受光装置、光ディスク再生装置、及び受光素子選択方法
【課題】光スポットのサイドローブの影響を簡単に抑制する。
【解決手段】本受光装置は、複数の受光素子を含む受光素子アレイと、受光素子アレイに含まれる複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段とを有する。そして、上で述べた選択手段は、受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするものである。
【解決手段】本受光装置は、複数の受光素子を含む受光素子アレイと、受光素子アレイに含まれる複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段とを有する。そして、上で述べた選択手段は、受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受光素子を含む受光素子アレイを含む受光装置、当該受光装置を用いた光ディスク再生装置等、及び当該受光装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2004−192802号公報には、以下の事項が開示されている。具体的には、アバランシェ・フォト・ダイオードにおける一つの受光素子の大きさは2μm角であり、縦横100個ずつ並んでいて、各受光素子の印加電圧は独立している。信号強度がピークを示す受光素子の位置が、検出レンズにより集光された再生信号光のピークである。受光素子aが最大の信号強度を示したとすると、a点が境界となるようにA、B、C、Dの4つの領域に分割し、4分割の受光素子が形成できるように結線する。このように多数の受光素子を含むアバランシェ・フォト・ダイオードを用いれば、機械的な調整を省略できるので調整時間が大幅に短縮でき、量産性が高くなるとされている。
【0003】
一方、光ディスク上にレーザ光を集光されることによって形成される光スポットのスポット径を小さくすることにより、読み出し又は書き込みの解像度を向上させることができる。このように解像度を向上させる方法として、光ディスクに照射する光束の中心部分を遮光したり、中心部分の位相を周辺部分と180度ずらす位相フィルタを挿入したりすることによってスポット径を小さくする方法が知られている。このようなスポット径を小さくする効果を超解像効果と呼ぶ。
【0004】
しかし、超解像効果を用いた場合、光スポットのメインローブ径は小さくなるものの、その周辺部にあるサイドローブが大きくなり、例えば再生時の場合、このサイドローブが周辺マークの影響を強く受けることになるため、隣接トラックからのクロストークや、符号間干渉などが発生してしまい、超解像効果が減じられてしまう。
【0005】
このため、例えば特開平6−44603号公報などでは、受光素子の手前にピンホールを設けて、光スポットのサイドローブを低減する技術が開示されている。しかしながら、機械的なピンホールを採用すると、その位置調整に手間や時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−192802号公報
【特許文献2】特開平6−44603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、光スポットを小さくすることによって生ずるサイドローブの影響を簡単に抑制する技術は従来存在していない。
【0008】
従って、本発明の目的は、光スポットのサイドローブの影響を簡単に抑制するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る受光装置は、複数の受光素子を含む受光素子アレイと、受光素子アレイに含まれる複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段とを有する。そして、上で述べた選択手段は、受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするものである。
【0010】
このようにすれば、ピンホールを機械的に設けることなく選択手段によってサイドローブを手間無く除去できるようになる。
【0011】
また、上で述べた受光装置は、照射対象物(例えば光ディスク)上にレーザ光を超解像効果を生じさせつつ集光させると共に、照射対象物からの反射光を受光素子アレイ上に集光させる手段をさらに有するようにしてもよい。このように超解像効果によって小さくなったメインローブをサイドローブによるクロストークなどの問題を回避しつつ有効に検出することができるようになる。
【0012】
さらに、上で述べた選択手段が、光スポットにおいて最も出力値の大きい受光素子を中心受光素子として検出し、中心受光素子と同じ行の受光素子又は当該受光素子からの出力と、中心受光素子と同じ列の受光素子又は当該受光素子からの出力とを、イネーブルされた受光素子又は当該受光素子からの出力から除外するようにしてもよい。
【0013】
また、上で述べた選択手段が、光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子を、中心受光素子と同じ行と同じ列の受光素子で4グループに分けるようにしてもよい。これによって、光ディスク再生装置などにおけるトラッキングなどの従来から必要とされる動作を本受光装置においても行うことができるようになる。
【0014】
また、このような受光装置については、光ディスク再生装置又は光ディスク記録再生装置などに用いられる場合もある。このような場合には、光ディスクにおける記録密度を上げることができるようになる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る受光素子選択方法は、複数の受光素子を含む受光素子アレイに初期的に光スポットを照射するステップと、光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするステップとを含む。このようにすれば、これ以降の処理においてサイドローブを除去した後の受光信号を得ることができるようになり、サイドローブによるクロストークなどの問題を回避することができるようになる。
【0016】
なお、以下で本発明の実施の形態について説明するが、これは一例であって、同様の効果を奏する構成であれば、どのような構成であってもよい。特に、メインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定する処理については、専用の回路によって実施する場合もあれば、光ディスク再生装置等のプロセッサにおいて予め用意されたプログラムを実行することによって実施することもある。このようなプログラムについては、プロセッサ内又はプロセッサ外のメモリに格納される。その他のメモリやコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納される場合もある。さらに、その具体的なアルゴリズムには様々な変形があり、以下で述べる手法は一例に過ぎない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光スポットのサイドローブの影響を簡単に抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】超解像光学系を説明するための図である。
