説明

可搬型放射線画像撮影装置

【課題】冷却効果を持たせつつ、衝撃による放射線画像撮影装置内部の破壊を防止することができる可搬型放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】筐体12の側面11に、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材14を側面11に固定した固定状態又は緩衝部材14を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能に設け、放射線画像の撮影時に緩衝部材14を固定状態とし、放射線画像の非撮影時に緩衝部材14を解除状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を筐体に収容し、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する可搬型放射線画像撮影装置(以下、「電子カセッテ」ともいう。)が実用化されている。
【0003】
この電子カセッテに収容された放射線検出器は、ガラス基板上に回路が形成されているが、電子カセッテに大きな外部荷重が加わると割れてしまう場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、落下衝撃や撮影時に加わる外部荷重から検出デバイス(主にガラス基板)を保護する目的で、筐体と検出デバイスの隙間に緩衝材を配置することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2〜4には、検出器サブシステムと衝撃や外部負荷から保護する保護カバーの組合わせが記載されている。この保護カバーは検出器サブシステムと分離可能となっており、撮影時に検出器サブシステムと一体化する。
【特許文献1】特開平11−284909号公報
【特許文献2】特開2006−293368号公報
【特許文献3】特開2008−90304号公報
【特許文献4】特開2008−96998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて、電子カセッテ内部の空きスペースに緩衝材を配置して衝撃を吸収するようにした場合、緩衝材によって電子カセッテ内部の空気の流れが阻害されて熱がこもりやすくなり、熱の影響で放射線画像の画質が低下する場合がある。
【0007】
また、特許文献2〜4に記載の技術を用いて、電子カセッテを保護する保護カバーを設けた場合、搬送時などで電子カセッテと保護カバーを分離した状態では電子カセッテに収容された機器を落下衝撃等から保護することができない。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、冷却効果を持たせつつ、衝撃による放射線画像撮影装置内部の破壊を防止することができる可搬型放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の可搬型放射線画像撮影装置は、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影し、当該放射線画像を示す画像情報を生成する生成手段と、複数の側面を備えた平板状で且つ何れかの側面で外部との通気が可能に形成され、内部に前記生成手段を収容した筐体と、前記複数の側面の各々に設けられ、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材と、外部との通気が可能に形成された通気可能側面に設けられ、緩衝部材を当該側面に固定した固定状態又は固定を解除して緩衝部材を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能な固定手段と、前記固定手段の固定状態又は解除状態への切り替えを制御する制御手段と、を備えている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、複数の側面を備えた平板状で且つ何れかの側面で外部との通気が可能に形成された筐体の内部に、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影し、当該放射線画像を示す画像情報を生成する生成手段が収容されている。
【0011】
また、本発明によれば、筐体の複数の側面の各々に衝撃を緩衝する複数の緩衝部材が設けられており、外部との通気が可能に形成された通気可能側面に固定手段が設けられ、当該固定手段により緩衝部材が当該側面に固定した固定状態又は固定を解除して緩衝部材を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能とされている。
【0012】
そして、本発明では、制御手段により、固定手段の固定状態又は解除状態への切り替えの制御が行なわれる。
【0013】
このように、本発明によれば、何れかの側面で外部との通気が可能に形成された筐体の側面に、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材を側面に固定した固定状態又は緩衝部材を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能に設け、固定手段の固定状態又は解除状態への切り替える制御を行なうことにより、冷却効果を持たせつつ、衝撃による放射線画像撮影装置内部の破壊を防止することができる。
【0014】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記制御手段が、放射線画像の撮影時に前記固定手段を固定状態とし、放射線画像の非撮影時に前記固定手段を解除状態とする制御を行なってもよい。
【0015】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、所定値以上の加速度を検出することにより振動、落下を検出する振動落下検出手段をさらに備え、前記固定手段が、解除状態に切り替えられた場合に前記緩衝部材を所定範囲で離間させると共に当該緩衝部材に加えられた衝撃が前記筐体へ伝わることを緩和するダンパ部材を有し、前記制御手段が、前記振動落下検出手段により振動、落下が検出された場合に前記固定手段を解除状態とする制御を行なってもよい。
