実施例においても同様である。
【0061】
<3.第2実施例>
続いて、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合のより具体的な構成の一例を説明する。本実施例では、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及びθ2(m)の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せが選択され、選択された組合せに含まれる位相差候補から周波数偏差が算出される。
【0062】
受信間隔τ1に対する複数の位相差候補θ1(m)のうちのいずれかを指定する候補番号をm1とし、受信間隔τ2に対する複数の位相差候補θ2(m)のうちのいずれかを指定する候補番号をm2と表記する。位相差候補θ1(m1)及びθ2(m2)の組合せについて、位相差候補θ1(m1)及びθ2(m2)を通るような受信間隔と位相差候補との関係の近似直線は、次式(7)で与えられる。
【0063】
【数7】
【0064】
次式(7)は、近似直線の切片を示す。したがって、切片が原点に最も近くなる組合せ(m^1,m^2)は、次式(8)により与えられる。
【0065】
【数8】
【0066】
上式(8)に従って位相差候補の組合せを選択する拡大範囲偏差推定部24の機能ブロックの例を図6に示す。図6は、mの範囲が{−1,0,1}の場合の構成例であるが、必要に応じてmの範囲を増加してもよい。
【0067】
位相差候補決定部40aは、減算器50a及び加算器50bを備える。位相差候補決定部40bは、減算器50c及び加算器50dを備える。減算器50aは、偏差推定部30aが推定した位相差θ1から2πを引くことにより、受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(−1)を算出する。加算器50bは、位相差θ1に2πを加えることにより位相差候補θ1(1)を算出する。位相差候補決定部40aは、位相差候補θ1(0)である位相差θ1と、位相差候補θ1(−1)及び位相差候補θ1(1)を出力する。同様に位相差候補決定部40bは、位相差候補θ2(0)、位相差候補θ2(−1)及び位相差候補θ2(1)を出力する。
【0068】
評価値算出部43は、乗算器51a〜51fと、減算器52a〜52iと、絶対値演算器53a〜53iを備え、それぞれの位相差候補の組合せについて評価値v=|τ1θ2(m2)−τ2θ1(m1)|を算出する。評価値選択部44は、評価値算出部43が算出した評価値のうちの最小値を選択する最小値選択部54を備える。位相差選択部45は、評価値算出部が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せ(m^1,m^2)に含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0069】
本実施例によれば、受信間隔τ1及びτ2で受信される2種類のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定する場合において、推定可能範囲を増加することが可能となり、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することができる。
【0070】
<4.第3実施例>
続いて、2つ又はそれより多い異なる受信間隔のリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合のより具体的な構成の一例を説明する。本実施例では、異なる複数の受信間隔に対する位相差候補同士の組合せのうち、各組合せに含まれる位相差候補に基づいて原点を通るように受信間隔と位相差候補との近似直線をそれぞれ定めたときの最小二乗誤差が最小となる組合せが選択される。そして、選択された組合せに含まれる位相差候補から周波数偏差が算出される。以下、N個のチャネル(Nは2以上の整数)においてそれぞれ異なるN個の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定を行う場合について説明する。
【0071】
位相差候補θ1(m)のいずれかを指定する候補番号、位相差候補θ2(m)のいずれかを指定する候補番号、…位相差候補θN(m)のいずれかを指定する候補番号を、それぞれm1、m2、…mNと表記する。位相差候補θ1(m1)、θ2(m2)、…及びθN(mN)の組合せに基づいて最小二乗法により算出される切片0の近似直線は、次式(9)により与えられる。
【0072】
【数9】
【0073】
上式(9)の近似直線に対する最小二乗誤差は次式(10)により与えられる。
【0074】
【数10】
【0075】
このため、本実施例では、評価値算出部43は、複数の位相差候補の組合せのそれぞれについて最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)を評価値として算出する。評価値選択部44は、評価値算出部43が算出した最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)のうち最小の評価値を選択する。
【0076】
図7は、評価値の算出方法の一例の説明図である。オペレーションBAにおいて評価値算出部43は、位相差候補θ1(m)のいずれかを指定する変数m1、位相差候補θ2(m)のいずれかを指定する変数m2、…位相差候補θN(m)のいずれかを指定する変数mNの値を「−M」に初期化する。オペレーションBBにおいて評価値算出部43は、上式(9)に示す近似直線を算出する。オペレーションBCにおいて評価値算出部43は、最小二乗誤差を算出する変数の値を「0」に初期化する。
【0077】
オペレーションBDにおいて評価値算出部43は、ループ変数nの値を「1」に初期化する。オペレーションBEにおいて評価値算出部43は、最小二乗誤差を算出する変数Errに、次式(11)の計算値を累積する。
【0078】
【数11】
【0079】
オペレーションBFにおいて評価値算出部43は、ループ変数nがN以下であるか否かを判断する。ループ変数nがN以下である場合には(オペレーションBF:Y)処理はオペレーションBEへ戻る。ループ変数nがNより大きい場合には(オペレーションBF:N)処理はオペレーションBEへ戻る。変数1〜NについてオペレーションBEを繰り返すことによって、変数Errには1つの位相差候補の組合せについての最小二乗誤差Err(m1、m2、…mN)が格納される。
【0080】
オペレーションBGにおいて評価値算出部43は、1つの位相差候補の組合せについて算出した最小二乗誤差Errを出力する。オペレーションBHNにおいて評価値算出部43は、変数mNがM以下であるか否かを判断する。変数mNがM以下である場合には(オペレーションBHN:Y)処理はオペレーションBBに戻る。変数mNがMより大きい場合には(オペレーションBHN:N)評価値算出部43は、次の変数mN−1がM以下であるか否かを判断する分岐処理を行う。以下、変数mN−1、mN−2、…m2、m1の順に、オペレーションBH2及びBH1で変数m2及びm1がM以下である否かを判定するまで、オペレーションBHNと同様の分岐処理を繰り返す。
