説明

可変容量スライディングベーンポンプ

ポンプ本体と、前記ポンプ本体に設けられた吸入および排出ポートと、前記ポンプ本体に回転自在に搭載された駆動シャフトと、前記駆動シャフトによって駆動され、前記駆動シャフトと同軸的に配置されたロータと、前記ロータに滑動自在に配置され、放射状に延出する複数のベーンと、前記ポンプ本体に配置されたピボットと、前記ポンプ本体内において前記ピボットに回動自在に配置され、前記ロータ軸から偏心した中心軸を有するスライド部と、前記ロータ、ベーン、スライド部によって画定され、前記吸入および排出ポートに順次連通される複数の流体チャンバと、前記スライド部を1つの方向に押圧するために前記スライド部に作用するバネと、各々流体圧力を受けるのに適するとともに前記ポンプ本体と前記スライド部の外周面の間に各々配置される第1チャンバおよび第2チャンバとを備え、前記第1チャンバはポンプ出口排出圧力と流体的に連絡され、前記第2チャンバを選択的に加圧、減圧するように作動可能なバルブを更に備える可変容量スライディングベーンポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定圧力源と可変圧力源の間の圧力差により位置が制御されるスライド部を備え、要求される流量および圧力を達成するように、圧力差がスライド部に掛かるバネ力と均衡される可変容量スライディングベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン用潤滑システムは、潤滑液を圧縮してエンジン潤滑回路へと供給する。それは、多数のベーンおよびキャビティとともに油圧回路に供給される流量を可変とするスライド部とロータを採用する。
【0003】
スライド部は、ベーン、ロータ、スライド部の内周面により画定される流体チャンバを形成するためにロータから偏心されている。圧縮バネは、デフォルトで大きな流体チャンバを形成するようにスライド部を配置する。エンジンが少ない流量しか必要としない場合、あるいはポンプによる低い油圧しか必要としないとき、圧力調整装置は、流体をポンプ出力管路からポンプ内の調整チャンバへと導く。調整チャンバ内の圧力は、ロータとスライド部の中心がより近づいて配置されるように、バネ力に抗してスライド部を回動し、これにより流体チャンバの大きさを小さくする。これは流体貯留部からポンプへ流入する流量を低減することによって、ポンプによって出力される流量を低減し、それによって油圧をも低下させる。
【0004】
ポンプの出力を制御する方法は2通りある。第1の方法は、ポンプ出力を下げるために、圧力調整装置を介して管路圧力を調整チャンバへと導くことである。第2の方法は、ポンプの出力を増大させる流体を排出することで圧力調整装置を介して調整チャンバから圧力を取り除くことである。
【0005】
この技術の代表は、シュスター(Schuster)の米国特許第4342545号(1982年)であり、回動自在に装着されたリング部材を備える可変容量ベーン型のポンプを開示し、リング部材は、ロータとリングの間の偏心量を変更するための調整が可能で、これによりポンプ容量を制御する。リングは、リングの外側面の一部に印加される移動制御圧力に対抗するものとして、ピボット連結での1つの方向に向けられる内部圧力による正味のリング反力を連続的に維持するためにその中心が常にピボット点を通る軸およびポンプロータの中心を通る軸に対する1つの4分円内に位置するようにピボットに配置され、それにより容量の全レンジに渡る制御安定性が向上される。
【0006】
必要とされているのは、定圧力源と可変圧力源の間の圧力差に基づき位置が制御される滑動部を備え、圧力差が要求される流量および圧力を達成するようにスライド部に掛かるバネ力を均衡させる可変容量スライディングベーンポンプである。本発明はこの要求に合致する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、定圧力源と可変圧力源の間の圧力差に基づき位置が制御される滑動部を備え、圧力差が要求される流量および圧力を達成するようにスライド部に掛かるバネ力を均衡させる可変容量スライディングベーンポンプを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、以下における本発明の詳細な説明と図面とによって指摘され明らかとされる。

【0009】
