説明

可変軸流送風機

【課題】ケーシング内筒の大径化や羽根車の高回転化を行う際に、ハブリングの質量に作用する遠心力の増大を最小限にして、製作費を抑え、電源設備の大型化を最小限にことができる送風機を実現することを目的としている。
【解決手段】ハブリング1とブレード4とブレード固定手段(ブレードブラケット2)とブレード角変更伝達手段(キャリアシャフト8、リンク15)とケーシング内筒17で構成され、ハブリング1の外径をケーシング内筒17の外径よりも小径とすることによりハブリング1にかかる遠心力を軽減し、製作費を抑え、電源設備の大型化を最小限にしつつケーシング内筒17の大径化や羽根車24の高回転化ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼の角度を任意に変更することにより風量を変更することが可能な送風機の動翼機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路トンネル内の換気装置に用いられる軸流送風機においては、トンネル内の交通量の変化などに対応して、送風量を変化させる制御が取り入れられていることが多い。その送風量を変化させる方法としては、送風機の回転数をインバータなどを用いて変化させる方法もある。しかし、大型の送風機では高価なインバータを用いずに送風機の動翼の角度を変更して送風量を変化させる方法も多くとられている。
【0003】
その風量を可変とすることが可能な送風機の動翼機構では油圧又は空気圧を用いて羽根車内に配置した動翼の軸を回転させる方法が知られている。
【0004】
以下、その方法について、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0005】
図8に示すように道路トンネル内の換気装置に用いる軸流送風機115は、ケーシング外筒117に同心となるようにケーシング内筒114が設けられている。そして、このケーシング内筒114と同心にして羽根車116が設けられている。この羽根車116は、ケーシング内筒114と外径を同じにしたハブリング101の外周側にブレード105が取り付けられている。なお、ケーシング内筒114内部には、後述する動翼可変機構(図示せず)、電動機(図示せず)が納められている。
【0006】
図9を用いて、ブレード105の角度を変更する動翼可変機構について説明する。図9に示すように、ブレード105を保持するためのブラケットリテーナ102は、ハブリング101に加工されたブレード取付孔113に内面側から密着し、締結ボルト109で取り付けられている。ブレードブラケット103は、ハブリング101の内面に配置され、ブレード105を回転可能に保持する。ブレード105は、ブレード105に加工されたねじ106によりブレードブラケット103に結合されている。ブレードブラケット103には、カウンタウエイト111がカウンタバランスメンバ112を介して結合されている。カウンタバランスメンバ112は、カウンタウエイト111をブレード105に対して適切な位置に支持するものである。また、カウンタウエイト111はブレード105に発生する力とカウンタウエイト111により発生する力をバランスさせるためのものである。羽根車が回転しているとき、ブレード105には、遠心力によりブレード105とハブリング101との取付角度が小さくなる方向へ回転しようとする力が発生する。カウンタウエイト111は、ブレード105に対して適切な位置に配置することにより、遠心力によりブレード105とハブリング101との取付角度が大きくなる方向へ回転させる力を発生させ、バランスをとるのである。ブレード105の内周側端部107には、ハブリング101内部にある動翼可変機構(図示せず)からの駆動力をブレード105に伝達するためのカムフロア108が結合されている。ブレードブラケット103とブラケットリテーナ102の間には軸受104が配置されているため、油圧または空気圧を動力とした動翼可変機構からの駆動力をカムフロア108に与えることによりブレード105が軸を中心として回転してブレード105の角度を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−2199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の構成では、羽根車が回転しているとき、ブレード105及びブレードブラケット103などの角度変更のための機構全てに作用する遠心力はハブリング101で保持することになる。又、ハブリング101の部材にも遠心力は作用する。このため、ハブリング101はその全ての力を保持するだけの強度が必要である。羽根車116の回転数が高い場合は、それに応じてハブリング101に作用する遠心力も大きくなる。又、高静圧タイプの送風機では、ハブ比(口径に対するハブ径の比)が大きくなるので、口径が同じでもケーシング内筒114の外径が大きくなる。その場合、ハブリング101の外径も大きくなるため、それに応じてハブリング101に作用する遠心力も大きくなる。この増大する遠心力に対する強度を確保するためにハブリング101の外周部の肉厚を厚くしたり、ハブリング101の外周部の材質をより強度の高いものに変更する必要がある。
