説明

合成チモーゲンを用いるシグナル増幅

チモーゲン、チモーゲンの使用方法、およびチモーゲンを組み込む装置が、本明細書中に記載される。該チモーゲンは基質および酵素を含む。該基質は該酵素を阻害し得、微生物によって産生されるタンパク質の標的である。微生物によって産生されるタンパク質によって基質が修飾される場合、酵素が活性化される。チモーゲンを用いて、検出アッセイを増幅し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年9月2日に出願された米国仮出願第60/499,846号の恩恵を主張する。前記出願の全教示は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
化学的シグナルを増幅することによって、化学反応を受けるプロセスを、非常に低い濃度においてさえ検出することができる。かかる増幅プロセスは、化学反応の感度の良いおよび/または迅速な検出を必要とする任意の分野における大きな利用性も提供する潜在能力を有する。例えば、かかるプロセスを用いて、感染および疾患、化学または生物戦剤、または環境汚染物質を引き起こす微生物を検出することができよう。
【0003】
現在、化学反応の感度が良くかつ迅速な検出を提供するプロセスはない。現在の方法は、余りにも遅いか、あるいは感度が十分ではない。例えば、いくつかの検出方法は、数時間にわたって有害な細菌の存在を検出し得る。しかしながら、患者が感染を有するであろうと決定するために数分以内に病原体を検出することはしばしば重要である。感染の開始前に有害な細菌の存在を検出する能力は、創傷および火傷の治癒が、より速く、かつより少ない合併症にて起こるのを可能とするであろう。さらに、患者が病院から退院した後、彼らは彼ら自身の健康管理をモニタリングする責任を負うようになるが、感染の兆候は技量のない患者にとって明らかではないであろう。危険な細菌株の迅速な同定は、最も適当な治療の処方を可能とし、改善された患者の結果、および細菌の抗生物質耐性株の発達の低下をもたらす広域抗生物質の過剰使用を妨げる。
【0004】
酷い火傷は集中治療室に入れられる主な理由である。現在、体表面の20%を超える合計火傷を持つ患者は22%の死亡率を有する。現代の抗微生物療法は深刻な火傷患者に対する結果を改善したが、感染は、継続して、熱負傷のショック期を生き残る患者において罹患率および死亡率の主な原因である。抗生物質療法および改善された無菌法にもかかわらず、しばしば、感染の制御は完全には成功しない。感染はまた、創傷の不十分な治癒、広範な組織破壊、および深刻な局所的および全身的合併症を患う患者の主な原因の1つでもある。従って、酷い火傷をした患者における感染の制御は、予後において重要な役割を果たす。なぜならば、酷い感染の開始は直接、または関連する機序(例えば、貧弱な全身の状態による外科処置の遅れ)を通じて患者の死亡に至り得る。
【0005】
院内感染は病院にとって深刻な関心事である。というのは、多くの患者が弱っているか、または免疫寛容であって、かなりの罹患率および死亡率に感受性があるからである。集落形成速度は、健康管理労働者の間、および患者の間では、病院の状況においては有意により高い。さらに、病院環境における集落形成生物は、抗生物質が頻繁に用いられる場合には、院内環境に存在する強力な選択圧のため、抗微生物療法の多くの形態に対して耐性であるようである。毎年、200万を超える、病院で獲得された感染があると見積もられており、これは適切な手の洗浄、および微生物病原体に対する迅速な検出システムによって予防し得たはずである。これらの感染は多くの患者にとって致命的であり得る。例えば、カテーテル処理による血液媒介の感染に発症した高齢患者は、50%を超える死亡率を有する。あいにくと、多くの症状は感染が既に確立された後に明らかであるに過ぎない。
【0006】
食物または水を媒介する病原体が第三世界の国々で遭遇されるか、またはバイオテロリズム攻撃で放たれる確率は、現在の技術の状態を仮定すれば問題である。疾患の多くの一般的な原因は、非常に低い濃度においてさえ汚染された水または食物を通じて、非常に若年または高齢の者を感染させ得る(10〜100細胞と少数の赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)または大腸菌(E. coli)O157:H7は疾患または死亡を引き起こし得る)。かかる汚染菌の早期の検出を提供する方法は有益であろう。というのは、現在の方法は、病原体の存在および同一性を適切に検出するのに長いサンプリングおよび収集時間を必要とするからである。早期の検出は、食物の回収の数および悪いブランド認識(例えば、加工工場がUSDAによって閉鎖された場合)を減少させるであろう。
【0007】
耐性細菌および生物兵器のこの時代には、ヒト病原体および生物学的トキシンの迅速な検出および同定は、最も適切な医療的応答を実行することができるように非常に重要である。早期の検出はシグナル増幅の何らかの方法を必要とする。というのは、生物学的作用因子(biological agent)は、該作用因子が他の増幅されない技術によって気付かないくらい微量で感染し得るからである。そのスピードおよび単純性において、現存の検出および同定システムを凌ぐシグナル増幅方法を有するのは有用であろう。
【0008】
発明の概要
本発明はチモーゲン、および検出アッセイおよび装置におけるその使用に関する。
【0009】
いくつかの態様において、本発明は、ペプチドの修飾を検出する方法を特徴とする。ある態様において、該方法は、チモーゲンを試料に曝露する工程および修飾または修飾の非存在を検出する工程を含む。該チモーゲンは該外因性ペプチド、および該外因性ペプチドによって阻害されるシグナル酵素を含む。該曝露は、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる。該修飾は該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、該シグナル酵素の活性化および検出可能なシグナルがもたらされる。適当なシグナル酵素のいくつかの例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、ラッカーゼ(CotA)、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が挙げられる。
【0010】
別の態様において、該方法は、ある構造を試料に曝露する工程および修飾または修飾の非存在を検出する工程を含む。該構造は外因性ペプチドおよび少なくとも1つの補因子を含む。該曝露は、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる。該修飾は該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、チモーゲンを活性化してシグナル酵素を生じさせる補因子が得られる。該切断は検出可能なシグナルももたらす。
【0011】
別の態様において、該方法は、外因性ペプチドを試料に曝露する工程および修飾または修飾の非存在を検出する工程を含む。該外因性ペプチドは少なくとも2つの酵素に付着し、該外因性ペプチドは該酵素を阻害する。該曝露は、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる。該修飾は該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、該酵素の活性化および検出可能なシグナルがもたらされる。
【0012】
さらなる態様において、該方法は、複合体を試料に曝露する工程および修飾または修飾の非存在を検出する工程を含む。該複合体は、少なくとも1つの外因性ペプチドおよび該外因性ペプチドによって阻害される少なくとも2つの酵素を含む。該曝露は、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で行われる。該修飾は該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、検出可能なシグナルが生じる。
【0013】
さらに他の態様において、該方法は、チモーゲンを液体試料に曝露する工程および修飾または修飾の非存在を検出する工程を含む。該チモーゲンは外因性ペプチドおよび該外因性ペプチドによって阻害されるシグナル酵素を含む。該チモーゲンは付着点において固体表面に付着し、該曝露は、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる。該修飾は該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、シグナル酵素の活性化、該シグナル酵素の固体表面からの分離、および検出可能なシグナルがもたらされる。
【0014】
なおさらに他の態様において、本発明は、外因性ペプチドが酵素の酵素活性を阻害するように、外因性ペプチドに共有結合した酵素を含む合成チモーゲンを特徴とする。該外因性ペプチドは微生物によって産生される酵素の標的を含む。
【0015】
