説明

可動家具部の駆動装置

電動モータおよび電気線接触用の接続インターフェースが設置されている収容部を備えた家具本体に可動状態で取り付けられている家具部のための駆動装置であって、電動モータは収容部の第1部分に設置されており、接続インターフェース(16)は収容部の第1部分(5)に対して限定的に移動するように取り付けられている収容部の第2部分(6)に設置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータおよび電気線接触用の接続インターフェースが設置されている収容部を備えた家具本体に可動状態で取り付けられている家具部のための駆動装置に関する。この電動モータは収容部の第1部分に設置されている。
【背景技術】
【0002】
このような駆動装置の利用はしばしばユーザには耳障りな騒音を発生させる。駆動装置を消音材料で包囲すると、あるいは駆動装置と家具本体との間に消音材料の領域を設けると、駆動装置から家具本体への騒音伝播による構造的騒音発生が低減される。そのように消音された駆動装置を備えた家具は例えばJP2002−253366A、JP2004−073622AおよびWO2002/062184A2にて開示されている。
【0003】
電動モータと電気線とが配置されている収容部を有した駆動装置は例えばWO2004/100632A1、EP0591665A1、WO2005/036715A1、EP0926803A2およびAT13792004にて開示されている。
【0004】
WO2004/100632A1は家具に可動状態で取り付けられた家具部のためのそのような駆動装置並びに消音材料で振動および騒音を低減させる予防措置に関する。EP0591665A1は2部分で成る収容部を有した駆動装置を解説する。その電動モータは収容部の第1部分に配置されており、電気線接触用の接続インターフェースは収容部の第2部分に配置されており、消音材料で成る領域が提供されている。WO2005/036715A1は電動モータ(ファンモータ)上の電気線接触および消音措置(収容部の接触インターフェース省略)とに関する。EP0926803A2は限定関係にて相対的可動状態に取り付けられている収容部部材によって電動モータ(ファン)の振動を減衰させるための予防措置に関する。AT13792004Aは電動モータによって駆動可能な排出レバーを備えた駆動装置に関する。
【0005】
消音材料領域により家具本体に駆動装置を取り付けることには問題がある。なぜなら、そのような取り付け方法による駆動装置には運用中に発生する振動によってその機能に影響が及ぶ可能性があるからである。例えば接続インターフェースと電気線との間で障害が発生する可能性が存在し、このため電動モータへの電力供給が妨害される可能性がある。もし駆動装置が消音材料領域のみによって家具に接続されている場合にはこの問題は特に深刻である。
【0006】
従ってこの問題を克服するために、従来的には望ましい消音程度よりも少ない消音程度で騒音対策を練ることが余儀なくされていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は消音措置によりその機能に悪影響が及ぶことなく用いるのに適した駆動装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は本願の「請求項1」の特徴を備えた駆動装置によって達成される。
【0009】
駆動装置の収容部が2部分で成る形態はまず、接触対象電気線への接続インターフェースの十分に信頼性が高い接続を保証する。なぜなら接続インターフェースを有する収容部の第2部分は家具本体または家具本体に固定されている搬送要素に対して望ましい程度に信頼性高く接続可能であるからである。一方、収容部の第1部分には収容部の第1部分に振動が伝達しないように消音材料領域が提供されており、その結果、接続インターフェースは解放状態である。
【0010】
収容部の第2部分が収容部の第1部分に対して専ら柔軟部分によって好適に接続されていれば特に単純な構造が可能である。この対処は接続インターフェースから少なくとも電動モータへと導く電気線をその柔軟部分に配置させる、よって収容部の第1部分と収容部の第2部分との間に、例えば収容部の2部分間で延びる電力ケーブルのごとき追加的接続が不要となる。
【0011】
一方、柔軟部分は収容部の第1部分と第2部分との非常に安価な接続を可能にする。収容部のそれら2部分は相対的に限定された移動性を有する。本発明の保護対象から除外されない他の構造的可能性は例えばスイベル継手または屈曲継手の利用である。しかし特にスイベル継手は収容部の2部分の限定された移動性が1軸回転に関連するだけであるという弱点を有することは着目すべきである。しかしながら多くの利用状況ではそれで十分であろう。
【0012】
接続インターフェースが導電材料製の穿孔ピンを有していれば本発明の駆動装置は特に有利である。家具本体または搬送要素に適した状態で設置されている電気線を貫通する穿孔ピンによって組立工程の1動作で駆動装置用の電力供給が確実に提供されるので、そのような形態の駆動装置は運用のために特に容易に接続することができる。収容部の2部分形態は収容部の第1部分に配置された構成部材(電動モータ、伝達機構、排出レバー、等々)の振動によって引き起こされる個々の穿孔ピンの湾曲を確実に阻止する。
【0013】
