説明

可溶性末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーおよびワニス並びにそれらの硬化物

【課題】アミド系溶媒以外の低沸点有機溶媒に対する溶解性および低溶融粘度等の成形性に優れ、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーおよびワニス並びに末端変性イミドオリゴマーおよびそれらの硬化物を提供する。
【解決手段】本発明の可溶性末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、一般式(1)で表される。


(式中、Rは2価の芳香族ジアミン残基を、Rは4価の芳香族テトラカルボン酸類残基を、Rは1価の有機ケイ素基を表し、nは1≦n≦20の関係を満たす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や宇宙産業用機器をはじめとして高耐熱性が要求される広い分野で使用される末端変性イミドオリゴマー、その前駆体となる末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマー並びにそれらの硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドは高分子材料系で最高レベルの耐熱性を有し、機械特性、電気特性などにも優れていることから、広い分野で使用されている。
一方、芳香族ポリイミドは一般に加工性に乏しく、特に溶融成形や繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いることは不向きである。このため、末端を熱架橋基で変性したイミドオリゴマーが提案されている。なかでも、末端を4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸で変性したイミドオリゴマーが成形性、耐熱性、力学特性のバランスに優れているとされ、例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1、非特許文献2において紹介されている。その特許文献1には硬化物の耐熱性および機械的特性が良好で、実用性の高い末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物を提供することを目的とし、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物と4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸とを反応させて得られ、対数粘度が0.05〜1dL/gである末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物が開示されている。そして、その発明の効果として、実用性の高い新規な末端変性イミドオリゴマーを得ることができること、また、耐熱性や弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性が良好な新規な末端変性イミドオリゴマーの硬化物を得ることができると記載されている。
【0003】
しかし、これらの末端変性イミドオリゴマーは、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略称する。)などの有機溶媒に室温(本明細書で室温とは23℃±2℃を意味する。)で20質量%以下しか溶解せず、またこのワニスを保存しておくとしばしば数日後にゲル化する現象が見られ、高濃度のワニスを長期間安定に保存しておくことは難しいという問題を持っている。そのため、末端変性イミドオリゴマーの代わりに,可溶性前駆体である末端変性アミド酸オリゴマーの溶液が用いられているが、末端変性アミド酸オリゴマーはNMP(沸点202℃)やN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(沸点165℃)といったアミド系高沸点溶媒にしか溶解しない。さらに、アミド酸オリゴマーはNMPやDMAcといったアミド系溶媒と錯体を形成し、溶媒固有の沸点以上に加熱してもイミド化が完了するまで溶媒が揮発し続けることが知られている。このように,アミド酸オリゴマーは除去しにくいアミド系高沸点溶媒を含むため、加熱硬化中に残留溶媒が揮発して成形体中にボイドが生じたり、溶媒を含んだ状態で昇温することで粘度が急激に低下し、樹脂が流れ出てしまうという問題がある。
【特許文献1】特許第3551846号
【特許文献2】特表2003−526704号公報
【非特許文献1】P. M. Hergenrother and J. G. Smith Jr., Polymer, 35, 4857 (1994).
【非特許文献2】R. Yokota, S. Yamamoto, S. Yano, T. Sawaguchi, M. Hasegawa, H. Yamaguchi, H. Ozawa and R. Sato, High Perform. Polym., 13, S61 (2001).
【0004】
薄膜として用いられるポリイミドの合成法のひとつとして、例えば非特許文献3や特許文献3のように、N,N’−ジシリル化ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の開環重付加反応、またはジアミン、シリル化剤およびテトラカルボン酸二無水物との反応によりまずポリアミド酸シリルエステルを生成し、これを加熱処理により環化させることでシラノールの脱離を伴ってポリイミドを得る方法が知られている。このポリイミドの前駆体であるポリアミド酸シリルエステルは溶解性が高く、テトラヒドロフランなどの非アミド系低沸点溶媒にも可溶である。しかし、厚板の成形は困難で薄膜用途に限定されており、薄膜作製では高沸点溶媒でも溶媒除去は容易なため、ポリアミド酸シリルエステルが低沸点溶媒に可溶であることの利点は大きくない。
【非特許文献3】Y. Oishi, M. Kakimoto and Y. Imai, Macromolecules, 24, 3475 (1991).
