説明

口唇用化粧料

【課題】本発明は、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつ塗布膜の平滑性とツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れる口唇用化粧料に関する。
【解決手段】次の成分(a)〜(c);成分(a)エステル置換度が3〜6である12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステル、成分(b)エチレン・プロピレンコポリマー、エチレンホモポリマー、フィッシャートロプシュワックスから選ばれる炭化水素ワックスの一種または二種以上、成分(c)ジグリセリンとイソステアリン酸のエステルでありエステル置換度が2以上であるジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン重合度が7〜11で脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸でありエステル化率が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリルから選ばれるエステル油剤の一種または二種以上を配合したことを特徴とする口唇用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルと特定の炭化水素ワックスと特定エステル油剤を配合したことを特徴とする口唇用化粧料に関するものであり、更に詳しくは、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつ塗布膜の平滑性とツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れる口唇用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、唇にツヤやうるおい感を付与するために、高粘性油剤であるポリブテンや高屈折率油剤であるメチルフェニルポリシロキサンなどを配合する技術が知られている。それらの技術からさらに、高粘性油剤のべたつきを軽減して使用性を向上した技術も検討されている(例えば特許文献1)。
また、シワなどの形態トラブルを効果的に隠して唇のシワを目立たなくするために、特定の性質を有する板状複合粉末と球状複合粉末を組み合わせて配合する技術が検討されている(例えば特許文献2)。
一方、化粧料にショ糖エステルを配合する技術が検討され、いくつかその例が挙げられる。例えば、ショ糖の分岐脂肪酸エステルを配合して化粧もちを改善した粉体含有化粧料の技術(例えば特許文献3)や、HLB12以下のショ糖脂肪酸エステルを粉体含有油性固形化粧料に配合することにより、溶融充填性が良好でマットな質感が得られる技術(例えば特許文献4)などが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−316910号公報
【特許文献2】特開2009−173573号公報
【特許文献3】特開2000−226315号公報
【特許文献4】特開2002−302415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、口唇化粧料において、唇のシワの凹凸が目立つ場合や、荒れてささくれだった場合などの不均一な唇表面に塗っても、シワや凹凸を埋めるに十分な厚みがあり、かつ表面の平滑性に優れる塗布膜が得られるため、高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつそれらの効果が長時間持続し、さらにうるおい感にも優れる口唇用化粧料を提供することを課題とする。
従来の技術のうち、高粘性油剤や高屈折率油剤を配合する技術は、唇にツヤやうるおい感を付与することは可能であるが、その効果は健常な唇で表面の平滑性がある程度備わっている唇に対して発現するもので、唇のシワの凹凸が目立つ場合や、荒れてささくれだった場合などの不均一な唇表面に適用した場合の効果は、満足のいくものではなかった。シワなどの形態トラブルを効果的に隠して唇のシワを目立たなくするために、特定の性質を有する板状複合粉末と球状複合粉末を組み合わせて配合する技術は、ツヤやうるおい感とその効果の持続性があるものではなかった。
さらに、ショ糖脂肪酸エステルを化粧料に配合する技術で得られる効果は、化粧持ちやパウダリーな使用感であり、いずれの技術も本発明の高いツヤ感やうるおい感とは異なるものであった。

