説明

合金インゴットを処理するためのシステムおよび方法

合金インゴットの処理および熱間加工に関連する工程および方法を開示する。合金インゴットを熱間加工する前に、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に金属材料層を堆積させる。本工程および方法は、熱間加工中の合金インゴットの表面クラックの発生の低減を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合金インゴットを処理するためのシステムおよび方法を対象とする。本開示はまた、合金インゴットを熱間加工するための工程を対象とする。
【背景技術】
【0002】
金属合金製品は、インゴット冶金作業または粉末冶金作業を用いて調製され得る。インゴット冶金作業は、合金原料の融解と、融解した材料のインゴットへの鋳造とを伴い得る。インゴット冶金作業の限定的でない例は、「トリプルメルト」技術であり、次の3つの融解作業を含む。(1)原料から所望の合金組成を調製するための、真空誘導溶解(VIM)、(2)例えば酸素含有異物のレベルを低減し得る、エレクトロスラグ精錬(ESR)、および(3)ESR後の凝固中に起こり得る組成偏析を低減し得る、真空アーク再融解(VAR)。インゴットは、VAR作業後の凝固中に形成され得る。
【0003】
粉末冶金作業は、融解した合金の噴霧化と、凝固させた冶金粉末の収集およびインゴットへの圧密化とを含み得る。粉末冶金作業の限定的でない例は、以下のステップを含む。(1)原料から所望の合金組成を調製するための、VIM、(2)合金粉末に凝固する融解した合金液滴への融解した合金の噴霧化、(3)随意に、異物を低減するための、篩分け、(4)キャンニングおよび脱ガス、ならびに(5)合金粉末を合金インゴットに圧密化するための、プレス。
【0004】
インゴット冶金作業および粉末冶金作業から形成される合金インゴットは、他の合金製品を作製するために、熱間加工されてもよい。例えば、合金インゴットを形成するための凝固または圧密化の後に、インゴットは、インゴットから鋼片または他の合金物品を形成するために、鍛造および/または押し出しを受けてもよい。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示される実施形態は、インゴット処理方法を対象とする。インゴット処理方法は、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に金属材料層を堆積させることを含んでもよい。インゴット処理方法は、金属材料層が、熱間加工中の合金インゴットの表面クラックの発生を低減することを特徴としてもよい。
【0006】
本明細書で開示される他の実施形態は、熱間加工工程を対象とする。熱間加工工程は、合金インゴットを変形させるために、合金インゴットに力を印加することを含んでもよい。合金インゴットは、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積される金属材料層を含んでもよい。熱間加工工程は、金属材料層上に力が印加されることを特徴としてもよい。
【0007】
本明細書で開示される他の実施形態は、インゴット処理システムを対象とする。インゴット処理システムは、インゴット位置決め装置を備えてもよい。インゴット位置決め装置は、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させるように構成されてもよい。インゴット処理システムはまた、溶接装置を備えてもよい。溶接装置は、インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料層を堆積させるように構成されてもよい。
【0008】
本明細書で開示され、説明される本発明は、この発明の概要で開示される実施形態に限定されないものと理解される。
【0009】
本明細書で開示され、説明される限定的でない実施形態の種々の特性は、添付図面を参照することによってより良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】インゴットの端面上に堆積された金属材料層を有するインゴットの側面図である。
【図1B】図1Aに示されるインゴットの斜視図である。
【図2】インゴットの円周面上に堆積された金属材料層を有するインゴットの斜視図である。
【図3A】インゴットの端面および円周面上に堆積された金属材料層を有するインゴットの側面図である。
【図3B】図3Aに示されるインゴットの斜視図である。
【図4A】インゴットの円周表面上に溶着物として金属材料を堆積させる1つの方法を例証する斜視図である。
【図4B】インゴットの円周表面上に溶着物として金属材料を堆積させる1つの方法を例証する斜視図である。
【図4C】インゴットの円周表面上に溶着物として金属材料を堆積させる1つの方法を例証する斜視図である。
【図4D】インゴットの円周表面上に溶着物として金属材料を堆積させる1つの方法を例証する斜視図である。
【図5A】インゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させる別の方法を例証する斜視図である。
【図5B】インゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させる別の方法を例証する斜視図である。
【図5C】インゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させる別の方法を例証する斜視図である。
【図5D】インゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させる別の方法を例証する斜視図である。
【図6A】インゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させる方法の別の実施形態を例証する斜視図である。
【図6B】図6Aに示される、インゴットの円周面上全体に溶着物として堆積された金属材料層を有するインゴットの斜視図である。
【図7A】据え込み鍛造作業におけるインゴットの側部断面図である。
【図7B】据え込み鍛造後の図7Aに示されるインゴットの拡大部分側部断面図である。
【図7C】据え込み鍛造作業中で、インゴットの端面上に堆積された金属材料層を有するインゴットの側部断面図である。
【図7D】据え込み鍛造後の図7Cに示されるインゴットの拡大部分側部断面図である。
【図8A】引き抜き鍛造作業中のインゴットの側部断面図である。
【図8B】引き抜き鍛造後の図8Aに示されるインゴットの拡大部分側部断面図である。
【図8C】引き抜き鍛造作業中で、インゴットの円周面上に堆積された金属材料層を有するインゴットの側部断面図である。
【図8D】引き抜き鍛造後の図8Cに示されるインゴットの拡大部分側部断面図である。
【図9】それぞれが立方体の頂面上に溶接作業によって堆積された金属材料層を有する(写真のように配向された時)、2つの3インチ(約76.2mm)の合金立方体の写真である。
【図10A】合金立方体の1つのダイ接触面上に溶接作業によって堆積された金属材料層を有する3インチ(約76.2mm)の合金立方体からプレス鍛造された1インチ(約25.4mm)パンケーキの2つのダイ接触面の写真である。
【図10B】合金立方体の1つのダイ接触面上に溶接作業によって堆積された金属材料層を有する3インチ(約76.2mm)の合金立方体からプレス鍛造された1インチ(約25.4mm)パンケーキの2つのダイ接触面の写真である。
【図11】合金立方体の1つのダイ接触面上に溶接作業によって堆積された金属材料層を有する3インチ(約76.2mm)の合金立方体からプレス鍛造された、断面の1インチ(約25.4mm)パンケーキの写真である(写真のように配向された時の頂面)。
【図11A】図11に示される溶接面の断面に沿った顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
読み手は、本開示による種々の限定的でない実施形態の以下の発明を実施するための形態を検討した時に、前述の詳細、ならびにその他を理解するであろう。読み取りはまた、本明細書で説明される実施形態を実行または使用した時に、さらなる詳細を理解することができる。
【0012】
開示される実施形態の種々の説明は、開示される実施形態の明確な理解に関連するそれらの機構、態様、特性等だけを例証するために簡略化される一方で、明確にするために、他の機構、態様、特性等を排除していることを理解されたい。当業者は、開示される実施形態の本説明を検討した時に、他の機構、態様、特性等が、開示される実施形態の特定の実装または適用に望ましくなり得ることを認識するであろう。しかしながら、そのような他の機構、態様、特性等は、開示される実施形態の本説明を検討した時に当業者によって容易に確認および実装されてもよく、したがって、開示される実施形態の完全な理解には必要ではないので、そのような機構、態様、特性等の説明は本明細書には提供されない。よって、本明細書に記載される説明は、開示される実施形態を例示および例証するものに過ぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0013】
