説明

合わせガラスの予備接着装置

【課題】湾曲ガラス板間に中間膜を挟んで積層させ、該湾曲積層ガラス板の両外側面より押圧挟持して、湾曲ガラス板同士を中間膜によって接着させる。
【解決手段】前記湾曲ガラス板の上面に沿って一列に並設した複数の独立した上部ロール毎に湾曲ガラス板を上面側より押圧する上部ロール押圧手段と、湾曲ガラス板の下面に沿って一列に並設した複数の独立した下部ロールによって、湾曲ガラス板の下面側より押圧する下部ロール押圧手段と、前記複数の下部ロールの各頂部に当接する屈曲自在な下部側の屈曲自在ロールと、該下部側の屈曲自在ロールを回転駆動させる下部側のロール駆動手段とからなり、前記下部ロール押圧手段により下部ロールを介して下部側の屈曲自在ロールをガラス板の下面に押圧させて、上部ロールと下部側の屈曲自在ロールで前記湾曲ガラス板同士を挟持して接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用窓ガラスとして用いられる合わせガラスの製造工程において、2枚のガラス板同士を中間膜によって接着させるにあたり、均一な押圧力によりガラス板の端部の接着不良や、シール不良も発生させない合わせガラスの予備接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚のガラス板を重ね合わせて接着した合わせガラスのうち、最も良く知られ、広く使用されているものとして、ガラス板間に中間膜としてPVB(ポリ・ビニル・ブチラール)製の樹脂シートを挿入して重ね合わせ、加熱、および加圧して該中間膜によってガラス板同士を接着させるものがあげられる。
【0003】
前記合わせガラスを接着させる工程において、ガラス板間に気泡等が残ると、その気泡が微小であっても透視性能が損なわれるばかりでなく、接着力の低下に繋がり、剥がれといった不具合も発生するので、オートクレーブによる一定の加圧条件下で接着フイルムを全体を熱溶融させてガラス板同志を接着させる本接着工程前に、ガラス板間の脱気を十分に行うための加熱、加圧による予備接着工程を行うことが重要である。
【0004】
特に自動車等の窓ガラスは二方向に湾曲した三次元形状であり、重ね合わせた2枚のガラス板間より気泡を脱気させるために両面から均一に押圧させる為の工夫が必要であった。
【0005】
例えば、特開昭61−169248号公報には、カレンダーによって、少なくとも1つのガラスシートと少なくとも1つのプラスチック材料のフイルムとを組み合わせる為の装置であって、相互に隣接して屈撓自在に取り付けられている一連の押圧ローラと、屈撓自在に取り付けられかつ前記押圧ローラと協同する一連の対向押圧ローラとを具備し、前記押圧ローラと対向押圧ローラとが共に1つのピストンロッドの一端に取り付けられ、このピストンロッドの他端が、空気圧力により駆動されかつ空気シリンダの中で移動される1つの押圧ピストンを担持している装置が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、特開平2−279544号公報には、合せガラス用の積層体を上下に配置された複数の加圧ロールの間を通過させ、予備圧着する予備圧着装置において、該加圧ロールの全てが合せガラス用の積層体の通過方向と略垂直な面内で回転しうる機構を備えた予備圧着装置が開示されている(特許文献2)。
【0007】
さらに、特公昭47−2265号公報には、特に中間挿入の合成樹脂フイルムを有する球状に湾曲したガラス板を前複合体に圧延する目的で、全体的に圧延方向に直角に経過する軸の周りを旋回可能な旋回フレームを有し、旋回フレームの中には上方と下方のガラス板に作用しばねによって圧着される多数の圧力ロールが配置されている圧延装置において、各圧力ロールは圧力ロールを保持しかつ旋回フレームに固定された構造部分および共属のばねと共に他の圧力ロールとは無関係に旋回フレームに固定可能でありかつ旋回フレームから個々に取外し可能である圧力ロール単位に併合されていること、および圧力ロール単位は前複合体の相違する湾曲に対し圧延方向に横に調整可能に旋回フレームに固定されている圧延装置が開示されている(特許文献3)。
【0008】