【特許文献3】特開2002−322275号公報
【0005】
航空機や宇宙産業用機器をはじめとして易成形性かつ高耐熱性が要求される広い分野で使用可能な部材の材料では厚板や繊維強化複合材料が求められるが、これらの成形の際に高沸点溶媒を使用すると溶媒の完全な除去が困難なため加熱硬化中に残留溶媒が揮発して成形体中にボイドが生じたり、溶媒を含んだ状態で昇温することで粘度が急激に低下し、樹脂が流れ出てしまうという問題がある。したがって、ボイド発生や樹脂流出を防ぐために、低沸点の非アミド系溶媒に可溶な末端変性イミドオリゴマーの前駆体が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アミド系高沸点溶媒以外の低沸点有機溶媒に対する溶解性、低溶融粘度等の成形性に優れ、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーおよびワニス並びに末端変性イミドオリゴマーおよびそれらの硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新規な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーとして一般式(1)で表されるオリゴマーを提供する。
【化1】

(式中、Rは2価の芳香族ジアミン残基を、Rは4価の芳香族テトラカルボン酸類残基を、Rは式2で表される1価の有機ケイ素基を表し、nは1≦n≦20の関係を満たす。)
【化2】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または1価の芳香族基を表す。)
【0008】
また、本発明は、式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーを含むワニスを提供する。
また、本発明は、式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーまたはそのワニスを加熱して得られる末端変性イミドオリゴマーおよびそれらの硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、アミド系高沸点溶媒以外の低沸点有機溶媒に対する溶解性、低溶融粘度等の成形性に優れ、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーおよびワニス並びに末端変性イミドオリゴマーおよびそれらの硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一般式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、芳香族ジアミン類と、芳香族ジアミン類のアミノ基当量とほぼ当量のシリル化剤を反応させて得られた溶液に芳香族テトラカルボン酸類化合物と4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸(以下、PEPAと略記することもある。)等のフェニルエチニル無水フタル酸とを、各酸基の当量の合計と各アミノ基の当量とが概略等量となるようにして、好適には溶媒中で反応させて得られるアミド酸シリルエステルオリゴマーであって、そのアミド酸シリルエステルオリゴマーの末端(好適には両末端)に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸に基づくアセチレン性の付加硬化可能な不飽和末端基およびアミド酸シリルエステルオリゴマーの主鎖にアミド結合および側鎖にシリルエステル結合を有し、好ましくは1≦n≦20の関係を満たす比較的低分子量である末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーである。さらに、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、酢酸2−メトキシエチルなどのアミド系溶媒以外の有機溶媒に室温で固形分20〜50質量%の範囲で溶解可能な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーが好ましい。さらに、当該オリゴマーの硬化後のガラス転移温度(Tg)が250℃以上である末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーが好ましい。
【0011】
前記の芳香族ジアミン化合物としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,6−ジエチル−1,3−ジアミノベンゼン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−ジアミノベンゼン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(2,6−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、ビス(2−エチル−6−メチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4’−(4’’−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられ、それらを単独、あるいは2種以上を併用することができる。特に、芳香族ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、あるいは9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンが好適である。
【0012】
前記の芳香族テトラカルボン酸類化合物としては、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i−BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、およびこれらのテトラカルボン酸、あるいはテトラカルボン酸のエステルまたは塩などの誘導体などが挙げられ、それらを単独、あるいは2種以上を併用することができる。特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好適である。
【0013】
本発明の一般式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの有機ケイ素基としては、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ブチルジメチルシリル基、ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0014】
本発明で用いられるシリル化剤としては、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロジメチルフェニルシランなどのクロロシラン系シリル化剤、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリル−N−メチルアセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、トリメチルシリル−N−メチルトリフルオロアセトアミド、ビス(トリメチルシリル)尿素、トリメチルシリルジフェニル尿素等のシリルアミド系シリル化剤などが挙げられる。これらのシリル化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、シリル化剤として、ビス(トリメチルシリル)アセトアミドおよびビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドが好適である。
【0015】
本発明においては、末端変性(エンドキャップ)用の不飽和酸無水物としてフェニルエチニル無水フタル酸、好適には、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を使用する。前記のフェニルエチニル無水フタル酸は、酸類の合計量に対して3〜200モル%、特に5〜150モル%の範囲内の割合で使用することが好ましい。
【0016】
前記の溶媒としては、2−ブタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸2−メトキシエチルなどのエステル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
以下、製造法の例について説明する。合成スキームを式(3)に示す。
【化3】

(式中、Rは2価の芳香族ジアミン残基を、Rは4価の芳香族テトラカルボン酸類残基を、Rは式2で表される1価の有機ケイ素基を、Xは水素原子またはRを表すが、少なくとも1つはRを表し、nは1≦n≦20の関係を満たす。)
【化4】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または1価の芳香族基を表す。)
【0018】
