可燃性繊維強化樹脂成形品の製造方法
【課題】容易に成形でき、しかも高精度で成形品を製造できる繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】フィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料をバインダー樹脂で結合してなる繊維強化素材(30,30',30'') を用い、繊維強化素材を破砕し、繊維強化素材の破砕片を平面上又は所定の立体形状の面上に並べて加熱してそのバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧し、バインダー樹脂を硬化させることによってシート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品(31,31'')を製造する。繊維強化素材の原料には繊維又は水和金属化合物を
用いることができる。また、バインダー樹脂には生分解性樹脂を用いることができる。
【解決手段】フィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料をバインダー樹脂で結合してなる繊維強化素材(30,30',30'') を用い、繊維強化素材を破砕し、繊維強化素材の破砕片を平面上又は所定の立体形状の面上に並べて加熱してそのバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧し、バインダー樹脂を硬化させることによってシート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品(31,31'')を製造する。繊維強化素材の原料には繊維又は水和金属化合物を
用いることができる。また、バインダー樹脂には生分解性樹脂を用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、繊維強化プラスチックFRPは一般に、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を使用することが多い。エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂を使用する場合もあるが、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP、Fiber Reinforced Thermo Plastics)もあるが極めて稀である。そして、その成型方法としては、型に繊維骨材を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法のほか、あらかじめ骨材と樹脂を混合したシート状のものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維とマトリクス(接着剤)を予め馴染ませてある部材(プリプレグなど)を大型の窯(オートクレーブ)で「焼き固める」方法などがある。
【0003】
安価・軽量で耐久性がよいことから、小型船舶の船体や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器のほか、航空・宇宙などの先端技術で大きな地位を占めている。しかし、異種材料が混合した状態で成型されてしまっていることから、リサイクルがほとんど不可能な事が欠点である。
【0004】
そこで、近年、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)の代替として、天然繊維強化樹脂(NFRP)が注目されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。ガラス繊維が入ると焼却処分が困難であり、埋立て処理費も1トン当り2〜3万円もかかることから、環境対応として天然繊維で強化された樹脂のニーズが高まっており、天然繊維の中でもヘンプ(Hemp)は、成長性が早く、農薬や化学肥料がほとんどいらず、冷帯、温帯、熱帯と幅広い気候条件で栽培でき、品質の高い繊維が採れるのが特徴となっているが、その配合量はほぼ全ての射出成形・押出成形機での成形が行われている現状では繊維強化樹脂(商品名:リファイン)中の繊維分は高々30%である。
【0005】
例えば、人工皮革として使用する場合、素材のほとんどがシート状であるため、射出成形および押出成形では繊維の配向が一方向になりやすく、特に繊維配向方向に直交する方向の引張強度に欠ける欠点があり、多くの場合は製品形状が立体形状に制限されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007ー138361
【特許文献2】特開2006ー63271
【特許文献3】特開2006ー56163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、人工皮革のような薄いシート状に成形しても四方の引っ張り強度に優れるものを提供すべく、鋭意研究の結果、従来の射出成形、押出成形によらず、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を使用し、一旦固化させた繊維強化材料を、粉砕または破砕し、これを成形材料として用いると、30%以上、好ましくは50%以上の繊維分を配合することができ、しかもこれを成形すると、繊維の配向がランダムでしかも重畳し、極めて理想的な繊維強化樹脂製品が製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向を一定方向に並べず所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化させ、シート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法にある。
【0009】
本発明によれば、30重量%以上、好ましくは50〜85重量%の繊維分を配合しても射出成形や押出成形を利用しないので、繊維強化樹脂製品を成形することができる。
【0010】
上記繊維材料は30重量%以上、好ましくは50〜85重量%の繊維分を配合できるので、ガラス等の不燃性強化繊維を選択しなくても十分な強度を持たせることができる。しかも繊維材料は繊維製品屑等の可燃性繊維から選ばれることにより、FRP製品を焼却処分可能とし、環境にやさしいものとすることができる。また、バインダー樹脂が熱可塑性であるため、リサイクルが容易である。
【0011】
上記繊維材料が天然繊維から選ばれる場合は、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いると、土中に投棄しても環境を破壊することがない。