【0009】
ハブリング101の外周部の肉厚を厚くすると、羽根車116全体の質量が増加し、その質量を保持するために電動機の軸受を大型化する必要がある。その結果電動機の枠サイズを大きくする必要がある。また、起動電流が多くなることや起動時間が長くなることによる電源設備の大型化も必要になるため、機器の製作費が高くなるという課題がある。また、ハブリング101の外周部の材質をより強度の高いものに変更すると、材料の単価が高くなることによって材料費が高くなる。また材料によっては溶接作業時に余熱しなければならないなどの余分の工数がかかるため、機器の製作費用が高くなるという課題がある。 本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ハブリングの外周部の材質及び肉厚寸法の変更を最小限にして羽根車の大型化や高回転化ができる送風機を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために本発明は、
回転軸に取り付けられたハブリングと、
このハブリングの外周側に放射状に設けられるブレード固定手段と、
このブレード固定手段の先端に設けられるブレードと、
前記ハブリングの外側にあってブレード角を変更するブレード角変更伝達手段と、
前記ハブリングと同心に位置するケーシング内筒とを有し、
前記ハブリングの外径は、前記ケーシング内筒の外径よりも小さく、
前記ブレード角変更伝達手段を前記ハブリングの外周側に取り付け、
回転中心から前記ブレード固定手段の外周側端部までの距離は、前記ケーシング内筒の外外径と略同じ位置とした動翼可変機構を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレード固定手段とブレードとブレード角変更伝達手段に発生する遠心力はハブリングで保持する。又、ハブリングに発生する遠心力も同様にハブリング自身で保持するが、ハブリングの外径はケーシング内筒の外径よりも小径であるため、ケーシング内筒の外径を大きくした場合や、回転数を高くした場合でも従来の構成の羽根車に比べてハブリングに発生する遠心力の増大を最小限にすることができる。このため、ハブリングの材質をより強度の高いものに変更することなく、また肉厚寸法を大きくすることなく、ケーシング内筒の外径を従来より大きくすることができる、もしくは羽根車の回転数を高くできる。したがって、材質を変えることによる製作時の余熱の追加などの工数を増やす必要が無いため、機器の製作費を抑えることができる。又、羽根車の質量増大を最小限にすることができるため、電動機の枠サイズや電源設備も最小限にできる。よって、機器の製作費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1による軸流送風機の断面図
【図2】同軸流送風機の斜視図
【図3】同軸流送風機の要部構成を示す構成図
【図4】同軸流送風機の要部構成を示す斜視図
【図5】同軸流送風機のプレートの要部構成を示す斜視図
【図6】同軸流送風機のカバーの要部構成を示す斜視図
【図7】同軸流送風機の整流板の要部構成を示す斜視図
【図8】従来の軸流送風機の斜視図
【図9】従来の構成を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の手段は、
回転軸に取り付けられたハブリングと、
このハブリングの外周側に放射状に設けられるブレード固定手段と、
このブレード固定手段の先端に設けられるブレードと、
前記ハブリングの外側にあってブレード角を変更するブレード角変更伝達手段と、
前記ハブリングと同心に位置するケーシング内筒とを有し、
前記ハブリングの外径は、前記ケーシング内筒の外径よりも小さく、
前記ブレード角変更伝達手段を前記ハブリングの外周側に取り付け、
回転中心から前記ブレード固定手段の外周側端部までの距離は、前記ケーシング内筒の外外径と略同じ位置とした動翼可変機構を有するものである。
