説明

可変ノズルターボチャージャ

【課題】簡易な構造でありながら、タービン効率を向上させることができる可変ノズルターボチャージャを提供すること。
【解決手段】可変ノズルターボチャージャは、排気ガスを導入することにより回転する排ガスタービンホイール21と、タービンホイール21の周囲に形成されたガス通路12と、タービンホイール21に流入する排ガス排気ガスの流速を調整する複数のノズルベーン30と、複数のノズルベーン30を同期して回動させるためのノズルリング(回動支持部材)とを有し、ノズルベーン30を回動させることにより、各ノズルベーン30間のクリアランスAを変化させて排ガス排気ガスの流速を調整することができる。ノズルベーン30は、その先端部301がタービンホイール21に近づく方向に回動して各ノズルベーン30間のクリアランスAを大きくした際には、初期状態と比べて先端部301がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルベーンの開度を変更可能な可変ノズルターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の運転状態に応じてタービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整することにより、内燃機関の吸気の過給圧を変更する可変ノズルターボチャージャが知られている。
【0003】
可変ノズルターボチャージャは、内燃機関の排ガス排気ガスを導入することにより回転するタービンホイールと、該タービンホイールの周囲に形成されたガス通路と、該ガス通路からタービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整するために回動軸を中心に回動可能に設けられた複数のノズルベーンと、該複数のノズルベーンを同期して回動させるための回動支持部材とを有している。
【0004】
そして、内燃機関の回転数、負荷、排気ガスの流量(以下、適宜、排気流量という)、排ガス排気ガスの温度(以下、適宜、排気温という)等を指標にし、回動支持部材によってノズルベーンを回動させることにより、各ノズルベーン間のクリアランスを変化(開閉)させ、ガス通路からタービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整することができるように構成されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ユニゾンリング(回動支持部材)に円弧状の穴又は溝からなるガイドと該ガイドの中に突出するストッパとを設け、該ストッパがガイドの一端に当たったときにノズルベーンを全開位置(ノズルベーン間のクリアランス(流路断面積)が最大となる状態)とし、他端に当たったときに全閉位置(ノズルベーン間のクリアランスが最小となる状態)とするノズルベーン開閉機構を備えた可変ノズルターボチャージャが開示されている。
このような構造とすることにより、ノズルベーンの全開・全閉の位置を安定させることができ、排ガス排気ガスの流速を精度良く調整することができる。
【0006】
また、特許文献2には、ノズルベーンの全閉状態の際に、ノズルベーン間から噴出した排気ガスがタービンホイールに流入するまでの距離を短くし、ノズルベーン全閉時のターボチャージャの過給効率を向上させるために、ノズルベーンの回動軸をノズルベーンの下流端側に配置した可変容量ターボチャージャが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−37754号公報
【特許文献2】特開平10−274048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の可変ノズルターボチャージャでは、次のような問題があった。
すなわち、可変ノズルターボチャージャでは、タービン効率を上げるためにノズルベーンとタービンホイールとの距離を近づけることが望ましいが、上記特許文献1のように、ノズルベーンの回動軸をノズルベーンの中心付近に配設した場合、ノズルベーンの大きさ及び回転軸の配設位置は、内燃機関の高回転(高排気流量・高排気温)時においてノズルベーンを全開状態に回動した際に、熱膨張により変形したノズルベーンがタービンホイールと干渉することなく一定の距離を確保するように設定する。そのため、内燃機関の低回転(低排気流量・低排気温)時においてノズルベーンを全閉状態に回動した際には、ノズルベーンの先端部とタービンホイールとの距離が大きくなり、タービン効率が低下してしまう。
【0009】