【0012】
本発明の方法で製造されるシートの製品は30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を含み、可燃性繊維がランダムな方向に配向し、しかも重畳して引っ張り強度に優れる一方、表面に樹脂のみからなる層を形成しているので、人工皮革に適する。
【0013】
人工皮革に使用するときは熱可塑性樹脂にゼラチンを配合すると、吸湿性を有するものとなるので、天然皮革の風合いをさらに増強させることができる。
【0014】
さらに、水和金属化合物、難燃性又は不燃性の助剤、例えばリン酸エステルやアンチモン化合物を添加混練すると、難燃性を付与することもできる。
【0015】
また、バインダー樹脂は例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、その他の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、バインダー樹脂には加熱又は加圧によって発泡する樹脂ビーズなどを繊維強化素材の強度を低下させない程度の量だけ含ませてもよい。この場合には繊維強化樹脂成形品を構成するバインダー樹脂に部分的に発泡が起こり、繊維強化樹脂成形品を軽量化することができる。また、バインダー樹脂には生分解性プラスチックを用いることもできる。生分解性プラスチックにはポリ乳酸系の生分解性プラスチック、脂肪族系ポリエステル系の生分解性プラスチック、加熱によって軟化溶融し得るその他の公知の生分解性プラスチックを用いることができる。
【0016】
繊維強化素材の原料、例えば各種繊維はバインダー樹脂と混練するが、混練機で混練し、又は1軸又は2軸の押出機で攪拌しながら押し出し、あるいは混練機で混練した後、1軸又は2軸の押出機に移してさらに攪拌することにより、原料とバインダー樹脂とを混練することができる。混練物を強加圧する必要がある。そこで、混練物は例えば1面を開放した成形型に混練物を注入し、開放された1方向から加圧プレートによって強加圧するようにすればよく、型締め力以上の加圧力が加えられる点で通常の型成形と区別される。
【0017】
また、混練物は混練機又は押出機から押し出し(混練機から押出し機に移して押出し機から押し出してもよい)、ローラで強加圧することもでき、又縦ローラ及び横ローラで縦横から加圧するようにしてもよい(縦ローラに代え、横ローラの両側に型部を設け、横ローラの強加圧力でもって混練物の両側の型部に押し付けて横方向からの強加圧を得るようにしてもよい)。
【0018】
成形型及び加圧プレートは水冷することによって混練物を強加圧状態のままで冷却することができる。しかし、ローラ加圧の場合には成形型及び加圧プレートによる場合と同様の方法を採用できない。そこで、ローラ加圧の場合には強加圧した後に冷却を行う方法を採用すれば同様の結果が得られる。
【0019】
本発明は繊維強化素材を一旦、粉砕又は破砕し、これを並べて加熱し加圧してシート状又は製品形状の繊維強化樹脂成形品を製造することにある。これによって、射出成形または押出成形により成形できない繊維高充填強化樹脂であっても加熱加圧成形が可能となる。
【0020】
本発明では使用済みの繊維強化素材をリサイクルすることができる。回収した繊維強化素材を適当な大きさ、例えば一辺が5mm〜20mmの大きさに破砕し、適当な熱源によって加熱してバインダー樹脂を軟化又は溶融させ、必要に応じてバインダー樹脂を添加する。
【0021】
本発明では、表面樹脂層を形成する場合、本発明の繊維強化樹脂成形品の表面に軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねることにより形成してもよく、合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層することにより形成することもできる。本発明の繊維強化樹脂成形品の表面樹脂層は繊維強化樹脂成形品の外表面の全部に形成してもよく、外表面の一部、例えばシート状繊維強化樹脂成形品の上面又は下面だけに形成してもよい。また、表面樹脂層を形成して所定の製品形状に加圧成形することができるが、繊維強化樹脂成形品の表面に合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層し、あるいは軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねる際に、所定の製品形状に成形することもできる。この繊維強化樹脂成形品の成形には金型やローラなどを用い、絞り成形、曲げ成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形などを採用することができる。
【0022】
合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートと本発明の繊維強化樹脂成形品とは接着剤によって接着するようにしてもよく、バインダー樹脂と表面樹脂層の合成樹脂材料との親和性によって相互に結合するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料に合成繊維を用いた例である。本例の繊維強化樹脂成形品を製造する場合、例えば繊維製品屑、カーペット屑を破砕機によって破砕し、多量の繊維と少量の繊維粉の混ざった材料を準備する。必要に応じて繊維材に対し難燃性等の物性改善を施す。また、例えば廃プラスチックに由来するバインダー樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンを破砕機によって適当な大きさのチップに破砕する。なお、これらは1種でもよく、2種が混ざったものでもよい。また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックをバインダー樹脂として用いることもできる。
【0024】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、破砕したバインダー樹脂のチップを混練機10内に投入し、攪拌しながら溶融させる。バインダー樹脂のチップの投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。バインダー樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生する場合には加熱ヒータによる加熱温度はバインダー樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0025】
