説明

台数制御システム

【課題】 脱酸素装置などの出力装置の台数増加時における出力性能の悪化を抑制し、かつ均一化するとともに、省電力を実現することである。
【解決手段】 それぞれ通常運転において所定の出力をなし、互いに並列に接続される複数台の出力装置1,1,…と、この出力装置1,1,…からの出力を使用する負荷機器2,2,…と、この負荷機器2,2,…における要求量に基づいて、前記出力装置1,1,…の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段3とを備える台数制御システムであって、前記台数制御手段3は、前記通常運転対象外の複数台の前記出力装置1,1,…が、互いに運転期間をずらせて、運転と停止とを繰り返す間欠運転により待機運転を行うように制御するとともに、通常運転台数の増加時、複数の待機運転の前記出力装置1,1,…のうち直近に運転を行ったものを通常運転に切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数台の脱酸素装置を備え液体中の溶存酸素を低減する脱酸素システムなどの台数制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器への給水系統では、前記冷熱機器の接水部分が給水中の溶存酸素により腐食する。このため、前記冷熱機器が破損することを防止する目的で脱酸素装置が使用されている。また、この脱酸素装置は、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水系統において、給水配管内が給水中の溶存酸素により腐食し、赤水が発生することを防止する目的でも使用されている。さらに、前記脱酸素装置は、半導体製造工場の部品洗浄設備の供給系統において、超音波洗浄の効率を高める目的でも使用されている。
【0003】
前記脱酸素装置としては、一般に、膜式脱酸素装置,真空式脱酸素装置,窒素置換式脱酸素装置などが知られている。
【0004】
前記真空式脱酸素装置は、まず被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内を真空吸引することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である。
【0005】
こうした真空式脱気装置の複数台を互いに並列に接続して、脱酸素装置にて生成される処理液を使用する負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記脱酸素装置の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段とを備える脱酸素システムが特許文献1にて知られている。
【0006】
この脱酸素システムの開発過程において、この出願の発明者等は、脱酸素装置の運転台数を増加すべく停止中の脱酸素装置を運転開始(起動)する立上り時に、DO値(溶存酸素濃度)の高い処理液が負荷機器へ供給されてしまうという課題を見出した。
【0007】
この課題を解決するために、処理液の要求量からすると本来停止すべき脱酸素装置を停止せずに運転することが考えられる。そうすると、脱酸素装置に使用されているポンプなどの処理機器の使用電力が増加してしまう。
【0008】
【特許文献1】特開平11−5002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、脱酸素装置などの出力装置の台数増加時における出力性能の悪化を抑制し、かつ均一化するとともに、省電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、それぞれ通常運転において所定の出力をなし、互いに並列に接続される複数台の出力装置と、この出力装置からの出力を使用する負荷機器と、この負荷機器における要求量に基づいて、前記出力装置の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段とを備える台数制御システムであって、前記台数制御手段は、前記通常運転対象外の複数台の前記出力装置が、互いに運転期間をずらせて、間欠運転により待機運転を行うように制御するとともに、通常運転台数の増加時、複数の待機運転の前記出力装置のうち直近に運転を行ったものを通常運転に切り替えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、前記出力装置の台数増加時における出力瀬能の悪化を抑制し、かつ出力性能の均一化を実現できるとともに、省電力を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などの冷熱機器における腐食の抑制,ビル,マンションなどの給水配管における赤水発生の防止,あるいは半導体製造工場の部品洗浄設備における超音波洗浄の効率化などの目的で使用される脱酸素装置を複数台並列に接続した脱酸素システムにおいて好適に実施される。この脱酸素システムは、脱気システムと称することができる。
【0013】
