説明

可視光透過性電磁波吸収フィルム及びそれを用いた可視光透過性電磁波吸収体

【課題】電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な可視光透過性電磁波吸収フィルム及びそれを用いた可視光透過性電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム10aと、その少なくとも一面に互いに絶縁した状態で多数配置した実質的に矩形状又は正方形状の可視光透過性金属薄膜11aとを有し、金属薄膜11aに多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が少なくとも一方向に不規則に形成されており、かつ金属薄膜11aの少なくとも一方の辺方向における電気抵抗が377±250Ωである可視光透過性電磁波吸収フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な可視光透過性電磁波吸収フィルム及びそれを用いた可視光透過性電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電子機器や通信機器;ICタグ、非接触ICカード等を用いるRFID(Radio Frequency Identification)システム;無線LANシステム等における電磁波ノイズの漏洩及び進入の防止や情報の漏洩防止の目的でシールド材が使用されているが、建築物の窓、透明パーティション等に用いるシールド材にはシールド性のみならず可視光透過性も要求される。
【0003】
そこで特開平9-148782号(特許文献1)は、プラスチックフィルムの両面にアルミニウム蒸着膜を形成し、一方のアルミニウム蒸着膜をエッチングして多数の幅100μm以下の線状パターンを非導通状態で形成するとともに、他方のアルミニウム蒸着膜をエッチングして各目の径が500μm以下の網目状パターンを形成してなる透明な電磁波吸収シ−ルド材を提案している。線状パターンは複数の異なる方向に配列されている。これは、電磁波吸収能の異方性を低減するためであると考えられる。しかし具体的に例示されている線パターン及び網目パターンは規則的であり、規則的なパターンでは種々の周波数を有する電磁波ノイズを十分に吸収することができない。その上、このような微細なパターンをエッチングで形成するのは高コストであり、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-148782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な可視光透過性電磁波吸収フィルム及びそれを用いた可視光透過性電磁波吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、プラスチックフィルムに形成した可視光透過性を有する金属薄膜に多数の平行で断続的な線状痕を不規則に形成すると、種々の周波数を有する電磁波ノイズを十分に吸収することができる可視光透過性電磁波吸収フィルムが得られることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に互いに絶縁した状態で多数配置した実質的に矩形状又は正方形状の可視光透過性金属薄膜とを有し、前記金属薄膜に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されており、かつ前記金属薄膜の少なくとも一方の辺方向における電気抵抗が377±250Ωであることを特徴とする。前記金属薄膜はアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなるのが好ましい。
【0008】
本発明の第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた、多数の透光用開口部を有する可視光透過性金属薄膜とを有し、前記金属薄膜に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする。前記金属薄膜はアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなるのが好ましい。
【0009】
本発明の第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、(1) プラスチックフィルムと、(2) 前記プラスチックフィルムの少なくとも一面に設けた、多数の開口部を有する可視光透過性金属薄膜と、(3) 前記プラスチックフィルムの少なくとも一面において、前記金属薄膜の各開口部の中に位置し、かつ絶縁された状態となるように配置した実質的に矩形状又は正方形状の可視光透過性金属薄膜とを有し、前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜の少なくとも一方に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されており、前記矩形状又は正方形状の金属薄膜の少なくとも一方の辺方向における電気抵抗が377±250Ωであることを特徴とする。前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜は、それぞれ独立にアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなるのが好ましい。
【0010】
第一〜第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有するのが好ましい。
【0011】
本発明の第一の可視光透過性電磁波吸収体は、複数枚の上記可視光透過性電磁波吸収フィルムを間に空間を設けて又は設けないで積層してなることを特徴とする。この可視光透過性電磁波吸収体は、少なくとも一枚の第一の可視光透過性電磁波吸収フィルム(a)と、少なくとも一枚の第二の可視光透過性電磁波吸収フィルム(b)とからなるのが好ましい。第一の電磁波吸収フィルム(a)の金属薄膜は磁性金属からなり、かつ第二の電磁波吸収フィルム(b)の金属薄膜は非磁性金属からなるのがより好ましい。前記磁性金属がニッケルであり、前記非磁性金属がアルミニウムであるのが好ましい。
【0012】
本発明の第二の可視光透過性電磁波吸収体は、(1) 上記第一〜第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種と、(2) (i) 前記金属薄膜に前記線状痕を形成していない以外第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、(ii) 前記金属薄膜に線状痕を形成していない以外第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第二の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、並びに(iii) 前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜に線状痕を形成していない以外第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第三の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種とを、間に空間を設けて又は設けないで積層してなることを特徴とする。
【0013】
第二の可視光透過性電磁波吸収体は、少なくとも一枚の第二の可視光透過性電磁波吸収フィルム(b)と、少なくとも一枚の前記第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム(c)とからなるのが好ましい。第二の可視光透過性電磁波吸収フィルム(b)の金属薄膜は非磁性金属からなり、かつ第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム(c)の金属薄膜は磁性金属からなるのがより好ましい。前記磁性金属がニッケルであり、前記非磁性金属がアルミニウムであるのが好ましい。
