説明

同一物由来のマンニトールを得る真菌株及び方法

本発明は国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタ(Culvularia lunata)、及び植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタから純粋なマンニトールを高収率で得る単純且つ有効な方法に関し、当該方法は葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲且つ4-32pptの塩度範囲で、約17-19日間当該培養物を維持して菌蓋を獲得し、当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、当該粗物を濃縮して、極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得るステップを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタ(Culvularia lunata)、及び植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタから純粋なマンニトールを高収率で得る単純且つ有効な方法に関し、当該方法は葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲且つ4-32pptの塩度範囲で、約17-19日間当該培養物を維持して菌蓋を獲得し、当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、当該粗物を濃縮して、極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得るステップを含んで成る。
【背景技術】
【0002】
D-マンニトールは6炭糖アルコール又はポリオールであって、スクロースの約半分の甘味があり、そして植物、藻類、真菌類、及び所定のバクテリアを含む多様な有機体において天然で広く発生する。L-マンニトールは天然では発生しない。
【0003】
低レベルのマンニトールはいくつかの果実及び野菜において見出される。現在、マンニトールは、転化糖のようなフルクトース/グルコース(1:1)混合物の触媒的水素付加により工業的に生産されている。ラネーニッケルは触媒として使用され、及び水素ガスは高温且つ高圧で使用される(Makkee 等.,1985)。本方法の欠点は、水素化混合物の組成物はわずか約25%のマンニトールから成り、残りの75%はソルビトールであったことである。本生産手順は、マンニトールの製造コストを比較的高いものにする。
【0004】
マンニトールは、植物及びヒトの両方にいくつかの適用を有すことが公知である。Jennings(1984)は、マンニトールを含むポリオールが真菌中でいくつかの役割;糖質保存として、転位化合物として、浸透圧調節化合物として、補酵素の制御、貯蔵又は作用を減少させるようなものとしての役割を果たし、更に活性酸素種(ROS)を抑えることも示したことを述べた。活性酸素種は、病原菌に対する植物防御におけるシグナル分子及び直接関与物質の両方である。少なくともいくつかの植物病原菌がマンニトールを使用してROSを仲介した植物防御を抑制するという証拠が浮かび上がりつつある(Jennings等、1998)。
【0005】
マンニトールは、その結晶形態において毒性がなく、吸湿性がなく、且つ虫歯作用がないことから、価値のある栄養食品の甘味料である(Debord等1987;Dwivedi 1978)。
【0006】
マンニトールは高血糖を誘発せず、糖尿病に有用である(Griffin及びLynch,1972)。砂糖なしのチューインガム及び医薬調製における甘味材料として使用される(Soetaert、1991)。
【0007】
マンニトールの他の用途は、オーストラリアでのシガテラ中毒の治療のために用いられる(Lewis、1992)。緊急時には、マンニトールは頭部外傷の治療に使用され、脳浮腫を減少させ、且つ頭蓋内圧を減少させる。人へのマンニトールの投与は、オリゴウレア中での利尿(尿排出の促進)、又は食中毒の症例での強制利尿を引き起こす。高用量のマンニトールは、人において下剤作用を発揮する。
【0008】
いくつかの微生物がマンニトールを産することが知られている。特にLeuconostoc、Oenococcus、及びLactobacillus属に属しているヘテロ発酵性種のバクテリアは、マンニトール生産において最も有効であると思われる(Niklas等、2002)。いくつかの糸状菌(カビ)はマンニトールを産生し、更にグルコースを形成する。マンニトールは真菌に関連したコットンダストである黒色アスペルギルス(Muraleedharan、1988)、即ちアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、クラドスポリウム・ヘルバレム(Cladosporium herbarum)、エピコッカム・パーピュラッセンス(Epicoccum purpurascens)及びフサリウム・パリドロセウム(Fusarium pallidoroseum)(Domelsmith等、1988)、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)(Song等、2002)及びセファロスポリウム(Cephalosporium)sp.(Bi等、2001)等の真菌株から早期に報告された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のマンニトールへの糖の転化の生化学的方法は、十分な転化収率を提供するものではなく、完全に満足がいくほど証明されていないので、工業生産はなお水素化に基づくものである。従って工業的に経済的且つ許容される方法を提供するために、フルクトースの生物学的転化の改良及びマンニトールへの他の基質の必要性が残っている。
