説明

同一の基板上に形成されそれぞれの異なる磁化の向きを有する磁気構造を備えるデバイスの製造

【課題】基板上に配置され、異なる方向に磁化される磁性ブロックを備えるデバイスを製造するための方法を提供すること。
【解決手段】前記方法は、
a)基板上に配置される、少なくとも1つの反強磁性体の1つまたは複数の層(104、104、104)、および、少なくとも1つの強磁性体の1つまたは複数の層(105、105)の積層体(108)として、少なくとも1つの第1のブロックおよび少なくとも1つの第2のブロックを形成するステップであって、前記ブロックは、長い線状であり、分離しており、かつ、第1の主方向および第2の主方向にそれぞれ延在し、第1の主方向および第2の主方向は、それらの間に第1の非ゼロの角度αを形成するステップと、
b)前記ブロックを、前記反強磁性体の規則化温度よりも、またはブロッキング温度よりも、または前記反強磁性体のネール温度よりも高い温度でアニールするステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成される複数の磁化構造(magnetized structure)を備えるデバイスの分野に関するものであり、同一の支持体(support)上に、異なる向きのそれぞれの磁化を有する磁気ゾーン(magnetic zone)を生成するための改良された方法を提供する。
【0002】
磁界を検出かつ/または測定するためのデバイスの分野では、応用例として、例えば、複数の軸方向、特に3軸方向で磁界を測定するのに適した、MEMS(MEMS=微小電気機械システム(Micro−electro−mechanical systems))、またはNEMS(NEMS=ナノ電気機械システム(Nano−electro−mechanical systems))型の磁気センサの応用例が見られる。
【0003】
それは、例えば、コンパス機能を有するデバイス等の、地球の磁界を測定するためのデバイスの製造に応用される。
【背景技術】
【0004】
3軸方向に磁界を検出可能な磁気センサが製造されることは周知である。
【0005】
これを行うためには、互いに直交する磁化の方向を有する磁石を形成するゾーンの生成が必要なことがわかる。
【0006】
同一の基板上に異なる磁化の向きを有する磁気ゾーンを備えるセンサの製造では、ある問題が提示される。
【0007】
第1の手法に従って、同一の基板上に異なる磁化の向きのゾーンを連続して堆積させ(deposit)、または第2の手法に従って、同一の基板上に同一の磁化の向きのゾーンを形成し、次いで、それらのゾーンの少なくとも1つについて、その磁化の向きを修正するために、局所的な加熱を実行することは周知である。
【0008】
第2の手法は、基板上に生成すべき磁化ゾーン数が多い場合、実施するのに非常に時間がかかることがわかる場合があり、したがって、工業的な規模で使用することは困難である。
【0009】
第1の手法は、ある磁界のもとで十分に異なるアニール温度(annealing temperature)を有する異なる材料を使用する必要があり、それにより、材料の選択が制限され、製造工程が複雑になるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
対処する課題は、同一の基板上に、それぞれの異なる固定した磁化の向きを有するゾーンを生成するための新しい方法を見つけ出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、まず第1に、基板上に配置される(resting)磁性ブロック(magnetic block)を備えるデバイスを製造するための方法に関するものであり、磁性ブロックは、それぞれの異なる磁化方向を有し、
この方法は、
a)基板上に配置される、少なくとも1つの反強磁性体(antiferromagnetic material)の1つまたは複数の層、および、少なくとも1つの強磁性体(ferromagnetic material)の1つまたは複数の層の積層体(stack)として、少なくとも1つの第1のブロックおよび少なくとも1つの第2のブロックを形成するステップであって、前記ブロックは、長い線状であり(longilineal)、分離しており、かつ、第1の主方向(main direction)および第2の主方向にそれぞれ延在し、第1の主方向および第2の主方向は、それらの間に第1の非ゼロの角度αを形成するステップと、
b)前記ブロックを、反強磁性体の関数として決定される適切な温度以上の温度でアニールするステップと
を含む。
【0012】
前記適切な温度は、反強磁性体が磁気的に不規則な(disordered)ときの、反強磁性体の規則化温度(ordering temperature)に対応する。不規則な反強磁性体は、強磁性体上への堆積の後で交換結合(exchange coupling)を示さない。
【0013】
この適切な温度は、ブロッキング温度(blocking temperature)、すなわち、それより高い温度では、反強磁性体が磁気的に規則的な(ordered)とき、接触する反強磁性体と強磁性体との間で、もはや交換結合がない温度に対応する。
【0014】
この適切な温度はまた、ネール温度(Neel temperature)、すなわち、それより高い温度では、反強磁性体が常磁性になる温度に対応してもよい。
【0015】
規則的な反強磁性体は、強磁性体上への堆積の後で交換結合を示す。
【0016】
ブロックが長い線状の形状であるため、適切なアニールが実行される場合、磁化はその主方向、すなわちそれらの長さが測定される方向に沿って自然に整列する(align)ことができる。
【0017】
ブロックのそれぞれの磁化は、アニールの後、冷却の間に固定される。
【0018】
積層体は、ステップa)で、2つの反強磁性層の間に位置し、かつそれらと接触する少なくとも1つの強磁性層を備えるような方法で形成することができる。
【0019】
これにより、強磁性体Fの前記層の磁化を、規則化アニール(ordering annealing)の間に、定義された方向に区画することを可能にすることができる。
【0020】
可能な一実施形態によれば、第1のブロックおよび第2のブロックは、平行六面体の形状であってよい。
【0021】
可能な別の実施形態によれば、第1のブロックおよび/または第2のブロックは、それら自体は、互いに分離し平行である平行六面体のサブブロック(sub−block)の形態であってよい。
【0022】
この方法は、さらに、アニールの間に、前記第1の主方向と第2の非ゼロの角度θを形成する方向を向いた磁界の印加を含むことができ、前記磁界の強度はアニールの間に変更される。
【0023】
磁界の印加により、各ブロックでの磁化を飽和させ、したがって磁区(magnetic domain)の出現を防止することを可能にすることができる。
【0024】
印加される磁界の強度は、異なる向きの磁性ブロックの磁化について、磁界の向きをブロックの主方向に対して所与の非ゼロ角度に維持しながら、それらのそれぞれの主方向に可能な限り近く、一斉に整列するように、アニールの間に変更される。
【0025】
可能な一実施形態によれば、第1の角度α、すなわちブロックの間で形成される角度は、90°であってよく、一方、第2の角度θ、すなわち磁界の方向と第1のブロックの主方向との間の角度は、45°であってよい。
【0026】
これにより、それぞれの磁化が互いに90°に向いた磁性ブロックを使用することが可能になる。
【0027】
ステップb)では、磁界の印加の間に、まず第1に、ブロックの、それらの磁化困難軸(hard magnetization axis)方向の飽和磁界(magnetic saturation field)の強度よりも大きな所与の強度の磁界を印加することができる。
【0028】
次いで、この所与の強度は、第1の主方向での磁界の射影、および第2の主方向での磁界の射影のそれぞれの絶対値が、ブロックの、それらの磁化容易軸(easy magnetization axis)方向の飽和磁界値Hより大きく、一方で、第1の主方向に垂直な磁界の射影、および第2の主方向に垂直な磁界の射影のそれぞれの絶対値が、ブロックの、それらの磁化困難軸方向の飽和磁界値Hよりも低いように低減することができる。
【0029】
次に、温度は、例えば、反強磁性体により、前記磁性ブロックの主方向に可能な限り近く、前記強磁性体の磁化方向をトラップするように、この磁界強度のもとで、周辺温度(ambient temperature)に下げることができる。
【0030】
下記の式を使用することが可能である。
【0031】
【数1】