【図2】超解像光学系における第一の受光強度分布を表す図である。
【図3】通常の光学系の受光強度分布を表す図である。
【図4】超解像光学系における第二の受光強度分布を表す図である。
【図5】超解像光学系の受光素子における受光強度分布を表す図である。
【図6】超解像光学系においてサイドローブ除去を説明するための図である。
【図7】サイドローブ除去手法を採用した場合の受光強度分布を示す図である。
【図8】高密度記録におけるクロストークを説明するための図である。
【図9】シミュレーションの結果(収差無しの場合)を示す図である。
【図10】シミュレーションの結果(収差有りの場合)を示す図である。
【図11】PDアレイを説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態における光ディスク再生装置の機能ブロック図である。
【図13】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理フローを示す図である。
【図14】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理を説明するための図である。
【図15】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本発明の実施の形態の前提及び概要]
まず初めに、超解像光学系について図1を用いて説明する。レーザダイオードLD101と、光ディス150との間には、直径約4mmのコリメートレンズ102と、ビームスプリッタ103と、1/4波長板104と、超解像効果を得るためのマスク105と、直径約3.6mmの対物レンズ106とが配置されている。また、ビームスプリッタ103と受光素子の一例であるフォト・ダイオードPD108との間には、集光レンズ107が配置されている。なお、LD101の波長λ=405nm、広がり角14deg(水平)、14deg(垂直)、対物レンズNA=0.85、f=2mm、LIM値0.55(Rad)、0.55(Tan)、スポット径0.382μm(Rad)、0.382μm(Tan)であるものとする。
【0020】
このような超解像光学系においてマスク径D=1.2mmである場合には、図2に示すような光ディスク150上での光強度分布が得られる。図2において縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。同様に、マスク105を設けない場合の光強度分布を図3に示す。図3は、図2と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。図2と図3を比較すると、図2の方がメインローブ径は小さくなっているが、図2においてAで示すようにサイドローブが大きくなってしまう。
【0021】
また、マスク径D=1.6mmにすると、図4に示すような光強度分布が得られる。図4は、図2及び図3と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。このようなマスクを採用すると、よりメインローブ径を小さくすることができるが、サイドローブの大きさが大きくなっていることも分かる。
【0022】
例えばマスク径D=1.6mmとした場合、PD108では、図5に示すような光強度分布が得られる。図5は、図2乃至図4と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。光ディスク150上でサイドローブが存在するので、当然ながらPD108上でもサイドローブが発生してしまっている。
【0023】
そこで、図6に示すように、集光レンズ107とPD108の間に、サイドローブ除去のためのピンホール109を設けると、PD108上の光強度分布は図7のようになる。図7は、図2等と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。このようにすれば、メインローブ径を小さくした上で、サイドローブ除去が行える。但し、背景技術の欄で述べたように、ピンホール109の機械的な位置合わせが問題となる。
【0024】
このような超解像効果を用いれば現在の光ディスクの記憶容量を増加させることができる。例えばBlu-rayディスク(BDと呼ぶ)の線密度とトラックピッチを共に1.33倍した大容量BDのROM(Read Only Memory)をモデル化して、隣接トラックからのクロストークの影響を3T信号に着目してシミュレーションを行った結果を図9及び図10に示す。なお、このシミュレーションでは、図8のように、矢印で示したトラックには、3T信号が連続して記録されており、ほぼ(1)乃至(5)の3T信号までは隣接トラックに8T信号が記録されているが、(6)以降の3T信号については、隣接トラックには他の信号が記録されていないものとする。
【0025】
例えば、収差のない理想的な状態において、信号波形がどのように変化するかを図9に示す。図9では、縦軸は信号強度を表し、横軸は位置を表す。図9において実線は図1に示すようなピンホール109を用いない場合を示し、点線は図6に示すようにピンホール109を用いる場合を示す。ピンホール109を用いる場合には、光量は減少しているが、信号波形はほぼ一定の変化を行っており、干渉の影響はほとんど見られない。一方、ピンホール109を用いない場合には、信号波形が一定しておらず、点線で示している図8の(6)以降の信号部分に対応する位置では明らかにレベルが上昇して干渉の影響を受けている。
【0026】
また、例えば光ピックアップの球面収差0.033λ、光ディスク150のチルト0.2deg(Rad)(コマ収差)、0.1deg(Tan)(コマ収差)、光ディスク150の厚さ変動±5μm(球面収差)が存在するものとしてシミュレーションを行うと、図10に示すような信号波形が得られる。図10では、縦軸は信号強度を表し、横軸は位置を表す。図10でも実線は図1に示すようなピンホール109を用いない場合を示し、点線は図6のようにピンホール109を用いる場合を示す。ピンホール109を用いる場合には、信号波形のレベルはより低くなり、波形の形状も悪くなるが、ほぼ一定の変化を行っている。しかし、ピンホール109を用いない場合には、信号波形のレベルは大きいが、安定した信号波形が得られておらず、点線で示している図8の(6)以降の信号部分に対応する位置では明らかにレベルが上昇して干渉の影響を受けている。
【0027】
