可変過給機及び可変過給機の制御方法
【課題】
可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において効率の向上を可能とする。
【解決手段】制御装置により、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する。
可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において効率の向上を可能とする。
【解決手段】制御装置により、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変過給機及び可変過給機の制御方法に関し、特に、コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジン等の車両用エンジンにおいて、排気ガスに含まれたエネルギを利用して過給を行うターボ形過給機が用いられている。この過給機は、排気マニホルド及び吸気マニホルドの上にそれぞれ配置され、軸によって互いに固定的に接続された二つの羽根車(タービン及びコンプレッサ)と、これら羽根車を囲んで配置された二つの渦巻き(volute)とを有して構成されている。
【0003】
第一の羽根車(タービン)は、排気ガスから回転力を得て、この回転力を第二の羽根車(コンプレッサ)に伝える。第二の羽根車(コンプレッサ)は、吸気マニホルド中の空気を圧縮する。
【0004】
このような過給機においては、タービン側の排気ガスの流れを制御し、タービンの回転数を制御して、過給圧力を制御するようにしたものが提案されている。例えば、タービンの回転数に影響を与える排気ガスの流れの速度をウエストゲート(wastegate)バルブによって調節するようにした過給機や、可変タービン(variable-geometry turbine(VGT))、または、可変コンプレッサを備えた可変過給機などが提案されている。
【0005】
ウエストゲートバルブは、タービンに向かう排気ガスの流量が減少しエンジンの作動状態として容認される圧力よりも高い過給圧力となるときに、圧力を適正値に制御すべく作動する。このウエストゲートバルブは、一般に、タービンと平行に配置され、エンジンを制御するための電子制御装置により制御することができる。
【0006】
また、可変タービンを備えた可変過給機においては、タービンを囲んで配置された渦巻きは、アクチュエータにより、同時に方向付け可能であるように、リンク機構によって開閉可能となっている。アクチュエータは、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、例えば、エンジンを制御するための制御装置によって制御される。この可変過給機においては、可変翼の向きを修正することにより、吸気の流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0007】
可変コンプレッサを備えた可変過給機においては、低回転数及び低負荷の状況では、可変コンプレッサの可変翼は、最大閉止位置にセットされてエンジンに供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサの推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジンに供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサの推進力を減少させる。このとき、タービンの回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0008】
特許文献1には、このような可変過給機において、可変翼位置の制御目標の決定を、「過給機入口流量」、「過給機入口圧力」、「過給機入口温度」、「過給機吐出圧力」、「過給機吐出温度」及び「エンジン回転数」から決定する技術が記載されている。この可変過給機においては、可変翼の位置は、「過給機の効率が最大となる位置」と、様々に変化する運転状態とに応じて、一意的に決定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−127121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載された可変過給機においては、可変翼の目標位置の設定に用いるパラメータが6つと多いため、制御装置(CPU)の負荷が大きく、制御装置を簡素化することができない。
【0011】
また、負荷回転時に燃料をカットすると、回転数の減少が僅かであるにも係わらず急激に空気流量が減少するので、可変翼の位置の制御が間に合わなくなってしまい、サージ領域に入ってしまい、異音が発生したり可変翼の破損が生ずるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、前述した実情に鑑みて提案されるものであって、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において可変過給機の効率の向上が可能となされた可変過給機及び可変過給機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
本発明に係る可変過給機は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、過給機入口温度及び過給機回転数の測定結果が送られるとともにコンプレッサの容量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0015】
〔構成2〕
本発明に係る可変過給機は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定する流量計と、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定する圧力センサと、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、過給機入口流量、過給機入口圧力、過給機入口温度及び過給機回転数の測定結果が送られるとともに、コンプレッサの容量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0016】
〔構成3〕
本発明に係る可変過給機の制御方法は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0017】
〔構成4〕
本発明に係る可変過給機の制御方法は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定し、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定し、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る可変過給機及び可変過給機の制御方法においては、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御するので、必要最小限のパラメータにより、安定したコンプレッサの容量の制御を行うことができ、制御装置の負荷が減少する。
【0019】
また、従来の過給機においては、エンジンの急減速時には、サージ防止のために「リサーキュレーションバルブ」を開いて、過給機の吐出空気を過給機の入口に再循環させ、過給機を流れる空気の流量を増やし、サージ領域に作動点が移行するのを防止するようにしていたが、本発明においては、リサーキュレーションバルブ及びその駆動機構が不要となるので、装置構成の小型化、簡素化、コスト低減を実現することができる。
【0020】
すなわち、本発明は、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において可変過給機の効率の向上が可能となされた可変過給機及び可変過給機の制御方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る可変過給機の構成を示すブロック図である。
【図2】可変入口案内翼(VIGV)付き可変過給機の構成を示す断面図である。
【図3】可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【図5】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す三次元グラフである。
【図6】本発明に係る可変過給機における可変翼の制御を示すフローチャートである。
【図7】可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【図8】可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のコンプレッサの構成を示す断面図である。
【図9】(a)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が0°の状態を示す正面図であり、(b)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が10°の状態を示す正面図であり、(c)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が20°の状態を示す正面図であり、(d)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が40°の状態を示す正面図であり、(e)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が60°の状態を示す正面図である。