本発明の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、例えば、芳香族ジアミン類と、該芳香族ジアミン類のアミノ基当量に対し0.5〜3当量好ましくは0.5〜1当量のシリル化剤を前述の有機溶媒中で好ましくは−20℃〜60℃の温度で反応させてアミノ基をシリル化し、この溶液に芳香族テトラカルボン酸類化合物(特にこの酸無水物)とフェニルエチニル無水フタル酸とが、全成分の酸無水基(または隣接するジカルボン酸基)の全量とアミノ基の全量とがほぼ等量になるように使用して、各成分を前述の溶媒中で、約100℃以下、特に80℃以下の反応温度で重合させて、ワンポットで「アミド−シリルエステル結合を有するオリゴマー」(アミド酸シリルエステルオリゴマーまたはアミック酸シリルエステルオリゴマーという)を得ることができる。
【0019】
次いで、そのアミド酸シリルエステルオリゴマーを、140〜275℃の高温に加熱する方法により脱シラノール・環化させるか、あるいは水やアルコールでシリルエステル結合を加水分解してアミド酸オリゴマーとした後に約0〜140℃の温度でイミド化剤を添加する方法により脱水・環化させて、末端に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸残基を有するイミドオリゴマーを得ることができる。
【0020】
さらに、硬化物は、例えば前記の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーのワニスを支持体に塗布し、280〜500℃で加熱硬化してフィルムとすることができる。また、前記の末端変性イミドオリゴマーの粉体を金型などの型内に充填し、280〜500℃で加熱加圧して、硬化物を得ることができる。
【0021】
本発明の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの特に好ましい製法としては、例えば芳香族ジアミンを前述の溶媒中に均一に溶解または分散後、シリル化剤を溶液中に加えて0℃〜40℃の反応温度で1〜180分程度攪拌する。この反応溶液に芳香族テトラカルボン酸二無水物を溶液中に加えて均一に溶解後約5〜60℃の反応温度で1〜240分程度攪拌し、この反応溶液に、フェニルエチニル無水フタル酸を加えて均一に溶解後約5〜60℃の反応温度で1〜240分程度攪拌しながら反応させて前記の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーを得る方法を挙げることができる。前記の反応において、全反応工程あるいは一部の反応工程を窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性のガスの雰囲気あるいは減圧下で行うことが好適である。
【0022】
前述のようにして生成した末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、反応液を、そのままか、あるいは適宜濃縮または希釈するかして、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの溶液組成物(ワニス)として使用してもよい。なお、本発明の末端変性オリゴマーは、分子量の異なるものを混合したものでもよい。また、本発明の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、他の可溶性アミド酸シリルエステルと混合してもよい。
【0023】
前記のアミド酸シリルエステルオリゴマーを、140〜275℃で10〜300分程度加熱して脱シラノール・環化させて、末端にフェニルエチニル無水フタル酸残基を有するイミドオリゴマーを得ることができる。
【0024】
本発明の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの硬化物は、例えば、前記の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーのワニスを支持体に塗布し、140〜275℃で10〜300分程度加熱して脱シラノール・環化および溶媒除去後、280〜500℃で5〜200分間加熱硬化してフィルムとすることができる。また、前記の末端変性イミドオリゴマーの粉体を金型などの型内に充填し、10〜280℃で1〜1000kg/cmで1秒〜100分程度の圧縮成形によって予備成形体を形成し、この予備成形体を280〜500℃で10分〜40時間程度加熱して、硬化物を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を説明するためにいくつかの実施例を示すが、これによって本発明を限定するものではない。また、各特性の測定条件は、次のとおりとした。
試験方法
(1)赤外分光分析(IR):日本分光製FT/IR7300型を用いて測定した。
(2)元素分析:パーキンエルマー製有機微量元素分析装置2400を用いて測定した。
(3)分子量測定:東ソー製高速GPCシステムHLC−8220を用いて、ポリスチレン換算で測定した。
(4)熱重量分析:セイコーインスツルメンツ製TG/DTA320型熱重量分析装置(TGA)を用い、窒素気流下、10℃/minの昇温速度により測定した。
(5)ガラス転移温度:島津製作所製DSC−60型示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下、20℃/minの昇温速度により測定した。
(6)引張試験:オリエンテック社製TENSILON/UTM−II−20を用い、室温にて、引張速度5mm/minで行った。試験片形状は、長さ20mm、幅3mm、厚さ80〜120μmのフィルムとした。
【0026】
(実施例1)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と2−ブタノン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.18dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1111、1081、876、826、737
このIRスペクトルから明らかなように、3344cm-1、1656cm-1由来のアミド結合が消失し、1776cm-1、1719cm-1、1371cm-1、737cm-1由来のイミド結合が生じている。
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素78.54%、水素3.86%、窒素4.46%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4200、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
この硬化物のIRスペクトルから明らかなように、2212cm-1由来の三重結合が消失している。
ガラス転移温度(DSC測定):328℃
5%重量減少温度(TGA測定):558℃
熱硬化フィルム(厚さ87μm)の引張特性:弾性率2.78GPa、破断強度が115MPa、破断伸びが10.8%
【0027】
(実施例2)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と2−ブタノン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド1.287g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.18dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014,843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1111、1081、876、826、737
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素78.63%、水素3.79%、窒素4.41%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4200、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):328℃
5%重量減少温度(TGA測定):559℃
熱硬化フィルム(厚さ88μm)の引張特性:弾性率2.79GPa、破断強度が115MPa、破断伸びが10.9%
【0028】
(実施例3)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.18dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1111、1081、876、826、737
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素78.63%、水素3.86%、窒素4.48%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4200、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776,1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):328℃
