説明

合成樹脂成形品のパッケージ製造方法及び合成樹脂成形品のパッケージ

【課題】 粘着性を有する合成樹脂成形品の梱包作業の効率を向上すること。
【解決手段】 有孔フィルム11及び無孔フィルム12を金型1にインサートし、有孔フィルム11に設けられたゲート挿入孔13に挿入した射出ゲート5から両フィルム間に合成樹脂を射出して、その射出圧にて無孔フィルム12を膨れさせることにより、キャビティ8形状に倣った合成樹脂の成形品を両フィルム間に収容する。成形と梱包を同一の工程で行うことができ、例えば大判のシートを打ち抜き、手作業ではぎ取り、梱包用のフィルム上に載せ置くといった作業は不要になる。これにより作業効率が向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品のパッケージの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地震による揺れや衝撃によって家具等が転倒するのを防止するために、家具等と床や台との間に介装される粘着シートがある。この種の粘着シートの多くは、多数の高分子が互いに部分的につながってできた三次元網目状構造を持つゲルが用いられている。
【0003】
このゲル製の粘着シートは、粘着性が強いためにキャビティ面に粘着してしまうので射出成形するのは困難であった。
このため、出願人においては、家具等の下に設置するのに適したサイズのものは、大判のシートを打ち抜いて製造し、これを手作業ではぎ取って、梱包用のフィルム上に載せ置いていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の手順であると、主として粘着性が原因となって作業効率の向上が難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の合成樹脂成形品のパッケージ製造方法では、2枚のフィルムを金型にインサートし、該2枚のフィルムのいずれか1枚に設けられた孔から該2枚のフィルム間に合成樹脂を射出して、その射出圧にて該2枚のフィルムの少なくとも一方を膨れさせることにより、キャビティ形状に倣った合成樹脂の成形品を該2枚のフィルム間に収容するので、製品の成形と梱包を同一の工程で行うことができ、例えば大判のシートを打ち抜き、手作業ではぎ取り、梱包用のフィルム上に載せ置くといった作業は不要になる。これにより作業効率が向上できる。
【0006】
請求項5記載のように、前記合成樹脂の射出に伴ってキャビティを減圧すると、射出圧によるフィルムの膨れ変形がより速やかになるので、両フィルム間すなわちキャビティ内への合成樹脂の充填が良好になる。
【0007】
この合成樹脂成形品のパッケージ製造方法は、前述したゲルの成形、梱包に適しているが、ゲルでなくても粘着性を有する合成樹脂に適用できる。
包装材となるフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が適しているが、これに限定されるわけではない。
【0008】
2枚のフィルムは、同材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
また、各フィルムは、単層フィルムでもよいし、ラミネートフィルムでもよい。
2枚のフィルムのいずれか1枚に設けられた孔から2枚のフィルム間に合成樹脂を射出するので、射出ゲートは、孔に挿入できるように、キャビティ面から突出しているのが望ましい。その場合、請求項2記載のように、前記孔に挿入される射出ゲートのキャビティ面からの突出高さは、前記孔が設けられている前記フィルムの厚み以上であるのが好ましい。
【0009】
特に、射出ゲートのキャビティ面からの突出高さが、孔が設けられているフィルムの厚みを上回ると、請求項3記載のように、前記孔に挿入された射出ゲートの先端で相手方のフィルムを突いて両フィルム間に隙間を形成した後に、前記射出ゲートから前記合成樹脂を射出することができる。このように、射出ゲートを孔に挿入したときに射出ゲートの先端で相手方のフィルムを突いて予め両フィルム間に隙間を作るので、その後に射出ゲートから射出された合成樹脂が、この隙間を押し広げるようにして樹脂流れするから、確実に両フィルム間に合成樹脂が充填される。
【0010】
合成樹脂の成形品を互いの間に収容した2枚のフィルムは、成形品に粘着することで分離を防止されるが、溶着や凹凸の嵌合で相互に連結されてもよい。
合成樹脂の成形品は、通常はパッケージから取り出して使用されるが、請求項4記載のように、前記2枚のフィルムのいずれか1枚は、前記合成樹脂との接触面にフッ素樹脂コーティングされていると、フッ素樹脂コーティングの面で剥離しやすく、成形品をパッケージから取り出しやすい。
【0011】
請求項6記載の合成樹脂成形品のパッケージは、いずれか1枚に孔が設けられた2枚のフィルムの少なくとも一方を膨れさせて両フィルム間に形成した収容部に合成樹脂の成形品を収容したことを特徴とし、請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造でき、上述のとおりの効果がある。
【0012】