【図10】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す断面図である。
【図11】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す正面図である。
【図12】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機における制御スケジュールを示す二次元グラフである。
【図13】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る可変過給機の構成を示すブロック図である。
【0024】
本発明に係る可変過給機は、可変コンプレッサを備えた可変過給機である。この可変過給機は、図1に示すように、エンジン101から排気マニホルド102を経て排出される排ガスによって回転されるタービン1を備えている。タービン1は、排気マニホルド102の下流に配置される。
【0025】
本発明に係る可変過給機における可変コンプレッサ2は、可変入口案内翼(Variable Inlet Guide Vane(VIGV))を有するもの(可変入口案内翼(VIGV)付き過給機)や、可変ディフューザ翼(Variable Diffuser Vane(VDV))を有するもの(可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機)など、種々の構成により、容量の制御が可能となっているものであればよい。
【0026】
(1)可変入口案内翼(VIGV)付き過給機に適用した実施の形態
図2は、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0027】
図3は、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す正面図である。
【0028】
可変入口案内翼(VIGV)付き過給機のコンプレッサ2は、図2に示すように、コンプレッサインペラ50の上流側で吸気が流れ込むハウジング10と、ハウジング10の内部流路20の内周方向に沿って配置される複数枚の可変入口案内翼(ベーン)40とを有して構成される。コンプレッサインペラ50は、タービン1から回転力を得て、外部から吸気路を経てハウジング10に流れ込む吸気を圧縮して、エンジン101に供給する。
【0029】
ハウジング10、可変入口案内翼40、ベーン駆動機構40Aとにより、ベーン機構Aが構成されている。ハウジング10は、コンプレッサインペラ50を配置するコンプレッサハウジング60内に配置されている。
【0030】
ベーン駆動機構40Aは、様々な形態をとりうるが、例えば図2、図3に示すように、回動軸15、歯車18、伝達部材19、駆動手段20、歯車21によって構成される。ベーン駆動機構40Aは、可変入口案内翼40を移動操作して「可変翼角度(VIGV角度)」を変化させ、第二の内部流路30における吸気ガスの流れを制御して容量を制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0031】
具体的に説明すると、回動軸15は、可変入口案内翼40が第二の内部流路30で回動し得るように可変入口案内翼40の一端に接続され、貫通孔13に収納されている。
【0032】
また、全ての回動軸15の同軸上には、貫通孔13に配置される歯車18が備えられている。さらに、全ての回動軸15のうちの一本には、コンプレッサハウジング60の貫通孔14に挿通する伝達部材19が接続されている。伝達部材19には、ハウジング10の外部でアクチュエータ等の駆動手段20が接続されている。また、環状の内部空間13には、全ての回動軸15の歯車18に噛み合う環状の歯車21が設置されており、駆動手段20により可変入口案内翼40に動力を伝える際には、伝達部材19に接続された回動軸15から可変入口案内翼40へ動力を伝えるとともに、歯車21及び他の回動軸15等を介して他の可変入口案内翼40へ動力を伝えるようにしている。
【0033】
吸気は、コンプレッサ2の上流側の吸気路から、内部流路20、30を経て、コンプレッサインペラ50の羽根の間を経て、ディフューザ70、コンプレッサのスクロール流路(渦巻き)、吸気マニホルド103の順に通過して、エンジンに供給される。
【0034】
この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機において、低回転数及び低負荷の状況では、可変入口案内翼40は、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0035】
また、この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気路に沿ってコンプレッサインペラ50の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0036】
さらに、この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0037】
この可変過給機は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0038】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、コンプレッサインペラ50の可変翼のスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0039】
図4は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【0040】
図5は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す三次元グラフである。
【0041】
可変翼のスケジュールは、図4及び図5に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可変翼角度(VIGV角度)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図4においては、Z軸は示されていない)。
【0042】
「可変翼角度」については、図4に示すように、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限可変翼の角度を閉じる方向に設定するものである。
【0043】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、図5に示すように、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0044】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0045】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0046】
この可変過給機においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼角度を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の可変翼角度を制御する。
【0047】
図6は、本発明に係る可変過給機における可変翼の制御を示すフローチャートである。
【0048】
すなわち、この可変過給機においては、図6に示すように、ステップst1において、上位ロジック/上位コントローラ(エンジンECU等)より、スケジュール切替を行い、この切替信号Sを、図5に示す制御スケジュールにあてはめる。
【0049】
また、ステップst2で、過給機回転数(Nt〔rpm〕)を取得し、ステップst3で圧縮機入口温度(T1〔°k〕)を取得し、ステップst4で標準温度(T0〔°k〕)を取得しておく。ステップst8において、圧縮機入口温度(T1)及び標準温度(T0)から、温度修正係数(θ=T1/T0)を算出する。そして、ステップst10で、過給機回転数(Nt)及び温度修正係数(θ)から、修正過給機回転数(Ntc=Nt/√θ)を算出する。
【0050】
そして、ステップst5で、圧縮機入口流量(Wa〔kg/s〕)を取得し、ステップst6で圧縮機入口圧力(P1〔Paabs〕)を取得し、ステップst7で標準圧力(P0〔Paabs〕)を取得しておく。ステップst9において、圧縮機入口圧力(P1)及び標準圧力(P0)から、圧力修正係数(δ=P1/P0)を算出する。そして、ステップst11で、温度修正係数(θ)、圧縮機入口流量(Wa)及び圧力修正係数(δ)から、修正吸入空気流量(Wac=(Wa√θ)/δ)を算出する。
【0051】
そして、修正過給機回転数(Ntc)及び修正吸入空気流量(Wac)を図5に示す制御スケジュールにあてはめて、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼の制御値を決定する。
【0052】
なお、本発明に係る可変過給機において、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼の制御には、エンジンECUとは別に、「可変過給機ECU」として別のユニットを用いるようにしてもよい。この場合には、信号類は、エンジンECUを経由するなどして取得しても良い。
【0053】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0054】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0055】