本発明は、ポンプ本体と、前記ポンプ本体に設けられた吸入および排出ポートと、前記ポンプ本体に回転自在に搭載された駆動シャフトと、前記駆動シャフトによって駆動され、前記駆動シャフトと同軸的に配置されたロータと、前記ロータに滑動自在に配置され、放射状に延出する複数のベーンと、前記ポンプ本体に配置されたピボットと、前記ポンプ本体内において前記ピボットに回動自在に配置され、前記ロータ軸から偏心した中心軸を有するスライド部と、前記ロータ、前記ベーン、前記スライド部によって画定され、前記吸入および排出ポートに順次連通される複数の流体チャンバと、前記スライド部を1つの方向に押圧するために前記スライド部に作用するバネと、各々流体圧力を受けるのに適するとともに前記ポンプ本体と前記スライド部の外周面の間に各々配置される第1チャンバおよび第2チャンバとを備え、前記第1チャンバはポンプ出口排出圧力と流体的に連絡され、前記第2チャンバを選択的に加圧、減圧するように作動可能なバルブを更に備える可変容量スライディングベーンポンプを含む。
【0010】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、外側カバーを取り外したポンプの正面図である。本発明のポンプ100は、本体10を備える。本体10には、キャビティ11が形成され、その中にはスライド部12とロータが配置される。複数のスライディングベーン14がロータ13の周りに放射状に配置される。各ベーン14は、ロータ13のスロット15から放射状に延出する。各ベーン14は、各スロット15内において動かすことができる。
【0012】
ポンプシャフト16は、本体10内に回転自在に取り付けられる。ポンプシャフト16のスプライン状端部160はロータ13と係合する。ロータ13が回転すると、一対のベーン14はベーン制御リング17と遠心力により外側に押し出され、スライド部12の内周面120に摺接する。
【0013】
スライド部12は、ピボット部材18において本体とピボット係合する。スライド部12は、キャビティ11内でピボット部材18において回動し、スライド部12の運動の動作レンジを規定する円弧を描く。
【0014】
各ベーン14の位置は、リング17に対するスライド部12の位置の関数である。ベーン14の複数の端部によって画定される空間は、リング17によって占有される。リング17は、実質的に内周面120と同心的である。
【0015】
ロータ13に対するリング17の位置は、各スロット15内における各ベーン14の径方向の位置を決定し、これによって、ロータ13の回転軸の位置に対するスライド部12の所与の位置が決定される。この関係は、与えられたエンジン速度、すなわち、スライド部12の与えられた位置における吸入ポートと排出ポートの間の各チャンバ21の容積を決定する。
【0016】
本体12は、ポンプ100のための吸入ポートと排出ポートをそれぞれ備える一対の腎臓形のポート19、20を画定する。複数のチャンバ21が、ベーン14、ロータ13、および内周面120によって画定される。チャンバ21は、ロータ13とともに回転され、ベーン型ポンプでは周知のように回転中に拡大・縮小する。
【0017】
吸入ポート19は、供給源、すなわちエンジンオイルシステム(図示せず)などの貯留部から流体を受け入れ、ロータ13が回転すると流体を順次チャンバ21へと流通させる。ベーン14は、チャンバ21内の流体を吸入ポート19から排出ポート20へと移動する。図1に示されるように、もしロータ13が反時計回りに回転していれば、チャンバ21は連続的に拡大して低圧領域を形成し、それによって吸入ポート19の領域内の流体の流入を引き起こし、また連続的に縮小して流体圧力を増大し、それによって排出ポート20の領域内の流体の流出を引き起こす。
【0018】
スライド部12の位置は、2つのチャンバの各々における制御圧力の合成された効果、すなわち、バネ31からのバネ力とのバランスの上に作用するチャンバ22、チャンバ23の制御圧力によって決定される。チャンバ22は、スライド部12の外周部の一部分の周辺において、各々スライド部12に形成された溝26に配置されたシール部材24から溝27に配置されたシール部材25まで延在する。シール部材24、25の各々は、それぞれ弾性バッキング部材29、30によって面28に向けて外側に押し付けられる。チャンバ23は、スライド部12の外周部の一部分の周辺において、シール部材24からピボット部材18まで延在する。
【0019】
バネ31は、チャンバ22、23内の流体圧力の合力に抗するように作用するもので、チャンバ22、23の全体の圧力が増大し、それによりスライド部のピボット部材周りのトルクが増大すると、ポンプのスライド部12は、ピボット部材18の周りに時計回りに移動する。チャンバ22、23内の圧力により生じた合成トルクは、バネ31のバネ力によりバランスされる。
【0020】