【0014】
第一及び第二の可視光透過性電磁波吸体において、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、可視光透過性を有する金属薄膜に多数の平行で断続的な線状痕が不規則に形成されているので、種々の周波数を有する電磁波ノイズの吸収能に優れている。従って、可視光透過性電磁波吸収フィルムを、建築物の窓、透明パーティション等に配置すると、可視光を遮断せずに、高周波数で作動する電子機器や通信機器;RFIDシステム、無線LANシステム等の通信システムに対して、電磁波ノイズや情報の漏洩を防止したり、電磁波ノイズの進入を防止したりすることができる。複数の可視光透過性電磁波吸収フィルムを積層してなる本発明の第一及び第二の可視光透過性電磁波吸収体は、各電磁波吸収フィルムの電磁波ノイズの吸収能を加算したよりはるかに高い吸収能(相乗効果)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1(a)】本発明の一実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す平面図である。
【図1(b)】図1(a)のA-A断面図である。
【図1(c)】図1(a)のA部分を示す拡大平面図である。
【図1(d)】図1(c)のB-B端面図である。
【図1(e)】図1(d)のB'部分を示す拡大端面図である。
【図2】本発明の別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図3(a)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図3(b)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図3(c)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図3(d)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図4(a)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図4(b)】図4(a)のC-C端面図である。
【図5】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図6(a)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す平面図である。
【図6(b)】図6(a)のD-D断面図である。
【図7】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図8(a)】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す平面図である。
【図8(b)】図8(a)のE-E断面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施例による可視光透過性電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図10(a)】複合フィルムに線状痕を形成する装置の一例を示す斜視図である。
【図10(b)】図10(a)の線状痕形成装置を示す平面図である。
【図10(c)】図10(b)のF-F断面図である。
【図10(d)】プラスチックフィルムの進行方向に対して傾斜した線状痕が形成される原理を説明するための部分拡大平面図である。
【図10(e)】図10(a)の線状痕形成装置において、プラスチックフィルムに対するパターンロール及び押えロールの傾斜角度を示す部分平面図である。
【図11】複合フィルムに線状痕を形成する装置の別の例を概略的に示す部分断面図である。
【図12】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図13】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図14】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図15】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図16】シート抵抗を測定するために、電磁波吸収フィルムの試験片上に電極を配置した状態を示す平面図である。
【図17】反射減衰量の測定に使用した装置の構成を示す概略図である。
【図18】実施例1〜3の電磁波吸収フィルムにおける周波数と反射減衰量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1] 可視光透過性電磁波吸収フィルム
(1) 第一の可視光透過性電磁波吸収フィルム
図1(a)〜図1(e)は、第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、プラスチックフィルム10b上に可視光透過性金属薄膜11aが設けられた実質的に正方形状の導電複合フィルム片1aが、互いに絶縁された状態で、プラスチックフィルム10aの一面に多数配置されており、各導電複合フィルム片1aの金属薄膜11aの全面に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が直交するように形成されている。なお説明のために、図1(a)では、線状痕12の長さ、幅及び間隔を実際より誇張している。プラスチックフィルム10aと、導電複合フィルム片1aのプラスチックフィルム10bとの間に透明接着層14が設けられている。プラスチックフィルム10a及び10bは融着されていてもよい。導電複合フィルム片1aの金属薄膜11a側がプラスチックフィルム10aに接着されていてもよい。導電複合フィルム片1aの配列及び各導電複合フィルム片1aの向きは図示の例に限定されず、例えばランダムであってもよい。
【0018】
図2は第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムの別の例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、導電複合フィルム片1aの代わりに、プラスチックフィルム10aの一面に、多数の実質的に正方形状の可視光透過性金属薄膜11aが直接設けられており、透明接着層14を有さない以外図1に示すものと同じである。
【0019】
線状痕12を有する正方形状金属薄膜11aは、少なくとも一方、好ましくは両方の辺方向X,Y(図1(a)参照)において、自由空間の特性インピーダンス(377Ω)に近い377±250Ωの電気抵抗を有するように形成される。そのため第一の電磁波吸収フィルムは、優れた電磁波吸収能を有する。この電気抵抗は377±200Ωが好ましい。ただし金属薄膜11aは正方形状に限定されず、少なくとも一方の辺方向において377±250Ωの電気抵抗を有する限り、矩形状でもよい。金属薄膜11aの電気抵抗は、金属薄膜11aの材料、厚さ、線状痕12の幅、間隔及び長さ等を選択することにより調整することができる。
【0020】
電気抵抗は直流二端子法で測定する。正方形状の金属薄膜11aの辺方向X,Yにおける電気抵抗RX(Ω),RY(Ω)は、各々辺方向X,Yにおけるシート抵抗RsX(Ω/□),RsY(Ω/□)と等しい。矩形状の金属薄膜11aの電気抵抗RX(Ω),RY(Ω)は、各々式:RX=RsX×LX/LY[ただしLX,LYはそれぞれ金属薄膜11aの辺方向X,Yにおける長さを表す]、及び式:RY=RsY×LY/LXで表される。
【0021】
(a) プラスチックフィルム