【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルと特定の炭化水素ワックスと特定のエステル油剤を配合することにより、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても平滑な塗布膜が得られるため、高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつ塗布膜の平滑性とツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明の口唇用化粧料は、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつ塗布膜の平滑性とツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れる口唇用化粧料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられる成分(a)のエステル置換度が3〜6である12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルは、ショ糖の6個の水酸基のうち3〜6個が12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルを形成したものである。12−ヒドロキシステアリン酸のエステル置換度が3より少ないものであると、成分(b)および成分(c)との相溶性が悪くなり本発明には適さない。本発明に用いられる成分(a)の12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルは、本発明の口唇用化粧料において、唇の凹凸や荒れてささくれ立った唇表面を覆うに十分な厚みのある塗布膜を形成して唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果や、塗布後に油剤が浮き出てくるようなツヤ感に優れ、さらに水分閉塞効果を高めることによるうるおい感を付与する効果を有する。市販品としては、CRODESTA 5−HS、CRODESTA 4−HS(以上、クローダジャパン社製)等が挙げられる。
【0008】
本発明の口唇化粧料における、12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルの好ましい配合量は、0.5〜30質量%(以下単に「%」と示す。)、さらに好ましくは0.5〜20%である。この範囲であると、のびの重さやべたつきがなく、厚みのある塗布膜を形成し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくするのに好ましい。
【0009】
本発明の成分(b)のエチレン・プロピレンコポリマー、エチレンホモポリマー、フィッシャートロプシュワックスから選ばれる炭化水素ワックスは、本発明の口唇化粧料において塗布膜の厚みを長時間持続し、ツヤの持続性を高めるものである。その融点は、特に高温での安定性を確保するために40℃以上が好ましく、成分(b)がエチレン・プロピレンコポリマーである場合、分子量500〜700の範囲にあるものが特に好ましい。市販品としてはPERFORMALENE500、PERFORMALENE655、PERFORMALENE725、PERFORMALENE850(以上、ニューフェーズテクノロジー社製)、EP−700、EP−1100(以上、Baker Petrolite社製)、CIREBELLE108、CIREBELLE109L、CIREBELLE303(以上、CIREBELLE社製)等が挙げられる。
【0010】
本発明の口唇化粧料における、成分(b)の好ましい配合量は、1〜20%である。この範囲であれば、塗布膜の厚みを長時間持続し、ツヤの持続性を高める効果に優れるものとなる。
【0011】
本発明の成分(c)のジグリセリンとイソステアリン酸のエステルでありエステル置換度が2以上であるジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン重合度が7〜11で脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸でありエステル化率が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリルから選ばれる1種又は2種以上のエステル油は、本発明において、成分(a)の浮き出てくるようなツヤ感を高めることにより唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果を顕著なものにすると同時に、うるおい感にも優れる効果を有する。成分(c)がジグリセリン脂肪酸エステル及び/またはポリグリセリン脂肪酸エステルのとき特に、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果とうるおい感が優れたものになる。
成分(c)のうち、ジグリセリンとイソステアリン酸のエステルは、エステル置換度が2以上であるジグリセリン脂肪酸エステルであり、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリルが挙げられる。市販品としては、コスモール42V、コスモール43V、コスモール44V(以上、日清オイリオグループ社製)等が例示でき、これらを使用することができる。
成分(c)のうち、グリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル化率が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合して環を形成していても良いが、好ましくは、鎖状にグリセリンが重合したものである。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、上記のように炭素数16〜20の分岐脂肪酸であるが、この中でも植物より抽出して得られる炭素数18のイソステアリン酸がより好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、上記のように65%以上であり、75%以上が好ましく、グリセリンの重合度は、10のもの(デカグリセリン)が好ましい。市販品としては、NIKKOL Decaglyn 10−IS(日光ケミカルズ社製)、S−フェイス IS−1009P(阪本薬品工業社製)等が例示でき、これらを使用することができる。
なお本発明において、エステル化率とは、ポリグリセリンのエステル化可能な全水酸基のうち、脂肪酸とエステル化している水酸基の比率をいう。
成分(c)のうちリンゴ酸ジイソステアリルは、リンゴ酸とイソステアリルアルコールのジエステルであり、市販品としては、コスモール222(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる成分(c)の好ましい配合量は、10〜98.5%である。この範囲で配合すると、ツヤ感を高めることにより唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果を顕著なものにすると同時に、うるおい感にも優れるものとなる。
【0013】
本発明の口唇用化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分(a)、(b)、(c)の他に、通常化粧料に配合される成分として、成分(a)、(b)、(c)以外の油性成分、無機顔料、有機顔料及び体質顔料等の粉体、界面活性剤、水、多価アルコール、低級アルコール、保湿剤等の水性成分、水溶性高分子、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。
【0014】
また、本発明に使用される油剤としては、成分(a)、(b)、(c)以外で、通常化粧料に用いられる油分であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤等を利用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水添マイクロクリスタリンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、モクロウ等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、モンタンワックス等のロウ類、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリメリト酸トリトリデシル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、ホホバ油等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、エチルトリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類が挙げられ、油性ゲル化剤として、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリンのデキストリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸スクロース、イソステアリン酸スクロース、酢酸ステアリン酸スクロースなどの成分(a)以外のショ糖脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、およびジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0015】
粉体成分としては、化粧料に一般に使用される粉体として用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、炭化珪素、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、モンモリロナイト等の粘土鉱物、およびそれらの有機変性物、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化鉄被覆ガラスフレーク等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられる。これら粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。なお、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の一種又は二種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0016】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステルアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0017】
更に、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、エチアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のもの、他にタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0018】
本発明の口唇用化粧料としては、特に限定されないが、形状として固形状、半固形状、液状のものが挙げられ、特に唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果や、平滑性の高い塗布膜を形成し高いツヤ感が顕著に得られる点で固形が好ましい。また、口紅、リップグロス、リップトリートメント、リップクリーム、下地用のリップベース、口紅オーバーコートなどが挙げられる。剤型は、特に限定されないが、化粧持ちやツヤの点から油相を連続相とする油性または油中水型が好ましい。
【0019】
本発明の口唇用化粧料の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば成分(a)、成分(b)、成分(c)および任意の油性成分を加熱溶融したのち、任意の粉体や水系成分などを均一に混合分散し、これを容器または型に加熱溶解後に流し込み充填し、冷却して得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0021】
実施例1〜6および比較例1〜6:口紅(油性スティック状)
表1に示す組成の口紅を下記の製造方法により調製し、各試料について、塗布膜の平滑性と高いツヤ感、唇のシワの目立ちにくさ、ツヤの持続性、うるおい感の項目の評価を行い、その結果も併せて表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
※1:CRODESTA 5−HS(クローダ社製)
※2:CRODESTA 4−HS(クローダ社製)
※3:シュガーワックスS−10E(第一工業製薬社製)
※4:EP−700(Baker Petrolite社製)
※5:CIREBELLE108(CIREBELLE社製)
※6:精製キャンデリラワックスSR−3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※7:コスモール43V(以上、日清オイリオグループ社製)
※8:コスモール222(日光ケミカルズ社製)
※9:PARACERA256(PARAMELT社製)
※10:AEROSIL 300(日本アエロジル社製)
(製造方法)
A:成分1〜15を100℃に加温して均一に溶解する。
B:Aに成分16〜24を加え均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、100℃にて口紅容器に充填し冷却する。
【0024】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価方法1:官能評価)
各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。唇のシワの目立ちにくさ等の本発明品の効果を評価しやすいように、パネルは唇の荒れを自覚している20名を選定した。パネル各人がイは塗布膜の平滑性と高いツヤ感、ロは唇のシワの目立ちにくさを試料塗布時に観察し、ハのツヤの持続とニのうるおい感については塗布後3時間経過した時の状態を観察し、下記絶対評価基準にて6段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0025】
(官能評価項目)
イ.塗布膜の平滑性と高いツヤ感
ロ.唇のシワの目立ちにくさ
ハ.ツヤの持続性
ニ.うるおい感
【0026】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎:5点を超える
○:3点を超える5点以下
△:2点を超える3点以下
×:2点以下

