説明

可変伝動装置

【課題】
二つの伝達車の一方には加圧力と弾性力の直列重畳で生じた弾性加圧力を同時にまた他方には加圧力だけを常時供給する可変伝動装置に関し、特に一方の該伝達車に該弾性加圧力を区分して供給する事で該伝達車と伝達体間のプーリ挟持圧を可変加圧制御してトルク制御機能を果す事である。
【解決手段】
第一伝達車に第一加圧装置から弾性装置を経て加圧制御する際弾性装置と圧縮装置とが互に直列重畳して生じた弾性力を間接供給し、又第二伝達車に第二加圧装置から非弾性加圧力を直接供給ししかも第一及び第二加圧装置から夫々弾性力及び加圧力を明確に区分して個別供給する事で、第一及び第二伝達車に可変トルク制御機能と速比出力回転数制御機能を夫々付与した可変伝動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械などの産業機械、車両、モータ等に用いる定馬力伝動型の無段伝動装置に関し、しかも特にトルク伝動の安定円滑化と変速制御性の向上のための伝達車加圧装置を持つ可変伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝達車加圧装置を持つ変速機として日本特許出願:特開平9−217819号(ファンドールネズ社)が公知である。二つの円板のうちの摺動円板自体が加圧装置として油圧駆動のピストンシリンダの一部を構成し、これで同円板を直接加圧摺動して、伝達車と伝達体の半径を変化させ変速する加圧装置である。油圧による直接加圧装置は、二つの利点として、[1]狭い空間で大から小までの任意の加圧力が得られること、[2]消耗品としての軸受が不要であることが挙げられる。然し油圧制御は変速機にとって致命的、決定的な欠点が二つ存在する。 その欠点は、(1)油圧に弾性が無いため伝達車を直接加圧すると衝撃、誤差等に対し弾性吸収および自動調芯作用を確保できなこと、(2)油圧媒体が動作遅れ、油漏れ、遠心力等の影響を直接受け最も基本的な伝動動作がいつも不安定要因になることである。

通常伝達車1が負荷機器に伝動する馬力Pは、回転数NとトルクTの関係として次式示される。即ち
P〔W〕=1,027×N〔rpm〕×T〔kgm〕
従って所定馬力P0を伝動するには、回転数Nが増大したとき伝達体のトルクTを減少させ、逆に回転数Nが減少するとトルクTを増大させる必要がある。ところが上述の従来技術は、バネ等の弾性手段を従動伝達車の円板に並設しているが、弾性手段が摺動円板に供給する圧縮加圧力は、高速回転状態になるに従って増圧し、逆に低速回転状態になるに従って減圧する方向である。この事は、本来定馬力伝動型の変速機では、低速回転に到るほど印加加圧力を増大させることを要するにも拘わらず、弾性手段の弾性加圧力の方向が全く逆である。従ってこの種の弾性手段の加圧装置では原理的に適正トルクの付与ができず定馬力伝動は実現不能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−217819号(ファンドールネズ社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、可変伝動装置の伝達車を加圧制御する際に、二つの伝達車の一方には加圧力と弾性力とでなる弾性加圧力を付与し、他方には加圧力だけを付与するもので、特に前者の加圧力と弾性力との弾性加圧力を付与する加圧方式を用い該伝達車に適正トルクの付与する可変伝動装置を共通の解決課題として提案している。第一に二つの伝達車を加圧力だけによる直接加圧方式に依存せず、前者は弾性体による弾性力の間接加圧方式によって後者は弾性、不安定圧力等で押圧に乱れのない圧縮装置の加圧力によってこれを可変伝動装置で実現することである。第二に極度に大きな弾性力の巨大弾性体が不可欠となり、その際に生じる解決課題として各部材及び機器類の遠心力の問題、狭空間内設置の問題さらに組立分解等の操作性の問題などを解決するものである。
【0005】
第一の解決課題は、可変伝動装置に第一加圧装置の他に、圧縮変位量の増大に応じ加圧力も増す通常の正特性の弾性体を用いながら、その弾性装置に圧縮装置を各加圧力が相互に直列重畳させて組合せることによって、圧縮装置が伝達車に印加する弾性加圧力で伝達車および伝達体間の狭持圧の可変加圧制御を実現して適正なトルク伝達を保証すると共に、該伝達車には加圧力だけでなく同時に常時弾性力の付与をも保証する第二加圧装置を提供することである。
【0006】
第二の解決課題は無段可変伝動装置では所望の軸トルクの可変伝動を果す第一の役割である追従車機能と、速比又は出力回転数の可変速伝動を果す第二の役割である基準車機能とを同時で且つ個別に機能させる必要上、第一伝達車への弾性力と第二伝達車への加圧力との供給圧を各役割に応じて明確に区分して供給する事で、第一及び第二伝達車を個別加圧する第一及び第二加圧装置が夫々トルク及び速比出力回転数を弾独且つ個別制御する可変伝動装置を提供する事である
【0007】
弾性装置とこれの圧縮装置とを組合せながら、伝達車と弾性装置との間の連動性を確保することにより、伝達車に対して可変加圧制御用の加圧力だけでなく弾性装置の弾性力との両者でなる弾性加圧力と伝達車回転数を互に反比例させて負傾斜の加圧特性によって常時授受を保証させることである。
大きな弾性装置の操作には大きな圧縮装置を要するが、これ等を回転に伴う遠心力などの悪影響から解放され、しかも狭い空間に配置される伝達車の周囲を煩雑な操作機器類から出来る限り回避させ簡易な制御機構を構成して常時正規の可変加圧制御を供給することである。
【0008】