【0016】
また、請求項1記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、可搬型放射線画像撮影装置を収容可能な収容部が設けられた撮影台の当該収容部に本装置が収容されたことを検出する収容検出手段をさらに備え、前記制御手段が、前記収容検出手段により前記筐体が載置されたことが検出された場合に前記固定手段を解除状態とする制御を行なってもよい。
【0017】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記通気可能側面に凹部を設け、前記通気可能側面に装着される緩衝部材に、当該通気可能側面の凹部に嵌合する凸部を設けてもよい。
【0018】
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、前記筐体を、少なくとも2つの側面で外部との通気が可能に形成することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記筐体を、対向させた2つの平板の周辺部を固定部材により固定して構成してもよい。
【0020】
また、請求項1〜請求項7記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記通気可能側面への緩衝部材の装着の有無を検出する装着検出手段をさらに備え、前記制御手段が、前記装着検出手段により緩衝部材が未装着と検出された場合に放射線画像の撮影を禁止する制御を行なってもよい。
【0021】
さらに、請求項1〜請求項7記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記通気可能側面への緩衝部材の装着の有無を検出する装着検出手段をさらに備え、前記制御手段が、前記装着検出手段により全て緩衝部材の装着が検出された場合に放射線画像の撮影を許可する制御を行なってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、何れかの側面で外部との通気が可能に形成された筐体の側面に、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材を側面に固定した固定状態又は緩衝部材を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能に設け、固定手段の固定状態又は解除状態への切り替える制御を行なうことにより、冷却効果を持たせつつ、衝撃による放射線画像撮影装置内部の破壊を防止することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0024】
図1には、実施の形態に係る電子カセッテ10の概略構成が示されている。
【0025】
同図に示すように、電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料からなり、4つの側面11を備えた略矩形の平板状に形成された筐体12を備えている。この筐体12の各側面11には、ナイロンやポリエチレン、高分子量ポリエチレン、デルリン、ポリカーボネート等の耐衝撃性樹脂により形成され、衝撃を緩衝する緩衝部材14が設けられている。電子カセッテ10の上側の側面11に装着される緩衝部材14には持ち運ぶ際に把持される把持部18が設けられている。
【0026】
図2には、筐体12の側面部分を拡大した斜視図が示されている。
【0027】
筐体12は、対向させた2つの平板20の周辺部を4つの固定部材22(図2では2つのみ図示)により固定して構成している。
【0028】
電子カセッテ10の各側面11には、緩衝部材14を側面11に固定した固定状態又は固定を解除した解除状態に切り替えるフック24が設けられている。緩衝部材14は、固定部材22に固定されたダンパ26に接続されており、ダンパ26によって離間できる距離が制限されている。ダンパ26は、フック24が解除状態とされた場合、緩衝部材14を筐体12から所定距離だけ離間させる。
【0029】
図3(A)(B)には、電子カセッテ10の側面部分の断面図が示されている。
【0030】
筐体12は、2つの平板20の間が凹部28となっている。緩衝部材14は、側面11に装着した際に凹部28に嵌合するように凸部30が設けられている。緩衝部材14は、凸部が側面11の凹部28に嵌合した状態でフック24によって筐体12に固定される。このように緩衝部材14と側面11を嵌合させることにより、筐体12内部が防水性、密閉性を有するようになる。電子カセッテ10は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ10を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ10を繰り返し続けて使用することができる。
【0031】
図2に示すように、電子カセッテ10の各側面11には、緩衝部材14が装着されたか否かを検出するため、緩衝部材14が嵌合していない状態でオフとなり、緩衝部材14が嵌合した状態でオンとなるメカニカルなスイッチ32が設けられている。
【0032】
図4には、緩衝部材14を離間させた電子カセッテ10の平面図が示されている。
【0033】
電子カセッテ10は、フック24を解除状態として、緩衝部材14を離間させることにより、筐体12内部の外部との通気が可能となる。なお、図4では、緩衝部材14を離間させた状態を図面上で判別しやすくするため、離間距離を大きくして誇張して表示している。緩衝部材14が筐体12から離間可能な距離は、数ミリから数センチメートル程度としている。
【0034】
図5には、緩衝部材14を側面11に固定するフック24部分の詳細な構造を示す断面図が示されている。
【0035】
筐体12には、フック24が突設されている。このフック24は、軸体34で揺動可能に筐体12に支持されており、先端部に側面11方向に突設した係合爪25が形成されている。
【0036】