さらにまた、特公平3−21494号公報には、少なくとも湾曲部を中空となし、螺旋状体を内挿した一対の屈曲自在ロールと、この屈曲自在ロールの各部の相対位置を規制する複数のバックアップロールを備えた湾曲ロール装置が開示されている(特許文献4)。
【0009】
さらにまた、特開2002−167244号公報には、搬送される中間膜を挟んだ湾曲積層ガラスをその湾曲面の両面より縦断面形状に沿って角度調整自在な複数のロール群によって加圧する予備接着装置において、前記湾曲ガラスを傾斜角度自在に搬出入させる搬出入手段と、上部側ロール群と下部側のロール群からなる押圧ロール群と、上下各押圧ロールは、それぞれ湾曲ガラス面の法線方向で対となるように配置され、各押圧ロール毎にガラス面に押圧させる押圧シリンダを設け、該押圧シリンダ内の圧力を一定にさせる圧力調整弁とからなるロール押圧手段と、前記上下の各押圧シリンダの支持点を水平方向に設けた上下の横フレームに設けた各長孔内で位置移動可能に支持して、湾曲ガラスへの押圧角度を調整自在とした角度調整手段と、前記上下の横フレームの両端を縦フレームと連結して方形の本体支持枠とし、その縦フレームの略中心部に設けた支持軸で前記本体支持枠を回動自在とする回動手段と、前記湾曲ガラスを押圧ロール群間で移動させ、その移動速度を調整自在な駆動手段とからなり、湾曲ガラスの搬送速度に合わせて上下のロール群をガラス曲面の法線方向としたことを特徴とする積層ガラスの予備接着装置が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−169248号公報
【特許文献2】特開平2−279544号公報
【特許文献3】特公昭47−2265号公報
【特許文献4】特公平3−21494号公報
【特許文献5】特開2002−167244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1には、一連の押圧ローラと、一連の対向押圧ローラとがそれぞれ湾曲ガラス面の法線方向を軸として加圧するようになっているものの、上部側の押圧ローラと下部側の対向押圧ローラとの押圧軸が一致しておらず、搬送方向と直交する幅方向のエッジ部近傍部分で大きくズレている状態となっているため、幅方向の両端エッジ側が深曲げの曲率の小さな湾曲ガラス等については、該エッジ近傍を押圧する押圧ローラと対向する押圧ローラとが上下でチドリ状となり、エッジ部近傍の曲面に対し均等な押圧力が得られず、2枚のガラス板間の脱気が不十分となって気泡が残りやすく、その結果、接着部が剥がれ易くなるという問題点があった。
【0012】
また、前記特許文献2に記載された発明においては、一対の列を成した複数の加圧ロールは独自に駆動回転することで、合わせガラス用積層体が、その一端からこの加圧ロール間を通過させて、ガラス板間の内部空気を絞り出すように脱気を行うが、上下の加圧ロール間を通過するガラス板の幅方向の端部が、幅方向に複数並設した加圧ロール間の隙間位置にきた場合、該部分が加圧不足となり、脱気不良を招く恐れがあるという問題点があった。
【0013】
さらに、前記特許文献3に記載された発明においては、各種の曲率形状の湾曲ガラス板に対応させるために、上下に設けた圧力ロールのストロークを広げようとすると、該圧力ロールをばねの弾性力だけで押圧しているため、強いばねを用いらざるを得ず、ガラス曲げ形状の変化に伴うスプリングの伸縮具合によって押圧力がばらつき、このため上下の圧力ロールがスムーズでなく、湾曲ガラスの曲げ形状への追従性が悪くなり、ガラス板に無理な力が加わり過ぎるので割れやすいという問題点があった。
【0014】
さらに、前記特許文献4に記載された発明においては、一対の中空ゴムロールを複数の押えロールにて湾曲に撓ませ、そのロール端部を駆動モーターと連結し、回転させることで、フイルム介在ガラス板はその一端からこのロール間を通過し、内部空気を搾り出すことになるが、屈曲自在中空ゴムロールの湾曲度は、外部設置の押えロールとの相対位置関係に依存するため、その調整時間の長さと形状の再現性には問題がある。また、押えロールが部分的に存在するため、押えロールの有無により、ガラス板に加わる圧力が部分的に異なりガラス全面を均一に脱気できないという問題点があった。
【0015】
