説明

合成樹脂製ボトル及びその製造方法

【課題】ボトル内部の減圧度合いに応じてボトルの内圧を適切に調整することができ、製造コストを低減して胴部の減圧変形を確実に防止することができる合成樹脂製ボトル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】底部4に、胴部3の下端に連設された接地面10を有する脚部7と、脚部7に包囲された領域に形成されて胴部3内方乃至胴部3外方に向かって反転自在に傾斜する傾斜部8と、傾斜部8に包囲された底部中央部9とを設ける。傾斜部8の外周縁に沿って外周ヒンジ部11を設ける。傾斜部8の内周縁に沿って内周ヒンジ部12を設ける。傾斜部8の外周ヒンジ部11と内周ヒンジ部12との間に傾斜部8を屈曲自在とする中間ヒンジ部13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部と、該口部の下方に連設された筒状の胴部と、該胴部の下部を閉塞する底部とを備える合成樹脂製ボトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の合成樹脂製ボトルとして、例えばポリエチレンテレフタレート製のブロー成形ボトル(PETボトル)が知られている。
【0003】
この種のボトルにおいては、キャップにより口部を密封した後に内容物が冷却されると、内容物の体積減少等によりボトル内が減圧状態となり、この影響からボトルの胴部が変形して外観上好ましくない。
【0004】
このため、充填後の内容物の冷却による内部の減圧に伴う変形を均等に発生させる撓み自在のパネルを胴部に複数形成しておくことが行われている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなパネルを設けた場合には、ボトル形状が複雑となってボトルの材料コストが増加する。
【0005】
そこで、ボトルの底部に、一部を凹凸反転自在とする反転部を設け、その反転部を底部の外側に凸出させた状態で液状内容物を充填し、ボトル口部をキャップによって封止した後に反転部をボトルの内方に凹入させるようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に記載のボトルにおいては、ボトル底部の反転部を外側に凸出させた状態でボトルの内部に液状内容物を充填し、ボトル口部をキャップにより封止する。その後、外側に凸出した状態のボトル底部の反転部をボトル内部方向に押し上げ凹入する。これによって、ボトル内部の圧力が増加された状態となり、液状内容物が冷却される等により減圧状態となっても、ボトル内部の圧力が相殺されて容器の胴部の減圧変形が生じない。このように、ボトル底部に凹凸反転自在の反転部を設け、内容物を封止した後に反転部を反転させるようにすれば、ボトルの減圧変形が防止でき、ボトルの胴部に前述のような変形を均等に吸収するためのパネルを設ける必要がなく、ボトルデザインの自由度が向上すると共にボトルの材料コストを低減することができる。
【特許文献1】特開平6−72423号公報
【特許文献2】特表2006−501109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ボトル内部の減圧度合いは、ボトル内部への内容物の充填方法によって異なっている。即ち、加熱殺菌のため、高温(例えば約85℃)に加熱された飲料を内容物としてボトルの内部に充填する所謂ホット充填を採用した場合には、ボトルに充填された内容物の冷却に伴うボトル内部の体積減少も比較的大きく、このときの減圧に対応するために、反転部の凹入によるボトル容量変化を比較的大とする必要がある。一方、常温に近い飲料を内容物として無菌環境で充填を行う所謂アセプティック充填を採用した場合には、ボトルに充填された内容物の冷却に伴うボトル内部の体積減少も比較的小さい。そして、ホット充填に好適な反転部を備えるボトルを、アセプティック充填の際に採用して反転部を凹入させた場合には、ボトルの内圧が過剰に大となるおそれがある。このため、ホット充填とアセプティック充填とで同じ形状のボトルを用いることができず、夫々の充填方法に適した専用のボトルを用意しなければならないために、ボトルの製造コストが高くなる不都合がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ボトル内部の減圧度合いに応じてボトルの内圧を適切に調整することができ、製造コストを低減して胴部の減圧変形を確実に防止することができる合成樹脂製ボトル及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、口部と、該口部の下方に連設された胴部と、該胴部の下部を閉塞する底部とを備える合成樹脂製ボトルにおいて、前記底部は、胴部の下端に連設された接地面