説明

可変ノズル機構および可変容量型排気ターボ過給機

【課題】振動によりドライブリングに生じる過大な応力を抑制すること。
【解決手段】内燃機関から排気ガスが導入されるタービンケーシング内に固定される円環状のノズルマウント41と、ノズルマウントの円周方向に沿って複数配置されつつノズルマウントに対してノズル軸42aを挿通して回転可能に支持されたノズルベーン42と、ノズルマウントに対して回転可能に設けられた円環状のドライブリング43と、ドライブリングの円周方向に沿ってノズルベーンと同数配置されつつ一端側がドライブリングに連結ピン44aを介して係合され、かつ他端側がノズルベーンのノズル軸に連結されたレバープレート44と、ノズルマウントに固定されドライブリングの回転を案内しつつ回転軸心の延在方向に沿う方向へのドライブリングの移動を規制する鋲47とを備え、この鋲を、ドライブリングの円周方向で2ND振動モードの腹から避けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動の発生を抑制することのできる可変ノズル機構、およびこの可変ノズル機構を適用する可変容量型排気ターボ過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変容量型排気ターボ過給機は、過給圧を制御する可変ノズル機構を備えている。従来、この可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構は、タービンケーシングに固定される環状のノズルマウントと、ノズルマウントの円周方向に沿って複数配置されつつノズルマウントに対して回転軸を挿通して回転可能に支持されたノズルベーンと、ノズルマウントに対して回転可能に設けられた環状のドライブリングと、ドライブリングの円周方向に沿ってノズルベーンと同数配置されつつ一端側がドライブリングに連結ピンを介して係合され、かつ他端側がノズルベーンの回転軸に連結されたレバープレートとを備えている。この可変ノズル機構は、アクチュエータによりドライブリングを円周方向に回転させると、各レバープレートが揺動されることで、各ノズルベーンの翼角が変化する。これにより、タービンの過給圧が制御される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−56791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に示されている可変容量型排気ターボ過給機では、可変ノズル機構は、ノズルマウントに、ドライブリングを回転可能に支持し、かつ回転の軸心の延在方向に沿う方向へのドライブリングの移動を規制するための鋲が固定されている。
【0005】
しかし、ドライブリングは、回転移動するために鋲との間にクリアランスが形成されている。このため、内燃機関の振動がタービンを介して可変ノズル機構に伝達されると、ドライブリングに振動が生じて鋲に衝突する場合がある。この場合、ドライブリングに過大な応力が発生して可変ノズル機構が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、振動によりドライブリングに生じる過大な応力を抑制することのできる可変ノズル機構および可変容量型排気ターボ過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の可変ノズル機構では、内燃機関から排気ガスが導入されるタービンケーシング内に固定される円環状のノズルマウントと、前記ノズルマウントの円周方向に沿って複数配置されつつ前記ノズルマウントに対してノズル軸を挿通して回転可能に支持されたノズルベーンと、前記ノズルマウントに対して回転可能に設けられた円環状のドライブリングと、前記ドライブリングの円周方向に沿って前記ノズルベーンと同数配置されつつ一端側が前記ドライブリングに連結ピンを介して係合され、かつ他端側が前記ノズルベーンのノズル軸に連結されたレバープレートとを備え、前記ドライブリングの回転により各前記レバープレートを揺動させることで各前記ノズルベーンの翼角を変化させる可変ノズル機構において、前記ノズルマウントに固定され、前記ドライブリングの回転を案内しつつ回転軸心の延在方向に沿う方向への前記ドライブリングの移動を規制する鋲を備え、前記鋲を、前記ドライブリングの円周方向で2ND振動モードの腹から避けて配置したことを特徴とする。
【0008】