第三の解決課題は、第一及び第二加圧装置を個別区分した為に第二加圧装置では第二伝達車の変速移動量L1を摺動変位させ又同時に第一加圧装置では第一圧縮装置が第一伝達車と弾性装置との両移動量L0を加圧させることが必要になり、第一伝達車の変速移動量と、弾性装置の圧縮移動量とが互に異なるので、共通に又は個別に配した圧縮装置でそれぞれ加圧操作させた可変伝動装置を提供することである。
【0009】
上述第一乃至第三の課題の実現の際に、巨大寸法、巨大重量の弾性体の存在を如何に小型化し、圧縮装置を含めて取扱上の簡便性を向上させるかが実装上不可欠である。単数又は複数弾性体を圧縮装置と共に小型収納化し、変速機自体の組立分解など作業性を向上させた構造の加圧装置にした伝達車加圧装置を提供することである。
【0010】
第四の解決課題は、無段伝動装置では所望の軸トルクの可変伝動を果たす第一の役割と、速比又は回転数の可変速伝動を果たす第二の役割とが個別操作し且つ同時に機能することを要するため、第一の役割を第一従動伝達車にまた第二の役割を第二主動伝達車に夫々役割分担を区分して、その際に第一伝達車には第一の役割を果たす第一加圧装置を、第二の役割を果たす第二の加圧装置をそれぞれ区分して施すことにより、可変トルク機能と可変速比又は回転数機能とを互いに同期連動して同時に達成させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に共通する課題解決の手段は、弾性装置、圧縮装置等からなる第一加圧装置の弾性加圧力を指令に応じて伝達車と本体間で与えて伝達車に可変トルクを付与する第一加圧装置を実現した可変伝動装置を提案することである。第一の課題の解決手段は、弾性装置または圧縮装置の各加圧力を直列重畳させて変速指令に応じて該伝達車を可変加圧制御して伝達体と伝達車間のプーリ挟持圧を変化させたことであり、圧縮装置にセルフロック機能を持たせて可変加圧力の付与と同時に常時弾性力供給の付与をも保証した第一伝達車加圧装置を持つ可変伝動装置である。
【0012】
第二の課題の解決手段は、第一及び第二加圧装置により夫々弾性力及び加圧力の区分供給で個別加圧された第一及び第二伝達車が夫々追従車機能及び基準車機能を果す事で、第一伝達車は伝達体との間の挟持圧を可変加圧制御してトルク制御を又第二伝達車は該伝達体の基準位置決め制御して速比又は出力回転数を夫々単独個別に可変制御した可変伝動装置を提供する事である。
【0013】
弾性装置または圧縮装置のいずれか一方を本体に回転または非回転で安定配置状態に装着ししかも他方を浮動状態に支持することにより、浮動状態に取付けた弾性装置または圧縮装置を介して伝達車への弾性力の供給を常時保証したものである。
弾性装置または/および圧縮装置を、伝達車と同軸で本体の任意の位置に非回転状態で固定し、伝達車との間で圧力伝達手段を配して伝達車に常時加圧力と弾性力の同時供給を保証したものである。
【0014】
の課題の解決手段は、第二加圧装置の第二圧縮装置が第二伝達車の移動量L1を摺動変位させたとき、第一加圧装置の第一圧縮装置の構成として、第一伝達車の変速移動分L01を得る第1圧縮装置と、弾性装置の押圧移動分L02を得る第2圧縮装置とで成る第一圧縮装置又は移動分L01と移動分L02の和を単一共通の第一圧縮装置を有し、第及び第圧縮装置が変速指令で互に同期付勢されてなる可変伝動装置である。
【0015】
弾性体を予め加圧状態に収納する単一筺体を有し、弾性装置は、上記弾性体を最大圧縮加圧力から最小圧縮加圧力までのいずれかの範囲内で圧縮方向に移動を可能にしかつ予め定めた所定加圧値の圧縮加圧状態に保持する係止装置を筺体に施し、かつ圧縮装置の摺動装置または変速動力伝達機の部分を弾性体と共に筐体内に組み込んでなる伝達車加圧装置である。
【0016】
の課題の解決手段は、第一伝達車に連動する第一加圧装置をまた第二伝達車に連動する第二加圧装置を施す際に、前者では弾性装置と圧縮装置を組み合わせて可変加圧力と弾性力とを同時供給してベルト狭持圧の可変加圧制御を付与して可変軸トルク制御機能と自動調芯とを果たし、また後者では弾性体を介在させず、あえて圧縮装置のみを施し回転数の変速時の基準位置決めを保証して可変速比又は出力回転数制御機能を果たし、第一および第二の両加圧装置を互いに変速指令で同期して操作する駆動源を施すものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に共通する価値は、可変伝動装置の二つの伝達車を可変加圧制御する際に、双方を油圧等の加圧力だけによる直接加圧方式に依存せずに弾性体による間接加圧方式に依存することにより、第一伝達車に単に加圧力だけを印加するだけでなく該加圧力と弾性力とでなる可変の弾性加圧力を指令に応じ常時安定に印加させることが実現した点にある。即ち従来変速機の伝達車加圧装置では回転数に対し弾性装置の加圧力が正比例でしか操作できなかったが、本発明の可変伝動装置では圧縮装置を直列に介在させて反比例の操作が可能になったからである。この事が定馬力伝達型の無段可変伝動装置に決定的意義をもたらした理由は、単にベルト狭持圧を理想特性の可変加圧制御で安定供給して連続的な可変トルク制御を実現させたことで定馬力伝達を可能にさせた点だけでなく、この種可変伝動装置がもつ内外の誤差要因等に対して可変伝動装置自体が自動調芯機能を同時に達成できる点にある。特に従来油圧制御での油温変化、油の流出、弁制御による応答性の悪化などの誤差要因を、その都度個別に検出と回路補償とを繰返えすのでは、制御自体が著しく煩雑になり、高速応答の変速可変トルク制御自体を事実上不可能ないし無価値にする。これに対し本発明では、その大部分を加圧装置による自動調芯機能が自から補償し、常時元の安定伝動状態に自動復帰を果す。この事は同時に車両等の急発進、急停止に対応した理想的な高速度応答性をも実現したことを意味する。