プラスチックフィルム10a及び10bを形成する樹脂は、絶縁性とともに十分な強度、可撓性及び加工性を有する限り特に制限されず、例えばポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアリーレンサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。プラスチックフィルム10a及び10bの厚さは各々10〜100μm程度で良い。
【0022】
(b) 可視光透過性金属薄膜
可視光透過性金属薄膜11aを形成する金属は導電性を有する限り特に限定されないが、耐食性及びコストの観点からアルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、銀及びこれらの合金が好ましく、特にアルミニウム、ニッケル及びこれらの合金が好ましい。金属薄膜11aの厚さは10〜100 nmが好ましい。この厚さが10 nm未満だと、膜の均一性が悪く、電磁波吸収能が低い。一方100 nm超だと、可視光透過性が悪い。ニッケル膜の場合、その厚さは20〜70 nmがより好ましい。アルミニウム膜の場合、その厚さは30〜100 nmがより好ましい。可視光透過性金属薄膜11aは蒸着膜であるのが好ましい。優れた電磁波吸収能を得るために、金属薄膜11aの合計面積率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0023】
(c) 線状痕
顕微鏡写真を図式化した図1(c)及び図1(d)から明らかなように、金属薄膜11aに多数の実質的に平行な線状痕12が直交するように形成されている。なお説明のために、図1(d)では、一方向の線状痕12について、その配向方向に対して直角に切った切り口のみを示し、線状痕12の深さを実際より誇張している。線状痕12の長さ、幅及び間隔は不規則であり、非常に細い線状痕から非常に太い線状痕まで、種々の間隔で不規則に配列している。図1(d)及び図1(e)に示すように、線状痕12には、金属薄膜11aを貫通して非導通部121を形成しているものと、貫通していないが比較的深く設けられて高抵抗部122を形成しているものとがある。図1(e)に示すように、線状高抵抗部122の底部は、金属薄膜11の厚さT1の少なくとも約50%に相当する深さT2に達しているのが好ましく、約70%に相当する深さT3に達しているのがより好ましい。この例では線状非導通部121及び線状高抵抗部122の両方が形成されているが、これらのうちの一方のみが形成されていてもよい。すなわち、線状非導通部121及び/又は線状高抵抗部122により隔てられた不定形導体が不規則に接続していると見ることができる。図1(c)は不定形導体の接続部の一例(G)を示す。このような不定形導体の不規則な接続により、種々の周波数の電磁波ノイズを効率良く吸収することができる。
【0024】
後述するように線状痕12は、プラスチックフィルム上の金属薄膜を、高硬度微粒子をランダムに有するパターンロールで摺接することにより形成される。従って、図1(c)〜図1(e)に示すように線状痕12は不規則に分布しているだけでなく、線状痕12の形成の際に金属薄膜は一部塑性変形し、線状痕12はテーパ状の断面を有するだけでなく、その両側が盛り上がっているので、線状痕12の幅及び間隔は厚さ方向の位置により異なる。客観的な比較を可能にするために、線状痕12の幅Wは元の表面Sと交差する位置で求め、隣接する線状痕12の間隔Iは元の表面Sと交差する位置で求める。
【0025】
図1(e)に示すように、比較的浅い線状痕12’もあるが、その幅W’は幅Wより著しく小さい。また稀に並外れて幅広い線状痕が形成されることがある。金属薄膜11aの断面観察の結果、このように著しく狭い線状痕12’や並外れて幅広い線状痕は線状痕の全数の10%未満であることが分った。従って、線状痕の90%以上について幅Wの範囲を求めれば良い。その結果、線状痕12の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅Wを有するのが好ましいことが分った。0.1μm未満又は1,000μm超の幅の線状痕12は、電磁波ノイズの吸収にほとんど寄与しない。線状痕12の90%以上の幅Wは0.1〜100μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。また線状痕12の90%以上の間隔Iも0.1〜1,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜100μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。
【0026】
線状痕12の平均幅Wav及び平均間隔Iavは、それぞれ0.1〜1,000μmの上記範囲内の幅及び間隔を平均した値である。線状痕12の平均幅Wavは1〜100μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。線状痕12の平均間隔Iavは1〜100μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。平均幅Wav及び平均間隔Iavがそれぞれ1μm未満又は10μm超であると、十分な電磁波ノイズの吸収能が得られない。
【0027】
線状痕12の長さLは、摺接条件(主としてパターンロール及びフィルムの相対的な周速、及びフィルムのパターンロールへの巻回角度)により決まるので、摺接条件を変えない限り大部分がほぼ同じである(ほぼ平均長さに等しい)。線状痕12の平均長さLavは特に限定的でなく、実用的には1〜100 mm程度で良い。
【0028】
図3(a)〜図3(d)は線状痕12のパターンの別の例をそれぞれ示す。線状痕12の形成は、通常長尺の複合フィルム(少なくとも一面に金属薄膜を形成したプラスチックフィルム)に対して行うが、パターンロールの数や軸線方向を適宜設定することにより、図3(a)〜図3(d)に示すように、配向の方向及び数が異なる種々のパターンの線状痕12が得られる。特に図1(c)及び図3(a)〜図3(c)に示すように、複数方向に線状痕12を形成すると、電磁波吸収能に異方性が実質的にない電磁波吸収フィルムが得られる。
【0029】
(d) 微細穴
図4(a)及び図4(b)は第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムのさらに別の例を示す。この例では、金属薄膜11aに線状痕12の他に、多数の微細穴13がランダムに設けられている。図示の例では微細穴13は金属薄膜11aを貫通しているが、微細穴13は必ずしも金属薄膜11aを貫通していなくてもよい。微細穴13は、線状痕12の場合と同様に表面に高硬度微粒子を有するパターンロールを金属薄膜に押圧することにより形成される。貫通穴を形成するためには、高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜の厚さの約2倍以上ある必要があり、実用的には高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜の厚さより十分に大きい。
【0030】
微細穴13の開口径Dは元の表面Sと交差する位置で求める。金属薄膜11aの厚さによるが、一般に微細穴13の開口径Dは90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜500μmの範囲内にあるのがより好ましい。また微細穴13の平均開口径Davは0.5〜100μmの範囲内にあるのが好ましく、1〜50μmの範囲内にあるのがより好ましい。平均開口径Davの上限は20μmがさらに好ましく、10μmが最も好ましい。微細穴13の平均密度は500個/cm2以上であるのが好ましく、1×104〜3×105個/cm2であるのがより好ましく、1×104〜2×105個/cm2であるのが最も好ましい。
【0031】
(e) 保護層