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜7を用いて本発明の第1実施の形態について説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による軸流送風機23は、ケーシング外筒30の内部に、ケーシング外筒30と同心に羽根車24を備えたものである。羽根車24の軸方向前後には、ケーシング内筒17を備えている。羽根車24は、回転軸14を中心にハブリング1が設けられている。このハブリング1に放射状に後述する動翼可変機構とブレード4が取り付けられている。
【0017】
図3、図4を用いて動翼可変機構について詳細に説明する。ハブリング1は、鋼鉄製の筒状のもので、筒の中心軸をなす部分に回転軸14があり、回転軸14を軸として回転するようになっている。このハブリング1の外周部には、円形のブレードブラケット取付用開口10が等間隔に加工され、このブレードブラケット取付用開口10の外側面には、ブレード固定手段となるブレードブラケット2が配置されている。ブレードブラケット2は、断面が円形の棒状をしており、両端の直径が中央部分の直径よりも大きい形状をしている。そして、ブレードブラケット2の一方は、ブレードブラケット取付用開口10を通してハブリング1の内面側で軸受3、座金13を介してブレードブラケット固定ナット12で保持されている。すなわち、ブレードブラケット2は、ハブリング1に対してブレードブラケット取付用開口10を軸にして回転可能になっている。ブレードブラケット取付用開口10は、径の異なる開口を同心に形成したものとなっている。言い換えれば、大径の円形開口(開口10a)内に、同心に小径の円形開口(開口10b)が形成されている。大径の円形開口(開口10a)は、ハブリング1の外周側及び内周側に設けられている。羽根車24の回転時は遠心力によりブレードブラケット2がラジアル方向へ引っ張られるので軸受3はハブリング1の内周側のみに配置することでブレード4の角度を滑らかに変化させることができる。ブレードブラケット2の外周側の端部には、ブレード4がブレード固定ねじ5により接続されている。また、ブレードブラケット2の外周側の端部の内側には、カウンタバランスメンバ7がカウンタバランスメンバ固定ねじ9により接続されている。そして、カウンタバランスメンバ7には、カウンタウエイト6とブレード角変更伝達手段であるキャリアシャフト8が固定されている。キャリアシャフト8は、ハブリング1内に設けたアクチュエーティングホイール16からの駆動力を同じくブレード角変更伝達手段であるリンク15を介してブレードブラケット2に伝達し、ブレード4の角度を変更することになる。
【0018】
カウンタウエイト6は、ブレード4に対して適切な位置に配置することにより、羽根車24が回転したときに発生する遠心力によりブレード4に作用するハブリング1に対する取付角度が小さくなる方向への力を、打ち消す様に作用させることができる。ここで、カウンタバランスメンバ7の形状は、カウンタウエイト6を適切な位置に配置することができるように、決定される。また、油圧または空気圧を動力としたアクチュエーティングホイール16からの駆動力を適切にブレード4へ伝達するためにキャリアシャフト8の位置を決定し、その位置を保持するためにカウンタバランスメンバ7の形状を決定する。
【0019】
上記構成では、羽根車24の回転時にブレードブラケット2及びそれに接続されているブレード4、ブレード固定ねじ5、カウンタバランスメンバ7、カウンタウエイト6、キャリアシャフト8に作用する遠心力は軸受3を介して、回転軸14に取り付けられたハブリング1で受けることになる。すなわち、軸流送風機のケーシング内筒17の外径(ケーシング内筒外径A)の大きさに影響されることなくハブリング1の外径(ハブリング外径B)を小さく抑えることができる。したがって、高静圧化のために軸流送風機のケーシング内筒外径Aを大きくした場合でも、ハブリング外径Bはほとんど変えずに、ハブリング1の外周面の外側に配置された部材の遠心力の増大分に応じた分のハブリング1の強度向上のみで良く、ハブリング1の肉厚寸法は殆ど大きくする必要が無い。又、より強度の高い材質への変更も必要無い。結果として、従来の製造方法で製作が可能となり、製作費用の増加を最小限にすることができるという効果を得る。又、羽根車24全体の質量増加も最小限にすることができるので、電動機の軸受の大型化による電動機の枠サイズの大型化や起動電流の増大または起動時間の増大による電源設備の大型化も最小限にすることができるという効果を得る。
【0020】