(2)可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機に適用した実施の形態
図7は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0056】
可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機において、タービン1には、図7に示すように、同軸状に互いに固定的にコンプレッサインペラ50が接続されている。このコンプレッサインペラ50は、タービン1から回転力を得て、吸気マニホルド103を経てエンジン101に供給される空気を圧縮する。
【0057】
コンプレッサ2は、コンプレッサインペラ50、スクロール(渦巻き)流路103aを備えている。スクロール流路103aは、コンプレッサインペラ50の周囲を囲むように設けられている。スクロール流路103aの出口は、吸気マニホルド103の入口に接続されている。
【0058】
図8は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のコンプレッサ2の構成を示す断面図である。
【0059】
可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、図8に示すように、アクチュエータ3により方向付け可能である複数の可変翼(可動ベーン)2aによって開閉可能となっており、コンプレッサ2の容量の制御が可能となっている。
【0060】
図9中の(a)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が0°の状態を示す正面図であり、(b)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が10°の状態を示す正面図であり、(c)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が20°の状態を示す正面図であり、(d)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が40°の状態を示す正面図であり、(e)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が60°の状態を示す正面図である。
【0061】
各可変翼2aの「可変翼角度(VDV角度)」が0°のときには、図9中の(a)に示すように、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、最も閉じた状態となる。「可変翼角度(VDV角度)」が10°、20°、40°と変化することにより、図9中の(b)乃至(d)に示すように、各可変翼2a同士の間隔が広くなってゆく。「可変翼角度(VDV角度)」が60°のときには、図9中の(e)に示すように、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、最も開いた状態となる。
【0062】
アクチュエータ3は、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、エンジンを制御するための制御装置4によって制御される。この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、各可変翼2aの向きを制御することにより、容量を変えて、吸気ガスの流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0063】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機において、低回転数及び低負荷の状況では、各可変翼2aは、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0064】
また、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気マニホルド103に沿って可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機2の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0065】
さらに、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0066】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機2は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0067】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、可変翼2aのスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0068】
可変翼2aのスケジュールは、前述した実施の形態と同様に、図4及び図5に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可変翼角度(VDV角度)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図4においては、Z軸は示されていない)。
【0069】
「可変翼角度」については、図4に示すように、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限可変翼の角度を閉じる方向に設定するものである。
【0070】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、図5に示すように、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0071】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0072】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0073】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可変翼角度を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可変翼角度を制御する。
【0074】
そして、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においても、前述した実施の形態と同様に、図6に示すフローチャートに従って、可変翼2aの制御を行う。
【0075】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0076】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変コンプレッサ2の翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0077】
(3)可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機に適用した実施の形態
図10は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0078】
図11は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す正面図である。
【0079】
本発明は、図10及び図11に示すような、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機にも適用することができる。
【0080】
可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2は、図10中矢印Aで示すように、アクチュエータ3により進退可能となされた複数の可動ブレード2aによって、コンプレッサインペラ50の周囲(ディフューザ70)が開閉可能となっており、容量の制御が可能となっている。各可動ブレード2a同士の間はスリット2bとなっており、各可動ブレード2aがコンプレッサインペラ50の周囲に進入されたときには、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機のディフューザ70は、最も閉じた状態(ベーンドディフューザ)となる。そして、各可動ブレード2aがコンプレッサインペラ50の周囲から退出したときには、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機のディフューザ70は、最も開いた状態(ベーンレスディフューザ)となる。
【0081】
アクチュエータ3は、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、エンジンを制御するための制御装置4によって制御される。この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、各可動ブレード2aの位置(進入量)を制御することにより、容量を変えて、吸気ガスの流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0082】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2において、低回転数及び低負荷の状況では、各可動ブレード2aは、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0083】