【0018】
無段可変伝動装置の第一及び第二伝達車に夫々弾性力又は加圧力を明確に個別区分し供給するために、第一及び第二伝達車への加圧装置を夫々第一及び第二加圧装置に区分設置し制御機能役割をも区分する事で、互に相手と無関係且つ単独個別に第一加圧装置ではトルク制御と弾性装置の自動調芯機能による安定伝動とを、又第二加圧装置では速比出力回転数制御を夫々個別に制御可能にした。
【0019】
また本発明では、全可変速可変圧の領域で常時安定伝動と高速度変速応答性を果すので、利用分野も工作機械類のような小馬力用から、車両類の大馬力用に至るまで適用でき、その場合にも修道装置、加圧装置にボールネジ、台形ネジ手段、カム手段などの手段を利用すれば、大容量伝動を常時高速度で変速制御する事も実現できる。
【0020】
油圧に依らず弾性体の場合には極度に大きな寸法と重量の弾性材が不可欠である。これを従来の如く伝達体と共に高速回転させると動バランスの悪化により伝達車自体の安定回転が実現できない。そこで弾性装置など大重量物を本体に固定し、他のものを浮動ないし浮遊(フローテング)状態にすれば、伝達車への弾性力の供給は常に保証される。
【0021】
弾性装置などの極大な重量物を伝達車と共に組み込むことが回避でき、回転動バランスの悪化によって短期に軸受を劣化させることもなく、しかも加圧装置自体が伝達車の周囲から離れて、本体の任意の位置に非回転状態で伝達車と協働する様に配置でき、ベルト、プーリ等消耗品の交換保守などの作業性、量産性が著しく向上する。
【0022】
特に無段変速機では従動車の加圧装置だけでなく主動車にも加圧装置の個別設置が不可欠で、従動車には弾性力を伴わせまた主動車には弾性力を除いて加圧制御すると安定伝達が図かれしかも両者が完全に同期させるために両加圧装置が共通の単一駆動源で付勢させ得るので、車両等などの急発進、急停止に対応する変速制御の高速度応答性を確保できる。両加圧装置を変速制御装置として同一平面に集中配備することで、同期性だけでなく量産性、保守管理の容易性は更に向上する。特に従動伝達車加圧装置は単一組立物として単独で、更に変速制御装置は全体として一体のまま本体から着脱できるのは組立、分解の作業上から理想的な構造である。
【0023】
更に、大きな長さ寸法と重量の弾性体は取扱いが極めて煩雑である。定期的に行う分解組立等保守の都度、該弾性体を無加圧状態に解放する如き作業は危険と煩雑さが伴い、事実上現場では不可能である。しかし単一筺体に予め加圧状態で収納し、巨大なエネルギの収納箱として単一構造物に構成して、この危険から解放されると共に、変速制御方式の操作性、量産性が著しく向上する。
【0024】
特に単一弾性体では伸縮方向に極度に長寸法となり狭空間内に配置できないが、単一にせず複数弾性体に分割しこれを並設して、各弾性体を並列同時加圧かまたは並列順次加圧させ、しかも単一筺体への各弾性体の加圧収納によって、小型であっても極度に大きな弾性力ないし加圧力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例伝達車加圧装置を用いた車両用無段伝動装置の横断面図で、
【図2】図1に示す無段伝動装置のII−II線での縦断面図で、
【図3】図1,2に示す無段伝動装置の操作器の一部の同期駆動源を示し、図3Aは第二伝達機の構成を、また図3Bは第一伝達機の構成を示す部分断面図で、さらに
【図4】同第1実施例加圧装置の加圧力・回転数の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の第2実施例装置を適用した工作機械用無段伝動装置の断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の片軸受支持の伝達車に適用した加圧装置で、図6Aは本発明の第3実施例装置の断面図を、また図6Bは本発明の第4実施例装置の断面図を夫々示す。さらに
【図7】図7は、本発明の他の実施例の両軸受支持の伝達車に適用した加圧装置で、図7Aは本発明の第5実施例装置の断面図を、また図7Bは本発明の第6実施例装置の断面図を夫々示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は定馬力伝達型の無段変伝動装置の系統を基本原理から再検討したので乾式変速機に限らず湿式変速機にも適用でき、また利用分野も工作機類のような小馬力用から、車両類の大馬力用に至るまで適用できる。特に第一(従動)伝達車への可変加圧制御を行う際に本発明は、油圧による直接加圧方式に依存せず、弾性体による間接加圧方式に依存することによって、最終的に伝達体に対して可変加圧力の付与だけでなく、常時弾性力をも付与をも実現していれば良い。従って弾性装置と圧縮装置の組合せのうち圧縮装置は巻上摺動装置でも油圧摺動装置でも良い。たとえ伝達車の摺動円板が油圧シリンダの一部分を直接構成してる場合でも該摺動円板に弾性力が存在し、結果的に伝達体に常時弾性力を付与していれば良い。圧縮装置を巻上摺動機構による場合は巻上摺動装置の加圧力は弾性装置からの反力に過ぎず弾性装置自体が良好な可変加圧機構となり、更に加圧装置を油圧による場合は弾性装置は単なる弾性材として働き油圧機構が可変加圧機構となり、本発明はいずれでも良い。弾性吸収性は前者の巻上摺動機構がより優れており、その理由は、変速比に応じて弾性力も軸トルクも可変の適正な値に変化できるからである。
【0027】
