説明

合板のスカーフ接合方法

【課題】湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を採用することにより、合板のスカーフ接合に要するサイクルタイムを大幅に短縮し、生産性の向上を図る。
【解決手段】合板(1)をその厚み(T)が7.5〜35mm、幅(W)が900〜1250mm並びに長さ(L)が1600〜5000mmの合板(1)とし、そのスカーフ比が1:5〜1:10にシェービング加工されたスカーフ斜面(3f)(3r)へ、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(5)を100〜170g/m2 だけ塗布して、油圧コールドプレス(6a)(6b)により圧締圧力が0.8〜1.0MPaのもとで10〜20秒間冷圧硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合板のスカーフ接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば標準的な厚み(約12mm)の化粧床材となる合板を、スカーフ接合する従来の方法では特許文献1、2から明白なように、フエノール樹脂接着剤やメラミン樹脂接着剤などの熱硬化性樹脂接着剤を使用して、これを合板のスカーフ斜面へ塗布し、これが硬化するまで加熱室に放置したり、或いはホットプレスで一定時間だけ熱圧したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−187105号公報
【特許文献2】特開2003−94405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記熱硬化性樹脂接着剤は粘度が低く、大規模なホット(高周波)プレス装置を用いるも、その硬化するまで長時間熱圧接着する必要があり、バッチ的な処理であることとも相俟って、未だ生産性が悪い。又、その熱圧時に接着剤中の水分が、合板の表面層や裏面層に移行して膨張するため、不正変形を生じるおそれもあり、このことは針葉樹単板を積層した合板において特に顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では合板のスカーフ斜面に反応性ホットメルト接着剤を塗布して、コールドプレスにより冷圧固化することを特徴とする。
【0006】
又、請求項2では合板をその厚みが7.5〜35mm、幅が900〜1250mm並びに長さが1600〜5000mmの合板とし、そのスカーフ比が1:5〜1:10にシェービング加工されたスカーフ斜面へ、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を100〜170g/m2 だけ塗布して、油圧コールドプレスにより圧締圧力が0.8〜1.0MPaのもとで10〜20秒間冷圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成によれば、合板のスカーフ斜面同士が反応性ホットメルト(PUR)接着剤を介して、コールドプレスにより冷圧固化されるようになっているため、その初期タック力の強いことにより、後工程のプレスタイムを大幅に短縮することができ、しかも反応性ホットメルト接着剤は冷圧固化後空気中の水分(湿気)と架橋反応して、2段階の硬化作用を営むため、優れた接合強度を得られる効果がある。
【0008】
又、従来の熱硬化性樹脂接着剤をホットプレス装置で熱圧する方法に比し、その接着剤中の水分やプレス時の熱による影響を受けることがなく、そのため不正変形のおそれがない合板を、連続的に効率良く生産することができる。
【0009】
特に、請求項2の構成を採用するならば、そのスカーフ接合に必要なサイクルタイムを30秒/スカーフジョイントとして、従来のそれよりも2〜4倍程大幅に短縮することができ、生産性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の構造用合板を示す斜面図である。
【図2】合板のシェービング加工工程を示す説明図である。
【図3】スカーフ斜面に対する接着剤の塗布工程を示す説明図である。
【図4】スカーフ斜面同士の圧締工程を示す説明図である。
【図5】合板のシェービング加工工程から圧締工程までを自動間歇的な搬送ラインとして示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基いて本発明の実施形態を詳述すると、図1は本発明に係る構造用合板(1)を示しており、これはトドマツ単板やカラマツ単板、ラジアータパイン(ラジアタマツ)単板、その他のロータリー単板から3プライ〜11プライ積層された針葉樹合板であって、900mm〜1250mmの幅(W)と1600mm〜5000mmの長さ(L)並びに7.5mm〜35mmの厚み(T)を有する。