請求項7記載の合成樹脂成形品のパッケージは、前記2枚のフィルムのいずれか1枚は、内面にフッ素樹脂コーティングされていることを特徴とする請求項6記載の合成樹脂成形品のパッケージであり、請求項4記載の方法で製造でき、上述のとおりの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例1]
図1に示すように、本実施例で使用した金型1の可動型2には、凹室3が設けられている。一方、固定型4には、凹室3のほぼ中心になる位置に射出ゲート5が突出形成されている。射出ゲート5の内孔6には、図示しない射出装置から合成樹脂(本実施例では上述のゲル)が溶融状態で供給される。
【0014】
この金型1を型締めすると凹室3と固定型4のキャビティ面7とによってキャビティ8が形成される。
但し、本実施例では、有孔フィルム11と無孔フィルム12とを2枚重ねでインサートしてから型締めする。
【0015】
有孔フィルム11及び無孔フィルム12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)製の単層フィルムである。また、有孔フィルム11の内面(無孔フィルム12側の面)には、フッ素樹脂コーティングが施されている。
【0016】
有孔フィルム11には、射出ゲート5(突出部分)の外径をわずかに上回る径のゲート挿入孔13が設けられており、これを射出ゲート5(突出部分)に嵌合させるようにして、有孔フィルム11及び無孔フィルム12がインサートされる。
【0017】
射出ゲート5のキャビティ面7からの突出高さが有孔フィルム11厚みを上回っているので、型締めに伴って有孔フィルム11がキャビティ面7に押しつけられると、射出ゲート5の先端が無孔フィルム12を突く形になり、ゲート挿入孔13の周囲では有孔フィルム11と無孔フィルム12の間に隙間Sができる。
【0018】
このように有孔フィルム11と無孔フィルム12とを2枚重ねでインサートしてから金型1を型締めした後に、射出ゲート5から合成樹脂を射出する。
射出ゲート5から射出された合成樹脂は、射出ゲート5の先端が無孔フィルム12を突いてゲート挿入孔13の周囲に形成した隙間Sから有孔フィルム11と無孔フィルム12の間に進入し、その射出圧と温度にて無孔フィルム12を凹室3の内面に押しつけるように膨らませながら充填される。
【0019】
射出ゲート5から射出された合成樹脂が、ゲート挿入孔13の周囲に形成された隙間Sを押し広げるようにして樹脂流れするので、確実に両フィルム間に合成樹脂が充填される。
【0020】
本実施例では、合成樹脂をゆっくりと射出することにより、キャビティ8内(無孔フィルム12と凹室3との間)にある空気を排気口(図示略)から押出ながら、徐々に合成樹脂を充填する。このように、合成樹脂の射出速度を抑制してキャビティ8内の空気を排気しながら充填する手法を採用すれば、合成樹脂の射出前に、有孔フィルム11と無孔フィルム12との間に大きな隙間がなくてもよいので、製品(樹脂)内に空気を巻き込まず、気泡の無い高品質な製品を製造できる。
【0021】
なお、速やかな生産を行いたい場合は、合成樹脂の射出に伴って、可動型2の凹室3に設けられている吸気口(図示略)から吸気して、凹室3すなわちキャビティ8を減圧すればよい。そうすると、射出圧による無孔フィルム12の膨れ変形がより速やかになり、両フィルム間すなわちキャビティ8内への合成樹脂の充填がより速やかになる。
【0022】
図2に示すようにキャビティ8内へ十分な量の合成樹脂が充填されたところでゲートカットし、適宜の冷却時間を経過した後に型開して製品、すなわち合成樹脂成形品のパッケージ15を取り出す。図3に示すように、このパッケージ15は、キャビティ8の形状に倣った合成樹脂の成形品16を有孔フィルム11と無孔フィルム12との2枚のフィルム間に収容した形態である。有孔フィルム11及び無孔フィルム12は合成樹脂の粘着力によって成形品16に粘着しているから、有孔フィルム11又は無孔フィルム12が成形品16から分離するのは防止される。
【0023】
このように、有孔フィルム11及び無孔フィルム12を金型1にインサートし、有孔フィルム11に設けられたゲート挿入孔13に挿入した射出ゲート5から両フィルム間に合成樹脂を射出して、その射出圧にて無孔フィルム12を膨れさせることにより、キャビティ8形状に倣った合成樹脂の成形品を両フィルム間に収容するので、成形と梱包を同一の工程で行うことができ、例えば大判のシートを打ち抜き、手作業ではぎ取り、梱包用のフィルム上に載せ置くといった作業は不要になる。これにより作業効率が向上できる。
【0024】
また、製造されたパッケージ15では、成形品16の表面は、ゲート挿入孔13を除けば外部に露出していない。
合成樹脂の成形品16は、通常はパッケージ15から取り出して使用されるが、有孔フィルム11の内面(成形品16との接触面)にフッ素樹脂コーティングされているので、このフッ素樹脂コーティングの面で剥離しやすく、有孔フィルム11を成形品16から剥がし易い。従って、成形品16をパッケージ15から取り出しやすい。
【0025】