本開示では、特に指示されていない限り、数量または特性を表す全ての数は、「約」という用語が前置され、それによって修飾されるものとして理解されたい。故に、そうでないことが指示されていない限り、以下の説明に記載されるいかなる数値パラメータも、本開示による実施形態で得ようとする所望の特性に応じて変動し得る。最低でも、かつ均等の原則を特許請求の範囲に適用することを限定しようとするものとしてではなく、本説明で説明される各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈すべきである。
【0014】
また、本明細書で列挙されるいかなる数値的範囲も、その中に包含される全てのサブ範囲を含むことを意図している。例えば、「1から10」の範囲は、列挙される最小値1と列挙される最大値10との間(かつそれらを含む)の、すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する、全てのサブ範囲を含むことを意図している。本明細書で列挙されるいかなる最大数値限定も、その中に包含される全てのより小さい数値限定を含むことを意図しており、本明細書で列挙されるいかなる最小数値限定も、その中に包含される全てのより大きい数値限定を含むことを意図している。故に、出願人は、本明細書で明示的に列挙される範囲内に包含される任意のサブ範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む、本開示を修正する権利を留保する。全てのそのような範囲は、任意のそのようなサブ範囲を明示的に列挙するように修正することが、合衆国法典第35巻第112条第1項および合衆国法典第35巻第132条(a)項の要件を満たすように、本明細書で本質的に開示されることを意図している。
【0015】
本明細書で使用される場合、文法的な冠詞「1つの(one)」、(1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に指示されていない限り、「少なくとも1つの(at least one)」または「1つ以上の(one or more)」を含むことを意図している。したがって、冠詞は、その冠詞の文法的な対象のうちの1つまたは1つを超えること(すなわち、少なくとも1つ)を意味するように本明細書で使用される。一例として、「1つの構成要素(a component)」は、1つ以上の構成要素を意味し、したがって、場合によっては1つを超える構成要素が企図され、説明される実施形態の実装で利用または使用されてもよい。
【0016】
参照により本明細書に組み込まれると言われている、いかなる特許、刊行物、または他の開示資料も、特に指示されていない限り、組み込まれる資料が、本開示に明示的に記載されている既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲で、その全体が本明細書に組み込まれる。そのようなものとして、かつ必要な範囲で、本明細書に記載されている明示的な開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料にも優先する。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載されている既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾するいかなる資料またはその一部分も、その組み込まれる資料と既存の開示資料との間でいかなる矛盾も起こらない範囲で組み込まれる。出願人は、参照によって本明細書に組み込まれる任意の主題またはその一部分を明示的に列挙するように、本開示を修正する権利を覆す。
【0017】
本開示は、種々の実施形態の説明を含む。本明細書で説明される全ての実施形態は、例示的、例証的なものであり、かつ限定的でないことを理解されたい。したがって、本発明は、種々の例示的、例証的なものであり、かつ限定的でない実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、本開示に明示的または本質的に記載される、または別様に本開示によって明示的または本質的に支持される任意の特徴を列挙するように修正することができる、特許請求の範囲によってのみ定義される。したがって、そのようないかなる修正も、合衆国法典第35巻第112条第1項および合衆国法典第35巻第132条(a)項の要件を満たすであろう。
【0018】
本明細書で開示され、説明される種々の実施形態は、本明細書で様々に説明されるように、機構、態様、特性等を備える、それらから成る、またはそれらから本質的に成ることができる。本明細書で開示され、説明される種々の実施形態はまた、当技術分野において知られている、または別様に、実際に実装された時に種々の実施形態に含まれ得る、付加的または随意的な機構、態様、特性等を備えることができる。
【0019】
種々の合金は、クラック感受性を特徴とする。クラック感受性合金は、加工作業中にクラックを形成する傾向がある。クラック感受性合金インゴットは、例えば、クラック感受性合金インゴットから合金物品を作製するために用いられる熱間加工作業中に、クラックを形成する場合がある。例えば、合金鋼片は、鍛造変換を用いて、合金インゴットから形成されてもよい。他の合金物品は、押し出しまたは他の加工作業を使用して、合金鋼片または合金インゴットから形成されてもよい。熱間加工中(例えば、鍛造または押し出し中)の合金インゴットの表面クラックの発生のため、熱間加工作業を用いてクラック感受性合金インゴットから形成される合金物品(例えば、合金鋼片)の生産収率は低くなり得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「熱間加工」という用語は、周囲温度よりも高い温度で加工物に力を印加することを指し、印加される力は、加工物を変形させる。
【0021】
例えば鍛造または押し出し等の熱間加工作業中に、加工作業を受けている合金インゴットの温度は、インゴットの表面に力を機械的に印加するために使用されるダイの温度よりも高くなり得る。インゴットの表面と接触ダイとの間で結果として生じる温度勾配のずれは、特に、例えばニッケル基、鉄基、ニッケル−鉄基、ならびにコバルト基の合金および超合金等の、クラック感受性合金から形成されるインゴットについて、熱間加工中のインゴットの表面クラックの一因になり得る。
【0022】
本明細書で開示される実施形態は、熱間加工中の合金インゴットの表面クラックの発生の低減を特徴とする、インゴット処理方法および熱間加工工程を対象とする。種々の実施形態では、説明される方法および/または工程は、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に金属材料層を堆積させることを含んでもよい。合金インゴットは、堆積された金属材料層を有する表面の領域で力を合金インゴットに印加することによって熱間加工されてもよい。印加した力は、合金インゴットを変形させ得る。
【0023】
種々の実施形態では、合金インゴットは、クラック感受性合金を含んでもよい。例えば、種々のニッケル基、鉄基、ニッケル−鉄基、ならびにコバルト基の合金および超合金は、特に熱間加工作業中にクラック感受性であり得る。合金インゴットは、そのようなクラック感受性合金および超合金から形成されてもよい。クラック感受性合金インゴットは、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)合金、Rene88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金、およびInconel(登録商標)100が挙げられるが、これらに限定されない、合金または超合金から形成されてもよい。本明細書で説明される方法、工程、およびシステムは、概して、熱間加工温度での比較的に低い延性を特徴とする、任意の合金に適用することができる。本明細書で使用される場合、「合金」という用語は、従来の合金および超合金を含み、超合金は、比較的に良好な表面安定性、耐腐食性および耐酸化性、高強度、ならびに高温での高クリープ耐性を呈する。
【0024】
合金インゴットは、インゴット冶金作業または粉末冶金作業を用いて形成されてもよい。例えば、種々の実施形態では、合金インゴットは、VIMとその後のVAR(VIM−VAR作業)によって形成されてもよい。種々の実施形態では、合金インゴットは、ESR作業がVIM作業とVAR作業との中間に行われる(VIM−ESR−VAR作業)、トリプルメルトによって形成されてもよい。他の実施形態では、合金インゴットは、融解した合金の噴霧化と、結果として生じる冶金粉末の収集およびインゴットへの圧密化とを含む、粉末冶金作業を用いて形成されてもよい。
【0025】
種々の実施形態では、合金インゴットは、スプレー形成作業を用いて形成されてもよい。例えば、原料から基合金組成を調製するために、VIMを用いてもよい。ESR作業は、随意に、VIMの後に用いられてもよい。融解した合金は、融解した液滴を形成するために、VIMまたはESR融解プールから抽出されて、噴霧化されてもよい。融解した合金は、例えば、低温壁誘導ガイド(CIG)を使用して融解プールから抽出されてもよい。融解した合金液滴は、凝固したインゴットを形成するために、スプレー形成作業を用いて堆積されてもよい。
【0026】
最初のインゴット形成後であるが、インゴット上への金属材料層の堆積および以降のインゴットの熱間加工前に、合金インゴットは、熱処理および/または表面調整されてもよい。例えば、種々の実施形態では、合金インゴットは、インゴットの合金組成および微細組織を均質化するために、高温に露出されてもよい。高温度は、合金の再結晶温度を上回るが、合金の融点温度より低くてもよい。