また、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気マニホルド103に沿って可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0084】
さらに、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0085】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0086】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、可動ブレード2aのスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0087】
図12は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機における制御スケジュールを示す二次元グラフである。
【0088】
可動ブレード2aのスケジュールは、図12に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可動ブレード位置(ベーンドディフューザ、または、ベーンレスディフューザ)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図12においては、Z軸は示されていない)。
【0089】
「可動ブレード位置」については、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限各可動ブレード2aの位置を閉じる方向に設定するものである。
【0090】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0091】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0092】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0093】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可動ブレードの位置を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可動ブレードの位置を制御する。
【0094】
そして、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においても、前述した実施の形態と同様に、図6に示すフローチャートに従って、可動ブレード2aの制御を行う。
【0095】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0096】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変コンプレッサ2の翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0097】
(4)他の実施の形態
本発明に係る可変過給機及び可変過給機の制御方法は、前述した各実施の形態のような3次元のスケジュールマップを用いることに限定されず、2次元のスケジュールマップを用いて制御を行うようにしてもよい。この場合には、必要な取得データは、過給機回転数Ntと過給機入口温度T1のみでよく、圧力センサ6及び流量センサ5が不要となる。
【0098】
図13は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【0099】
すなわち、可変翼角度(VIGV角度)、または、可変ディフューザ翼(VDV角度)を制御するスケジュールとして、図13に示すように、修正過給機回転数Ntcと可変翼角度(可変ディフューザ翼角度)との関係を定めた2次元のスケジュールマップを用いて、図6中のステップst1乃至ステップst4、ステップst8及びステップst10に示すように、過給機回転数Nt及び過給機入口温度T1に基づいて制御を行う。前述した実施の形態と異なり、修正吸入空気流量Wacは制御に用いない。
【0100】
そして、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の他に、数ステップのスケジュールを用いるようにする。例えば、「(1)急加速、(2)通常加速、(3)定常走行、(4)通常減速、(5)急減速」の5段階のスケジュールや、「(1)加速、(2)定常走行、(3)減速」の3段階のスケジュールを用いるようにする。
【0101】
これらスケジュールの切替は、上位ロジック/上位コントローラ(エンジンECU等)より、スケジュールの切替信号Sを受け、指定のスケジュールになるように制御する。
【0102】
この場合には、前述した各実施の形態に比較して、制御に用いるパラメータが少ないので、信号処理数の削減によりCPUのコストダウンが可能であり、通信パラメータ数を縮小することができるので、より安価なシステムを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、可変過給機及び可変過給機の制御方法に適用され、特に、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法に適用される。
【符号の説明】
【0104】
1 タービン
2 可変コンプレッサ
101 エンジン
102 排気マニホルド
103 吸気マニホルド
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変過給機及び可変過給機の制御方法に関し、特に、コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジン等の車両用エンジンにおいて、排気ガスに含まれたエネルギを利用して過給を行うターボ形過給機が用いられている。この過給機は、排気マニホルド及び吸気マニホルドの上にそれぞれ配置され、軸によって互いに固定的に接続された二つの羽根車(タービン及びコンプレッサ)と、これら羽根車を囲んで配置された二つの渦巻き(volute)とを有して構成されている。
【0003】
第一の羽根車(タービン)は、排気ガスから回転力を得て、この回転力を第二の羽根車(コンプレッサ)に伝える。第二の羽根車(コンプレッサ)は、吸気マニホルド中の空気を圧縮する。
【0004】
このような過給機においては、タービン側の排気ガスの流れを制御し、タービンの回転数を制御して、過給圧力を制御するようにしたものが提案されている。例えば、タービンの回転数に影響を与える排気ガスの流れの速度をウエストゲート(wastegate)バルブによって調節するようにした過給機や、可変タービン(variable-geometry turbine(VGT))、または、可変コンプレッサを備えた可変過給機などが提案されている。
【0005】
ウエストゲートバルブは、タービンに向かう排気ガスの流量が減少しエンジンの作動状態として容認される圧力よりも高い過給圧力となるときに、圧力を適正値に制御すべく作動する。このウエストゲートバルブは、一般に、タービンと平行に配置され、エンジンを制御するための電子制御装置により制御することができる。
【0006】
また、可変タービンを備えた可変過給機においては、タービンを囲んで配置された渦巻きは、アクチュエータにより、同時に方向付け可能であるように、リンク機構によって開閉可能となっている。アクチュエータは、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、例えば、エンジンを制御するための制御装置によって制御される。この可変過給機においては、可変翼の向きを修正することにより、吸気の流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0007】
可変コンプレッサを備えた可変過給機においては、低回転数及び低負荷の状況では、可変コンプレッサの可変翼は、最大閉止位置にセットされてエンジンに供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサの推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジンに供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサの推進力を減少させる。このとき、タービンの回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0008】
特許文献1には、このような可変過給機において、可変翼位置の制御目標の決定を、「過給機入口流量」、「過給機入口圧力」、「過給機入口温度」、「過給機吐出圧力」、「過給機吐出温度」及び「エンジン回転数」から決定する技術が記載されている。この可変過給機においては、可変翼の位置は、「過給機の効率が最大となる位置」と、様々に変化する運転状態とに応じて、一意的に決定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−127121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載された可変過給機においては、可変翼の目標位置の設定に用いるパラメータが6つと多いため、制御装置(CPU)の負荷が大きく、制御装置を簡素化することができない。
【0011】