図5に示すように、電磁波吸収フィルムの可視光透過性金属薄膜11aを有する面を覆うようにプラスチック保護層10cを形成しても良い。プラスチック保護層10cは、電磁波吸収フィルムの可視光透過性金属薄膜11aを有する面に、プラスチックフィルムを熱ラミネート法等で接着することにより形成できる。プラスチック保護層10cの厚さは10〜100μmが好ましい。
【0032】
(f) エンボス
電磁波ノイズの吸収能をさらに向上するために、可視光透過性電磁波吸収フィルムに円錐状、球面状等の多数のエンボスを施しても良い。エンボスの直径及び深さはそれぞれ100μm以上が好ましく、150〜250μmがより好ましい。エンボスの面積率は20〜60%が好ましい。
【0033】
(2) 第二の可視光透過性電磁波吸収フィルム
図6(a)及び図6(b)は、本発明の第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルム10d上に可視光透過性金属薄膜11bが設けられ、かつ多数の透光用開口部15を有する格子状の導電複合フィルム1bが、導電複合フィルム片1aの代わりに、プラスチックフィルム10aの一面に設けられており、金属薄膜11bの全面に線状痕12が形成されている以外、図1(a)〜図1(e)に示す電磁波吸収フィルムと同じである。
【0034】
図7は第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムの別の例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、導電複合フィルム1bの代わりに、プラスチックフィルム10aの一面に、格子状の可視光透過性金属薄膜11bが直接設けられており、透明接着層14を有さない以外、図6(a)及び図6(b)に示す電磁波吸収フィルムと同じである。
【0035】
優れた可視光透過性と電磁波吸収能とを両立するために、可視光透過性金属薄膜11bの面積率は40〜80%とするのが好ましい。可視光透過性金属薄膜11bは格子状に限定されず、多数の透光用開口部15を有する限り任意の形状とすることができる。線状痕12は第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じでよい。第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムも、微細穴13、プラスチック保護層10c及びエンボスを有してもよい。これらは第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムについて説明したものと同じで良い。
【0036】
金属薄膜11bのシート抵抗(金属薄膜11bが正方形状となるように電磁波吸収フィルムを任意のサイズで切り取ったサンプルの両方の辺方向における電気抵抗。直流二端子法で測定。)は377±250Ω/□が好ましく、377±200Ω/□がより好ましい。
【0037】
(3) 第三の可視光透過性電磁波吸収フィルム
図8(a)及び図8(b)は、本発明の第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムは、多数の導電複合フィルム片1aと、導電複合フィルム1bとを有し、各導電複合フィルム片1aが導電複合フィルム1bの各開口部15の中に位置し、かつ絶縁した状態で配置されている以外、図1(a)〜図1(e)に示す電磁波吸収フィルムと同じである。図示の例では、導電複合フィルム片1a及び導電複合フィルム1b(以下両者を纏めて「導電複合フィルム1a,1b」とよぶ)の両方に線状痕12が形成されているが、線状痕12は、導電複合フィルム1a,1bの一方のみに形成されていてもよい。
【0038】
図9は第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムの別の例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、導電複合フィルム1a,1bの代わりに、プラスチックフィルム10aの一面に、正方形状又は矩形状の可視光透過性金属薄膜11a、及び開口部15を有する可視光透過性金属薄膜11bが各々直接設けられており、透明接着層14を有さない以外図8(a)及び図8(b)に示すものと同じである。
【0039】
電磁波ノイズを効率良く吸収するため、金属薄膜11a,11bの一方を上記磁性金属で形成し、他方を上記非磁性金属で形成してもよい。好ましい組合せはニッケルとアルミニウムである。優れた電磁波吸収能を得るために、金属薄膜11a,11bの合計面積率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。線状痕12は第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じでよい。
【0040】
第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムも、微細穴13、プラスチック保護層10c及びエンボスを有してもよい。これらは第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムについて説明したものと同じで良い。
【0041】
[2] 可視光透過性電磁波吸収フィルムの製造方法
(1) 間接法
図1(a)〜図1(e)に示すような、導電複合フィルム片1aを有する第一の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、可視光透過性金属薄膜11Aとプラスチックフィルム10Bとからなる導電複合フィルム1Aを形成し、導電複合フィルム1Aに線状痕を形成し、線状痕付き導電複合フィルム1A'をカットして正方形状又は矩形状の導電複合フィルム片1aを形成し、導電複合フィルム片1aをプラスチックフィルム10aの少なくとも一面に配置し、積層する間接法により製造することができる。
【0042】
図6(a)及び図6(b)に示すような、導電複合フィルム1bを有する第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、可視光透過性金属薄膜11Bとプラスチックフィルム10Dとからなる導電複合フィルム1Bを形成し、導電複合フィルム1Bに線状痕を形成し、線状痕付き導電複合フィルム1B'をカットして開口部15を有する導電複合フィルム1bを形成し、導電複合フィルム1bをプラスチックフィルム10aの少なくとも一面に配置し、積層する間接法により製造することができる。
【0043】
図8(a)及び図8(b)に示すような、導電複合フィルム片1a及び導電複合フィルム1bを有する第三の可視光透過性電磁波吸収フィルムは、上記の第一及び第二の可視光透過性電磁波吸収フィルムの製造方法を組合せることにより、製造することができる。
【0044】
(a) 導電複合フィルムの形成
(i) 金属薄膜の形成
金属の蒸着は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法等の化学気相蒸着法等により行うことができる。
【0045】
(ii) 線状痕の形成
(ii-1) 線状痕形成装置
図1(c)及び図3(a)〜図3(c)に示すような複数方向に配向する線状痕12は、プラスチックフィルム10B(10D)に形成した金属薄膜11A(11B)に、多数の高硬度の微粒子を表面に有し、軸線方向が異なる複数のパターンロールを摺接させる装置を用いて形成することができる。
【0046】