ドライブリングは、円環状で対称な構造あり、その固有振動である一次振動モードは、2軸対称で軸心Cに沿う方向に折れ曲がるような2ND振動モード(以下、2NDモードという)の固有振動が励起されやすい。このようなドライブリングに対し、本発明の可変ノズル機構によれば、内燃機関の振動がタービンケーシングを介して伝達されても、ドライブリングが2NDモードの固有振動の振幅の腹で支持されていないことから、ドライブリングに生じる固有振動の励起を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリングが鋲に衝突する事態を低減し、ドライブリングに過大な応力が発生することを抑制できる。なお、2ND(ノーダルダイヤ)モードとは、図7に示すように円板あるいは円環状の構造部材にて直径方向X−XおよびX−Xに直交する直径方向Y−Yに節を持つモードであり、これらX−XおよびY−Yに挟まれている部分が振幅の大きい腹になり、網掛け部分と白地部分とでは振動の位相が逆になるモードである。
【0009】
また、本発明の可変ノズル機構では、前記鋲を前記ドライブリングの周方向に不等間隔で配置したことを特徴とする。
【0010】
この可変ノズル機構によれば、ドライブリングの周方向で、2NDモードの固有振動の振幅の腹から避けた位置に鋲が設けられるので、内燃機関の振動がタービンケーシングを介して伝達されても、ドライブリングが2NDモードの固有振動の振幅の腹で支持されていないことから、ドライブリングに生じる固有振動の励起を抑制できる。
【0011】
また、本発明の可変ノズル機構では、前記鋲を前記ドライブリングの円周方向で2ND振動モードの節の位置に合わせて配置したことを特徴とする。
【0012】
この可変ノズル機構によれば、ドライブリングの周方向で、2NDモードの固有振動の振幅の腹から避けた位置に鋲が設けられるので、内燃機関の振動がタービンケーシングを介して伝達されても、ドライブリングが2NDモードの固有振動の振幅の腹で支持されていないことから、ドライブリングに生じる固有振動の励起を抑制できる。特に、この可変ノズル機構によれば、2NDモードの節の位置に合わせて鋲が設けられていることから、ドライブリングに生じる固有振動の励起を最も抑制できる。
【0013】
また、本発明の可変ノズル機構では、前記ドライブリングには、前記鋲の位置に対応しつつ前記鋲の頭部を通す切欠を設けたことを特徴とする。
【0014】
この可変ノズル機構によれば、鋲の位置に対応して切欠を設けると、円環状のドライブリングの円周方向で重量バランスおよび剛性バランスが変化するため、ドライブリングの2NDモードの固有振動の振幅の節や腹の位置が、ドライブリングの周方向で変化する。このため、ドライブリングに生じる2NDモードの固有振動を抑制できる。
【0015】
また、本発明の可変ノズル機構では、前記ドライブリングの周方向の3箇所に等間隔で、またはドライブリングの周方向の5箇所以上で質量可変部を配置したことを特徴とする。
【0016】
この可変ノズル機構によれば、質量可変部により、円環状のドライブリングの円周方向で重量バランスおよび剛性バランスが変化するため、ドライブリングの2NDモードの固有振動の振幅の節や腹の位置が、ドライブリングの周方向で変化する。このため、ドライブリングに生じる2NDモードの固有振動を抑制することが可能になる。
【0017】
上述の目的を達成するために、本発明の可変容量型排気ターボ過給機では、内燃機関から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、前記タービン部の駆動に伴って駆動されて前記内燃機関に外気を圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部において排気ガスが内部に導入されるタービンハウジングに設けられた上記のいずれか一つに記載の可変ノズル機構と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この可変容量型排気ターボ過給機によれば、上述したいずれか一つに記載の可変ノズル機構を適用することにより、可変ノズル機構の破損がなく耐久性の高い可変容量型排気ターボ過給機を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動によりドライブリングに生じる過大な応力を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる可変ノズル機構および可変容量型排気ターボ過給機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機の概略構成図、図2は、本発明の実施の形態にかかる可変ノズル機構の概略構成図である。
