説明

台秤の電池収納構造

【課題】電池交換が容易な台秤の電池収納構造を提供する。
【解決手段】台秤本体上方に支柱で支持された台秤用デジタル表示器20の本体ケース21内に背面側に開口する電池収納室24を設け該開口部の側壁26aを介して電池パック71を収納し、側壁26aにキャップ60を装着して室内を密閉する台秤の電池収納構造で、電池ホルダー40底面にバネ部材51と、電池ホルダー40の天井部にその先端がバネ付勢されて外側方に突出するフック42と、側壁26a所定位置に該フック係合用スリット28を設けた。フック42とスリット28を周方向に合わせ電池パック71を室内に挿入すると、フック42がスリット28に係合して電池パック71を電池収納室24内に抜け止めでき、一方、フック42を天井部に没入しフック42とスリット28の係合を解くと、電池パック71底面のバネ部材51の付勢力で電池パック71が電池収納室24から押し出され、電池交換が簡単に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台秤の電池収納構造に係り、特に、台秤本体から上方にのびる支柱によって支持されたデジタル表示器内に設けられた電池収納室に台秤用の電源である乾電池を収納する台秤の電池収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
台秤は、特許文献1に示すように、荷重検出機構を内蔵した上方に開口する計量台と、前記荷重検出機構の上部に連結された計量皿とからなる荷重測定部と、前記計量台に取付一体化されて上方に伸びる支柱と、前記支柱に下方から支持される表示器と、から構成されている。
【0003】
一般に魚市場や食品、薬品工場等で使用される台秤は、長期間使用に耐え、交流電源が供給されない場所で使う場合を考慮し、直流電源として複数個の乾電池を使う仕様が知られている。
【0004】
また、台秤本体内に直流電源を設けることは可能だが、電池の交換作業が簡単で、かつ湿気の影響を受けにくいことを考慮し、台秤本体上方の表示器体内に設ける構成が採用される傾向にある。
【0005】
例えば、図9に示すように、表示器1の本体ケース2の背面側に設けられた電池収納室3に、キャップ4の内側に乾電池5を収納一体化した電池パック6をネジ7止めすることで、本体ケース2と一体化する電池収納構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−031569(段落番号0005、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図9に示す構造において、電池パック6を電池収納室3から取り出すには、ネジ7を外すと電池パック6(キャップ4)が落下するため、片手でキャップ4を保持しながらもう一方の手でネジ7を外さなければならない。同様に、電池パック6を電池収納室3に装着する際も、電池パック6が落ちないようにキャップ4を保持しながらネジ7を止める必要があり、電池交換が面倒である。
【0008】
特に、デジタル表示器1は、作業をするユーザーが計測値を上方から見易いように表示面が上方を向くよう背面側に後傾させて使用されているため、上記保持を怠ると、キャップ4を開けた瞬間電池パック6が落下するおそれがある。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池交換が容易な台秤の電池収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に係る台秤の電池収納構造においては、台秤本体から上方に延びる支柱によって支持された台秤用デジタル表示器内に台秤用の電源である乾電池を収納一体化した台秤の電池収納構造において、前記デジタル表示器を構成する本体ケース内には、背面側に開口する電池収納室が設けられ、前記電池収納室には、前記背面側開口部を画成する側壁を介して、電池ホルダーに複数の乾電池を収納一体化した電池パックを出し入れでき、前記側壁にキャップが装着されて前記電池収納室が密閉される台秤の電池収納構造であって、前記電池ホルダーの底面には、前記電池収納室の底面との間で前記電池ホルダーの押し込み方向に反発するバネ部材を設け、前記電池ホルダーの天井部には、バネ付勢されてその先端が該ホルダーの天井部の外側方に突出し、その操作部が該ホルダーの天井面に露呈するフックを設け、一方、前記側壁所定位置には、前記フックが係合するフック係合部を設けるように構成した。