【0012】
本発明ではこのような合板(1)のうち、含水率が14重量%以下のもの、就中好ましくは8重量%〜14重量%に調整されたものを採用する。その含水率が14重量%を越えると、硬化速度に影響を及ぼすと考えられ、実際にはカビの発生や強度の低下を招来するおそれがあり、又8重量%未満であると、使用状態のもとで湿気を吸収し、膨張しやすくなる。
【0013】
そして、上記合板(1)を自動搬送ラインに沿って、順次間歇的に搬送し、その長手方向における前端部(一端部)と後端部(他端部)を、図2のような鋸や鉋などの切削刃物(2)により各々シェービング加工し、スカーフ比が1:5〜1:10の上向きスカーフ斜面(3f)並びに下向きスカーフ斜面(3r)として形成する。但し、合板(1)の厚み(T)が30mm以上である場合には、スカーフ比を1:8までに設定する。
【0014】
次いで、上記合板(1)の前端部と後端部に各々形成されたスカーフ斜面(3f)(3r)のうち、その搬送方向(A)の前側となる上向きスカーフ斜面(3f)へ、図3のような接着剤塗布ロール(4)を幅方向に沿い転動させて、接着剤(5)を塗布する。
【0015】
その場合、図2のシェービング加工工程と図3の接着剤塗布工程とを、説明の便宜上分けて記載しているが、実際には図5のような合板(1)の一旦停止中において、切削刃物(2)とその作用後部に付属一体化している塗布ロール(4)により、上記上向きスカーフ斜面(3f)のシェービング加工と、その直後の接着剤塗布とを言わば1工程として行なうのである。尚、上記合板(1)の下向きスカーフ斜面(3r)には接着剤(5)を塗布しない。
【0016】
何れにしても、上記接着剤(5)としては反応性ホットメルト(PUR)接着剤、殊更湿気硬化型のポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を採用し、しかもその塗布量を100g/m2 〜170g/m2 として塗布するのである。
【0017】
このようなホットメルト接着剤は初期タック力が強いため、後工程の圧締時間(プレスタイム)を短縮できるほか、これは冷却固化後でも、空気中に含まれる水分(湿気)と架橋反応して、2段階に硬化するため、1類相当の高い接合強度を得られる利点がある。但し、その塗布量が170g/m2 よりも多量であると、後工程の圧締時に接着剤のはみ出しが顕著となり、他方100g/m2 よりも少量であると、上記上向きスカーフ斜面(3f)に欠膠を起生するおそれがあるため、好ましくない。
【0018】
更に、上記合板(1)の上向きスカーフ斜面(3f)へ接着剤(5)を塗布した後、その接着剤(5)が未だ溶融状態にある上向きスカーフ斜面(3f)を、図4、5のように先行する合板(1)の後側となる下向きスカーフ斜面(3r)と重ね合わせて、上下ラム油圧式のコールドプレス(6a)(6b)により上下方向から、0.8MPa〜1.0MPaの圧締圧力のもとで10秒〜20秒だけ冷圧し、上記接着剤(5)を硬化させるのである。
【0019】
その場合、コールドプレス(6a)(6b)の圧締圧力が1.0MPaよりも高圧であると、合板(1)の潰れてしまうおそれがあり、他方0.8MPaよりも低圧であると、反りなどの変形を生じている合板(1)では、上記重ね合わせ面(接着面)が密着しなくなるため、0.8MPa〜1.0MPaに設定する。
【0020】
そうすれば、上記接着剤(5)は反応性ホットメルト(PUR)接着剤として、10秒〜20秒での短時間に固化し、合板(1)のスカーフ斜面(3f)(3r)同士を高強度の接着状態に圧締することとなり、その図5に示す合板(1)のシェービング加工から、そのスカーフ斜面(3f)(3r)同士の接着一体化するまでに要する時間(サイクルタイム)は、長くとも30秒/スカーフジョイントあれば足り、生産性を著しく向上することができる。
【0021】
又、上記反応性ホットメルト(PUR)接着剤は従来のスカーフ接合法に用いられている熱硬化性樹脂接着剤と異なって、水分を含んでおらず、その合板(1)の圧締上冷圧すれば、短時間での確固に硬化するため、加熱設備が不要となり、効率良く生産することができる。更に、合板(1)の水分放散や延いては反りなどの不正変形などを生じるおそれもなく、特に合板(1)の製造に使う単板が、抜け節などの多い針葉樹単板であるような場合、著しく有益であると言える。