【0022】
本実施の形態の可変容量型排気ターボ過給機1は、図1に示すように、内燃機関(図示せず)から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部2と、タービン部2の駆動に伴って駆動されて内燃機関に外気を圧送するコンプレッサ部3と、タービン部2に導入される排気ガスの容量を制御する可変ノズル機構4とを備えている。
【0023】
タービン部2は、タービンケーシング21を有している。タービンケーシング21は、外周部に、渦巻状に形成されたスクロール22が形成されている。このスクロール22は、内燃機関の排気側に接続される。また、スクロール22の中心部には、輻流型のタービンロータ23が配置されている。タービンロータ23は、タービンシャフトSの一端に固定され、タービンシャフトSと共にタービンシャフトSの軸心C廻りに回転可能に設けられている。また、タービンケーシング21の中央には、軸心Cに沿う方向に沿って開口し、排気管(図示せず)が接続される排気ガス出口24が設けられている。
【0024】
コンプレッサ部3は、コンプレッサハウジング31を有している。コンプレッサハウジング31は、外周部に、渦巻状の空気通路32が形成されている。この空気通路32は、内燃機関の給気側に接続される。また、空気通路32の中心部には、コンプレッサ33が配置されている。コンプレッサ33は、タービンシャフトSの一端に固定され、タービンシャフトSと共にタービンシャフトSの軸心C廻りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサハウジング31の中央には、軸心Cに沿う方向に沿って開口し、給気管(図示せず)が接続される空気入口34が設けられている。
【0025】
また、タービンシャフトSは、タービン部2とコンプレッサ部3との間に介在される軸受ハウジング51の内部に配置された軸受52により回転自在に支持されている。
【0026】
可変ノズル機構4は、図1および図2に示すように、ノズルマウント41と、ノズルベーン42と、ドライブリング43と、レバープレート44とを備えてなる。
【0027】
ノズルマウント41は、円環状に形成され、タービンケーシング21内であって、軸受ハウジング51側にて、円環状の中心を軸心Cと一致するようにタービンケーシング21に固定されている。
【0028】
ノズルベーン42は、ノズルマウント41のタービン部2側であって、スクロール22内に設けられている。ノズルベーン42は、ノズル軸42aが一体に形成されており、このノズル軸42aをノズルマウント41に対して挿通することでノズル軸42aを中心に回転可能に支持されている。このノズルベーン42は、ノズルマウント41の円周方向に沿って複数配置されている。
【0029】
ドライブリング43は、円環状に形成され、ノズルマウント41の軸受ハウジング51側にて、円環状の中心を軸心Cと一致するようにドライブリング43に支持されている。このドライブリング43は、ノズルマウント41に対し軸心C廻りに回転可能に設けられている。また、ドライブリング43は、コンプレッサ部3のコンプレッサハウジング31に固定されたアクチュエータ45の作動部に対し、リンク46を介して接続されている。
【0030】
レバープレート44は、ドライブリング43の軸受ハウジング51側に設けられている。レバープレート44は、一端側が自身に固定の連結ピン44aがドライブリング43に係合され、かつ他端側がノズルベーン42のノズル軸42aに連結されている。このノズルベーン42は、ドライブリング43の円周方向に沿ってノズルベーン42と同数配置されている。
【0031】
このような可変容量型排気ターボ過給機1は、タービン部2において、内燃機関からの排気ガスは、タービン部2のスクロール22に導かれ、スクロール22の渦巻きに沿って周回しながら可変ノズル機構4のノズルベーン42の位置に至る。さらに、排気ガスは、各ノズルベーン42の翼間を通過しつつタービンロータ23を回転させ、排気ガス出口24から機外に送出される。一方、コンプレッサ部3において、タービンロータ23の回転に伴い、タービンシャフトSを介してコンプレッサ33が回転する。すると、コンプレッサ33の回転に伴って空気入口34からコンプレッサハウジング31内に空気が導入される。そして、導入された空気は、空気通路32にて圧縮されつつ内燃機関の給気側に過給される。ここで、可変ノズル機構4においては、アクチュエータ45を駆動することによりドライブリング43を回転させると、各レバープレート44が揺動して各ノズルベーン42の翼角が変化する。翼角が変化すると、各ノズルベーン42の翼間が狭くなったり広がったりするので、タービンロータ23に至る排気ガスの容量が制御できる。