以上のように、ピンホール109を用いることは、既存の光ディスクを、線密度及びトラックピッチを上げて大容量化する場合には有効であると考えられる。
【0028】
上で述べたように機械的にピンホール109を導入することは問題であり、同様の効果を得るために、本実施の形態では、PD108に代わって多数のPDを含むPDアレイを導入すると共に、ピンホール109と同様の効果を奏するように選択的に各PDの感度等を設定することによって、メインローブの範囲内の光のみ受光するようにする。これによって、ピンホールの位置調整を省略することができる。
【0029】
例えば図11に示すように、例えば各々1.4μm角で50×50個のPD201aを並べたPDアレイ201を採用する。全体のサイズは75×75μm角程度である。このようなPDアレイ201を採用すれば、スポット径30μm程度の再生信号光スポットには有効である。
【0030】
図11に重ねて示した光強度分布のメインローブの範囲を擬似的に円Bで示すと、当該円Bに入るPD(ハッチング付き)については、基本的に当該PD又は当該PDからの出力をイネーブルする。なお、最も受信強度が大きいPDをCとして示しており、この位置Cと同じ行及び列のPDについては、円Bに入るものでも、当該PD又は当該PDからの出力をイネーブルの対象から除外する。これは、1乃至4の4つの部分に領域分割を行って、従来から行われてきたトラッキングなどの制御に受光信号を用いるためである。
【0031】
なお、実際には円Bは、円ではない場合もあり、受光強度が極小となるPDを探索して、当該PD及び当該PDより内側のPDを基本的なイネーブル対象とする。
【0032】
このようなPDアレイを用いることによって、大容量の光ディスクからのデータ再生が可能となる。すなわち、再生時に、超解像効果によって生ずるサイドローブの部分を受光しなくなるので、クロストークの影響を低減することができるようになる。また、PDアレイ201のほぼ中心に光スポットが照射されることが好ましいが、PDアレイ201のサイズ自体にある程度の余裕を持たせておけば、位置合わせを完璧に行う必要が無く、光ディスクのチルトや厚みむら等の外乱に対しても容易に対処できる。当然、ピンホールを機械的に配置しないので、ピンホールの位置調整の必要もない。また、PD1つ1つのサイズも小さくなるため、応答速度も速くなる。
【0033】
[実施の形態1]
図12に本実施の形態における光ディスク再生装置300の機能ブロック図を示す。光ディスク再生装置300は、上で述べたようなPD1乃至9等を含むPDアレイ201と、PDアレイ201に含まれるPDのうち必要とされるPDを実質的に選択する情報を格納する不揮発性メモリ206と、PDアレイ201の各PDに接続されているスイッチSW1乃至3等を含むアナログスイッチIC202と、当該アナログスイッチIC202に接続されており、各PDからの信号をA/D変換して受光強度に応じたディジタル値を生成するなどの信号処理を実施する信号処理回路203と、信号処理回路203による各PDの受信強度の値から図11において示したようなハッチング付きのPDを特定する処理などを実施する、内蔵メモリ204a付きの演算回路204と、演算回路204の演算処理などで用いられるデータを保持するメモリ207と、演算回路204によって指定されたPDについて選択するための情報を不揮発性メモリ206に書き込むアドレス選択回路205とを含む。
【0034】
次に、初期設定処理について説明する。まずPDアレイ201に対して、光スポットを照射する。この際、演算回路204は、アドレス選択回路205に、PDアレイ201に含まれる各PDを順番に選択するように指示する。アドレス選択回路205は、所定時間間隔で、各PDを選択する情報を不揮発性メモリ206に書き込む。例えばPD1、PD2、PD3、といった順番に選択する場合には、(10000....)(010000....)(00100....)といったビット列を不揮発性メモリ206に書き込む。そうすると、SW1、SW2、SW3といった順番で、アナログスイッチIC202の各スイッチがオンになる。信号処理回路203は、アナログスイッチIC202からの信号をA/D変換して受信強度に応じたディジタル値を演算回路204に出力する。演算回路204は、例えばメモリ207にPDの識別子と共に受信強度に応じたディジタル値(以下、出力値と呼ぶ)を格納する。このような処理をPDアレイ201内の全てのPDについて実施すれば、受光状況がメモリ207に蓄積されるようになる。
【0035】
その後、演算回路204は、メモリ207に格納されている受光状況データを参照しつつ、図13及び図15に示す処理を実施する。まず、全てのPDの出力値から最大値を特定すると共に、当該最大値を出力したPDの位置C(x1,y1)を検出する(ステップS1)。位置Cを中心に、上下、左右につき出力値極小となるPD位置P(x1,y2)、Q(x1,y3)、R(x3,y1)、S(x2,y1)を特定する(ステップS3)。なお、x、y共に左下が原点で、各PDでxもyもその方向に一つ移動すると1つずつ座標値がインクリメントされるものとする。そして、カウンタiを1に初期化する(ステップS5)。
【0036】
その後、演算回路204は、(x1+i)列について(y1+1)から順にyを増加させる方向に探索して出力値極小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDとして選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS7)。ここでは、図14の(4)の領域について処理している。通常は、出力値は順に下がってゆくので、出力値が上昇したら一つ前のPDに戻って当該PDまでを選択する。
【0037】
また、演算回路204は、(x1+i)列について(y1−1)から順にyを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS9)。ここでは、図14の(3)の領域について処理している。
【0038】
さらに、演算回路204は、(x1−i)列について(y1+1)から順にyを増加させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS11)。ここでは、(1)の領域について処理している。
【0039】
また、演算回路204は、(x1−i)列について(y1−1)から順にyを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS13)。ここでは、(2)の領域について処理している。
【0040】
そして、iを1インクリメントし(ステップS15)、i>(x2−x1)が成立するか判断する(ステップS17)。この条件を満たしていない場合にはステップS7に戻る。一方、この条件を満たした場合には、処理の方向を変えるために端子Aを介して図15の処理に移行する。
【0041】
