説明

受電機器のPoE電源回路

【課題】 POEの受電機器は、受電機器の最大消費電力に制限があるため、機能が豊富な受電機器を接続する場合は、マージンが少なくなり、搭載する機能と消費電力をトレードオフしなければならないという問題点があった。
【解決手段】 入力電圧の極性を検出する極性検出回路15と、ブリッジ整流ダイオードDi1、Di2、Di3、Di4の各素子に並列に接続したスイッチ回路SW1、SW2、SW3、SW4と、前記極性検出回路の検出結果に基づき、ブリッジ整流ダイオードDi1、Di2、Di3、Di4の各素子に並列に接続したスイッチ回路SW1、SW2、SW3、SW4の開閉を行うことにより、整流ダイオードに流れている順方向電流をスイッチ回路へバイパスする手段とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク側から電力供給を受けて動作を行う受電機器の電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク側から電力供給を受けて動作を行うシステムとして、2003年6月にIEEE802.3afにて規格化されたカテゴリ5のLANケーブルを用いて電力を供給するPower over Ethernet(登録商標)(以下、PoE)がある。
【0003】
このPoEでは、入力されるDC電圧は48Vとなっているが、その極性は、クロスオーバーケーブルの使用を可能にするため固定されていない。このため、PoEでは、対応したスイッチングHUBなどから電力の供給を受ける受電機器(Powered Device)は、その電源回路(以下POE電源回路と記す)において、POE電源回路の入力段にブリッジ整流ダイオードを備えている。
【0004】
従来、電源回路に用いられるブリッジ整流ダイオードとしては、交流電源から供給される交流電力の整流を行うための、ブリッジ整流回路がある。交流電源に接続されるブリッジ整流回路で、損失を低減するために、ダイオードと並列に、スイッチ素子を接続し、ゼロクロスを検出することで、スイッチ回路のON/OFFを制御する技術が知られている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−345250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、スイッチ回路によりバイパスされるダイオードで生ずる損失を防ぐことはできたが、交流電源に接続された整流回路であることから、極性が時間的に変化するため、電流経路上のダイオードを全てバイパスすることはできないため、ダイオードによる損失が発生するという問題があった。特にPOEで用いられる受電機器においては、受電機器の最大消費電力に制限があるため、機能が豊富な受電機器を接続する場合は、最大消費電力のマージンが少なくなり、搭載する機能と消費電力をトレードオフしなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記事情によりなされたもので、その目的は、POEの受電機器の電力回路の損失をより低減する電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、入力電圧の極性を検出する極性検出回路と、ブリッジ整流ダイオードの各素子に並列に接続したスイッチ回路と、前記極性検出回路の検出結果に基づき、ブリッジ整流ダイオードの各素子に並列に接続したスイッチ回路の開閉を行うことにより、整流ダイオードに流れている順方向電流をスイッチ回路へバイパスする手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
このような構成を有することにより、整流ダイオードでの損失をほとんど0にできるようになる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明では、整流ダイオードでの損失をほとんど0にできるため、12.95Wに制限されている受電機器の最大消費電力に対して、マージン拡大または、搭載する機能を増やすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の適用されるシステム構成例として、PoEについて、図1を用いて説明する。PoEは、2003年6月にIEEE802.3afにて規格化されたカテゴリ5のLANケーブルを用いて電力を供給する標準規格である。
【0012】
図1はシステムの全体構成を示す図である。PoEでは、通常のスイッチングHUB1が接続されたシステムにおいて、給電能力があるPoEに対応したPoEスイッチングHUB2が設けられる。このPoEスイッチングHUB2から供給される電力は、DC電圧48Vで15.4Wという給電能力があるため、IP電話機3やLANスイッチルータ4、ネットワークカメラ5等の、従来のシステムより高機能な受電機器(Powered Device)の接続が可能となっている。
【0013】
図2は、POEシステムに接続されるネットワークカメラ5の概略構成図を示す図である。ネットワークカメラ5は、レンズ等を含むCCD部6、信号処理部7、電源部8から構成される。
【0014】
図3は、ネットワークと受電機器との接続部となる電源部の構成を示す図である。
POEでは、供給されるDC電圧(48V)の極性は、クロスオーバーケーブルの使用を可能にするため固定されていないため、受電機器のPOE電源回路の入力段にはブリッジ整流ダイオード10が備けられている。
【0015】