さらに、前記特許文献5に記載された発明においては、湾曲ガラス板凸面側においては、湾曲ガラス板面を押圧する押圧ロール間の間隔が広くなり、押圧ロールを当接させて押圧した部分と、押圧ロールが当接していない隙間部分において、ガラス板面が受ける押圧力にバラツキがあり、特に、ガラス板のエッジ近傍において押圧力のバラツキによる2枚のガラス板間の脱気が不十分となって気泡が残りやすく、その結果、接着ムラが発生し、接着部が剥がれ易くなるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はこのような問題点に鑑みて、複数枚重ね合わせたガラス板間にPVB(ポリビニルブチラール)膜等の中間膜を挿入した積層ガラス板の両面より、上部ロールと下部ロールを押圧させ、搬送しながらガラス板同士を接着させるにあたり、積層した湾曲ガラス板の両面から搬送方向と直交する全幅方向に亘って均等の圧力で押付けムラなく押圧することができ、特に両端部近傍の押付けムラによるガラス板の端部の接着不良や、シール不良も発生させないことを目的とする。
【0017】
すなわち、本発明は、湾曲ガラス板間に中間膜を挟んで積層させ、該湾曲積層ガラス板の両外側面より押圧挟持して、湾曲ガラス板同士を中間膜によって接着させる湾曲積層ガラス板の予備接着装置において、
前記湾曲ガラス板の上面に沿って一列に並設した複数の独立した上部ロール毎に湾曲ガラス板を上面側より押圧する上部ロール押圧手段と、湾曲ガラス板の下面に沿って一列に並設した複数の独立した下部ロールによって、湾曲ガラス板を下面側より押圧する下部ロール押圧手段と、前記複数の下部ロールの各頂部に当接する屈曲自在な下部側の屈曲自在ロールと、該下部側の屈曲自在ロールを回転駆動させる下部側のロール駆動手段とからなり、
前記下部ロール押圧手段により下部ロールを介して下部側の屈曲自在ロールをガラス板の下面に押圧させて、上部ロールと下部側の屈曲自在ロールで前記湾曲ガラス板同士を挟持して接着させることを特徴とする合わせガラスの予備接着装置である。
【0018】
あるいはまた、本発明は、前記複数の上部ロールと湾曲ガラス板間に屈曲自在な上部側の屈曲自在ロールを、前記複数の上部ロールの各底部に当接するように設け、前記上部ロール押圧手段により上部ロールを介して上部側の屈曲自在ロールをガラス板の上面側に押圧させるようにしたことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0019】
あるいはまた、本発明は、前記上部側の屈曲自在ロールを回転駆動させる上部側のロール駆動手段を設けたことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0020】
あるいはまた、本発明は、前記屈曲自在な屈曲自在ロールとして、複数の剛性の自在継手(ユニバーサルジョイント)を直列に連結した一本の芯材にリング状の複数の弾性リング材を嵌めこみ、上下左右に屈曲自在としたことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0021】
あるいはまた、本発明は、前記屈曲自在ロールの外周部の弾性リング材として、隣接する弾性リング材同士が互いに凹状部と凸状部で噛み合うようにして、屈曲自在ロールが湾曲している時に弾性リング材間の隙間を少なくしたことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0022】
あるいはまた、本発明は、前記上部ロールまたは上部側の1本の前記屈曲自在ロールと、下部側の1本の前記屈曲自在ロール間に湾曲した積層ガラス板を通過させるときに、上部ロールと下部ロールの回転中心を結んだ仮想線と湾曲積層ガラス板との交点を支点として、前記仮想線が湾曲積層ガラス板面の前記支点位置での法線となるように、前記上部ロールまたは上部側の1本の前記屈曲自在ロールと、下部側の1本の前記屈曲自在ロールの支持フレームを旋回させる旋回手段を設けたことを特徴とする上述のいずれかに記載の合わせガラスの予備接着装置である。
【発明の効果】
【0023】