また、演算回路204は、iを1に初期化する(ステップS19)。
【0042】
その後、演算回路204は、(y1+i)行について(x1+1)から順にxを増加させる方向に探索して出力値極小となる位置のPDを探索し、(x1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDとして選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS21)。ここでは、図14の(4)の領域について処理している。
【0043】
また、演算回路204は、(y1+i)行について(x1−1)から順にxを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(x1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS23)。ここでは、図14の(3)の領域について処理している。
【0044】
さらに、演算回路204は、(y1−i)行について(x1+1)から順にxを増加させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS25)。ここでは、(1)の領域について処理している。
【0045】
また、演算回路204は、(y1−i)列について(x1−1)から順にxを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(x1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS27)。ここでは、(2)の領域について処理している。
【0046】
そして、iを1インクリメントし(ステップS29)、i>(y2−y1)が成立するか判断する(ステップS31)。この条件を満たしていない場合にはステップS21に戻る。一方、この条件を満たした場合には、処理を終了する。なお、ステップS7乃至S13と、ステップS21乃至S27で、重複する判断を行う場合もあるが、いずれかでオンと判断されたPDについてはオンすればよい。
【0047】
なお、ステップS7とS21でオンにセットされたPD群、ステップS9とS23でオンにセットされたPD群、ステップS11とS25でオンにセットされたPD群、ステップS13とS27でオンにセットされたPD群については、それぞれ特定できるようにする。そして、演算回路204は、信号処理回路203に、PD群についてのデータを設定する。
【0048】
このようにすれば、以降の処理では、不揮発性メモリ206にオンが設定されたPDに接続された、アナログスイッチIC202のスイッチSWはオンになるので、受光強度に応じた信号が信号処理回路203が入力される。信号処理回路203は、PD群毎に各PDの信号値を加算し、それぞれヘッドアンプに出力する。これによって、ヘッドアンプなどの、通常の信号処理を従来から保持している回路にて行うことができるようになる。信号処理回路203においてさらに他の処理を行うようにしても良い。
【0049】
なお、演算回路204は、例えば内蔵メモリ204aに格納されているプログラムに従って上記処理を行うようにしても良いし、上記処理のための専用の演算回路を保持するようにしても良い。
【0050】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図13及び図15で示したアルゴリズムは一例であって様々な変形が可能である。さらに、PDアレイ201についても、個々のPDのオン/オフ自体を制御できるようにする場合には、アナログスイッチIC205を用いない場合もある。さらに、受光感度の調整をオン又はオフ以外に設定できる場合には、例えば、受光強度が極小となるPDについては0.5程度に設定し、上の処理ではオンに設定された他のPDについては1に設定するなど、グラフィックスの分野におけるアンチエイリアシングのような調整を行うようにしても良い。
【0051】
その他、光ディスク再生装置300を一例として述べたが、当然ながら光ディスク記録再生装置においても、本発明は有効である。さらに、メインローブの範囲内であるPDを探索する処理の一例を示したが、メインローブの範囲外のPDを特定し、残余のPDがメインローブの範囲内と判断するようなアルゴリズムを採用するようにしても良い。メインローブの範囲内とされる範囲についても、より少なく受光強度が極小となるPDを外すようにしても良いし、多少多めにメインローブの範囲内とするようなアルゴリズムを採用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
201 PDアレイ 202 アナログスイッチIC
203 信号処理回路 204 演算回路
205 アドレス選択回路 206 不揮発性メモリ
207 メモリ 300 光ディスク再生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受光素子を含む受光素子アレイを含む受光装置、当該受光装置を用いた光ディスク再生装置等、及び当該受光装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2004−192802号公報には、以下の事項が開示されている。具体的には、アバランシェ・フォト・ダイオードにおける一つの受光素子の大きさは2μm角であり、縦横100個ずつ並んでいて、各受光素子の印加電圧は独立している。信号強度がピークを示す受光素子の位置が、検出レンズにより集光された再生信号光のピークである。受光素子aが最大の信号強度を示したとすると、a点が境界となるようにA、B、C、Dの4つの領域に分割し、4分割の受光素子が形成できるように結線する。このように多数の受光素子を含むアバランシェ・フォト・ダイオードを用いれば、機械的な調整を省略できるので調整時間が大幅に短縮でき、量産性が高くなるとされている。
【0003】
一方、光ディスク上にレーザ光を集光されることによって形成される光スポットのスポット径を小さくすることにより、読み出し又は書き込みの解像度を向上させることができる。このように解像度を向上させる方法として、光ディスクに照射する光束の中心部分を遮光したり、中心部分の位相を周辺部分と180度ずらす位相フィルタを挿入したりすることによってスポット径を小さくする方法が知られている。このようなスポット径を小さくする効果を超解像効果と呼ぶ。
【0004】
しかし、超解像効果を用いた場合、光スポットのメインローブ径は小さくなるものの、その周辺部にあるサイドローブが大きくなり、例えば再生時の場合、このサイドローブが周辺マークの影響を強く受けることになるため、隣接トラックからのクロストークや、符号間干渉などが発生してしまい、超解像効果が減じられてしまう。
【0005】