この発明の実施形態は、それぞれ通常運転において所定の出力を行い、互いに並列に接続される複数台の出力装置と、この出力装置からの出力を使用する負荷機器と、この負荷機器における要求量に基づいて、前記出力装置の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記台数制御手段は、前記通常運転対象外の複数台の前記出力装置が、互いに運転期間をずらせて、運転と停止とを繰り返す間欠運転により待機運転を行うように制御するとともに、通常運転台数の増加時、複数の待機運転の前記出力装置のうち直近に運転を行ったものを通常運転に切り替えることを特徴とする台数制御システムである。
【0014】
この台数制御システムにおいては、前記負荷機器からの出力の要求量が増加すると、前記台数制御手段から通常運転対象とする出力装置の台数を増加し、前記要求量が減少すると通常運転対象の出力装置の台数を減少する。そして、前記台数制御手段は、通常運転対象とならない出力装置を待機運転とするが、この待機運転台数を複数台とする場合、互いに運転期間をずらせて、前記出力装置の出力を出すための電気的に駆動される処理機器の運転と停止とを繰り返す間欠運転により待機運転を行わせる。
【0015】
この待機運転により、前記出力機器の使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の出力性能を得るまでの時間を短縮することができ、台数増加時の出力性能の悪化を防止することができる。また、前記台数制御手段は、通常運転台数増加時に複数の待機運転の前記出力装置のうち直近に運転を行ったものを通常運転に切り替えるので、間欠運転における運転停止から台数増加時点までの間隔を均一化することにより、出力性能を均一化することができる。
【0016】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記出力装置は、好ましくは、真空式の脱酸素装置とする。しかしながら、通常運転の停止後、通常運転を再開(再起動)時において通常運転における所定の脱酸素性能などの出力性能を得るまでに所定の時間を要し、かつ後記の間欠運転の運転停止後時間の経過とともに徐々に脱酸素性能などの出力性能が低下する構成のものであれば、特に構成について限定されないものではない。具体的には、前記出力装置は、窒素置換式脱酸素装置,膜脱気式脱酸素装置や、脱酸素装置や、脱酸素装置以外の出力装置とすることができる。
【0017】
前記出力装置を真空式の脱酸素装置とする場合につき説明する。この脱酸素装置は、たとえば、特開平8−108005号公報に示されるように、被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向
かって散布する。そして、前記処理槽内を真空ポンプにより真空吸引することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である。前記被処理液の散布方向は、前記処理槽内の下部から上部へ向う方向とすることができる。
【0018】
この真空式脱酸素装置における処理機器とは、前記加圧ポンプ,前記真空ポンプおよび前記送水ポンプである。
【0019】
この真空式脱酸素装置の通常運転とは、前記加圧ポンプ,前記真空ポンプおよび前記送水ポンプを所定の能力で駆動することにより、所定の脱気性能を発揮させる運転である。
【0020】
また、待機運転とは、前記出力装置の使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮(零とする場合も含む。)すべく、前記出力機器を間欠的に駆動することを意味する。前記出力装置を前記真空式脱酸素装置とする場合は、前記加圧ポンプ,前記真空ポンプおよび前記送水ポンプの全てを間欠的に駆動する運転である。しかしながら、この待機運転には、前記加圧ポンプおよび前記送水ポンプを停止して前記真空ポンプのみを出力を落として連続的に駆動するか,または前記真空ポンプのみを間欠的に駆動する態様をも含む。要するに、真空式脱酸素装置の起動時の立上りに影響を与える最も重要な条件は、前記処理槽内の真空度であり、前記処理機器の使用電力を低減しつつ前記真空度をできるだけ低下しないように保持する運転が待機運転である。この待機運転は、前記負荷機器の負荷への追従性を高めるという意味で、追従運転と称することができる。
【0021】
前記間欠運転とは、前記処理機器の運転と停止とを交互に繰り返す運転を意味し、運転時間と停止時間とは、保持すべき真空度などの設定値を設定したうえで、この設定値が保持可能なように予め実験により定める。
【0022】
また、前記出力装置を前記窒素置換式脱酸素装置とした場合、前記窒素置換式脱酸素装置は、たとえば、特開2000−176436号公報に示されるように、被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内へ窒素ガスを供給し、被処理液に含まれる溶存酸素を窒素と置換して低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である。
【0023】