【0032】
ただし、tは第1のブロックの厚さであり、Lは第1のブロックの長さであり、Wは第1のブロックの幅であり、Msは飽和磁化である。
【0033】
ステップa)では、さらに、第1の主方向に延在する少なくとも1つの第3の長い線状のブロックを、積層体として形成することができる。
【0034】
本発明はまた、上記で定義されたような方法の実施を含む、3軸磁気センサを製造するための方法に関する。
【0035】
本発明は、単に表示する目的で、何の制限もなく与えられる実施形態の例の説明を読む際に、添付図面を参照することで、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】同一の基板上に形成され、異なる磁化方向を有する複数の磁性ブロックを備えるデバイスを製造するための方法の例を示す図である。
【図1B】同一の基板上に形成され、異なる磁化方向を有する複数の磁性ブロックを備えるデバイスを製造するための方法の例を示図であるす。
【図1C】同一の基板上に形成され、異なる磁化方向を有する複数の磁性ブロックを備えるデバイスを製造するための方法の例を示す図である。
【図2】同一の基板上に形成され、異なる磁化方向を有する複数の磁性ブロックを備えるデバイスを製造するための方法の例を示す図である。
【図3A】強磁性層および反強磁性層の積層体から形成される磁性ブロックを備え、各ブロックが平行六面体の形状の分離した磁性サブブロックに分割されるデバイスを示す図である。
【図3B】強磁性層および反強磁性層の積層体から形成される磁性ブロックを備え、各ブロックが平行六面体の形状の分離した磁性サブブロックに分割されるデバイスを示す図である。
【図4】本発明による製造方法により製造される3軸センサの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
異なる図で同一、類似または等価の部分には、1つの図から別の図への文節引用を容易にするために、同一の参照符号が付される場合がある。
【0038】
図に示される異なる部分は、図を読みやすくするために、必ずしも同じスケールではない。
【0039】
同一の基板上に、異なる磁気の向きのゾーンを備えるデバイスを製造するための方法の一例が、図1A〜1C、図2および図3A〜3Bとともに、ここで与えられる。
【0040】
図1に示される、この方法の第1のステップは、支持体101上に磁性層の積層体を形成するものであってよく、この支持体は、例えば、SOI基板(SOIは「シリコンオンインシュレータ(silicon on insulator)」を示す)のシリコン層であってよい。
【0041】
積層体は、反強磁性体AFに基づく層104〜104(ただし、mは整数であり、例えば図1Aでは3に等しい)、および強磁性体Fに基づく層105〜105(ただし、nは例えば4〜25の整数であり、図1Aではnは例えば2に等しい)の、交互の配置で形成される。
【0042】
強磁性体Fは、典型的には1000emu/cmを超える強い飽和磁化Msを有する軟磁性材料に基づいて形成することができる。強磁性体Fは、例えばFe、CoおよびNiの合金に基づいてよい。
【0043】
反強磁性体AFは、それ自体としては、Mnに基づく、例えば、NiMnまたはPtMnまたはPdPtMnの型の合金であってよい。他の例では、反強磁性体AFは、FeMnまたはIrMnまたはNiOまたはFeであってよい。
【0044】
積層体108は、強磁性体Fに基づく各層が、反強磁性体AFの2つの層の間に位置するように形成することができる。
【0045】
反強磁性体AFの層が強磁性体Fの層の両側に位置する場合、反強磁性体と強磁性体との間の界面での交換結合により、強磁性体Fの挟まれた層の磁化を、規則化アニールの間に、定義された方向に区画することを可能にすることができる。
【0046】
反強磁性体AFに基づく層104〜104は、厚さt’(支持体101の主面に直交し、図1Aで定義される基準座標系
【0047】
【数2】