【0027】
合金インゴットは、例えば、インゴットの面を研削または剥離することによって、表面調整されてもよい。合金インゴットはまた、研磨および/またはバフ磨きされてもよい。表面調整作業は、例えば高温での均質化等の、任意の随意的な熱処理ステップの前および/または後に行われてもよい。
【0028】
種々の実施形態では、金属材料層が、合金インゴットの表面の少なくともある領域に堆積されて、冶金的に結合されてもよい。例えば、金属材料層が、インゴットの表面上に溶着物として堆積されてもよい。溶着物は、金属不活性ガス(MIG)溶接、タングステン不活性ガス(TIG)溶接、プラズマ溶接、サブマージアーク溶接、および電子ビーム溶接が挙げられるが、これらに限定されない、溶接作業を用いて、合金インゴットの表面の少なくともある領域に冶金的に結合されてもよい。
【0029】
金属材料層は、使用される特定の加工温度において下側にあるインゴットの合金よりも延性および/または可鍛性がある、金属材料を含んでもよい。金属材料層は、使用される特定の加工温度において下側にあるインゴットの合金よりも高い耐久性および/またはより小さい硬度を呈する、金属材料を含んでもよい。種々の実施形態では、金属材料層は、接触ダイの表面から下側にあるインゴットの表面を隔離し、それによって、下側にあるインゴットの表面が、熱間加工中により容易にクラックが生じ得る脆化温度まで冷却されるのを防止する。
【0030】
金属材料層は、耐酸化性である金属材料を含んでもよい。種々の実施形態では、金属材料層は、熱間加工中またはそれ以外の間に酸化しない。金属材料層は、比較的に高剛性(例えば、比較的に低い弾性係数)を呈する、金属材料を含んでもよい。種々の実施形態では、熱間加工中に(例えば、1つ以上のダイによる力の印加が、比較的に低い剛性の金属材料が、その下側にあるインゴットの表面上で薄層化を引き起こすであろう場合)金属材料層は、実質的に薄層化しない。
【0031】
種々の実施形態では、金属材料および下側にあるインゴットを形成する合金は、同じ母材を含んでもよい。例えば、合金インゴットが、ニッケル基合金または超合金(例えば、Alloy720、Rene88(商標)合金、またはWaspaloy(登録商標)合金)を含む場合、堆積される層の金属材料も、例えばニッケル基溶接合金(例えば、Techalloy606(商標)合金(Techalloy Company/Central Wireから入手可能))等の、ニッケル基合金を含んでもよい。
【0032】
金属材料層は、接触ダイの表面から下側にあるインゴットの表面を隔離し、それによって、下側にあるインゴットの表面が、熱間加工中により容易にクラックが生じ得る温度まで冷却されるのを防止するのに十分な厚さまで堆積させてもよい。このようにして、より高い熱間加工温度は、概して、より大きい金属材料層の厚さと相関し得る。種々の実施形態では、金属材料層は、0.25インチから0.5インチ(約6.35mmから約12.7mm)の厚さで、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積されてもよい。
【0033】
合金を効果的に熱間加工することができる温度範囲は、合金の中にクラックを起こす温度に基づく。熱間加工作業のための所与の初期温度において、いくつかの合金は、合金の中にクラックを起こす温度差のため、他の合金よりも大きい温度範囲で効果的に熱間加工することができる。比較的に小さい熱間加工の温度範囲(すなわち、初期温度とクラックを起こす温度との差)を有する合金の場合、下側にあるインゴットが、クラックを起こす脆化温度範囲まで冷却されるのを防止するために、金属材料層の厚さを比較的により大きくする必要があり得る。同様に、比較的に大きい熱間加工の温度範囲を有する合金の場合、金属材料層の厚さを比較的により小さくして、それでも、下側にあるインゴットが、クラックを起こす脆化温度範囲まで冷却されるのを防止するようにしてもよい。
【0034】
種々の実施形態では、金属材料層は、合金インゴットの少なくとも1つの端部上に堆積されてもよい。図1Aおよび1Bは、対向する端部13aおよび13bを有する細長い合金インゴット10を例証する。金属材料層15aおよび15bは、合金インゴット10の端部13aおよび13b上に堆積される。図1Aおよび1Bは、インゴット10の両端部13aおよび13b上の金属材料層を示しているが、種々の実施形態では、金属材料層は、細長い合金インゴットの一方の端部上にだけ堆積されて、他方の対向端部には堆積された金属材料層がなくてもよい。図1Aおよび1Bは、インゴット10の端部を完全に覆う金属材料層を示しているが、種々の実施形態では、金属材料層は、細長い合金インゴットの対向端面の一方または両方のある部分または領域上にだけ堆積されてもよい。種々の実施形態では、金属材料は、インゴットの合金よりも延性があってもよい。
【0035】
金属材料層は、円筒合金インゴットの円周面の少なくともある領域上に堆積されてもよい。図2は、対向端部23aおよび23bと、円周面27(破線で示される)とを有する、合金インゴット20を例証する。金属材料層25は、合金インゴット20の円周面27上に堆積される。図2は、円周面27を完全に覆う金属材料層を示しているが、種々の実施形態では、金属材料層は、円筒合金インゴットの円周面のある部分または領域上にだけ堆積されてもよい。
【0036】
図3Aおよび3Bは、対向端部33aおよび33bと、円周面37(破線で示される)とを有する、合金インゴット30を例証する。金属材料層35は、合金インゴット30の円周面37ならびに端部33aおよび33b上に堆積される。このようにして、合金インゴット30は、堆積された金属材料層35で完全に覆われる。下側にあるインゴットの表面は、図3Aおよび3Bでは破線で示される。図3Aおよび3Bは、インゴット30の端部および円周面を完全に覆う金属材料層を示しているが、種々の実施形態では、金属材料層はまた、細長い円筒合金インゴットの対向端面および/または円周面の一方または両方のある部分または領域上にだけ堆積されてもよい。
【0037】
種々の実施形態では、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させて、回転するインゴットの円周面の第1の領域上に溶着物として金属材料を堆積させることによって、金属材料層が、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として堆積されてもよい。金属材料層は、少なくとも1つの静止溶接トーチを使用して堆積されてもよい。溶接トーチは、インゴットが回転して、表面がトーチの下を通過する時に、金属材料をインゴットの表面上に堆積させてもよい。このようにして、インゴットが少なくとも1回転進んだ時に、金属材料の環状層が、円筒インゴットの円周面の第1の領域上に堆積されてもよい。
【0038】
回転するインゴットが少なくとも1回転進み、インゴットの円周面のある領域上に金属材料の環状層を堆積させた後に、金属材料の堆積させた環状層に隣接する場所に、少なくとも1つの溶接トーチが再配置されてもよい。再配置は、少なくとも1つの溶接トーチをインゴットに対して移動させることによって、および/またはインゴットを少なくとも1つの溶接トーチに対して移動させることによって行ってもよい。再配置された溶接トーチは、次いで、回転するインゴットの円周面の第2の、またはそれ以降の領域上に溶着物としてさらなる金属材料を堆積させてもよい。このようにして、第2の、またはそれ以降の環状の金属材料層が、以前に堆積させた環状の金属材料層に隣接して形成されてもよい。種々の実施形態では、金属材料の環状層は、金属材料層が、円筒インゴットの円周面の少なくともある領域を覆う連続する層を集合的に形成するように、互いに隣接して、かつ互いに接触して連続的に形成されてもよい。
【0039】
少なくとも1つの溶接トーチの再配置および金属材料の環状層の堆積は、合金インゴットの円周面が連続する金属材料層で実質的に覆われるまで、連続的に繰り返されてもよい。種々の実施形態では、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に均一な金属材料層を形成するために、溶接作業のパラメータ、溶接トーチの配置、およびインゴットの配置は、予め定められていてもよく、および/または能動的に制御されてもよい。
【0040】
図4A−4Dは、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料を堆積させる実施形態を集合的に例証する。合金インゴット100は、矢印102によって示されるように、長軸101の周りを回転する。インゴット100が長軸101の周りを回転した時に、溶接トーチ110は静止したままであり、インゴット100の円周面170上に金属材料150を堆積させる。金属材料150は、インゴットが、インゴット100が加工される温度である時に、合金インゴット100の合金よりも延性および/または可鍛性があってもよい。溶接トーチ110は、円周面170が溶接トーチ110の下を通過する時に、インゴット100の円周面170の第1の領域171上に金属材料150を堆積させる。溶接トーチ110は、インゴット100が少なくとも1回転進み、金属材料150の環状層がインゴット100の円周面170の第1の領域171上に堆積されるまで、静止したままである(図4C)。