弾性体はコイルバネに限らず、板バネ、渦巻バネなど他の形態でも良い。また単一のバネでも良いが、大きな加圧力を得るにはバネ定数を大きくする必要があり、バネのヘタリ収縮が生じやすくかつ寸法形状も大幅拡大するので、これを複数の弾性体に分割しても良い。各弾性体の配置方向も、同心円状に限る必要もなく、小型で大きな加圧力が確保できるのであるならば、複数バネを並設しこれ等を同時駆動させて連続リニヤ特性を得る場合に限らず、加圧装置の変速指令に応じて階段的駆動させて非連続階段特性にしても更に連続曲線特性でも良い。
【0028】
また加圧装置の圧縮加圧力は、伝達車と本体の間で付与すれば良いので、両者間で弾性装置と圧縮装置の互の配置順序、場所は設計に応じて任意に変更でき、操作上これ等を非回転状態にする場合は、伝達車と、圧縮装置と、弾性装置と、本体とのいずれかの間に回転分離用軸受を配すれば良い。弾性装置、圧縮装置の取付場所も伝達車回転軸と常に同軸位置に配する必要もなく、非同軸位置である本体上の任意の位置に設置し圧力伝達手段で伝達車と相互に連結すれば良い。従ってここで本体或いは本体基準面とは、回転の有無とは無関係に、伝達車に対する回転軸芯方向の相対的な基準位置が変化しない場所のことである。なお弾性体の加圧方向と伝達車への加圧方向とが互いに逆になる時は圧力伝達手段にシーソウの如き梃子機能で加圧方向を反転させても良い。
【0029】
更に弾性装置と圧縮装置には夫々同様の部材として応動体、応動具、被動体、被動具、更に圧力伝達手段などが組込まれるが、これ等の部材は設計に応じて互に単一部材で共用したり兼用したり、又は細分化したり更に伝達車の円板、本体などの部材で逆用又は代用する等の各種選定が行われるが、これ等は単なる部材の選択設計の範囲に留まり、任意の変更を行っても本発明の範囲に含まれる。
【0030】
圧縮装置として巻上摺動装置による場合は、巻上摺動機構とはネジ手段が最も一般的だが、円周面にカムを施した回転カムでも同等の機能を達する。また巻上摺動機構には駆動源からの変速指令へ誤差要因の侵入を回避し1対1で対応させる必要上、巻上機構内に周知のセルフロック機能即ち逆転防止用ブレーキ機能およびプーリ圧に基づくオーバラン阻止機能が必要である。従って台形ネジとウォーム伝達機の組合せ、或いは普通ネジ又はボールネジとブレーキ付モータの組合せ更に逆転阻止ステップモータの使用等、各種の周知技術の組合せが配慮されるべきである。また圧縮装置の押圧移動量は、第一伝達車の変速移動分L01と弾性装置の押圧移動分L02の和L0(=L01+L02)が必要となる。従って移動分L01と移動分L02を別々の巻上摺動機構で構成しても良い。この際に従動車側の移動分L0は必然的に主動車側の移動分L1とは作動方向および作動量が異なるため、巻上摺動機構のネジ手段のピッチ、回転方向、回転数或はネジ溝の加工方向(右ネジ、左ネジ)、伝達機の速比等の周知の要素を設計に応じて選択し互に同期付勢すれば良い。
【実施例】
【0031】
(第1実施例)
図1乃至図4は、本発明の第1実施例で伝達車加圧装置を従動及び主動伝達車に適用した車両用の無段伝動装置の各部の構造および加圧装置の特性を示している。伝動装置10は基本構成として第二(主動)伝達車又は主動車2と、第一(従動)伝達車又は従動車1と、この両伝達車間に巻掛けされる伝達体11とで形成され、更に各伝達車1,2を変速させる変速制御装置または可変速可変トルク制御装置7として従動車1側に従動操作器6と、主動車2側に主動操作器8と、更に両操作器6,8を同期駆動する駆動源9とで構成される。更に主動操作器8は、駆動源9で圧縮装置15aを付勢し、従動操作器6は弾性装置3とこれを圧縮する圧縮装置4とで構成した加圧装置5を駆動源9で付勢することで作動される。本発明は、従動伝達車1、主動伝達車2を可変加圧制御する加圧装置5、15を有する可変伝動装置に関し、以下に詳述する。
【0032】
伝達車1,2は、いずれも摺動円板1a,2aと、固定円板1b,2bを相対向して、キーを介して前者が後者に対して軸芯方向に摺動可能に構成され、伝達車1と2では互に逆向に配置される。両伝達車1,2に対応する各操作器6,8からの加圧力の平衡を制御することによって両伝達車1,2での伝達体11との接触半径rを連続的に変化させ、全変速領域で所定馬力の動力伝達を果している。伝達体11は、図1では最大速比の位置を、図2では動作説明の都合上右半分を最大径に、左半分を半径r 0 の回転数60%の位置を夫々描いた。また伝動装置10は本体10aと蓋体10bとで密閉の油槽室を形成し、湿式伝動装置を構成すると共に、車両などの内燃機関、伝装置等と連結される。一方、変制御装置7の全ては本体10の一部である蓋体10bの側に集中配備される。
【0033】
主動操作器8の加圧装置15で圧縮装置15aは、摺動装置14と指令の反転阻止するセルフロック機能を持つ主動変速動力伝達機12と構成される。前者はボールネジを施された応動具16と被動具17からなり、後者はウォーム18とホイール19からなるウォーム伝達機12である。加圧装置15は可変径制御の基準位置を正確に再現するため、弾性力等の不安定な位置決め要因を除いた第二摺動装置14で示される。
【0034】
主動軸20は軸受21,22で両軸支持される一方、圧縮装置15aは本体基準面10cと伝達体2の間の軸受13および23を介して配置される。摺動装置14の応動具16がホイール19で回動されると、被動具17は、回転せず案内棒24aで伝達車回転軸芯方向にのみ加圧摺動する。摺動装置14のネジは右ネジに加工される。24は応動装置であり、この例では圧力伝達手段として働くスラスト受具として示す。
【0035】