図10(a)〜図10(e)は、図1(c)及び図3(c)に示すような直交する線状痕を形成する装置の例を示す。この線状痕形成装置は上流側から順に、(1) プラスチックフィルム10B(10D)の一面に金属薄膜11A(11B)が形成された複合フィルム1A(1B)を巻き出すリール21と、(2) 複数のガイドロール22と、(3) 多数の高硬度の微粒子を表面に有し、複合フィルム1A(1B)の幅方向と異なる方向で金属薄膜11A(11B)の側に配置された第一のパターンロール2aと、(4) 第一のパターンロール2aの上流側で、金属薄膜11A(11B)の反対側に配置された第一の押えロール3aと、(5) 多数の高硬度の微粒子を表面に有し、複合フィルム1A(1B)の幅方向に関して第一のパターンロール2aと逆方向に、かつ金属薄膜11A(11B)の側に配置された第二のパターンロール2bと、(6) 第二のパターンロール2bの下流側で、金属薄膜11A(11B)の反対側に配置された第二の押えロール3bと、(7) 第一及び第二のパターンロール2a,2bの間で、金属薄膜11A(11B)の側に配置された電気抵抗測定手段4aと、(8) 第二のパターンロール2bの下流側で、金属薄膜11A(11B)の側に配置された電気抵抗測定手段4bと、(9) 複数のガイドロール23と、(10) 線状痕を形成した複合フィルム1A'(1B')を巻き取るリール24とを有する。各パターンロール2a,2bは、微小な撓みを防止するためにバックアップロール5a,5bで支持されている。バックアップロール5a,5bは、パターンロール2a,2bに悪影響を与えないようにゴムロールが好ましい。
【0047】
図10(c)に示すように、複合フィルム1A(1B)の金属薄膜11A(11B)が押圧された状態で各パターンロール2a,2bと摺接するように、各押えロール3a,3bの縦方向位置は複合フィルム1A(1B)と各パターンロール2a,2bとの摺接位置より低い。この条件を満たしたまま各押えロール3a,3bの縦方向位置を調整することにより、金属薄膜11A(11B)の各パターンロール2a,2bへの押圧力を調整するとともに、中心角θ1により表される摺接距離を調整することができる。
【0048】
図10(d)は線状痕12aが複合フィルム1A(1B)の進行方向に対して斜めに形成される原理を示す。複合フィルム1A(1B)の進行方向に対してパターンロール2aは傾斜しているので、パターンロール2a上の硬質微粒子の移動方向(回転方向)aと複合フィルム1A(1B)の進行方向bとは異なる。そこで三角形Xで示すように、任意の時点においてパターンロール2a上の点Aにおける硬質微粒子が複合フィルム1A(1B)の金属薄膜と接触して痕Bが形成されたとすると、所定の時間後に硬質微粒子は点A’まで移動し、痕Bは点B’まで移動する。点Aから点A’まで硬質微粒子が移動する間、痕は連続的に形成されるので、点B’から点A’まで延在する線状痕12aが形成されたことになる。
【0049】
第一及び第二のパターンロール2a,2bで形成される第一及び第二の線状痕群12A,12Bの方向及びそれらの交差角は、各パターンロール2a,2bの複合フィルム1A(1B)に対する角度、及び/又は複合フィルム1A(1B)の走行速度に対する各パターンロール2a,2bの周速度を調整することにより調整することができる。例えば、複合フィルム1A(1B)の走行速度bに対するパターンロール2aの周速度aを増大させると、図10(d)の三角形Yで示すように線状痕12aを線分C’D’のように複合フィルム1A(1B)の進行方向に対して45°にすることができる。同様に、複合フィルム1A(1B)の幅方向に対するパターンロール2aの傾斜角θ2を変えると、パターンロール2aの周速度aを変えることができる。これはパターンロール2bについても同様である。従って、両パターンロール2a,2bの調整により、線状痕12a,12bの方向を図1(c)及び図3(c)に例示するように変更することができる。
【0050】
各パターンロール2a,2bは複合フィルム1A(1B)に対して傾斜しているので、各パターンロール2a,2bとの摺接により複合フィルム1A(1B)は幅方向の力を受け、蛇行するおそれがある。複合フィルム1A(1B)の蛇行を防止するために、各パターンロール2a,2bに対する各押えロール3a,3bの縦方向位置及び/又は角度を調整するのが好ましい。例えば、パターンロール2aの軸線と押えロール3aの軸線との交差角θ3を適宜調節すると、幅方向の力をキャンセルするように押圧力の幅方向分布が得られ、もって蛇行を防止することができる。またパターンロール2aと押えロール3aとの間隔の調整も蛇行の防止に寄与する。
【0051】
複合フィルム1A(1B)の蛇行及び破断を防止するために、第一及び第二のパターンロール2a,2bの回転方向は複合フィルム1A(1B)の進行方向と同じであるのが好ましい。
【0052】
図10(b)に示すように、各電気抵抗測定手段(ロール)4a,4bは絶縁部40を介して両端部に一対の電極41,41を有し、電極41,41間において線状痕12a,12bを有する金属薄膜11A(11B)の電気抵抗を測定する。電気抵抗測定ロール4a,4bで測定した電気抵抗値を目標の電気抵抗値と比較し、それらの差に応じて運転条件を調整する。調整される運転条件は、複合フィルム1A(1B)の走行速度、パターンロール2a,2bの回転速度及び傾斜角θ2、押えロール3a,3bの縦方向位置、パターンロール2a,2bからの距離、及びパターンロール2a,2bからの傾斜角θ3等である。
【0053】
図11に示すようにパターンロール2a,2bの間に第三の押えロール3cを設けると、複合フィルム1A(1B)の金属薄膜11A(11B)がパターンロール2a,2bに押圧される力が増大するだけでなく、中心角θ1により表される金属薄膜11A(11B)の摺接距離が増大し、線状痕12a,12bの深さ及び幅が大きくなる。その上、複合フィルム1A(1B)の蛇行の防止にも寄与する。
【0054】
図12は、図3(a)に示すような三方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bの下流側に複合フィルム1A(1B)の幅方向に配置された第三のパターンロール2cを設けた以外、図10(a)〜図10(e)に示す装置と同じである。第三のパターンロール2cの回転方向は複合フィルム1A(1B)の進行方向と同じでも逆でも良い。幅方向に配置された第三のパターンロール2cは複合フィルム1A(1B)の進行方向に延在する線状痕12cを形成する。第三の押えロール30bは第三のパターンロール2cの上流側でも下流側でも良い。勿論、第三のパターンロール2cの下流側に電気抵抗測定ロール4cを設けても良い。
【0055】
図13は、図3(b)に示すような四方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bと第三のパターンロール2cとの間に第四のパターンロール2dを設け、第四のパターンロール2dの上流側に第四の押えロール3dを設けた以外、図12に示す装置と同じである。第四のパターンロール2dの回転速度を遅くすることにより、図10(d)における三角形Zで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)を複合フィルム1A(1B)の幅方向にすることができる。
【0056】
図14は、図3(c)に示すような直交する線状痕を形成する装置の別の例を示す。この線状痕形成装置は、基本的に第二のパターンロール32bが複合フィルム1A(1B)の幅方向に配置されている点で図10(a)〜図10(e)に示す装置と異なる。従って、図10(a)〜図10(e)に示す装置と異なる部分のみ以下説明する。第二のパターンロール32bの回転方向は複合フィルム1A(1B)の進行方向と同じでも逆でも良い。また第二の押えロール33bは第二のパターンロール32cの上流側でも下流側でも良い。この装置は、図10(d)における三角形Zで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)を複合フィルム1A(1B)の幅方向にし、図3(c)に示す線状痕を形成するのに適している。
【0057】
図15は、図3(d)に示すような一方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この線状痕形成装置は、複合フィルム1A(1B)の幅方向に配置されたパターンロール42のみを有する以外、図14に示す装置と同じである。パターンロール42は複合フィルム1A(1B)の進行方向に延在する線状痕12b'を形成する。押えロール43はパターンロール42の上流側でも下流側でも良い。パターンロール42の上流側及び下流側に電気抵抗測定ロール44a及び44bを設けても良い。