本明細書中で用いられる場合、「標的」は、基質として作用するタンパク質、ペプチド、もしくはタンパク質またはペプチドの一部である。すなわち、標的は、酵素が結合および/または作用するペプチド、タンパク質またはその一部である。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、各々が外因性ペプチドに共有結合する少なくとも2つの酵素を含み、該外因性ペプチドは各酵素の酵素活性を阻害するチモーゲン複合体を特徴とする。
【0017】
なおさらに他の態様において、本発明はテスト装置を特徴とする。ある態様において、該テスト装置は膜、該膜に付着した少なくとも1つのペプチド、該ペプチドに付着したシグナル酵素、および第二の位置において該膜に付着した少なくとも1つの検出可能に標識された基質を含む。該ペプチドは微生物によって産生される酵素に対する基質を含み、該検出可能に標識された基質は該シグナル酵素に対する標的を含む。
【0018】
さらなる態様において、テスト装置は、固体表面、該固体表面に付着したペプチド基質、および該ペプチド基質に付着したチモーゲンを含む。該チモーゲンは、該ペプチド基質によって阻害されるシグナル酵素を含む。
【0019】
いくつかの態様において、本発明は、当該チモーゲンの活性部位(触媒部位)に挿入された外因性ペプチド(非天然ペプチド)と共に枯草菌(Bacillus subtilus)CotAを含む合成チモーゲンを特徴とし、ここで、該挿入されたペプチドは該チモーゲンの酵素活性を阻害する。該挿入されたペプチドはまた、(試料中の検出される)目的の微生物によって産生される酵素に対して特異的な標的ペプチド基質も含む。目的の微生物は細菌、ウイルス、真菌およびカビよりなる群から選択される微生物である。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、アルファ−1プロテイナーゼ阻害剤の反応性側ループよりなる外因性ペプチドと共にCotAを含む枯草菌CotA変異体(バリアント)を特徴とし、ここで、該ペプチドはラッカーゼ活性を阻害する。
【0021】
なおさらに他の態様において、本発明は、合成チモーゲンを含む微生物の検出用のセンサーを特徴とする。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、合成チモーゲンの使用を含む反応からシグナルを検出する方法を特徴とし、ここで、該反応はチモーゲンに挿入された外因性ペプチドの分解を含み、該挿入されたペプチドの分解に際して、チモーゲンの酵素活性は再活性化され、その結果、チモーゲン特異的基質が触媒され、検出可能なシグナルが生じる。チモーゲンの再活性化によって、複数のチモーゲン特異的基質触媒反応がもたらされ得、従って、挿入された外因性ペプチドの分解から生じたシグナルが増大する(増幅される)。検出可能なシグナルは、例えば、比色または蛍光シグナルであり得る。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、1つ以上の合成チモーゲンを含む合成チモーゲン複合体を特徴とし、ここで、チモーゲンは、目的の微生物およびチモーゲン双方に対して特異的な標的ペプチド基質を含むペプチドによってカップリングされる(付着または連結される)。チモーゲンの酵素活性は、例えば、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、または多銅オキシダーゼ活性であり得る。ある態様において、該合成チモーゲン複合体は枯草菌CotAを含む。
【0024】
いくつかの態様において、本発明は、合成チモーゲン複合体を含む微生物の検出用のセンサーを特徴とする。
【0025】
なおさらに他の態様において、本発明は、合成チモーゲン複合体の使用を含む反応からシグナルを増幅する方法を特徴とし、ここで、該反応はリンキングペプチドの分解を含み、該リンキングペプチドの分解に際して、該連結されたチモーゲンは互いに放出され、実質的に同時に、放出されたチモーゲンの酵素活性は再活性化され、その結果、複数のチモーゲン特異的基質触媒反応、およびシグナルの増幅がもたらされる。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、該チモーゲンの活性部位(触媒部位)に挿入された外因性プロテアーゼペプチド(非天然ペプチド)と共に非プロテアーゼ酵素を含む合成チモーゲンを特徴とし、ここで、該挿入されたペプチドはチモーゲンの酵素活性を阻害する。
【0027】
別の態様において、本発明は、非プロテアーゼチモーゲンの活性部位(触媒部位)に外因性プロテアーゼペプチドを挿入することを含む、合成チモーゲンの製造方法を特徴とし、ここで、該挿入されたペプチドはチモーゲンの酵素活性を阻害する。
【0028】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示したように、以下の本発明の好ましい態様のより具体的記載から明らかになろうが、異なる図面を通して、同様な参照文字は同一部分をいう。図面は必ずしも一定の尺度で比例せず、代わりに、本発明の原理を説明するのに際して強調を行う。
【0029】
本特許または本出願は、少なくとも1部の、色付きで製作された図面を含む。色付き図面を有する本特許または本特許出願公報の謄本は、請求および必要な手数料の納付後に提供されるものである。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の記載を以下に示す。本発明をその好ましい態様を参照して詳しく示し、記載するが、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細において種々の変化をなすことができることは、当業者に理解されよう。
【0031】
本発明は、化学反応を検出するセンサー(例えば、バイオ−病原体センサー)用のシグナル増幅システムに関する。反応の多工程触媒カスケードを利用することによって、本発明は化学反応または薬剤の迅速かつ正確な検出を提供する。例えば、本発明を用いて、微生物(例えば、ウイルス、細菌または真菌)によって産生されたトキシン、プロテアーゼまたはタンパク質を検出することができる。微生物タンパク質(例えば、プロテアーゼまたは他の酵素)からのシグナルを、検出アッセイ(例えば、比色アッセイ)で数秒間で増幅し、検出することができる。本発明を用いて、微生物汚染および/または感染を検出することもできる。本発明は、そのスピード、精度および/または感度において現存の検出および同定システムを凌駕する液相または固相検出システム(例えば、病原体センサーまたはセンサーシステム)を提供する。該センサーおよびセンサーシステムは同様にエアロゾル試料に用いられ得る。本発明は軍事および医療双方の適用に有用であり得る。
【0032】
微生物(例えば、細菌)は酵素を分泌または産生し、これらの酵素のいくつかは、産生または分泌微生物に対して特異的であるか、または特有である。このように、微生物によって産生されるいくつかの酵素は「フィンガープリント」または標的として働くことができ、検出アッセイ用のマーカーまたはインジケーターとして用いることができる。これらの標的のいくつかは、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)、緑嚢菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)および他のいくつかのものについての迅速かつ特異的なアッセイを生み出すのに用いられてきた。非常に少量の酵素を適切な条件下で多量の基質に繰り返し用いることができるので、酵素ベースのセンサーは単純な抗体ベースの技術では可能でない感度のレベルを達成することができる。簡単に述べれば、これらのセンサーおよび検出アッセイは、微生物(例えば、細菌または真菌)によって分泌または発現されたタンパク質(例えば、プロテアーゼまたは他の酵素)と相互作用することによって微生物の存在を検出する。例えば、センサーは、目的の微生物に特異的な酵素と相互作用するように設計されたペプチドまたは基質を含むことができる。センサーの基質が酵素と接触または相互作用すると、ペプチドは切断されるか、または検出可能なシグナルが生じるように修飾される。
【0033】
1つの例において、基質を2つの異なる色素で、一方の色素が他方への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を、色素分子が近接している場合に消光するように働くよう標識する。FRETは距離依存性励起状態相互作用のプロセスであり、ここで、ある蛍光分子の発光が別のものの励起とカップリングされる。共鳴エネルギー移動のための典型的なアクセプターおよびドナー対は4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ安息香酸(DABCYL)および5-[(2-アミノエチルアミノ)]ナフタレンスルホン酸(EDANS)よりなる。EDANSは336nm程度の波長における光の照射によって励起され、490nm程度の波長を有する光子を発する。DABCYL部位がEDANSの20オングストローム内に位置する場合、この光子は効率よく吸収される。DABCYLおよびEDANSはペプチド基質の反対側の端に付着する。該基質がインタクトである場合、FRETは非常に効率的である。ペプチドが酵素で切断されている場合、2つの色素はもはや近接しておらず、FRETは効率的でないであろう。切断反応は、DABCYL蛍光の減少またはEDANS蛍光の増加(消光の喪失)いずれかを観察することによって追跡することができる。このように、特異的酵素の存在、および従って、酵素産生微生物の存在が検出される。