を有する脚部と、該脚部に包囲された領域に形成されて胴部内方乃至胴部外方に向かって反転自在に傾斜する傾斜部と、該傾斜部に包囲された底部中央部とを備えると共に、前記傾斜部の外周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に外周側のヒンジとなる外周ヒンジ部と、該傾斜部の内周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に内周側のヒンジとなる内周ヒンジ部と、該傾斜部の外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間に環状に形成されて該傾斜部を外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間で屈曲自在とする少なくとも1つの中間ヒンジ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の合成樹脂製ボトルによれば、その底部に前記傾斜部を備え、傾斜部の外周側と内周側とに、反転時にヒンジとなる外周ヒンジ部と内周ヒンジ部とを設けたので、外周ヒンジ部と内周ヒンジ部とを介して傾斜部を胴部の内方と外方とに向かって凹凸反転させることができる。これによって、傾斜部を反転させて胴部の外側下方に凸出状態で内容物をボトル内部に充填し、ボトル口部にキャップを嵌着して封止した後に傾斜部を胴部の内側上方に押し上げて凹入反転させるだけで、ボトル内部の容量を比較的大きく減少させることができ、ボトル内部の減圧状態が比較的大きい場合にその減圧状態を確実にを解消することができる。
【0011】
更に、本発明の合成樹脂製ボトルは、外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間に中間ヒンジ部を備えている。これにより、前記傾斜部を前記中間ヒンジ部を介して屈曲させることができる。そして、中間ヒンジ部の屈曲により、前記外周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部との間の前記傾斜部を凹入方向に傾斜させ、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部を凸出方向に傾斜させて、中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の傾斜部のみを凸出状態とすることができる。この状態で内容物をボトル内部に充填し、ボトル口部にキャップを嵌着して封止した後に中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の傾斜部のみを胴部の内側上方に押し上げて凹入反転させると、外周ヒンジ部と内周ヒンジ部とにわたる傾斜部を凹入反転させた場合に比してボトル内部の容量の減少を小とすることができ、ボトル内部の減圧状態が比較的小さい場合に過剰な減圧吸収を防止することができる。
【0012】
このように、本発明の合成樹脂製ボトルによれば、傾斜部の反転による容量変化を適度に調整することができ、例えば、ホット充填を行った際の冷却に伴うボトル内部の比較的大きな体積減少と、アセプティック充填を行った際の冷却に伴うボトル内部の比較的小さな体積減少との何れにも対応した傾斜部の凹凸反転状態を得ることができる。これによって、夫々の充填方法に適した専用のボトルを用意する必要がなく、ボトルの製造コストを低減することができる。
【0013】
また、本発明の合成樹脂製ボトルにおいては、前記底部を、前記傾斜部が前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間にわたって胴部中央に向かって下方に傾斜させた形状に形成することができる。この形状においては、前記傾斜部が胴部外方に向かって凸出する状態となる。このように予め傾斜部が胴部外方に凸出する形成に形成しておくことで、充填作業に先立って傾斜部を凸出させる作業が不要となり、充填後に凹入させるだけで冷却による減圧変形を防止することができるので、作業効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の合成樹脂製ボトルにおいては、前記底部を、前記傾斜部が前記中間ヒンジ部を介して屈曲した状態で凹入されることにより、前記外周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部との間の前記傾斜部が胴部中央に向かって上方に傾斜し、且つ、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部が胴部中央に向かって下方に傾斜した形状として、更に、該傾斜部及び底部中央部を前記脚部の接地面よりも上方位置で該脚部に包囲された内方に収納することが好ましい。これにより、中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の傾斜部のみが凸出した状態であっても、この凸出した部分が脚部の接地面よりも下方に張り出さず、脚部の接地面によりボトルを自立させることができるので、特にアセプティック充填を採用した場合に好適である。