従動操作器6の加圧装置5は、摺動円板1aを加圧摺動させているにも拘らず、その周囲に設置されずに主動操作器8と同一平面上の蓋体10bに非回転状態に設置されている。図2中、加圧装置5は、伝達車1の回転軸芯を中心に巻上摺動装置25の左右に延びる連結レバー28と、二本の伝達軸41a,41b、リニアボール軸受42,43で成る伝達レバーと、シフタレバー44とを有しかつ伝達車1に配したジンバル47、スラスト受具46、軸受45を経て加圧力を伝える圧力伝達手段40と連結している。加圧装置5の内部構成は、弾性装置3と圧縮装置4とからなり、両者は軸受31を接合点として両者の加圧力が互に直列に連結接合する例で示される。従って弾性装置3の加圧力は本体基準面10cとしての底蓋36を基準に、軸受31から圧縮装置4、圧力伝達手段40を経て伝達車1の回転軸芯方向に弾性加圧力として印加する。加圧装置5は、図2のIII-III線で単一構造物5として本体10の一部である蓋体10bに伝動車1と同軸上で着脱自在に構成される。
【0036】
弾性装置3は、複数の環状弾性体33を同心状で伝達車回転軸芯と同軸に摺動可能に筺体35に予め所定の加圧状態に収納した単一構造物30を形成した例である。本来単一弾性体だけでは形成できない大きな押圧力を狭空間内で確保するため、特殊構造が採用される。四つの弾性体33aないし33dは一端を振動伝達不能に本体10に他端を振動伝達可能に隣の応動体と係合するための夫々連結部39aないし39dを施される環状応動体37aないし37dが個別に付されている。筺体35の内壁には弾性体33の係止装置32として三つの段差当接部38bないし38dと被動体である底蓋36とが施される。なお本例では初段弾性体37aに対応する当接部38aが無いが、これは初期加圧状態では始めから最小加圧力Pminを選定するため圧縮装置4と連結するためである。点線38aで示す様に予め施しても良い。従って係止装置32は底蓋36と天上内壁とで構成される。各段差当接部38の最内径は対応する各応動体37の最内径よりも大きい径なので隣接する前段の段差当接部38から突出している。従って圧縮装置4の応動に伴って応動具26は、応動体37a乃至37dの順に各応動体に案内されて順次弾性体33a,33b,33cおよび33dを押圧し、加圧力を階段状に並設加算する構造である。
【0037】
圧縮装置4は、ボールネジを施された応動具26および被動具27からなる巻上装置25と、反転阻止のセルフロック機構としてのウォーム48およびホイール49からなる変速動力伝達機29とを有し、両者の間に弾性装置3を配置される。応動具26はネジ部26aと、連結部26bと、摺動部26cと、更に押圧部26dとで形成される。摺動部26cがスプライン軸を形成しホイール49との間で、回動力だけを受けてネジ部26aに伝え伝達車回転軸芯方向に摺動可能に係合される。この構成で、圧縮装置4が、一端が本体10に安定配置状態に固定された弾性装置3の他端と一体組付に連結されながら、弾性装置3に対して浮遊ない浮動状態(フローティング)に支持される。なお、本例では主動操作器8の圧縮装置15aの応動具16に施したボールネジが右ネジ加工であったのに対し従動操作器6の応動具26のボールネジが左ネジ加圧を施される。図2のように被動具27は二つのレバー28a,28bをもつ連結レバー28を施され、伝達軸41に連結する。第一摺動装置25の応動具26は応動体37aの先端部31′と、伝達車1と連結する伝達軸41との2つの中間位置で浮動状態に支持されるので、摺動部26cは所定の長さをもつ。
【0038】
共通駆動源9は、図3A,3Bに示すブレーキ付の可逆モータ53として直流サーボモータが使用され、二つの伝達機55,60が施され、主動および従動操作器8,6の夫々の駆動軸18a,48aを同時に同期駆動している。変速指令としての変速動力は歯車56,57を経て軸54から軸58に、更に操作器8には歯車59,64にて軸58から軸18aに、また操作器6にはアイドラ車61を含め歯車59,62を経て軸58から軸48aに夫々伝わる。歯車64と、歯車63, 62の相異は、主動車2の第二加圧装置15の圧縮装置15aの移動変位量L1 に対し、従動車1の加圧装置5の第圧縮装置4の移動変位量L0 (=L01+L02)の方が大きく、摺動円板1aと弾性体33の双方を同時に移動押圧する必要の為である。
【0039】
次にこの伝動装置10の動作を図4にて所望特性(B)を得る加圧装置5、15の動作を中心に述べる。図1の通り、変速機10で伝達体11が最大速比の位置の状態で入出力軸20,50が伝動し一定速比の定速回動しているものとする。可逆モータ53が速比を減る方向、即ち増速指令を受け駆動始めるとする。図3Aの矢印のように変速動力は、軸18aと軸48aに伝えられ互に逆向きに回動する。本例ではネジ体15aとボールネジ体25とでは互に逆ネジ加工されているので、圧縮装置15aが円板2aを加圧すると伝達体11の半径はr10からr11に増大し始める。同時に最大加圧力Pmaxで押圧していた加圧装置5は、圧縮装置4の摺動装置25の加圧力を減少する方向に作動する。従って弾性装置3への全圧加圧力も点線に示す位置に上昇し、同時に摺動装置25の応動具26は上昇し逆に被動具27は加圧を解かれた分量だけ逆に降下する。この降下量は図2のレバー28および圧力伝達手段40を経て伝達車1への加圧力を減圧すると同時に主動車2側の加圧装置15で引張られる結果、伝達体11の半径はr01からr02に減少する。
【0040】