この窒素置換式脱酸素装置における処理機器とは、前記加圧ポンプおよび前記送水ポンプである。この窒素置換式脱酸素装置の通常運転とは、前記加圧ポンプおよび前記送水ポンプを所定の能力で駆動することにより、所定の脱気性能を発揮させる運転である。また、待機運転とは、窒素ガスの供給を間欠的に行う態様を含む。要するに、窒素置換式脱酸素装置の起動時の立上りに影響を与える最も重要な条件は、前記処理槽内の窒素ガス濃度であり、前記処理機器の使用電力を低減しつつ前記窒素ガス濃度度をできるだけ低下しないように保持する運転が待機運転である。
【0024】
さらに、前記出力機器を前記膜式脱酸素装置とした場合、前記膜式脱酸素装置は、酸素は透過するが液体は透過しない特性を有する中空糸状の高分子膜の多数本を束ねてハウジング内に収容し、これらの各高分子膜の両端部を樹脂剤で封止した構造の脱酸素モジュールを使用する。そして、前記各高分子膜の一側へ被処理液を供給し、前記各高分子膜の他側を真空ポンプにより減圧することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させる構成の装置である。
【0025】
この膜式脱酸素装置における処理機器とは、前記真空ポンプである。この膜式脱酸素装
置の通常運転とは、前記真空ポンプを所定の能力で駆動することにより、所定の脱気性能を発揮させる運転である。また、待機運転とは、間欠的に駆動する態様を含む。要するに、膜式脱酸素装置の起動時の立上りに影響を与える最も重要な条件は、前記処理槽内の真空度であり、前記処理機器の使用電力を低減しつつ前記真空度をできるだけ低下しないように保持する運転が待機運転である。
【0026】
前記負荷機器は、好ましくは、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器とするが、これに限定されるものではなく、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水設備や半導体製造工場の部品洗浄設備を含むものである。
【0027】
前記台数制御手段は、好ましくは、前記各出力装置に設けた制御器とは別個に設けた台数制御用の制御器とするが、別個に制御器を設けることなく、前記各出力装置の各制御器を相互通信可能に信号ラインまたはネットワークにて接続し、前記各出力装置の各制御器間の信号のやりとりで、台数制御を行うように構成することができる。
【0028】
この台数制御手段による台数制御は、予め記憶された処理手順により実行される。この処理手順は、前記負荷機器からの出力の要求量に応じて通常運転対象台数と待機運転台数とを設定し、この設定内容に基づき前記各出力装置に対して、通常運転指令と待機運転指令とを送るように構成されている。前記待機運転台数は、好ましくは、前記要求量の急変に対応すべく、可能な限り2台またはそれ以上とし、不可能な場合は、1台または0台とする。
【実施例1】
【0029】
以下、この発明の台数制御システムを脱酸素システムに適用した実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図であり、図2は、同実施例1の2台待機運転中のタイムチャートを示し、図3は、同実施例1の台数制御パターンを示す図である。
【0030】
この実施例1に係る脱酸素システムは、互いに並列に接続される4台の脱酸素装置1,1,…と、この各脱酸素装置1にて生成される処理水を使用する負荷機器としての16台の蒸気ボイラ2,2,…と、この蒸気ボイラ2,2,…からの処理水の要求量に基づいて、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転対象の台数と待機運転対処の台数とを制御する台数制御器としての第一制御器3とを主要部として備える。
【0031】
前記各脱酸素装置1は互いに並列に接続され、軟水器4にて処理された軟水を貯留する給水タンク5の底部と被処理水ライン(以下、ラインは、経路または流路と称することができる。)6,6,…によってそれぞれ接続されている。前記各蒸気ボイラ2は、互いに並列接続され、前記各脱酸素装置1とは、前記各脱酸素装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7,7,…と第二処理水ライン8と第三処理水ライン9,9,…とによって接続されている。
【0032】
また、前記第二処理水ライン8は、処理水戻りラインとしての第四処理水ライン10により、予備タンク11を介して前記給水タンク5と接続されている。さらに、前記各蒸気ボイラ2は、それぞれ第一蒸気ライン12,12,…と、蒸気ヘッダ13と第二蒸気ライン14とにより蒸気使用設備15と接続されている。前記蒸気使用設備15は、ドレン回収ライン(図示省略)により前記給水タンク5と接続するように構成することができる。
【0033】
前記各脱酸素装置1は、被処理水の脱気処理後の処理水を所定量貯留する処理槽16と、この処理槽16内へ被処理水をノズルにより噴霧して散布する散布手段17と、この散布手段17へ被処理水を加圧供給する第一ポンプ18と、前記処理槽16内の処理水を前
記第一処理水供給ライン7へ供給する第二ポンプ19と、この第二ポンプ19からの処理水の流れを切り替える三方切替弁20と、前記処理槽16内を減圧する減圧手段21とをそれぞれ備えている。