【0034】
別の例において、基質は2つの比色成分に付着する。比色成分の1つは第一の色、例えば、青色であり得、第二の比色成分は第二の色、例えば、黄色であり得る。同一基質に存在する場合、修飾されていない基質は緑色に見え得る。その同一基質が(例えば、基質からの黄色比色成分の酵素切断によって)修飾された場合、基質は青色に見え得る。よって、基質の修飾は、色が緑色から青色に変化することによってシグナル化されるであろう。
【0035】
別の例において、基質は1つの比色成分で標識され、着色された固体支持体に付着する。比色成分は黄色等の第一の色であり得、固体支持体は青色等の第二の色であり得る。固体支持体と未修飾基質との組合せは緑色に見え得る。基質が(例えば、基質からの黄色比色成分の酵素的切断によって)修飾された場合、固体支持体および修飾された基質の組合せは青色に見えるであろう。よって、基質の修飾は緑色から青色への色の変化によってシグナル化されるであろう。
【0036】
本発明を用いて、前述のセンサーおよび検出アッセイを増幅または改良することができる。しかしながら、当業者であれば、他のセンサーおよび検出アッセイを本発明と組み合わせて用いることもできることを認識するであろう。本発明を適用または組み込むことができるセンサーおよび検出アッセイのいくつかの例は米国特許出願公開番号第2003/0096315 A1号として2003年5月22日に公開され、「Device for Detecting Bacterial Contamination and Method of Use」なる発明の名称の2001年5月3日に出願された米国特許出願番号第US 09/848,781号;国際公開番号第WO 03/063693 A2号として、2003年8月7日に公開され、「Method for Detecting Microorganisms」なる発明の名称の、2003年1月31日に出願された国際出願番号第PCT/US03/03172号;2004年6月10日に公開され、「Methods, Biosensors and Kits for Detecting and Identifying Fungi」なる発明の名称の、2003年11月21日に出願された国際出願番号第PCT/US2003/037319号;2004年1月31日に出願され、「Method for Detecting Escherichia Coli」なる発明の名称の国際出願番号第PCT/US2004/002594号;2003年1月31日に出願され、「Method For Detecting Escherichia Coli」なる発明の名称の米国仮出願番号第60/444,523号;および2004年6月9日に出願され、「Colorimetric Substrates, Colorimetric Sensors, and Methods of Use」なる発明の名称の米国仮出願番号第60/578,502号に記載されている。これらの各出願の教示全体が参照により本明細書に援用される。
【0037】
本発明は、触媒ターンオーバー事象(例えば、触媒反応)の潜在的数を増大または増加させるための触媒を用いるシグナルの増幅を提供する。いくつかの態様において、本発明は、微生物タンパク質(例えば、細菌トキシンまたはプロテアーゼ)の各ターンオーバー事象を増大させるために酵素触媒を用いる。他の態様において、本発明は、多触媒または「連鎖反応」機序を用いて、各ターンオーバー事象で活性化され得る酵素の量を増加させることによって、さらなる増幅を提供する。図1は、これらの増幅機序で得ることができる結果の比較例を示す。「速度」と標識されたトレンドラインは、本発明の触媒を用いることなく得られたターンオーバーを表す。「触媒」と標識されたトレンドラインは、各代謝事象を増大させるのに酵素触媒を用いて得られたターンオーバーを表す。「多触媒」と標識されたトレンドラインは、各ターンオーバー事象で活性化することができる酵素の量を増加させるための多触媒または「連鎖反応」機序の使用で得られたターンオーバーを表す。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、微生物タンパク質(例えば、微生物によって産生された、プロテアーゼまたは他の酵素等の微生物トキシン)の各ターンオーバー事象を増大させるために酵素触媒を利用するシグナル増幅である。例えば、目的の微生物タンパク質の標的配列を含むペプチドを、酵素の酵素活性が阻害されるように、シグナル酵素に連結または結合させる。換言すれば、ペプチドはシグナル酵素に結合し、または取り込まれ、それにより、チモーゲン(すなわち、不活性な酵素前駆体)を得る。シグナル酵素の阻害は、例えば、シグナル酵素の活性部位を立体的にブロックするシグナル酵素に分子を結合させることによって、あるいはシグナル酵素を不活性なコンフォメーション(inactive confirmation)へ折りたたませることによって達成することができる。ある態様において、ブロッキング分子をジスルフィド結合によってシグナル酵素に結合させる。
【0039】
この阻害された複合体は、例えば、ペプチド配列を基質として認識する微生物タンパク質(例えば、細菌プロテアーゼ)によって再活性化することができる。微生物タンパク質はチモーゲンのペプチド部分を切断し、それにより、シグナル酵素を活性化する。次いで、シグナル酵素は標識された基質(例えば、前述の標識基質)をターンオーバーして、比色または蛍光シグナル等の検出可能なシグナルを生じるのを開始することができる。このようにして、各個々のペプチド切断事象は、再活性化されたシグナル酵素によって短時間に多数のターンオーバーへと増大させることができる。
【0040】
図2は、この触媒増幅の背後の一般的機序のグラフ表示の1つの例を示す。左側では、チモーゲンはペプチド配列および阻害剤を含む。該阻害剤は活性部位を立体的にブロックし、チモーゲンのシグナル酵素部分を不活性にする。チモーゲンはプロテアーゼに遭遇し、これはペプチド配列を切断する。阻害部分と共にペプチドの切断された部分は活性部位から離れるように動き(例えば、移動または拡散し)、それにより、阻害を除去し、シグナル酵素を活性化する。次いで、シグナル酵素は自由に標識された基質を触媒し、それにより、検出可能なシグナルを生じさせる。
【0041】
本発明の他の態様において、別のまたは補充的シグナル酵素活性化機序を利用して、検出アッセイまたはセンサーのためのシグナルを増幅する。例えば、酵素活性は、触媒のためにシグナル酵素によって必要とされる補因子の利用可能性を制御することによって調節することができる。これは、比色または蛍光シグナルを生じることができる多くのシグナル酵素についての適当な機序である。いくつかの態様において、金属イオン補因子は、ペプチド切断反応によって放出され得る構造に閉じ込められる。ペプチドの切断は金属イオンを放出させ、多数の酵素を活性化する。このようにして、多くのシグナル酵素を一度に活性化することができ、それにより、得られるシグナルを増大させる。
【0042】
いくつかの態様において、本発明は多触媒または「連鎖反応」機序を利用して、各ターンオーバー事象で活性化することができるシグナル酵素の数を増加させ、それにより、検出アッセイにまたはセンサーからの増幅されたシグナルを得る。例えば、ペプチドは、2つ以上のシグナル酵素を(例えば、それが細菌プロテアーゼによって切断できるように)、微生物タンパク質と相互作用するペプチドの利用性を維持しつつ、シグナル酵素を立体的に妨げるようにカップリングさせることができる。カップリングされたシグナル酵素は同一、同様または異なり得る。いくつかの態様において、ペプチド配列は、微生物タンパク質および1つ以上のカップリングした酵素双方に対する適当な基質であるように設計される。
【0043】
図3は、この多触媒増幅の背後の一般的機序の図解表示の1つの例を示す。左側では、ペプチド配列は2つの不活性なシグナルタンパク質をカップリングさせ、1つのシグナルタンパク質は不活性な酵素であって、他方のシグナルタンパク質は不活性なプロテアーゼである。2つのシグナルタンパク質をカップリングさせるペプチドはそれらを不活性にした。チモーゲン/ペプチド複合体が微生物ペプチド(例えば、細菌プロテアーゼ)に遭遇した後、ペプチド配列が(例えば、加水分解を通じて)切断され、それにより、双方のシグナルタンパク質が活性化される。次いで、今や活性な酵素が、検出可能に標識された基質を自由に触媒して、シグナルを生じる。今や活性なプロテアーゼは、他のシグナルタンパク質を阻害しているペプチドの切断を自由に触媒し、それにより、ターンオーバー事象をさらに増大させる。このようにして、検出アッセイまたはセンサーの検出可能なシグナルは増幅される。結果はシグナルの増幅であり、これは、微生物タンパク質が単独でまたは直接的に検出可能に標識された基質と相互作用する機序に基づいた検出アッセイと比較して、または単一のシグナル酵素活性化工程を利用する触媒増幅と比較して、経時的増幅の速度の比較的大きな増加を提供するであろう。同様な機序が、例えば、蛍光基質との加水分解酵素で用いることができる。