【0081】
本実施例によれば、3つ以上の異なる受信間隔でそれぞれ受信されるリファレンス信号に基づいて周波数偏差の推定する場合において、推定可能範囲を増加することが可能となり、周波数偏差の推定範囲の不足を回避することができる。
【0082】
<5.第4実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のうち、最後に受信されたリファレンス信号に基づいて推定した位相差から定められた位相差候補を選択して、周波数偏差を算出する。
【0083】
図8は、拡大範囲偏差推定部24の第3例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。拡大範囲偏差推定部24は、ラッチ回路50a及び50bと、最終推定偏差記憶部51を備える。組合せ選択部41は、位相差選択部52と、受信間隔選択部53を備える。
【0084】
ラッチ回路50a及び50bは、偏差推定部30a及び30bから最後に受信した位相差θ1及びθ2をそれぞれラッチする。最終推定偏差記憶部51は、位相差θ1及びθ2の何れが最後に受信されたかを記憶する。すなわち最終推定偏差記憶部51は、第1チャネル及び第2チャネルでそれぞれ受信されるリファレンス信号のうち最後に受信されたリファレンス信号に基づいて推定された位相差が、位相差θ1及びθ2の何れであるかを記憶する。
【0085】
位相差選択部52は、最終推定偏差記憶部51を参照することにより位相差θ1及びθ2の何れが最後に受信されたかを判断する。位相差選択部52は、受信間隔τ1及びτ2に対する位相差候補θ1(m)及び位相差候補θ2(m)のうち、最後に受信された位相差から定めた位相差候補を選択して位相差選択部45へ出力する。位相差選択部45は、位相差選択部52が選択した位相差候補のうち、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれているものを選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0086】
受信間隔選択部53は、最終推定偏差記憶部51を参照することにより第1チャネル及び第2チャネルのうち、最後にリファレンス信号を受信したのはいずれのチャネルであるかを判断する。受信間隔選択部53は、受信間隔τ1及びτ2うち最後に受信したリファレンス信号の受信間隔を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。周波数偏差算出部42は、位相差選択部45が選択した位相差候補を、受信間隔選択部53が選択した受信間隔で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0087】
本実施例によれば、最新のリファレンス信号に基づいて推定された周波数偏差を用いて周波数偏差の補償をすることができるため、周波数偏差の変動に対する追従性能を向上することが可能となる。なお、第4実施例は、上述の第2実施例及び第3実施例と組み合わせることが可能である。
【0088】
<6.第5実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のそれぞれから算出した周波数偏差の平均値を補償部31a及び31bへ出力する。
【0089】
図9は、拡大範囲偏差推定部24の第4例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。組合せ選択部41は、位相差選択部60a及び60bを備える。周波数偏差算出部42は、除算器61a及び61bと、平均値算出器62を備える。
【0090】
位相差選択部60aは、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ1に対する位相差候補θ1(m^1)を選択して除算器61aへ出力する。位相差選択部60bは、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれる受信間隔τ2に対する位相差候補θ2(m^2)を選択して除算器61bへ出力する。
【0091】
除算器60aは、位相差候補θ1(m^1)を受信間隔τ1で除算することにより、周波数偏差(θ1(m^1)/τ1)を算出する。除算器60bは、位相差候補θ2(m^2)を受信間隔τ2で除算することにより、周波数偏差(θ2(m^2)/τ2)を算出する。平均値算出器62は、(θ1(m^1)/τ1)及び(θ2(m^2)/τ2)の平均値を算出して、周波数偏差として補償部31a及び31bへ出力する。
【0092】
本実施例によれば、複数のリファレンス信号に基づいて推定された周波数偏差を平均することにより、周波数偏差の推定精度を高めることが可能となる。なお、第5実施例は、上述の第2実施例及び第3実施例と組み合わせることが可能である。
【0093】
<7.第6実施例>
<7.1.受信装置の機能構成>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、ユーザ毎に拡大範囲偏差推定を行うか否かを動的に切り替える。図10は、拡大範囲偏差推定部24の第5例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。
【0094】
拡大範囲偏差推定部24は、偏差算出部70と、遅延素子71と、判定部72と、選択部73を備える。偏差算出部70は、偏差推定部30a及び30bがそれぞれ推定した位相差θ1及びθ2を、それぞれ受信間隔τ1及びτ2で除算することによって算出される周波数偏差のいずれか一方又はこれらの平均値を、選択部73に出力する。
【0095】
遅延素子71は、拡大範囲偏差推定部24が補償部31a及び31bへ前回出力した周波数偏差を遅延した後に判定部72へ入力する。判定部72は、前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超過するか否かを判定する。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超える場合には、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を有効にする。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超えない場合には、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を無効にする。また、判定部72は、一定期間ΔTの間に亘って拡大範囲偏差推定が無効である場合にも拡大範囲偏差推定を有効にする。