【0034】
前記各三方切替弁20は、処理水の流れを前記蒸気ボイラ2側(処理水供給側)と第一戻りライン22側(処理水戻り側)とに選択的に切り替える機能を有している。前記各第一戻りライン22は、共通の第二戻りライン23を介して前記給水タンク5と接続されている。
【0035】
前記減圧手段21は、一端が前記処理槽16の上部である気層部と接続され他端が大気開放の減圧ライン24と、この減圧ライン24に設ける逆止弁25および真空ポンプ26とを含んで構成されている。前記逆止弁25は、前記処理槽16方向への流れを阻止する。
【0036】
前記処理槽16は、密閉容器であって、上部空間が被処理水を散布する処理部として機能し、下部空間が処理水を貯留する貯留部として機能するように構成されている。前記貯留部には、水位検出センサ(図示省略)により所定量の処理水が貯留されるように構成されている。
【0037】
つぎに、この実施例1の制御構成について説明する。前記各脱酸素装置1は、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26および前記三方切替弁20を制御する個別制御器としての第二制御器27を備える。そして、前記第一制御器3からの指令に基づき、前記各第二制御器27によって、前記各脱酸素装置1を通常運転と待機運転とどちらの運転も行わない停止とに制御する。
【0038】
前記通常運転は、つぎのように行われる。前記三方切替弁20を前記処理水供給側へ切り替えて、前記処理槽16内に所定量の処理水が貯留されていない状態では、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を駆動して、脱酸素運転を行い、所定量の処理水が貯留されると、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を停止して、脱酸素運転を停止する。
【0039】
前記待機運転は、前記三方切替弁20を前記処理水戻り側へ切り替えて、図2に示すように、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を第一設定時間T1(たとえば10分間)だけ運転(駆動)し、その後第二設定時間T2(たとえば110分間)停止する運転である。この待機運転時の前記処理槽16の水位制御は、通常運転時と同様な制御とすることができる。
【0040】
前記各第二制御器27は、前記第一制御器3と信号ライン(符号省略)により接続されている。そして、前記第一制御器3は、前記蒸気ボイラ2,2,…からの処理水要求量に基づき、予め記憶した第一台数制御プログラムにより、前記脱酸素装置1,1,…の台数制御を行うように構成されている。前記第一制御器3には、前記第一台数制御プログラムによる台数制御運転と前記各脱酸素装置1を手動で制御する手動切替運転との切替を行ったり、前記各脱酸素装置1を切り離して、個別に運転または停止を行うための操作器28を備えている。
【0041】
また、前記各蒸気ボイラ2は、高燃焼と低燃焼と運転停止との3位置に制御する第三制御器29をそれぞれ備え、各第三制御器29は、ボイラの台数制御を行う第四制御器30と接続されている。そして、前記第四制御器30は、前記蒸気使用設備15からの蒸気要求量に基づき、予め記憶した第二台数制御プログラムにより、前記蒸気ボイラ2,2,…の台数制御を行うように構成されている。前記第二台数制御プログラムは周知のものとす
ることができ、たとえば、前記蒸気使用設備15の蒸気要求量を蒸気ヘッダ13の圧力により検出し、この検出圧力値に応じて前記蒸気ボイラ2,2,…の運転台数を設定するプログラムとすることができる。
【0042】
ここで、前記第一台数制御プログラムを図3に基づき説明する。図3は、各蒸発量が2.5t/hの前記蒸気ボイラ2を16台として総蒸発量を40t/hとした場合、100%負荷で処理能力が10t/hの前記脱酸素装置1を4台必要とし、40%負荷で2台の脱酸素装置1,1,…を必要とする例である。この第一台数制御プログラムは、図3に示すように、前記第四制御器29から前記蒸気ボイラ2,2,…の運転(燃焼)台数(低燃を1台,高燃を2台に換算)を検出(入力)して、この運転台数に応じて、前記脱酸素装置1,1,…の前記通常運転の台数と前記待機運転の台数とを設定する。
【0043】
具体的には、第一運転状態では、前記蒸気ボイラ2,2,…の燃焼台数1〜3台に対して、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転台数を1台とし、待機運転台数を2台とする。第二運転状態では、前記燃焼台数4〜7台に対して、前記通常運転台数を2台とし、前記待機運転台数を2台とする。第三運転状態では、前記燃焼台数8〜11台に対して、前記通常運転台数を3台とし、前記待機運転台数を1台とする。第四運転状態では、前記燃焼台数12〜16台に対して、前記通常運転台数を4台とし、前記待機運転台数を0台とする。
【0044】