また、負荷回転時に燃料をカットすると、回転数の減少が僅かであるにも係わらず急激に空気流量が減少するので、可変翼の位置の制御が間に合わなくなってしまい、サージ領域に入ってしまい、異音が発生したり可変翼の破損が生ずるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、前述した実情に鑑みて提案されるものであって、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において可変過給機の効率の向上が可能となされた可変過給機及び可変過給機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
本発明に係る可変過給機は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、過給機入口温度及び過給機回転数の測定結果が送られるとともにコンプレッサの容量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0015】
〔構成2〕
本発明に係る可変過給機は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定する流量計と、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定する圧力センサと、吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、過給機入口流量、過給機入口圧力、過給機入口温度及び過給機回転数の測定結果が送られるとともに、コンプレッサの容量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0016】
〔構成3〕
本発明に係る可変過給機の制御方法は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【0017】
〔構成4〕
本発明に係る可変過給機の制御方法は、コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定し、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定し、吸気マニホルドのコンプレッサより上流において取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、過給機回転数、過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、過給機入口流量、過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る可変過給機及び可変過給機の制御方法においては、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御するので、必要最小限のパラメータにより、安定したコンプレッサの容量の制御を行うことができ、制御装置の負荷が減少する。
【0019】
また、従来の過給機においては、エンジンの急減速時には、サージ防止のために「リサーキュレーションバルブ」を開いて、過給機の吐出空気を過給機の入口に再循環させ、過給機を流れる空気の流量を増やし、サージ領域に作動点が移行するのを防止するようにしていたが、本発明においては、リサーキュレーションバルブ及びその駆動機構が不要となるので、装置構成の小型化、簡素化、コスト低減を実現することができる。
【0020】
すなわち、本発明は、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法において、制御装置の負荷を減少させつつ、様々な作動状態において可変過給機の効率の向上が可能となされた可変過給機及び可変過給機の制御方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る可変過給機の構成を示すブロック図である。
【図2】可変入口案内翼(VIGV)付き可変過給機の構成を示す断面図である。
【図3】可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【図5】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す三次元グラフである。
【図6】本発明に係る可変過給機における可変翼の制御を示すフローチャートである。
【図7】可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【図8】可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のコンプレッサの構成を示す断面図である。
【図9】(a)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が0°の状態を示す正面図であり、(b)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が10°の状態を示す正面図であり、(c)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が20°の状態を示す正面図であり、(d)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が40°の状態を示す正面図であり、(e)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が60°の状態を示す正面図である。
【図10】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す断面図である。
【図11】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す正面図である。
【図12】可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機における制御スケジュールを示す二次元グラフである。
【図13】本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る可変過給機の構成を示すブロック図である。
【0024】
本発明に係る可変過給機は、可変コンプレッサを備えた可変過給機である。この可変過給機は、図1に示すように、エンジン101から排気マニホルド102を経て排出される排ガスによって回転されるタービン1を備えている。タービン1は、排気マニホルド102の下流に配置される。
【0025】
本発明に係る可変過給機における可変コンプレッサ2は、可変入口案内翼(Variable Inlet Guide Vane(VIGV))を有するもの(可変入口案内翼(VIGV)付き過給機)や、可変ディフューザ翼(Variable Diffuser Vane(VDV))を有するもの(可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機)など、種々の構成により、容量の制御が可能となっているものであればよい。
【0026】
(1)可変入口案内翼(VIGV)付き過給機に適用した実施の形態
図2は、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0027】
図3は、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の構成を示す正面図である。
【0028】
可変入口案内翼(VIGV)付き過給機のコンプレッサ2は、図2に示すように、コンプレッサインペラ50の上流側で吸気が流れ込むハウジング10と、ハウジング10の内部流路20の内周方向に沿って配置される複数枚の可変入口案内翼(ベーン)40とを有して構成される。コンプレッサインペラ50は、タービン1から回転力を得て、外部から吸気路を経てハウジング10に流れ込む吸気を圧縮して、エンジン101に供給する。
【0029】
ハウジング10、可変入口案内翼40、ベーン駆動機構40Aとにより、ベーン機構Aが構成されている。ハウジング10は、コンプレッサインペラ50を配置するコンプレッサハウジング60内に配置されている。
【0030】
ベーン駆動機構40Aは、様々な形態をとりうるが、例えば図2、図3に示すように、回動軸15、歯車18、伝達部材19、駆動手段20、歯車21によって構成される。ベーン駆動機構40Aは、可変入口案内翼40を移動操作して「可変翼角度(VIGV角度)」を変化させ、第二の内部流路30における吸気ガスの流れを制御して容量を制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0031】
具体的に説明すると、回動軸15は、可変入口案内翼40が第二の内部流路30で回動し得るように可変入口案内翼40の一端に接続され、貫通孔13に収納されている。
【0032】
また、全ての回動軸15の同軸上には、貫通孔13に配置される歯車18が備えられている。さらに、全ての回動軸15のうちの一本には、コンプレッサハウジング60の貫通孔14に挿通する伝達部材19が接続されている。伝達部材19には、ハウジング10の外部でアクチュエータ等の駆動手段20が接続されている。また、環状の内部空間13には、全ての回動軸15の歯車18に噛み合う環状の歯車21が設置されており、駆動手段20により可変入口案内翼40に動力を伝える際には、伝達部材19に接続された回動軸15から可変入口案内翼40へ動力を伝えるとともに、歯車21及び他の回動軸15等を介して他の可変入口案内翼40へ動力を伝えるようにしている。
【0033】