【0015】
即ち、傾斜部が脚部の接地面よりも下方に張り出す場合には、ボトル底部に自立を補助するために接地部を有する筒状のパックを装着してボトルを自立させ、コンベア等による安定した自立搬送を行うことが考えられる。しかし、アセプティック充填においては、ボトルの内外面を殺菌処理し、無菌状態での充填作業が行われるが、このときボトルにパックを装着しておくためには、パック自体にも殺菌処理等を施さなければならず作業工数が増加して効率が低下する。それに対して、本発明の合成樹脂製ボトルにおいては、中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の傾斜部を凸出させても、ボトルを自立させることができるので、前記パックが不要となってコンベア等による安定した自立搬送を行うことができ、パック使用に伴う効率の低下を確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明の合成樹脂製ボトルにおいて、前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部とは前記傾斜部と共に二軸延伸されていることが好ましい。これによれば、各ヒンジ部(外周ヒンジ部、内周ヒンジ部、及び中間ヒンジ部)における折り曲げ易さを阻害することなく折り曲げ時の強度を十分に高くすることができ、傾斜部の反転を繰り返したときの各ヒンジ部及び傾斜部の亀裂や割れの発生を確実に防止することができる。なお、本発明における各ヒンジ部の具体的な形状としては、各ヒンジ部の断面視形状を湾曲形状とする、又は、各ヒンジ部の両側に比して各ヒンジ部の肉厚を薄く形成する、又は、各ヒンジ部の両側に沿って補強(肉厚を厚く)する等が挙げられる。
【0017】
また、合成樹脂製ボトルにおいて、前記傾斜部は、周方向に所定間隔を存して形成された複数の窪み部を備えることが好ましい。これによれば、傾斜部を反転させるときに、傾斜部の変形や屈曲を防止して確実に各ヒンジ部で屈曲させることができる。
【0018】
なお、本発明における前記傾斜部は、胴部内方に向かって断面視凸形状(即ち、内側に向かって湾曲する形状)とすることもでき、これによって、胴部の内方に凹入反転後は不用意に胴部の外方に突出反転し難くすることができる。
【0019】
また、本発明は、前記構成の合成樹脂製ボトルを製造する方法であって、ブロー成形金型内のプリフォームにブロー成形を施して前記胴部及び底部を形成するブロー成形工程と、該ブロー成形工程によって形成された前記胴部及び底部を備えたボトルをブロー成形金型から取り外す取り外し工程とを備え、前記ブロー成形工程は、前記底部の前記傾斜部を前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間にわたって胴部中央に向かって下方に傾斜させた形状に対応する底部成形部を備えるブロー成形金型により二軸延伸する底部延伸工程を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、ブロー成形工程において、前記底部成形部を備えるブロー成形金型によって、前記底部の前記傾斜部を前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間にわたって胴部中央に向かって下方に傾斜させた形状に対応する形状に成形する。これにより、底部は、傾斜部が外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間にわたって胴部外方に向かって凸出するようにブロー成形されて、傾斜部及び各ヒンジ部(外周ヒンジ部、内周ヒンジ部、及び中間ヒンジ部)が十分に延伸される。これにより、折り曲げ易く強度の高い傾斜部及び各ヒンジ部を形成することができ、特に、亀裂や割れの発生を確実に防止した各ヒンジ部を形成することができる。
【0021】
また、本発明の方法において、前記ブロー成形工程は、前記取り外し工程に先立って前記ブロー成形金型内において前記底部成形部により形成された前記傾斜部を前記中間ヒンジ部を介して屈曲させることにより、前記外周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部との間の前記傾斜部を胴部中央に向かって上方に傾斜させ、且つ、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部を胴部中央に向かって下方に傾斜させて、該傾斜部及び底部中央部を、前記脚部の接地面よりも上方位置で該脚部に包囲された内方に収納させる工程を備えることを特徴とする。