【0041】
図4Cに示されるように、インゴット100を少なくとも1回転させることによって、金属材料150の環状層がインゴット100の円周面170の第1の領域171上に堆積された後に、溶接トーチ110は、図4Cの矢印112によって示されるように、インゴット100の長軸101に平行な方向にトーチをある距離移動させることによって再配置される。溶接トーチ110は、溶接トーチ110が、第1の領域171に隣接して、したがって、既に堆積された金属材料150の環状層に隣接して位置するように再配置される(図4D)。図4Cは、長軸101に平行に溶接トーチ110を移動させることによって溶接トーチ110を再配置することを例証しているが、インゴット100に対する溶接トーチ110の位置はまた、インゴット100を長軸101に平行に移動させることによって変えてもよい。
【0042】
図4Dに示されるように、再配置された溶接トーチ110は、インゴット100が長軸101の周りを回転した時に、インゴット100の円周面170の第2の領域172上に溶着物としてさらなる金属材料150’を堆積させる。このようにして、金属材料150’の第2の環状層が、金属材料150の第1の環状層に隣接して堆積される。溶接トーチ110およびインゴット100の相対的位置の変更、ならびに金属材料の環状層の堆積は、合金インゴット100の円周面170が、例えば図2に示されるように、金属材料で実質的に覆われるまで、連続的に繰り返されてもよい。
【0043】
種々の実施形態では、インゴットの長軸の方向に、円筒インゴットの円周面の第1の領域に沿って少なくとも1つの溶接トーチを移動させることによって、金属材料層が、インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として堆積されてもよい。少なくとも1つの溶接トーチを、インゴットの長軸の方向に、円筒インゴットの円周面の第1の領域に沿って移動させる一方で、円筒インゴットを静止保持してもよい。代替として、少なくとも1つの溶接トーチを静止保持する一方で、円筒インゴットをインゴットの長軸の方向に移動させて、少なくとも1つの溶接トーチの下を円筒インゴットの円周面の第1の領域に通過させてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、インゴットの長軸に平行に、インゴットの円周面の第1の領域上に金属材料を堆積させてもよい。このようにして、金属材料の層は、インゴットの長軸に概して平行に、インゴットの円周面上に堆積されてもよい。
【0044】
インゴットの長軸に平行に、インゴットの円周面上に金属材料の層を堆積させた後に、円筒インゴットは、堆積させた金属材料層(および円周面の対応する領域)を、少なくとも1つの溶接トーチから離れて移動させ、かつ少なくとも1つの溶接トーチに向かって円周面の第2の、または以降の領域を移動させるように再配置されてもよい。このようにして円筒インゴットが再配置された後に、少なくとも1つの溶接トーチをインゴットの円周面の第2の、または以降の領域に沿って、インゴットの長軸に平行な方向に、少なくとも1つの溶接トーチを移動させることによって、さらなる金属材料が、インゴットの円周面上に溶着物として堆積されてもよい。
【0045】
少なくとも1つの溶接トーチを、インゴットの長軸に平行な方向に、円筒インゴットの円周面の第2の、または以降の領域に沿って移動させる一方で、円筒インゴットを静止保持してもよい。代替として、少なくとも1つの溶接トーチを静止保持する一方で、円筒インゴットをインゴットの長軸に平行に移動させて、少なくとも1つの溶接トーチの下を円筒インゴットの円周面の第2の、または以降の領域に通過させてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、インゴットの円周面の第2の、または以降の領域上に金属材料を堆積させてもよい。このようにして、金属材料のさらなる軸方向の層は、インゴットの長軸に概して平行にインゴットの円周面上に堆積されて、同様にインゴットの長軸に概して平行に堆積された金属材料の以前に堆積させた層に隣接し、かつそれと接触してもよい。種々の実施形態では、インゴットの円周面に対する少なくとも1つの溶接トーチの位置が変わるように、少なくとも1つの溶接トーチおよびインゴットの両方の位置が移動されてもよい。
【0046】
円筒インゴットおよび少なくとも1つの溶接トーチの相対的再配置、ならびにインゴットの長軸に平行な方向でのインゴットの円周面上への金属材料の層の堆積は、合金インゴットの円周面が金属材料で実質的に覆われるまで、連続的に繰り返されてもよい。種々の実施形態では、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に均一な金属材料層を形成するために、溶接作業のパラメータ、溶接トーチの配置、およびインゴットの配置は、予め定められていてもよく、および/または能動的に制御されてもよい。
【0047】
図5A−5Dは、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料を堆積させる実施形態を集合的に例証する。図5Aを参照すると、長軸201と、円周面270とを有する、合金インゴット200が示される。金属材料250の層は、長軸201に平行な方向に配置された、インゴット200の円周面250の領域271上に堆積されるように示される。溶接トーチ210が、矢印212によって示されるように、長軸201に平行な方向に、領域272に沿って移動する時に、溶接トーチ210は、円周面270の領域272上に溶着物250’としてさらなる金属材料を堆積させる。溶接トーチ210は、金属材料の層250が、インゴット200の概して全長に沿って、円周面270の領域272の中に堆積されるまで、矢印212によって示されるように移動する(図5C)。
【0048】
図5Cおよび5Dに示されるように、金属材料250の層が領域272の中に堆積された後に、インゴット200は、金属材料層250(および領域272)を、溶接トーチ210から離れて移動させ、かつ円周面270の領域273を溶接トーチ210に向かって移動させるように再配置される。インゴット200は、図5A−5Dでギリシア文字のシータ(θ)によって示される所定のインデックス角度だけ、インゴット200を回転させることによって再配置される。
【0049】
図5Dに示されるように、インゴット200が再配置された後に、矢印212によって示される、長軸201に平行な方向に、円筒インゴット200の円周面270の領域273に沿って、溶接トーチ210を移動させることによって、別の金属材料の層が、インゴット200の円筒面270の領域273上に溶着物250’’として堆積される。このようにして、金属材料250のさらなる層は、インゴット200の円周面270周辺で互いに隣接し、かつ接触して形成される。金属材料の第1の層を、円周面270の領域271上に堆積させた。次いで、合金インゴット200を、所定のインデックス角度θだけ回転させた。金属材料の第2の層を、円周面270の領域272上に堆積させた。次いで、合金インゴットを、所定のインデックス角度θだけ回転させた。第3の層は、長軸201に平行な方向に図4Dの円周面270の領域273上に堆積されているように示される。例えば、図2に示されるように、インゴット200の再配置、溶接トーチ210の移動、および金属材料の層の堆積は、合金インゴット200の円周面270が金属材料で実質的に覆われるまで、連続的に繰り返されてもよい。
【0050】
図5A−5Dは、溶接トーチ210が、矢印212によって示される、長軸201に平行な方向に、インゴット200の円周面270の領域(271、272、273)に沿って移動する一方で、インゴット200が静止保持されるように示される。代替として、溶接トーチ210を静止保持し、インゴット200の円周面270の領域(271、272、273)が静止溶接トーチ210の下を通過するように、インゴット200を長軸201の方向に移動させてもよい。溶接トーチ210は、インゴット200の円周面270の領域(271、272、273)上に金属材料250の層を堆積させてもよい。このようにして、例えば、図2に示されるように、金属材料のさらなる層は、インゴット200が金属材料で実質的に覆われるまで、インゴット200の長軸201に概して平行に、かつ互いに隣接して、インゴット200の円周面270上に堆積されてもよい。
【0051】
種々の実施形態では、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させて、回転するインゴットの円周面上に溶着物として金属材料を堆積させることによって、金属材料層が、インゴットの表面上に溶着物として堆積されてもよい。金属材料層は、少なくとも1つの移動する溶接トーチを使用して堆積されてもよい。インゴットが回転する時に、少なくとも1つの溶接トーチがインゴットの長軸に平行に移動して、インゴットの表面上に金属材料を堆積させてもよい。このようにして、金属材料の堆積物は、インゴットが回転し、かつ少なくとも1つの溶接トーチが移動する時に、円筒インゴットの円周面上に螺旋状に堆積されてもよい。
【0052】