複数枚重ね合わせたガラス板間にPVB(ポリビニルブチラール)膜等の中間膜を挿入した積層ガラス板の両面より、上部ロールと下部ロールを押圧させ、搬送しながらガラス板同士を接着させるにあたり、積層ガラス板の両面から搬送方向と直交する全幅方向に亘って均一な押圧力で押圧することができ、特に両端部近傍部の押付力のムラによるガラス板端部の接着不良や、シール不良も発生させず、ガラス板間に気泡も残さず、押圧によるガラス板の破損等も発生させないようにすることができる。
【0024】
特に、下部ロールとガラス板間に剛性の芯材を有した屈曲自在のロールを設けたので、隣接する下部ロール間に隙間があっても、押圧ムラを屈曲自在のロールによってガラス板の下面側を押圧する力が分散されるので、ガラス板面に対し均一な押圧力が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の予備接着装置の全体正面図。
【図2】本発明の実施例1の予備接着装置の全体側面図。
【図3】本発明の実施例2の予備接着装置の全体正面図。
【図4】本発明の実施例2の予備接着装置の全体側面図。
【図5】本発明の実施例3の予備接着装置の全体側面図。
【図6】本発明の実施例4の予備接着装置の全体側面図。
【図7】本発明で使用する屈曲自在ロールの構造を説明する斜視図。
【図8】本発明で使用する屈曲自在ロールの斜視図。
【図9】本発明で使用する別の屈曲自在ロールの斜視図。
【図10】本発明の予備接着装置の旋回手段を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明の予備接着装置1は、図1、図2に示すように、前記湾曲ガラス板Gの上面に沿って一列に並設した複数の独立した上部ロール12、12・・毎に湾曲ガラス板Gを上面側より押圧する上部ロール押圧手段10と、湾曲ガラス板Gの下面に沿って一列に並設した複数の独立した下部ロール22、22・・によって、湾曲ガラス板Gを下面側より押圧する下部ロール押圧手段20と、前記複数の下部ロールの各頂部に当接する屈曲自在な下部側の屈曲自在ロール30と、該下部側の屈曲自在ロール30を回転駆動させる下部側のロール駆動手段50とからなる。
【0028】
前記上部ロール押圧手段10は、搬送されるガラス板の搬送方向と直交する幅方向に一列に並設した複数本のシリンダー11、11・・の各ロッドの先端に上部ロール支持金具13を設け、該上部ロール支持金具13毎に上部ロール12がフリー回転するように支持されている。また、各上部ロール支持金具13は、上部シリンダー11の図示しない支持部材に回転防止用凹溝等を縦方向に設け、該凹溝内で回転止材14を摺動可能とさせることによって、各上部ロール支持金具13およびこれによって支持される上部ロール12が上部シリンダー11の押圧軸を中心として回転しないようにするものである。
【0029】
前記下部ロール押圧手段20は、前記上部ロール押圧手段10と同様に、搬送されるガラス板の搬送方向と直交する幅方向に一列に並設した複数本の下部シリンダー21、21・・の各ロッドの先端に下部ロール支持金具23を設け、該下部ロール支持金具23毎に下部ロール22がフリー回転するように支持されている。また、各下部ロール支持金具23は、下部シリンダー21、21・・の図示しない支持部材に回転防止用凹溝等を縦方向に設け、該凹溝内に回転止材24を摺動可能とさせることによって、各下部ロール支持金具23およびこれによって支持される下部ロール22が下部シリンダー21、21・・の押圧軸を中心として回転しないようにする。
【0030】
また、前記下部ロール押圧手段20は、図5に示したように、下部ロール支持金具23によって2個の下部ロール22、22をフリー回転自在に支持し、該2個の下部ロール22、22を下部側の屈曲自在ロール30に当接させて支持させるようにすることもできる。
【0031】
尚、前記上部ロール12、12・・、下部ロール22、22・・は円盤状のロールを2枚サンドイッチ状に重ねた形状、すなわち左右に二分割されたロール部と、その中間部分に軸受け部を有したサンドイッチ状となっており、その材質として前記上部ロール12、12・・の外周部がゴム製、下部ロール22、22・・の外周部が硬質樹脂製であり、各ロール部分はフリー回転自在である。
【0032】