【0022】
これにより、前記ブロー成形金型の底部成形部により底部の傾斜部が外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間にわたって胴部外方に向かって凸出するようにブロー成形された後に、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部と底部中央部とにより構成される底部の一部が胴部外方に向かって凸出させた形状とすることができ、しかも、この凸出する底部の一部が脚部の接地面よりも上方位置で該脚部に包囲された内方に収納されるので、従来のボトルと同様の外観とすることができる。そして、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部と底部中央部とにより構成される底部の一部が凸出した状態であっても、この凸出部分は脚部の接地面よりも下方には張り出さず、コンベア等による安定した自立搬送を行う底部形状を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の合成樹脂製ボトルを縦断面視した説明図、図2は本実施形態の合成樹脂製ボトルの底部を示す説明的底面図、図3は本実施形態の合成樹脂製ボトルの底部を拡大して示す断面説明図、図4は底部に採用可能な窪み部を示す底部の説明的底面図、図5はブロー成形工程の一部を模式的に示す説明図、図6は傾斜部の反転作業を示す説明図、図7は傾斜部の他の反転作業を示す説明図である。
【0024】
本実施形態の合成樹脂製ボトル1は、図1に示すように、口部2と、該口部2の下方に連設された筒状の胴部3と、該胴部3の下部を閉塞する底部4とを備えている。ボトル1は、射出成形されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の図示しないプリフォームから二軸延伸ブロー成形され、これによって、胴部3及び底部4が二軸延伸された状態で形成されている。また、口部2の外周にはキャップ5(図1においては仮想線示する)を螺着するための螺着部6が形成されている。
【0025】
次に、本実施形態の合成樹脂製ボトル1の底部4について詳しく説明する。底部4は、図2及び図3に示すように、胴部3の下端に連続して形成された環状の脚部7と、該脚部7に包囲された領域に形成された傾斜部8と、底部4の中央部に形成された内方突出部9(底部中央部)とを備えている。脚部7は胴部3の下方に向かって突出するように湾曲した形状であり、その下方先端に、ボトル1を自立させるときに接地する接地面10を備えている。
【0026】
前記傾斜部8の外周縁(脚部7の内周縁との境界)には、外周ヒンジ部11が形成されている。また、前記傾斜部8の内周縁(内方突出部9の外周縁との境界)には、内周ヒンジ部12が形成されている。更に、外周ヒンジ部11と内周ヒンジ部12との間には中間ヒンジ部13が形成されている。傾斜部8は、外周ヒンジ部11と中間ヒンジ部13との間で反転自在に傾斜する第1反転部14と、中間ヒンジ部13と内周ヒンジ部12との間で反転自在に傾斜する第2反転部15とによって構成されている。
【0027】
外周ヒンジ部11と中間ヒンジ部13と内周ヒンジ部12とは、後述するブロー成形時に前記傾斜部8(第1反転部14及び第2反転部15)と共に二軸延伸され、更に、ボトル1に耐熱性を付与する場合には、ヒートセット処理が施される。内周ヒンジ部12は、傾斜部8よりも薄肉に形成されている。外周ヒンジ部11と中間ヒンジ部13とは、傾斜部8よりも薄肉に形成されており、ボトル1の内方に窪んだ断面視湾曲形状とされている。これによって、外周ヒンジ部11と中間ヒンジ部13と内周ヒンジ部12とは、ヒンジとしての折り曲げ易さを確保しながら第1反転部14及び第2反転部15の反転動作に対する高い折り曲げ強度を得ている。
【0028】
内方突出部9は、内周ヒンジ部12から胴部3の軸線に向かって立ち上がって胴部3の内部に突出し(外側から見て凹入されている)、頂部が略平坦な大略円錐形状に形成されている。内方突出部9の頂部の中心はボトル1の軸心(即ち、底部4の中心)に略一致している。また、内方突出部9は、底部4の外径に応じて適宜大きさを選択することができる。
【0029】
また、ボトル1の底部4は、図3に示すように、中間ヒンジ部13を介して傾斜部8を屈曲させることで、第1反転部14が胴部3中央に向かって上方に傾斜し、且つ、第2反転部15が胴部3中央に向かって下方に傾斜するようにして、第2反転部15のみを外側に凸出状態とすることができる。このとき、第2反転部15が外側に凸出状態にあっても、第2反転部15は脚部7の接地面10よりも上方に位置して脚部7に包囲された内方に収納されるようになっている。また、底部4は、第1反転部14と第2反転部15とが共に胴部3中央に向かって下方に傾斜した凸出状態とすることができる。このときには、第2反転部15が脚部7の接地面10よりも下方に張り出される。