また、上記特許文献2のように、ノズルベーンの回動軸をノズルベーンの下流端側に配置したターボチャージャでは、タービン効率の低下を抑制することはできるが、ノズルベーンに作用する流体圧によって回転軸に働く応力が増加するため、材料強度上の信頼性が低下するという問題が生じてしまう。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡易な構造でありながら、タービン効率を向上させることができる可変ノズルターボチャージャを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内燃機関の排ガス排気ガスを導入することにより回転するタービンホイールと、該タービンホイールの周囲に形成されたガス通路と、該ガス通路から上記タービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整するために回動軸を中心に回動可能に設けられた複数のノズルベーンと、該複数のノズルベーンを同期して回動させるための回動支持部材とを有し、該回動支持部材によって上記ノズルベーンを回動させることにより、該各ノズルベーン間のクリアランスを変化させて上記ガス通路から上記タービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整可能な可変ノズルターボチャージャにおいて、
上記ノズルベーンは、少なくとも、その先端部が上記タービンホイールに近づく方向に回動して上記各ノズルベーン間のクリアランスを大きくした際には、初期状態と比べて上記先端部がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形するように構成されていることを特徴とする可変ノズルターボチャージャにある(請求項1)。
【0012】
本発明の可変ノズルターボチャージャにおいて、上記ノズルベーンは、例えば、排気ガスの流量が多く、また排気ガスの温度が高い内燃機関の高回転時において、少なくとも、その先端部が上記タービンホイールに近づく方向に回動し、上記各ノズルベーン間のクリアランス(流路断面積)を大きくして開状態とした際には、初期状態と比べて上記先端部がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形するように構成されている。
【0013】
上記構成のノズルベーンを用いることにより、該ノズルベーンの大きさ、回転軸の配設位置及び全開状態の回動角度が従来と同じであれば、上記ノズルベーンの全開状態において、該ノズルベーンと上記タービンホイールとの最短距離が従来よりも上記ノズルベーンの変形分だけ大きくなる(以下、この大きさを増大距離という)(後述する実施例の図6参照)。
【0014】
この現象を利用して、次のような2種類の改善が可能となり、従来よりもタービン効率を向上させることができる。
すなわち、第1の改善構造は、ある従来の構造を基準として、その従来と同じ大きさのノズルベーンを採用し、かつ、そのノズルベーンの回動軸の配設位置(回動中心位置)を上記増大距離分だけタービンホイール中心に近づけるというものである。
【0015】
このような構造とすることで、上記ノズルベーンを全開状態とした際には、該ノズルベーンの変形によって該ノズルベーンと上記タービンホイールとを干渉させることなく、両者の間の最短距離を従来と同じ距離に保持することができる(後述する実施例の図4(b)参照)。
一方、上記ノズルベーンを全閉状態とした際には、上記ノズルベーンの先端部と上記タービンホイールとの距離を従来よりも上記増大距離分だけ近づけることが可能となる。そして、上記各ノズルベーン間を通過して上記タービンホイールに流入する排気ガスの流速を上げ、上記タービンホイールの回転速度を高めることができる(後述する実施例の図4(a)参照)。
これにより、上記ノズルベーンの全開状態におけるタービン効率を維持したまま、全閉状態におけるタービン効率を高めることができる。
【0016】
次に、第2の改善構造は、ある従来の構造を基準として、ノズルベーンの回動軸の配設位置(回動中心位置)を従来と同じとし、かつ、そのノズルベーンにおける回動中心位置から先端部までの長さをノズルベーンの変形によって生まれる上記増大距離というアドバンテージを利用して延ばすというものである。
【0017】
このような構造とすることで、上記ノズルベーンを全開状態とした際には、該ノズルベーンの変形によって該ノズルベーンと上記タービンホイールとを干渉させることなく、両者の間の最短距離を従来と同じ距離に保持することができる(後述する実施例の図5(b)参照)。
一方、上記ノズルベーンを全閉状態とした際には、上記ノズルベーン間のクリアランスを従来と同じとすることで、上記ノズルベーンの先端部と上記タービンホイールとの距離を従来よりも近づけることが可能となる。そして、上記各ノズルベーン間を通過して上記タービンホイールに流入する排気ガスの流速を上げ、上記タービンホイールの回転速度を高めることができる(後述する実施例の図5(a)参照)。