フック24の軸体34の後方には、引張スプリング36が設けられている。引張スプリング36は、一端がフック24に固定され、他端が筐体に固定されており、フック24を横方向へ引張している。また、引張スプリング36の後方には、通電されると伸縮するプランジャー37を有するソレノイド38が配設されている。ソレノイド38は、プランジャー37がフック24の上面に当接しており、非通電状態で引張スプリング36の付勢力に抗して、フック24を略垂直状態に維持している。
【0037】
一方、緩衝部材14には側面11に装着した場合のフック24に対応する部分に凹部40が設けられている。凹部40内には、側面11に装着した際に係合爪25と系合する系合部42が設けられている。
【0038】
図6(A)の状態から図6(B)の状態のように、緩衝部材14を離間させた状態から側面11に近づけると、係合爪25が系合部42に接触する。係合爪25は、緩衝部材14を離間させた状態から側面11に近づけた際に系合部42と接触する外側の面に先端方向に傾斜した傾斜面25Aを有するように形成されている。これより、緩衝部材14が側面11に近づけられて傾斜面25Aが系合部42と接触すると、フック24が軸体34を中心に反時計方向へ揺動する。緩衝部材14を側面11にさらに近づけて緩衝部材14が側面11に装着すると、フック24が引張スプリング36の引張力で元の状態に戻り、図5に示すように、係合爪25が系合部42に係止されて緩衝部材14が筐体12に固定される。
【0039】
一方、固定を解除するには、図7に示すように、ソレノイド38に通電を行なってプランジャー37を伸張させる。これにより、フック24が軸体34を中心に反時計方向に揺動して、緩衝部材14の固定状態が解除される。
【0040】
図8には、本実施の形態に係る電子カセッテ10の詳細な構成を示すブロック図が示されている。
【0041】
同図に示すように、筐体12の内部には、被検者を透過した放射線Xを検出する放射線検出器60が配設される。
【0042】
放射線検出器60は、TFTアクティブマトリクス基板66上に、放射線Xを吸収し、電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線Xが照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線Xを電荷へ変換する。なお、放射線検出器60は、アモルファスセレンのような放射線Xを直接的に電荷に変換する放射線-電荷変換材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換してもよい。蛍光体材料としては、ガドリニウム硫酸化物(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)が良く知られている。この場合、蛍光材料によって放射線X−光変換を行い、光電変換素子のフォトダイオードによって光−電荷変換を行なう。
【0043】
また、TFTアクティブマトリクス基板66上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を読み出すためのTFT70を備えた画素部74(図8では個々の画素部74に対応する光電変換層を光電変換部72として模式的に示している)がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ10への放射線Xの照射に伴って光電変換層で発生された電荷は、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ10に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0044】
また、TFTアクティブマトリクス基板66には、一定方向(行方向)に延設され個々の画素部74のTFT70をオンオフさせるための複数本のゲート配線76と、ゲート配線76と直交する方向(列方向)に延設されオンされたTFT70を介して蓄積容量68から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素部74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素部74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0045】
図示は省略するが、信号処理部82は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電荷信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0046】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており、信号処理部82のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0047】
画像メモリ90は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータによって実現されており、CPU92A、ROM及びRAMを含むメモリ92B、HDDやフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0048】
このカセッテ制御部92には各側面11に設けられたソレノイド38が接続されている。カセッテ制御部92はソレノイド38への通電を制御することによりプランジャー37を伸張を制御することが可能とされている。
【0049】
また、カセッテ制御部92には各側面11に設けられたスイッチ32が接続されている。カセッテ制御部92はスイッチ32のオン、オフ状態に基づいて各側面11に緩衝部材14が装着されたか否かを検出することが可能とされている。
【0050】
さらに、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間で各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介して放射線画像の撮影を制御する制御装置(所謂、コンソール)などの外部機器と無線通信が可能とされており、外部機器との間で各種情報の送受信を行なう。
【0051】