チャンバ22内の流体圧力は、ポンプ100の排出ポート20と最終的に遣り取りされる流体により供給され、したがって、ポンプ100あるいはエンジンギャラリへと繋がるフィードバックチャンネルからの出口圧力に曝される(図5参照)。チャンバ23内の流体圧力は、ポンプ100の排出ポートとも連結される第2圧力源との流体の遣り取りで供給される。チャンバ22内の流体圧力は、ポンプ100の出口圧力に比例する。チャンバ23内の流体圧力はポンプ100の速度に依存し、すなわち、所定のポンプ速度よりも低い特定の動作領域では、チャンバ23内の圧力は自動的に外部、例えばオイル溜貯留部へと解放される。所定の速度よりも速いときには、チャンバ23内の圧力は、チャンバ22内の圧力に等しい。これは「切替点」としても参照され、アプリケーションに合わせて任意の速度に設定可能である。チャンバ22、23内の圧力の合計、そしてそれによるトルクは、スライド部12の位置を決定する。スライド部12の位置は、ポンプの出口圧力と流量を決定する。
【0021】
殆どの運転状態において、スライド部12の軸、すなわち内周面120の軸は、低エンジン速度状態での位置32と高エンジン速度状態での位置33の間を移動する。ベーン14が吸入ポート19から排出ポート20へと回転されると、チャンバ21において圧力の変化が起こる。
【0022】
内周面120がチャンバ21内での内部圧力の上昇を受けることから、スライド部12は、作動中は基本的に平衡状態にない。内部圧力の発生による正味の合成反力は、内周面120の中心軸を通る。反力が、チャンバ22、23内の制御圧力によって発生する時計回りの動きに対抗する軸18周りの反時計回りの運動を常に与えることが理解されるであろう。
【0023】
チャンバ22、23内の圧力は、バネ31の力に対してバランスされ、ポンプの容量、およびそれによる流れは、チャンバの圧力を変えることにより調整されるであろう。本発明のポンプは、ポンプの出口圧力やエンジンギャラリの圧力に基づく2以上の出口圧力レベルに対するオイル流れと容量の両方を制御する。
【0024】
一般に、ポンプ内の各チャンバにおいて望ましい圧力レベルは、全てのエンジン速度と負荷条件にとって適正なオイル流れと圧力を発生させるのに必要な圧力レベルである。ある場合には、例えば低いRPMにおいては、エンジンは高い油圧レベルを必要とせず、したがって、多少低い圧力でも許容でき、したがって、流れも低減される。より低い動作圧力と流れは、チャンバ23を加圧することで達成される。
【0025】
より低い油圧の要求値は、異なるエンジンパラメータに依存し、それらにはガソリン、ディーゼルエンジンの何れか、エンジンの複雑さ、エンジン速度と負荷が含まれる。
【0026】
本発明のポンプは、2つのレベルの制御を提供する。第1は、与えられた速度範囲に渡る可変ベーンポンプ機能による圧力制御である。第2は、2つ(以上)の圧力チャンバ22、23を利用することにより、2つ(以上)の圧力レベルの間での切り替えを行うポンプの能力に基づいてスライド部12の位置を制御することである。
【0027】
カバー70は、複数のファスナ37によって、ハウジング10に固定される。放射状に外向きにカバー70を通り越したチャンバ21からの洩れは、面と面の接触により防止される。
【0028】
図2は、ポンプの分解図である。ロータ13に対するリング17の位置は、各スロット15における各ベーン14の径方向の位置を規定し、同様に、ロータ13の回転軸の位置に対するスライド部12の位置を決定する。各ベーン14の内側端部14aは、リング17の外周面17aに押し当てられる。また各ベーン14の外側端部14bは、スライド部12の内周面120に押し当てられるとともに内周面120の上をスライドする。ポンプは単一のバネ31を用いてもよいが、例えば2つのバネ31a、31bを用いてもよい。
【0029】
図3は、外側カバー、スライド部、ロータ、そしてベーンが取り外されたポンプ本体の正面図である。吸入ポート19と排出ポート20は、本体10に配置される。管34は、メインオイルギャラリ204からチャンバ22へと圧力を伝達する(図5参照)。管35は、メインオイルギャラリ204からチャンバ23へと圧力を伝達する(図5参照)。管34は、全てのポンプ作動状況において、ポンプ出口圧力やエンジンギャラリ油圧に曝される。管35内での流体圧力は、バルブ207の位置によって決定する(図1参照)。
【0030】