【0044】
いくつかの態様において、これまでに記載した増幅方法の1つ以上を組み合わせて、および/または微生物タンパク質が直接的に検出可能に標識された基質と相互作用する機序に基づく検出アッセイと共に用いる。例えば、ある態様において、本発明は単一チモーゲンと共に、および/または触媒のためにシグナル酵素によって必要とされる補因子の利用可能性を制御することによって調節されるシグナル酵素活性化プロセスと共に、多触媒チモーゲン/ペプチド複合体を利用する。
【0045】
チモーゲンの設計
本発明の種々の態様で用いる適当なチモーゲンを設計または選択する場合には、以下を含むいくつかの因子を考慮することができる:
1. チモーゲンとシグナル酵素との間の活性の差。好ましくは、活性の差は所望のシグナル分解を供するのに十分に大きいものである。
2. チモーゲンを用いるアッセイのタイプ。好ましくは、アッセイは経済的であって、目的の用途にとって必要以上に複雑でないものである。
3. チモーゲンの感度。好ましくは、チモーゲンは、検出可能なシグナルを生じさせる微生物の数が存在する場合、検出アッセイが適当なシグナルを供するように目的の微生物タンパク質の存在に対して十分に感受性がある。
4. 活性化機序。好ましくは、チモーゲンは所望の機序(例えば、タンパク質分解活性化)によって活性化される。
5. 活性部位。好ましくは、活性部位は、検出可能に標識された基質、または検出可能なシグナルを生じさせるための他の手段と特異的に相互作用可能なように構成される。
これらの基準のいくつかまたはいずれも、具体的適用、または検出される微生物に応じて重要であり得る。これらおよび他の基準を満足するためのチモーゲンの構築または選択は適当な酵素の変異誘発によって行い、ペプチドおよび阻害剤(またはプロテアーゼ)領域を付着させることができる。一旦これが構築されれば、ランダム変異誘発を用いて、得られたチモーゲンの阻害および活性化特性を洗練することができる。
【0046】
本発明の増幅プロセスにおいてチモーゲンとして用いるのに適当な変異を同定するのに迅速スクリーニング方法を用いるのが有利である。例えば、活性の測定は、最初に、阻害について、次いで、再活性化の後に再度というように順次に行うことができる。図4は、以下の工程を含み得る一般的な初期インビトロスクリーニング戦略を示す:
1. 細胞を37℃にてLB培地中で一晩増殖させる。
2. 1mM IPTGでの誘導に続き、細胞を溶解させ、エピトープタグ結合プレート(例えば、ニトリロ三酢酸または抗体被覆プレート)に結合させる。
3. 次いで、プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄する。
4. 次いで、細胞を細菌プロテアーゼと共にインキュベートして、CotAチモーゲン変異体の再活性化を測定する。
5. 次いで、基質(例えば、ABTS)の存在下で最も再活性化された色を生じる変異体を、DNA配列決定によって同定する。
【0047】
酵素反応は、シグナル増幅、高スループットスクリーニング、およびタンパク質送達をはじめとした、多数の使用を有する普遍的タンパク質のオン−スイッチまたは光スイッチと考えることができる。シグナル増幅では、プロテアーゼによって加水分解されるいずれのタンパク質またはペプチドも、阻害剤が活性部位から離れるように拡散し、シグナルを生じさせることができる酵素活性のスイッチを入れることを可能とする。高スループットスクリーニングでは、ランダムタンパク質またはペプチドを酵素および阻害剤残基の間に入れて、新規な酵素(例えば、プロテアーゼ)につきスクリーニングすることができる。
【0048】
最後に、タンパク質送達では、酵素を抗体または他のタンパク質ベースの薬物に融合することができる。融合した酵素を用いて、細菌またはウイルス感染、および/または腫瘍細胞のような疾患の部位にタンパク質を送達することができる。融合産物の特異的加水分解によって抗体またはタンパク質薬物が放出され、病原体または腫瘍細胞の部位に送達される。このように、タンパク質薬物をより正確に処理の領域に送達することができる。一旦送達されれば、タンパク質薬物は、例えば、病原体または腫瘍細胞を弱めたり殺したりすることができる。本発明のいくつかの態様において、殺菌性ペプチドを、病原体(例えば、細菌)によって分泌または発現されたタンパク質と特異的に反応するか、または該タンパク質の標的である活性化リンカーにてチモーゲンに付着させることができる。細菌からの特異的プロテアーゼは、血流中の細菌を見出すか、またはそれに接触すると、(例えば、酵素を阻害しているペプチド基質と反応することによって)チモーゲンを活性化させ、殺菌性ペプチドの放出を誘発して、細菌を破壊するであろう。殺菌剤のこのタイプの標的化送達は、細菌が該殺菌剤に対する薬物耐性を強化するチャンスを減少させることができる。
【0049】
合成チモーゲンの設計、製造および使用のさらなる説明は1998年9月22日にJohan Hendrikus Verheijenに対して発行された米国特許第5,811,252号;Verheijen, J.H.ら、「Modified Proenzymes as Artificial Substrates for Proteolytic Enzymes: Colorimetric Assay of Bacterial Collagenase and Matrix Metalloproteinase Activity Using Modified Pro-Urokinase」, Biochem. J., 323: 603-609 (1997);Plainkum, P.ら、「Creation of a Zymogen」, Nature Struct. Biol., 10 (2): 115-119 (2003);およびSaghatelian, A.ら、「DNA Detection and Signal Amplification Via an Engineered Allosteric Enzyme」, JACS, 125: 344-345 (2003)に見出される。これらの文献の全教示は、参照によって本明細書中に援用される。加えて、本発明で用いられる微生物、酵素、および特異的基質の例は前記した米国および国際出願に見出される。
【0050】
ラッカーゼ(CotA)
ある態様において、シグナル酵素はラッカーゼである。ラッカーゼ(ジフェノールオキシダーゼ)は、酵素の多銅オキシダーゼファミリーのメンバーである。一般に、これらの酵素はフェノール、ポリフェノール芳香族アミン、および他の非フェノール性基質を1つの電子によって酸化してラジカル種を作り出すのに酸素を必要とする。ラッカーゼが触媒する一般的な酸化反応は以下の通りである:
【0051】
【化1】

【0052】
ラッカーゼは真菌の他、いくつかの植物および細菌にも見出される。ラッカーゼの天然の機能は2つのクラスに適合するようである:形成(胞子形成または色素沈着)および分解。ラッカーゼは産業化学において色素の漂白およびバイオレメディエーションならびにリグニンの分解のために用いられる。その安定性および酸化特性のため、部分的にチモーゲン合成用の適当な酵素である。種の酸化の結果、不対電子が生じ、色の変化を生じる。
【0053】
図6は、細菌ラッカーゼの1つの例である枯草菌CotAを示す。該酵素は胞子形成中に胞子殻の構築で用いられる(例えば、Enguita, F.J.ら、「Crystal Structure of a Bacterial Endospore Coat Component」, J. Biol. Chem., 278 (21): 19416-19425 (2003) 参照、その全内容は、参照によって本明細書中に援用される)。CotAの天然の機能は、UV耐性およびH2O2耐性のための胞子色素沈着を含むようである。活性部位は、真菌および植物に見出される酵素よりも大きな基質を受け取るようである。CotAは高度に熱安定性があり、例えば、界面活性剤の基剤またはホルマリン尿素基剤で用いることができる。また、可溶性がなく、膜タンパク質として作用し得る。単純なプロテアーゼアプローチよりもCotAまたは他のラッカーゼを用いる1つの利点はスピードである。CotAおよびラッカーゼは触媒酵素であるため、単純なプロテアーゼアッセイよりも色変化を生じさせるのにかなり迅速である(一般的には、数分間にわたるよりもむしろ数秒以内である)。
【0054】
CotAの配列は以下の通りである:


(枯草菌CotA配列;本明細書中においては「配列番号:1」ともいう)。
【0055】