このため、例えば特開平6−44603号公報などでは、受光素子の手前にピンホールを設けて、光スポットのサイドローブを低減する技術が開示されている。しかしながら、機械的なピンホールを採用すると、その位置調整に手間や時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−192802号公報
【特許文献2】特開平6−44603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、光スポットを小さくすることによって生ずるサイドローブの影響を簡単に抑制する技術は従来存在していない。
【0008】
従って、本発明の目的は、光スポットのサイドローブの影響を簡単に抑制するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る受光装置は、複数の受光素子を含む受光素子アレイと、受光素子アレイに含まれる複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段とを有する。そして、上で述べた選択手段は、受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするものである。
【0010】
このようにすれば、ピンホールを機械的に設けることなく選択手段によってサイドローブを手間無く除去できるようになる。
【0011】
また、上で述べた受光装置は、照射対象物(例えば光ディスク)上にレーザ光を超解像効果を生じさせつつ集光させると共に、照射対象物からの反射光を受光素子アレイ上に集光させる手段をさらに有するようにしてもよい。このように超解像効果によって小さくなったメインローブをサイドローブによるクロストークなどの問題を回避しつつ有効に検出することができるようになる。
【0012】
さらに、上で述べた選択手段が、光スポットにおいて最も出力値の大きい受光素子を中心受光素子として検出し、中心受光素子と同じ行の受光素子又は当該受光素子からの出力と、中心受光素子と同じ列の受光素子又は当該受光素子からの出力とを、イネーブルされた受光素子又は当該受光素子からの出力から除外するようにしてもよい。
【0013】
また、上で述べた選択手段が、光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子を、中心受光素子と同じ行と同じ列の受光素子で4グループに分けるようにしてもよい。これによって、光ディスク再生装置などにおけるトラッキングなどの従来から必要とされる動作を本受光装置においても行うことができるようになる。
【0014】
また、このような受光装置については、光ディスク再生装置又は光ディスク記録再生装置などに用いられる場合もある。このような場合には、光ディスクにおける記録密度を上げることができるようになる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る受光素子選択方法は、複数の受光素子を含む受光素子アレイに初期的に光スポットを照射するステップと、光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定し、メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするステップとを含む。このようにすれば、これ以降の処理においてサイドローブを除去した後の受光信号を得ることができるようになり、サイドローブによるクロストークなどの問題を回避することができるようになる。
【0016】
なお、以下で本発明の実施の形態について説明するが、これは一例であって、同様の効果を奏する構成であれば、どのような構成であってもよい。特に、メインローブの範囲に入る受光素子又はメインローブの範囲外となる受光素子を特定する処理については、専用の回路によって実施する場合もあれば、光ディスク再生装置等のプロセッサにおいて予め用意されたプログラムを実行することによって実施することもある。このようなプログラムについては、プロセッサ内又はプロセッサ外のメモリに格納される。その他のメモリやコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納される場合もある。さらに、その具体的なアルゴリズムには様々な変形があり、以下で述べる手法は一例に過ぎない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光スポットのサイドローブの影響を簡単に抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】超解像光学系を説明するための図である。
【図2】超解像光学系における第一の受光強度分布を表す図である。
【図3】通常の光学系の受光強度分布を表す図である。
【図4】超解像光学系における第二の受光強度分布を表す図である。
【図5】超解像光学系の受光素子における受光強度分布を表す図である。
【図6】超解像光学系においてサイドローブ除去を説明するための図である。
【図7】サイドローブ除去手法を採用した場合の受光強度分布を示す図である。
【図8】高密度記録におけるクロストークを説明するための図である。
【図9】シミュレーションの結果(収差無しの場合)を示す図である。
【図10】シミュレーションの結果(収差有りの場合)を示す図である。
【図11】PDアレイを説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態における光ディスク再生装置の機能ブロック図である。
【図13】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理フローを示す図である。
【図14】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理を説明するための図である。
【図15】メインローブの範囲内のPDを探索するための処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本発明の実施の形態の前提及び概要]
まず初めに、超解像光学系について図1を用いて説明する。レーザダイオードLD101と、光ディス150との間には、直径約4mmのコリメートレンズ102と、ビームスプリッタ103と、1/4波長板104と、超解像効果を得るためのマスク105と、直径約3.6mmの対物レンズ106とが配置されている。また、ビームスプリッタ103と受光素子の一例であるフォト・ダイオードPD108との間には、集光レンズ107が配置されている。なお、LD101の波長λ=405nm、広がり角14deg(水平)、14deg(垂直)、対物レンズNA=0.85、f=2mm、LIM値0.55(Rad)、0.55(Tan)、スポット径0.382μm(Rad)、0.382μm(Tan)であるものとする。
【0020】