これにより、上記ノズルベーンの全開状態におけるタービン効率を維持したまま、全閉状態における排ガスタービン効率を高めることができる。排ガス
【0018】
このように、本発明の可変ノズルターボチャージャは、上記構成のノズルベーンを用いることにより、上記第1及び第2の改善が可能となる。そして、どちらの改善構造を採用した場合でも、上記ノズルベーンの全開状態におけるタービン効率を維持したまま、全閉状態における排ガスタービン効率を高めることができ、排ガス全体としての性能を向上させることができるという優れた効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、初期状態とは、例えば内燃機関の低回転・低負荷(低排気流量・低排気温)時において、上記ノズルベーンの先端部が上記タービンホイールから離れた位置にあり、上記各ノズルベーン間のクリアランスを小さくして閉状態となっている場合のことをいう。
また、上記ノズルベーンの先端部とは、該ノズルベーンの下流端側の先端部のことをいう。
【0020】
また、上記ノズルベーンは、排ガス温度上昇に応じて上記変形が大きくなるように構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、内燃機関の高回転(高排気流量・高排気温)時において、上記ノズルベーンを回動させて該各ノズルベーン間のクリアランスを大きくした際に、上記ノズルベーンの上記先端部を十分に変形させておくことができる。
なお、通常、上記ノズルベーンを全開状態とする運転領域は、排気ガスの流量が多くなる内燃機関の高回転時である。このとき、上記ノズルベーンは、排気ガスの影響によって高温となる。また、上記ノズルベーンを全閉状態とする運転領域は、排気ガスの流量が少なくなる内燃機関の低回転時である。このとき、上記ノズルベーンは、内燃機関の高回転時に比べて低温となる。
【0021】
また、上記ノズルベーンは、熱膨張係数の異なる2種類の材料を重ね合わせて構成されており、上記タービンホイールに近づく方向に回動した際に、該タービンホイール側に熱膨張係数の高い材料が位置することが好ましい(請求項3)。
この場合には、2種類の材料の熱膨張係数の差により、上記ノズルベーンの上記先端部をその回動方向と反対側の方向に容易に反り返らせて変形させることができる。
【0022】
また、上記ノズルベーンは、上記先端部が所望の方向に反り返って変形するように構成されていれば、上記以外の構成を採用することもできる。
例えば、上記ノズルベーンを熱膨張係数の異なる3種類以上の材料を用いて構成することもできる。また、上記ノズルベーンの先端部のみに熱膨張係数の異なる材料を貼り付けて構成したり、上記ノズルベーンの片面のみに熱膨張係数の異なる材料を貼り付けて構成したりする等、熱膨張係数の異なる材料の配置を様々に変更することもできる。排ガス
【0023】
また、上記ノズルベーンに用いる材料としては、鉄基合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、クロム基合金等を用いることができる。
また、これらの材料の組み合わせは、上記ノズルベーンを変形させる温度(排気温)、変形量等を考慮して適宜選択することができる。
【0024】
また、上記ノズルベーンを回動させて該各ノズルベーン間のクリアランスを変化(開閉)させる指標としては、例えば、内燃機関の回転数、負荷、排気流量、排気温等を採用することができる。
また、指標となる内燃機関の回転数、負荷、排気流量、排気温等は、例えば、使用する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)によって適宜設定することができる。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例にかかる可変ノズルターボチャージャについて、図を用いて説明する。
本例の可変ノズルターボチャージャは、自動車等のエンジンの運転状態に応じてタービンハウジングに流入する排ガス排気ガスの流速を調整することにより、エンジンの吸気の過給圧を変更するものである。
【0026】
図1に示すごとく、可変式ノズルターボチャージャ1は、図示しないディーゼルエンジンの排気通路に配設されるタービンハウジング11を備えている。タービンハウジング11内には、複数の羽根211を備えると共に、エンジンからの排ガス排気ガスを導入することにより回転するタービンホイール21が配設されている。
【0027】