CotAを用いて、該配列を修飾して、タンパク質のプロ酵素形態を生じさせることによって、チモーゲンを構築した。CotAの構造の分析が示すには、CotAのN-末端に付着させた適当な長さの延長で、付着させた阻害剤が酵素の活性部位に入ることを可能とすることができる。該延長アームは、病原体細菌からのプロテアーゼの切断標的であることが示されているペプチドの配列に基づく。これで、アームが細菌の存在下でクリップされることができる。ある態様において、ペプチド基質はCPI2またはECT2である。ペプチド基質CPI2およびECT2の配列は以下の通りである:
CPI2 Edans-EGAMFLEAIPMSIPK-Dabcyl
ECT2 Dabcyl-KVSRRRRRGGD-Edans
(配列EGAMFLEAIPMSIPKは本明細書中においては配列番号:2ともいい;配列KVSRRRRRGGDは本明細書中においては配列番号:3ともいう)。
【0056】
該延長アームの端部には、酵素の活性部位と相互作用する領域が位置する。これは、CotAの活性を阻害することができる1つ以上のアミノ酸残基よりなる。これは、活性部位ポケットおよび/または活性部位銅に結合することによって、または構造変化を引き起こすようにタンパク質構造と相互作用することによって達成することができる。CotAのx線構造の分析を用いて、該構造の周りの最短距離(約30Å)に到達するのに必要なアミノ酸の鎖の長さを測定した。
【0057】
3つの残基をランダム化して、最良の阻害剤組合せの選択を可能とした。各々の位置は変異体形態のN-末端から3アミノ酸であった。大腸菌プロテアーゼOmpTに対して特異的なペプチドECT2の配列に基づいて、同様の設計を生じさせることができる。このペプチドはCPI2よりも短いが、さらなる残基(例えば、SAS)を付加して、同一リーチにすると有益である。CotA変異体のN-末端への付加の配列を以下に示す:
タイプ1のCPI2変異体 MASXXXEGAMFLEAIPMSIPKTLEKFVDAL
タイプ2のCPI2変異体 MASXXXSASEGAMFLEAIPMSIPKTLEKFVDAL
タイプ3のCPI2変異体 MASXXXEGAMFLEAIPMSIPKSASTLEKFVDAL
タイプ1のECT2変異体 MASXXXSASVSRRRRRGGSASTLEKFVDAL
(配列MASXXXEGAMFLEAIPMSIPKTLEKFVDALは本明細書中においては配列番号:4ともいい;配列MASXXXSASEGAMFLEAIPMSIPKTLEKFVDALは本明細書中においては配列番号:5ともいい;配列MASXXXEGAMFLEAIPMSIPKSASTLEKFVDALは本明細書中においては配列番号:6ともいい;および配列MASXXXSASVSRRRRRGGSASTLEKFVDALは本明細書中においては配列番号:7ともいう)。
【0058】
アルファ−1プロテイナーゼ反応性部位(reactive side)ループ(RSL)を、図7に示すように、CotA N−末端に付着させた。CPI2は(システインプロテイナーゼ阻害剤またはCPIとも呼ばれる)アルファ−1プロテイナーゼ阻害剤の反応性部位ループ(RSL)の配列に基づいており、また、配列:
MASSFWEGAMFLEAIPMSIPKTLEKFVDAL(本明細書中では配列番号:8ともいう)
を有するSSM1 CotA変異体も調製した。
【0059】
図8は、CotA変異誘発に由来する一般的配列表を示す。図8には以下のものが含まれる:
1. SSM1変異体についての一般的ペプチド配列であって、本明細書中においては配列番号:9ともいう一般的配列
2. SSM2変異体についての一般的ペプチド配列であって、本明細書中においては配列番号:10ともいう一般的配列
3. SSM3変異体についての一般的ペプチド配列であって、本明細書中においては配列番号:11ともいう一般的配列
4. SSM4変異体についての一般的ペプチド配列であって、本明細書中においては配列番号:12ともいう一般的配列
5. T3変異体についての一般的ペプチド配列であって、本明細書中においては配列番号:13ともいう一般的配列。
タイプ2およびタイプ3変異体については、3アミノ酸のSAS延長を配列に挿入して、付加したアームにより大きな柔軟性およびより長いリーチを与えた。1つ以上のSAS延長を異なる点で挿入して、フレキシブルなリンカーを作り出すことができる。例えば、SAS延長を、本明細書中においては「配列番号:14」ともいう、以下の配列によって示されるような、ペプチド(例えば、CPI2ペプチド)の前および/または後に挿入することができる。
【0060】
配列番号:14 MASXXXSASEGAMFLEAIPMSIPKSASTLEKFVDAL
同様の手法が、例えば、変異タンパク質の端部の3つのランダム化されたアミノ酸の組を有するECT2ペプチドにつき示すことができる。
【0061】
連結されたチモーゲンならびに検出および診断における使用
いくつかの態様において、本発明は、ペプチドで固体表面(例えば、ビーズ)に連結されたシグナル酵素の使用を特徴とする。適当なシグナル酵素のいくつかの例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、ラッカーゼ(CotA)、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が挙げられる。該ペプチドは微生物タンパク質(例えば、細菌プロテアーゼなどの細菌酵素)に対する基質として機能する。ペプチドが目的の微生物タンパク質と相互作用する場合、該ペプチドは微生物タンパク質によって切断または加水分解される。この相互作用でシグナル酵素が放出され、次いで、シグナル酵素は自由にレポーターまたは検出可能に標識された基質と相互作用し、目的の微生物の存在を示す検出可能なシグナルを生じる。適当なレポーター基質の例として、ABTSおよびナフトールが挙げられる。
【0062】
いくつかの態様において、シグナル酵素基質は、側方流動膜またはビーズ(例えば、ニトロセルロースから作成されたもの)など表面に結合または連結することができる。該膜のある部分は連結されたシグナル酵素を含むことができ、一方、該膜の別の部分は検出可能に標識された基質を含むことができる。液体テスト試料は、連結されたシグナル酵素を含む膜の部分に導入される。液体テスト試料が目的の微生物タンパク質を含む場合、該微生物タンパク質はペプチドを切断し、活性化された酵素が遊離される。次いで、活性化された酵素は膜の検出可能に標識された基質が位置する部分に向かって移動する。活性化されたシグナル酵素が一旦膜の検出可能に標識された基質を含む部分に到達すれば、該シグナル酵素は該検出可能に標識された基質と相互作用し、目に見えるシグナルを生じる。
【0063】
膜材料はタンパク質および基質に対して不浸透性にするが液体または緩衝液は流動可能にするワックスまたは他の材料を用いて膜中にチャネルを形成することによって、同一の側方流動膜上で系列的に複数病原体または酵素を検出することができる。例として、パラフィンワックスをヘキサンに溶解させ、これを用いて、試料を複数チャンバー(例えば、チャネルまたはレーン)に分配することができる。これは、1つの単一側方流動膜内の病原体細菌の存在を検出するために複数の側方流動テストをして、各テストのコストを低減させるコスト効率の良い方法である。
【0064】
図15は、マルチチャネル側方流動膜のある態様の図を示す。ワックス(例えば、パラフィンワックス)をヘキサンに溶解させ、ピペットチップを用いてPOREX(登録商標)側方流動膜(Porex Technologies Corp., Fairburn Georgiaから入手可能)上へ重ねた。被テスト試料を、膜の下端部に位置する10ng HRPスポット上またはその近くに置く。試料は連結されたチモーゲンと相互作用し、ワックスラインまたはレーンを介して基質ラインに向かって流動を開始する。目的の微生物タンパク質がテスト試料に存在すれば、シグナル酵素が放出され、活性化している酵素がテスト試料に沿って基質ラインまで移動する。一旦この活性シグナル酵素が基質ラインに到達すれば、該酵素は、検出可能に標識された基質と相互作用し、目に見えるシグナル(例えば、目に見えるライン)を生じる。
【0065】
側方流動および液相診断に加えて、連結されたチモーゲンは、新規な診断標的用に高スループットスクリーン(HTS)で用いることもできる。例えば、スクリーンには、C-末端エピトープタグ(例えば、ポリヒスチジン)に付着したランダム10アミノ酸領域に合成により融合させた緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP)を用いることができる。該エピトープタグによって、微生物タンパク質(例えば、細菌プロテアーゼ)からの特異的酵素加水分解事象がレポーティング酵素の放出を誘発するまで、レポーターシステムが表面に連結されることができる。
【0066】
PCRを用いてランダムペプチドのGFPライブラリーを増幅、クローン化して、特異的タンパク質分解事象の存在を検出するために高スループットスクリーンを作成する。該スクリーンを用いて、ケア診断の迅速な時点へ組み込まれ得る細菌病原体に対する新規な基質を同定することができる。図16は、タンパク質ゲルの写真(右側)の横にDNAゲルの写真(左側)を示す。左側のDNAゲルは、全てGFPを有するライブラリーからの10個のクローンの試料を示し、右側のタンパク質ゲルは、全てのクローンがGFPを発現していることを示す。エピトープタグに結合する樹脂またはビーズにクローンを結合させることができるので、これらのタンパク質産物は、細胞の迅速な処理が可能な96、386またはそれ以上のウェル様式にてマイクロタイタープレートを用いる高スループットスクリーンに適している。