図6Aは、合金インゴットの表面の少なくともある領域上への溶着物としての金属材料の堆積を例証する。合金インゴット300は、長軸301と、円周面370とを有して示される。金属材料350の堆積物は、インゴット300の円周面370上に螺旋状に堆積されて示される。溶接トーチ310は、溶接トーチ310が、矢印312によって示されるように、長軸301に平行に移動する一方で、同時に、インゴット300が、矢印302によって示されるように、長軸301の周りを回転する時に、円周面370上に金属材料層350を堆積させる。金属材料の層350が概して円周面370全体に沿って堆積されるまで、溶接トーチ310は、矢印312によって示されるように移動し、インゴット300は、矢印302によって示されるように回転する(図6B)。
【0053】
合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された金属材料層を含む合金インゴットは、合金インゴットに力を印加することによって熱間加工されてもよい。力は、少なくとも1つの領域上に堆積された金属材料層を有する合金インゴットの少なくとも1つの表面の少なくとも1つの領域の中の合金インゴットに印加されてもよい。このようにして、力は、インゴット上に堆積させた金属材料層に力を印加することによって、インゴットに印加されてもよい。種々の実施形態では、熱間加工作業は、鍛造作業および/または押し出し作業を含んでもよい。例えば、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された金属材料層を有する合金インゴットは、据え込み鍛造および/または引き抜き鍛造されてもよい。
【0054】
据え込みおよび引き抜き鍛造作業は、据え込み鍛造作業の1つ以上のシーケンスおよび引き抜き鍛造作業の1つ以上のシーケンスを備えてもよい。据え込み作業中に、インゴットの端面は、インゴットの長さを圧縮してインゴットの断面を増加させる力をインゴットに印加する、鍛造ダイと接触してもよい。引き抜き作業中に、側面(例えば、円筒インゴットの円周面)は、インゴットの断面を圧縮して、インゴットの長さを増加させる力をインゴットに印加する、鍛造ダイと接触してもよい。
【0055】
図7Aおよび7Cは、据え込み鍛造作業を例証する。鍛造ダイ480/480’は、インゴット400/400’の対向端部に力を印加する。力は、矢印485/485’によって示されるように、インゴット400/400’の長軸401/401’に概して平行に印加される。図7Aは、インゴット400の対向端部上に堆積させた金属材料層を伴わないインゴット400を示す。図7Cは、インゴット400’の対向端部上に堆積された金属材料層450を含むインゴット400’を示す。インゴット400の端部は、鍛造ダイ480と接触している(図7A)。金属材料層450は、鍛造ダイ480’と接触している(図7C)。
【0056】
図7Bおよび7Dは、それぞれ、図7Aおよび7Cに示されるような据え込み鍛造後のインゴット400および400’それぞれのダイ接触面を例証する。図7Bに示されるように、インゴット400のダイ接触面490は、表面クラックを呈する。図7Dに示されるように、金属材料層450を含むインゴット400’のダイ接触面490’は、表面クラックを呈しない。堆積させた金属材料層450は、そのような金属材料層がないこと以外は同一である鍛造された合金インゴットに対して、鍛造された合金インゴットの表面クラックの発生を低減する。
【0057】
図8Aおよび8Cは、引き抜き鍛造作業を例証する。鍛造ダイ580/580’は、インゴット500/500’に力を印加する。力は、矢印585/585’によって示されるように、インゴット500/500’の長軸501/501’に概して垂直に印加される。鍛造ダイ580/580’は、矢印587/587’によって示されるように、インゴット500/500’の長軸501/501’に概して平行に移動させることによって、インゴット500/500’の概して全長に沿って、インゴット500/500’に力を印加する。図8Aは、金属材料層を伴わないインゴット500を示す。図8Cは、インゴット500’の円周面上に堆積された金属材料層550を有するインゴット500’を示す。インゴット500の円周面は、鍛造ダイ580と接触している(図8A)。金属材料層550は、鍛造ダイ580’と接触している(図8C)。
【0058】
図8Bおよび8Dは、それぞれ、図8Aおよび8Cに示されるように、引き抜き鍛造後のインゴット500および500’のダイ接触面を例証する。図8Bに示されるように、インゴット500のダイ接触面590は、表面クラックを呈する。図8Dに示されるように、金属材料層550を含むインゴット500’のダイ接触面590’は、表面クラックを呈しない。堆積させた金属材料層550は、そのような金属材料層がないこと以外は同一である鍛造された合金インゴットに対して、鍛造された合金インゴットの表面クラックの発生を低減する。
【0059】
種々の実施形態では、インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された金属材料層を有するインゴットは、1回以上の据え込みおよび引き抜き鍛造作業を受けてもよい。例えば、トリプル据え込みおよび引き抜き鍛造作業では、インゴットは、最初に据え込み鍛造され、次いで、引き抜き鍛造され得る。据え込みおよび引き抜きシーケンスは、合計3回の連続的な据え込みおよび引き抜き鍛造作業について、2度以上繰り返されてもよい。インゴットのダイ接触面のうちの1つ以上は、インゴットが鍛造される前に、インゴットのダイ接触面上に堆積された金属材料層を有してもよい。
【0060】
種々の実施形態では、インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された金属材料層を有するインゴットは、1回以上の押し出し作業を受けてもよい。例えば、押し出し作業では、円筒インゴットは、円形のダイを強制的に通過させてもよく、それによって、直径を減少させて、インゴットの長さを増加させる。インゴットのダイ接触面のうちの1つ以上は、インゴットが押し出される前に、インゴットのダイ接触面上に堆積された金属材料層を有してもよい。
【0061】
種々の実施形態では、鋳造、強化、またはスプレー形成したインゴットから、加工された鋼片を作製するために、本明細書で説明される方法および工程が使用されてもよい。鋼片または他の加工された物品へのインゴットの鍛造変換または押し出し変換は、元のインゴットと比較して、より微細な粒状組織を物品の中に作製し得る。金属材料層が、鍛造および/または押し出し作業中のインゴットの表面クラックの発生を低減し得るので、本明細書で説明される方法および工程は、合金インゴットから鍛造または押し出しされた製品(例えば、鋼片等)の収率を改善し得る。例えば、比較的により延性の少ない合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された比較的により延性のある金属材料層は、加工用ダイによって誘発される歪みにより容易に耐え得ることが観察された。また、合金インゴットの表面の少なくともある領域上に堆積された金属材料層が、熱間加工中の加工用ダイとインゴットとの間の温度差により容易に耐え得ることも観察された。このようにして、堆積させた金属材料層は、ゼロまたは軽微な表面クラックを呈し得るが、加工中に、下側にあるインゴットでの表面クラックの発生が防止または低減されることが観察された。
【0062】
種々の実施形態では、熱間加工後に、堆積させた金属材料層の少なくとも一部分は、熱間加工中に、インゴットから形成される製品から除去されてもよい。例えば、金属材料層の少なくとも一部分を除去するために、研磨、剥離、および/または旋盤作業が用いられてもよい。種々の実施形態では、堆積させた金属材料層の少なくとも一部分は、形成された鋼片から、鋼片を剥離(旋削)および/または研削することによりインゴットを加工することによって除去されてもよい。
【0063】
種々の実施形態では、堆積させた金属材料層を有するインゴットは、種々の物品を製造するために使用されてもよい製品を形成するために、熱間加工されてもよい。例えば、本明細書で説明される工程は、ニッケル基、鉄基、ニッケル−鉄基、またはコバルト基の合金もしくは超合金鋼片を形成するために使用されてもよい。熱間加工されたインゴットから形成される鋼片または他の製品は、例えばタービンエンジンおよび種々の陸用タービンのための円盤および環等のタービン構成要素が挙げられるが、これらに限定されない、物品を製造するために使用されてもよい。本明細書で説明される種々の実施形態に従って処理されるインゴットから製造される他の物品には、弁、エンジン構成要素、軸、および締結具が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で開示される実施形態はまた、インゴット処理システムおよびインゴット処理装置を対象とする。インゴット処理システムおよび装置は、インゴット位置決め装置および溶接装置を備えてもよい。インゴット位置決め装置は、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させるように構成される、インゴット回転装置を備えてもよい。溶接装置は、インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料層を堆積させるように構成されてもよい。
【0065】
種々の実施形態では、インゴット回転装置は、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させるように構成される、旋盤を備えてもよい。インゴット回転装置は、1回転以上の完全な回転を通して、インゴットを連続的に回転させてもよく、またはインゴット回転デバイスは、例えば溶接装置の構成に応じて、所定のインデックス角度でインゴットを順次不連続的に回転させてもよい。