基本的には駆動装置は例えば家具の引出および扉のごとき駆動対象の可動家具部と、最も多様な駆動力伝達手段によって協調できる。例えばもし駆動装置が駆動力を家具部の開閉動作時全般にわたって適用するように意図されているなら、駆動装置は家具部の開閉動作全体にわたって可動家具部に連動していなければならない。例えば引張手段(特に歯付ベルトやケーブル)は駆動力伝達手段としてその目的で利用される。
【0014】
本発明の特に好適な実施例は電動モータにより駆動可能な排出レバーが収容部の第1部分に配置されたものである。その場合、駆動装置は可動家具部を家具本体の閉端位置から少なくともユーザが可動家具部の開動作を手動で実行できる程度に排出させる純排出装置の形態である。
【0015】
本発明の概念と特に一致する実施例は、駆動装置の運用時に騒音を発生させる駆動装置の全構成部材(例えば電動モータ、伝達機構または排出レバー)が収容部の第1部分に配置されたものである。
【0016】
収容部の第1部分から収容部の第2部分への振動の伝達を防止するためには、少なくとも消音材料の1領域が収容部の第1部分と第2部分との間に配置されている状態を全ての上記実施例に適用する。利用できるこの消音材料は例えば開放気泡材料または独立気泡材料であり、例えばポリウレタンエラストマーまたはゴム、シリコン、EVAあるいはPEフォーム体である。
【0017】
組立が容易な本発明の特に好適な実施例では、収容部の第2部分にはクランプレバーで操作できるクランプグリッパが配置され、収容部の第1部分にはノーズ部が配置される。駆動装置はこのノーズ部とクランプグリッパとによって搬送要素に固定できる。
【0018】
本発明は家具本体と、特に家具本体に固定された搬送要素とを備えた家具にも関する。ここでは前述実施例の1つによる駆動装置が家具本体または搬送要素に固定されている。
【0019】
その点で最大の消音効果を達成するには駆動装置の収容部の第1部分を家具本体と接触させた状態にするか、あるいは消音材料領域のみによって搬送要素と接触している状態にする。
【0020】
電気接触の問題を回避するため、接続インターフェースは家具本体または搬送要素に配置された電気線に実質的に無遊び形態で接触することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のさらなる利点および詳細は添付の図面とこれらに関する説明によって明らかになるであろう。
【0022】
図1は家具(図示せず)の可動部のための駆動装置1を示しており、本実施例において駆動装置1は排出装置の形態であり、可動家具部は排出レバー11によって家具本体または家具枠の閉端位置から排出される。駆動装置1の収容部は柔軟部分7によって接続されている第1部分5と第2部分6を有する。消音材料領域3は収容部の第1部分5と第2部分6との間に配置されている。同様にして、消音材料の別領域4が収容部の第1部分5のノーズ部12に配置されている。電動モータまたはこれの調節装置および電動モータから排出レバー11への力の伝達のための伝達手段は全て収容部の第1部分5に配置されている(これは従来技術に属するため図1には示されていない)。
【0023】
駆動装置1の収容部の第2部分にはインターフェース16が設置されており、インターフェース16から柔軟部分7を介して収容部の第1部分5へと電気線が導かれており、電流を必要とする全構成部材へ電力が供給される。本実施例ではインターフェース16は3組の穿孔ピン17を有しており、電力ネットワークに接続された電流線(図1では図示せず)に接触するように設計されている。インターフェース16自体は収容部によって覆われているが、この収容部は図1には図示されていない。
【0024】
図1にはクランプレバー15で操作できるクランプグリッパ14も示されており、これは駆動装置1を定位置に固定させる(図3から図5との関連で説明する)。
【0025】
図2aはノーズ部12の領域内にある消音材料の2つの領域4を示している。図2bは特にインターフェース16の形態並びにインターフェース16から収容部の第1部分5へと通じる接続部7を示している。
【0026】
図3aは、家具本体または家具枠(図3aと図3bには図示せず)へ固定されている搬送要素8への組立前における本発明による駆動装置1を示している。図3bは特に収容部の第1部分5が搬送要素8へ消音材料領域4のみによって接続されている状態を示している。駆動装置1を組立てるには、収容部の第1部分5をノーズ部12と搬送要素8の対応する凹部18内で懸吊係合する。駆動装置1はその後、ノーズ部12によって設定された回動軸周囲を搬送要素8の方向へ、穿孔ピン17が搬送要素8上で垂直に延びる電力線またはデータ線に近接するように、収容部の第2部分6が搬送要素8に対して穿孔ピン17と接するまで回動する。クランプグリッパ14は搬送要素8のエッジ部19後方で移動され、操作レバー15で引っ張られることで係留される。
【0027】
図4は、搬送要素8で組立てられた状態の駆動装置1を示しており、電気線9と接触する穿孔ピン17は示されていない。
【0028】
図5aと図5bはそれぞれ、搬送要素8における駆動装置1の構造の斜視図と詳細図である。この実施例では収容部の第1部分5と第2部分6がスイベル継手20によって接続されている状態も示している。
【0029】