【0067】
個々のクローンがこの方法を用いて同定することができるプロセスを図5に示す。簡単に述べれば、細胞を増殖し、次いで、50μgのリゾチームおよび100UのDNAseIを含むマイクロタイタープレートに溶解させる。細胞破片を遠心分離によって除去し、GFP上清を、NTA樹脂を含むプレートに結合させて、タンパク質に特異的に結合させる。タンパク質の洗浄に際して、各ウェルを細菌培養と共にインキュベートし、次いで、スピンフィルターを通して遠心分離し、結合したGFPを遊離GFPから分離する。特異的にGFPを放出する試料を他の細菌と共に再度テストして、それらが特異的であるかを確認し、次いで、DNAを配列決定して、クローンを同定する。クローンのうちの1つを同定する。ペプチドを合成し、次いで、新規な迅速診断アッセイの開発のためにCotAまたはHRPに共有結合的に付着または作成する。
【0068】
実施例1:野生型および変異CotAバリアントのクローニングおよび発現
(表1に示した)オリゴヌクレオチドプライマーを、枯草菌からのCotAバリアント増幅中に遺伝子の5’末端のNheI制限部位および遺伝子の3’末端のXhoI部位に一体化するように設計した(制限部位は表1において下線を施す)。PCR増幅された断片を発現ベクターpET24a(Novagen, San Diego, Calif.)のNheI/XhoI部位にクローン化して、組換えSSMプラスミドを生成した(表2)。
【0069】
市販のT7プライマー組を用いたコロニーPCRにより、組換えSSM構築体中のインサートの存在が確認された。図9は得られたPCRゲルの写真を示し、PCRによって1.7kb野生型CotAの挿入を確認している。ベクターはpET24A、インサートは野生型CotA、用いたプライマー組は市販のT7プライマー組であった。レーン7はクローンJS6を示し、インサートサイズが約1.542kbであることを示している。
【0070】
【表1】

【0071】
(CotAForは本明細書中においては「配列番号:15」ともいい;変異FORcotAは本明細書中においては「配列番号:16」ともいい;CTAFE1は本明細書中においては「配列番号:17」ともいい;CTAFE2は本明細書中においては「配列番号:18」ともいい;新しいCMFは本明細書中においては「配列番号:19」ともいい;およびCotA Revは本明細書中においては「配列番号:20」ともいう)。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2:野生型およびCotAバリアントの発現
CotAバリアントを発現させるために、SSM構築体を大腸菌発現株BL21DE3に形質転換した。0.4の550nmにおける光学密度において、1mMのイソプロピル−β−D-チオガラクトピラノシド(IPTG; Sigma, St.Louis, Mo.)の添加によって細胞を誘導し、37℃にて増殖を3時間継続した。誘導に続き、1mlの細胞を遠心分離し、50μlのPSB(タンパク質試料緩衝液)に再懸濁させ、10分間沸騰させ、200Vで1時間電気泳動した。発現は、タンパク質試料を12%SDS PAGEゲルで泳動させることによって確認した。クローンJS6におけるCotAの過剰発現も示された。図10は、クローンJS6におけるCotAの過剰発現を示すゲルの写真を示す。
【0074】
図11は、T7プライマー組を用いるCotA変異体のPCRスクリーニングを示すゲルの写真を示す。図12は、SSM1クローンを用いる変異CotAの過剰発現を示すゲルの写真を示す。
【0075】
実施例3:CotAの野生型および変異バリアントのABTSアッセイ
2,2’-アジノビス(3-エチルベンズチアゾリン−6-スルホネート)(ABTS)アッセイを用い、CotA野生型および変異バリアントの活性を測定した。簡単に述べれば、45μlの野生型および変異CotA溶解物を、10μlのABTS基質(2.0mM)および45μlの1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と共にインキュベートした。37℃にて、415nmの波長を用い、96ウェルマイクロタイタープレートリーダーにて反応を追跡した。反応を1時間モニタリングし、KaleidaGraphソフトウェアを用いてプロットした。予測されたように、野生型は、CotA変異バリアントと比較した場合、ABTS基質に対して最高の反応性を有していた。図13は、CotAバリアント(SSM4-1、SSM1-1、SSM1-3、SSM2-4、およびSSM2-6)がCotAの延長および修飾によって部分的に阻害されたことを示すグラフを掲げる。図13において、「wt」とは野生型をいい、「1-1」とはSSM1-1をいい、「1-3」とはSSM1-3をいい、「2-4」とはSSM2-4をいい、「2-6」とはSSM2-6をいい、「3-1」とはSSM3-1をいい、「3-2」とはSSM3-2をいい、「4-1」とはSSM4-1をいう。
【0076】
図14に掲げたグラフに示されるように、CotA変異体、SSM4-1の活性はABTSアッセイによって測定されたように部分的に阻害された。しかしながら、同様のアッセイにおける化膿性連鎖球菌およびエンテロコッカス・フェカリスからの細菌上清の存在で、SSM4-1変異体の再活性化がおよそ3倍容易になった。細菌上清からの特異的プロテアーゼはSSM4-1変異体のCPI2ドメインを切断したところ、阻害性表現型が抑制解除された。ABTSアッセイを前述したように行った。簡単に述べれば、対照ミックスは、1xリン酸緩衝生理食塩水中、10μgのABTS、.2mM CuSO4、10%グリセロール、0.1%HECAMEG界面活性剤よりなる。再活性化ミックスは、1xリン酸緩衝生理食塩水中、10μlのABTS(2.0mM)、20μlの培養された細菌上清、0.2mM CuSO4、10%グリセロール、0.1%HECAMEG界面活性剤よりなる。このアッセイで用いた細菌培養(化膿性連鎖球菌およびエンテロコッカス・フェカリス)をトリプシンダイズブロス(TSB)中で一晩増殖させた。
【0077】
実施例4:ペプチドでのチモーゲンの連結
シグナル酵素を種々のペプチドで固体表面に連結またはコンジュゲートさせた。シグナル酵素を連結するのに首尾よく用いられたペプチドの例として以下のものが挙げられる:
1. (本明細書中においては配列番号:21ともいう)配列ETKVEENEAIQKを有するSAP2
2. (本明細書中においては配列番号:22ともいう)配列VTLENTALARCを有するC10
3. (本明細書中においては配列番号:23ともいう)配列QADALHDQASALKCを有するPAE8
4. 配列番号:2に示された配列を有するCPI2
5. (本明細書中においては配列番号:24ともいう)配列KVSRRRRRGGDKVSRRRRRGGDを有するT2X。
SAP2およびC10はブドウ球菌(Staphylococcus)に特異的であり、PAE8はシュードモナス(Pseudomonas)に対して特異的であり、T2は大腸菌に対して特異的であり、およびCPI2は広域スペクトルの病原体と相互作用するペプチドである。また、10アミノ酸可変配列を有する種々のランダムペプチドも、シグナル酵素を固体表面に連結するのに首尾よく用いられた。
【0078】
HRPのペプチドへのコンジュゲーションは、二機能性架橋試薬スルホ-SMCCを通じて行った。反応は、1)HRP-マレイミドの形成、続いての2)ペプチドとの反応を含めた2工程プロセスである。連結された表面から加水分解された後に、ペプチド-HRPコンジュゲートは目に見える青色を生じた。該コンジュゲーションのための一般的プロトコルは以下の通りであった。
Biobyne Cへのペプチド付着
1mgのペプチドをコンジュゲーション緩衝液(MES pH4.5)に溶解させた。125μlの10mg/mlのEDC(5:1比)を加え、室温で2時間の回転の間に膜と反応させた。室温での洗浄は、40mLのPBS+1%グリセロールおよびPBSにて20分間行った。
HRPマレイミドコンジュゲーション
2.5mgのRoche HRPを500μlの1Mリン酸ナトリウム(pH7.4)に溶解させた。スルホSMCCを50μlのDMSOに溶解させ、室温にて20分間、該HRPと合わせた。分離は、マレイミドコンジュゲーション緩衝液中、ゲル濾過で行った。
HRP-ペプチド膜コンジュゲーション
スルホ-SMCC(約1ml)を含まない画分をペプチド-Biodyneディスクと合わせ、回転させながら約4℃にて一晩反応させた。PBS中100mLの0.1%トリトンで20分間の洗浄を2回、続いて0.1% PEG5000溶液で20分間の洗浄を2回、および10%ショ糖溶液250mL中で1時間の洗浄を1回など、数回の洗浄を行い、続いてスピード真空処理を一晩行った。