各ブリッジ整流ダイオード10は、第1の入力端11から第1の出力端13の向きに設けられたダイオードDi1、第2の出力端14から第2の入力端12の向きに設けられたダイオードDi2、に第2の入力端12から第1の出力端13の向きに設けられたダイオードDi3、第2の出力端14から第1の出力端11の向きに設けられたダイオードDi4が設けられている。そして、それぞれの、整流ダイオードDi1、Di2、Di3、Di4には並列にスイッチ回路SW1、SW2、SW3、SW4が接続されている。これらのスイッチ回路SW1、SW2、SW3、SW4は、一般にFETやトランジスタ等の半導体素子で構成されるが、メカニカルなスイッチ回路を用いてもよい。
【0016】
更に、第1の入力端11と第2の入力端13の間には、POEスイッチングHUB2から供給される給電電力の極性を判定する、極性検出回路15が設けられている。
【0017】
図4は、極性検出回路15の構成例の一例を示す図である。極性検出回路15は、コンパレーター16で、第1の入力端11側のa点の電圧とb点の電圧を比較し、入力端11側のa点の電圧が高いとき出力信号17を出力する。そして、この出力信号は、SW1とSW2に出力されるとともに、論理を反転してSW3とSW4に出力される。このため、第1の入力端11側のa点の電圧が高い場合は、SW1とSW2をON(短絡)し、ダイオードがバイパスされる。一方、SW3とSW4は反転信号となるため、SW3とSW4は開放にするよう制御される。
【0018】
逆に、第2の入力端13側の電圧(b点)が高い場合は、SW3とSW4をON(短絡)となり、かつSW1とSW2を開放にするよう制御する。
ここで、重要となる点は、経路となる2つの整流ダイオードの両方をスイッチ回路によりバイパスさせる点にある。つまり、従来技術のような、交流回路に接続された整流回路では、極性が時間的に変化するため、極性が変化するゼロクロス時の動作が不安定になる恐れがあるため、電流経路上の全ての整流ダイオードをバイパスすることは、難しかった。
【0019】
これに対し、本実施例のPOEでは、極性は不明なものの直流電源であるため、極性は時間的に変化しないため、電流系路上の全ての整流ダイオードをバイパスしても、問題が生じない。
【0020】
以下、ダイオードの電圧降下の状況について、説明する。
一般的な整流ダイオードでは、電圧降下はほぼ1Vある。このため、電流の流れが往復で2つのダイオードを経由するため、往復で2Vの電圧降下が生ずる。このため、第1出力端13と第2出力端14との電位差は46Vとなる。
【0021】
ここで、受電機器の最大消費電力は、12.95Wと決められているため、流れる電流は、
12.95W/46V=0.28A
よって、2つの整流ダイオードでの電力損失は、
2V×0.28A=0.56W
となる。
本実施例では、極性判定回路15により、検出した整流ダイオードをバイパスさせる。例えば、a点の電圧が高い場合は、SW1とSW2の両方をONとなるため、第1の入力端11→SW1→第1出力端→負荷回路→第2出力端→SW2→第2入力端という経路で電流が流れるため、電流回路で電圧降下を生じない。
【0022】
以上の構成をとることにより、本発明は、整流ダイオードでの損失をほとんど0にできるため、12.95Wに制限されている受電機器の最大消費電力に対して、マージン拡大または、搭載する機能を増やすことが可能となる。このため、機能が豊富なPAN・TILT・ZOOM機能付きの監視カメラなどを、消費電力をトレードオフすることなく、PoE対応にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に関わるシステムの全体構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に関わるネットワークカメラ5の概略構成図の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施の形態に関わる電源部の構成を示す図。
【図4】本発明の実施の形態に関わる極性検出回路の構成例を示す図
【符号の説明】
【0024】
1・・・スイッチングHUB
2・・・PoEスイッチングHUB
5・・・ネットワークカメラ
6・・・CCD部
7・・・信号処理部
8・・・電源部
10・・・ダイオードブリッジ回路
15・・・極性判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークから給電を受けて動作する受電機器のPOE電源回路において、
入力電圧の極性を検出する極性検出回路と、
ブリッジ整流ダイオードの各素子に並列に接続したスイッチ回路と、
前記極性検出回路の検出結果に基づき、ブリッジ整流ダイオードの各素子に並列に接続したスイッチ回路の開閉を行うことにより、整流ダイオードに流れている順方向電流をスイッチ回路へバイパスする手段と
を具備することを特徴とするPOE電源回路。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、半導体素子で構成されることを特徴とする請求項1に記載の受電機器のPOE電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11093(P2009−11093A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170763(P2007−170763)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】