このような超解像光学系においてマスク径D=1.2mmである場合には、図2に示すような光ディスク150上での光強度分布が得られる。図2において縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。同様に、マスク105を設けない場合の光強度分布を図3に示す。図3は、図2と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。図2と図3を比較すると、図2の方がメインローブ径は小さくなっているが、図2においてAで示すようにサイドローブが大きくなってしまう。
【0021】
また、マスク径D=1.6mmにすると、図4に示すような光強度分布が得られる。図4は、図2及び図3と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。このようなマスクを採用すると、よりメインローブ径を小さくすることができるが、サイドローブの大きさが大きくなっていることも分かる。
【0022】
例えばマスク径D=1.6mmとした場合、PD108では、図5に示すような光強度分布が得られる。図5は、図2乃至図4と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。光ディスク150上でサイドローブが存在するので、当然ながらPD108上でもサイドローブが発生してしまっている。
【0023】
そこで、図6に示すように、集光レンズ107とPD108の間に、サイドローブ除去のためのピンホール109を設けると、PD108上の光強度分布は図7のようになる。図7は、図2等と同様に縦軸は光強度を表し、横軸は位置を表す。このようにすれば、メインローブ径を小さくした上で、サイドローブ除去が行える。但し、背景技術の欄で述べたように、ピンホール109の機械的な位置合わせが問題となる。
【0024】
このような超解像効果を用いれば現在の光ディスクの記憶容量を増加させることができる。例えばBlu-rayディスク(BDと呼ぶ)の線密度とトラックピッチを共に1.33倍した大容量BDのROM(Read Only Memory)をモデル化して、隣接トラックからのクロストークの影響を3T信号に着目してシミュレーションを行った結果を図9及び図10に示す。なお、このシミュレーションでは、図8のように、矢印で示したトラックには、3T信号が連続して記録されており、ほぼ(1)乃至(5)の3T信号までは隣接トラックに8T信号が記録されているが、(6)以降の3T信号については、隣接トラックには他の信号が記録されていないものとする。
【0025】
例えば、収差のない理想的な状態において、信号波形がどのように変化するかを図9に示す。図9では、縦軸は信号強度を表し、横軸は位置を表す。図9において実線は図1に示すようなピンホール109を用いない場合を示し、点線は図6に示すようにピンホール109を用いる場合を示す。ピンホール109を用いる場合には、光量は減少しているが、信号波形はほぼ一定の変化を行っており、干渉の影響はほとんど見られない。一方、ピンホール109を用いない場合には、信号波形が一定しておらず、点線で示している図8の(6)以降の信号部分に対応する位置では明らかにレベルが上昇して干渉の影響を受けている。
【0026】
また、例えば光ピックアップの球面収差0.033λ、光ディスク150のチルト0.2deg(Rad)(コマ収差)、0.1deg(Tan)(コマ収差)、光ディスク150の厚さ変動±5μm(球面収差)が存在するものとしてシミュレーションを行うと、図10に示すような信号波形が得られる。図10では、縦軸は信号強度を表し、横軸は位置を表す。図10でも実線は図1に示すようなピンホール109を用いない場合を示し、点線は図6のようにピンホール109を用いる場合を示す。ピンホール109を用いる場合には、信号波形のレベルはより低くなり、波形の形状も悪くなるが、ほぼ一定の変化を行っている。しかし、ピンホール109を用いない場合には、信号波形のレベルは大きいが、安定した信号波形が得られておらず、点線で示している図8の(6)以降の信号部分に対応する位置では明らかにレベルが上昇して干渉の影響を受けている。
【0027】
以上のように、ピンホール109を用いることは、既存の光ディスクを、線密度及びトラックピッチを上げて大容量化する場合には有効であると考えられる。
【0028】
上で述べたように機械的にピンホール109を導入することは問題であり、同様の効果を得るために、本実施の形態では、PD108に代わって多数のPDを含むPDアレイを導入すると共に、ピンホール109と同様の効果を奏するように選択的に各PDの感度等を設定することによって、メインローブの範囲内の光のみ受光するようにする。これによって、ピンホールの位置調整を省略することができる。
【0029】
例えば図11に示すように、例えば各々1.4μm角で50×50個のPD201aを並べたPDアレイ201を採用する。全体のサイズは75×75μm角程度である。このようなPDアレイ201を採用すれば、スポット径30μm程度の再生信号光スポットには有効である。
【0030】
図11に重ねて示した光強度分布のメインローブの範囲を擬似的に円Bで示すと、当該円Bに入るPD(ハッチング付き)については、基本的に当該PD又は当該PDからの出力をイネーブルする。なお、最も受信強度が大きいPDをCとして示しており、この位置Cと同じ行及び列のPDについては、円Bに入るものでも、当該PD又は当該PDからの出力をイネーブルの対象から除外する。これは、1乃至4の4つの部分に領域分割を行って、従来から行われてきたトラッキングなどの制御に受光信号を用いるためである。
【0031】
なお、実際には円Bは、円ではない場合もあり、受光強度が極小となるPDを探索して、当該PD及び当該PDより内側のPDを基本的なイネーブル対象とする。
【0032】
このようなPDアレイを用いることによって、大容量の光ディスクからのデータ再生が可能となる。すなわち、再生時に、超解像効果によって生ずるサイドローブの部分を受光しなくなるので、クロストークの影響を低減することができるようになる。また、PDアレイ201のほぼ中心に光スポットが照射されることが好ましいが、PDアレイ201のサイズ自体にある程度の余裕を持たせておけば、位置合わせを完璧に行う必要が無く、光ディスクのチルトや厚みむら等の外乱に対しても容易に対処できる。当然、ピンホールを機械的に配置しないので、ピンホールの位置調整の必要もない。また、PD1つ1つのサイズも小さくなるため、応答速度も速くなる。
【0033】
[実施の形態1]
