説明

可搬型ガス検知器

【課題】 外部より衝撃が加えられた場合であっても、乾電池用の接続端子が変形や破断することを確実に防止することができて所定の防爆仕様の規格を満足するものとして構成することのできる可搬型ガス検知器を提供すること。
【解決手段】 装着される円柱状の乾電池の負極を円錐型コイルばねよりなる負極接続端子に対接させた状態で正極を正極接続端子に対してスライドさせることにより乾電池が装着される構成とされた、乾電池により駆動される可搬型ガス検知器において、正極接続端子は、円錐型コイルばねにおける、前記乾電池の正極の端面に接触する先端巻回部分が、その巻回軸が当該先端巻回部分を除く基端巻回部分の巻回軸に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されてなるものよりなり、前記先端巻回部分が前記乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向前方に向かうに従って負極接続端子に接近するよう傾斜する姿勢で、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可搬型ガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば地下の工事現場や坑道、その他の人が立ち入る場所や作業領域などにおいて、その環境の空気中に一酸化炭素ガスや硫化水素ガスなどの危険性ガスが含有されるおそれがある場合や、空気中の酸素ガス濃度が低下しているおそれがある場合など、環境雰囲気の空気が危険な状態となっている可能性あるいは危険な状態となる可能性がある場合が少なくない。
そして、環境雰囲気の空気において、含有される危険性ガスの濃度が高いことにより、または酸素ガス濃度が低いことにより、人に対して危険な状態となったときには、そのことを直ちに知ることが必要であり、このような要請から、種々のタイプの可搬型ガス検知器が提案されている。
【0003】
例えば、乾電池が駆動用電源として使用され、乾電池の負極を負極接続端子に対接させた状態で正極を正極接続端子に対してスライドさせることにより乾電池が装着される構造の可搬型ガス検知器のある種のものにおいては、負極接続端子および正極接続端子として、例えば、図14に示すように、1本の金属線材が変形加工されてなり、乾電池の電極が接触される、弧状に湾曲する中央接触アーム部分91を有する構成のものが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、このような可搬型ガス検知器においては、可燃性のガスや蒸気を含む爆発性雰囲気の存在により、引火、爆発が発生し得る環境で使用されるため、可搬型ガス検知器それ自体が着火源とならない構成、いわゆる防爆仕様の規格を満足する構成であることが必要とされており、例えば、可搬型ガス検知器を木箱内に収容して所定の回転数で回転させるなどして可搬型ガス検知器に振動を加えたときに、例えば、乾電池の脱離や接続端子の損傷によって不導通状態とならないよう構成されていることが求められる。
しかしながら、上記の構成の接続端子90では、主として中央接触アーム部分91の弾性変形によって振動による乾電池の軸方向の移動が吸収されるので、可搬型ガス検知器に繰り返して振動が加えられたときには、中央接触アーム部分91に繰り返して負荷がかかることになるため、中央接触アーム部分91が破断してしまうことがあり、所定の防爆仕様の規格を満足するものとならない、という問題がある。
また、例えば可搬型ガス検知器を誤って落下させてしまうなどして可搬型ガス検知器に衝撃が加えられたときに、装着された乾電池によって、乾電池の軸方向に対する許容変位量を超えて変位されて中央接触アーム部分91が変形してしまい、乾電池と接続端子90との接触不良が生ずることがある、という問題ある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、外部より衝撃が加えられた場合であっても、乾電池用の接続端子が変形や破断することを確実に防止することができて所定の防爆仕様の規格を満足するものとして構成することのできる可搬型ガス検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可搬型ガス検知器は、駆動用電源として乾電池が用いられる可搬型ガス検知器であって、
装着される円柱状の乾電池の正極および負極に対応して正極接続端子および負極接続端子が設けられ、前記乾電池の負極を負極接続端子に対接させた状態で正極を正極接続端子に対してスライドさせることにより当該乾電池が装着される電池室を備えており、
前記負極接続端子は、円錐型コイルばねよりなり、
前記正極接続端子は、円錐型コイルばねにおける、前記乾電池の正極の端面に接触する先端巻回部分が、その巻回軸が当該先端巻回部分を除く基端巻回部分の巻回軸に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されてなるものよりなり、