(評価方法2:物性評価)
さらに、ロの唇のシワの目立ちにくさ、およびハのツヤの持続に関しては、光沢計を用いた物性による評価も併せて行った。
精密研磨紙(3Mラッピングフィルムシート 住友スリーエム社製)粒度15ミクロンと30ミクロンのシート上にそれぞれ、スティック状のサンプルを約100gの荷重で5往復で均一に塗布し、塗布直後と塗布後に40℃の恒温槽中で3時間放置したものの光沢度を測定した。光沢度は光沢計(VG7000 日本電色工業社製)を用い、入射角45℃、測定角45℃のときの読み値とした。
ロの唇のシワの目立ちにくさは、15ミクロンと30ミクロンの粒度の異なる2種のシート上での塗布膜の光沢度の差の絶対値を評価することで代用物性とした。様々な深さや幅をもつ唇のシワや荒れてささくれ立った状態を2種の粒度のシートに見立て、浅いシワの上でも深いシワの上でも同様に均一で平滑な塗布膜を形成して唇のシワを目立たなくする効果があれば、光沢度の差は小さくなると考えられる。一方、ハのツヤの持続は、粒度30ミクロンのシートのサンプル塗布直後と40℃の恒温槽中で3時間放置したものの光沢度の差で評価した。凹凸の大きいシート上でも、高温条件下で塗布膜の平滑性を保つことができれば、ツヤの持続性に優れるということができる。
【0027】
(物性評価項目)
ロ.唇のシワの目立ちにくさ
粒度15ミクロンと30ミクロンのシートのサンプル塗布直後の光沢度計読み値の差の絶対値を判定した。
【0028】
判定基準
(差の絶対値):(評価) :(判定)
0以上2未満:光沢度が凹凸の大小に影響されずシワの目立たなさに優れる : ◎
2以上5未満:光沢度が凹凸の大小にほとんど影響されずシワが目立ちにくい: ○
5以上8未満:光沢度が凹凸の大小にやや影響されシワがやや目立つ : △
8以上 :光沢度が凹凸の大小に影響されシワが目立つ : ×