そして、前記第一台数制御プログラムにおいては、つぎの装置のローテーション機能を含ませている。前記待機運転台数が2台の場合は、図2に示すように、第一待機脱酸素装置1と第二待機脱酸素装置1とは運転期間(または運転間隔,運転周期と称することができる。)を互いに時間T3だけずらせている。そして、前記脱酸素装置2,2,…の通常運転台数を増加させる,たとえば第一運転状態から第二運転状態とする場合、第一待機脱酸素装置1および第二待機脱酸素装置1のうち、直近で運転が行われた脱酸素装置1を待機運転から通常運転へ切り替えるように構成している。今、前記第一制御器3が通常運転台数増加を判断した時点をt1とすると、前記第二待機脱酸素装置1が通常運転へ移行するように制御される。
【0045】
また、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転台数を減少させる,たとえば第三運転状態から第二運転状態とする場合、通常運転状態にある3台の前記脱酸素装置1,1,…のうち、最も早く通常運転に入ったものを停止させる。この場合、停止対象台数が零のため停止できず待機運転としなければならない場合は、待機運転とする。
【0046】
さらに、前記第一台数制御プログラムにおいては、つぎの装置の異常判定および異常バックアップ機能を含ませている。前記第一制御器3は、前記第二処理水ライン8の溶存酸素濃度(DO値)を検出するセンサ31からの信号を入力して、その検出値が設定値以上となると、通常運転中の前記脱酸素装置1,1,…のいずれかが異常と判定して、前記脱酸素装置1,1,…の全数を通常運転状態とする。その後、通常運転状態にあった複数の脱酸素装置1,1,…を順次1台ずつ停止してゆく。そして、1台を停止したとき前記センサ31による検出値が正常値に戻れば、当該脱酸素装置1を異常と判定し、前記操作器28に異常表示を行い、通常運転対象,待機運転対象から外す。
【0047】
以下、この実施例1に係る前記脱酸素システムの動作について説明する。まず、原水は、前記軟水器4において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク5へ供給される。
【0048】
前記蒸気ボイラ2,2,…の稼働中において、前記第一制御器3へは、前記第四制御器30から負荷量検出信号,すなわち前記蒸気ボイラ2,2,…の燃焼台数信号が入力され
る。前記制御器3は、この燃焼台数に基づき、図3の制御パターンに基づいて、通常運転台数と待機運転台数とを設定し、この設定信号に基づき、前記各第二制御器27へ運転指令信号を送出する。
【0049】
今、図3の第一運転状態であるとすると、1台の前記脱酸素装置1が通常運転に、2台の前記脱酸素装置1,1が待機運転状態に制御される。通常運転の前記脱酸素装置1においては、前記第一ポンプ18の作動により、被処理水が前記給水タンク22から前記散布手段17へ供給される。また、前記真空ポンプ26の作動により、散布された水滴が減圧され、被処理水に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理水から除去された溶存酸素は、前記減圧ライン24を介して系外(大気)へ排気される。溶存酸素が低減された処理水は、前記処理槽16に貯留され、前記第二ポンプ19の作動により、前記三方切替弁20,前記第一処理水ライン7,前記第二処理水ライン8,前記第三処理水ライン9を介して前記各蒸気ボイラ2へ供給される。
【0050】
前記各蒸気ボイラ2へ供給された処理水は、加熱されることによって蒸気となるが、処理水が脱酸素処理されているため、前記各蒸気ボイラ2の水管部(図示省略)や管寄せ部(図示省略)などを形成している非不働態化金属体の溶存酸素による腐食が効果的に抑制される。前記各蒸気ボイラ2で生成された蒸気は、前記第一蒸気ライン12,前記蒸気ヘッダ13,前記第二蒸気ライン14を介して前記蒸気使用設備15へ供給される。
【0051】
この第一運転状態において、前記蒸気ボイラ2,2,…における処理水の使用量が減少すると、その減少分は、前記第四処理水ライン10,予備タンク11を介して前記給水タンク5へと循環して供給される。その結果、前記予備タンク11にDO値の低い処理水が貯留される。この貯留された処理水は、前記各蒸気ボイラ2の全ブロー(缶体内の缶水を全て排出する)後などに、多量の処理水が必要とされ、前記脱酸素装置1,1,…からの処理水の供給量が間に合わないときに、流出して前記各蒸気ボイラ2へ供給される。
【0052】
一方、待機運転状態の前記脱酸素装置1,1は、図2に示す如く間欠運転が行われる。すなわち、前記三方切替弁20が前記戻り側へ切り替えられ、処理機器である前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を第一設定時間T1だけ運転した後、第二設定時間T2停止し、再び前記第一設定時間T1の運転−前記第二設定時間T2の停止を順次繰り返す。そして、二つの前記脱酸素装置2,2は、図2に示すように、運転時期が第三設定時間T3だけずれて運転される。
【0053】
この待機運転においては、前記処理機器の間欠運転のため処理水のDO値が通常運転時のそれよりも高いが、その処理水は、前記三方切替弁20の流路切替作用により、前記各蒸気ボイラ2へ供給されることなく、前記給水タンク5へ戻される。その結果、前記給水タンク5内のDO値を若干下げる作用をなす。