吸気は、コンプレッサ2の上流側の吸気路から、内部流路20、30を経て、コンプレッサインペラ50の羽根の間を経て、ディフューザ70、コンプレッサのスクロール流路(渦巻き)、吸気マニホルド103の順に通過して、エンジンに供給される。
【0034】
この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機において、低回転数及び低負荷の状況では、可変入口案内翼40は、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0035】
また、この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気路に沿ってコンプレッサインペラ50の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0036】
さらに、この可変入口案内翼(VIGV)付き過給機においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0037】
この可変過給機は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0038】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、コンプレッサインペラ50の可変翼のスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0039】
図4は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【0040】
図5は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す三次元グラフである。
【0041】
可変翼のスケジュールは、図4及び図5に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可変翼角度(VIGV角度)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図4においては、Z軸は示されていない)。
【0042】
「可変翼角度」については、図4に示すように、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限可変翼の角度を閉じる方向に設定するものである。
【0043】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、図5に示すように、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0044】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0045】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0046】
この可変過給機においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼角度を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機の可変翼角度を制御する。
【0047】
図6は、本発明に係る可変過給機における可変翼の制御を示すフローチャートである。
【0048】
すなわち、この可変過給機においては、図6に示すように、ステップst1において、上位ロジック/上位コントローラ(エンジンECU等)より、スケジュール切替を行い、この切替信号Sを、図5に示す制御スケジュールにあてはめる。
【0049】
また、ステップst2で、過給機回転数(Nt〔rpm〕)を取得し、ステップst3で圧縮機入口温度(T1〔°k〕)を取得し、ステップst4で標準温度(T0〔°k〕)を取得しておく。ステップst8において、圧縮機入口温度(T1)及び標準温度(T0)から、温度修正係数(θ=T1/T0)を算出する。そして、ステップst10で、過給機回転数(Nt)及び温度修正係数(θ)から、修正過給機回転数(Ntc=Nt/√θ)を算出する。
【0050】
そして、ステップst5で、圧縮機入口流量(Wa〔kg/s〕)を取得し、ステップst6で圧縮機入口圧力(P1〔Paabs〕)を取得し、ステップst7で標準圧力(P0〔Paabs〕)を取得しておく。ステップst9において、圧縮機入口圧力(P1)及び標準圧力(P0)から、圧力修正係数(δ=P1/P0)を算出する。そして、ステップst11で、温度修正係数(θ)、圧縮機入口流量(Wa)及び圧力修正係数(δ)から、修正吸入空気流量(Wac=(Wa√θ)/δ)を算出する。
【0051】
そして、修正過給機回転数(Ntc)及び修正吸入空気流量(Wac)を図5に示す制御スケジュールにあてはめて、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼の制御値を決定する。
【0052】
なお、本発明に係る可変過給機において、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼の制御には、エンジンECUとは別に、「可変過給機ECU」として別のユニットを用いるようにしてもよい。この場合には、信号類は、エンジンECUを経由するなどして取得しても良い。
【0053】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0054】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変入口案内翼(VIGV)付き過給機2の可変翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0055】
(2)可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機に適用した実施の形態
図7は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0056】
可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機において、タービン1には、図7に示すように、同軸状に互いに固定的にコンプレッサインペラ50が接続されている。このコンプレッサインペラ50は、タービン1から回転力を得て、吸気マニホルド103を経てエンジン101に供給される空気を圧縮する。
【0057】
コンプレッサ2は、コンプレッサインペラ50、スクロール(渦巻き)流路103aを備えている。スクロール流路103aは、コンプレッサインペラ50の周囲を囲むように設けられている。スクロール流路103aの出口は、吸気マニホルド103の入口に接続されている。
【0058】
図8は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のコンプレッサ2の構成を示す断面図である。
【0059】
可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、図8に示すように、アクチュエータ3により方向付け可能である複数の可変翼(可動ベーン)2aによって開閉可能となっており、コンプレッサ2の容量の制御が可能となっている。
【0060】
図9中の(a)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が0°の状態を示す正面図であり、(b)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が10°の状態を示す正面図であり、(c)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が20°の状態を示す正面図であり、(d)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が40°の状態を示す正面図であり、(e)は、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機における可変翼角度が60°の状態を示す正面図である。
【0061】
各可変翼2aの「可変翼角度(VDV角度)」が0°のときには、図9中の(a)に示すように、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、最も閉じた状態となる。「可変翼角度(VDV角度)」が10°、20°、40°と変化することにより、図9中の(b)乃至(d)に示すように、各可変翼2a同士の間隔が広くなってゆく。「可変翼角度(VDV角度)」が60°のときには、図9中の(e)に示すように、可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機のディフューザ70は、最も開いた状態となる。
【0062】
アクチュエータ3は、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、エンジンを制御するための制御装置4によって制御される。この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、各可変翼2aの向きを制御することにより、容量を変えて、吸気ガスの流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0063】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機において、低回転数及び低負荷の状況では、各可変翼2aは、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0064】