【0022】
次に、本発明の具体的な実施例と、従来のスカーフ接合方法である比較例を示す。
【0023】
〈実施例〉
カラマツロータリー単板を9プライ積層接着して成る厚みが27mm、幅が910mm、長さが1820mmであり、含水率が8重量%の構造用針葉樹合板を準備した。
【0024】
そして、このような合板を順次自動間歇的に搬送し、その一旦停止中において、合板の前端部と後端部を切削刃物により各々シェービング加工して、スカーフ比が1:7の上向きスカーフ斜面と下向きスカーフ斜面とを形成した。しかも、その前端部の上向きスカーフ斜面を形成した直後、その上向きスカーフ斜面だけに湿気硬化型のポリウレタン樹脂系ホットメルト(PUR)接着剤を、塗布ロールにより上方から130g/m2 だけ塗布した。その場合、材面の温度は21℃、上記ホットメルトの温度は110℃であった。
【0025】
更に、このようなホットメルト接着剤が未だ溶融状態にあるうちに、その先行する合板の下向きスカーフ斜面と、後行する合板の上向きスカーフ斜面とを重ね合わせて、上下方向からコールドプレスにより挟み、その圧締圧力が1.0MPaのもとで、10秒(圧締時間)だけ冷圧した。
【0026】
上記合板に対するスカーフ斜面のシェービング加工から、そのスカーフ斜面同士の圧締完了までに要したサイクルタイムは、30秒/スカーフジョイントであり、生産速度を著しく向上させることができた。
【0027】
〈比較例〉
上記実施例1と同じ大きさ並びに含水率の構造用針葉樹合板を準備して、先ずその前端部と後端部をシェービング加工することにより、スカーフ比が1:7である上向きスカーフ斜面と下向きスカーフ斜面を形成した。
【0028】
次いで、上記合板の前端部をなす上向きスカーフ斜面へ接着剤塗布ロールにより、熱硬化性樹脂接着剤(メラミン樹脂接着剤とユリア樹脂接着剤との混合物)を218g/m2 だけ塗布した。その際の材面温度は21℃であった。
【0029】
更に、先行する合板の後端部をなす下向きスカーフ斜面と、後行する合板の上記熱硬化性樹脂接着剤が塗布された上向きスカーフ斜面とを重ね合わせて、高周波プレスにより上下方向から挟み、その熱盤温度が140℃、圧締圧力が1.1MPaのもとで、約60秒(高周波発振時間・圧締時間)だけ熱圧した。
【0030】
このような合板に対するスカーフ斜面のシェービング加工から、そのスカーフ斜面同士の圧締完了までに要したサイクルタイムは、最速でも90秒/スカーフジョイントであった。そのサイクルタイムが長くなる理由としては、上記熱硬化性樹脂接着剤が硬化するまでに長時間の熱圧を必要とするからであり、材料(合板)の搬送時間が長くなると、上記サイクルタイムも更に一層長くなる。
【0031】
この点、実施例1の本発明ではそのサイクルタイムが、比較例1のそれより約3倍も大幅に短縮できるのであり、生産性が著しく向上した。
【符号の説明】
【0032】
(1)・合板
(2)・切削刃物
(3f)・上向きスカーフ斜面
(3r)・下向きスカーフ斜面
(4)・接着剤塗布ロール
(5)・接着剤
(6a)(6b)・コールドプレス
(L)・長さ
(T)・厚み
(W)・幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板のスカーフ斜面に反応性ホットメルト接着剤を塗布して、コールドプレスにより冷圧硬化させることを特徴とする合板のスカーフ接合方法。
【請求項2】
合板をその厚みが7.5〜35mm、幅が900〜1250mm並びに長さが1600〜5000mmの合板とし、そのスカーフ比が1:5〜1:10にシェービング加工されたスカーフ斜面へ、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を100〜170g/m2 だけ塗布して、油圧コールドプレスにより圧締圧力が0.8〜1.0MPaのもとで10〜20秒間冷圧硬化させることを特徴とする請求項1記載の合板のスカーフ接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−16288(P2011−16288A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162403(P2009−162403)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000157256)丸玉産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】