また、電子カセッテ10には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(スイッチ32、ソレノイド38、ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94やカセッテ制御部92として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図8では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0052】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ10の作用について説明する。
【0053】
放射線画像の非撮影時、カセッテ制御部92は、各側面11に設けられたソレノイド38に所定時間通電を行なってプランジャー37を伸張させることによりフック24を解除状態とする。フック24が解除状態とされると、ダンパ26によって緩衝部材14が筐体12から離間して筐体12内部の外部との通気が可能となるため、筐体12内部の各種回路や各素子を冷却することができる。
【0054】
電子カセッテ10は、持ち運ばれる場合、把持部18が把持されて持ち運ばれる。電子カセッテ10は、持ち運ぶ際に誤って落下した場合や、台等に載置されたものがずれて落下した場合、側面11から床に落下する。
【0055】
本実施の形態に係る電子カセッテ10では、緩衝部材14の離間距離を数ミリから数センチメートル程度と小さく抑えいる。このため、落下した場合でも緩衝部材14から床に接触することとなり、緩衝部材14によって落下の衝撃が吸収されるため、落下の衝撃による電子カセッテ10内部の破壊を防止することができる。なお、緩衝部材14の幅を電子カセッテ10の幅より若干広くすることにより、電子カセッテ10の平板状に形成された筐体12が床と平行に落下した場合でも、緩衝部材14から床に接触することとなり同様の効果を得ることができる。
【0056】
一方、放射線画像を撮影する場合、電子カセッテ10は、コンソールなどの外部機器から撮影準備を指示する指示情報を受信する。
【0057】
電子カセッテ10は、撮影準備を指示する指示情報を受信すると、緩衝部材14が装着されているか否かを確認する装着確認処理を行う。
【0058】
図9にはCPU92Aにより実行される装着確認処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはメモリ92Bに含まれるROMの所定の領域に予め記憶されている。
【0059】
ステップS10では、各側面11に設けられたスイッチ32の検出結果に基づいて各側面11に緩衝部材14が装着されているか否かを判定しており、肯定判定となった場合は処理終了となり、否定判定となった場合はステップS12へ移行する。
【0060】
ステップS12では、コンソールなどの外部機器へ装着されていない緩衝部材14があるためことを通知し、処理終了となる。
【0061】
コンソールなどの外部機器では、装着されていない緩衝部材14があることが通知された場合、ディスプレイや音声によって警告を行ない、緩衝部材14が装着されるまで撮影を禁止する。これにより、医師や放射線技師は、緩衝部材14を電子カセッテ10の各側面11に装着させる。なお、電子カセッテ10自体に表示部や音声出力部部を設けて、電子カセッテ10自体で警告を行なうようにしてもよい。
【0062】
電子カセッテ10は、緩衝部材14が電子カセッテ10の各側面11に装着されると、緩衝部材14の凸部が側面11の凹部28に嵌合して筐体12内部が密閉性される。このように、緩衝部材14の凸部が側面11の凹部28に嵌合することにより、筐体12の耐荷重が高まる。
【0063】
緩衝部材14が装着された電子カセッテ10は、被検者の撮影部位に対応する位置に配置され、撮影部位を透過した放射線が照射される。放射線が照射されると電子カセッテ10に内蔵された放射線検出器60の各画素部74の蓄積容量68には電荷が蓄積される。
【0064】
電子カセッテ10のカセッテ制御部92は、放射線が照射されるとゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にON信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にONさせる。
【0065】
放射線検出器60は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にONされると、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82でデジタルの画像情報へ変換されて、画像メモリ90に記憶される。
【0066】
カセッテ制御部92は、撮影終了後、画像メモリ90に記憶された画像情報を無線通信により外部機器へ送信する。
【0067】
以上のように、本実施の形態によれば、筐体12の側面11に、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材14を側面11に固定した固定状態又は緩衝部材14を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能に設け、放射線画像の撮影時に緩衝部材14を固定状態とし、放射線画像の非撮影時に緩衝部材14を解除状態とすることにより、冷却効果を持たせつつ、衝撃による放射線画像撮影装置内部の破壊を防止することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態では、4つの側面11の緩衝部材14を全て着脱可能とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、何れか1つの側面11の緩衝部材14を着脱可能としてもよい。筐体12内部の通気を速やかに行なうには、少なくとも2つの側面11で外部との通気が可能に形成することが好ましい。
【0069】