【0096】
拡大範囲偏差推定が有効である場合には、選択部73は、周波数偏差算出部42により算出された周波数偏差を補償部31a及び31bへ出力する。拡大範囲偏差推定が無効である場合には、選択部73は、偏差算出部70により算出された周波数偏差を補償部31a及び31bへ出力する。
【0097】
<7.2.受信装置の処理>
図11は、拡大範囲偏差推定部24の処理の一例の説明図である。オペレーションCAにおいて判定部72は、前回に拡大範囲偏差推定を実行してからの経過時間tを算出する。オペレーションCBにおいて判定部72は、前回に拡大範囲偏差推定を実行してから一定期間ΔTが経過したか否かを判定する。一定期間ΔTが経過した場合には(オペレーションCB:N)処理はオペレーションCEへ進む。一定期間ΔTが経過しない場合には(オペレーションCB:Y)処理はオペレーションCCへ進む。
【0098】
オペレーションCCにおいて判定部72は、前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超過するか否かを判定する。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超える場合には(オペレーションCC:Y)処理はオペレーションCEへ進む。前回出力した周波数偏差が所定の閾値Thを超えない場合には(オペレーションCC:Y)処理はオペレーションCDに進む。
【0099】
オペレーションCDにおいて判定部72は、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を無効にする。その結果、偏差算出部70により算出された周波数偏差が補償部31a及び31bへ出力される。その後処理はオペレーションCAに戻る。オペレーションCEにおいて判定部72は、拡大範囲偏差推定部24による拡大範囲偏差推定を有効にする。その結果、周波数偏差算出部42により算出された周波数偏差が補償部31a及び31bへ出力される。判定部72は、拡大範囲偏差推定を実行した時刻として現在時刻を記憶して、処理をオペレーションCAに戻す。
【0100】
<7.3.実施例の効果>
拡大範囲偏差推定を実行した場合は、位相差候補を誤って選択することによる推定誤りのために特性が劣化するおそれもあり、また処理量が増加する。本実施例によれば、ユーザ毎に拡大範囲偏差推定を実行するか否かを動的に切り替えることができるため、拡大範囲偏差推定を実施する場合を限定することにより、推定誤りの可能性や処理量を低減することができる。なお、第6実施例は、上述の第1実施例〜第5実施例と組み合わせることが可能である。
【0101】
<8.第7実施例>
続いて、他の受信装置の実施例について説明する。本実施例の拡大範囲偏差推定部24は、組合せ選択部41が選択する位相差候補の組合せθ1(m^1)及びθ2(m^2)のうち、受信品質がより良いリファレンス信号に基づいて推定した位相差から定められた位相差候補を選択して、周波数偏差を算出する。
【0102】
図12は、受信回路の第2例の機能ブロック図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には図3で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。チャネル推定部32a及び32bは、それぞれ第1チャネル及び第2チャネルで受信したリファレンス信号から推定される伝搬路推定値に基づいて、各チャネルのSIR(Signal to Interference Ratio)を算出する。チャネル推定部32a及び32bは、算出したSIRを拡大範囲偏差推定部24へ入力する。
【0103】
図13は、拡大範囲偏差推定部24の第6例の機能ブロック図である。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。拡大範囲偏差推定部24は比較部80を備える。組合せ選択部41は、位相差選択部81と、受信間隔選択部82を備える。
【0104】
比較部80は、第1チャネル及び第2チャネルの受信品質を比較し、比較結果を位相差選択部81及び受信間隔選択部82に出力する。位相差選択部81は、位相差候補θ1(m)及び位相差候補θ2(m)のうち、受信品質がより良いチャネルで受信されたリファレンス信号から推定された位相差から定めた位相差候補を選択して位相差選択部45へ出力する。位相差選択部45は、位相差選択部52が選択した位相差候補のうち、評価値選択部44が選択した評価値が算出された位相差候補の組合せに含まれているものを選択して周波数偏差算出部42へ出力する。
【0105】
受信間隔選択部82は、受信間隔τ1及びτ2うち受信品質がより良いチャネルでリファレンス信号を受信する受信間隔を選択して周波数偏差算出部42へ出力する。周波数偏差算出部42は、位相差選択部45が選択した位相差候補を、受信間隔選択部53が選択した受信間隔で除算することによって周波数偏差を算出する。
【0106】
本実施例によれば、より良い受信品質のリファレンス信号に基づいて周波数偏差を推定するため、周波数偏差の推定精度を高めることが可能となる。なお、第7実施例では受信品質を示す指標値としてSIRを使用したが、他の実施例では、位相差候補を選択するために受信品質を示す他の種類の指標値を使用してもよい。また、第7実施例は、上述の第2実施例、第3実施例及び第5実施例と組み合わせることが可能である。
【0107】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行する制御部を備えることを特徴とする受信装置。
(付記2)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線が、受信間隔と周波数偏差による位相差との関係の直線に最も近い組合せを選択することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記3)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、前記近似直線の切片が原点に最も近くなる組合せを選択することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
(付記4)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、原点を通るように前記近似直線を定めたときの最小二乗誤差が最小となる組合せを選択することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
(付記5)