図4は、ポンプロータの頂面図である。ロータ13は、外周部の周りに放射方向に配置されたスロット15を備える。ベーン14は、各スロット15内において摺動的に係合される。駆動シャフト16は、スプラインホール36を通してロータ13に係合する。駆動シャフト16は、穴36に圧入嵌合されてもよい。各スロット15は、各ベーン14の移動範囲全体に適合するのに十分な径方向長さを有する。ポンプの作動中、各ベーン14は所定距離、径方向に移動し、この距離はロータ13に対するリング17の位置に依存する。
【0031】
図5は、ポンプスライド部の平面図である。スライド部12は、内周面120を備える。各ベーン14の外側端部は、内周面120に摺動係合する。内周面120は、円筒状であるが、この面の形状は、設計上の幾何学的な条件に合わせて、例えば楕円形や卵型など僅かに歪んでいてもよい。ピボット18は、戻り止め121と係合する。溝26と溝27は、それぞれのチャンバ23、22内に流体圧力を密封するために、各々シール部材24、25がそれぞれ収容される。バネ31は面122に押し当てられる。シール部材24、25は、例えば合成ゴムかつ/または天然ゴムなど、ポンプ流体と適切な適合性がある材料であればどのようなものであってもよい。
【0032】
図6は、ポンプ流体回路200の回路図の一例である。流体導管201は、ポンプ排出ポート20をオイルフィルタ202、オイルクーラ203、そしてメインオイルギャラリ204へと連結する。メインオイルギャラリ20は、ポンプ100の出口圧力に曝され、全ての流体システムにおいて一般的な、摩擦損失を受ける。また、メインオイルギャラリ204は、エンジンオイルシステム210に連結される。このシステムは、単に一例として与えられたもので、本発明のポンプやシステムが適用され得るエンジンオイルシステムの種類は示されない。
【0033】
メインオイルギャラリ204に連結されるのは、管34(図1参照)を通してチャンバ22に連結される導管205である。導管205に連結されるのは導管209である。導管209は、電気バルブ20に連結される(図7参照)。バルブ207は、導管206を通して導管209を選択的に図1の管35およびチャンバ23に導管205の流体圧力で連結あるいは遮断するのに用いられる。バルブ207は、本体10内に含まれることが好ましい。図5に示されるバルブ207は、図を簡略にするためにポンプ100から模式的に分離されている。しかし、バルブ207は、システムのスペース上要求により必要とされる様々な物理制約に適合するために、ポンプ本体100から図5に模式的に示されるように独立していてもよい。バルブ207には、例えば、上流圧力に基づいて下流圧力を調整し、一般に圧力調整弁として知られるバルブなど、周知の機械式のバルブも含まれる。
【0034】
スライド部12によりバネ31に掛かる力の全体は、チャンバ22内の流体圧力によるトルクとチャンバ23内の流体圧力によるトルクを足し合わせた合計であり、両者ともピボット部材18周りに作用する。
【0035】
第1運転速度以下では、バルブ207が開き、それによってエンジンギャラリの圧力がチャンバ23へと流入することが可能になる。チャンバ23内の圧力と、チャンバ22内の圧力の組み合わせは、スライド部12をピボット部材18の周りに、チャンバ22、23内の組み合わせられた圧力によって発生したトルクがバネ31のバネ力によってバランスされる位置までの円弧に沿った距離回動させる。スライド部12がこの位置にあるときのポンプの特性は、図7の領域“A”で示される。チャンバ22、23内の圧力は、ポンプ速度に比例する。エンジン速度、そしてポンプ速度が増大すると、チャンバ22、23内の圧力も増大する。この運転状態では、ポンプの出力は、同じエンジン速度においてバルブ207が閉じられている(チャンバ23が加圧されていない)ときのポンプの流れと圧力よりも低い流れと圧力となる。領域“A”では、スライド部12の位置、そしてポンプ出力の流れと圧力のそれは、両チャンバ22、23内の圧力の関数となる。
【0036】
第1運転速度よりも速い運転状態では、バルブ207は閉じられ、それによりチャンバ23は外部圧力(約1bar)まで解放される。チャンバ22内の圧力は、スライド部12をピボット部材18の周りに、チャンバ22内の圧力によって発生したトルクがバネ31のバネ力によってバランスされる均衡位置までの円弧に沿った距離回動させる。スライド部12は、ポンプ速度が増大するとチャンバ22内の圧力も増大することから回動し、それによりバネ31に掛かる力を増大させる。スライド部12がこの位置にあるときのポンプの特性は、図7の領域“B”で示される。領域Bの運転領域は、チャンバ23は大気圧に解放され、全回動運動とスライド部12の位置がチャンバ22の加圧レベルによって決定されることから受動的なモードとしても特徴付けられる。
【0037】