当該正極接続端子は、前記先端巻回部分が前記乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向前方に向かうに従って負極接続端子に接近するよう傾斜する姿勢で、前記電池室内に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の可搬型ガス検知器においては、前記正極接続端子における先端巻回部分の終端部は、乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向に沿って延びるよう、屈曲された構成とされていることが好ましい。
【0008】
さらにまた、本発明の可搬型ガス検知器においては、前記正極接続端子における先端巻回部分が位置される平面の、前記先端巻回部分を除く巻回部分の巻回軸に垂直な平面に対する傾斜角度が20〜40°の範囲内である構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明の可搬型ガス検知器においては、前記電池室は、複数本の円柱状の乾電池が、隣り合う乾電池の正極および負極が互いに逆方向を向くよう平行に並んだ状態で直列に接続されて、装着される構成とされており、
一の乾電池の正極が電気的に接続される前記正極接続端子には、当該一の乾電池に隣接する他の乾電池の負極が電気的に接続される円錐型コイルばねよりなる負極接続端子が、当該正極接続端子の基端に連続して一体に形成された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可搬型ガス検知器によれば、円柱状の乾電池が、その負極を円錐型コイルばねよりなる負極接続端子に対接させた状態で正極を正極接続端子に対してスライドさせることにより、装着される構成のものにおいて、円錐型コイルばねにおける、乾電池の正極の端面に接触する先端巻回部分が、その巻回軸が当該先端巻回部分を除く巻回部分の巻回軸に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されてなる正極接続端子が、先端巻回部分が乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向前方に向かうに従って負極接続端子に接近するよう傾斜する姿勢で、電池室内に設けられた構成とされていることにより、基本的には、乾電池を装着するに際して、乾電池の正極における端面の周縁部が正極接続端子の先端巻回部分の巻回軸方向の端縁に対接させることができるので、例えば、正極接続端子の先端巻回部分が乾電池の正極の周面部の下側に撓んで潜り込むことにより接触不良が生ずることを確実に回避することができ、乾電池を適正な電気的接続が達成された状態で確実に装着することができる。
しかも、可搬型ガス検知器に例えば振動が加えられた場合であっても、当該振動による乾電池のその軸方向の移動が正極接続端子および負極接続端子の巻回軸方向の変位によって吸収されることとなり、乾電池の軸方向に対する、十分な大きさの許容変位量を確保することができるので、正極接続端子が破断するなどの不具合が生ずることを確実に防止することができ、所定の防爆仕様の規格を満足するものとなる。
【0011】
また、正極接続端子における先端巻回部分の終端部が、乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向に沿って径方向に延びるよう、屈曲された構成とされていることにより、当該終端部が案内部材として機能して乾電池の正極が当該終端部に沿ってスライドされるので、乾電池の正極との接触部を構成する先端巻回部分が乾電池の正極のスライド移動と共に変位するよう撓んで接触不良が生ずることを回避することができ、一層確実に、乾電池を適正な電気的接続が達成された状態で装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の可搬型ガス検知器における一例における構成を示す上面図である。
【図2】図1に示す可搬型ガス検知器の構成をセンサ室カバー蓋を取り外した状態で示す背面図である。
【図3】図1に示す可搬型ガス検知器の右側面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図4の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【図6】ガス検知ユニットの構成を示す上面図である。
【図7】図1に示す可搬型ガス検知器における配管構造を概略的に示すブロック図である。
【図8】図1に示す可搬型ガス検知器における乾電池電源ユニットを、電池室カバー蓋が開状態とされた状態で示す底面図である。
【図9】乾電池電源ユニットの構成を、乾電池の長手方向に垂直な方向に切断して示す断面図である。