バインダー樹脂が十分に溶融すると、準備した繊維と繊維粉を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、溶融したバインダー樹脂が繊維及び繊維粉の表面を確実にコーティングするように混練する。繊維及び繊維粉は一度に大量に投入すると、溶融樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機10への投入前に、繊維及び繊維粉を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。この場合には含有水分がある程度蒸発するので、混練機10での混練時間を短くできる。
【0026】
また、バインダー樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、バインダー樹脂の温度や繊維の乾燥状態によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0027】
また、混練の際、溶融樹脂の例えば100°C〜300°Cの高熱によって繊維及び繊維粉が加熱され、繊維及び繊維粉に含まれていた含有水分が蒸発し、混練機10の開口から放散されるので、繊維及び繊維粉の含有水分が大幅に減少する。なお、混練機10が密閉形の場合には一定の時間間隔をあけて間欠的に開放し、水蒸気を放散させるようにする。
【0028】
繊維及び繊維粉と溶融したバインダー樹脂とが十分に混練されると、混練物をローラ型プレス機11に供給し、混練物を所定の強加圧力で挟んで送り、強加圧状態を維持してバインダー樹脂を硬化させる。ローラ型プレス機11は上側及び下側のローラ列にベルトを無端状にかけわたして構成されている。また、終端側のローラは水冷しておき、混練物を強加圧状態のままで冷却するようにするのがよい。なお、水冷に代え、エアーを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
【0029】
また、バインダー樹脂が生分解性プラスチックの場合には樹脂を加熱して軟化すると、増粘してローラなどに粘着してしまうが、上述のように繊維を添加し混練すると、粘着性が低下し、ローラによる加工が可能となる。
【0030】
混練物の送り速度はローラ列を出たときに混練物が十分に固まっている速度とする。また、上下のローラ列による加圧力は19.6×105Pa(20kgf/cm2)の面圧を加えるようになっているが、面圧は19.6×105Pa(20kgf/cm2)以上で58.8×105Pa(60kgf/cm2)程度までの範囲から、繊維強化材の用途や材料等に応じて適宜設定すればよく、又必要に応じてそれよりも大きな面圧を加えることもできる。
【0031】
こうして混練物が十分に硬化すると、複数の繊維とバインダー樹脂とが相互に強く結合された繊維強化素材30が得られる。ローラ型プレス機11における加圧力を小さくし、あるいは送り速度を速くして、繊維とバインダー樹脂との結合強度が十分ではあ
るが繊維強化木材のそれに達しない程度である半繊維強化木材を繊維強化素材30として得るようにしてもよい。
【0032】
得られた繊維強化素材30を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材30を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0033】
そして、繊維強化素材30の破砕片を加熱装置、例えば2軸(又は1軸)の押出し機(他の公知の加熱装置を用いてもよい)13に投入し、繊維強化素材30の破砕片をスクリューの間で押しつけ合うとともに、押出し機13のシリンダ内面に押しつけ、摩擦熱によって軟化させる一方、ローラ型プレス機14を加熱し、軟化した繊維強化素材30の破砕片をローラ型プレス機14に押し出して並べ、ローラ型プレス機14で加圧してシート状の繊維強化樹脂成形品31を製造する。
【0034】
このシート状の繊維強化樹脂成形品31は製品の厚みから表面樹脂層の厚みを差し引いた厚みにプレスされるが、繊維とバインダー樹脂とが既に高い強度で結合されたものを原料としているので、高い寸法精度が得られる加圧力でもってプレスすることができる。
【0035】
次に、得られた繊維強化樹脂成形品31に樹脂製、例えばポリプロピレンやポリエチレン製のフィルム(シート又はプレートでもよい)32を積層させながらローラ型プレス機15に送り込み、加熱して繊維強化樹脂成形品31の表面にフィルム32を結合させて表面樹脂層を形成する。同じ操作を繰り返して繊維強化樹脂成形品31の上面、下面及び側面に表面樹脂層を形成してもよい。
【0036】
こうして製品の素材33が得られると、素材33を例えば金型16内にセットし、加熱加圧して所定の立体形状に加工すると、製品34が得られる。この製品34は図2A断面図に示されるように繊維強化素材34Aの表面を樹脂層34Bで被覆した構造をなし、表面から見ると、全体が樹脂だけで製造されているように見えることとなる。そして、図2Bの平面図に示すように、樹脂層34B内では繊維がランダムな方向に配向し、重畳することになる。
【0037】
図3は第2の実施形態を示し、図において図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機11に代え、1軸又は2軸の押出機11’を用い、あまり高くない加圧力で繊維強化素材30’を製造し、これを破砕工程12で破砕するようにしている。これは後の工程で破砕片を加熱し加圧して繊維強化樹脂成形品31を製造するので、繊維強化素材30’の製造工程において繊維とバインダー樹脂とは必ずしも強固に結合させる必要はなく、繊維の表面側の微小腔の一部にバインダー樹脂を侵入させた半繊維強化材であってもよいからである。
【0038】
なお、混練機10は必ずしも用いる必要はなく、図4に示されるように、繊維とバインダー樹脂を押出機11’に投入して混練することもできる。
【0039】
また、本例では繊維強化素材30’の破砕片を押出し機13ではなく、フィーダ13’によって破砕片のままローラ型プレス機14に供給し、平面上に並べて加熱加圧し、シート状の繊維強化樹脂成形品31を製造するようにしている。
【0040】
図5は第3の実施形態を示し、図において図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機15によって製品の素材33を製造する際に、押出し機17によって軟化又は溶融した樹脂をシート状の繊維強化樹脂成形品31上に押し出し、表面樹脂層を形成するようにしている。
【0041】