【0048】
のベクトル
【0049】
【数3】

【0050】
に平行な方向に測定される)が、例えば2〜50ナノメートル、例えば約20ナノメートルであってよい。
【0051】
強磁性体に基づく層105〜105は、それ自体としては、厚さt(同様に、ベクトル
【0052】
【数4】

【0053】
に平行な方向に測定される)が、例えば2〜40ナノメートル、例えば約10ナノメートルであってよい。
【0054】
積層体108は、全体の厚さが、例えば約200〜600ナノメートルであってよい。
【0055】
次いで、層のエッチング、例えばIBE型(IBEは「イオンビームエッチング(Ion Beam Etching)」を示す)のエッチングを実行することにより、層の積層体108としてパターンが形成される。
【0056】
少なくとも3つの分離した非接触のブロック111、112、113がそれにより形成され、それぞれは、反強磁性体AFおよび強磁性体Fの層の積層体で形成される(図1B)。
【0057】
ブロック111、112、113はそれぞれ、細長い、または長い線状の形状を有する。
【0058】
ブロック111、112、113はそれぞれ、例えば、直方体の形状であってよい(図1B)。
【0059】
ブロック111、112、113は、幅W(面
【0060】
【数5】

【0061】
に平行な面で測定される)が、例えば20〜500マイクロメートル、例えば約20マイクロメートルであってよい。
【0062】
長さL(面
【0063】
【数6】