【0030】
更に詳しくは、第1反転部14と第2反転部15とが共に下方に傾斜したとき、中間ヒンジ部13は、接地面10から外周ヒンジ部11までの範囲a内に位置するように設けられている。そして、傾斜部8における中間ヒンジ部13の位置は、外周ヒンジ部11を介して第1反転部14が反転するときの中間ヒンジ部13の移動距離bと、第1反転部14と第2反転部15とが共に下方に傾斜したときに接地面10から下方への張り出した第2反転部15の張り出し量cとの関係がb≧cとなるように設定されている。
【0031】
なお、本実施形態のボトル1は、外周ヒンジ部11、中間ヒンジ部13、及び内周ヒンジ部12を介して第1反転部14と第2反転部15とが各別に反転するようになっているが、第1反転部14と第2反転部15とは、夫々において凹入又は凸出させた後に不用意に戻り方向に反転しないように、傾斜部8の面形状、傾斜部8の傾斜角度、及び傾斜部8の大きさ等が適切に設定されている。
【0032】
また、底部4の傾斜部8には、図4(a)〜(c)に示すように、周方向に所定間隔を存して形成された複数の窪み部16を形成してもよい。窪み部16を設けておくことにより、傾斜部8を反転させるときに傾斜部8の不用意な変形が防止でき、また、第1反転部14と第2反転部15との夫々において、凸出状態や凹入状態からの不用意な反転を防止することができる。
【0033】
次に、本実施形態におけるボトル1の製造方法を説明すれば、ボトル1は、図5(a)及び(b)に模式的に示すように、ブロー成形金型17により成形される。該金型17は、胴部成形部18と底部成形部19とストレッチロッド20とを備えている。ストレッチロッド20は、その周壁にエアノズル21を備えている。胴部成形部18は、胴部3の外形に対応し、底部成形部19は、傾斜部8である第1反転部14と第2反転部15とが共に胴部3の下方に向かって傾斜した状態(即ち傾斜部8が胴部3の外方に凸出した状態)にある底部4の形状に対応している。また、底部成形部19の中央部には内方突出部9の外形に対応し、且つ、内方突出部9と共に中間ヒンジ部13を胴部3の内方に向かって押圧する押圧部材22が設けられている。
【0034】
ブロー成形金型17によるボトル1の成形においては、先ず、図示しないプリフォームがブロー成形金型17に取り付けられ、次いで、図5(a)に示すように、ストレッチロッド20の押し下げ引き伸ばしとエアノズル21からのエア供給とにより二軸延伸ブロー成形が行われる。これにより、胴部成形部18と底部成形部19とに密着するようにして胴部3と底部4とが形成される。このとき、底部成形部19が、傾斜部8が胴部3の外方に凸出した状態の底部4の形状に対応していることにより、傾斜部8と各ヒンジ部11,12,13とが底部成形部19に沿って確実に二軸延伸される。そして、底部成形部19に沿って底部4が形成されたとき、続いて、図5(b)に示すように、ストレッチロッド20が上昇し、押圧部材22が内方突出部9及び中間ヒンジ部13を胴部3の内方に向かって押し上げる。これにより、第2反転部15の凸出状態を維持して、中間ヒンジ部13を介して傾斜部8が屈曲し、第1反転部14が外周ヒンジ部11を介して反転して底部成形部19から離反する。これによって、ブロー成形金型17内部において、傾斜部8及び内方突出部9が脚部7の接地面10よりも上方位置で脚部7に包囲された内方に収納された状態となる。その後、図示しないが、ブロー成形金型17が分割され、内部からボトル1が取り出される。
【0035】
以上のようにブロー成形されてブロー成形金型17から取り出されたボトル1は、底部4の第1反転部14が胴部3に凹入され、第2反転部15が胴部3から凸出された状態となり、しかも、第1反転部14及び第2反転部15からなる傾斜部8と内方突出部9とが脚部7に包囲された内方に収納された状態となっている。これにより、第2反転部15が胴部3から凸出された状態にあっても、その部分は接地面10より下方に張り出さないので、次の工程(例えば、内容物を充填する工程)までのコンベア等による自立搬送を安定して行うことができる。
【0036】
そして、第2反転部15のみ胴部3から凸出された状態のボトル1に内容物が充填され、キャップ5が嵌着されて封止される。その後、ボトル1内部の内容物の温度低下に伴う減圧時に、図6(a)に示すように底部4の下方からアクチベータパンチ23を内方突出部9の内側に突き当てて底部4を押し上げる。これにより、第2反転部15は、中間ヒンジ部13及び内周ヒンジ部12を介して胴部3の内方に向かって反転し、図6(b)に示すように胴部3の内方に凹入される。これにより、図1に示すように、傾斜部8が外周ヒンジ部11と内周ヒンジ部12との間にわたって胴部中央に向かって上方に傾斜し、これに伴って、第2反転部15が凹入された分のボトル1の内容量が減少してボトル1の減圧変形が防止される。