図6は第4の実施形態を示し、図において図1ないし図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では製品の素材33をプレスするローラ型プレス機15に代え、金型16を用い、下型16Aと上型16Bの間に繊維強化樹脂成形品31と樹脂製フィルム32とを積層した状態でセットし、これを加熱加圧することによって繊維強化樹脂成形品31と樹脂製フィルム32を結合して繊維強化樹脂成形品31の表面に樹脂層を形成するとともに、同時に所定の製品形状に成型するようにしている。
【0042】
なお、第4の実施形態では下型16Aの上に基材31と樹脂製フィルム32を積層してセットするようにしたが、繊維強化素材30又は30’の破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、上型16Bで加圧して製品形状の繊維強化樹脂成形品を製造した後、樹脂製フィルム32を重ねて上型16Bで加圧して表面樹脂層を形成するようにしてもよい。また、繊維強化素材30又は30’の破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、その上に樹脂製フィルム32を重ねて加熱するとともに上型16Bで加圧して製品形状の繊維強化樹脂成形品と表面樹脂層とを形成することもできる。
【0043】
また、繊維強化素材30又は30’を製造するローラ型プレス機11に代え、金型を用いて強加圧してもよく、又多段ローラを通過させて強加圧と冷却とを繰り返してバインダー樹脂を硬化させて繊維強化素材30又は30’を製造するようにしてもよい。
【0044】
また、上記の例では繊維強化素材30又は30’を製造し、これを破砕して繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたが、廃棄された繊維強化木材や繊維強化樹脂成形品を回収して繊維強化木材を取り出し、これを原料として繊維強化樹脂成形品を製造することもできる。
【0045】
図7は第5の実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料に綿製品の端切れを用いた例である。本例の繊維強化樹脂成形品を製造する場合、端切れを3乃至10mm角の平均寸法に裁断して用いる。他方、バインダー樹脂としてポリ乳酸系の生分解性プラスチックの適当なサイズ、例えば150μm〜250μmの粉状のものを準備する。
【0046】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の軟化温度、例えば100°C〜150°Cまで上昇させておき、バインダー樹脂を混練機10内に投入し、攪拌しながら軟化させる。バインダー樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。
【0047】
バインダー樹脂が十分に軟化すると、準備した天然繊維素材を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、軟化したバインダー樹脂と天然繊維素材とを十分に混練する。バインダー樹脂を長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。
【0048】
繊維分とバインダー樹脂とが十分に混練されると、混練機10から混練物を取り出すと、繊維強化素材30''が得られる。この繊維強化素材30''を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材30''を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0049】
そして、繊維強化素材30''の破砕片をフィーダ13に投入し、繊維強化素材30''の破砕片をローラ型プレス機14上に並べ、ローラ型プレス機14で適切な温度、例えば160°C程度に加熱して破砕片のバインダー樹脂を軟化させるとともに加圧してシート状の繊維強化樹脂成形品31''を製造する。
【0050】
この得られた繊維強化樹脂成形品31''は繊維分に含浸させた難燃剤、樹脂分に配分した難燃剤によって難燃性又は不燃性が付与することができ、難燃性又は不燃性を有する自動車用内装材や建築用内装材に用いることができる。
【0051】
本例の方法によって繊維分70重量%、ポリ乳酸系の生分解性プラスチック30重量%の繊維強化樹脂成形品を製造したところ、表面が極めて平滑な繊維強化樹脂プレートが得られ、しかも厚みは1.5mm以上任意に設定することができた。この繊維強化樹脂シートは硬度及び表面平滑性から人工皮革のようであった。
【0052】
また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックに代え、エチレン酢酸ビニル(EVA)をバインダー樹脂として用い、繊維分80重量%及びEVA20重量%からなる表面が極めて平滑な繊維強化樹脂シートが得られ、しかも厚みも任意に設定することができた。
【0053】
なお、天然繊維を用いた繊維強化樹脂成形品の製造は図7に示される方法に限定されず、第1ないし第4の実施形態に示される方法を繊維強化素材の製造時における強加圧の工程を除いて同様に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。
【図2】上記実施形態において得られた繊維強化樹脂成形品の断面及び平面を示す図である。
【図3】第2の実施形態を模式的に示す図である。
【図4】第2の実施形態の変形例を示す図である。
【図5】第3の実施形態を模式的に示す図である。
【図6】第4の実施形態における金型成形の工程を示す図である。
【図7】第5の実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 混練機
11 ローラ型プレス機
11' 押出し機
12 破砕機
13 押出し機
13’ フィーダ
14 ローラ型プレス機
15 ローラ型プレス機
16 金型
30、30’、30'' 繊維強化素材
31、31'' 繊維強化樹脂成形品
32 合成樹脂フィルム
33 製品の素材
34 製品