下部側の屈曲自在ロール30は、前記複数の下部ロール22、22・・の各頂部とガラス板Gの下面間に設けた湾曲した1本の連なったロール状で、剛性の芯材としての屈曲ロッド材31は複数のユニバーサルジョイントによって屈曲自在として、複数の屈曲自在ロール支持金具33、33・・の支持ロール34、34の当接によって支持され、該屈曲自在ロール支持金具33、33・・のそれぞれが前記下部ロール支持金具23、23・・に取付固定されており、該屈曲自在ロール支持金具33、33・・のそれぞれの先端部に設けたフリー回転する支持ロール34、34・・と前記下部ロール22によって、屈曲自在ロール30の位置を所望の位置となるように規制している。
【0033】
また、屈曲自在ロール支持金具33、33・・のそれぞれは常時一定方向を向いて、回転しない構造となっており、複数の下部ロール22、22・・の位置を変化させるとこれに追従して湾曲レベルが変化する。
【0034】
前記下部ロール押圧手段20により下部ロール22、22・・を介して下部側の屈曲自在ロール30をガラス板Gの下面側に押圧させて、下部側の屈曲自在ロール30と上部ロール12、12・・との両面からの押圧によって前記重ね合わせた湾曲ガラス板G同士を押圧して接着させることができる。
【0035】
前記屈曲自在ロール30の構造は、図7(a)、(b)に示したように、剛性の金属製からなる筒状部材32a、32a’の各外周面に硬質樹脂製からなる筒状弾性部材32b、32b’を接着し、その両端部が上下左右に屈曲自在なユニバーサルジョイント等の自在継手によって、該自在継手の可動範囲内で屈曲自在とした図8に示すような1本のロッド状の屈曲自在ロール30、30’である。
【0036】
屈曲自在ロール30、30’は屈曲ロッド材の外周部に弾性リング材32、32’を図示しない固定部材で屈曲ロッド材3、31’に固定する。
【0037】
図7(b)に示したように、前記弾性リング材32、32’の外周面には複数本の凹溝を設けるが、この凹溝を設けることによってガラス板面への屈曲自在ロール30、30’の押し付け力を均一にすることができ、望ましい。
【0038】
前記下部側のロール駆動手段50は、図1に示したように、駆動モータ51の駆動によってその回転を変速機52により減速回転させ、プーリー53、54、55、56を経て前記屈曲自在ロール30を回転させ、積層したガラス板Gを搬送させることができる。
【0039】
さらに、図3、図4に示すように、前記複数の上部ロール12、12・・と湾曲ガラス板G間に前記下部側の屈曲自在ロール30と同様に、屈曲自在な上部側の屈曲自在ロール30’を、前記複数の上部ロール12、12・・の各底部に当接するように配設しても良い。
【0040】
前記上部側の屈曲自在ロール30’は、駆動源を有さずフリーに回転して、下部側の屈曲自在ロール30の駆動だけによるガラス板Gの搬送移動によって、上部側の屈曲自在ロール30’を追従回転させるようにしたが、下部側の屈曲自在ロール30の駆動だけでなく、さらに上部側の屈曲自在ロール30’を駆動させるようにしても良く、これによって積層したガラス板の荷重が大きくなったとしても無理なくガラス板を搬送させることができる。
【0041】
尚、上部側の屈曲自在ロール30’、30’・・のそれぞれが前記下部ロール支持金具33’、33’・・に取付固定されており、該屈曲自在ロール支持金具33’、33’・・については、それぞれの先端部に設けたフリー回転する支持ロール34’、34’・・と前記上部ロール12によって、屈曲自在ロール30’の位置が一定位置となるように規制されている。
【0042】
また、上部ロール12とガラス板G間に屈曲自在ロール30’を設ける場合には、図6に示したように、上部側の屈曲自在ロール30’を前記上部ロール押圧手段10として、上部ロール支持金具13によって2個の上部ロール12、12をフリー回転自在に支持し、該2個の上部ロール12、12を上部側の屈曲自在ロール30’に当接させて支持させるようにしても良い。
【0043】
尚、前記上部ロール押圧手段10による上部ロール12、12・・のガラス板Gの上面側への押圧と、前記下部ロール押圧手段20による下部ロール22、22・・のガラス板Gの下面側への押圧は、上下同時に行われる。
【0044】