また、このような構成によれば、高い回転数で羽根車24を設計する場合にも、遠心力の作用は中心部分のハブリング1で受けることになるので、ハブリング外径Bを大きくする必要がない。
【0021】
また、図5の通り複数のブレードブラケット2の間に気流遮断手段としてのプレート20を配置することにより、送風機運転時にブレード流入側と流出側の圧力差によりケーシング内筒17内で発生する空気の逆流を防止することができるという効果を得る。
【0022】
また、図6に示すように、前記プレート20の外周部にケーシング内筒17の外径と同一面となるように円筒状のカバー21を配置する。このカバー21には、ブレード4をブレードブラケット2に取り付けるための開口31が設けられる。このような構成により、ケーシング内筒17の外面付近を流れる気流をよりスムーズにして送風機の効率低下及び騒音発生の防止を図ることができるという効果を得る。図6では、プレート20の外周にカバー21を設ける構成としたが、放射状の骨組みの外周にカバー21を設ける構成としても良い。
【0023】
また、図7に示すように、前記プレート20の側面に気流生成手段である曲面または平面の整流板22を設けることにより、ケーシング内筒17の内部から外周側へ流れる気流を生成し、それによりケーシング内筒17の外周側から内部側への空気の巻き込みを防止し、ケーシング内筒17の外面付近を流れる気流をよりスムーズにして送風機の効率低下及び騒音発生の防止を図ることができるという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
比較的大風量で、風量を可変できる送風機を提供することができるため、工場、駐車場、道路トンネル、倉庫等の広い空間の換気用途に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 ハブリング
2 ブレードブラケット
3 軸受
4 ブレード
5 ブレード固定ねじ
6 カウンタウエイト
7 カウンタバランスメンバ
8 キャリアシャフト
9 カウンタバランスメンバ固定ねじ
10 ブレードブラケット取付用開口
10a (大径の)開口
10b (小径の)開口
12 ブレードブラケット固定ナット
13 座金
14 回転軸
15 リンク
16 アクチュエーティングホイール
17 ケーシング内筒
20 プレート
21 カバー
22 整流板
23 軸流送風機
24 羽根車
30 ケーシング外筒
31 開口
A ケーシング内筒外径
B ハブリング外径
101 ハブリング
102 ブラケットリテーナ
103 ブレードブラケット
104 軸受
105 ブレード
106 ねじ
107 内周側端部
108 カムフロア
109 締結ボルト
111 カウンタウエイト
112 カウンタバランスメンバ
113 ブレード取付孔
114 ケーシング内筒
115 軸流送風機
116 羽根車
117 ケーシング外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられたハブリングと、
このハブリングの外周側に放射状に設けられるブレード固定手段と、
このブレード固定手段の先端に設けられるブレードと、
前記ハブリングの外側にあってブレード角を変更するブレード角変更伝達手段と、
前記ハブリングと同心に位置するケーシング内筒とを有し、
前記ハブリングの外径は、前記ケーシング内筒の外径よりも小さく、
前記ブレード角変更伝達手段を前記ハブリングの外周側に取り付け、
回転中心から前記ブレード固定手段の外周側端部までの距離は、前記ケーシング内筒の外外径と略同じ位置とした可変軸流送風機。
【請求項2】
複数ある前記ブレード固定手段の間に位置し、前記ハブリングの外周部から前記ケーシング内筒の外周面までの範囲に設けた気流遮蔽手段を有する請求項1記載の可変軸流送風機。
【請求項3】
前記ケーシング内筒とほぼ同じ径の円筒状のカバーに前記ブレード取付開口を設け、
前記カバーの内部に、前記ハブリング、前記ブレード固定手段、前記ブレード角変更伝達手段を設けた請求項1又は2記載の可変軸流送風機。
【請求項4】
前記ケーシング内筒とほぼ同じ径の円周上に気流生成手段を設けた請求項1又は2記載の可変軸流送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47463(P2013−47463A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185500(P2011−185500)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】