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、繊維強化プラスチックFRPは一般に、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を使用することが多い。エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂を使用する場合もあるが、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP、Fiber Reinforced Thermo Plastics)もあるが極めて稀である。そして、その成型方法としては、型に繊維骨材を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法のほか、あらかじめ骨材と樹脂を混合したシート状のものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維とマトリクス(接着剤)を予め馴染ませてある部材(プリプレグなど)を大型の窯(オートクレーブ)で「焼き固める」方法などがある。
【0003】
安価・軽量で耐久性がよいことから、小型船舶の船体や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器のほか、航空・宇宙などの先端技術で大きな地位を占めている。しかし、異種材料が混合した状態で成型されてしまっていることから、リサイクルがほとんど不可能な事が欠点である。
【0004】
そこで、近年、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)の代替として、天然繊維強化樹脂(NFRP)が注目されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。ガラス繊維が入ると焼却処分が困難であり、埋立て処理費も1トン当り2〜3万円もかかることから、環境対応として天然繊維で強化された樹脂のニーズが高まっており、天然繊維の中でもヘンプ(Hemp)は、成長性が早く、農薬や化学肥料がほとんどいらず、冷帯、温帯、熱帯と幅広い気候条件で栽培でき、品質の高い繊維が採れるのが特徴となっているが、その配合量はほぼ全ての射出成形・押出成形機での成形が行われている現状では繊維強化樹脂(商品名:リファイン)中の繊維分は高々30%である。
【0005】
例えば、人工皮革として使用する場合、素材のほとんどがシート状であるため、射出成形および押出成形では繊維の配向が一方向になりやすく、特に繊維配向方向に直交する方向の引張強度に欠ける欠点があり、多くの場合は製品形状が立体形状に制限されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007ー138361
【特許文献2】特開2006ー63271
【特許文献3】特開2006ー56163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、人工皮革のような薄いシート状に成形しても四方の引っ張り強度に優れるものを提供すべく、鋭意研究の結果、従来の射出成形、押出成形によらず、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を使用し、一旦固化させた繊維強化材料を、粉砕または破砕し、これを成形材料として用いると、30%以上、好ましくは50%以上の繊維分を配合することができ、しかもこれを成形すると、繊維の配向がランダムでしかも重畳し、極めて理想的な繊維強化樹脂製品が製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向を一定方向に並べず所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化させ、シート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法にある。
【0009】
本発明によれば、30重量%以上、好ましくは50〜85重量%の繊維分を配合しても射出成形や押出成形を利用しないので、繊維強化樹脂製品を成形することができる。
【0010】
上記繊維材料は30重量%以上、好ましくは50〜85重量%の繊維分を配合できるので、ガラス等の不燃性強化繊維を選択しなくても十分な強度を持たせることができる。しかも繊維材料は繊維製品屑等の可燃性繊維から選ばれることにより、FRP製品を焼却処分可能とし、環境にやさしいものとすることができる。また、バインダー樹脂が熱可塑性であるため、リサイクルが容易である。
【0011】
上記繊維材料が天然繊維から選ばれる場合は、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いると、土中に投棄しても環境を破壊することがない。
【0012】
本発明の方法で製造されるシートの製品は30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を含み、可燃性繊維がランダムな方向に配向し、しかも重畳して引っ張り強度に優れる一方、表面に樹脂のみからなる層を形成しているので、人工皮革に適する。
【0013】
人工皮革に使用するときは熱可塑性樹脂にゼラチンを配合すると、吸湿性を有するものとなるので、天然皮革の風合いをさらに増強させることができる。
【0014】
さらに、水和金属化合物、難燃性又は不燃性の助剤、例えばリン酸エステルやアンチモン化合物を添加混練すると、難燃性を付与することもできる。
【0015】
また、バインダー樹脂は例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、その他の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、バインダー樹脂には加熱又は加圧によって発泡する樹脂ビーズなどを繊維強化素材の強度を低下させない程度の量だけ含ませてもよい。この場合には繊維強化樹脂成形品を構成するバインダー樹脂に部分的に発泡が起こり、繊維強化樹脂成形品を軽量化することができる。また、バインダー樹脂には生分解性プラスチックを用いることもできる。生分解性プラスチックにはポリ乳酸系の生分解性プラスチック、脂肪族系ポリエステル系の生分解性プラスチック、加熱によって軟化溶融し得るその他の公知の生分解性プラスチックを用いることができる。
【0016】
繊維強化素材の原料、例えば各種繊維はバインダー樹脂と混練するが、混練機で混練し、又は1軸又は2軸の押出機で攪拌しながら押し出し、あるいは混練機で混練した後、1軸又は2軸の押出機に移してさらに攪拌することにより、原料とバインダー樹脂とを混練することができる。混練物を強加圧する必要がある。そこで、混練物は例えば1面を開放した成形型に混練物を注入し、開放された1方向から加圧プレートによって強加圧するようにすればよく、型締め力以上の加圧力が加えられる点で通常の型成形と区別される。
【0017】