また、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気マニホルド103に沿って可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機2の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0065】
さらに、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0066】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機2は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0067】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、可変翼2aのスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0068】
可変翼2aのスケジュールは、前述した実施の形態と同様に、図4及び図5に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可変翼角度(VDV角度)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図4においては、Z軸は示されていない)。
【0069】
「可変翼角度」については、図4に示すように、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限可変翼の角度を閉じる方向に設定するものである。
【0070】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、図5に示すように、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0071】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0072】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0073】
この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可変翼角度を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可変翼角度を制御する。
【0074】
そして、この可変ディフューザ翼(VDV)付き過給機においても、前述した実施の形態と同様に、図6に示すフローチャートに従って、可変翼2aの制御を行う。
【0075】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0076】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変コンプレッサ2の翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0077】
(3)可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機に適用した実施の形態
図10は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す断面図である。
【0078】
図11は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機の構成を示す正面図である。
【0079】
本発明は、図10及び図11に示すような、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機にも適用することができる。
【0080】
可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2は、図10中矢印Aで示すように、アクチュエータ3により進退可能となされた複数の可動ブレード2aによって、コンプレッサインペラ50の周囲(ディフューザ70)が開閉可能となっており、容量の制御が可能となっている。各可動ブレード2a同士の間はスリット2bとなっており、各可動ブレード2aがコンプレッサインペラ50の周囲に進入されたときには、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機のディフューザ70は、最も閉じた状態(ベーンドディフューザ)となる。そして、各可動ブレード2aがコンプレッサインペラ50の周囲から退出したときには、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機のディフューザ70は、最も開いた状態(ベーンレスディフューザ)となる。
【0081】
アクチュエータ3は、ソレノイド負圧力バルブ、または、電動機によって構成され、エンジンを制御するための制御装置4によって制御される。この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、各可動ブレード2aの位置(進入量)を制御することにより、容量を変えて、吸気ガスの流れを制御することが可能であり、エンジンの過給圧力を制御することができる。
【0082】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2において、低回転数及び低負荷の状況では、各可動ブレード2aは、最大閉止位置にセットされてエンジン101に供給される空気の通過部分を減少させ、コンプレッサインペラ50の推進力を増加させる。そして、高回転数の状況では、エンジン101に供給される空気の通過部分を増加させ、コンプレッサインペラ50の推進力を減少させる。このとき、タービン1の回転数は減少し、エンジンの正確な動作に十分な回転数に収斂する。
【0083】
また、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、図1に示すように、流量計5、圧力センサ6及び温度センサ7が吸気マニホルド103に沿って可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2の上流に設けられている。流量計5は、取り入れられた空気の質量流量(過給機入口流量(Wa))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。圧力センサ6は、取り入れられた空気の圧力(過給機入口圧力(P1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。温度センサ7は、取り入れられた空気の温度(過給機入口温度(T1))を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0084】
さらに、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、回転数取得手段となる回転数センサ8が設けられている。回転数センサ8は、コンプレッサインペラ50の回転数(Nt)を測定し、測定結果を制御装置4に送る。
【0085】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2は、制御装置4が、本発明に係る可変過給機の制御方法を実行することにより、制御される。
【0086】
本発明に係る可変過給機の制御方法においては、制御装置4は、過給機入口流量(Wa)、過給機入口温度(T1)、過給機入口圧力(P1)及びコンプレッサインペラ50の回転数(過給機回転数)(Nt)から決定される3次元マップに従って、可動ブレード2aのスケジュールを決定する。なお、このスケジュールは、折れ線グラフや曲線グラフで示されるもののみならず、ステップ状に変化するスケジュールとしてもよい。
【0087】
図12は、可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機における制御スケジュールを示す二次元グラフである。
【0088】
可動ブレード2aのスケジュールは、図12に示すように、X軸を「修正過給機回転数(Ntc)」とし、Y軸を「可動ブレード位置(ベーンドディフューザ、または、ベーンレスディフューザ)」とし、Z軸を「修正吸入空気流量(Wac)」として表すことができる(なお、図12においては、Z軸は示されていない)。
【0089】
「可動ブレード位置」については、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類が用意されている。「通常スケジュール」は、過給機の効率を最大とすることを狙うものである。「急減速スケジュール」は、チョークに入らない範囲で、最大限各可動ブレード2aの位置を閉じる方向に設定するものである。
【0090】
これら「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の違いは、「修正吸入空気流量(Wac)」の違いに対応しているが、「修正吸入空気流量(Wac)」を無段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の2種類に限定されるのではなく、これら2つのスケジュールの間の無段階のスケジュールを用いることができる。
【0091】
このスケジュールにおいて、P0を標準圧力、T0を標準温度とし、圧力修正係数δ及び温度修正係数θを、以下のように定義する。
δ=P1/P0
θ=T1/T0
【0092】
また、修正過給機回転数Ntc及び修正吸入空気流量Wacを、以下のように定義する。