【0011】
(作用)電池パックを電池収納室に装着する際は、フックとフック係合部を周方向に位置合わせして、電池パックの底面に設けられているバネ部材の反発力に抗して電池パックを電池収納室に押し込むと、側壁に押されたフックがホルダー天井部内に没入して、電池パックを電池収納室内に挿入できる。そして、フックが側壁のフック係合部に対応する位置となると、フック付勢用バネの付勢力によりフック(の先端)がフック係合部に係合して、電池パックが電池収納室に対し確実に抜け止めされた形態に保持される。
【0012】
一方、電池パックを電池収納室から取り出す際は、電池パックの天井面に露呈しているフックの操作部を指で操作して、フック(先端)とフック係合部との係合を解除すると、電池ホルダーの底面に設けられているバネ部材の付勢力によって電池パックが電池収納室から押し出されて、電池収納室の開口部から電池パックの天井部が突出した形態となる。
【0013】
即ち、フックとフック係合部を周方向に位置合わせさえすれば、電池パックを電池収納室に押し込むだけでフックが自動的にフック係合部に係合するので、電池パックを電池収納室に簡単に装着でき、一方、フックの操作部を指で操作して、フックのフック係合部との係合を解除すれば、電池ホルダー底面のバネ部材の付勢力で押し出された電池パックの天井部を掴んで電池パックを電池収納室から取り出せるので、片手でも電池交換が可能である。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の台秤の電池収納構造において、前記電池収納室の底面中央部には、前記本体ケース前面側に設けられたデジタル表示装置および前記台秤本体に給電するためのプラス側及びマイナス側の給電端子を同心円状に設け、一方、前記電池パックの底面に設けられたバネ部材は、前記給電端子に対応する同心円状に絶縁配置された電源側給電端子として機能する、大小一対の圧縮コイルバネで構成した。
【0015】
(作用)電池ホルダー底面に介装された電池パックを押し出すためのバネ部材が、電源側給電端子も兼ねるので、電池パックに電源側給電端子を別途設けなくて良い。
【0016】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の台秤の電池収納構造において、前記フック係合部は、前記側壁の最上部となる位置に設けるように構成した。
【0017】
(作用)人には左利きと右利きがあるが、フックとフック係合部との係合を解除する際に、バネ付勢力に抗してフックの操作部を没入する手が右手であっても左手であっても操作しやすい。
【0018】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の台秤の電池収納構造において、前記電池ホルダーの天井部側面所定位置には外方突起が、一方、前記側壁の開口端側所定位置には前記外方突起と係合可能なスリットを設け、前記外方突起と前記スリットが、前記フックと前記フック係合部を正確に位置合わせするための位置決め手段となるように構成した。
【0019】
(作用)電池パック側の外方突起と電池収納室側の側壁のスリットとを周方向に一致させて、電池パックを電池収納室に押し込めば、フックとフック係合部が確実に係合する。
【発明の効果】
【0020】
以上より、請求項1に係る発明によれば、電池パックの電池収納室への出し入れを、片手でしかも簡単に行うことができるので、電池の交換作業が容易である。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、部品点数が減り、それだけ電池ホルダーの構造が簡潔となる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、電池交換の時、右利きの人でも左利きの人でもフック操作部を操作しやすく使い勝手がよい。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、フックがフック係合部に係合されないまま電池パックが電池収納室に挿入される誤挿入が防止されて、電池パックの電池収納室内への正確な装着が保障される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る台秤の外観斜視図である。