また、混練物は混練機又は押出機から押し出し(混練機から押出し機に移して押出し機から押し出してもよい)、ローラで強加圧することもでき、又縦ローラ及び横ローラで縦横から加圧するようにしてもよい(縦ローラに代え、横ローラの両側に型部を設け、横ローラの強加圧力でもって混練物の両側の型部に押し付けて横方向からの強加圧を得るようにしてもよい)。
【0018】
成形型及び加圧プレートは水冷することによって混練物を強加圧状態のままで冷却することができる。しかし、ローラ加圧の場合には成形型及び加圧プレートによる場合と同様の方法を採用できない。そこで、ローラ加圧の場合には強加圧した後に冷却を行う方法を採用すれば同様の結果が得られる。
【0019】
本発明は繊維強化素材を一旦、粉砕又は破砕し、これを並べて加熱し加圧してシート状又は製品形状の繊維強化樹脂成形品を製造することにある。これによって、射出成形または押出成形により成形できない繊維高充填強化樹脂であっても加熱加圧成形が可能となる。
【0020】
本発明では使用済みの繊維強化素材をリサイクルすることができる。回収した繊維強化素材を適当な大きさ、例えば一辺が5mm〜20mmの大きさに破砕し、適当な熱源によって加熱してバインダー樹脂を軟化又は溶融させ、必要に応じてバインダー樹脂を添加する。
【0021】
本発明では、表面樹脂層を形成する場合、本発明の繊維強化樹脂成形品の表面に軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねることにより形成してもよく、合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層することにより形成することもできる。本発明の繊維強化樹脂成形品の表面樹脂層は繊維強化樹脂成形品の外表面の全部に形成してもよく、外表面の一部、例えばシート状繊維強化樹脂成形品の上面又は下面だけに形成してもよい。また、表面樹脂層を形成して所定の製品形状に加圧成形することができるが、繊維強化樹脂成形品の表面に合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層し、あるいは軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねる際に、所定の製品形状に成形することもできる。この繊維強化樹脂成形品の成形には金型やローラなどを用い、絞り成形、曲げ成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形などを採用することができる。
【0022】
合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートと本発明の繊維強化樹脂成形品とは接着剤によって接着するようにしてもよく、バインダー樹脂と表面樹脂層の合成樹脂材料との親和性によって相互に結合するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料に合成繊維を用いた例である。本例の繊維強化樹脂成形品を製造する場合、例えば繊維製品屑、カーペット屑を破砕機によって破砕し、多量の繊維と少量の繊維粉の混ざった材料を準備する。必要に応じて繊維材に対し難燃性等の物性改善を施す。また、例えば廃プラスチックに由来するバインダー樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンを破砕機によって適当な大きさのチップに破砕する。なお、これらは1種でもよく、2種が混ざったものでもよい。また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックをバインダー樹脂として用いることもできる。
【0024】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、破砕したバインダー樹脂のチップを混練機10内に投入し、攪拌しながら溶融させる。バインダー樹脂のチップの投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。バインダー樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生する場合には加熱ヒータによる加熱温度はバインダー樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0025】
バインダー樹脂が十分に溶融すると、準備した繊維と繊維粉を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、溶融したバインダー樹脂が繊維及び繊維粉の表面を確実にコーティングするように混練する。繊維及び繊維粉は一度に大量に投入すると、溶融樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機10への投入前に、繊維及び繊維粉を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。この場合には含有水分がある程度蒸発するので、混練機10での混練時間を短くできる。
【0026】
また、バインダー樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、バインダー樹脂の温度や繊維の乾燥状態によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0027】
また、混練の際、溶融樹脂の例えば100°C〜300°Cの高熱によって繊維及び繊維粉が加熱され、繊維及び繊維粉に含まれていた含有水分が蒸発し、混練機10の開口から放散されるので、繊維及び繊維粉の含有水分が大幅に減少する。なお、混練機10が密閉形の場合には一定の時間間隔をあけて間欠的に開放し、水蒸気を放散させるようにする。
【0028】
繊維及び繊維粉と溶融したバインダー樹脂とが十分に混練されると、混練物をローラ型プレス機11に供給し、混練物を所定の強加圧力で挟んで送り、強加圧状態を維持してバインダー樹脂を硬化させる。ローラ型プレス機11は上側及び下側のローラ列にベルトを無端状にかけわたして構成されている。また、終端側のローラは水冷しておき、混練物を強加圧状態のままで冷却するようにするのがよい。なお、水冷に代え、エアーを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
【0029】
また、バインダー樹脂が生分解性プラスチックの場合には樹脂を加熱して軟化すると、増粘してローラなどに粘着してしまうが、上述のように繊維を添加し混練すると、粘着性が低下し、ローラによる加工が可能となる。
【0030】