この事は、図4の特性図上で最大速比εminの出力回転数n1からn2への移行に伴い、特性(A)の階段線(IV)上を特性点a1からa2に移行する。と同時に増則速指令の供給に従い伝達車1へ加圧力即ち狭持圧P1もP2に減圧されるので軸トルクも減る事を意味する。そこで伝達車1での加圧力と回転数との間が互に反比例の関係にある事を示す。同様に可逆モータ53から更に増速指令が与えられると同様の動作を繰返えす。仮に出力回転数が略半分のn60の点では、図2の左半分に描いた様に弾性体33cと33dは夫々段差当接部38cと38dに当接して伝達車1への加圧には寄与しないで、階段特性(II)の特性点a60の位置にあり、弾性体33aと33bのみが作用していることを示す。以下同様に摺動装置25の応動具26の回動に伴い加圧特性は回転数の増大に伴って階段的に減少し、最高速回転時に最小加圧力Pminになり軸トルクも最小になる。逆に再び減速状態に戻すには、可逆モータ54を逆転することによって、上述の逆の動作に従い元の位置に戻る。
【0041】
従来技術の弾性体では従動車1の回転数Nの増大に伴い図4の特性線(D)の如く加圧力も増す。これに対し本発明では、圧縮量を増すと弾性加圧力も増す同質の弾性体を用いながら、弾性装置3を圧縮装置4と共働させることによって、該加圧力と回転数間の特性を互いに反比例ないし逆比例の関係にして負の傾斜特性を確保したことに特徴がある。しかも従動車1のベルト・プーリ間の接触面積が最低速時には最高速時に比して数倍に達する。従ってこの特性では伝達体11が受ける軸トルクTは回転数Nが減少しても逆に増大できる。本発明の「反比例」とは、弾性加圧力が階段状乃至非直線な曲線特性も含むことを示す。
【0042】
次に本発明の変速機の自動調芯機能を述べる。変速機の動力伝達には内部にもつ誤差要因及び外部から侵入する変動要因があり、いずれも正規の伝動の障害になる。代表例として前者には伝達体11の長手方向の伸び幅方向の摩耗があり、後者には変速指令の供給、入出力側機器からの衝撃荷重の侵入等が存在する。本発明は、いずれの場合も弾性装置3が悪影響要因を運転中に自動的に補償しかつ再び自動的に正規の伝動動作に復帰させる機能をもつ。
【0043】
今最高速比ε1 の運転中に伝達体11の周長の伸びが徐々に進んだとする。このとき主動・従動の各操作器8,は付勢されないので、主動車2での接触半径は元のままである。しかし従動車1では伸び分に応じて半径が拡大する。回転数はその分だけ減速し円板1aも弾性装置3も僅かに移動するが、ベルト・プーリ間挾持圧Pには僅かな変化しか無くトルクの変化も僅かで、伝達体11への挾持圧はほぼ最高荷重の状態を維持し続ける。この事は回転数が僅かに変化しても伝達馬力の伝動機能自体は全く障害を受けず自動調芯して正規の伝動を保持し続ける事を示す。次に伝達体11に幅方向の摩耗による厚味が縮小した場合を考える。このときも操作器,8の停止中だが、従動車1での弾性装置3の押圧により自動的に主動車2での接触半径は縮少すると同時に従動車1では同様にその分半径を拡大するので出力回転数は減少するが、正規の伝動馬力を維持しながら自動調芯する。
【0044】
更に入出力軸20,50に突発的な衝撃振動の侵入を考える。この場合にも自動調芯機能は同様に働く。従動伝達車1の側では伝達体11の半径r0 を拡大または縮小の乱れ振動が一瞬間だけ発生するが、この弾性振動は逆に圧力伝達手段40から圧縮装置4に伝達される。この時圧縮装置4は、被動具27から応動具26に伝えられるが、応動具26の先端のスプライン摺動軸26cも軸芯方向に摺動可能にホイール49と係合しているため、圧縮装置4は弾性装置3の応動体37の連結具32と係合する以外は全体が浮動状態に配置されている。従って侵入した乱れ振動を直接弾性装置3のみが弾性吸収することになる。短時間内に乱れを終息し、加圧装置5は再び元の安定伝達状態に自動復帰する。
【0045】
次に従動車1の加圧装置5が該伝達車に間接加圧として可変加圧力と弾性力との双方を供給するのに対し、主動車2の加圧装置15が該伝達車に直接加圧として可変加圧力のみを供給する理由を述べる。この理由は、従動車1と主動車2とでは無段変速機としての各伝達車1,2のもつ機能役割を区分するためである。即ち従動車1は連結する負荷装置に対して狭持圧を可変加圧し所定馬力の伝動用に可変軸トルク制御機能を確保することと内外の乱調に対し自ら安定状態に復帰する自動調芯機能をもつことであったのに対し、主動車2では、この従動車1の各役割をバックアップするため常時安定な円板2aの位置決め制御による速比又は出力回転数制御機能を与える為である。この事は主動車2が変速伝動の回転数の基準車として作動し、従動車1がこの基準車の回転数を基準としてこれに応答して作動する追従車の機能を果させる為である。
【0046】
第一伝達車1の加圧装置5は、圧縮装置4の伝達機29と摺動装置25の間に弾性装置3を一体組付し、伝達機29を筐体35に同時収納し全体として単一構造物を構成し本体10の一部である蓋体10aの外側に、伝達車1の軸50と同軸にしかも外側のIII−III線から着脱自在に配置される。一方第二伝達車2の加圧装置15は、摺動装置14と伝達機12とからなる圧縮装置15aを蓋体10bの内側でしかも蓋体10bと共に一体組付される。従って図3Aに示す本体10aから蓋体10bを多数のボルト10eを解放することによって、変速制御装置7を構成する全操作器6および8は、IV−IV線を境として第一および第二伝達車1,2を伴って軸受21,45および軸受52から本体10としての蓋体10bに一体の変速機として着脱可能である。なお、ネジ軸26の先端は、軸50との連結は無く、当接防止用に開孔50aをかりて収め、ここに分離して着脱可能に構成される。
【0047】
(第2実施例)