図12に本実施の形態における光ディスク再生装置300の機能ブロック図を示す。光ディスク再生装置300は、上で述べたようなPD1乃至9等を含むPDアレイ201と、PDアレイ201に含まれるPDのうち必要とされるPDを実質的に選択する情報を格納する不揮発性メモリ206と、PDアレイ201の各PDに接続されているスイッチSW1乃至3等を含むアナログスイッチIC202と、当該アナログスイッチIC202に接続されており、各PDからの信号をA/D変換して受光強度に応じたディジタル値を生成するなどの信号処理を実施する信号処理回路203と、信号処理回路203による各PDの受信強度の値から図11において示したようなハッチング付きのPDを特定する処理などを実施する、内蔵メモリ204a付きの演算回路204と、演算回路204の演算処理などで用いられるデータを保持するメモリ207と、演算回路204によって指定されたPDについて選択するための情報を不揮発性メモリ206に書き込むアドレス選択回路205とを含む。
【0034】
次に、初期設定処理について説明する。まずPDアレイ201に対して、光スポットを照射する。この際、演算回路204は、アドレス選択回路205に、PDアレイ201に含まれる各PDを順番に選択するように指示する。アドレス選択回路205は、所定時間間隔で、各PDを選択する情報を不揮発性メモリ206に書き込む。例えばPD1、PD2、PD3、といった順番に選択する場合には、(10000....)(010000....)(00100....)といったビット列を不揮発性メモリ206に書き込む。そうすると、SW1、SW2、SW3といった順番で、アナログスイッチIC202の各スイッチがオンになる。信号処理回路203は、アナログスイッチIC202からの信号をA/D変換して受信強度に応じたディジタル値を演算回路204に出力する。演算回路204は、例えばメモリ207にPDの識別子と共に受信強度に応じたディジタル値(以下、出力値と呼ぶ)を格納する。このような処理をPDアレイ201内の全てのPDについて実施すれば、受光状況がメモリ207に蓄積されるようになる。
【0035】
その後、演算回路204は、メモリ207に格納されている受光状況データを参照しつつ、図13及び図15に示す処理を実施する。まず、全てのPDの出力値から最大値を特定すると共に、当該最大値を出力したPDの位置C(x1,y1)を検出する(ステップS1)。位置Cを中心に、上下、左右につき出力値極小となるPD位置P(x1,y2)、Q(x1,y3)、R(x3,y1)、S(x2,y1)を特定する(ステップS3)。なお、x、y共に左下が原点で、各PDでxもyもその方向に一つ移動すると1つずつ座標値がインクリメントされるものとする。そして、カウンタiを1に初期化する(ステップS5)。
【0036】
その後、演算回路204は、(x1+i)列について(y1+1)から順にyを増加させる方向に探索して出力値極小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDとして選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS7)。ここでは、図14の(4)の領域について処理している。通常は、出力値は順に下がってゆくので、出力値が上昇したら一つ前のPDに戻って当該PDまでを選択する。
【0037】
また、演算回路204は、(x1+i)列について(y1−1)から順にyを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS9)。ここでは、図14の(3)の領域について処理している。
【0038】
さらに、演算回路204は、(x1−i)列について(y1+1)から順にyを増加させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS11)。ここでは、(1)の領域について処理している。
【0039】
また、演算回路204は、(x1−i)列について(y1−1)から順にyを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS13)。ここでは、(2)の領域について処理している。
【0040】
そして、iを1インクリメントし(ステップS15)、i>(x2−x1)が成立するか判断する(ステップS17)。この条件を満たしていない場合にはステップS7に戻る。一方、この条件を満たした場合には、処理の方向を変えるために端子Aを介して図15の処理に移行する。
【0041】
また、演算回路204は、iを1に初期化する(ステップS19)。
【0042】
その後、演算回路204は、(y1+i)行について(x1+1)から順にxを増加させる方向に探索して出力値極小となる位置のPDを探索し、(x1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDとして選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS21)。ここでは、図14の(4)の領域について処理している。
【0043】
また、演算回路204は、(y1+i)行について(x1−1)から順にxを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(x1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS23)。ここでは、図14の(3)の領域について処理している。
【0044】
さらに、演算回路204は、(y1−i)行について(x1+1)から順にxを増加させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(y1+1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS25)。ここでは、(1)の領域について処理している。
【0045】
また、演算回路204は、(y1−i)列について(x1−1)から順にxを減少させる方向に探索して出力最小となる位置のPDを探索し、(x1−1)から当該位置までのPDを受光対象PDを選択し、選択PDのアドレスをアドレス選択回路205に出力する。アドレス選択回路205は、不揮発性メモリ206において選択PDをオンにセットする(ステップS27)。ここでは、(2)の領域について処理している。
【0046】
そして、iを1インクリメントし(ステップS29)、i>(y2−y1)が成立するか判断する(ステップS31)。この条件を満たしていない場合にはステップS21に戻る。一方、この条件を満たした場合には、処理を終了する。なお、ステップS7乃至S13と、ステップS21乃至S27で、重複する判断を行う場合もあるが、いずれかでオンと判断されたPDについてはオンすればよい。
【0047】
なお、ステップS7とS21でオンにセットされたPD群、ステップS9とS23でオンにセットされたPD群、ステップS11とS25でオンにセットされたPD群、ステップS13とS27でオンにセットされたPD群については、それぞれ特定できるようにする。そして、演算回路204は、信号処理回路203に、PD群についてのデータを設定する。
【0048】