混練物の送り速度はローラ列を出たときに混練物が十分に固まっている速度とする。また、上下のローラ列による加圧力は19.6×105Pa(20kgf/cm2)の面圧を加えるようになっているが、面圧は19.6×105Pa(20kgf/cm2)以上で58.8×105Pa(60kgf/cm2)程度までの範囲から、繊維強化材の用途や材料等に応じて適宜設定すればよく、又必要に応じてそれよりも大きな面圧を加えることもできる。
【0031】
こうして混練物が十分に硬化すると、複数の繊維とバインダー樹脂とが相互に強く結合された繊維強化素材30が得られる。ローラ型プレス機11における加圧力を小さくし、あるいは送り速度を速くして、繊維とバインダー樹脂との結合強度が十分ではあ
るが繊維強化木材のそれに達しない程度である半繊維強化木材を繊維強化素材30として得るようにしてもよい。
【0032】
得られた繊維強化素材30を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材30を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0033】
そして、繊維強化素材30の破砕片を加熱装置、例えば2軸(又は1軸)の押出し機(他の公知の加熱装置を用いてもよい)13に投入し、繊維強化素材30の破砕片をスクリューの間で押しつけ合うとともに、押出し機13のシリンダ内面に押しつけ、摩擦熱によって軟化させる一方、ローラ型プレス機14を加熱し、軟化した繊維強化素材30の破砕片をローラ型プレス機14に押し出して並べ、ローラ型プレス機14で加圧してシート状の繊維強化樹脂成形品31を製造する。
【0034】
このシート状の繊維強化樹脂成形品31は製品の厚みから表面樹脂層の厚みを差し引いた厚みにプレスされるが、繊維とバインダー樹脂とが既に高い強度で結合されたものを原料としているので、高い寸法精度が得られる加圧力でもってプレスすることができる。
【0035】
次に、得られた繊維強化樹脂成形品31に樹脂製、例えばポリプロピレンやポリエチレン製のフィルム(シート又はプレートでもよい)32を積層させながらローラ型プレス機15に送り込み、加熱して繊維強化樹脂成形品31の表面にフィルム32を結合させて表面樹脂層を形成する。同じ操作を繰り返して繊維強化樹脂成形品31の上面、下面及び側面に表面樹脂層を形成してもよい。
【0036】
こうして製品の素材33が得られると、素材33を例えば金型16内にセットし、加熱加圧して所定の立体形状に加工すると、製品34が得られる。この製品34は図2A断面図に示されるように繊維強化素材34Aの表面を樹脂層34Bで被覆した構造をなし、表面から見ると、全体が樹脂だけで製造されているように見えることとなる。そして、図2Bの平面図に示すように、樹脂層34B内では繊維がランダムな方向に配向し、重畳することになる。
【0037】
図3は第2の実施形態を示し、図において図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機11に代え、1軸又は2軸の押出機11’を用い、あまり高くない加圧力で繊維強化素材30’を製造し、これを破砕工程12で破砕するようにしている。これは後の工程で破砕片を加熱し加圧して繊維強化樹脂成形品31を製造するので、繊維強化素材30’の製造工程において繊維とバインダー樹脂とは必ずしも強固に結合させる必要はなく、繊維の表面側の微小腔の一部にバインダー樹脂を侵入させた半繊維強化材であってもよいからである。
【0038】
なお、混練機10は必ずしも用いる必要はなく、図4に示されるように、繊維とバインダー樹脂を押出機11’に投入して混練することもできる。
【0039】
また、本例では繊維強化素材30’の破砕片を押出し機13ではなく、フィーダ13’によって破砕片のままローラ型プレス機14に供給し、平面上に並べて加熱加圧し、シート状の繊維強化樹脂成形品31を製造するようにしている。
【0040】
図5は第3の実施形態を示し、図において図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機15によって製品の素材33を製造する際に、押出し機17によって軟化又は溶融した樹脂をシート状の繊維強化樹脂成形品31上に押し出し、表面樹脂層を形成するようにしている。
【0041】
図6は第4の実施形態を示し、図において図1ないし図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では製品の素材33をプレスするローラ型プレス機15に代え、金型16を用い、下型16Aと上型16Bの間に繊維強化樹脂成形品31と樹脂製フィルム32とを積層した状態でセットし、これを加熱加圧することによって繊維強化樹脂成形品31と樹脂製フィルム32を結合して繊維強化樹脂成形品31の表面に樹脂層を形成するとともに、同時に所定の製品形状に成型するようにしている。
【0042】
なお、第4の実施形態では下型16Aの上に基材31と樹脂製フィルム32を積層してセットするようにしたが、繊維強化素材30又は30’の破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、上型16Bで加圧して製品形状の繊維強化樹脂成形品を製造した後、樹脂製フィルム32を重ねて上型16Bで加圧して表面樹脂層を形成するようにしてもよい。また、繊維強化素材30又は30’の破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、その上に樹脂製フィルム32を重ねて加熱するとともに上型16Bで加圧して製品形状の繊維強化樹脂成形品と表面樹脂層とを形成することもできる。
【0043】
また、繊維強化素材30又は30’を製造するローラ型プレス機11に代え、金型を用いて強加圧してもよく、又多段ローラを通過させて強加圧と冷却とを繰り返してバインダー樹脂を硬化させて繊維強化素材30又は30’を製造するようにしてもよい。
【0044】
また、上記の例では繊維強化素材30又は30’を製造し、これを破砕して繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたが、廃棄された繊維強化木材や繊維強化樹脂成形品を回収して繊維強化木材を取り出し、これを原料として繊維強化樹脂成形品を製造することもできる。
【0045】
図7は第5の実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料に綿製品の端切れを用いた例である。本例の繊維強化樹脂成形品を製造する場合、端切れを3乃至10mm角の平均寸法に裁断して用いる。他方、バインダー樹脂としてポリ乳酸系の生分解性プラスチックの適当なサイズ、例えば150μm〜250μmの粉状のものを準備する。