図5は、フライス盤、ボール盤等の工作機械用無段伝動装置に用いた本発明の第2実施例の断面構成を示す。本発明加圧装置5は左側従動伝達車1に適用されている。本実施例以後全ての実施の形態は、基本的な動作および機能が略同等なので、上述した第1実施例と同一部品符号を付して、主要な相違点のみを説明する。相違点の第一は、圧縮装置4の摺動装置25の応動具26自体が伝達車1の回転軸50に施した同軸貫通孔65を経由して摺動円板1aに対して圧力伝達手段の機能を果していることである。第二は、巻上摺動装置25が、伝達車1の変速摺動分L01を駆動する第1巻上摺動装置25aと、弾性装置3の圧縮移動分L02を駆動する第2巻上摺動装置25bとに二分割され、両者が応動具26と変速動力伝達機29とを共用しながら伝達車1の表側の第1圧縮装置と裏側の第2圧縮装置とに配されたことである。しかも応動具26には二種のネジ手段26a,26bのネジ溝が互に逆ネジ加圧を施されている。従って同図の右左に個別に描いて示す通り、弾性装置3を加圧すると同時に伝達車1の円板1aも同期付勢して押圧されるため、伝達車1への加圧特性も図4の特性線(A)と同じになる。なお回転軸50が軸受による片持構造であるが、本例の思想は第1実施例のような両軸受支持構造の場合にも適用できる。第三に、弾性装置3の応動体37が巻上摺動装置25bの被動具27によって付勢されている事である。第四に、ウォーム伝達機29が単独構成されていることなどである。
【0048】
(第3実施例)
図6Aの第3実施例では、更に図5の第2実施例に示した弾性装置3および圧縮装置4を全て伝達車1の摺動円板1aの側の本体10の一部である蓋体10bに配置した例である。この場合も伝達車加圧装置5の動作機能も第2実施例と略同様である。上述以外の主な相違点は、第一に弾性体が単一であること、第二が圧縮装置4の応動手段28が圧力伝達手段40を兼用していること、第三に蓋体10bを本体10から取外すと軸受45と応動装置28とが分離でき、弾性装置3および圧縮装置4との加圧装置5が一体構造物として本体10から着脱でき、ベルト交換保守に供したこと等がある。
【0049】
(第4実施例)
図6Bの実施例は、図5の第2実施例での弾性装置3のみを伝達車1に直接設置した例であり、同軸貫通孔の構造は同じである。この場合に上述以外の図1および図5の各実施例との相違点は、第一に筺体35が伝達車1に直接取付けられ円板1a自体が被動体36でもあり筺体35の一部を形成していることである。複数バネの順次駆動よりもむしろ単一バネ乃至複数バネの同時駆動にしてもよい。第二に弾性装置3の応動体が、複数の応動体を互に連動させた五つの応動体37に分かれ、しかも圧縮装置4の側の応動手段28が巻上摺動装置25の被動具27と兼用され、応動具28,応動具37間に軸受を配したことである。なお軸受45は円板1aと弾性体33との間に施しても良い。加圧装置5の動作については図1の実施例と同様で、また圧縮装置4の変速動力伝達機も図5,図6Aの各例と同じなので図示を省く。
【0050】
(第5実施例)
図7Aの第5実施例は、図1の実施例と同様両軸受支持した伝達車加圧装置5の例である。この例が、他の実施例との主要な相異点は、第一に伝達車1に軸受45を経て同心状に並列配置された複数の弾性体33が、圧縮装置4によって常に同時に圧縮されることである。図1,図5,図6Bの各実施例の場合と異なり、加圧特性が階段状にならず図4の特性線(A′)に示すようにリニヤ特性が得られることである。なお弾性体33a,33bと弾性体33cとは右巻バネと左巻バネで作られ、圧縮歪を相殺させている。第二に筺体35が圧縮装置4の摺動装置25を保持しかつ入力側応動体37と出力側応動体36とにより兼用係止装置32が施され全体が浮動状態に構成したこと。第四に変速動力伝達機29がウォーム伝達機でなくベベル伝達機で構成したことである。
【0051】
(第6実施例)
図7Bの実施例は、図6Bの実施例と同様の弾性体33により軸受を経ずに直接加圧した例である。他の実施例の相違点は、圧縮装置4の摺動装置25の被動具27が水平方向に本体10a上を移動し、更に圧力伝達手段40を兼用する応動具28が垂直方向に押圧する。被動具27,応動具28を互に直角方向に摺動可能にカム傾斜接合面27c,28cを設け、両カム式応動装置により弾性装置3を圧縮加圧した点である。
【0052】
(その他の実施例)
本発明では、油圧の直接加圧方式でなく、弾性体による間接加圧方式に依存しているが、ここで「直接」とは加圧力の供給のみを意味し、「間接」とは加圧力と弾性力の双方の同時供給を意味する。従って伝達車に直接油圧シリンダを接合して可変加圧制御する場合であっても、この伝達車の摺動円板と油圧シリンダが一体となり浮遊状態ないし浮動状態にしてある限り、加圧力だけでなく弾性力の供給も可能になるので本発明の範囲である。またこの場合に油圧シリンダからなる圧縮装置と弾性装置とを一体のまま回転可能に取付る時には、加圧装置と伝達車との間には回転分離の軸受は不用である。更に変速制御部の共通駆動源は電気的なモータに制約されず、油圧などの流体モータなど各種のモータを採用しても良く、その場合にも巻上摺動装置および加圧装置にボールネジ、台形ネジなどの手段を利用すれば、大容量伝動を高速度で変速制御することも実現できる。従って、本発明は「特許請求の範囲」から当業者が容易に創作しうる範囲内に於いて、設計仕様に応じた各種の変更乃至変形しても権利範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1 従動車、従動伝達車または第一伝達車
2 主動車、主動伝達車または第二伝達車
3 弾性装置
4 圧縮装置または第一圧縮装置
4a 第1圧縮装置
4b 第2圧縮装置
5 加圧装置、従動加圧装置または第一加圧装置
6 従動操作器
7 変速制御装置、可変制御装置または可変速可変トルク制御装置