Ntc=√(Nt/θ)
Wac={√(Wa×θ)}/δ
【0093】
この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においては、制御装置4は、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って可動ブレードの位置を制御する。また、制御装置4は、エンジンの急減速時など、従来の過給機においてはリサーキュレーションバルブを作動させていた運転状態においては、「急減速スケジュール」に従って、可動ブレードの位置を制御する。
【0094】
そして、この可変ディフューザ(スリットタイプ)付き過給機2においても、前述した実施の形態と同様に、図6に示すフローチャートに従って、可動ブレード2aの制御を行う。
【0095】
また、過給機にモータを内蔵させた「電動アシスト過給機(Electrically Assisted Turbocharger(EAT)」として構成する場合には、回転数取得手段として回転数センサを設ける必要はなく、モータ制御装置を回転数取得手段として、モータ制御に用いる回転数を過給機回転数(Nt)として用いることができる。
【0096】
また、制御装置は、EAT用のECUと一体化することができ、さらに、タービン側可変機構(Variable Nozzle Vane等)の制御ユニットも含めて一体化した「T/C−ECU」という形態に構成することもできる。この場合には、上位ECU(エンジンECU)との通信を最小限に抑えることができ、上位ECUとの間の信号処理の負荷を低減することができる。「T/C−ECU」とした場合においても、可変コンプレッサ2の翼位置の制御は、タービン側可変機構や、アシスト用モータの制御とは独立して行うことができる。このことにより、最大効率点での運転と、負荷急変動時における信頼性の確保とを両立することができる。
【0097】
(4)他の実施の形態
本発明に係る可変過給機及び可変過給機の制御方法は、前述した各実施の形態のような3次元のスケジュールマップを用いることに限定されず、2次元のスケジュールマップを用いて制御を行うようにしてもよい。この場合には、必要な取得データは、過給機回転数Ntと過給機入口温度T1のみでよく、圧力センサ6及び流量センサ5が不要となる。
【0098】
図13は、本発明に係る可変過給機における可変翼のスケジュールを示す二次元グラフである。
【0099】
すなわち、可変翼角度(VIGV角度)、または、可変ディフューザ翼(VDV角度)を制御するスケジュールとして、図13に示すように、修正過給機回転数Ntcと可変翼角度(可変ディフューザ翼角度)との関係を定めた2次元のスケジュールマップを用いて、図6中のステップst1乃至ステップst4、ステップst8及びステップst10に示すように、過給機回転数Nt及び過給機入口温度T1に基づいて制御を行う。前述した実施の形態と異なり、修正吸入空気流量Wacは制御に用いない。
【0100】
そして、「通常スケジュール」及び「急減速スケジュール」の他に、数ステップのスケジュールを用いるようにする。例えば、「(1)急加速、(2)通常加速、(3)定常走行、(4)通常減速、(5)急減速」の5段階のスケジュールや、「(1)加速、(2)定常走行、(3)減速」の3段階のスケジュールを用いるようにする。
【0101】
これらスケジュールの切替は、上位ロジック/上位コントローラ(エンジンECU等)より、スケジュールの切替信号Sを受け、指定のスケジュールになるように制御する。
【0102】
この場合には、前述した各実施の形態に比較して、制御に用いるパラメータが少ないので、信号処理数の削減によりCPUのコストダウンが可能であり、通信パラメータ数を縮小することができるので、より安価なシステムを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、可変過給機及び可変過給機の制御方法に適用され、特に、可変コンプレッサの容量を制御するようにした可変過給機及び可変過給機の制御方法に適用される。
【符号の説明】
【0104】
1 タービン
2 可変コンプレッサ
101 エンジン
102 排気マニホルド
103 吸気マニホルド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、
前記過給機入口温度及び前記過給機回転数の測定結果が送られるとともに、前記コンプレッサの容量を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機。
【請求項2】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定する流量計と、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定する圧力センサと、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、
前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力、前記過給機入口温度及び前記過給機回転数の測定結果が送られるとともに、前記コンプレッサの容量を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機。
【請求項3】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、
前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機の制御方法。
【請求項4】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定し、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定し、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、
前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機の制御方法。
【請求項1】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、
前記過給機入口温度及び前記過給機回転数の測定結果が送られるとともに、前記コンプレッサの容量を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機。
【請求項2】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機において、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定する流量計と、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定する圧力センサと、
吸気マニホルドに沿ってコンプレッサの上流に設けられ、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定する温度センサと、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定する回転数取得手段と、
前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力、前記過給機入口温度及び前記過給機回転数の測定結果が送られるとともに、前記コンプレッサの容量を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機。
【請求項3】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、
前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機の制御方法。
【請求項4】
コンプレッサの容量の制御によって過給圧力の制御が可能である可変過給機の制御方法において、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の質量流量である過給機入口流量を測定し、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の圧力である過給機入口圧力を測定し、
吸気マニホルドのコンプレッサより上流において、取り入れられた空気の温度である過給機入口温度を測定し、
コンプレッサの回転数である過給機回転数を測定し、
前記過給機回転数、前記過給機入口温度及び標準温度に基づいて、修正過給機回転数を算出するとともに、前記過給機入口流量、前記過給機入口圧力及び標準圧力に基づいて、修正吸入空気流量を算出し、エンジン急減速時を除く通常減速時は、「通常スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御し、エンジンの急減速時には、「急減速スケジュール」に従って、修正過給機回転数及び修正吸入空気流量に基づいてコンプレッサの容量を制御してチョークにはいらない範囲で「通常スケジュール」よりも過給圧力を下げる方向に制御する
ことを特徴とする可変過給機の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−52508(P2012−52508A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197694(P2010−197694)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]