【図10】電池室カバー蓋が開状態とされた状態における、電池室カバー蓋とハウジング部材との係合部を拡大して示す説明図であって、(A)図8におけるB−B線における拡大断面図、(B)図8におけるC−C線における拡大断面図である。
【図11】乾電池の装着方法を説明するための図であって、(A)乾電池の負極が負極接続端子に対接された状態を示す説明図、(B)乾電池が装着された状態を示す説明図である。
【図12】正極接続端子の構成を示す、(A)正面図、(B)右側面である。
【図13】負極接続端子が一体に形成された正極接続端子の構成を示す、(A)正面図、(B)底面図である。
【図14】従来における乾電池用の接続端子の一例における構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の可搬型ガス検知器における一例における構成を示す上面図、図2は、図1に示す可搬型ガス検知器の構成をセンサ室カバー蓋を取り外した状態で示す背面図、図3は、図1に示す可搬型ガス検知器の右側面図、図4は、図1におけるA−A線断面図、図5は、図4の一部を拡大して示す部分拡大図である。
この可搬型ガス検知器10は、全体が箱(重箱)型形状であって、表示ユニット20およびガス検知ユニット40よりなるメインユニット15と、このメインユニット15に対して着脱可能に装着される、乾電池を備えた乾電池電源ユニット80とにより構成されており、例えば、適宜の装着用部材によって作業者の肩に掛けられて用いられる肩掛け式のものとして構成されている。図1および図3において、符号11は操作用ボタン、12は例えばベルト状の装着用部材取り付け部、13Aはガス導入部、13Bはガス排出部、14は表示部である。
【0014】
表示ユニット20は、例えば樹脂よりなる、下方が開口する上面側ハウジング部材21を備えており、この上面側ハウジング部材21の内部には、制御用回路基板30が上面側ハウジング部材21の上壁に対向して配設され、この制御用回路基板30の上面の中央部にパネル状表示機構(LCD)35が配置されている。
上面側ハウジング部材21の内部における一側領域(図4において左側領域)には、内部に四角柱状の音響用空間を形成する音響室25が形成されており、この音響室25の内部空間は、音響室25の一部を構成する下壁25Bに形成された開口Kを介してガス検知ユニット40におけるブザー配置部43と連通すると共に、上面側ハウジング部材21の上面に形成された上面側警報音放音用開口23Aおよび上面側ハウジング部材21の背面に形成されたスリット状の背面側警報音放音用開口23Bを介して外部に連通している。
【0015】
音響室25の下壁25Bの上面には、通音性を有する防水シート26が設けられている。
防水シート26は、例えばポリプロピレンよりなる多孔質膜により構成されており、その外周縁部が例えば接着されることによって音響室25の下壁25Bの上面に固定されている。
【0016】
また、上面側警報音放音用開口23Aには、各々、後述する圧電ブザー60における放音口62の開口径に比して小さい開口径を有する複数の微小放音用孔28Aが形成された、例えばポリカーボネートよりなるプレート部材28が上面側警報音放音用開口23Aを塞ぐよう設けられている。
【0017】
ガス検知ユニット40は、表示ユニット20の上面側ハウジング部材21の下端に枠状のパッキング16を介して連結されて着脱可能に固定される、例えば樹脂よりなる筒状の下面側ハウジング部材41を備えており、この下面側ハウジング部材41の内部における上方部には、表示ユニット20における音響室25の下方位置に、圧電ブザー60が配置されるブザー配置部43が形成されている。
【0018】
圧電ブザー60は、図6に示すように、上方に開口する放音口62を有するケース61内に圧電振動子(図示せず)が配置されてなる、背の低い円柱状のものであって、ケース61の下部の外周面における、放音口62を中心とする対角の位置には、水平なブザー配置面に垂直な方向に伸びるよう設けられた位置決め用ピン部材43Bの外径より大きい内径を有する支持用孔を有する舌片状支持部63が形成されている。
圧電ブザー60は、舌片状支持部63の支持用孔内に位置決め用ピン部材43Bが挿通されて、放音口62が音響室25に対して位置決めされた状態で、ブザー配置面43A上に配置されており、圧電ブザー60の上面における外縁部が、制御用回路基板30における圧電ブザー60の放音口62に対向する位置に形成された開口部30Aの下面側の周縁部に設けられた緩衝部材(クッション部材)31を介して、上方から押さえられており、これにより、ブザー配置面43Aに水平な面方向および上下方向に微小変位可能に支持されている。このようなブザー支持構造により、圧電ブザー60自体の振動が抑制されることがなく、警報音の音圧レベルを高くすることができると共に、衝撃が加えられた場合であっても、圧電ブザー60の微小変位によって衝撃が緩和されて圧電ブザー60において発生するエネルギーを低減することができて所定の防爆仕様の規格を満足するものとすることができる。