また、図9に示したように、前記屈曲自在ロール30、30’の別の実施の形態として各リング部材の外周面に接着等により設けた弾性リング材は、隣接する弾性リング材同士の凹状部と凸状部が互いにその空間を補完するようにすると、屈曲自在ロール30、30’が湾曲した状態の時に弾性リング材間の隙間があっても直線状の隙間ではなく、凹凸状の隙間となるので、屈曲自在ロール30、30’をガラス板面に押付け時に隙間による押圧ムラを少なくすることができる。
【0045】
さらに、前記複数の独立した上部ロール12、12・・、及び下部ロール22、22・・の各ロールは、湾曲ガラス板Gの各面と当接する部位において該面の法線方向に向けて押圧するように配置するのが好ましい。
【0046】
さらにまた、前記上部ロール12、12・・または上部側の1本の前記屈曲自在ロール30’と、下部側の1本の前記屈曲自在ロール30間に湾曲した積層ガラス板Gを通過させるときに、上部ロール12、12・・と下部ロール22、22・・の回転中心を結んだ仮想線と湾曲した積層ガラス板Gとの交点を支点として、前記仮想線が湾曲した積層ガラス板面の前記支点位置での法線となるように、前記上部ロール12、12・・または上部側の1本の前記屈曲自在ロール30’と、下部側の1本の前記屈曲自在ロール30とを支持する支持フレームを前記仮想線と一致するように湾曲した積層ガラス板の通過に合わせて旋回させる支持フレームの回動手段40を設けた。
【0047】
前記支持フレームの回動手段40は、図1、図10に示すように、上部シリンダ11、11・・、および下部シリンダ21、21・・を固定している上部の横フレーム61、61、および下部の横フレーム62、62の各両端を縦フレーム41、41に固定して枠組みし、該縦フレーム41、41の中間部より枠の外方水平方向側に延ばしたロッドを回動軸とした。
【0048】
該ロッドは、底部を枠組した架台2の両端より立設した支柱3、3の頂部に設けた回動軸受44、44によって回動自在に支持されるが、該ロッドは変速機43を介して回動モータ42で駆動される。
【0049】
縦フレーム41は、図10の回動範囲で示されるように、湾曲ガラス板が先端部位から後端部位迄移動するにつれて、縦フレーム41はポジションaからポジションe迄の角度θ間を回動することになる。
【0050】
次に、前記角度調整手段60は、図1に示すように、上部ロール押圧手段10の上部ロール12、12・・と、下部ロール押圧手段20の下部ロール22、22・・の各押圧ロールそれぞれのガラス面への押圧方向が、ガラス板の湾曲面の各押圧面の法線方向となるようにし、かつ上下の対向する押圧ロールの押圧軸が略同一となるように配列させるために、上部シリンダ11、11・・を支持固定する上部の横フレーム61に設けた取付孔を長孔63、63・・とし、下部シリンダ21、21・・を支持固定する下部の横フレーム62に設けた取付孔を長孔64、64・・として、それぞれ長孔63・・、64・・・の範囲内で上部シリンダ11、11・・、下部シリンダー21、21・・の取付固定位置を調整可能とすることができる。
【0051】
さらに、搬出入手段70は、図10に示したように、前記上部ロール押圧手段10、下部ロール押圧手段20、屈曲自在ロール30、30’、角度調整手段60等を支持する回動可能な縦フレーム41の前後位置には、水平方向から下方に傾斜させた傾斜角度αを調整自在な搬入コンベア71、および同じく傾斜角度αを調整可能な搬出コンベア72を設け、搬入する湾曲積層ガラスGの先端部、または搬出する湾曲積層ガラスGの後端部が、前記上部ロール押圧手段10の上部ロールと、下部側の屈曲自在ロール30との間の隙間近傍位置となるように、型替段取り時に傾斜角度αを調整すれば良い。
【0052】
搬入コンベア71と搬出コンベア72のそれぞれの傾斜角度αの設定は、湾曲積層ガラスGの湾曲形状によっては、必ずしも同一とは限らず、この場合、搬入側、搬出側の傾斜角度をそれぞれ所望の角度に設定すれば良い。
【0053】
次に、本発明の予備接着装置の使用方法、および作用等について説明する。
【0054】