また、タービンハウジング11内において、タービンホイール21の周囲には、ガス通路12が形成されている。ガス通路12は、エンジンからの排ガス排気ガスが送り込まれる渦巻き形状のスクロール通路121と、スクロール通路121に送り込まれた排ガス排気ガスをタービンホイール21に流入させるための連通路122とにより構成されている。連通路122は、スクロール通路121の内周に沿って環状に形成されている。
【0028】
また、ガス通路12の連通路122には、スクロール通路121から連通路122を介してタービンホイール21に吹き付ける排ガス排気ガスの流速を調整するための複数のノズルベーン30が配設されている。複数のノズルベーン30は、タービンホイール21の周囲に所定間隔をおいて配置されている(図2、図3参照)。また、ノズルベーン30は、すべてのノズルベーン30を同期して回動させるためのノズルリング(回動支持部材)41に支持されている。
【0029】
具体的には、各ノズルベーン30は、回動させるための回動軸44に支持されている。また、ノズルリング41には、複数の回動片42が配設されている。また、回動軸44と回動片42とは、両者の間をつなぐ連結部43によって連結されている。そして、ノズルリング41を図示しないアクチュエータ等により回動させることで、回動片42、連結部43及び回動軸44を介してすべてのノズルベーン30が同期して回動するように構成されている。
【0030】
また、図4(a)、(b)に示すごとく、ノズルベーン30は、熱膨張係数の異なる2種類の材料を重ね合わせて構成されている。本例のノズルベーン30は、他方よりも熱膨張係数が高い高熱膨張部31と他方よりも熱膨張係数が低い低熱膨張部32とを重ね合わせて構成されている。高熱膨張部31と低熱膨張部32とは、ノズルベーン30をタービンホイール21に近づく方向に回動して開状態(図4(b)の状態)とした際に、タービンホイール21側に高熱膨張部31が位置するように配置してある。
【0031】
なお、本例では、高熱膨張部31を構成する材料として、ニッケル、クロム、鉄を成分とした合金を用いた。また、低熱膨張部32を構成する材料として、クロム、鉄を成分とした合金を用いた。
【0032】
次に、ノズルベーン30の作動について説明する。
エンジンが低回転状態からの加速時などで、排気ガスの流量は少ないが過給圧を高めたい運転状態(エンジン低回転高負荷時)においては、図2、図4(a)に示すごとく、各ノズルベーン30間のクリアランス(流路断面積)Aを小さくしてノズルベーン30を全閉状態とする。これにより、スクロール通路121を流れる排気ガスの流量が少なく、流速が遅いエンジン低回転時においても、各ノズルベーン30間を通過し、タービンホイール21に吹き付ける排気ガスの流速を上げることができ、タービンホイール21の回転速度を短時間で高めることができる。
【0033】
一方、排気ガスの流量が多い運転状態(エンジン高回転時)においては、図3、図4(b)に示すごとく、ノズルリング41を回動させることにより、回動片42、連結部43及び回動軸44を介してすべてのノズルベーン30を同期して回動させる。そして、各ノズルベーン30間のクリアランスAを大きくしてノズルベーン30を全開状態とする。これにより、ノズルベーン30の上流側のスクロール通路121における圧力の過度の上昇を抑え、排気抵抗を小さくすることができる。
【0034】
また、エンジン高回転時においては、高負荷時又は低負荷時であっても排気ガスの流量が多いため、その排気ガスの影響によってノズルベーン30の温度は高くなる。これにより、ノズルベーン30には、温度の上昇に伴って熱膨張が生じる。そして、図6に示すごとく、高熱膨張部31を構成する材料と低熱膨張部32を構成する材料との熱膨張係数の差により、ノズルベーン30の先端部301がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形する。
【0035】
また、アイドリング時などで、排気ガスの流量が少なく過給圧を高める必要がない運転状態(エンジン低回転低負荷時)においては、図示を省略したが、ノズルベーン30がタービンホイール21に干渉せず、排気抵抗が小さくなる程度にクリアランスAを大きくするようノズルベーン30を制御する。
【0036】
このように、可変ノズルターボチャージャ1は、エンジンの運転状態に応じて、図2、図3に示すごとく、ノズルリング41によってノズルベーン30を回動させることにより、各ノズルベーン30間のクリアランスAを変化させ、連通路122の開度量を調整する。こうした各ノズルベーン30の開閉により、スクロール通路121から連通路122を介してタービンホイール21に吹き付ける排ガス排気ガスの流速を調整し、最終的に吸気の過給圧を変更する。
【0037】