別の実施形態では、バルブ207は部分的に開かれてもよく、それによりスライド部12を位置Aと位置Bの間に移動し、中間的な出口圧力および流れを発生させる。バルブ207を全開位置および全閉位置の間の任意の位置に配置することにより、チャンバ23内の圧力を可変とすることができ、それによって与えられたポンプの出口圧力に対してスライド部の位置に幅を持たせられる。
【0038】
バルブ207が故障した場合には、ポンプは受動的なモード(チャンバ23が加圧されない)で作動され、オイルに対するエンジンの全ての要求に答える。受動的な運転モードは、固定容量ポンプよりも依然効率的である。バルブ207が作動していれば、本発明は受動的に設計されたものを超えた出力低減の向上をもたらす。
【0039】
図7は、ポンプの流量と圧力を含むポンプ特性を表すグラフの一例である。エンジン速度のレンジはx軸に示され、ポンプ出口圧力のレンジはy軸に示される。ポンプ流量のレンジは、リッター/分の単位で第2のy軸に示される。
【0040】
エンジン速度のレンジは、0RPM〜8000RPMである。出口圧力のレンジは、0bar〜6.00barである。ポンプ流量のレンジは、0リットル/分〜90.00リットル/分である。
【0041】
説明の便宜から、約3,500RPMのエンジン速度が本発明のポンプ特性を例示するために選択される。運転状態“A”と“B”の間の遷移は「切替点」としてグラフ内の曲線の中心に描かれている。
【0042】
約3,500RPMよりも低いエンジン速度に対しては、最大出口圧力は約2.6barである。最大流量は約20.0リットル/分である。
【0043】
約3,500RPMよりも高いエンジン速度に対しては、出口圧力は7,500RPMにおいて約4.9barの最小出口圧力にまで急激に変化する。流量は7,500RPMにおいて最大約28.0リットル/分まで変化する。
【0044】
遷移点では、圧力のステップ状の変化は約1.6barである。流れのステップ状の変化は約5リットル/分である。
【0045】
性能の変化は、チャンバ23を外部の大気状態まで解放するバルブ207の作動停止によって発生するスライド部12のピボット18の周りの回動によって発生する。バルブ207は、例えばエンジンECUによって送信される電気信号によって制御される。所定のエンジン速度にまで達すると(本実施形態では約3,500RPM)、ECU208(図6参照)は、バルブ207を閉じるように指令し、それによってチャンバ23をメインオイルギャラリ204内と等しい流体圧力で加圧する。
【0046】
前述したように、チャンバ22、23内の圧力は、バネ31の力とチャンバ21内の流体力を合わせたものよりも大きいトルク、そして力を発生させ、それによってバネ31を圧縮する。これは、スライド部12を回動させる。時計回りの回動によって、流量と出口圧力は、ポンプ容量が減少することから所定のエンジン速度で各々大幅に低下する。
【0047】
比較の目的で、約3,500RPMよりも低い図7の領域Aにおけるダッシュを用いた線は、スライド部12の位置が単一の圧力チャンバによってのみ制御された場合におけるポンプの出口圧力と流量を示す。単一のチャンバの場合には、比較的低いエンジン速度では、例えばほんの僅かにアイドル速度(約1,500RPM)よりも速いとき、ポンプはエンジンに要求されていないにもかかわらず比較的高い出口圧力と流量で運転される。これは非効率的である。本発明のポンプは、低減されたエンジン速度において、効率的な運転のために、要求された流量と圧力のみ供給する。これはシステムにおいて大幅なエネルギーの節約となる。しかし、上昇したエンジン速度では、ポンプは素早くそして正確にエンジンの要求に合致するのに必要なより高い流量と出口圧力へと変化させることができる。
【0048】
図8は、電気バルブの側面図である。バルブ207は、ポンプの本体10と係合される。バルブ207は、エンジンまたは車両(図示せず)の電気的なハーネスに接続される。電気コネクタ(図示せず)は、ソケット208においてバルブ207に係合される。バルブ207が非作動状態とされると、圧力はチャンバ23から解放され、それによってポンプは領域“A”において作動される。バルブ207が作動されると、流体圧力はノズル211からチャンバ23へと受け入れられ、それによってポンプは領域“B”で作動される。高速での不適切な流体圧力によって引き起こされるエンジンの故障を防止するために、バルブはチャンバ23から圧力を解放するときに電気的に非作動状態とされる必要がある。これは高速におけるフェールセーフを達成する。すなわち、チャンバ23はバルブ207が電気的に故障した際に解放される。
【0049】