【0019】
また、下面側ハウジング部材41の内部には、センサ基板58が制御用回路基板30に垂直な方向に延びるよう配設されており、このセンサ基板58の背面側に、例えば5つのガスセンサ50A,50B,50C,50D,50Eを着脱可能に保持するセンサ保持部46A,46B,46C,46D,46E、並びに、ガス導入部48Aおよびガス排出部48Bを有するセンサホルダ45が形成されており、センサ基板58の正面側における他側領域(図6における右側領域)に、外部より環境雰囲気の空気を吸引してガスセンサ50A〜50Eの各々に供給するガス吸引ポンプ66が配置されると共に、中央領域にガス吸引ポンプ66によって吸引されてガスセンサ50A〜50Eの各々に供給される環境雰囲気の空気のガス流路の一部を形成する空気溜まり部(バッファ用空間部)44が形成されている。
【0020】
ガスセンサ50A〜50Eの組み合わせの一例を示すと、ガスセンサ50Aとして、定電位電解式ガスセンサよりなる硫化水素ガス検知用ガスセンサ、ガスセンサ50Bとして、接触燃焼式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを%LEL(爆発下限界濃度)の測定レンジで検知するための第1の可燃性ガスセンサ、ガスセンサ50Cとして、定電位電解式ガスセンサよりなる一酸化炭素ガス検知用ガスセンサ、ガスセンサ50Dとして、熱伝導式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを体積%の測定レンジで検知するための第2の可燃性ガスセンサ、ガスセンサ50Eとして、ガルバニ電池式ガスセンサよりなる酸素ガス検知用ガスセンサを例示することができる。
【0021】
ガス吸引ポンプ66は、例えばモータ駆動によるダイヤフラムポンプが用いられており、例えば、0.75リットル/min以上の流量の環境雰囲気の空気を供給することができる性能を有する。
【0022】
空気溜まり部44は、図7に示すように、ガス導入部13Aより防塵フィルタ65を介してガス吸引ポンプ66により吸引されてガスセンサ50A〜50Eの各々に供給される環境雰囲気の空気のガス流路における、ガス吸引ポンプ66の下流側の位置に設けられており、この空気溜まり部44の下流側の位置には、絞り部68が設けられている。
空気溜まり部44には、圧力センサ67が接続されており、この圧力センサ67によって測定される空気溜まり部44からの排気圧が監視されることにより、例えば、水を吸引したこと、防塵フィルタ65の目詰まりが生じたこと、ガス吸引ポンプ66が経時的に劣化したことなどに起因するガス流量の低下が検出される。
【0023】
乾電池電源ユニット80は、ガス検知ユニット40を構成する下面側ハウジング部材41の下面にパッキング18を介して連結されて着脱可能に固定されるハウジング部材81と、このハウジング部材81における上面側領域に配設された、制限抵抗素子を介してメインユニット15に対して給電する給電用回路(図示せず)が形成された電源回路基板85と、この電源回路基板85の上面側に設けられた、電源回路基板85を保護する保護部材84とを備えている。
【0024】
ハウジング部材81には、図8および図9に示すように、例えば3本の円柱状の乾電池(例えば単三型乾電池(AAサイズ))86A,86B,86Cが、隣接するものの正極および負極が互いに逆方向を向くよう平行に並んだ状態で直列に接続されて、装着される、下方に開口する電池室81Aが形成されている。
電池室81Aは、各々の乾電池86A,86B,86Cをその周面における上方部に接してこれを支持する受容支持部81Bを有し、各々の受容支持部81Bの両端面における各々の乾電池の電極に対応する位置に、正極接続端子および負極接続端子が配設されている。
【0025】
そして、電池室81Aの開口部には、電池室カバー蓋83が、蓋ロック部材83Bによって閉状態に固定される閉位置と、例えばハウジング部材81の下面が上方を向いた状態において、電池室カバー蓋83の外面の一部が電池室81Aの開口縁部に形成されたストッパ部81Dに対接されて自立状態で維持される開状態との間で、開閉自在に設けられている。
【0026】
電池室カバー蓋83のハウジング部材81に対する装着方法について具体的に説明すると、電池室カバー蓋83は、一端部(図4において左端部)に乾電池の配列方向(図4において紙面に垂直な方向)に伸びる枢支軸83Aを有しており、この枢支軸83Aがハウジング部材81に形成された一対の係合用爪部81Cに係合されており、図10に示すように、電池室カバー蓋83が開状態(図10において形状線よりも細い径で表された細線で示す。)とされた状態において、電池室カバー蓋83をさらに大きく開かせる方向への外力Fが作用されたときには、ストッパ部81Dを支点とする「てこの原理」によって、電池室カバー蓋83の枢支軸83Aと係合用爪部81Cとの係合が解除されて電池室カバー蓋83がハウジング部材81より離脱する構成とされている。ここに、電池室カバー蓋83が開状態にあるときの、電池室カバー蓋83のハウジング部材81の下面に対する開き角θは、例えば125°である。