【0046】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の軟化温度、例えば100°C〜150°Cまで上昇させておき、バインダー樹脂を混練機10内に投入し、攪拌しながら軟化させる。バインダー樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。
【0047】
バインダー樹脂が十分に軟化すると、準備した天然繊維素材を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、軟化したバインダー樹脂と天然繊維素材とを十分に混練する。バインダー樹脂を長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。
【0048】
繊維分とバインダー樹脂とが十分に混練されると、混練機10から混練物を取り出すと、繊維強化素材30''が得られる。この繊維強化素材30''を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材30''を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0049】
そして、繊維強化素材30''の破砕片をフィーダ13に投入し、繊維強化素材30''の破砕片をローラ型プレス機14上に並べ、ローラ型プレス機14で適切な温度、例えば160°C程度に加熱して破砕片のバインダー樹脂を軟化させるとともに加圧してシート状の繊維強化樹脂成形品31''を製造する。
【0050】
この得られた繊維強化樹脂成形品31''は繊維分に含浸させた難燃剤、樹脂分に配分した難燃剤によって難燃性又は不燃性が付与することができ、難燃性又は不燃性を有する自動車用内装材や建築用内装材に用いることができる。
【0051】
本例の方法によって繊維分70重量%、ポリ乳酸系の生分解性プラスチック30重量%の繊維強化樹脂成形品を製造したところ、表面が極めて平滑な繊維強化樹脂プレートが得られ、しかも厚みは1.5mm以上任意に設定することができた。この繊維強化樹脂シートは硬度及び表面平滑性から人工皮革のようであった。
【0052】
また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックに代え、エチレン酢酸ビニル(EVA)をバインダー樹脂として用い、繊維分80重量%及びEVA20重量%からなる表面が極めて平滑な繊維強化樹脂シートが得られ、しかも厚みも任意に設定することができた。
【0053】
なお、天然繊維を用いた繊維強化樹脂成形品の製造は図7に示される方法に限定されず、第1ないし第4の実施形態に示される方法を繊維強化素材の製造時における強加圧の工程を除いて同様に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。
【図2】上記実施形態において得られた繊維強化樹脂成形品の断面及び平面を示す図である。
【図3】第2の実施形態を模式的に示す図である。
【図4】第2の実施形態の変形例を示す図である。
【図5】第3の実施形態を模式的に示す図である。
【図6】第4の実施形態における金型成形の工程を示す図である。
【図7】第5の実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 混練機
11 ローラ型プレス機
11' 押出し機
12 破砕機
13 押出し機
13’ フィーダ
14 ローラ型プレス機
15 ローラ型プレス機
16 金型
30、30’、30'' 繊維強化素材
31、31'' 繊維強化樹脂成形品
32 合成樹脂フィルム
33 製品の素材
34 製品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向を一定方向に並べず所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化させ、シート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
上記繊維原料が繊維製品屑等の可燃性繊維から選ばれる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
上記繊維原料が天然繊維から選ばれ、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を含み、可燃性繊維がランダムな方向に配向し、しかも重畳して引っ張り強度に優れる一方、表面に樹脂のみからなる層を形成している繊維強化樹脂シートからなる人工皮革。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がゼラチンを含み、吸湿性を有する請求項4記載の人工皮革。
【請求項1】
30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向を一定方向に並べず所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化させ、シート状又は所定の立体形状の繊維強化樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
上記繊維原料が繊維製品屑等の可燃性繊維から選ばれる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
上記繊維原料が天然繊維から選ばれ、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
30〜85重量%の可燃性繊維原料に対し70〜15重量%の熱可塑性樹脂を含み、可燃性繊維がランダムな方向に配向し、しかも重畳して引っ張り強度に優れる一方、表面に樹脂のみからなる層を形成している繊維強化樹脂シートからなる人工皮革。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がゼラチンを含み、吸湿性を有する請求項4記載の人工皮革。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−29066(P2009−29066A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197173(P2007−197173)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】
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