【0064】
に平行な面で測定される)は、例えば20〜500マイクロメートル、例えば約100マイクロメートルであってよい。
【0065】
ブロックの長さと幅との間のアスペクト比L/Wは高くてよく、例えば、少なくとも5であってよい。
【0066】
一変形形態によれば、1つまたは複数のブロック111、112、113は、互いに平行かつ分離した直方体のサブブロック211a、211b、211c、212a、212b、212c、213a、213b、213cの組の形態であってよい(図3Aおよび3B)。
【0067】
ブロック111、112、113を平行六面体のサブブロックに分割し、それぞれが、特に長さLと幅wiとの高いアスペクト比、例えばL/w≧10を有することにより、それらのそれぞれの主方向に沿った磁化の良好な整列を確実にすることが可能になる。
【0068】
サブブロック211a、211b、211c、212a、212b、212c、213a、213b、213cの幅Wiは、例えば0.25μm〜10μmで、好ましくは5μm未満であってよい。
【0069】
積層体108としてエッチングされた少なくとも2つのブロック111、113、211a、213aは、異なる主方向(ブロック111、113の主方向は、図1Bでは軸
【0070】
【数7】

【0071】
および軸
【0072】
【数8】

【0073】
により定義される)を向き、それらの間には、例えば90°の角度αが形成される。一部のブロック111、112、211a、212aは、互いに平行なそれぞれの主方向に、すなわち同一の方向に向く。
【0074】
次いで、ブロック111、112、113が形成されてしまうと、磁気的な規則化アニールが実行され、その温度は、反強磁性体の規則化を引き起こすように設定される。
【0075】
反強磁性体AFが、例えば、NiMnまたはPtMnまたはPdPtMnの型の不規則な反強磁性体、すなわち、堆積の後で交換結合を示さない材料である場合、アニールするステップは、この材料の規則化温度以上の温度で実行される。この規則化温度は、典型的には250℃より高い。
【0076】
FeMnまたはIrMnまたはNiOまたはFe等の規則的な反強磁性体AF、すなわち、堆積の後で交換結合を示す材料に対しては、アニールするステップは、この材料のブロッキング温度またはネール温度より上で、すなわち典型的には150℃〜250℃で実行される。
【0077】
アニールは、反強磁性体がPtMnである場合は、例えば、260℃より高い温度で実行してもよい。
【0078】
アニールは、後者の際には、特に後者の開始では、ブロック111、113の主方向
【0079】
【数9】

【0080】
および
【0081】
【数10】

【0082】
に対して、45°であってよい非ゼロの角度θを形成するように向いた磁界
【0083】
【数11】

【0084】
を印加するように実行してもよい。
【0085】
印加される磁界は、ブロックの、それらの困難軸方向の飽和磁界に対応する所定の磁界値より大きな強度
【0086】
【数12】

【0087】
の飽和化磁界(saturating field)であってよい。
【0088】
困難軸は、それに対してブロックの磁化を整列させるために印加される磁界が最大となる軸である。
【0089】
磁化を飽和させ、ブロック111のすべての磁区を消去するために、後者に対して、
【0090】
【数13】

【0091】
方向の飽和磁界以上の飽和化磁界が印加される。
【0092】
磁化を飽和させ、ブロック111のすべての磁区を消去するために、後者がサブブロック211a、211b、211cに分割されている場合は、前記ブロックに対して、
【0093】
【数14】

【0094】
方向のサブブロックの飽和磁界以上の飽和化磁界が印加される。
【0095】
異なる幅のブロックが使用される場合は、最小幅のブロックの飽和磁界より大きな飽和化磁界が印加される。
【0096】
印加される飽和化磁界は、前記所定の値よりはるかに大きくてよく、例えば、約1Tまたは2Tであってよい(図1C)。
【0097】
印加される磁界の強度は、その後、ブロック111および112の長さが測定される軸に対応する軸
【0098】
【数15】

【0099】
方向に射影された印加される磁界の絶対値が、ブロック111、112の、それらの磁化容易軸方向に向いた飽和磁界H以上であるように低減される。ブロック113の長さが測定される軸に対応する軸
【0100】
【数16】

【0101】
方向に射影された印加される磁界の絶対値は、ブロック113の、その磁化容易軸方向の飽和磁界H以上である。
【0102】
ブロック111および112の幅が測定される軸に対応する軸
【0103】
【数17】