【0079】
実施例5:連結チモーゲンアッセイ
連結チモーゲンは液相アプローチまたは、側方流動膜アプローチで用いることができる。側方流動膜アプローチにおいては、検出可能に標識された基質またはレポーター酵素が側方流動膜の表面に沈積した液体ニトロセルロースに捕捉または付着されて、レポーター酵素の拡散に続いて目に見えるラインが形成される。
【0080】
ナフトールと1:1の容積比で混合した酢酸アミル中の1%の高度に精製されたニトロセルロース(Electron Microscopy Scienceからのカタログ番号12620-50)のラインを膜上に沈積させた。該膜の長さは約3センチメートルであった。沈積前の溶液中の終濃度は10mg/mlニトロセルロースおよび20mg/mlナフトールであった。連結されたペプチド表面からの放出に際して、CotAおよびHRP酵素は側方流動チャンバーの表面から下方に移動した。沈積されたニトロセルロースに結合されたナフトールとの相互作用に際して、暗青色のラインが丁度数秒以内に形成され、細菌病原体の存在を示した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の増幅機序のいくつかで得ることができる結果の比較例を示す。
【図2】図2は、触媒増幅の1つの態様の背後の一般的機序の図解表示の1つの例を示す。
【図3】図3は、多触媒増幅の1つの態様の背後の一般的機序の図解表示の1つの例を示す。
【図4】図4は、一般的な初期インビトロチモーゲンスクリーニング戦略を示す。
【図5】図5は、それによって、本発明の方法を用いて個々のクローンを同定することができるプロセスを示す。
【図6】図6は、枯草菌CotAを示す。
【図7】図7は、CotA N-末端に付加されたアルファ-1プロテイナーゼ反応性側ループ(RSL)を示す。CPI2ペプチド配列で用いるCPIのRSL領域を黄色で示す。CotAに付加された同一領域を白色(太線)で示す。
【図8】図8は、SSM1変異体、SSM2変異体、SSM3変異体、SSM4変異体、およびT3変異体を含めたCotA変異誘発を示す。
【図9】図9は、1.7kb野生型CotAの挿入を確認する写真を示す。
【図10】図10は、クローンJS6におけるCotAの過剰発現を示すゲルの写真を示す。
【図11】図11は、T7プライマーセットを用いるCotA変異体のPCRスクリーニングゲルの写真を示す。
【図12】図12は、クローンJS6における変異CotA(SSM1)の過剰発現を示すゲルの写真を示す。
【図13】図13は、CotAの延長および修飾によって、CotAバリアントが部分的に阻害されたことを示すグラフを示す。
【図14】図14は、CotA変異体SSM4-1の再活性化のグラフを示す。
【図15】図15は、マルチチャネル側方流動膜の1つの態様のダイアグラムを示す。
【図16】図16は、タンパク質ゲルの写真(右側)と共にDNAゲルの写真(左側)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チモーゲンを試料に曝露する工程であって、該チモーゲンが外因性ペプチドおよび該外因性ペプチドによって阻害されるシグナル酵素を含み、該曝露が、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる工程;ならびに
b)修飾または修飾の非存在を検出する工程であって、該修飾が該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって該シグナル酵素の活性化および検出可能なシグナルの生成がもたらされる工程
を含む、ペプチドの修飾を検出する方法。
【請求項2】
該外因性ペプチドが該シグナル酵素の活性部位を立体的に妨げることによって該シグナル酵素を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該外因性ペプチドが該シグナル酵素を不活性なコンフォメーションに折りたたませることによって該シグナル酵素を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該検出可能なシグナルが、該シグナル酵素が検出可能に標識された基質と相互作用した後に生じる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該外因性ペプチドが微生物によって産生されたタンパク質によって切断される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該シグナル酵素がラッカーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該シグナル酵素がCotA酵素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該シグナル酵素が緑色蛍光タンパク質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該シグナル酵素がルシフェラーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該シグナル酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
a)ある構造を試料に曝露する工程であって、該構造が外因性ペプチドおよび少なくとも1つの補因子を含む、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下での工程;ならびに
b)修飾または修飾の非存在を検出する工程であって、該修飾が該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって、チモーゲンを活性化シグナル酵素にさせる補因子がもたらされ、該切断によって検出可能なシグナルももたらされる工程
を含む、基質の修飾を検出する方法。
【請求項13】
該検出可能なシグナルが、該活性化シグナル酵素が検出可能に標識された基質と相互作用した後に生じる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該外因性ペプチドが微生物によって産生されたタンパク質によって切断される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
該補因子が金属イオンである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
該構造が少なくとも3つの補因子を含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
該構造が少なくとも5つの補因子を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該構造が該補因子を固定し、該外因性ペプチドの修飾によって、該補因子を放出する構造がもたらされる、請求項12記載の方法。
【請求項19】
該シグナル酵素がラッカーゼを含む、請求項12記載の方法。
【請求項20】
該シグナル酵素がCotA酵素を含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
該シグナル酵素が緑色蛍光タンパク質を含む、請求項12記載の方法。
【請求項23】
該シグナル酵素がルシフェラーゼを含む、請求項12記載の方法。
【請求項24】
該シグナル酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項12記載の方法。
【請求項25】
a)外因性ペプチドを試料に曝露する工程であって、該外因性ペプチドが少なくとも2つの酵素に付着し、該外因性ペプチドが該酵素を阻害し、該曝露が、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる工程;ならびに
a)修飾または修飾の非存在を検出する工程であって、該修飾が該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって該酵素の活性化および検出可能なシグナルがもたらされる工程
を含む、ペプチドの修飾を検出する方法。
【請求項26】
該外因性ペプチドが、立体的に活性部位を妨げることによって該酵素の少なくとも1つを阻害する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該外因性ペプチドが該酵素の少なくとも1つを、該酵素を不活性なコンフォメーションに折りたたませることによって阻害する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
該検出可能なシグナルが、活性化された酵素の1つが検出可能に標識された基質と相互作用した後に生じる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
該外因性ペプチドが微生物によって産生されるタンパク質によって切断される、請求項25記載の方法。
【請求項30】