【図2】要部であるデジタル表示器の縦断面図である。
【図3】キャップを外した状態の同デジタル表示器を背面側から見た斜視図である。
【図4】電池パックを電池収納室から取り出した状態の同デジタル表示器を背面側から見た斜視図である。
【図5】電池ホルダーの平面図である。
【図6】電池ホルダーの斜視図である。
【図7】電池ホルダーを底面側からみた斜視図である。
【図8】電池ホルダーの分解斜視図である。
【図9】従来の台秤の電池収納構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0026】
図1〜図8は、本発明の実施例を示し、図1は、実施例に係る台秤の外観斜視図である。図2〜図4は、同台秤用のデジタル表示器を示し、図5〜図8は同デジタル表示器内に収納される電池ホルダーが示されている。
【0027】
これらの図において、台秤10は、荷重検出機構(図示せず)を内蔵した上方に開口する計量台(ベース部)12、前記荷重検出機構に連結された計量皿16(上皿)、および計量皿16を水平状態に設置するための高さ調節可能な脚具(足コマ)14からなる台秤本体(荷重測定部)11と、計量台12に取付一体化されて荷重測定部11の側方から上方に延びる支柱18と、支柱18の上端部に連結されたデジタル表示器20とから構成されている。デジタル表示器20と支柱18との間には傾動位置調整機構19が介装され、デジタル表示器20は支柱18に対し前後に傾動可能(即ち、支軸L回りに対し傾動調整可能)である。
【0028】
デジタル表示器20は、本体ケース21前面側の荷重値等を表示するデジタル表示部20aと、背面側の乾電池を収納する電池収納部20bで構成されている。即ち、本体ケース21内の前面側には、液晶表示回路を構成する電子液晶を搭載したプリント基板(液晶表示装置)23c等を収納する基板収納室22が設けられ、背面側には、複数個の乾電池を収納する電池収納室24が設けられていて、これらの収納室22、24は立壁24aによって分離されている。
【0029】
電池収納室24は、本体ケース21内に前後(図2左右方向)に延びる略円柱型で、背面側に開する略円筒形状の側壁26aによって画成されている。そして、側壁26aの開口部26を介して電池パック71を電池収納室24に出し入れでき、側壁26aにキャップ60を装着することで電池収納室24が密閉される。
【0030】
開口部26を正面視して、側壁26aの最上部には、電池ホルダー40のフック42(先端部42a)の係合部である周方向所定幅の矩形状スリット28(フック係合部)が設けられている。側壁26aの外周には、キャップ60の雌ネジ64と整合する雄ネジ31が周設され、側壁26aの外周基端部側には、電池収納室24内を防水するためのOリング34を装着するための一対の水平リブ32、32が周設されている。
【0031】
一方、電池収納室24の底面(立壁24a)中央部には、電池収納室24に収納された電池パック71側の電源側給電端子51と接続して、プリント基板23cおよび台秤本体11(の荷重検出機構)に給電するための、金属製給電端子35(円環状の外側の径の大きいマイナス側端子35aと、その内側の径の小さいプラス側端子35b)が同芯円状に設けられている。そして、給電端子35(35a、35b)は、電池収納室24と基板収納室22に露出し、電池収納室24側で電池パック71に設けられた電源側給電端子51に接触し、基板収納室22のプリント基板23c等を介して台秤本体11へ給電する。
【0032】
具体的には、基板収納室22側に露出している給電端子35(35a、35b)は、給電コードを接続し、給電コードを介してプリント基板23cの液晶表示装置駆動回路に接続され、さらにプリント基板23cと電気的に接続された本体ケース21下方に突出するコネクタ23からのケーブル23aを介して台秤本体11(の荷重検出機構)と電気的に接続されている。
【0033】
電池ホルダー40は、図8に示すように、主として天井部41、上ケース43および下ケース48から構成される全体が略円筒型の樹脂製品である。
【0034】
上ケース43は、周方向等間隔3箇所にC字状凹部54が設けられた略円形の上面部43aと、上面部43aの中央部から下方に延びる横断面略六角形状の中央支柱部43cと、上面部43aの円周端部から下方に周方向等間隔に延びる6本の略三角形状の側方支柱部43bとを備えている。