このような構成とされていることにより、例えば乾電池の交換時など、電池室カバー蓋83が開状態とされている状態において、期せずして、電池室カバー蓋83に対して外力が作用されることにより乾電池電源ユニット80が破損するなどの事態が生ずることを確実に回避することができる。
【0027】
この可搬型ガス検知器10における、表示ユニット20、ガス検知ユニット40および乾電池電源ユニット80の各々には、例えば導電性熱可塑性エラストマー組成物よりなるプロテクトカバー22,42,82が装着されており、プロテクトカバー22,42,82が装着された状態においては、外部に露出されるハウジング部材の連続した樹脂表面部分の大きさが所定の大きさ例えば400mm2 以下に規制され、これにより、静電気対策が十分で信頼性の高い防爆性を有するものとなる。
【0028】
而して、上記の乾電池電源ユニット80における電池室81Aは、各々の乾電池86A(86B,86C)が、図11に示すように、負極接続端子89に負極を対接させた状態で当該負極接続端子89と対向して設けられた正極接続端子88に対して正極861をスライドさせる(滑らせる)ことにより、装着される構成とされている。
【0029】
乾電池電源ユニット80における負極接続端子89は、例えば、1本の金属線材が変形加工された円錐型コイルばねにより構成されている。
正極接続端子88は、図12に示すように、1本の金属線材が変形加工された円錐型コイルばねにおける、乾電池の正極861の端面862の面領域内においてこれと接触する先端巻回部分88Aが、その巻回軸C2が先端巻回部分88Aを除く基端巻回部分88Cの巻回軸C1に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されたものにより構成されており、先端巻回部分88Aの終端は、先端巻回部分88Aの傾斜方向と同方向に異なる角度で傾斜して延びるよう、屈曲されて直線状に伸びる屈曲部分88Bが形成されている。
【0030】
正極接続端子88における先端巻回部分88Aの巻回軸C2の、先端巻回部分88Aを除くコイル部分の巻回軸C1に対する傾斜角度、すなわち、正極接続端子88における先端巻回部分88Aが位置される平面の、先端巻回部分88Aを除く基端巻回部分88Cの巻回軸C1に垂直な平面(基端巻回部分88Cが位置される平面)に対する傾斜角度αは、例えば20〜40°の範囲内の大きさとされていることが好ましい。この傾斜角度αの大きさが過小である場合には、乾電池86A(86B,86C)の正極が正極接続端子88にひっかかりやすくなって乾電池86A(86B,86C)の装着自体が困難となり、一方、傾斜角度αの大きさが過大である場合には、正極接続端子88のバネ弾性によって乾電池86A(86B,86C)がはじかれて乾電池86A(86B,86C)の装着自体が困難となる。
【0031】
この正極接続端子88は、先端巻回部分88Aの傾斜方向が、乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向前方(例えば図8において紙面奥側に向かう方向)に向かうに従って当該乾電池の負極に接触される負極接続端子側に接近するよう傾斜すると共に、屈曲部分88Bが、乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向に沿って延び、基端巻回部分88Cの巻回軸C1が負極接続端子の巻回軸と同軸上に位置される姿勢で、電池室81A内に配設されている。
【0032】
この例においては、例えば、電池室81Aの中央に装着される乾電池86Aの正極に電気的に接触される正極接続端子88は、図13に示すように、当該乾電池86Aに隣り合う一方の乾電池86Bの負極に電気的に接触される、円錐型コイルばねよりなる負極接続端子89が基端巻回部分88Cの終端に連続して一体に形成された構成とされている。
また、電池室81Aの中央に装着される乾電池86Aに隣り合う他方の乾電池86Cの正極に電気的に接触される正極接続端子についても、同様の構成を有するものが用いられており、これにより、3本の乾電池86A,86B,86Cが直列に接続される。
【0033】
正極接続端子88および負極接続端子89は、一の乾電池の正極に接触される正極接続端子と、当該乾電池の負極に接触される負極接続端子とによる、乾電池の軸方向における変位量の大きさの総和が、例えば5mm程度となるよう構成されており、一例を示すと、例えば、金属線材の素線径がφ0.6mm、正極接続端子88のコイル巻き数が2.5、先端巻回部分88Aの外径がφ4mm、巻回軸C1方向の最大長さが3.5mm、負極接続端子89のコイル巻き数が4.5、巻回軸方向の長さが8.6mmである。このような構成であることにより、乾電池それ自体の有する長さ方向寸法の個体差を確実に吸収することができて乾電池を適正に装着することができる。