【0037】
以上のように、内容物の充填に先立って第2反転部15のみを胴部3から凸出させた状態とし、内容物の充填後に第2反転部15のみを反転凹入させることにより、例えば、アセプティック充填を採用した内容物充填後のボトルのように、ボトル1内部の内容物の温度低下に伴う減圧が比較的小さい場合に好適である。
【0038】
また、例えば、ホット充填を採用した内容物充填後のボトルのように、ボトル1内部の内容物の温度低下に伴う減圧が比較的大きい場合には、図5(a)に示すように、底部成形部19に沿って底部4を成形し、次いで、ストレッチロッド20を上昇させて、押圧部材22による押し上げを行わずにブロー成形金型17の内部からボトル1を取り出す。これにより、ボトル1は傾斜部8である第1反転部14と第2反転部15とが共に胴部3の下方に向かって傾斜した状態(即ち傾斜部8全体が胴部3の外方に凸出した状態)とされる。
【0039】
そして、傾斜部8全体が胴部3の外方に凸出した状態のボトル1に高温の内容物が充填され、キャップ5が嵌着されて封止される。その後、ボトル1内部の内容物の冷却に伴う減圧時に、図7(a)に示すように底部4の下方からアクチベータパンチ23を内方突出部9の内側に突き当てて底部4を押し上げる。これにより、第1反転部14と第2反転部15とは一挙に、外周ヒンジ部11及び内周ヒンジ部12を介して胴部3の内方に向かって反転され、図7(b)に示すように胴部3の内方に凹入される。これにより、図1に示すように、傾斜部8が外周ヒンジ部11と内周ヒンジ部12との間にわたって胴部3中央に向かって上方に傾斜し、これに伴って、第2反転部15が凹入された分のボトル1の内容量が比較的大きく減少してボトル1の減圧変形が防止される。
【0040】
以上のように、本実施形態のボトル1によれば、充填後のボトル1内部の減圧が比較的小さいアセプティック充填を行う場合には、第2反転部15の反転凹入のみでボトル1の減圧変形が防止でき、充填後のボトル1内部の減圧が比較的大きいホット充填を行う場合には、第1反転部14と第2反転部15とを共に反転凹入させてボトル1の減圧変形を防止することができるので、ボトル内部の減圧度合いに応じてボトルの内圧を適切に調整することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、図5(b)に示すように、ブロー成形金型17の内部で底部4の第1反転部14が胴部3に凹入され、第2反転部15が胴部3から凸出された状態に形成する方法を示したが、このような底部4の形状を得るときには、これに限るものではなく、例えば、押圧部材22による押し上げを行わずにブロー成形金型17の内部から傾斜部8全体が胴部3の外方に凸出した状態のボトル1を取り出し、その後、内容物の充填に先立って中間ヒンジ部13を屈曲させて第1反転部14のみを反転させて、第2反転部15のみが胴部3から凸出させた状態に底部4を形成することもできる。また、本実施形態においては、傾斜部8に単一の中間ヒンジ部13を設けた例を示したが、中間ヒンジ部13は外周ヒンジ部11と内周ヒンジ部12との間に複数設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の合成樹脂製ボトルを縦断面視した説明図。
【図2】本実施形態の合成樹脂製ボトルの底部を示す説明的底面図。
【図3】本実施形態の合成樹脂製ボトルの底部を拡大して示す断面説明図。
【図4】底部に採用可能な窪み部を示す説明図。
【図5】ブロー成形工程の一部を模式的に示す説明図。
【図6】傾斜部の反転作業を示す説明図。
【図7】傾斜部の他の反転作業を示す説明図。
【符号の説明】
【0043】
1…合成樹脂製ボトル、2…口部、3…胴部、4…底部、7…脚部、8…傾斜部、9…内方突出部(底部中央部)、10…接地面、11…外周ヒンジ部、12…内周ヒンジ部、13…中間ヒンジ部、16…窪み部、17…ブロー成形金型、19…底部成形部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、該口部の下方に連設された胴部と、該胴部の下部を閉塞する底部とを備える合成樹脂製ボトルにおいて、
前記底部は、胴部の下端に連設された接地面を有する脚部と、該脚部に包囲された領域に形成されて胴部内方乃至胴部外方に向かって反転自在に傾斜する傾斜部と、該傾斜部に包囲された底部中央部とを備えると共に、