8 主動操作器
9 駆動源、共通駆動源または同期駆動源
10 変速機無段変速機または可変伝動装置
10a 本体または本体基準面
10b 蓋体
11 伝達体
12 主動伝達機又は変速動力伝達機
14 摺動装置、第二摺動装置または巻上摺動装置
25 摺動装置、第一摺動装置または巻上摺動装置
25a 第1摺動装置または第1巻上摺動装置
25b 第2摺動装置または第2巻上摺動装置
15 加圧装置、従動加圧装置または第二加圧装置
15a 圧縮装置または第二圧縮装置
16,26 応動具または雄ネジ体
17,27 被動具または雌ネジ体
29 従動伝達機又は変速動力伝達機
32 係止装置
33 弾性体
35 筺体
36 被動体または底蓋
37 応動体
40 圧力伝達手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性装置から弾性力供給する第一伝達車と、第二加圧装置の加圧力で可変径制御する第二伝達車とに伝達体を巻掛した可変伝動装置において、
上記弾性装置及び上記第一伝達車を加圧する第一加圧装置は、上記伝達車の回転軸芯と同軸に配置され一端を振動伝達可能に他端を振動伝達不能に支持された弾性装置と、与えた該指令の反転を阻止するセルフロック機能を持つ変速動力伝達機で摺動装置を該回転軸芯方向に摺動付勢することで上記弾性装置を該指令に応じて圧縮摺動する圧縮装置とを有し、上記弾性装置及び圧縮装置は両加圧力を互に直列重畳させて生じた弾性加圧力を上記第一伝達車に印加すると共に、上記圧縮装置は上記伝達体及び上記第一伝達車間の挟持圧の値を上記弾性装置の該弾性加圧力により可変加圧制御することで上記第一伝達車に常時弾性加圧力を付与しながら任意かつ可変の軸トルクを付与してなる可変伝動装置。
【請求項2】
弾性装置から弾性力供給する第一伝達車と、第二加圧装置の加圧力で可変径制御する第二伝達車とに伝達体を巻掛した可変伝動装置において、
上記第一伝達車の回転軸芯方向に摺動変位し且つ上記弾性装置を直列加圧で生じた弾性力を指令に応じ上記第一伝達車に付与する第一圧縮装置と上記弾性装置とで成る第一加圧装置と、指令に応じ上記第二伝達車の回転軸芯方向に摺動変位する第二圧縮装置が該第二伝達車での上記伝達体接触径を制御する上記第二加圧装置とを有し、与えた該指令の反転を阻止するセルフロック機能を持つ上記第一及び第二加圧装置は、夫々弾性力及び加圧力を上記第一及び第二伝達車に個別単独で且つ明確に区分供給する事で上記第一伝達車及び第二伝達車に夫々追従車及び基準車機能の役割区分を果し、上記第一加圧装置は第一伝達車にトルク制御機能を上記第二加圧装置は第二伝達車に速比又は出力回転数制御機能を夫々個別に且つ同期して可変制御してなる可変伝動装置。
【請求項3】
弾性装置から弾性力供給する第一伝達車と、第二加圧装置の加圧力で可変径制御する第二伝達車とに伝達体を巻掛した可変伝動装置において、
上記第一伝達車の回転軸芯方向に摺動変位し且つ上記弾性装置を直列加圧で生じた弾性力を指令に応じ上記第一伝達車に付与する第一圧縮装置と上記弾性装置とで成る第一加圧装置と、指令に応じ上記第二伝達車の回転軸芯方向に摺動変位する第二圧縮装置が加圧力で該第二伝達車での上記伝達体接触径を位置決め制御する上記第二加圧装置と、更に指令の逆転阻止するセルフロック機能をもつ上記第一及び第二加圧装置を同期付勢する駆動源とを有し、上記第一及び第二加圧装置は、上記第二加圧装置が上記第二伝達車の移動変位量L1を変位するときに上記第一加圧装置の移動変位量L0として上記第一伝達車の変速移動分L01と上記弾性装置の押圧移動分L02とを同期変位させる事で、上記第二加圧装置は出力回転数の増大時は上記第一加圧装置がトルクを減少させ逆に出力回転数の減少時はトルクを増大させてなる可変伝動装置。
【請求項4】
弾性装置から弾性力供給する第一伝達車と、第二加圧装置の加圧力で可変径制御する第二伝達車とに伝達体を巻掛した可変伝動装置において、
弾性装置と第一摺動装置を摺動調節してセルフロック機能を持つ第一圧縮装置との両加圧力を直列重畳させて生じた弾性加圧力を第一伝達車に印加することで上記第一伝達車および伝達体間の挟持圧の値を変速指令に応じて間接的に可変加圧制御する第一加圧装置と、第二摺動装置を摺動調節してセルフロック機能を持つ第二圧縮装置の加圧力を第二伝達車に印加することで変速指令に応じて上記第二伝達車上での上記伝達体を直接的に可変位置決め制御する第二加圧装置と、更に上記第一及び第二加圧装置と連結して夫々変速指令を同期供給しかつブレーキ機能を持つ駆動源とから成り、上記第一加圧装置は上記第一伝達車に常時弾性加圧力による自動調芯機能と該挟持圧の可変加圧制御による可変軸トルク制御機能とを付与し、また第二加圧装置は上記第二伝達車に非弾性加圧力の上記伝達体の可変位置決め制御による可変速比又は回転数制御機能を付与して該速比又は回転数と該トルクとを同期制御することで任意の動力伝達を可能してなる可変伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−222236(P2009−222236A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161404(P2009−161404)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願平10−321246の分割
【原出願日】平成10年10月7日(1998.10.7)
【出願人】(593006320)東京自動機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】