【0010】
我々の真菌培養物、NIO-FM1E#001は、マンニトール生産のかなり良好な収率(総粗抽出物の〜70%)、及び比較的単純で経済的な方法を示す。マンニトールは、環境ストレスへの応答において蓄積されると報告されたので(Kets等、1996;Stoop 及びPharr,1994)、真菌、NIO-FM1E#001は熱及び塩ストレス条件下で培養されて、ポリオールの最大収率を得る。
【0011】
従って、我々の特許は、マンニトールを生産するための経済的な方法、及び同一物を生産するための新規真菌源(NIO-FM1E#001)を発表する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的
本発明の主な目的は、国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタを単離することである。
【0013】
本発明の他の主な目的は、迅速に成長している真菌を単離することである。
【0014】
更に本発明の他の主な目的は、植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタから純粋なマンニトールを高収率で得る単純且つ有効な方法を開発することである。
【0015】
更に本発明の他の目的は、クロマトグラフィーにより精製した粗マンニトールを単離し、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得ることである。
【0016】
本発明の更なる他の目的は、ストレス条件を用いて高いパーセンテージの収率でマンニトールを単離することである。
【0017】
本発明の更なる他の目的は、新規のマンニトール源を同定することである。
【0018】
本発明の更なる他の目的は、容易に単離及び培養される真菌の新規株を同定することである。
【0019】
本発明の更なる他の目的は、低コストで最適な収率のための発酵培地を用いることである。
【0020】
本発明の更なる他の目的は、マンニトールを単離する方法を開発することであり、ここでの二次代謝産物は主化合物から容易に分離することができる。
【0021】
本発明の更なる他の目的は、室温及び室内の気圧で、且つマンニトールの生産のために使用される触媒なしで、純粋マンニトールを真菌から単離する方法を開発することである。
【0022】
発明の概要
本発明は国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタ、及び植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタからマンニトールを高純度の収率で得る単純で有効な方法に関し、当該方法は葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲且つ4-32pptの塩度範囲で、約17-19日間当該培養物を維持して菌蓋を獲得し、当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、当該粗物を濃縮して、極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得るステップを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタ、及び植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタから純粋なマンニトールを高収率で得る単純で有効な方法に関し、当該方法は葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲且つ4-32pptの塩度範囲で、約17-19日間当該培養物を維持して菌蓋を獲得し、当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、当該粗物を濃縮して、極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得るステップを含んで成る。
【0024】
本発明の1つの態様は、国際寄託番号MTCC 5109のマングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタである。
【0025】
本発明の他の態様は、請求項1に記載した真菌であり、ここでのマングローブ植物がアカンサス・イリシフォリウス(Acanthus illicifolius)である。
【0026】
本発明の更なる他の態様は、前記真菌が迅速に成長している真菌である。
【0027】
本発明の更なる他の態様は、請求項1に記載した真菌であり、ここでの真菌は黒色が褪せた(black reverse)、茶色から黒味を帯びた茶色である。
【0028】