【0066】
溶接装置は、例えばワイヤ送給MIG溶接トーチ等の、少なくとも1つの溶接トーチを備えてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料の層を堆積させるように構成されてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、インゴットの端面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料層を堆積させるように構成されてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、円筒インゴットの円周面の少なくとも領域上に溶着物として金属材料層を堆積させるように構成されてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、円筒インゴットの円周面の頂部上に金属材料を堆積させるように構成されてもよい。このようにして、堆積させた溶接ビードに対する重力効果は、減少または排除され得る。
【0067】
種々の実施形態では、少なくとも1つの溶接トーチは、MIG溶接トーチであってもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、ワイヤ送給を有してもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、インゴットの表面から所定の距離で位置決めされてもよい。少なくとも1つの溶接トーチは、所定のワイヤ送給速度、所定のワイヤ電圧、および/または所定の不活性ガスパージ流速で構成されてもよい。トーチ−インゴット間表面距離、ワイヤ送給速度、電圧、不活性ガスパージ流速、および/または種々の他の溶接作業パラメータは、金属材料層がインゴット上に均一に溶接堆積されるように、予め定められてもよい。種々の他の溶接作業パラメータの同一性は、利用される特定の種類の溶接作業(例えば、MIG、TIG等)に依存してもよい。種々の実施形態では、特定の溶接作業で用いられる入熱(例えば、単位長さあたりのエネルギー)は、金属材料が溶接堆積されるインゴットの表面上で、実質的に均一に維持されてもよい。このようにして、下側にあるインゴットの表面の溶接関連のクラックが低減または排除され得、下側にあるインゴットと溶着物との間の冶金結合の品質が高められ得る。種々の実施形態では、溶接作業中のインゴットへの入熱は、最小限に抑えられてもよい。
【0068】
溶接装置は、1つの溶接トーチ、直線に配列した2つ以上の溶接トーチ、または2次元もしくは3次元に配列した3つ以上の溶接トーチを備えてもよい。例えば、図4A−4D、5A−5Dは、直線に配列した3つの溶接トーチを示す。図6Aは、1つの溶接トーチを示す。溶接装置を構成する溶接トーチの数および構成は、説明されるインゴット処理方法、システム、および装置の特定の実装によって変動してもよい。
【0069】
種々の実施形態では、インゴット処理システムは、制御システムを備えてもよい。制御システムは、インゴットの表面の少なくともある領域上に金属材料層を均一に堆積させるために、インゴット位置決め装置と連動して溶接装置を移動させて位置決めするように構成されてもよい。制御システムは、インゴットの表面に対する少なくとも1つの溶接トーチのトーチ−表面間距離、溶接作業パラメータ、運動、および位置、ならびに/またはインゴットの運動および位置決めを制御してもよい。例えば、制御システムは、インゴットの長軸に平行に、かつ長軸に平行なインゴットの円周面の領域に沿って、概して直線様式で、少なくとも1つの溶接トーチを移動させるように構成されてもよい。制御システムはまた、インゴットの対向端面上に溶着物として金属材料を堆積させるために、少なくとも1つの溶接トーチを位置決めするように構成されてもよい。
【0070】
種々の実施形態では、制御システムは、インゴットの粗い表面上に金属材料を均一に堆積させるために、少なくとも1つの溶接トーチを制御するように構成されてもよい。例えば、種々の実施形態では、MIG溶接トーチの消耗電極のワイヤ送給速度、ワイヤ電極の電圧、トーチ−インゴット表面間距離、およびトーチの運動/位置決めは、回転または静止しているインゴット上で安定した円弧を与えるように能動的に制御されてもよい。このようにして、金属材料の実質的に均一な層がインゴット上に堆積されてもよい。
【0071】
制御システムは、合金インゴットの少なくとも1つの端部上への溶着物としての金属材料層の堆積を自動化するように構成されてもよい。制御システムは、円筒合金インゴットの円周面上への溶着物としての金属材料層の堆積を自動化するように構成されてもよい。
【0072】
インゴット処理システムは、少なくとも1つの静止溶接トーチを使用して、回転する円筒インゴットの円周面の第1の領域上に溶着物として金属材料を堆積させるように構成されてもよい。このようにして、インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面の周囲に金属材料の環状層を堆積させてもよい。インゴット処理システムは、回転する円筒インゴットが少なくとも1回転進んだ後に、堆積させた金属材料の環状層に隣接して、少なくとも1つの溶接トーチを再配置するように構成されてもよい。インゴット処理システムは、少なくとも1つの再配置静止溶接トーチを使用して、回転するインゴットの円周面の第2の、または以降の領域上に溶着物として金属材料を堆積させるように構成されてもよい。このようにして、インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面上に金属材料の別の環状層を堆積させてもよい。インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面が金属材料層で実質的に覆われるまで、自動化された様式で、少なくとも1つの溶接トーチの再配置および環状の金属材料層の堆積を繰り返すように構成されてもよい。
【0073】
インゴット処理システムは、インゴットの長軸に平行に、かつ第1の領域に沿って移動させるように構成される少なくとも1つの溶接トーチを使用して、インゴットの長軸に平行な方向に沿って、静止インゴットの円周面の第1の領域上に溶着物として金属材料を堆積させるように構成されてもよい。このようにして、インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面の第1の領域上に金属材料の層を堆積させてもよい。インゴット処理システムは、少なくとも1つの溶接トーチから離れて円周面の第1の領域を移動させ、かつ少なくとも1つの溶接トーチに向かって円周面の第2の領域を移動させるように構成されてもよい。例えば、インゴットは、インゴット回転デバイスによって所定のインデックス角度だけを回転させてもよい。
【0074】
インゴット処理システムは、インゴットの長軸に平行に、かつ第2の領域に沿って移動させるように構成される少なくとも1つの溶接トーチを使用して、インゴットの長軸に平行な方向に沿って、静止インゴットの円周面の第2の、または以降の領域上に溶着物として金属材料を堆積させるように構成されてもよい。このようにして、インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面の第2の領域上に金属材料の層を堆積させてもよい。インゴット処理システムは、円筒インゴットの円周面が金属材料層で実質的に覆われるまで、自動化された様式で、インゴットの長軸に平行な方向に沿った、インゴットの再配置および金属材料層の堆積を繰り返すように構成されてもよい。
【0075】
インゴット処理システムは、インゴットの長軸の周りでインゴットを回転させ、同時に、インゴットの長軸に平行に溶接トーチを移動させることによって、インゴットの表面上に溶着物として金属材料を堆積させるように構成されてもよい。金属材料層は、制御システムの制御下で、少なくとも1つの移動する溶接トーチを使用して堆積されてもよい。このようにして、金属材料の堆積物は、インゴットが長軸の周りを回転し、かつ少なくとも1つの溶接トーチが長軸に平行に移動する時に、円筒インゴットの円周面上に螺旋状に堆積されてもよい。
【0076】
以下の例証的であり、限定的でない実施例は、実施形態の範囲を限定することなく、種々の限定的でない実施形態をさらに説明することを意図している。当業者は、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で、実施例の変更が可能であることを理解するであろう。全ての部およびパーセントは、特に明記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0077】
実施例1