【0054】
そして、前記処理機器の間欠運転により前記処理槽16内の真空度は、所定の値に保持される。運転終了直後が最も真空度が高く(圧力が低く)、その後停止時間の経過と共に真空度が低く(圧力が高く)なる。
【0055】
処理水の要求量が増加すると、通常運転の台数が図3に示すように、1台から2台へと増加し、前記第一運転状態から前記第二運転状態と制御される。通常運転とされる前記脱酸素装置1は、前記第一運転状態から前記第二運転状態への切替時点前の直近において運転が行われた装置である。こうすることにより、通常運転に切り替えられた際に、通常運転において得られる所定の脱酸素性能を平均して短時間(たとえば、2〜3分程度)で出すことができ、切替時の処理水のDO値の悪化を防止することができる。
【0056】
図3において、さらに処理水の要求量が増加すると、第二運転状態から第三運転状態へ,さらに第四運転状態へと制御が切り替えられる。前記第三運転状態において、前記第二運転状態と異なるのは、通常運転台数が2台から3台となり、待機運転台数が2台から1台となる点だけである。また、前記第四運転状態において、前記第三運転状態と異なるのは、通常運転台数が3台から4台となり、待機運転台数が1台から0台となる点だけである。
【0057】
逆に、処理水の要求量が減少すると、運転状態は前記第四運転状態−前記第三運転状態−前記第二運転状態−前記第一運転状態へと順次制御が切り替えられ、運転台数を減少させる台数制御が行われる。通常運転台数の減少は、通常運転を行っている前記脱酸素装置2が複数台の存在する場合には、最初に通常運転に入った装置を停止する。これにより、特定の前記脱酸素装置2が連続的に長時間使用することを避けることができ、全体として脱酸素システムの長寿命化に貢献する。
【0058】
この実施例1によれば、待機運転状態の前記脱酸素装置1を設けているので、通常運転台数を増加する際に、待機運転状態の前記脱酸素装置1を通常運転に切り替えることで、短時間で通常運転の所定の脱酸素性能を発揮させることができる。その結果、通常運転台数を増加させる際にDO値の高い処理水を前記各蒸気ボイラ2へ供給することを防止することができる。
【0059】
また、全ての前記各脱酸素装置1を通常運転するシステムと比較して、前記処理機器の使用電力を大幅に削減できる。ちなみに、前記脱酸素装置1の1台の消費電力を5kWとすると、4台を常に通常運転としていた従来の諸費電力は、20kWとなるのに対して、平均負荷40%で通常運転2台,待機運転2台となり、消費電力は、5kW×2+5kW×5/60=10.4kWとなり、(20−10.4)/20×100=48%の省エネを実現することができる。
【実施例2】
【0060】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではない。前記実施例1では、前記蒸気ボイラ2の燃焼台数を前記第四制御器30から得るように構成しているが、前記各蒸気ボイラ2から直接的に燃焼状態信号を得るように構成することができる。すなわち、図4に示すように、前記第四制御器30を省略して、前記各蒸気ボイラ2を相互に通信可能なネットワーク32にて接続し、このネットワーク32経由で、前記各蒸気ボイラ2の燃焼状態信号を入力して、燃焼台数を算出して、算出した燃焼台数に基づき前記脱酸素装置2の台数制御を行うように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【図2】同実施例1の待機運転を説明するタイムチャート図である。
【図3】同実施例1の台数制御のパターンを説明する図である。
【図4】この発明の実施例2に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 脱酸素装置(出力装置)
2 蒸気ボイラ(負荷機器)
3 第一制御器
5 給水タンク
18 第一ポンプ
19 第二ポンプ
20 三方切替弁
26 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ通常運転において所定の出力をなし、互いに並列に接続される複数台の出力装置と、
この出力装置からの出力を使用する負荷機器と、
この負荷機器における要求量に基づいて、前記出力装置の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段とを備える台数制御システムであって、
前記台数制御手段は、前記通常運転対象外の複数台の前記出力装置が、互いに運転期間をずらせて、間欠運転により待機運転を行うように制御するとともに、
通常運転台数の増加時、複数の待機運転の前記出力装置のうち直近に運転を行ったものを通常運転に切り替えることを特徴とする台数制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−313414(P2007−313414A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144940(P2006−144940)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】