【0058】
(ii-2) 運転条件
線状痕の傾斜角及び交差角だけでなく、それらの深さ、幅、長さ及び間隔を決める運転条件としては、複合フィルムの走行速度、パターンロールの回転速度及び傾斜角θ2、複合フィルムの張力(押えロールの縦方向位置、パターンロールからの距離、及びパターンロールからの傾斜角θ3等により決まる。)等である。複合フィルムの走行速度は5〜200 m/分が好ましく、パターンロールの回転速度(周速)は10〜2,000 m/分が好ましい。傾斜角θ2は20°〜60°が好ましく、特に約45°が好ましい。複合フィルムの張力は0.05〜5kgf/cm幅が好ましい。
【0059】
(ii-3) パターンロール
線状痕形成装置に使用するパターンロールは、特開2002-59487号に記載されているダイヤモンドロールが好ましい。線状痕の幅は微粒子の粒径により決まるので、ダイヤモンド微粒子の90%以上は1〜1,000μmの範囲内の粒径を有するのが好ましく、10〜200μmの範囲内の粒径がより好ましい。ダイヤモンド微粒子はロール面に50%以上の面積率で付着しているのが好ましい。
【0060】
(iii) 微細穴の形成
特許第2063411号等に記載の方法により金属薄膜11A(11B)に多数の微細穴13を形成することができる。例えば、鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の微粒子が表面に付着した第一ロール(上記線状痕形成用ロールと同じで良い)と、第一ロールに押圧された平滑な第二ロールとの間隙に、金属薄膜11A(11B)を第一ロールの側にして、複合フィルム1A(1B)を通過させる。微細穴13の平均開口径、平均面積率及び深さは、第一ロールの微粒子の粒径及び面積率並びに押圧力等により調整できる。
【0061】
(b) 線状痕付き導電複合フィルムのカット
線状痕付き導電複合フィルム1A'(1B')を、打ち抜き等によりカットし、実質的に正方形状又は矩形状の導電複合フィルム片1a、及び/又は開口部15を有する導電複合フィルム1bを形成する。
【0062】
(c) 積層
透明接着層14を用いるか、融着することにより、導電複合フィルム片1a及び/又は導電複合フィルム1bを、プラスチックフィルム10aに積層する。
【0063】
(d) 保護層の形成
プラスチックフィルムを熱ラミネート法等で導電複合フィルム片1a及び/又は導電複合フィルム1bに接着することにより、プラスチック保護層10cを形成することができる。
【0064】
(e) エンボス加工
上記積層工程を行い、必要に応じて保護層10cを設けた後、円錐状、球面状等の多数の突起を有するロール等を用いてエンボス加工する。
【0065】
(2) 直接法
図2、7及び9に示すような、可視光透過性金属薄膜11a及び/又は11bがプラスチックフィルム10a上に直接設けられた可視光透過性電磁波吸収フィルムは、(a) プラスチックフィルム10aの少なくとも一面に、蒸着法により一様に金属薄膜11A(11B)を形成し、意図する金属薄膜11aの形状(正方形状もしくは矩形状)、及び/又は意図する金属薄膜11bの形状(例えば格子状)となるようにフォトレジストを塗布し、露光後エッチングした後、線状痕12を形成するか、(b) プラスチックフィルム10aにおいて金属薄膜11aを形成しない部分、及び/又は金属薄膜11bを形成しない部分(透光用開口部15を形成する部分)に、あらかじめフォトレジストを塗布し、露光後、蒸着法により金属薄膜11a及び/又は11bを形成し、フォトレジスト層を除去した後、線状痕12を形成する直接法により、形成できる。線状痕、微細穴、保護層の形成及びエンボス加工はいずれも上記と同じでよい。
【0066】
[3] 可視光透過性電磁波吸収フィルムの特性
本発明の可視光透過性を有する第一〜第三の電磁波吸収フィルムは、多数の断続的で不規則な線状痕により、種々の周波数を有する電磁波ノイズを吸収することができる。特に複数方向に(好ましくは直交するように)線状痕12が形成された電磁波吸収フィルムは、電磁波ノイズの吸収能に異方性が少なく、優れた電磁波ノイズの吸収能を有する。
【0067】
[4] 可視光透過性電磁波吸収体
(1) 構造
(a) 第一の可視光透過性電磁波吸収体
本発明の第一の可視光透過性電磁波吸収体は、複数枚の可視光透過性電磁波吸収フィルムを間に空間を設けて又は設けないで積層してなる。空間を設けないで積層する場合、必要に応じて接着してもよい。複数枚の可視光透過性電磁波吸収フィルムの組合せには、複数枚の第一の電磁波吸収フィルムからなる場合と、複数枚の第二の電磁波吸収フィルムからなる場合と、複数枚の第三の電磁波吸収フィルムからなる場合と、少なくとも1枚の第一の電磁波吸収フィルムと少なくとも1枚の第二の電磁波吸収フィルムの組合せからなる場合と、少なくとも1枚の第一の電磁波吸収フィルムと少なくとも1枚の第三の電磁波吸収フィルムの組合せからなる場合と、少なくとも1枚の第二の電磁波吸収フィルムと少なくとも1枚の第三の電磁波吸収フィルムの組合せからなる場合と、少なくとも1枚の第一の電磁波吸収フィルムと少なくとも1枚の第二の電磁波吸収フィルムと少なくとも1枚の第三の電磁波吸収フィルムの組合せからなる場合等がある。
【0068】
第一の電磁波吸収体は、少なくとも1枚の第一の電磁波吸収フィルムと、少なくとも1枚の第二の電磁波吸収フィルムとの組合せからなるのが好ましい。電磁波ノイズを効率良く吸収するため、第一の電磁波吸収フィルムの金属薄膜11a及び第二の電磁波吸収フィルムの金属薄膜11bの一方を磁性金属で形成し、他方を非磁性金属で形成するのが好ましく、金属薄膜11aを磁性金属で形成し、かつ金属薄膜11bを非磁性金属で形成するのがより好ましい。磁性金属及び非磁性金属は各々上記と同じでよい。好ましい組合せはニッケルとアルミニウムである。
【0069】
複数枚の電磁波吸収フィルムを平行に配置した電磁波吸収体の場合、優れた電磁波ノイズの吸収能を得るために、電磁波吸収フィルムの間隔は0.2〜10 mmが好ましく、1〜8mmがより好ましい。
【0070】
(b) 第二の可視光透過性電磁波吸収体
本発明の第二の可視光透過性電磁波吸収体は、(i) 第一〜第三の電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種と、(ii) 金属薄膜11aに線状痕を形成していない以外第一の電磁波吸収フィルムと同じである第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、金属薄膜1bに線状痕を形成していない以外第二の電磁波吸収フィルムと同じである第二の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、並びに金属薄膜11a及び11bに線状痕を形成していない以外第三の電磁波吸収フィルムと同じである第三の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種とを、間に空間を設けて又は設けないで積層してなる。第一〜第三の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムの金属薄膜のシート抵抗は特に制限されない。
【0071】
第二の電磁波吸収体は、少なくとも1枚の第二の電磁波吸収フィルムと、少なくとも1枚の第一の線状痕非形成電磁波吸収フィルムとの組合せからなるのが好ましい。電磁波ノイズを効率良く吸収するため、第二の電磁波吸収フィルムの金属薄膜11bを非磁性金属で形成し、かつ第一の線状痕非形成電磁波吸収フィルムの金属薄膜11aを磁性金属で形成するのがより好ましい。磁性金属及び非磁性金属は各々上記と同じでよい。好ましい組合せはニッケルとアルミニウムである。複数枚の電磁波吸収フィルムを平行に配置した場合の電磁波吸収フィルムの間隔は上記と同じでよい。
【0072】
(2) 特性