【0104】
方向に射影された印加される磁界の絶対値は、ブロックの、それらの磁化困難軸方向の飽和磁界Hより小さい。
【0105】
ブロック113の幅が測定される軸に対応する軸
【0106】
【数18】

【0107】
方向に射影された印加される磁界の絶対値は、ブロック113の磁化困難軸方向の飽和磁界Hwより小さい。
【0108】

【0109】
【数19】

【0110】
方向に射影された印加される磁界の絶対値は、ブロック111、112での、それらの主方向から5°での磁化の整列を確実にするように、ブロック111、112の、それらの磁化困難軸方向の飽和磁界Hより20倍小さくてよい。
【0111】
平行六面体のブロックであって、その長さLが測定される方向に対応する軸
【0112】
【数20】

【0113】
方向に向いた主方向を有するブロックの飽和磁界Hは、下記の式を使用して数値を求めることができる。
【0114】
【数21】

【0115】

【0116】
【数22】

【0117】
方向のこの同じブロックの飽和磁界Hwは、下記の式を使用して数値を求めることができる。
【0118】
【数23】

【0119】
ただし、tはブロックの強磁性層全体の厚さであり、Msは飽和磁化であり、Lはブロックの長さであり、Wはその幅である。
【0120】
したがって、例えば、長さ100μm、幅2μm、および厚さ100ナノメートルのブロック111、112に対して、下記の数値
=1Gおよび
=513G
が得られる。
【0121】
30Gの磁界を45°で印加することにより、ブロックについて、その向きにかかわらず、その主軸から5°よりも良好な磁化の向きを得ることが可能である。
【0122】
第2の主方向に沿って射影された磁界の絶対値は、好ましくは、第1の主方向に対して5°よりも良好な整列を確実にするためには、Hwの5%より小さく、第1の主方向に対して2°よりも良好な整列のためには、2%より小さい。
【0123】
ブロック111、112の幅が異なる場合は、各ブロックの主方向に対して異なる整列が得られることになる。
【0124】
例えば、ブロック111が第1の幅W=W1=10μmを有し、ブロック112が第2の幅W=W2=2μmを有し、ブロック111、112のそれぞれの長さがL=100μmであり、例えば30Gの磁界が印加される場合、ブロック111での磁化は、その主方向に対して約20°の差の整列ずれを起こす(misaligned)ことになり、一方、ブロック112では、整列ずれは5°だけということになる。
【0125】
下記の表は、5°または2°の整列を確実にするために印加すべき磁界の例を、ブロックの大きさの関数として与えるものである。
【0126】
【表1】

【0127】
アニール炉内で小さすぎる磁界を使用しなければならないことにならないために、幅Wが2μmより小さいブロックを使用することが好ましい。
【0128】
次いで、アニール温度は、各ブロック内で、反強磁性体AFと強磁性体Fとの間で交換が発生するように下げられ、それにより、磁化方向を最終的に固定することが可能になる。
【0129】
アニールの最後には、軸
【0130】
【数24】

【0131】
の方向と実質的に平行であり得る、または、軸
【0132】
【数25】

【0133】
の方向から5°未満だけ異なり得る方向に同一の磁化の向きを有する、ブロック111および112が得られ、一方で、ブロック113は、ブロック111および112の方向と実質的に直交する、異なる向きの磁化を有する。
【0134】
例えば歪みゲージ型の3軸磁界センサは、このように製造されたデバイスから形成することができる。
【0135】
これを行うために、一例によれば、パッシベーション層(passivation layer)を特に、歪みゲージが取り付けられる(suspended)ための位置を除いて、デバイス上に堆積させることができる。
【0136】
このゲージは、金属製であってよいが、その場合、堆積およびそれに続くエッチングにより製造される。
【0137】
デバイスの全体にわたる保護層の堆積について、前記保護層は特に歪みゲージを保護するためのものであるが、続いて実行してもよい。
【0138】
その後、金属の堆積により電気的な接触状態を確立するように、保護層内に、および特に歪みゲージの自由端の上に、開口部(opening)が形成される。
【0139】
互いに垂直な3軸方向の構成要素を備える、すなわち3方向での磁界測定を実行する磁界測定センサの一例が、図4に示される。
【0140】
このセンサは、第1のブロック111から形成され、基板の主面に直交する軸に平行な、すなわち、軸
【0141】
【数26】