【0034】
この可搬型ガス検知器10における、乾電池86A(86B,86C)の装着方法について具体的に説明すると、乾電池86A(86B,86C)の負極を、負極接続端子89をその巻回軸方向に圧縮しながら対接させた状態で、乾電池86A(86B,86C)の正極861における端面862の周縁部を正極接続端子88の先端巻回部分88Aにおける巻回軸方向の端縁に対接させ、乾電池86A(86B,86C)の正極861をスライドさせることにより、乾電池86A(86B,86C)の正極861が屈曲部分88Bに沿って案内されることに伴って、正極接続端子88の先端巻回部分88Aが回動されながら巻回軸方向に圧縮されて、これにより、正極接続端子88の先端巻回部分88Aにおける巻回軸方向の端面が乾電池86A(86B,86C)の正極861における端面862に対接されて、乾電池86A(86B,86C)が電気的に接続される。
【0035】
この可搬型ガス検知器10においては、環境雰囲気の空気がガス導入部13Aより防塵フィルタ65を介してガス吸引ポンプ66により吸引されて導入されると、空気溜まり部44および絞り部68を介してガスセンサ50A〜50Eの各々に順次に供給されて検知対象ガスの検知が行われ、表示部14において検知されたガスの種類と濃度が表示されると共に、いずれかの検知対象ガスの濃度が基準値を越えたことが検出されたときに、警報動作信号が発せられ、これにより、圧電ブザー60が作動される。
例えば、酸素ガス(O2 ガス)の場合には、基準値は例えば18.0体積%(vol%)とされ、それ以下となったときに警報動作信号が発せられる。また、基準値は、検知対象ガスが炭化水素ガス(HCガス)の場合には、例えば10%LEL(爆発下限界濃度に対するガス濃度)とされ、一酸化炭素ガス(COガス)の場合には例えば25ppmとされ、硫化水素ガス(H2 Sガス)の場合には例えば10ppmとされ、当該基準値を超えたときに警報動作信号が発せられる。
【0036】
而して、上記の可搬型ガス検知器10によれば、円柱状の乾電池86A(86B,86C)が、その負極を円錐型コイルばねよりなる負極接続端子89に対接させた状態で正極861を正極接続端子88に対してスライドさせることにより、装着される構成のものにおいて、円錐型コイルばねにおける、乾電池86A(86B,86C)の正極861の端面862の面領域内において当該正極861と接触する先端巻回部分88Aが、その巻回軸C2が当該先端巻回部分88Aを除く基端巻回部分88Cの巻回軸C1に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されてなる正極接続端子88が、先端巻回部分88Aが乾電池86A(86B,86C)を装着するに際しての正極861の移動方向前方に向かうに従って負極接続端子89に接近するよう傾斜する姿勢で、電池室81A内に設けられた構成とされていることにより、基本的には、乾電池86A(86B,86C)を装着するに際して、乾電池86A(86B,86C)の正極861における端面の周縁部が正極接続端子88の先端巻回部分88Aにおける巻回軸方向の端縁に対接させることができるので、例えば、正極接続端子88の先端巻回部分88Aが乾電池86A (86B,86C)の正極861の周面部の下側に撓んで潜り込むことにより接触不良が生ずることを確実に回避することができ、乾電池86A(86B,86C)を適正な電気的接続が達成された状態で確実に装着することができる。
しかも、可搬型ガス検知器10に例えば振動が加えられた場合であっても、当該振動による乾電池86A(86B,86C)の軸方向の移動が正極接続端子88および負極接続端子89の巻回軸方向の変位によって吸収されることとなり、乾電池86A(86B,86C)の軸方向に対する、十分な大きさの許容変位量を確保することができるので、正極接続端子88が破断するなどの不具合が生ずることを確実に防止することができ、所定の防爆仕様の規格を満足するものとなる。
【0037】
また、正極接続端子88における先端巻回部分88Aの終端が、乾電池86A(86B,86C)を装着するに際しての乾電池86A(86B,86C)の正極の移動方向に沿って径方向に延びるよう、屈曲されて直線状に伸びる屈曲部分88Bが形成された構成とされていることにより、屈曲部分88Bが案内部材として機能して乾電池86A(86B,86C)の正極861が当該屈曲部分88Bに沿ってスライドされるので、乾電池86A(86B,86C)の正極861との接触部を構成する先端巻回部分88Aが乾電池86A(86B,86C)の正極のスライド移動と共に変位するよう撓んで接触不良が生ずることを回避することができ、一層確実に、乾電池86A(86B,86C)を適正な電気的接続が達成された状態で装着することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、乾電池電源ユニットを構成する乾電池の数およびサイズは特に制限されるものではなく、また、正極接続用端子と負極接続用端子とが一体に形成されている必要はない。