(物性評価項目)
ハ.ツヤの持続性
粒度30ミクロンのシートのサンプル塗布直後の光沢度計読み値から40℃の恒温槽中で3時間放置後の光沢度計読み値を引いた値を光沢度の差として判定した。
判定基準
(差) :(評価) :(判定)
−3以上 :ツヤが十分持続する : ◎
−3未満〜−7以上 :ツヤがほぼ持続する : ○
−7未満〜−11以上:ツヤが減少している : △
−11未満 :ツヤが大幅に減少している: ×

【0029】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1〜6の口紅は、比較例に比べ、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れるものであった。
一方、成分(a)のヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルを配合していない比較例1は、塗布膜の平滑性と高いツヤ感、唇のシワの目立ちにくさ、ツヤの持続性およびうるおい感のいずれの項目においても効果が得られなかった。また、成分(a)の代わりに分岐脂肪酸ショ糖エステルを配合した比較例2では、ツヤと唇のシワを目立たなくする効果、成分(a)の代わりに高屈折率油剤であるフェニルトリメチコンを配合した比較例3では、唇のシワの目立ちにくさ、ツヤの持続性およびうるおい感が得られず、さらに乳化剤や油ゲル化剤として用いられるポリステアリン酸ショ糖エステルを配合した比較例4では、塗布膜の平滑性と高いツヤ感、唇のシワの目立ちにくさ、ツヤの持続性が得られなかった。成分(b)の配合がない比較例5では、塗布膜の平滑性、ツヤ、うるおい感が特に得られず、成分(c)の配合がない比較例6では、ツヤ感以外の項目で効果が見られなかった。

【0030】
実施例7:リップグロス(油性液状)
(成分) (%)
1.ペンタヒドロキシステアリン酸ショ糖エステル※1 10
2.ポリエチレン※11 1
3.トリイソステアリン酸ジグリセリル※7 20
4.水添ポリイソブテン※12 40
5.テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル 10
6.流動パラフィン※13 残量
7.酸化チタン被覆ガラスフレーク※14 2
8.酸化チタン被覆合成金雲母※15 1
9.無水ケイ酸※10 3
10.赤色202号 0.2
11.黄色4号 0.2
12.酸化チタン 0.1
13.黒酸化鉄 0.01
14.フェノキシエタノール 0.2
15.香料 適量
※11:PERFORMALENE500(ニューフェーズテクノロジー社製)
※12:パールリーム18(日油社製)
※13:KLEAROL(SONNEBORN社製)
※14:メタシャイン1080RC−S(日本板硝子社製)
※15:プロミネンスSF(トピー工業社製)
(製造方法)
A:成分1〜6を100℃に加温して溶解し混合する。
B:Aに成分7〜14を加え均一に分散する。
C:Bを脱泡して100℃に加熱溶解して塗布体付き容器に流し込み充填する。
実施例7は、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れるものであった。
【0031】
実施例8:リップバーム(油性固形状)
(成分) (%)
1.パルミチン酸デキストリン 0.1
2.テトラヒドロキシステアリン酸ショ糖エステル※2 2
3.エチレン・プロピレンコポリマー※3 1
4.ポリエチレン※11 10
5.ノナイソステアリン酸ポリグリセリル−10※16 20
6.デカイソステアリン酸ポリグリセリル−10※17 10
7.ポリブテン※18 5
8.流動パラフィン※13 残量
9.ワセリン 10
10.ラウロイルグルタミン酸(オクチルドデシル/フィトステリル/
ベヘニル) 8
11.無水ケイ酸※10 0.1
12.(PET/ポリメタクリル酸メチル)積層末※19 0.2
13.フェノキシエタノール 0.1
14.トコフェロール 0.1
※16:S−フェイス IS−1009P(阪本薬品工業社製)
※17:NIKKOL Decaglyn 10−IS(日光ケミカルズ社製)
※18:ポリブテン2000H(出光興産社製)
※19:オーロラフレーク ブルー0.01(角八魚燐箔社製)