【0035】
上面部43aの下面側には、C字状凹部54寄りの3箇所には電極バネ52を構成するプラス側端子52bが、それ以外の円周部3箇所には前記バネを構成するマイナス側端子52aが周方向に連続して並ぶように敷設されている。
【0036】
天井部41は、上面部43aと同形の(C字状凹部54が設けられた)略円盤状の樹脂体で、上ケース43の上面部43aにビス止めされるものであって、図2に示すように、天井部41の下面側円周端部寄りの周方向所定位置には、半径方向に延びる凹溝41bが設けられ、凹溝41bと上面部43aによってフック収容部屋41cが画成されるとともに、該収容部屋の半径方向略中央部には、フック操作部42bを天井部41に露出させるための矩形状開口部41aが設けられている。
【0037】
フック収容部屋41cには、天井部41に設けられた開口部41aからフック操作部42bを露出させたフック42が半径方向にスライド可能に収容されるとともに、該フック42は圧縮コイルスプリング42cによってその先端部42aを天井部41の外側方に突出する形態に付勢保持されている。
【0038】
先端部42aは縦断面三角状で、電池パック71を電池収納室24に押し込む際に、電池ホルダー40に組み込んだときの下面側が(図2参照)側壁26a端部と干渉してフック没入方向に力を受けるので、先端部42aがフック収容部屋41cに没入しやすい。
【0039】
そして、開口部41aの縁で係止しているフック操作部42bを、圧縮コイルスプリング42cの付勢力に抗して図2下方向に押し下げれば、先端部42aがフック収容部屋41c内に没入する。
【0040】
一方、フック42が設けられた側と反対側(図5下方側)の円周部には、電池ホルダー40の側面外形に倣った半円弧状の線材を、その両端部を折り曲げ天井部41に内包した取手46が取付一体化されている。取手46は、電池パック71が電池収納室24に装着されているときは天井部41の外周に沿って収納され、電池パック71を電池収納室24から取り出すときは取手46の半円弧の頂点部を天井部41上方(図5前方向)に向かって押し上げると起立する。
【0041】
また、下ケース48は、上面部43aと同形の下面部48aと、該下面部の円周端部から上方に延び側方支柱部43bと一対となる6本の略三角形状の側方支柱部48bを備えている。
【0042】
下面部48aの上面側には、上面部43aと同様に電極バネ52が2つ敷設されるとともに、電極バネ52(のプラス側端子52b)に周方向に続いてマイナス側端子52Aが敷設され、端子52Aに続いて、後述する電源側給電端子51bと一体で電極バネ53を構成するプラス側端子52Bがその線部を下面部48aの線溝50に固定保持されて敷設されている。
【0043】
下ケース48の下面部48aの中央部には、円筒型の絶縁隔壁によって分離された、円環状の外側の(マイナス側端子用の)端子収容室49aと、その内側の(プラス側端子用の)端子収容室49bが成形されている。端子収容室49aには、径の大きい圧縮コイルスプリング51aが下面部48aの下面側から固定保持されて収容され、端子収容室49bには、径の小さい圧縮コイルスプリング51bが下面部48aの上面側から(線溝50で)固定保持されて収容されているので、両圧縮コイルスプリング51a、51bは同心円状に絶縁配置されるとともに、圧縮コイルスプリング51aは下面部48aに敷設されたマイナス側端子52Aと接触してマイナス側の電源側給電端子となり、圧縮コイルスプリング51bは前記プラス側端子52Bと一体(電極バネ53)であるのでプラス側の電源側給電端子となる。
【0044】
そして、電源側給電端子を兼ねる圧縮コイルスプリング51a、51bはそれぞれ、電池パック71を電池収納室24に収納すると、電池収納室24の底面に設けられたマイナス側の給電端子35aとプラス側の給電端子35bと接触する。
【0045】
また、圧縮コイルスプリング51a、51bは、ともに下ケース48の下面部48a(端子収容室49a、49b)から一部突出した形態となっていて、電池パック71を電池収納室24に押し込むと反発し、電池パック71の天井部41が開口部26から突出する。
【0046】