Rene88(商標)合金の3インチ(約76.2mm)の立方体を、熱間加工作業で使用した。立方体は、Rene88(商標)鋼片の廃棄部分からランダムに切り取った。立方体は、合金立方体の粒度を増加させて、Rene88(商標)インゴットの加工特性に一致させるように、2100°F(約1149℃)で4時間熱処理した。各立方体の表面の1つの面を、円板研削盤上で研削し、その後にベルトサンダーで研磨することによって調整した。TechAlloy606(商標)合金層は、MIG溶接(直径0.045インチ(約1.143mm)のTechAlloy606ワイヤ、毎分220インチ(約5588mm)、18Vのワイヤ電圧、毎分50立方フィート(約1.4m)のアルゴンパージ)を用いて、各立体の調整した面の表面上に溶着物として堆積させた。溶接堆積させたTechAlloy606(商標)合金層は、完全に凝固させて、室温まで冷却した。図9は、写真のように配向された時に、それぞれが頂面上に溶接堆積されたTechAlloy606(商標)合金層を有する、Rene88(商標)の2つの3インチ(約76.2mm)の合金立方体の写真である。
【0078】
TechAlloy606(商標)合金層を有するRene88(商標)合金立方体は、1時間にわたって2000°F(約1093℃)に加熱して、その温度でプレス鍛造した。TechAlloy606合金層を有する表面の面は、底部ダイと接触した状態で配置し、TechAlloy606合金層のない反対側の表面の面は、上部ダイと接触した状態で配置した。3インチ(約76.2mm)の立方体は、毎秒約1インチ(約25.4mm)の歪み速度を用いて、1インチ(約25.4mm)のパンケーキにプレス鍛造した。
【0079】
図10Aおよび10Bは、3インチ(約76.2mm)の立方体からプレス鍛造された1インチ(約25.4mm)パンケーキの対向側部の写真である。図10Aは、パンケーキの非層状化側面を示し、図10Bは、TechAlloy606(商標)合金層を有する側面を示す。図10Aに示される鍛造された非層状化面上には、Rene88(商標)合金のクラック感受性が視認できる。図10Aに示されるように、TechAlloy606(商標)合金層のない表面には、表面クラックが明確に視認できる。図10Bに示されるように、TechAlloy606(商標)合金層は、鍛造中の合金の表面クラックの発生を実質的に低減した。
【0080】
図11は、前述のように、3インチ(約76.2mm)の合金立方体からプレス鍛造された、断面の1インチ(約25.4mm)パンケーキの写真である。TechAlloy606(商標)合金層と、下側にある鍛造されたRene88(商標)との間の界面は、パンケーキの溶接した表面の断面(写真のように配向した時の頂面)に対応する、中間半径部位(図11に「11A」で表記される)において、光学顕微鏡を使用して撮像した。図11Aは、図11に示される中間半径部位で撮影した顕微鏡写真である。
【0081】
図11Aに示されるように、強く均一な冶金結合が、TechAlloy606(商標)合金層と、下側にあるRene88(商標)との間に形成された。冶金結合はプレス鍛造に耐え、いかなる層間剥離または脱結合も観察されなかった。TechAlloy606(商標)合金層の露出表面、およびTechAlloy606(商標)合金層と下側にある鍛造Rene88(商標)との間の界面のどちらにも、実質的にクラックを含まない。TechAlloy606(商標)合金層を(例えば、研削によって)除去すると、実質的に表面クラックを含まない下側にある鍛造Rene88(商標)が現れる。
【0082】
本開示を、種々の例示的、例証的なものであり、かつ限定的でない実施形態に関して記述してきた。しかしながら、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲から逸脱することなく、開示される実施形態(またはその一部分)のうちのいずれかの種々の置換、修正、または組み合わせを行ってもよいことが、当業者によって認識されるであろう。したがって、本開示が、本明細書に明示的に記載されていない付加的な実施形態を包含することが、企図され、理解される。そのような実施形態は、例えば、本明細書に開示される実施形態の開示されるステップ、成分、構成成分、構成要素、要素、機構、態様、特性、制限のうちのいずれかを組み合わせる、修正する、または再編成することによって得られてもよい。したがって、本開示は、種々の例示的で、例証的であり、かつ限定的でない実施形態の説明によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。このようにして、出願人は、様々に本明細書で説明される機構を加えるために、出願手続き中に特許請求の範囲を修正する権利を留保する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金インゴットの表面の少なくともある領域上に金属材料層を堆積させることを含み、前記金属材料は、前記合金よりも延性があり、前記金属材料層は、熱間加工中の前記合金インゴットの表面クラックの発生を低減する、インゴット処理方法。
【請求項2】
前記金属層を堆積させる前に、前記合金インゴットの前記表面を研削すること、または剥離することをさらに含む、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項3】
前記合金インゴットを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工は、前記金属材料層上に力を印加することを含み、前記力は、前記合金インゴットを変形させる、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項4】
前記合金インゴットを熱間加工した後に、前記合金インゴットから前記金属材料層の少なくとも一部分を除去することをさらに含む、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項5】
前記合金インゴットは、ニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル−鉄基合金、およびコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項6】
前記合金インゴットは、Alloy720、Rene88(商標)、およびWaspaloy(登録商標)からなる群から選択される合金を含む、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項7】
前記合金インゴットおよび前記金属材料層は、同じ母材を含み、前記母材は、ニッケル、鉄、およびコバルトからなる群から選択される、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項8】
前記合金インゴットは、ニッケル基超合金を含み、前記金属材料層は、Techalloy606(商標)を含む、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項9】
前記金属材料層を堆積させることは、前記合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として前記金属材料層を堆積させることを含む、請求項1に記載のインゴット処理方法。
【請求項10】
溶着物として前記金属材料層を堆積させることは、金属不活性ガス(MIG)溶接、タングステン不活性ガス(TIG)溶接、およびプラズマ溶接からなる群から選択される溶接作業を含む、請求項9に記載のインゴット処理方法。
【請求項11】
前記合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として前記金属材料層を堆積させることは、前記合金インゴットの少なくとも1つの端部上に溶着物として前記金属材料を堆積させることを含む、請求項9に記載のインゴット処理方法。
【請求項12】
前記合金インゴットは、円筒インゴットであり、
前記合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として前記金属材料層を堆積させることは、
前記円筒インゴットを回転させることと、
少なくとも1つの静止溶接トーチを使用して、前記回転する円筒インゴットの円周面の第1の領域上に溶着物として前記金属材料を堆積させ、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面上に前記金属材料の環状層を堆積させることと、
を含む、請求項9に記載のインゴット処理方法。
【請求項13】
前記回転する円筒インゴットが少なくとも1回転進んだ後に、前記金属材料の堆積させた環状層に隣接して、少なくとも1つの溶接トーチを再配置することと、
少なくとも1つの再配置した静止溶接トーチを使用して、前記回転する円筒インゴットの前記円周面の第2の領域上に溶着物として金属材料を堆積させることと、
をさらに含む、請求項12に記載のインゴット処理方法。
【請求項14】
前記円筒インゴットの前記円周面が前記金属材料で実質的に覆われるまで、前記再配置ステップおよび前記堆積ステップを繰り返すことをさらに含む、請求項13に記載のインゴット処理方法。
【請求項15】
前記合金インゴットは、円筒インゴットであり、
前記合金インゴットの表面の少なくともある領域上に溶着物として前記金属材料層を堆積させることは、
前記円筒インゴットの円周面の第1の領域に沿って、前記インゴットの長軸に平行に少なくとも1つの溶接トーチを移動させる一方で、前記円筒インゴットを静止保持し、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面の前記第1の領域上に溶着物として前記金属材料の層を堆積させることと、
少なくとも1つの溶接トーチから離れて前記円周面の前記第1の領域を移動させ、かつ少なくとも1つの溶接トーチに向かって前記円周面の第2の領域を移動させるように、前記円筒インゴットを再配置することと、