図9は、ポンプの流量と圧力を含むポンプ性能を表すグラフである。エンジン速度のレンジはx軸に示され、ポンプ出口圧力のレンジはy軸に示される。ポンプ流量のレンジは、第2のy軸に示される。
【0050】
エンジン速度のレンジは、0RPM〜8000RPMである。出口圧力のレンジは、0bar〜6.00barである。ポンプ流量のレンジは、0リットル/分〜90リットル/分である。
【0051】
説明の便宜から、約2,000RPMのエンジン速度が本発明のポンプ特性を例示するために選択される。運転状態“A”と“B”の間の遷移は、約2,000RPMにおける「切替点」として示される。
【0052】
この実施例では、バルブ207は、始動時および2,000RPMよりも低いエンジン速度でオフ状態とされる。すなわち、チャンバ23は非加圧状態とされ外部に解放される。約2,000RPMよりも低いエンジン速度では、最大ポンプ出口圧力(管路圧力)は約3.6barである。最大流量(流量)は約25.0リットル/分である。
【0053】
約2,000RPMよりも高いエンジン速度では、ポンプ出口圧力(管路圧力)は、急激に2,000RPMにおいて最小出口圧力約2.4barにまで下降し、7,500RPMでは3.2barまで上昇する。流量(流量)は、7,500RPMにおいて最大値約23.0リットル/分まで変化する。
【0054】
遷移点では、圧力のステップ状の変化は約1.4barである。流れのステップ状の変化は約5リットル/分である。
【0055】
この実施例における性能の変化は、バルブ207の作動して、チャンバ23を加圧することによって発生するスライド部12のピボット18の周りの回動によって発生する。バルブ207は、例えばエンジンECUによって送信される電気信号によって制御される。所定のエンジン速度にまで達すると(本実施形態では約2,000RPM)、ECU208(図6参照)は、バルブ207を閉じるように指令し、それによってチャンバ23をメインオイルギャラリ204内と等しい流体圧力で加圧する。バルブ207が故障したときには、チャンバ23は非加圧状態とされ、ポンプは高い圧力排出モードとされる。
【0056】
ここでは、本発明の一形態について説明されたが、当業者にとっては、ここで説明された本発明の精神と範囲を逸脱することなく、その構成や構成部の関係を様々に変形することは容易である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】外側カバーが取り外されたポンプの正面図である。
【図2】ポンプの分解図である。
【図3】外側カバー、スライド部、ロータ、ベーンが取り除いたポンプ本体の正面図である。
【図4】ポンプロータの頂面/平面図である。
【図5】ポンプスライド部の平面図である。
【図6】ポンプ流体回路の回路図である。
【図7】ポンプ流量および圧力を含むポンプの性能を示す図である。
【図8】電気バルブの側面図である。
【図9】ポンプ流量および圧力を含むポンプの性能を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体に設けられた吸入および排出ポートと、
前記ポンプ本体に回転自在に搭載された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトによって駆動されるロータと、
前記ロータに滑動自在に配置され、放射状に延出する複数のベーンと、
前記ポンプ本体に配置されたピボットと、
前記ピボットに回動自在に配置され、前記ロータ軸から偏心した中心軸を有するスライド部と、
前記ロータ、前記ベーン、前記スライド部によって画定され、前記吸入および排出ポートに順次連通される複数の流体チャンバと、
前記スライド部を1つの方向に押圧するために前記スライド部に作用するバネと、
各々流体圧力を受けるとともに前記ポンプ本体と前記スライド部の外周面の間に各々配置される第1チャンバおよび第2チャンバとを備え、
前記第1チャンバはポンプ出口排出圧力に接続され、
前記第2チャンバを選択的に外部大気圧力状態にまで加圧するように作動可能なバルブを更に備える
ことを特徴とする可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項2】
前記バネと平行に作用する第2スプリングを備えることを特徴とする請求項1に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項3】
前記バルブは電気バルブでありエンジンECUによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項4】