そして、上ケース43と下ケース48を、上面部43a、下面部48aのC字状凹部54が周方向にずれるように組立てれば(側方支柱部43b、48bの端部同士を嵌合すれば)電池ホルダー40となり、側方支柱部43b、48bと中央支柱部43cとの間に(C字状凹部54側にプラス極側の面を向けて)単一乾電池70を円弧状に(並列状態に)6個収納すれば、単一乾電池6本を直列接続した電池パック71となる。
【0047】
なお、電池パック71のC字状凹部54から乾電池70のプラス側の面の一部が露出するので、乾電池70に指かけしやすく、乾電池70を簡単に電池ホルダー40から取り外せる。
【0048】
キャップ60は、電池収納室24の側壁26aに装着する縦断面略コ字型の偏平な円筒形状の樹脂成形体である。キャップ60の側壁66の内周には、電池収納室24を画成する側壁26aの雄ネジ31と整合する雌ネジ64が周設され、側壁66の外周には、キャップ60装脱着時に指かけするための指かけ用凹部62が周方向等ピッチで設けられており、指かけ用凹部62に指をかけてキャップ60を側壁26aに被せ周方向に回すと、雌ねじ64と雄ねじ31が螺合してキャップ60を電池収納室24の側壁26aに装着できる。
【0049】
また、電池パック71を電池収納室24に装着する際は、まず、いずれか一方の手で電池パック71を持ち、電池パック71のフック42と電池収納室24のスリット28とを周方向に位置合わせして、電池パック71を電池収納室24に挿入し、さらに電池パック71の下面部48a(端子収容室49a、49b)に設けられている圧縮コイルスプリング51の反発力に抗して電池パック71を電池収納室24に押し込む。すると、側壁26aの円周端部に押されてフック42(先端部42a)が電池パック71の天井部41(フック収容部屋41c)内に没入して、電池パック71が電池収納室24内に挿入できる。
【0050】
次に、フック42が側壁26aのスリット28に対応する位置まで電池パック71が挿入されると、圧縮コイルスプリング42cの付勢力によりフック42(先端部42a)が再び外側方向に突出し、スリット28に係合され、電池パック71が電池収納室24に対し確実に抜け止め保持される。
【0051】
即ち、フック42とスリット28を周方向に位置合わせさえすれば、電池パック71を電池収納室24に押し込むだけなので、片手でも電池パック71を挿入できる。しかも、圧縮コイルスプリング42cに付勢されてフック42(先端部42a)は自動的にスリット28に係合するので、電池パック71を電池収納室24内に簡単に装着することができる。
【0052】
次に、キャップ60を側壁26aに被せて周方向に回せば、雌ねじ64と雄ねじ31が螺合して電池収納室24が密閉される。この際、キャップ60は従来のキャップ4のように、本体ケース背面側に別部材のネジ7で取り付けるのではなく、キャップ60自体が雌ねじ64となっているので、キャップ60を周方向に回すだけで固定できる。
【0053】
さらに、キャップ60の側壁66に設けられた指かけ用凹部62によって、キャップ60を周方向に回す際の指がかりが良く、周方向に難なく回すことができるので、キャップ60の装着作業が簡単である。
【0054】
一方、電池パック71を電池収納室24から取り出す際は、まず、片手でキャップ60を周方向に回し、キャップ60を本体ケース21(側壁26a)から取り外す。
【0055】
特に、デジタル表示器20は通常後傾して用いられているため、従来の電池収納構造(図9参照)では、もう一方の手でキャップ4を保持しなければ、キャップ4を開けた瞬間電池パック6が電池収納室3から滑り落ちる可能性があるが、本実施例では、電池パック71がフック42とスリット28により電池収納室24内に抜け止め保持されているためそのおそれはない。
【0056】
次に、電池パック71本体は電池収納室24に収納され、天井部41(の上面側)のみが開口部26(側壁26aの円周端部)と面一に露出している。
【0057】
そこで、天井部41から露呈しているフック操作部42bを摘んで、フック42を、フック42の先端部42aが没入する方向(図2下方向)に押し下げて、フック42(先端部42a)とスリット28との係合を解除すると、電池パック71の下面部48a(端子収容室49a、49b)に介装された圧縮コイルスプリング51の付勢力によって、電池パック71が電池収納室24から押し出され、電池収納室24の開口部26(側壁26a円周端部)から電池パック71の天井部41が突出した形態となる。