次に、本例の可変ノズルターボチャージャ1における作用効果について説明する。
本例の可変ノズルターボチャージャ1において、ノズルベーン30は、エンジン高回転時において、その先端部301がタービンホイール21に近づく方向に回動し、各ノズルベーン30間のクリアランスAを大きくして開状態(図4(b)の状態)とした際には、初期状態(図4(a)の状態)と比べて先端部301がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形するように構成されている。
【0038】
上記構成のノズルベーン30を用いることにより、例えば、図6に示すごとく、ノズルベーン30の大きさ、回転軸44の配設位置(回動中心位置(P1、P2))及び全開時の回動角度が従来と同じであれば、ノズルベーン30の全開状態において、ノズルベーン30とタービンホイール21との最短距離bが従来の最短距離aよりもノズルベーン30の変形分だけ大きくなる(増大距離c=距離b−距離a)。なお、図6では、従来のノズルベーン930の配設位置を点線で示している。
【0039】
そして、この現象を利用して、本例のような改善が可能となり、従来よりもタービン効率を向上させることができる。
すなわち、本例の構造は、図4(a)、(b)に示すごとく、ある従来の構造を基準として、その従来のノズルベーン930と同じ大きさのノズルベーン30を採用し、かつ、そのノズルベーン30の回動軸44の配設位置(回動中心位置P1)を従来の配設位置(回動中心位置P2)よりも上記増大距離c分だけタービンホイール21中心に近づけるというものである。
【0040】
このような構造とすることで、図4(b)に示すごとく、エンジン高回転(高負荷・低負荷)時のように、ノズルベーン30を全開状態とした際には、ノズルベーン30の変形によってノズルベーン30とタービンホイール21とを干渉させることなく、両者の間の最短距離を従来と同じ距離aに保持することができる。
一方、図4(a)に示すごとく、エンジン低回転高負荷時のように、ノズルベーン30を全閉状態とした際には、ノズルベーン30の先端部301とタービンホイール21との距離を従来よりも上記増大距離c分だけ近づけることが可能となる。そして、各ノズルベーン30間を通過してタービンホイール21に吹き付ける排気ガスの流速を上げ、タービンホイール21の回転速度を高めることができる。
これにより、ノズルベーン30の全開状態におけるタービン効率を維持したまま、全閉状態におけるタービン効率を高めることができる。
【0041】
また、本例では、ノズルベーン30は、排ガス温度上昇に応じて上記変形が大きくなるように構成されている。そのため、エンジン高回転(高排気流量・高排気温)時において、ノズルベーン30を回動させて各ノズルベーン30間のクリアランスAを大きくした際に、ノズルベーン30の先端部301を十分に変形させておくことができる。
【0042】
また、ノズルベーン30は、熱膨張係数の異なる2種類の材料(高熱膨張部31、低熱膨張部32)を重ね合わせて構成されており、タービンホイール21に近づく方向に回動した際に、タービンホイール21側に熱膨張係数の高い材料(高熱膨張部31)が位置する。そのため、2種類の材料の熱膨張係数の差により、ノズルベーン30の先端部301をその回動方向と反対側の方向に容易に反り返らせて変形させることができる。
【0043】
このように、本例の可変ノズルターボチャージャ1は、上記構成のノズルベーン30を用いることにより、上述した改善が可能となる。そして、エンジン高回転(高負荷・低負荷)時のようなノズルベーン30の全開状態におけるタービン効率を維持したまま、エンジン低回転高負荷時のようなノズルベーン全閉状態におけるタービン効率を高めることができ、全体としての性能を向上させることができるという優れた効果を発揮することができる。
【0044】
また、別例として次のような改善も可能であり、同様に従来よりもタービン効率を向上させることができる。
すなわち、別例の構造は、図5(a)、(b)に示すごとく、ある従来の構造を基準として、ノズルベーン30の回動軸44の配設位置(回動中心位置P1)を従来のノズルベーン930の配設位置(回動中心位置P2)と同じとし、かつ、そのノズルベーン30における回動軸44から先端部301までの長さをノズルベーン30の変形によって生まれた上記増大距離cというアドバンテージを利用して延ばすというものである。
【0045】
このような構造とすることで、図5(b)に示すごとく、エンジン高回転(高負荷・低負荷)時のように、ノズルベーン30を全開状態とした際には、ノズルベーン30の変形によってノズルベーン30とタービンホイール21とを干渉させることなく、両者の間の最短距離を従来と同じ距離aに保持することができる。