【0142】
および軸
【0143】
【数27】

【0144】
に直交する、測定すべき磁界の成分
【0145】
【数28】

【0146】
を測定することができる第1の構造を備える。
【0147】
センサはまた、ブロック112から形成され、軸
【0148】
【数29】

【0149】
に平行な、磁界の成分
【0150】
【数30】

【0151】
を測定することができる第2の構造、および、第2の構造と同じ要素を備える第3の構造113を備える。この第3の構造の歪みゲージは、軸Yに平行な圧縮力または張力を経て、それにより、軸
【0152】
【数31】

【0153】
に平行な、磁界の成分BextCを測定することができる。この第3の構造の磁性ブロック113は、第1の構造および第2の構造のブロック111、112の前者の磁気の向きBmagnet1に垂直な磁気の向きBmagnet2を有する。
【0154】
磁石等による強い外乱磁界が、ブロック111、112または113の磁化の向きを反転させる場合でも、この向きは、磁石がデバイスから引き離されるとすぐに回復するはずである。外乱磁界の存在で、磁化が小さな軸方向に回転する場合があるが、外乱の終了によりその初期位置に戻るはずである。
【符号の説明】
【0155】
101 支持体
104〜104、105〜105
108 積層体
111、112 ブロック
113 ブロック、第3の構造、磁性ブロック
211a、211b、211c、212a、212b、212c、213a、213b、213c サブブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(100)上に配置され、異なる方向に磁化される磁性ブロック(111、112、113、211a、211b、211c、212a、212b、212c、213a、213b、213c)を備えるデバイスを製造するための方法であって、
a)基板上に配置される、反強磁性体の1つまたは複数の層(104、104、104)、および、強磁性体の1つまたは複数の層(105、105)の積層体(108)として、少なくとも1つの第1のブロックおよび少なくとも1つの第2のブロックを形成するステップであって、前記ブロックは、分離しており、前記第1のブロックおよび前記第2のブロックは長い線状であり、かつ、第1の主方向および第2の主方向にそれぞれ延在し、前記第1の主方向および前記第2の主方向は、それらの間に第1の非ゼロの角度αを形成するステップと、
b)前記ブロックを、前記反強磁性体の規則化温度よりも、またはブロッキング温度よりも、またはネール温度よりも高い温度でアニールするステップとを含み、このアニールするステップはさらに、前記アニールの間に、前記第1の主方向および前記第2の主方向と第2の非ゼロの角度θを形成する方向を向き、かつ強度が前記アニールの間に変更される磁界の印加を含み、それにより、前記磁界の前記印加の間に、
− まず第1に、前記ブロックの、それらの磁化困難軸方向の飽和磁界Hwの強度よりも大きな所与の強度の磁界が印加され、
− 次いで、前記所与の強度は、前記第1の主方向での前記磁界の射影、および前記第2の主方向での前記磁界の射影のそれぞれの絶対値が、前記ブロックの、それらの磁化容易軸方向の飽和磁界値Hより大きく、かつ、前記第1の主方向に垂直な前記磁界の射影、および前記第2の主方向に垂直な前記磁界の射影のそれぞれの絶対値が、前記ブロックの、それらの磁化困難軸方向の飽和磁界値Hよりも低いように低減される
ようになる方法。
【請求項2】
前記アニールの後、前記磁界の前記印加は、前記ブロックを冷却させる間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の角度αは90°であり、前記第2の角度θは45°である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
【数1】

ただし、tは前記ブロックの厚さであり、Lは前記ブロックの長さであり、Wは前記ブロックの幅であり、Msは飽和磁化である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記積層体は、2つの反強磁性層(AF)の間に位置し、かつそれらと接触する少なくとも1つの強磁性層(F)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)では、さらに、前記第1の主方向に延在する少なくとも1つの第3の長い線状のブロックが、積層体(108)として形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロック(111、112、113)の少なくとも1つは、それ自体は、互いに分離し平行である複数の平行六面体のブロック(211a、211b、211c、212a、212b、212c、213a、213b、213c)の形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法の実施を含む、3軸磁気センサを製造するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−129930(P2011−129930A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−283142(P2010−283142)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】