可視光透過性電磁波吸収フィルムは僅かながら電磁波ノイズを反射及び透過するが、反射及び透過した電磁波ノイズは別の可視光透過性電磁波吸収フィルム又は線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムにより吸収されるので、本発明の第一及び第二の可視光透過性磁波吸収体は、極めて高い電磁波ノイズの吸収能を有する。
【0073】
[5] 用途
本発明の可視光透過性を有する第一〜第三の電磁波吸収フィルム並びに第一及び第二の電磁波吸収体は、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電子機器や通信機器;RFIDシステム、無線LANシステム等の通信システムにおける電磁波ノイズの漏洩及び進入の防止や、情報の漏洩防止等に適しており、電子・通信機器の筺体、建築物の壁及び窓、透明パーティション等に配置することができる。特に建築物の窓、透明パーティション等に配置すると、可視光を遮断せずに電磁波吸収能を得ることができる。
【0074】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0075】
実施例1
(1) 複合フィルムの作製
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのアルミニウム層を形成し、複合フィルムを作製した。
【0076】
(2) 線状痕の形成
図13に示す装置を用い、粒径の分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a〜2dに、アルミニウム層をパターンロール2a〜2dの側にして複合フィルム1Bを摺接させ、運転条件(複合フィルムの走行速度、パターンロール2a〜2dの回転速度及び傾斜角θ2、フィルムの巻回角度θ1及び複合フィルムの張力)を適宜設定することにより、図3(b)に示す四方向に配向する線状痕を形成した。得られたフィルムの線状痕の幅は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均幅は2μmであり、線状痕の間隔は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は5μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。
【0077】
(3) 表面抵抗の測定
表面抵抗を直流二端子法で測定した。図16に示すように、線状痕を形成した複合フィルムを15 cm×15 cmにカットした試験片の両端部に、4個ずつ銅電極(長さ3cm×幅1cm)6を配置し、対向する四対の電極6,6間の抵抗値を測定し、平均することにより、表面抵抗を求めた結果、377Ω/□であった。
【0078】
(4) 電磁波吸収フィルムの作製
線状痕を形成した複合フィルムを打ち抜き加工し、正方形状の開口部(一辺5cm)を多数有する導電複合フィルムを形成した。導電複合フィルムの両面に、二軸延伸PETフィルム(厚さ16μm)を融着させて、プラスチック保護層を有する以外図6(a)及び図6(b)に示すものと同じ第二の電磁波吸収フィルムを作製した。この電磁波吸収フィルムの金属薄膜の面積率は50%であった。
【0079】
(5) 電磁波ノイズの吸収能の評価
電磁波吸収フィルムの電磁波ノイズの吸収能を以下の方法により評価した。図17に示すように、発泡スチロール製サンプル台7と、送信アンテナ81と、受信アンテナ82と、アンテナ81,82を接続したネットワークアナライザ8とを有する装置を用い、ブランクとして、サンプル台7に載置したアルミニウム板(縦60 cm×横60 cm×厚さ5mm)に、3m離れたアンテナ81から、7度の入射角度θで1〜6GHzの電磁波を0.25 GHz間隔で照射し、アンテナ82で反射波を受信し、ネットワークアナライザ8により反射電力を測定した。サンプル台7に上記電磁波吸収フィルムの試験片S(縦60 cm×横60 cm)を載置し、ブランクと同様にして反射電力を測定した。ブランクの反射電力が入射電力と等しいと仮定し、反射係数RC(電磁波吸収フィルムについて測定した反射電力と入射電力との比)を求め、式:R(dB)=−20log(1/RC)に従い、反射減衰量R(dB)を求めた。結果を図18に示す。
【0080】
実施例2
厚さ16μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ30 nmのニッケル層を形成し、複合フィルムを作製した。複合フィルムを打ち抜き加工し、正方形状の複合フィルム片(一辺12.5 cm。図1(a)〜図1(e)に示す複合フィルム片1a。)を多数形成した。複合フィルム片のシート抵抗は、両方の辺方向とも15Ω/□であった。各複合フィルム片が互いに絶縁した状態で配置されるように、各複合フィルム片を二枚の二軸延伸PETフィルム(厚さ16μm)で挟み、融着させて、線状痕を有さない以外図1(a)及び図5に示すものと同じである第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム(金属薄膜の合計面積率90%)を作製した。
【0081】
上記第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムの試験片(縦60 cm×横60 cm)と、実施例1と同じ第二の電磁波吸収フィルムの試験片(縦60 cm×横60 cm)との積層体について、電磁波ノイズの吸収能を評価した。結果を図18に示す。
【0082】
実施例3
厚さ16μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのニッケル層を形成し、複合フィルムを作製した。この複合フィルム(シート抵抗:10Ω/□)を用いた以外実施例2と同様にして第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム(金属薄膜の合計面積率90%)を作製した。
【0083】
図12に示す装置を用い、粒径の分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a〜2cに、アルミニウム層をパターンロール2a〜2cの側にして複合フィルムを摺接させ、運転条件を適宜設定することにより、図3(a)に示す三方向に配向する線状痕を形成した。得られたフィルムの線状痕の幅は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均幅は2μmであり、線状痕の間隔は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は5μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。この線状痕を有する複合フィルムのシート抵抗は200Ω/□であった。この線状痕形成複合フィルムを用いた以外実施例1と同様にして、第二の電磁波吸収フィルム(金属薄膜の面積率70%)を作製した。
【0084】
上記第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムの試験片(縦60 cm×横60 cm)と、第二の電磁波吸収フィルムの試験片(縦60 cm×横60 cm)との積層体について、電磁波ノイズの吸収能を評価した。結果を図18に示す。
【0085】
図18から明らかなように、実施例1の電磁波吸収フィルム及び実施例2及び3の電磁波吸収体はいずれも、1〜6GHzの電磁波に対して5dB以上の吸収能を有していた。特に実施例2及び3の電磁波吸収体は、1〜6GHzの電磁波に対して10 dB以上の吸収能を有していた。また実施例1の電磁波吸収フィルムは、周波数3.75 GHzにおいて43 dBの最大吸収量を有し、実施例2の電磁波吸収体は、周波数3.75 GHzにおいて36dBの最大吸収量を有し、実施例3の電磁波吸収体は、周波数4.0 GHzにおいて28 dBの最大吸収量を有していた。
【0086】