【0032】
上記可変容量型排気ターボ過給機1において、本実施の形態では、可変ノズル機構4を改良した。
【0033】
図2に示すように、可変ノズル機構4は、ノズルマウント41のドライブリング43側に鋲47が固定されている。鋲47は、細径の鋲本体47aの先端に太径円盤状の頭部47bを有している。鋲47は、ノズルマウント41の周方向に沿って少なくとも3箇所に設けられている。
【0034】
一方、ドライブリング43の内周縁には、鋲47の頭部47bを通すための切欠43aが設けられている。切欠43aは、各鋲47に対応する位置に設けられている。すなわち、ドライブリング43は、鋲47の位置に切欠43aを合わせつつノズルマウント41に近づけることで、切欠43aに鋲47の頭部47bが通される。そして、ドライブリング43を軸心C廻りに所定角度回転させることで、切欠43aが鋲47から離隔する。このため、切欠43aのないドライブリング43の内周縁が、鋲47の頭部47bに引っかかることでドライブリング43が軸心Cの延在方向に沿う方向への移動を規制されノズルマウント41から抜け止めされて取り付けられ、かつ切欠43aのないドライブリング43の内周縁が、鋲47の鋲本体47aとの間にクリアランスを有することでドライブリング43の軸心C廻りの回転が支持される。
【0035】
また、ドライブリング43の外周縁には、レバープレート44の連結ピン44aに係合する連結ピン係合凹部43bが、各レバープレート44に対応して設けられている。さらに、ドライブリング43の外周縁には、アクチュエータ45の作動部に接続されたリンク46に係合するリンク係合凹部43cが設けられている。
【0036】
この可変ノズル機構4では、図3のドライブリング43の一次振動モードの解析図に示すように鋲47を、ドライブリング43の周方向で、固有振動である一次振動モードの振幅の大きい腹Bから避けた位置に設けられている。好ましい形態としては、鋲47を、一次振動モードの振幅の大きい腹Bから遠ざかり、かつ一次振動モードの振幅の小さい節Aに接近する位置に設ける。さらに好ましい形態としては、鋲47を、節Aの位置に合わせて節Aに一致する位置に設ける。なお、上述したように、ドライブリング43には、切欠43aが設けられており、切欠43aを鋲47の位置に合わせつつドライブリング43をノズルマウント41に近づけることで、鋲47の頭部47bを通し、その後、ドライブリング43を軸心C廻りに所定角度回転させることでドライブリング43がノズルマウント41に取り付けられる。このため、ドライブリング43を軸心C廻りに所定角度回転させたときに、鋲47が腹Bから遠ざかり、かつ節Aに接近する位置となるように構成すればよい。さらに好ましい形態としては、ドライブリング43を軸心C廻りに所定角度回転させたときに、鋲47が節Aの位置に一致するように構成すればよい。
【0037】
ドライブリング43の一次振動モードは、上記構成のドライブリング43について、その重量バランスや剛性バランスから振動解析や試験により求められる。そして、この解析や試験の結果に基づき、鋲47の位置を決定する。
【0038】
ドライブリング43は、円環状で対称な構造あり、その固有振動である一次振動モードは、2軸対称で軸心Cに沿う方向に折れ曲がるような2ND(ノーダルダイヤ)振動モード(以下、2NDモードという)の固有振動が励起されやすい。このようなドライブリング43に対し、かかる可変ノズル機構4では、内燃機関の振動が可変容量型排気ターボ過給機1を介して可変ノズル機構4に伝達されても、ドライブリング43が2NDモードの固有振動の振幅の腹Bで支持されていないことから、ドライブリング43に生じる固有振動の励起を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。なお、2NDモードとは、図7に示すように円板あるいは円環状の構造部材にて直径方向X−XおよびX−Xに直交する直径方向Y−Yに節を持つモードであり、これらX−XおよびY−Yに挟まれている部分が振幅の大きい腹になり、網掛け部分と白地部分とでは振動の位相が逆になるモードである。
【0039】
また、本実施の形態の可変ノズル機構4では、図2に示すように、鋲47が、ドライブリング43の周方向の4箇所に不等間隔で配置されている。
【0040】