【0058】
次に、天井部41の外周に沿って収容されている取手46を、天井部41上方(図5前方向)に押し上げ起立させ、フック42を没入した手の他の指等を使って取手46を掴み、本体ケース21背面側方向に引けば、電池パック71を電池収納室24から取り出すことができる。
【0059】
即ち、キャップ60を開け、フック操作部42bを押し下げて、電池パック71の抜け止め(フック42とスリット28の係合)を解除し、その手で取手46を掴み電池パック71を引き抜くだけなので、片手でも電池パック71を取り出せる。しかも、フック42とスリット28の係合を解除すれば、圧縮コイルスプリング51に付勢されて電池パック71の天井部41が自動的に電池収納室24から突出するので、取手46を掴みやすく、簡単に電池パック71を電池収納室24から取り出せる。
【0060】
また、電池ホルダー40の下面部48aの下面側に別途バネ部材を設け、圧縮コイルスプリング51は電源側給電端子としてのみ機能させてもよいが、圧縮コイルスプリング51が電源側給電端子を兼ねるため、電池パック71側の電源側給電端子を省け部品点数が減るので、それだけ電池ホルダー40の構造が簡潔となる(請求項2)。
【0061】
また、フック42の係合部であるスリット28は、側壁26aの周方向いずれの位置に設けてもよいが、スリット28を、開口部26を正面視して側壁26aの最上部に設ければ、右利きの人でも左利きの人でもフック操作部42bを摘みやすく、電池交換時の使い勝手が良い(請求項3)。
【0062】
また、フック42とスリット28の周方向の位置合わせをせずに電池パック71を電池収納室24に押し込むと、電池ホルダー40のフック42は圧縮コイルスプリング42cの付勢力で外側方に突出しているため、先端部42aは、開口部26の円周端部のいずれの箇所と接触しても天井部41に没入し、フック42とスリット28が係合しないまま電池パック71が電池収納室24に挿入(誤挿入)されるおそれがある。
【0063】
これを防ぐため、本実施例では、電池ホルダー40(上ケース43)側面の天井部41側に、フック42から天井部41の外周に沿って時計回りに90°の位置に矩形状の突起44が電池ホルダー40の外側方に突出して設けられ、一方、電池収納室24の側壁26aの円周端部には、スリット28から側壁26a円周に沿って時計回りに90°の位置に突起44が係合可能な切り欠き30(縦スリット)が欠成されている。
【0064】
突起44と切り欠き30とを周方向に合わせ係合させると、係合箇所から側壁26a円周に沿って反時計回りに90°の位置で、フック41とスリット28が周方向に確実に一致するので、フック41とスリット28とを正確に位置合わせすることができる。
【0065】
即ち、電池パック71を電池収納室24に装着する際に、突起44と切り欠き30とを周方向に一致させて電池パック71を電池収納室24に押し込めば、フック41とスリット28が確実に係合するので、前記誤挿入が防止され、電池パック71の(電池収納室24内への)正確な装着が保障される。
【0066】
なお、突起44と切り欠き30はフック42とスリット28の周方向の位置合わせのための位置決め手段であるので、その位置合わせが正確にされる限り、それぞれ電池パック71の側面周方向、電池収納室24の側壁26aの円周端部周方向いずれの位置に設けてもよい(請求項4)。
【0067】
また、電池収納室24の側壁26aには、側壁26aの基端部と基端部側の水平リブ32との間にシートパッキン33が周設され、一対の水平リブ32、32の間にOリング34(リング状弾性体)が周設されている。
【0068】
キャップ60の雌ねじ64と電池収納室24の側壁26aの雄ねじ31を螺着する(キャップ60を閉める)と、Oリング34は一対の水平リブ32、32間の間隙深さ方向に押縮され、シートパッキン33も側壁26aの基端部側に押圧されるため、両者キャップ60、側壁26a間の隙間が確実に閉塞密封され、電池収納室24の防水性が確保される。
【0069】
また、突起44を切り欠き30に係合させなければ、突起44が側壁26aの円周端部で係止され、その分電池パック71が電池収納室24に収まらず開口部26a(の円周端部)から突出する。そのため、キャップ60を閉めようとしても、前記突出が邪魔となって雌ねじ64と雄ねじ31が整合せず、キャップ60が閉まらないこととなる。