本発明を添付図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更をしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1a,1b・・・カットした線状痕付きの導電複合フィルム
10a,10b,10c,10d・・・プラスチックフィルム
11a,11b・・・金属薄膜
12,12a,12a',12b,12b',12c,12’・・・線状痕
121・・・非導通部
122・・・高抵抗部
12A,12B・・・線状痕群
13・・・微細穴
14・・・透明接着層
15・・・透光用開口部
1A,1B・・・導電複合フィルム
1A',1B'・・・線状痕付きの導電複合フィルム
11A,11B・・・金属薄膜
10B,10D・・・プラスチックフィルム
2a,2b,2c,2d,32b,32c,33b,42・・・パターンロール
3a,3b,3c,3d,30b,43・・・押えロール
4a,4b,4c,4d,44a,44b・・・電気抵抗測定手段(ロール)
40・・・絶縁部
41・・・電極
5a,5b,35a・・・バックアップロール
21,24・・・リール
22,23・・・ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に互いに絶縁した状態で多数配置した実質的に矩形状又は正方形状の可視光透過性金属薄膜とを有する可視光透過性電磁波吸収フィルムであって、前記金属薄膜に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されており、かつ前記金属薄膜の少なくとも一方の辺方向における電気抵抗が377±250Ωであることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムにおいて、前記金属薄膜がアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項3】
プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた、多数の透光用開口部を有する可視光透過性金属薄膜とを有する可視光透過性電磁波吸収フィルムであって、前記金属薄膜に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムにおいて、前記金属薄膜がアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項5】
(1) プラスチックフィルムと、(2) 前記プラスチックフィルムの少なくとも一面に設けた、多数の開口部を有する可視光透過性金属薄膜と、(3) 前記プラスチックフィルムの少なくとも一面において、前記金属薄膜の各開口部の中に位置し、かつ絶縁された状態となるように配置した実質的に矩形状又は正方形状の可視光透過性金属薄膜とを有する可視光透過性電磁波吸収フィルムであって、前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜の少なくとも一方に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されており、前記矩形状又は正方形状の金属薄膜の少なくとも一方の辺方向における電気抵抗が377±250Ωであることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムにおいて、前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜が、それぞれ独立にアルミニウム、ニッケル又はこれらの合金からなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有することを特徴とする可視光透過性電磁波吸収フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複数枚の可視光透過性電磁波吸収フィルムを間に空間を設けて又は設けないで積層してなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。
【請求項9】
請求項8に記載の可視光透過性電磁波吸収体において、少なくとも一枚の請求項1に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルム(a)と、少なくとも一枚の請求項3に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルム(b)とからなり、前記電磁波吸収フィルム(a)の金属薄膜が磁性金属からなり、前記電磁波吸収フィルム(b)の金属薄膜が非磁性金属からなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。
【請求項10】
(1) 請求項1〜7のいずれかに記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種と、(2) (i) 前記金属薄膜に前記線状痕を形成していない以外請求項1又は2に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、(ii) 前記金属薄膜に線状痕を形成していない以外請求項3又は4に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第二の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム、並びに(iii) 前記開口部を有する金属薄膜及び前記矩形状又は正方形状の金属薄膜に線状痕を形成していない以外請求項5又は6に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルムと同じである第三の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルムからなる群から選ばれた少なくとも一種とを、間に空間を設けて又は設けないで積層してなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。
【請求項11】
請求項10に記載の可視光透過性電磁波吸収体において、少なくとも一枚の請求項3に記載の可視光透過性電磁波吸収フィルム(b)と、少なくとも一枚の前記第一の線状痕非形成可視光透過性電磁波吸収フィルム(c)とからなり、前記電磁波吸収フィルム(b)の金属薄膜が非磁性金属からなり、前記電磁波吸収フィルム(c)の金属薄膜が磁性金属からなることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。
【請求項12】
請求項9又は11に記載の可視光透過性電磁波吸収体において、前記磁性金属がニッケルであり、前記非磁性金属がアルミニウムであることを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれかに記載の可視光透過性電磁波吸収体において、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有することを特徴とする可視光透過性電磁波吸収体。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図10(d)】
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【図10(e)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−283154(P2010−283154A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135336(P2009−135336)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(391009408)
【Fターム(参考)】