図6aと図6bは、引出13が可動式に取り付けられている家具本体または家具枠2を有する家具10を示している。この場合における各引出13は、家具本体2の後壁に設置された搬送要素8に固定されている駆動装置1と関連している。説明のため、図6bでは家具10の頂面パネルは省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による駆動装置の1実施例の平面図である。
【図2a】図1に示す駆動装置の斜視図である。
【図2b】図1に示す駆動装置の関連詳細図である。
【図3a】搬送要素への組立前と組立時における図1と図2に示す排出装置の斜視図である。
【図3b】搬送要素への組立前と組立時における図1と図2に示す排出装置の平面図である。
【図4】搬送要素上で組立てられた状態にある図3aと図3bに示す駆動装置の平面図である。
【図5a】図4に示す取り付け状態の駆動装置の斜視図である。
【図5b】図4に示す取り付け状態の駆動装置の関連詳細図である。
【図6a】搬送要素上で組立てられた状態にある本発明による排出装置を備えた家具の斜視図である。
【図6b】搬送要素上で組立てられた状態にある本発明による排出装置を備えた家具の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータおよび電気線接触用の接続インターフェースが設置されている収容部を備えた家具本体に可動状態で取り付けられている家具部のための駆動装置であって、前記電動モータは前記収容部の第1部分に設置されており、前記接続インターフェース(16)は前記収容部の前記第1部分(5)に対して限定的に移動するように取り付けられている前記収容部の第2部分(6)に設置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
収容部の第2部分(6)は前記収容部の第1部分(5)に専ら柔軟部分(7)によって接続されていることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
柔軟部分(7)には接続インターフェース(16)から少なくとも電動モータへと導く電気線が配置されていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
接続インターフェース(16)は導電材料製の穿孔ピン(17)を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
電動モータにより駆動可能な排出レバー(11)が収容部の第1部分(5)に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
駆動装置(1)の運用時に騒音を発生させる前記駆動装置(1)の全構成部材が収容部の第1部分(5)に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項7】
消音材料の少なくとも1領域(3)が収容部の第1部分(5)と第2部分(6)との間に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項8】
消音材料は開放気泡(open cell)材料または独立気泡(close cell)材料であり、好適にはポリウレタンエラストマー、ゴム、シリコン、EVAあるいはPEフォーム体であることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
収容部の第2部分(6)にはクランプレバー(15)で操作できるクランプグリッパ(14)が配置され、収容部の第1部分(5)にはノーズ部(12)が配置されており、駆動装置(1)は前記ノーズ部と前記クランプグリッパ(14)とによって搬送要素(8)に固定できることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項10】
家具本体と、該家具本体に固定された搬送要素とを備えた家具であって、請求項1から9のいずれかに記載の駆動装置(1)が前記家具本体(2)または前記搬送要素(8)に固定されていることを特徴とする家具。
【請求項11】
駆動装置(1)の収容部の第1部分(5)を家具本体(2)と接触させた状態にするか、あるいは消音材料領域(4)のみによって搬送要素(8)と接触している状態にすることを特徴とする請求項10記載の家具。
【請求項12】
接続インターフェース(16)は家具本体(2)または搬送要素(8)に配置された電気線(9)に実質的に遊び無く接触していることを特徴とする請求項10または11記載の家具。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2009−526507(P2009−526507A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553569(P2008−553569)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/AT2006/000526
【国際公開番号】WO2007/092968
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(597140501)ジュリウス ブルム ゲゼルシャフト エム.ビー.エイチ. (122)
【Fターム(参考)】