かかる可変ノズル機構4によれば、ドライブリング43の周方向で、2NDモードの固有振動の振幅の腹Bから避けた位置に鋲47が設けられるので、内燃機関の振動が可変容量型排気ターボ過給機1を介して可変ノズル機構4に伝達されても、ドライブリング43が2NDモードの固有振動の振幅の腹Bで支持されていないことから、ドライブリング43に生じる固有振動の励起を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。
【0041】
また、本実施の形態の可変ノズル機構4では、図4の他の形態に示すように、鋲47が、ドライブリング43の周方向の3箇所に配置されている。
【0042】
かかる可変ノズル機構4によれば、ドライブリング43の周方向で、2NDモードの固有振動の振幅の腹Bから避けた位置に鋲47が設けられるので、内燃機関の振動が可変容量型排気ターボ過給機1を介して可変ノズル機構4に伝達されても、ドライブリング43が2NDモードの固有振動の振幅の腹Bで支持されていないことから、ドライブリング43に生じる固有振動の励起を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。
【0043】
また、本実施の形態の可変ノズル機構4では、図5の他の形態に示すように、鋲47が、ドライブリング43の周方向の5箇所以上に配置されている。
【0044】
かかる可変ノズル機構4によれば、ドライブリング43の周方向で、2NDモードの固有振動の振幅の腹Bから避けた位置に鋲47が設けられるので、内燃機関の振動が可変容量型排気ターボ過給機1を介して可変ノズル機構4に伝達されても、ドライブリング43が2NDモードの固有振動の振幅の腹Bで支持されていないことから、ドライブリング43に生じる固有振動の励起を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。
【0045】
なお、上述した鋲47の配置は、ドライブリング43に切欠43aを設けない構成であっても効果を得ることができる。なお、この場合、ドライブリング43をノズルマウント41に合わせた後に鋲47をノズルマウント41に固定すればよい。一方、ドライブリング43に切欠43aを設けた構成においては、図2、図4および図5に示すように、ドライブリング43に、上記鋲47の位置に対応して切欠43aが設けられる。
【0046】
鋲47の位置に対応して切欠43aを設けると、円環状のドライブリング43の円周方向で重量バランスおよび剛性バランスが変化するため、ドライブリング43の2NDモードの固有振動の振幅の節Aや腹Bの位置が、ドライブリング43の周方向で変化する。このため、ドライブリング43に生じる2NDモードの固有振動を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。
【0047】
また、本実施の形態の可変ノズル機構4では、図6の他の形態のドライブリング43に示すように、ドライブリング43の周方向の3箇所に等間隔で質量可変部43dを配置してもよい。質量可変部43dは、ドライブリング43の外周縁の一部を切除した部分であり、ドライブリング43の周方向の一部の質量を変えためのものである。なお、図6では、ドライブリング43の周方向の3箇所に等間隔で鋲47が配置され、この鋲47に位置に対応して切欠43aを設けたドライブリング43を示しているが、図2、図4および図5に示すドライブリング43に質量可変部43dを配置してもよい。
【0048】
かかる構成によれば、質量可変部43dにより、円環状のドライブリング43の円周方向で重量バランスおよび剛性バランスが変化するため、ドライブリング43の2NDモードの固有振動の振幅の節Aや腹Bの位置が、ドライブリング43の周方向で変化する。このため、ドライブリング43に生じる2NDモードの固有振動を抑制することが可能になる。この結果、ドライブリング43が鋲47に衝突する事態を低減し、ドライブリング43に過大な応力が発生することを抑制することが可能になる。なお、質量可変部43dは、ドライブリング43の周方向の3箇所に等間隔で配置されている以外に、5箇所以上に配置されていてもよく、この構成であっても円環状のドライブリング43の円周方向で重量バランスおよび剛性バランスが変化するため、ドライブリング43に生じる2NDモードの固有振動を抑制することが可能になる。
【0049】