5%重量減少温度(TGA測定):560℃
熱硬化フィルム(厚さ87μm)の引張特性:弾性率2.76GPa、破断強度が116MPa、破断伸びが11.0%
【0029】
(実施例4)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)とシクロヘキサノン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.17dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1081、876、826、737
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素79.06%、水素3.93%、窒素4.43%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4100、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):325℃
5%重量減少温度(TGA測定):559℃
熱硬化フィルム(厚さ85μm)の引張特性:弾性率2.84GPa、破断強度が117MPa、破断伸びが11.8%
【0030】
(実施例5)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と1,4−ジオキサン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.16dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1111、1081、876、826、737
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素78.71%、水素3.88%、窒素4.38%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4000、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):327℃
5%重量減少温度(TGA測定):560℃
熱硬化フィルム(厚さ88μm)の引張特性:弾性率2.80GPa、破断強度が115MPa、破断伸びが11.1%
【0031】
(実施例6)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と酢酸2−メトキシエチル4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.16dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比50:50モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2215、1656、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1236、1168、1111、1081、876、826、737
元素分析:計算値[C218.51201027.5として計算] 炭素78.92%、水素3.64%、窒素4.21%;測定値 炭素78.62%、水素3.94%、窒素4.50%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4000、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):326℃
5%重量減少温度(TGA測定):560℃
熱硬化フィルム(厚さ90μm)の引張特性:弾性率2.79GPa、破断強度が115MPa、破断伸びが10.9%
【0032】
(実施例7)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.100g(0.5mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.065g(2mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.19dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはジフェニルエーテル基とフルオレニリデンジフェニルエーテル基(混合比20:80モル%)を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2213、1656、1601、1542、1499、1408、1218、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1719、1614、1499、1371、1238、1168、1111、1082、876、826、737
元素分析:計算値[C2561441029として計算] 炭素80.41%、水素3.80%、窒素3.66%;測定値 炭素79.99%、水素3.89%、窒素3.60%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4400、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):326℃
5%重量減少温度(TGA測定):553℃
熱硬化フィルム(厚さ107μm)の引張特性:弾性率2.74GPa、破断強度が114MPa、破断伸びが11.1%
【0033】
(実施例8)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.332g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.19dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはフルオレニリデンジフェニルエーテル基を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2213、1656、1603、1540、1499、1408、1220、1168、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1776、1720、1615、1498、1374、1238、1170、1112、1084、876、826、738
元素分析:計算値[C2811601030として計算] 炭素81.20%、水素3.88%、窒素3.37%;測定値 炭素80.89%、水素3.98%、窒素3.30%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4500、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1719、1615、1498、1373、1238、1168、1082、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):321℃
5%重量減少温度(TGA測定):551℃
熱硬化フィルム(厚さ119μm)の引張特性:弾性率2.78GPa、破断強度が110MPa、破断伸びが10.2%
【0034】
(実施例9)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.332g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.441g(1.5mmol)とビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物0.155g(0.5mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.19dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはフルオレニリデンジフェニルエーテル基を、Rはビフェニル基とジフェニルエーテル基(混合比75:25モル%)を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2213、1656、1603、1542、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1775、1720、1614、1499、1374、1238、1170、1113、1086、876、826、740
元素分析:計算値[C2811601031として計算] 炭素80.89%、水素3.86%、窒素3.36%;測定値 炭素80.51%、水素3.95%、窒素3.31%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量4500、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1719、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):319℃
5%重量減少温度(TGA測定):552℃