また、有孔フィルム11を剥がし易くなっているので、まず有孔フィルム11を剥がして成形品16の片面を露出させ、この面を成形品16の設置場所(例えば家具の下面)に粘着させてから無孔フィルム12を剥がせば、成形品16が指等に粘着しないから作業が容易である。しかも、成形品16が指などにつかないので油成分が成形品16につかず、粘着性能の低下原因を減らすことが可能になる。
[実施例2]
実施例1では可動型、固定型の一方(可動型2)に凹室が設けられている金型を使用したが、可動型、固定型の双方に凹室が設けられた金型を使用することもできるので、その一例を説明する。なお、実施例1と共通部分は実施例1と同符号を使用して説明を省略する。
【0026】
図4に示すように、この実施例の金型1aでは、固定型4にも凹室3aが設けられている。また、射出ゲート5は、ほぼキャビティ8の中心部まで突き出されている。この金型1aを用いると成形品16の厚みを大きくできる。つまり、厚みが大きい成形品16を成形する場合には、可動型2、固定型4の双方に凹室3、3aが設けられた金型1aを使用するとよい。このような構成であっても、射出ゲート5が相手フィルムを押すことによって、予め両フィルム間に実施例1で説明した隙間Sと同様に隙間を形成するので、その後の合成樹脂の充填が良好になる。
【0027】
なお、詳細な説明は省略するが、実施例2の構成でも実施例1と同様の効果が得られる。
[その他]
実施例1、2では合成樹脂の成形品を互いの間に収容した2枚のフィルムは、成形品に粘着することで分離を防止されるが、溶着や凹凸の嵌合で相互に連結されてもよい。
【0028】
また、実施例1、2において粘着性のゲルを成形する例を説明したように、本発明は粘着性が有る合成樹脂の成形品に適用するときわめて有用であるが、前述のようなフィルムの分離対策がなされていれば、本発明は粘着性でない合成樹脂にも適用できる。
【0029】
なお、粘着性(タック性)の測定方法として、PSTC−STC#6及びASTM D 3121に規定されているローリングボールタック法がある。上記の実施例などで「粘着性が有る」というのは、この方法での測定でおよそ150mm以下に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で金型を型締めした状態の説明図。
【図2】実施例1で合成樹脂の射出が完了した状態の説明図。
【図3】実施例1で製造されるパッケージの説明図。
【図4】実施例2で合成樹脂の射出が完了した状態の説明図。
【符号の説明】
【0031】
1、1a・・・金型、
2・・・可動型、
3、3a・・・凹室、
4・・・固定型、
5・・・射出ゲート、
6・・・内孔、
7・・・キャビティ面、
8・・・キャビティ、
11・・・有孔フィルム、
12・・・無孔フィルム、
13・・・ゲート挿入孔、
15・・・パッケージ、
16・・・成形品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のフィルムを金型にインサートし、
該2枚のフィルムのいずれか1枚に設けられた孔から該2枚のフィルム間に合成樹脂を射出して、その射出圧にて該2枚のフィルムの少なくとも一方を膨れさせることにより、
キャビティ形状に倣った合成樹脂の成形品を該2枚のフィルム間に収容する
ことを特徴とする合成樹脂成形品のパッケージ製造方法。
【請求項2】
前記孔に挿入される射出ゲートのキャビティ面からの突出高さは、前記孔が設けられている前記フィルムの厚み以上である
ことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂成形品のパッケージ製造方法。
【請求項3】
前記孔に挿入された射出ゲートの先端で相手方のフィルムを突いて両フィルム間に隙間を形成した後に、前記射出ゲートから前記合成樹脂を射出する
ことを特徴とする請求項2記載の合成樹脂成形品のパッケージ製造方法。
【請求項4】
前記2枚のフィルムのいずれか1枚は、前記合成樹脂との接触面にフッ素樹脂コーティングされている
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の合成樹脂成形品のパッケージ製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂の射出に伴ってキャビティを減圧する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の合成樹脂成形品のパッケージ製造方法。
【請求項6】
いずれか1枚に孔が設けられた2枚のフィルムの少なくとも一方を膨れさせて両フィルム間に形成した収容部に合成樹脂の成形品を収容した
ことを特徴とする合成樹脂成形品のパッケージ。
【請求項7】
前記2枚のフィルムのいずれか1枚は、内面にフッ素樹脂コーティングされている
ことを特徴とする請求項6記載の合成樹脂成形品のパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−307769(P2007−307769A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138035(P2006−138035)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】