該酵素の1つが、検出可能に標識された基質および第二の酵素に特異的である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
該酵素の少なくとも1つがラッカーゼを含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
該酵素の少なくとも1つがCotA酵素を含む、請求項25記載の方法。
【請求項33】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項25記載の方法。
【請求項34】
該酵素の少なくとも1つが緑色蛍光タンパク質を含む、請求項25記載の方法。
【請求項35】
該酵素の少なくとも1つがルシフェラーゼを含む、請求項25記載の方法。
【請求項36】
該酵素の少なくとも1つがホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項25記載の方法。
【請求項37】
a)複合体を試料に曝露する工程であって、該複合体が少なくとも1つの外因性ペプチドおよび該外因性ペプチドによって阻害される少なくとも2つの酵素を含み、該曝露が、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる工程;ならびに
a)修飾または修飾の非存在を検出する工程であって、該修飾が該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって検出可能なシグナルがもたらされる工程
を含む、基質の修飾を検出する方法。
【請求項38】
該外因性ペプチドが、立体的に活性部位を妨げることによって該酵素の少なくとも1つを阻害する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該外因性ペプチドが該酵素の少なくとも1つを、該酵素を不活性なコンフォメーションに折りたたませることによって阻害する、請求項37記載の方法。
【請求項40】
該切断が該酵素を活性化し、活性化された酵素の少なくとも1つが検出可能に標識された基質と相互作用して該シグナルを生じる、請求項37記載の方法。
【請求項41】
該外因性ペプチドが微生物によって産生されるタンパク質によって切断される、請求項37記載の方法。
【請求項42】
該酵素の少なくとも1つがラッカーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項43】
該酵素の少なくとも1つがCotA酵素を含む、請求項37記載の方法。
【請求項44】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
該酵素の少なくとも1つが緑色蛍光タンパク質を含む、請求項37記載の方法。
【請求項46】
該酵素の少なくとも1つがルシフェラーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項47】
該酵素の少なくとも1つがホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項48】
該外因性ペプチドが、立体的に活性部位を妨げることによって該酵素の少なくとも1つを阻害する、請求項37記載の方法。
【請求項49】
該外因性ペプチドが該酵素の少なくとも1つを、該酵素を不活性なコンフォメーションに折りたたませることによって阻害する、請求項37記載の方法。
【請求項50】
該切断が該酵素を活性化し、活性化された酵素の少なくとも1つが検出可能に標識された基質と相互作用してシグナルを生じる、請求項37記載の方法。
【請求項51】
該外因性ペプチドが微生物によって産生されるタンパク質によって切断される、請求項37記載の方法。
【請求項52】
該酵素の少なくとも1つがラッカーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項53】
該酵素の少なくとも1つがCotA酵素を含む、請求項37記載の方法。
【請求項54】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
該酵素の少なくとも1つが緑色蛍光タンパク質を含む、請求項37記載の方法。
【請求項56】
該酵素の少なくとも1つがルシフェラーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項57】
該酵素の少なくとも1つがホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項37記載の方法。
【請求項58】
a)チモーゲンを液体試料に曝露する工程であって、該チモーゲンが外因性ペプチドおよび該外因性ペプチドによって阻害されるシグナル酵素を含み、該チモーゲンが付着点において固体表面と付着し、該曝露が、該外因性ペプチドの修飾を容易にする条件下で起こる工程;ならびに
a)修飾または修飾の非存在を検出する工程であって、ここで該修飾が該外因性ペプチドの切断を含み、該切断によって該シグナル酵素の活性化、該固体表面からの該シグナル酵素の分離および検出可能なシグナルがもたらされる工程
を含む、ペプチドの修飾を検出する方法。
【請求項59】
該シグナル酵素が固体表面に付着した検出可能な基質と相互作用する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
該シグナル酵素が液体中の検出可能な基質と相互作用する、請求項58記載の方法。
【請求項61】
外因性ペプチドに共有結合した酵素を含む合成チモーゲンであって、ここで該外因性ペプチドが該酵素の酵素活性を阻害し、該外因性ペプチドが微生物によって産生される酵素の標的を含む、合成チモーゲン。
【請求項62】
該酵素がラッカーゼを含む、請求項61記載の合成チモーゲン。
【請求項63】
該酵素がCotA酵素を含む、請求項61記載の合成チモーゲン。
【請求項64】
該CotA酵素がCotA変異体を含む、請求項63記載の合成チモーゲン。
【請求項65】
該酵素が緑色蛍光タンパク質を含む、請求項61記載の合成チモーゲン。
【請求項66】
該酵素がルシフェラーゼを含む、請求項61記載の合成チモーゲン。
【請求項67】
該酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項61記載の合成チモーゲン。
【請求項68】
各々が外因性ペプチドに共有結合した少なくとも2つの酵素を含むチモーゲン複合体であって、該外因性ペプチドが各酵素の酵素活性を阻害する、チモーゲン複合体。
【請求項69】
該酵素の少なくとも1つがラッカーゼを含む、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項70】
該酵素の少なくとも1つがCotA酵素を含む、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項71】
該酵素の少なくとも1つがCotA変異体を含む、請求項70記載のチモーゲン複合体。
【請求項72】
該酵素の少なくとも1つが緑色蛍光タンパク質を含む、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項73】
該酵素の少なくとも1つがルシフェラーゼを含む、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項74】
該酵素の少なくとも1つがホースラディッシュペルオキシダーゼを含む、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項75】
該外因性ペプチドが微生物によって産生される酵素の標的である、請求項68記載のチモーゲン複合体。
【請求項76】
a)膜;
b)該膜に付着した少なくとも1つのペプチドであって、該ペプチドは微生物によって産生される酵素の基質であるペプチド
c)該ペプチドに付着したシグナル酵素;および
d)第二の位置で該膜に付着した、検出可能に標識された少なくとも1つの基質であって、該検出可能に標識された基質が該シグナル酵素の標的である基質
を含む、テスト装置。
【請求項77】
a)固体表面;
b)該固体表面に付着したペプチド基質;および
c)該ペプチド基質に付着したチモーゲンであって、該チモーゲンが該ペプチド基質によって阻害されるシグナル酵素を含む、チモーゲン
を含む、テスト装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−503833(P2007−503833A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525456(P2006−525456)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/028675
【国際公開番号】WO2005/021780
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(504290653)エクスプレッシブ コンストラクツ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】