【0070】
即ち、電池交換時にキャップ60が開けられ、電池収納室24の密封性が一旦解かれても、再び電池パック71を電池収納室24に挿入するには、突起44と切り欠き30を一致させる必要があるので、両者突起44、切り欠き30は必ず係合される。そして、突起44と切り欠き30が一致すれば、第1に、フック42とスリット28が確実に係合し、第2に、電池パック71が電池収納室24内に収まりキャップ60で室内を密封できるので、電池交換を経ても、前記電池パック71の抜け止めと、前記電池収納室24の防水性が保障される。
【0071】
なお、前記した実施例では、電池収納室24の形状(側壁26aの内周形状)、即ち開口部26の形状を円柱(円筒)形状として説明したが、四角形、五角形その他の多角形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、支柱によって上方に支持されるデジタル表示器を有する台秤、体重計その他の秤に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0073】
10 台秤
11 台秤本体
18 支柱
20 台秤用デジタル表示器
21 本体ケース
24 電池収納室
26 開口部
26a 側壁
28 スリット
30 切欠き
35 給電端子
40 電池ホルダー
41 電池ホルダーを構成する天井部
42 フック
42b フック操作部
42c 圧縮コイルスプリング
43 電池ホルダーを構成する上ケース
44 突起
48 電池ホルダーを構成する下ケース
51 圧縮コイルスプリング
60 キャップ
70 電源である乾電池
71 電池パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台秤本体から上方に延びる支柱によって支持された台秤用デジタル表示器内に台秤用の電源である乾電池を収納一体化した台秤の電池収納構造において、
前記デジタル表示器を構成する本体ケース内には、背面側に開口する電池収納室が設けられ、
前記電池収納室には、前記背面側開口部を画成する側壁を介して、電池ホルダーに複数の乾電池を収納一体化した電池パックを出し入れでき、
前記側壁にキャップが装着されて前記電池収納室が密閉される台秤の電池収納構造であって、
前記電池ホルダーの底面には、前記電池収納室の底面との間で前記電池ホルダーの押し込み方向に反発するバネ部材が設けられ、
前記電池ホルダーの天井部には、バネ付勢されてその先端が該ホルダーの天井部の外側方に突出し、その操作部が該ホルダーの天井面に露呈するフックが設けられ、
一方、前記側壁所定位置には、前記フックが係合するフック係合部が設けられたことを特徴とする台秤の電池収納構造。
【請求項2】
前記電池収納室の底面中央部には、前記本体ケース前面側に設けられたデジタル表示装置および前記台秤本体に給電するためのプラス側及びマイナス側の給電端子が同心円状に設けられ、
一方、前記電池パックの底面に設けられたバネ部材は、前記給電端子に対応する同心円状に絶縁配置された電源側給電端子として機能する、大小一対の圧縮コイルバネで構成されたことを特徴とする台秤の電池収納構造。
【請求項3】
前記フック係合部は、前記側壁の最上部となる位置に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の台秤の電池収納構造。
【請求項4】
前記電池ホルダーの天井部側面所定位置には外方突起が、一方、前記側壁の開口端側所定位置には前記外方突起と係合可能なスリットが設けられ、前記外方突起と前記スリットが、前記フックと前記フック係合部を正確に位置合わせするための位置決め手段を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の台秤の電池収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−222255(P2011−222255A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89450(P2010−89450)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)
【Fターム(参考)】