また、上記実施の形態では、ダンパ26によって緩衝部材14が筐体12から離間できる距離を制限すると共に、緩衝部材14を筐体12から所定距離だけ離間させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、フック24及びダンパ26の代わりに、筐体12の各側面11にソレノイドを複数配置して筐体12と緩衝部材14をソレノイドで接続し、ソレノイドのプランジャーを伸縮させることによりソレノイドによって緩衝部材14を筐体12から離間させたり密着させるものとしてもよい。また、フック24の代わりに、緩衝部材14と筐体12を電磁ロック等により磁気的に吸着、反発させることにより固定、離間を行なうようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、放射線画像の撮影時として、電子カセッテ10が撮影準備を指示する指示情報を受信したタイミングで電子カセッテ10の各側面11に緩衝部材14を装着させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電子カセッテ10が撮影台やベッドなどの載置台に載置されたタイミングや、電子カセッテ10に患者が接触したタイミングで上記ソレノイドや電磁ロック等により電子カセッテ10の各側面11に緩衝部材14を装着させてもよい。また、コンソールで患者の撮影部位や撮影条件などの撮影条件を示す撮影オーダが受信され、あるいはコンソール等で放射線の照射開始を指示する曝射スイッチが押されてコンソールからの緩衝部材14を装着を指示する指示情報を受信したタイミングで上記ソレノイドや電磁ロック等により電子カセッテ10の各側面11に緩衝部材14を装着させてもよい。放射線画像の撮影時には撮影準備期間も含まれる。
【0071】
電子カセッテ10の載置台への載置は、例えば、載置台に無線により情報の読み出しが可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグを埋め込み、電子カセッテ10の筐体12内などに無線によりRFIDタグを読み取る読取部を設けて、当該読取部によりRFIDタグが読み取ることにより、検出できる。また、例えば、載置台と電子カセッテ10に指向性をもつ光通信を行なう光通信部を設け、電子カセッテ10が載置台に載置されて光通信部により光通信を行なうことにより、検出できる。
【0072】
電子カセッテ10への患者の接触は、例えば、RFIDタグが埋め込まれたリストバンドを患者に装着させ、電子カセッテ10の筐体12内などに無線によりRFIDタグを読み取る読取部を設けて、当該読取部により患者のリストバンドに埋め込まれたRFIDタグが読み取ることにより、検出できる。また、例えば、筐体12の撮影の際に患者と接触する接触面に静電容量の変化を検出する静電容量センサや圧力センサを設け、電子カセッテ10で撮影準備を指示する指示情報を受信した後に静電容量センサで静電容量の増加や圧力センサの圧力の増加を検出することにより、検出できる。
【0073】
また、上記実施の形態では、放射線画像の撮影時に電子カセッテ10の各側面11に緩衝部材14を装着させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電子カセッテ10の振動・落下を検出した場合に、電子カセッテ10の各側面11の緩衝部材14を解除状態として、ダンパ26の緩衝によって緩衝部材14に加えられた衝撃が筐体12へ伝わることを緩和するようにしてもよい。
【0074】
電子カセッテ10の振動・落下は、例えば、電子カセッテ10の筐体12内などに加速度センサを設けて、振動や落下時に生じる所定値以上の加速度を加速度センサで検出することにより、検出できる。
【0075】
一方、緩衝部材14を解除状態にするタイミングは、放射線の照射終了後や、患者の接触終了、信号処理部82による読み出した電荷信号のデジタルの画像データへ変換後(AD変換終了後)、画像メモリ90に記憶された画像情報の外部機器への送信後としてもよい。AD変換時は緩衝部材14を固定しておくことにより筐体12の剛性が上がり、画像情報にAD変換器の振動による外来ノイズが入るのを防ぐことができる。
【0076】
また、電子カセッテ10は、臥位撮影台、立位撮影台など電子カセッテ10を収容可能な収容部が設けられた撮影台の収容部に収容されて放射線画像の撮影が行なわれる場合がある。このように電子カセッテ10を撮影台の収容部に収容した撮影では、連続撮影も多く、また、撮影台自体に剛性があり撮影台自体で外力を受け止めるため、電子カセッテ10の筐体12で外力を受ける必要がなく、さらに、収容部内に収容された電子カセッテ10に落下の懸念がない。このため、電子カセッテ10を撮影台の収容部に収容した撮影では、積極的に電子カセッテ10の緩衝部材14を解除状態にして排熱するようにしてもよい。
【0077】
電子カセッテ10の撮影台の収容部への収容は、例えば、RFIDタグを収容部に設け、電子カセッテ10の筐体12内などに無線によりRFIDタグを読み取る読取部を設けて、当該読取部により収容部のRFIDタグが読み取ることにより、検出できる。また、例えば、電子カセッテ10の筐体12に撮影台の収容部に収容された際に接触してオンするスイッチを設け、当該スイッチのオン、オフ状態を検出することにより、検出できる。
【0078】
また、上記実施の形態では、緩衝部材14が未装着と検出された場合に放射線画像の撮影を禁止する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、全て緩衝部材14の装着が検出された場合に放射線画像の撮影を許可するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、緩衝部材14を4つの側面11全てに設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示すように、把持部18が把持されて持ち運ぶ際に下側となる側面11Uにのみ緩衝部材14を設けるものとしてもよい。また、図11(A)に示すように、把持部18が把持されて持ち運ぶ際に下側の側面11U及び横側となる側面11Sに緩衝部材14を設けるものとしてもよく、図11(B)に示すように、下側の側面11U及び横側の側面11Sの一部分(図11では、側面11Sの下側の一部分)に緩衝部材14を設けるものとしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、スイッチ32を筐体12側に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、緩衝部材14側に設けてケーブル等で電気的に接続するようにしてもよい。