上記の例における正極接続端子は、最先端巻回部分の全体が傾斜した構成とされているが、先端巻回部分の一部が所定の傾斜状態で変形加工されたものであってもよい。
また、本発明の可搬型ガス検知器は、適宜の装着具によって身体に装着して使用されても、例えば、検知対象空間において水平面上に載置された状態で使用されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 可搬型ガス検知器
11 操作用ボタン
12 装着用部材取り付け部
13A ガス導入部
13B ガス排出部
14 表示部
15 メインユニット
16 パッキング
18 パッキング
20 表示ユニット
21 上面側ハウジング部材
22 プロテクトカバー
23A 上面側警報音放音用開口
23B 背面側警報音放音用開口
25 音響室
25B 下壁
K 開口
26 防水シート
28 プレート部材
28A 微小放音用孔
30 制御用回路基板
30A 開口部
31 緩衝部材(クッション部材)
35 パネル状表示機構(LCD)
40 ガス検知ユニット
41 下面側ハウジング部材
42 プロテクトカバー
43 ブザー配置部
43A ブザー配置面
43B 位置決め用ピン部材
44 空気溜まり部(バッファ用空間部)
45 センサホルダ
46A〜46E センサ保持部
48A ガス導入部
48B ガス排出部
50A〜50E ガスセンサ
58 センサ基板
60 圧電ブザー
61 ケース
62 放音口
63 舌片状支持部
65 防塵フィルタ
66 ガス吸引ポンプ
67 圧力センサ
68 絞り部
80 乾電池電源ユニット
81 ハウジング部材
81A 電池室
81B 受容支持部
81C 係合用爪部
81D ストッパ部
82 プロテクトカバー
83 電池室カバー蓋
83A 枢支軸
83B 蓋ロック部材
84 保護部材
85 電源回路基板
86A,86B,86C 乾電池
861 正極
862 端面
88 正極接続端子
88A 先端巻回部分
88B 屈曲部分
88C 基端巻回部分
89 負極接続端子
90 接続端子
91 中央接触アーム部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電源として乾電池が用いられる可搬型ガス検知器であって、
装着される円柱状の乾電池の正極および負極に対応して正極接続端子および負極接続端子が設けられ、前記乾電池の負極を負極接続端子に対接させた状態で正極を正極接続端子に対してスライドさせることにより当該乾電池が装着される電池室を備えており、
前記負極接続端子は、円錐型コイルばねよりなり、
前記正極接続端子は、円錐型コイルばねにおける、前記乾電池の正極の端面に接触する先端巻回部分が、その巻回軸が当該先端巻回部分を除く基端巻回部分の巻回軸に対して傾斜して伸びるよう、変形加工されてなるものよりなり、
当該正極接続端子は、前記先端巻回部分が前記乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向前方に向かうに従って負極接続端子に接近するよう傾斜する姿勢で、前記電池室内に設けられていることを特徴とする可搬型ガス検知器。
【請求項2】
前記正極接続端子における先端巻回部分の終端部は、乾電池を装着するに際しての乾電池の正極の移動方向に沿って延びるよう、屈曲されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬型ガス検知器。
【請求項3】
前記正極接続端子における先端巻回部分が位置される平面の、前記先端巻回部分を除く巻回部分の巻回軸に垂直な平面に対する傾斜角度が20〜40°の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可搬型ガス検知器。
【請求項4】
前記電池室は、複数本の円柱状の乾電池が、隣り合う乾電池の正極および負極が互いに逆方向を向くよう平行に並んだ状態で直列に接続されて、装着される構成とされており、 一の乾電池の正極が電気的に接続される前記正極接続端子には、当該一の乾電池に隣接する他の乾電池の負極が電気的に接続される円錐型コイルばねよりなる負極接続端子が、当該正極接続端子の基端に連続して一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可搬型ガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−4077(P2012−4077A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140744(P2010−140744)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】