一列に配設した複数の上部ロール12、12・・と、一列に配設した複数の下部ロール22、22・・によって、湾曲ガラス板を挟んで圧着する従来の場合に比べて、湾曲したガラス板の凸面側、すなわち下部面と下部ロール22、22・・の頂部間に屈曲自在で表面を弾性ゴムとした屈曲自在ロールを配設したことにより、下部ロール押圧手段によって下部ロール22、22・・が湾曲ガラス板Gの下面に向けて押圧する押圧力が、下部側屈曲ロール30を介することによって、湾曲ガラス板Gの下面への当接面に隙間無く、均一な押圧力を与えることができる。
【0055】
また、前記屈曲自在ロール30、30’の別の実施の形態として、隣接する弾性リング材同士の凹状部と凸状部が互いにその空間を補完するようにした弾性リング材32、32’・・により、弾性リング材32、32・・、32’、32’・・間の凹凸が交互に並んだ隙間とガラス板Gの直線状のエッジ部ラインとがすべて一致することはなく、ガラス板面に押付け時に隙間による押圧ムラを少なくすることができる。
【0056】
また、湾曲したガラス板Gを予備接着装置1の上部ロール12、12・・と、屈曲自在ロール30間で搬送しながら圧着するにあたり、図10に示すように、湾曲積層ガラス板Gの上面側を凹状面として、傾斜した搬入コンベア71上を下降すると、縦フレーム41は、ポジションaの位置で待機している。このとき、予め、湾曲ガラス板Gの先端部近傍面と縦フレーム41の軸とが直交する位置となるように搬入コンベア71、搬出コンベア72の角度θを設定しておく。
【0057】
湾曲積層ガラス板Gがロール駆動手段50によって駆動される屈曲自在ロール30によって、縦フレーム41は、図10のポジションaからポジションe迄の角度θ間を回動する。
【0058】
縦フレーム41が、ポジションeの位置に到達した時、湾曲積層ガラス板Gの後端部近傍面と縦フレーム41の軸とが直交する位置となり、湾曲積層ガラス板Gは、傾斜した搬出コンベア72上に移載される。
【0059】
尚、縦フレーム41はポジションaからポジションeまで予め設定された速度で回動するが、湾曲積層ガラス板Gについては、1枚の湾曲積層ガラス板Gの通過中において速度を可変にして搬送させる。つまり、屈曲自在ロール30が湾曲積層ガラス板Gの先端部と後端部の一部範囲のみ低速度とし、ガラス板の中間部を通過させるときは高速度として、搬入コンベア71、搬出コンベア72も同期させるようにしている。
【0060】
図10に示すような搬入コンベア71、搬出コンベア72の傾斜角度αは、湾曲積層ガラス板Gの湾曲形状に合わせて、段取替え時に設定し、湾曲ガラス板Gの先端部近傍面と縦フレーム41の軸とが直交する位置となるように調整する。
【0061】
図1に示すように、上部押圧ロール11、11、・・と下部押圧ロール12、12、・・のそれぞれの配列は、予め段取替時に上下対となった上部シリンダ21、下部シリンダ22のそれぞれの押圧軸が一致するようにし、該押圧軸を湾曲積層ガラスGの中央部の湾曲面に上部、下部の押圧ロール11、12が当接する面の法線方向となるように設定するのが好ましいが、屈曲自在ロール30を設けた場合、該屈曲自在ロール30と当接する側の押圧ロールについては、屈曲自在ロール30によって均等に押圧力が得られるので、押圧軸がずれていても問題はない。
【0062】
つまり、上部シリンダ11、11・・、下部シリンダ21、21・・を固定させる上部の横フレーム61、下部の横フレーム62のそれぞれの長孔63、63、・・、64、64、・・の範囲内で上下対となった上部、下部シリンダ11、21のそれぞれの押圧軸が一致するようにし、湾曲面の法線方向となるように上部シリンダ11、および下部シリンダ21を上部の横フレーム61、下部の横フレーム62に固定させておく。
【0063】
上部ロール12、12・・とガラス板Gの面との当接部を結んだラインは、段取替時に湾曲ガラス板Gの曲面に合わせて円弧を描いているが、厳密には隣接する押圧ロールと微小な段差があって、鋸の歯のような凹凸状となっている。この凹凸状の段差に対しては、上部シリンダ11、11・・、下部シリンダ21、21・・内に弾性係数の低いバネ(図示しない)によって前記段差を吸収させるようにした。
【符号の説明】
【0064】
G ガラス板
1 予備接着装置
2 架台
3 支柱
10 上部ロール押圧手段
11 上部シリンダ
12 上部ロール
13 上部ロール支持金具
14 回転止材