【0081】
さらに、上記実施の形態では、電子カセッテ10を矩形状とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
その他、上記実施の形態で説明した電子カセッテ10の構成(図1〜図9参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態に係る電子カセッテの概略構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る電子カセッテの筐体の側面部分を拡大した斜視図である。
【図3】実施の形態に係る電子カセッテの側面部分の断面図である。
【図4】実施の形態に係る緩衝部材を離間させた電子カセッテを示す平面図である。
【図5】実施の形態に係るフック部分の詳細な構造を示す断面図である。
【図6】実施の形態に係る緩衝部材を離間させた状態から側面に近づけた場合のフック部分の状態を示す断面図である。
【図7】実施の形態に係る固定を解除した場合のフック部分の状態を示す断面図である。
【図8】実施の形態に係る電子カセッテの詳細な構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態に係る装着確認処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】他の形態に係る緩衝部材を下側の側面にのみ設けた電子カセッテの概略構成を示す平面図である。
【図11】他の形態に係る緩衝部材を下側及び横側の側面に設けた電子カセッテの概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0084】
10 電子カセッテ
11、11U、11S 側面
12 筐体
14 緩衝部材
22 固定部材
24 フック(固定手段)
26 ダンパ(固定手段)
28 凹部
30 凸部
32 スイッチ(装着検出手段)
36 引張スプリング(固定手段)
38 ソレノイド(固定手段)
60 放射線検出器(生成手段)
82 信号処理部(生成手段)
92 カセッテ制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影し、当該放射線画像を示す画像情報を生成する生成手段と、
複数の側面を備えた平板状で且つ何れかの側面で外部との通気が可能に形成され、内部に前記生成手段を収容した筐体と、
前記複数の側面の各々に設けられ、衝撃を緩衝する複数の緩衝部材と、
外部との通気が可能に形成された通気可能側面に設けられ、緩衝部材を当該側面に固定した固定状態又は固定を解除して緩衝部材を所定範囲で離間可能な解除状態に切り替え可能な固定手段と、
前記固定手段の固定状態又は解除状態への切り替えを制御する制御手段と、
を備えた可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、放射線画像の撮影時に前記固定手段を固定状態とし、放射線画像の非撮影時に前記固定手段を解除状態とする制御を行なう
請求項1記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項3】
所定値以上の加速度を検出することにより振動、落下を検出する振動落下検出手段をさらに備え、
前記固定手段は、解除状態に切り替えられた場合に前記緩衝部材を所定範囲で離間させると共に当該緩衝部材に加えられた衝撃が前記筐体へ伝わることを緩和するダンパ部材を有し、
前記制御手段は、前記振動落下検出手段により振動、落下が検出された場合に前記固定手段を解除状態とする制御を行なう
請求項1又は請求項2記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項4】
可搬型放射線画像撮影装置を収容可能な収容部が設けられた撮影台の当該収容部に本装置が収容されたことを検出する収容検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記収容検出手段により前記筐体が載置されたことが検出された場合に前記固定手段を解除状態とする制御を行なう
請求項1記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記通気可能側面に凹部を設け、
前記通気可能側面に装着される緩衝部材に、当該通気可能側面の凹部に嵌合する凸部を設けた
請求項1〜請求項4の何れか1記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記筐体を、少なくとも2つの側面で外部との通気が可能に形成した
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記筐体を、対向させた2つの平板の周辺部を固定部材により固定して構成した
請求項1〜請求項6の何れか1項記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記通気可能側面への緩衝部材の装着の有無を検出する装着検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記装着検出手段により緩衝部材が未装着と検出された場合に放射線画像の撮影を禁止する制御を行なう
請求項1〜請求項7の何れか1項記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記通気可能側面への緩衝部材の装着の有無を検出する装着検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記装着検出手段により全て緩衝部材の装着が検出された場合に放射線画像の撮影を許可する制御を行なう
請求項1〜請求項3及び請求項5〜請求項7の何れか1項記載の可搬型放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−156598(P2010−156598A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334610(P2008−334610)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】