ポンプ出口排出流量が前記第2チャンバの減圧により減少することを特徴とする請求項1に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項5】
前記第2チャンバは、所定のエンジン速度よりも低いエンジン速度に対しては外部大気圧よりも高い圧力まで加圧され、前記所定のエンジン速度よりも高いエンジン速度に対しては外部大気圧まで減圧されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項6】
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは共に、ポンプ出口排出圧力と流体的に繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項7】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体に設けられた吸入および排出ポートと、
前記ポンプ本体に回転自在に搭載された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトによって駆動され、前記駆動シャフトと同軸的に配置されたロータと、
前記ロータに滑動自在に配置され、放射状に延出する複数のベーンと、
前記ポンプ本体に配置されたピボットと、
前記ポンプ本体内において前記ピボットに回動自在に配置され、前記ロータ軸から偏心した中心軸を有するスライド部と、
前記ロータ、前記ベーン、前記スライド部によって画定され、前記吸入および排出ポートに順次連通される複数の流体チャンバと、
前記スライド部を1つの方向に押圧するために前記スライド部に作用するバネと、
各々ポンプ排出油圧と流体的に連絡され、前記ポンプ本体と前記スライド部の外周面の間に各々配置される第1チャンバおよび第2チャンバと、
所定のポンプ速度で作動可能なバルブとを備え、
前記第2チャンバは、外部大気圧力とポンプ排出油圧との間で選択的に切り替えられる
ことを特徴とする可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項8】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体に設けられた吸入および排出ポートと、
前記ポンプ本体に回転自在に搭載された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトによって駆動され、前記駆動シャフトと同軸的に配置されたロータと、
前記ロータに滑動自在に配置され、放射状に延出する複数のベーンと、
前記ポンプ本体に配置されたピボットと、
前記ポンプ本体内において前記ピボットに回動自在に配置され、前記ロータ軸から偏心した中心軸を有するスライド部と、
前記ロータ、前記ベーン、前記スライド部によって画定され、前記吸入および排出ポートに順次連通される複数の流体チャンバと、
前記スライド部を1つの方向に押圧するために前記スライド部に作用するバネと、
各々流体圧力を受けるのに適するとともに前記ポンプ本体と前記スライド部の外周面の間に各々配置される第1チャンバおよび第2チャンバとを備え、
前記第1チャンバはポンプ出口排出圧力と流体的に連絡され、
前記第2チャンバを選択的に加圧、減圧するように作動可能なバルブを更に備える
ことを特徴とする可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項9】
前記第2チャンバは、所定のエンジン速度よりも低いエンジン速度に対しては外部大気圧よりも高い圧力まで加圧され、前記所定のエンジン速度よりも高いエンジン速度に対しては外部大気圧まで減圧可能であることを特徴とする請求項8に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。
【請求項10】
前記第2チャンバは、略ポンプ出口排出圧力まで加圧可能であることを特徴とする請求項8に記載の可変容量スライディングベーンポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−531598(P2009−531598A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502826(P2009−502826)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006328
【国際公開番号】WO2007/123607
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】