前記傾斜部の外周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に外周側のヒンジとなる外周ヒンジ部と、該傾斜部の内周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に内周側のヒンジとなる内周ヒンジ部と、該傾斜部の外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間に環状に形成されて該傾斜部を外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間で屈曲自在とする少なくとも1つの中間ヒンジ部とを備えることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
前記底部は、前記傾斜部が前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間にわたって胴部中央に向かって下方に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項3】
前記底部は、前記傾斜部が前記中間ヒンジ部を介して屈曲した状態で凹入されることにより、前記外周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部との間の前記傾斜部が胴部中央に向かって上方に傾斜し、且つ、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部が胴部中央に向かって下方に傾斜した形状とされ、
該傾斜部及び底部中央部は前記脚部の接地面よりも上方位置で該脚部に包囲された内方に収納されていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項4】
前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部とは前記傾斜部と共に二軸延伸されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項5】
前記傾斜部は、周方向に所定間隔を存して形成された複数の窪み部を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項6】
口部と、該口部の下方に連設された筒状の胴部と、該胴部の下部を閉塞する底部とを備え、前記底部は、胴部の下端に連設された接地面を有する脚部と、該脚部に包囲された領域に形成されて胴部内方乃至胴部外方に向かって反転自在に傾斜する傾斜部と、該傾斜部に包囲された底部中央部とを備えると共に、前記傾斜部の外周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に外周側のヒンジとなる外周ヒンジ部と、該傾斜部の内周縁に沿って環状に形成されて該傾斜部の反転時に内周側のヒンジとなる内周ヒンジ部と、該傾斜部の外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間に環状に形成されて該傾斜部を外周ヒンジ部と内周ヒンジ部との間で屈曲自在とする少なくとも1つの中間ヒンジ部とを備える合成樹脂製ボトルの製造方法であって、
ブロー成形金型内のプリフォームにブロー成形を施して前記胴部及び底部を形成するブロー成形工程と、該ブロー成形工程によって形成された前記胴部及び底部を備えたボトルをブロー成形金型から取り外す取り外し工程とを備え、
前記ブロー成形工程は、前記底部の前記傾斜部を前記外周ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間にわたって胴部中央に向かって下方に傾斜させた形状に対応する底部成形部を備えるブロー成形金型により二軸延伸する底部延伸工程を備えることを特徴とする合成樹脂製ボトルの製造方法。
【請求項7】
前記ブロー成形工程は、前記取り外し工程に先立って前記ブロー成形金型内において前記底部成形部により形成された前記傾斜部を前記中間ヒンジ部を介して屈曲させることにより、前記外周ヒンジ部と前記中間ヒンジ部との間の前記傾斜部を胴部中央に向かって上方に傾斜させ、且つ、前記中間ヒンジ部と前記内周ヒンジ部との間の前記傾斜部を胴部中央に向かって下方に傾斜させて、該傾斜部及び底部中央部を、前記脚部の接地面よりも上方位置で該脚部に包囲された内方に収納させる工程を備えることを特徴とする請求項6記載の合成樹脂製ボトルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−24314(P2008−24314A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195708(P2006−195708)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】