20 下部ロール押圧手段
21 下部シリンダ
22 下部ロール
23 下部ロール支持金具
24 回転止材
30、30’ 屈曲自在ロール
31、31’ 屈曲ロッド材
32、32’ 弾性リング材
32a、32a’ 筒状部材
32b、32b’ 筒状弾性部材
33、33’ 屈曲自在ロール支持金具
33a、33a’ 支持ローラ
34、34’ 支持ロール
40 回動手段
41 縦フレーム
42 回動モータ
43 変速機
44 回動軸受
50 ロール駆動手段
51 駆動モータ
52 変速機
53〜56 プーリー
57、58 ベルト
59 駆動シャフト
60 角度調整手段
61 上部の横フレーム
62 下部の横フレーム
63、64 長孔
70 搬出入手段
71 入口コンベア
72 出口コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲ガラス板間に中間膜を挟んで積層させ、該湾曲積層ガラス板の両外側面より押圧挟持して、湾曲ガラス板同士を中間膜によって接着させる湾曲積層ガラス板の予備接着装置において、
前記湾曲ガラス板の上面に沿って一列に並設した複数の独立した上部ロール毎に湾曲ガラス板を上面側より押圧する上部ロール押圧手段と、湾曲ガラス板の下面に沿って一列に並設した複数の独立した下部ロールによって、湾曲ガラス板を下面側より押圧する下部ロール押圧手段と、前記複数の下部ロールの各頂部に当接する屈曲自在な下部側の屈曲自在ロールと、該下部側の屈曲自在ロールを回転駆動させる下部側のロール駆動手段とからなり、
前記下部ロール押圧手段により下部ロールを介して下部側の屈曲自在ロールをガラス板の下面に押圧させて、上部ロールと下部側の屈曲自在ロールで前記湾曲ガラス板同士を挟持して接着させることを特徴とする合わせガラスの予備接着装置。
【請求項2】
前記複数の上部ロールと湾曲ガラス板間に屈曲自在な上部側の屈曲自在ロールを、前記複数の上部ロールの各底部に当接するように設け、前記上部ロール押圧手段により上部ロールを介して上部側の屈曲自在ロールをガラス板の上面側に押圧させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項3】
前記上部側の屈曲自在ロールを回転駆動させる上部側のロール駆動手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項4】
前記屈曲自在な屈曲自在ロールとして、複数の剛性の自在継手(ユニバーサルジョイント)を直列に連結した一本の芯材にリング状の複数の弾性リング材を嵌めこみ、上下左右に屈曲自在としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項5】
前記屈曲自在ロールの外周部の弾性リング材として、隣接する弾性リング材同士が互いに凹状部と凸状部で噛み合うようにして、屈曲自在ロールが湾曲している時に弾性リング材間の隙間を少なくしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項6】
前記上部ロールまたは上部側の1本の前記屈曲自在ロールと、下部側の1本の前記屈曲自在ロール間に湾曲した積層ガラス板を通過させるときに、上部ロールと下部ロールの回転中心を結んだ仮想線と湾曲した積層ガラス板との交点を支点として、前記仮想線が湾曲した積層ガラス板面の前記支点位置での法線となるように、前記上部ロールまたは上部側の1本の前記屈曲自在ロールと、下部側の1本の前記屈曲自在ロールとを支持する支持フレームを前記仮想線と一致するように湾曲した積層ガラス板の通過に合わせて旋回させる支持フレーム旋回手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の合わせガラスの予備接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63469(P2011−63469A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214353(P2009−214353)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】