(製造方法)
A:成分1〜10を90℃に加温して溶解し混合する。
B:Aに成分11〜14を加え均一に分散する。
C:Bを90℃にてジャー容器に流し込み冷却させる。
実施例8のリップバームは、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れるものであった。
【0032】
実施例9:リップエッセンス(油中水型液状)
(成分) (%)
1.パルミチン酸デキストリン 5
2.テトラヒドロキシステアリン酸ショ糖エステル※2 10
3.フィッシャートロプシュワックス※5 1
4.ポリエチレン※11 5
5.ジイソステアリン酸ジグリセリル※20 10
6.テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル※21 5
7.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
8.ワセリン 10
9.ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/オクチルドデシル) 10
10.ジメチルシリル化無水ケイ酸※22 1
11.シリコーン2%処理ベンガラ 0.1
12.1,2−ペンタンジオール 0.1
13.トコフェロール 0.1
14.精製水 10
15.1,3−ブチレングリコール 3
16.グリセリン 2
※20:コスモール42V(日清オイリオグループ社製)
※21:エステロールPT−ISHV(ナショナル美松社製)
※22:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
(製造方法)
A:成分1〜9を90℃に加温して溶解し混合する。
B:Aに成分10〜13を加え均一に分散する。
C:成分14〜16を均一に混合溶解する。
D:Bを90℃に加熱し、Cを攪拌しながら注入して乳化する。
E:Dを脱泡してアプリケーター付き容器に充填する。
実施例9のリップエッセンスは、唇のシワの凹凸や荒れてささくれだった不均一な唇表面に塗っても、平滑な塗布膜が得られるため高いツヤ感を有し、唇のシワなどの凹凸を目立たなくする効果に優れ、かつツヤが長時間持続し、さらにうるおい感にも優れるものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
成分(a)エステル置換度が3〜6である12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステル;
成分(b)エチレン・プロピレンコポリマー、エチレンホモポリマー、フィッシャートロプシュワックスから選ばれる炭化水素ワックスの一種または二種以上;
成分(c)ジグリセリンとイソステアリン酸のエステルでありエステル置換度が2以上であるジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン重合度が7〜11で脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸でありエステル化率が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリルから選ばれる一種または二種以上のエステル油剤;
を配合することを特徴とする口唇用化粧料。
【請求項2】
前記成分(c)が、ジグリセリンとイソステアリン酸のエステルであり、エステル置換度が2以上であるジグリセリン脂肪酸エステル、及び/またはグリセリン重合度が7〜11で、脂肪酸が炭素数16〜20の分岐脂肪酸であり、エステル化率が65%以上の室温で液状のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる一種または二種以上のエステル油剤であることを特徴とする請求項1に記載の口唇用化粧料。
【請求項3】
前記成分(a)の配合量が0.5〜30質量%、成分(b)の配合量が1〜20質量%、成分(c)の配合量が10〜98.5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の口唇用化粧料。
【請求項4】
前記成分(a)の12−ヒドロキシステアリン酸のエステル置換度が4〜5である12−ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の口唇用化粧料。


【公開番号】特開2011−184416(P2011−184416A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54161(P2010−54161)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】