このようにすれば、以降の処理では、不揮発性メモリ206にオンが設定されたPDに接続された、アナログスイッチIC202のスイッチSWはオンになるので、受光強度に応じた信号が信号処理回路203が入力される。信号処理回路203は、PD群毎に各PDの信号値を加算し、それぞれヘッドアンプに出力する。これによって、ヘッドアンプなどの、通常の信号処理を従来から保持している回路にて行うことができるようになる。信号処理回路203においてさらに他の処理を行うようにしても良い。
【0049】
なお、演算回路204は、例えば内蔵メモリ204aに格納されているプログラムに従って上記処理を行うようにしても良いし、上記処理のための専用の演算回路を保持するようにしても良い。
【0050】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図13及び図15で示したアルゴリズムは一例であって様々な変形が可能である。さらに、PDアレイ201についても、個々のPDのオン/オフ自体を制御できるようにする場合には、アナログスイッチIC205を用いない場合もある。さらに、受光感度の調整をオン又はオフ以外に設定できる場合には、例えば、受光強度が極小となるPDについては0.5程度に設定し、上の処理ではオンに設定された他のPDについては1に設定するなど、グラフィックスの分野におけるアンチエイリアシングのような調整を行うようにしても良い。
【0051】
その他、光ディスク再生装置300を一例として述べたが、当然ながら光ディスク記録再生装置においても、本発明は有効である。さらに、メインローブの範囲内であるPDを探索する処理の一例を示したが、メインローブの範囲外のPDを特定し、残余のPDがメインローブの範囲内と判断するようなアルゴリズムを採用するようにしても良い。メインローブの範囲内とされる範囲についても、より少なく受光強度が極小となるPDを外すようにしても良いし、多少多めにメインローブの範囲内とするようなアルゴリズムを採用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
201 PDアレイ 202 アナログスイッチIC
203 信号処理回路 204 演算回路
205 アドレス選択回路 206 不揮発性メモリ
207 メモリ 300 光ディスク再生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子を含む受光素子アレイと、
前記受光素子アレイに含まれる前記複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段と、
を有し、
前記選択手段は、
前記受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又は前記メインローブの範囲外となる受光素子を特定し、前記メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルする
受光装置。
【請求項2】
照射対象物上にレーザ光を超解像効果を生じさせつつ集光させると共に、前記照射対象物からの反射光を前記受光素子アレイ上に集光させる手段
をさらに有する請求項1記載の受光装置。
【請求項3】
前記選択手段が、
前記光スポットにおいて最も出力値の大きい受光素子を中心受光素子として検出し、
前記中心受光素子と同じ行の受光素子又は当該受光素子からの出力と、前記中心受光素子と同じ列の受光素子又は当該受光素子からの出力とを、前記イネーブルされた前記受光素子又は当該受光素子からの出力から除外する
請求項1記載の受光装置。
【請求項4】
前記選択手段が、
前記光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子を、前記中心受光素子と同じ行と同じ列の受光素子で4グループに分ける
請求項3記載の受光装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つ記載の受光装置を有する光ディスク再生装置。
【請求項6】
複数の受光素子を含む受光素子アレイに初期的に光スポットを照射するステップと、
前記光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又は前記メインローブの範囲外となる受光素子を特定し、前記メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするステップと、
を含む受光素子選択方法。
【請求項1】
複数の受光素子を含む受光素子アレイと、
前記受光素子アレイに含まれる前記複数の受光素子の各々又は各々からの出力の採否を決定する選択手段と、
を有し、
前記選択手段は、
前記受光素子アレイに照射された光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又は前記メインローブの範囲外となる受光素子を特定し、前記メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルする
受光装置。
【請求項2】
照射対象物上にレーザ光を超解像効果を生じさせつつ集光させると共に、前記照射対象物からの反射光を前記受光素子アレイ上に集光させる手段
をさらに有する請求項1記載の受光装置。
【請求項3】
前記選択手段が、
前記光スポットにおいて最も出力値の大きい受光素子を中心受光素子として検出し、
前記中心受光素子と同じ行の受光素子又は当該受光素子からの出力と、前記中心受光素子と同じ列の受光素子又は当該受光素子からの出力とを、前記イネーブルされた前記受光素子又は当該受光素子からの出力から除外する
請求項1記載の受光装置。
【請求項4】
前記選択手段が、
前記光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子を、前記中心受光素子と同じ行と同じ列の受光素子で4グループに分ける
請求項3記載の受光装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つ記載の受光装置を有する光ディスク再生装置。
【請求項6】
複数の受光素子を含む受光素子アレイに初期的に光スポットを照射するステップと、
前記光スポットのメインローブの範囲に入る受光素子又は前記メインローブの範囲外となる受光素子を特定し、前記メインローブの範囲に入る受光素子又は当該受光素子からの出力をイネーブルするステップと、
を含む受光素子選択方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−165387(P2010−165387A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4351(P2009−4351)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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