熱硬化フィルム(厚さ104μm)の引張特性:弾性率2.78GPa、破断強度が112MPa、破断伸びが10.4%
【0035】
(実施例10)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン0.731g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、これにビス(トリメチルシリル)アセトアミド1.017g(5mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間重合反応させアミド酸シリルエステルオリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下、室温で4時間反応させ末端変性させ、末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーの均一な透明溶液を得た。この溶液の一部をガラス板上に流延し、60℃で減圧乾燥して粉末状のオリゴマーを得た。対数粘度は0.16dL/g(濃度0.5g/dL,NMP中,30℃で測定)であった。この末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーは、前記一般式(1)において、Rはフェニレンフェニルエーテル基を、Rはビフェニル基を、Rはトリメチルシリル基を表し、平均でn=4である。
IR(KBr,cm-1):3344、3060、2956、2213、1657、1603、1541、1498、1408、1220、1169、1046、1014、843
また、残りの溶液をガラス板にキャストし、順次60℃、150℃、200℃、250℃と昇温し、各1時間減圧乾燥を行い、フレーク状の末端変性イミドオリゴマーを得た。
IR(KBr,cm-1):3053、2212、1775、1720、1614、1498、1374、1238、1171、1113、1086、876、826、740
元素分析:計算値[C1861001030として計算] 炭素75.61%、水素3.41%、窒素4.74%;測定値 炭素75.22%、水素3.53%、窒素4.68%
平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算により測定):数平均分子量3500、多分散度1.5
この末端変性イミドオリゴマーをホットプレス機により370℃で1時間加熱してフィルム状の硬化物を得た。
IR(フィルム,cm-1):3058、1776、1718、1615、1499、1371、1236、1168、1081、876、827、737
ガラス転移温度(DSC測定):252℃
5%重量減少温度(TGA測定):548℃
熱硬化フィルム(厚さ104μm)の引張特性:弾性率2.54GPa、破断強度が108MPa、破断伸びが15.4%
【0036】
(比較例1)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と2−ブタノン4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0037】
(比較例2)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0038】
(比較例3)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)とシクロヘキサノン4mLを加え、溶解後、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0039】
(比較例4)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と1,4−ジオキサン4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0040】
(比較例5)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.250g(1.25mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン0.666g(1.25mmol)と酢酸2−メトキシエチル4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0041】
(比較例6)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.100g(0.5mmol)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.065g(2mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0042】
(比較例7)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.332g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0043】
(比較例8)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン1.332g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.441g(1.5mmol)とビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物0.155g(0.5mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【0044】
(比較例9)
温度計、攪拌子、冷却管、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン0.731g(2.5mmol)とテトラヒドロフラン4mLを加え、この懸濁液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.588g(2mmol)を入れ、窒素気流下、60℃で2時間、室温で2時間攪拌した。つぎに、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.248g(1mmol)を入れ、窒素気流下に室温で4時間撹拌したが、溶け残りのある白濁した不均一溶液のままであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、アミド系溶媒以外の低沸点有機溶媒に対する溶解性および低溶融粘度等の成形性に優れ、フィルム化も容易であり、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーおよびワニス並びに末端変性イミドオリゴマーおよびそれらの硬化物に関するものであり、航空機や宇宙産業用機器をはじめとして易成形性かつ高耐熱性が求められる広い分野で利用可能な材料を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマー。
【化1】

(式中、Rは2価の芳香族ジアミン残基を、Rは4価の芳香族テトラカルボン酸類残基を、Rは式2で表される1価の有機ケイ素基を表し、nは1≦n≦20の関係を満たす。)
【化2】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または1価の芳香族基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーを20〜50質量%の範囲で有機溶媒に溶解してなるワニス。
【請求項3】
有機溶媒中,芳香族ジアミン類,シリル化剤,芳香族テトラカルボン酸類,フェニルエチニル無水フタル酸末端剤からワンポットで反応せしめる一般式(1)で表される末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーまたはそのワニスの製造方法。
【化3】

(式中、Rは2価の芳香族ジアミン残基を、Rは4価の芳香族テトラカルボン酸類残基を、Rは式2で表される1価の有機ケイ素基を表し、nは1≦n≦20の関係を満たす。)
【化4】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または1価の芳香族基を表す。)
【請求項4】
請求項1に記載の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーまたは請求項2に記載のワニスを加熱して得られる末端変性イミドオリゴマー。
【請求項5】
請求項1に記載の末端変性アミド酸シリルエステルオリゴマーまたは請求項2に記載のワニスを加熱して得られる硬化物。
【請求項6】
ガラス転移温度(Tg)が250℃以上である請求項5に記載の硬化物。

【公開番号】特開2008−1791(P2008−1791A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172285(P2006−172285)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】