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との比の差が最も小さい組合せを、各受信間隔における位相差を示す組合せとして選択する処理を実行することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記6)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、最後に受信したリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記7)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、受信品質に基づき選択されるリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記8)
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる複数の位相差候補に基づいて推定される周波数偏差の平均値を、受信信号の周波数偏差として算出する処理を実行することを特徴とする付記1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記9)
前記制御部は、受信信号について以前に推定された周波数偏差の大きさに応じて、前記候補決定処理、前記選択処理及び前記推定処理を実行するか否かを切り替える処理を実行することを特徴とする付記1〜8のいずれか一項に記載の受信装置。
(付記10)
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する、
ことを特徴とする周波数偏差算出方法。
(付記11)
受信装置の制御部に、
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0108】
20 受信回路
24 拡大範囲偏差推定部24
40a、40b 位相差候補決定部
41 組合せ選択部
42 周波数偏差算出部
43 評価値算出部
44 評価値選択部
45 位相差選択部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行する制御部を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線が、受信間隔と周波数偏差による位相差との関係の直線に最も近い組合せを選択することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、最後に受信したリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項4】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、受信品質に基づき選択されるリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる複数の位相差候補に基づいて推定される周波数偏差の平均値を、受信信号の周波数偏差として算出する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、受信信号について以前に推定された周波数偏差の大きさに応じて、前記候補決定処理、前記選択処理及び前記推定処理を実行するか否かを切り替える処理を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する、
ことを特徴とする周波数偏差算出方法。
【請求項8】
受信装置の制御部に、
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する候補決定処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行する制御部を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記選択処理において前記制御部は、位相差候補の前記複数の組合せのうち、受信間隔と位相差候補との関係の近似直線が、受信間隔と周波数偏差による位相差との関係の直線に最も近い組合せを選択することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、最後に受信したリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項4】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる位相差候補のうち、受信品質に基づき選択されるリファレンス信号について決定される位相差候補に基づいて周波数偏差を推定する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記推定処理において前記制御部は、選択された前記組合せに含まれる複数の位相差候補に基づいて推定される周波数偏差の平均値を、受信信号の周波数偏差として算出する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、受信信号について以前に推定された周波数偏差の大きさに応じて、前記候補決定処理、前記選択処理及び前記推定処理を実行するか否かを切り替える処理を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定し、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定し、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択し、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する、
ことを特徴とする周波数偏差算出方法。
【請求項8】
受信装置の制御部に、
異なる複数の受信間隔で受信されるリファレンス信号に基づいて、前記複数の受信間隔毎に各受信間隔において生じる受信信号の位相差を推定する処理と、
推定された前記位相差に基づいて、前記複数の受信間隔毎に複数の位相差候補を決定する処理と、
前記複数の受信間隔毎に選択される位相差候補同士を組み合わせて形成される前記位相差候補の複数の組合せの中から、前記複数の受信間隔における受信信号の位相差を示す組合せを選択する選択処理と、
選択された組合せに含まれる位相差候補に基づいて受信信号の周波数偏差を推定する推定処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−90084(P2013−90084A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227829(P2011−227829)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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