前記円筒インゴットの前記円周面の前記第2の領域に沿って、前記インゴットの前記長軸に平行に少なくとも1つの溶接トーチを移動させる一方で、前記円筒インゴットを静止保持し、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面の前記第2の領域上に溶着物として前記金属材料の層を堆積させることと、
を含む、請求項9に記載のインゴット処理方法。
【請求項16】
前記インゴットの前記円周面が前記金属材料で実質的に覆われるまで、前記再配置ステップおよび前記移動ステップを繰り返すことをさらに含む、請求項15に記載のインゴット処理方法。
【請求項17】
前記合金インゴットを熱間加工することは、鍛造作業および押し出し作業のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項18】
前記合金インゴットを熱間加工することは、据え込みおよび引き抜き鍛造作業を含む、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項19】
前記工程は、ニッケル基超合金インゴットから形成される鍛造ニッケル基超合金製品の収率を改善する、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項20】
前記工程は、鋳造したニッケル基超合金インゴットから、加工されたニッケル基超合金鋼片を作製する、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項21】
VIM−VAR作業またはVIM−ESR−VAR作業を使用してニッケル基超合金インゴットを提供することをさらに含む、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項22】
前記熱間加工されたインゴットから物品を製造することをさらに含み、前記物品は、ジェットエンジン構成要素および陸用タービン構成要素からなる群から選択される、請求項3に記載のインゴット処理方法。
【請求項23】
請求項1に記載のインゴット処理方法によって処理されるインゴット。
【請求項24】
合金インゴットを変形させるために、力を前記合金インゴットに印加することを含む、合金インゴットを熱間加工するための工程であって、前記インゴットは、前記合金インゴットの表面の少なくとも1つの領域上に堆積される金属材料層を含み、前記金属材料は、前記合金よりも延性があり、前記力は、前記金属材料層上に印加される、工程。
【請求項25】
前記合金インゴットを変形させた後に、前記合金インゴットから前記金属材料層の少なくとも一部分を除去することをさらに含む、請求項24に記載の工程。
【請求項26】
前記合金インゴットは、ニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル−鉄基合金、コバルト基合金からなる群から選択される材料を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項27】
前記合金インゴットは、Alloy720、Rene88(商標)、およびWaspaloy(登録商標)からなる群から選択される合金を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項28】
前記合金インゴットおよび前記金属材料層は、同じ母材を含み、前記母材は、ニッケル、鉄、およびコバルトからなる群から選択される、請求項24に記載の工程。
【請求項29】
前記金属材料層は、円筒インゴットの円周面の少なくともある領域上に溶着物を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項30】
前記金属材料層は、インゴットの端面の少なくともある領域上に溶着物を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項31】
前記合金インゴットは、ニッケル基超合金を含み、前記金属材料層は、Techalloy606(商標)を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項32】
力を前記合金インゴットに印加することは、鍛造作業および押し出し作業のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の工程。
【請求項33】
前記力を前記合金インゴットに印加することは、据え込みおよび引き抜き鍛造作業を含む、請求項24に記載の工程。
【請求項34】
前記工程は、ニッケル基超合金インゴットから形成される鍛造ニッケル基超合金製品の収率を改善する、請求項24に記載の工程。
【請求項35】
前記工程は、加工されたニッケル基超合金インゴットから、鍛造したニッケル基超合金鋼片を作製する、請求項24に記載の工程。
【請求項36】
前記熱間加工されたインゴットから物品を製造することをさらに含み、前記物品は、ジェットエンジン構成要素および陸用タービン構成要素からなる群から選択される、請求項24に記載の工程。
【請求項37】
請求項24に記載の工程によって合金インゴットから形成される熱間加工された物品。
【請求項38】
インゴットの長軸の周りで円筒インゴットを回転させるように構成される、インゴット回転装置と、
円筒インゴットの円周面の少なくともある領域上に溶着物として金属材料層を堆積させるように構成される、溶接装置と、
を備える、インゴット処理システム。
【請求項39】
前記インゴット回転装置は、前記インゴットの前記長軸の周りで前記インゴットを回転させるように構成される、旋盤を備える、請求項38に記載のインゴット処理システム。
【請求項40】
前記溶接装置は、前記インゴットの前記円周面の少なくともある領域上に溶着物として前記金属材料層を堆積させるように構成される、少なくとも1つのMIG溶接トーチを備える、請求項38に記載のインゴット処理システム。
【請求項41】
前記システムは、前記インゴットの前記長軸に平行な方向に、かつ前記インゴットの前記円周面のある領域に沿って、少なくとも1つの溶接トーチを移動させるように構成される、請求項40に記載のインゴット処理システム。
【請求項42】
前記システムは、前記合金インゴットの少なくとも1つの端部上に溶着物として前記金属材料を堆積させるために、少なくとも1つの溶接トーチを制御するように構成される、請求項40に記載のインゴット処理システム。
【請求項43】
前記システムは、
少なくとも1つの静止溶接トーチを使用して、回転する円筒インゴットの前記円周面の第1の領域上に溶着物として前記金属材料を堆積させ、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面上に前記金属材料の環状層を堆積させ、
前記回転する円筒インゴットが少なくとも1回転進んだ後に、前記金属材料の堆積させた環状層に隣接して、少なくとも1つの溶接トーチを再配置し、
少なくとも1つの再配置した静止溶接トーチを使用して、前記回転する円筒インゴットの前記円周面の第2の領域上に溶着物として前記金属材料を堆積させ、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面上に前記金属材料の環状層を堆積させ、かつ
前記円筒インゴットの前記円周面が前記金属材料で実質的に覆われるまで、前記再配置および前記堆積を繰り返すように構成される、
請求項40に記載のインゴット処理システム。
【請求項44】
前記システムは、
前記インゴットの前記長軸に平行に、かつ前記第1の領域に沿って移動するように構成される少なくとも1つの溶接トーチを使用して、静止インゴットの円周面の第1の領域上に溶着物として前記金属材料を堆積させ、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面の前記第1の領域上に前記金属材料の層を堆積させ、
少なくとも1つの溶接トーチから離れて前記円周面の前記第1の領域を移動させ、かつ少なくとも1つの溶接トーチに向かって前記円周面の第2の領域を移動させるように、前記円筒インゴットを再配置し、
前記インゴットの前記長軸に平行に、かつ前記第2の領域に沿って移動するように構成される少なくとも1つの溶接トーチを使用して、前記静止インゴットの前記円周面の前記第2の領域上に溶着物として前記金属材料を堆積させ、それによって、前記円筒インゴットの前記円周面の前記第2の領域上に前記金属材料の層を堆積させ、かつ
前記インゴットの前記円周面が前記金属材料で実質的に覆われるまで、前記再配置および堆積を繰り返すように構成される、
請求項40に記載のインゴット処理システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図11A】
image rotate


【公表番号】特表2013−518727(P2013−518727A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551996(P2012−551996)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/022213
【国際公開番号】WO2011/097085
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】