また、本実施の形態の可変容量型排気ターボ過給機1では、上述した可変ノズル機構4を適用することにより、可変ノズル機構4の破損がなく耐久性の高い可変容量型排気ターボ過給機1を実現することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる可変ノズル機構および可変容量型排気ターボ過給機は、振動によりドライブリングに生じる過大な応力を抑制することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる可変ノズル機構の概略構成図である。
【図3】ドライブリングの一次振動モードの解析図である。
【図4】他の形態の可変ノズル機構の概略構成図である。
【図5】他の形態の可変ノズル機構の概略構成図である。
【図6】他の形態のドライブリングの概略構成図である。
【図7】2ND振動モードの説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 可変容量型排気ターボ過給機
2 タービン部
21 タービンケーシング
22 スクロール
23 タービンロータ
24 排気ガス出口
3 コンプレッサ部
31 コンプレッサハウジング
32 空気通路
33 コンプレッサ
34 空気入口
C 軸心
S タービンシャフト
4 可変ノズル機構
41 ノズルマウント
42 ノズルベーン
42a ノズル軸
43 ドライブリング
43a 切欠
43b 連結ピン係合凹部
43c リンク係合凹部
43d 質量可変部
44 レバープレート
44a 連結ピン
45 アクチュエータ
46 リンク
47 各鋲
47a 鋲本体
47b 頭部
51 軸受ハウジング
52 軸受
A ドライブリングの固有振動の節
B ドライブリングの固有振動の腹

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気ガスが導入されるタービンケーシング内に固定される円環状のノズルマウントと、前記ノズルマウントの円周方向に沿って複数配置されつつ前記ノズルマウントに対してノズル軸を挿通して回転可能に支持されたノズルベーンと、前記ノズルマウントに対して回転可能に設けられた円環状のドライブリングと、前記ドライブリングの円周方向に沿って前記ノズルベーンと同数配置されつつ一端側が前記ドライブリングに連結ピンを介して係合され、かつ他端側が前記ノズルベーンのノズル軸に連結されたレバープレートとを備え、前記ドライブリングの回転により各前記レバープレートを揺動させることで各前記ノズルベーンの翼角を変化させる可変ノズル機構において、
前記ノズルマウントに固定され、前記ドライブリングの回転を案内しつつ回転軸心の延在方向に沿う方向への前記ドライブリングの移動を規制する鋲を備え、
前記鋲を、前記ドライブリングの円周方向で2ND振動モードの腹から避けて配置したことを特徴とする可変ノズル機構。
【請求項2】
前記鋲を前記ドライブリングの周方向に不等間隔で配置したことを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル機構。
【請求項3】
前記鋲を前記ドライブリングの円周方向で2ND振動モードの節の位置に合わせて配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の可変ノズル機構。
【請求項4】
前記ドライブリングには、前記鋲の位置に対応しつつ前記鋲の頭部を通す切欠を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の可変ノズル機構。
【請求項5】
前記ドライブリングの周方向の3箇所に等間隔で、またはドライブリングの周方向の5箇所以上で質量可変部を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の可変ノズル機構。
【請求項6】
内燃機関から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、
前記タービン部の駆動に伴って駆動されて前記内燃機関に外気を圧送するコンプレッサ部と、
前記タービン部において排気ガスが内部に導入されるタービンハウジングに設けられた上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の可変ノズル機構と、
を備えたことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156279(P2010−156279A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335195(P2008−335195)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】