一方、図5(a)に示すごとく、エンジン低回転高負荷時のように、ノズルベーン30を全閉状態とした際には、ノズルベーン30間のクリアランスAを従来と同じとすることで、ノズルベーン30の先端部301とタービンホイール21との距離を従来よりも距離dだけ近づけることが可能となる。そして、各ノズルベーン30間を通過してタービンホイール21に吹き付ける排気ガスの流速を上げ、タービンホイール21の回転速度を高めることができる。
これにより、ノズルベーン30の全開状態におけるタービン効率を維持したまま、全閉状態における排ガスタービン効率を高めることができる。
【0046】
なお、ノズルベーン30は、エンジンの負荷・回転数によって排気温を求めるマップ、及びエンジンの負荷・回転数によって排気流量を求めるマップを用いることで、ノズルベーン30の開度を制御するようにしてもよい。例えば、ノズルベーン30の全開時に、上記排気温の値によって、ノズルベーン30の開度を全開よりも閉じる方向に回動することで、ノズルベーン30とタービンホイール21との干渉を避けるように制御してもよい。
【0047】
また、上記実施例では、ノズルベーン30を熱膨張係数の異なる2種類の材料を等分となるように重ね合わせて形成しているが、熱によってノズルベーン30が反り返ることができれば、この形状に限定されない。例えば、ノズルベーン30の先端部301のみに熱膨張係数の異なる材料を貼り付けることで形成してもよいし、ノズルベーン30の片面のみに熱膨張係数の異なる材料を貼り付けて形成してもよい。排ガス
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例における、可変ノズルターボチャージャの断面構造を示す説明図。
【図2】実施例における、図1のX方向から見た場合のノズルベーンの全閉状態を示す説明図。
【図3】実施例における、図1のX方向から見た場合のノズルベーンの全開状態を示す説明図。
【図4】実施例における、(a)ノズルベーンの全閉状態を示す説明図、(b)ノズルベーンの全開状態を示す説明図。
【図5】実施例における、(a)ノズルベーンの全閉状態を示す説明図、(b)ノズルベーンの全開状態を示す説明図。
【図6】実施例における、ノズルベーンの全開状態を従来のものと比較した説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 可変ノズルターボチャージャ
12 ガス通路
21 タービンホイール
30 ノズルベーン
301 先端部
A クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス排気ガスを導入することにより回転するタービンホイールと、該タービンホイールの周囲に形成されたガス通路と、該ガス通路から上記タービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整するために回動軸を中心に回動可能に設けられた複数のノズルベーンと、該複数のノズルベーンを同期して回動させるための回動支持部材とを有し、該回動支持部材によって上記ノズルベーンを回動させることにより、該各ノズルベーン間のクリアランスを変化させて上記ガス通路から上記タービンホイールに流入する排ガス排気ガスの流速を調整可能な可変ノズルターボチャージャにおいて、
上記ノズルベーンは、少なくとも、その先端部が上記タービンホイールに近づく方向に回動して上記各ノズルベーン間のクリアランスを大きくした際には、初期状態と比べて上記先端部がその回動方向と反対側の方向に反り返って変形するように構成されていることを特徴とする可変ノズルターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1において、上記ノズルベーンは、排ガス温度上昇に応じて上記変形が大きくなるように構成されていることを特徴とする可変ノズルターボチャージャ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ノズルベーンは、熱膨張係数の異なる2種類の材料を重ね合わせて構成されており、上記タービンホイールに近づく方向に回動した際に、該タービンホイール側に熱膨張係数の高い材料が位置することを特徴とする可変ノズルターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−151008(P2010−151008A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329191(P2008−329191)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】