本発明の更に他の態様では、請求項1に記載した真菌であり、ここでの真菌は3つ以上の横断壁を有する淡茶色の分生子を有し、そしてシンポジオ型(sympodially)に伸びた膝状分生子柄(geniculate conidiophore)の中で尖端的に孔(poroconidia)を通して形成される。
【0029】
本発明の更に他の態様では、請求項1に記載した真菌は、より大きく色の濃い一つの中心細胞を有する円筒型又は軽度に曲がった型の分生子を示す。
【0030】
本発明の更なる態様は、前記国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタから純粋なマンニトールを高収率で得る単純且つ有効な方法は以下のステップ:
・植物マングローブから葉を獲得し、
・当該葉を殺菌した海水の中ですすぎ、そして殺菌、湿式、培養チャンバー中でそれらを約2週間保持し、
・当該葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、
・殺菌した新鮮なPDAプレートへ個々のコロニーを無菌で移して、純粋な培養物を得て、
・PDAスラント上の当該単離した真菌培養物を約7日間維持して、菌糸体を得て、
・炭素源としてスターチ及び糖を用いて、海水と蒸留水を有する新鮮なPDBへ菌糸体を移し、
・当該培養物を26-32℃の温度範囲で、約3-6日間培養して、播種材料を得て、
・当該播種材料と共に、当該海水及び蒸留水を有するPBDを培養し、
・当該培養物を約17-19日間、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲、及び4-32pptの塩度範囲で維持し、菌蓋を獲得し、
・当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、
・メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、
・当該粗物を濃縮し、
・極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、
・当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、
・当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得るステップを含んで成る。
【0031】
本発明の更に他の態様は、請求項7に記載した方法であり、ここでの植物はアカンサス・イリシフォリウスである。
【0032】
本発明の更に他の態様は、前記スターチが3-5g/1の濃度範囲にある。
【0033】
本発明の更に他の態様は、前記デキストロースが18-22g/1の濃度範囲にある。
【0034】
本発明の更に他の態様は、前記海水と蒸留水の比率が1:5から5:1、好適には1:1の範囲にある。
【0035】
本発明の更なる他の態様は、前記ストレス条件が40-45℃の温度範囲にある。
【0036】
本発明の更なる他の態様は、前記ストレス条件が15-17pptの塩度範囲にある。
【0037】
本発明の更なる他の態様は、前記ストレス条件が高いパーセンテージのマンニトールの収率を導く。
【0038】
本発明の更なる他の態様は、前記葉が若葉であり、且つ生きている葉である。
【0039】
本発明の更なる他の態様は、真空エバポレーターを用いて、28-32℃の温度範囲で、前記粗物を濃縮する。
【0040】
本発明の更なる他の態様は、前記極性の大きな溶媒が石油エーテル、クロロホルム、及び酢酸エチルである。
【0041】
本発明の更なる他の態様は、前記クロマトグラフィーがG-10固体支持体上にある。
【0042】
本発明は、マンニトールを生産するための新規真菌源として、マングローブ関連真菌NIO-FM1E#001、及び同一物の生産のための単純で、経済的な、抽出及び精製方法に関する。真菌培養物をアカンサス・イリシフォリウスの生存している若葉から単離した。当該単離した培養物を、海水:蒸留水(1:1)中に炭素源としてのポテトスターチ及びデキストロースを含むポテトデキストロース培養液中で育成した。
【0043】
最適な成長のための発酵培地を熱及び塩ストレス条件にかけた。ポリオールを最小限の抽出物及び精製ステップを含む菌蓋から得た。当該糖をアセチル化し、その後その構造を分光技術、質量分析、高フィールドNMR分光法、DEPT及びCOSY実験を用いて確認した。
【0044】
マンニトールの生産のための新規源としてのマングローブ関連真菌、カルブラリア・ルナタ、NIO-FM1E#001、及びマンニトールの抽出及び精製のための単純で、経済的な方法。
【0045】
真菌、NIO-FM1E#001はマングローブアカンサス・イリシフォリウスと関連し、そして以下のステップを用いて単離した。
a.新鮮な若葉を殺菌したポリエチレンバック中に集め、
b.当該葉を殺菌した海水ですすぎ、そして殺菌、湿式の培養チャンバー中に2週間置き、
c.当該葉をその後殺菌した手術用メスの補助により切断し、その後断片を殺菌ポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に置き、
d.個々のコロニーを無菌で48時間後に採取し、そして殺菌PDAプレートへ移して純粋な培養物を得た。
【0046】
真菌播種材料を以下のステップにより調製した。
a.真菌培養物から単離した純粋物をPDAスラント上で7日間維持した。
b.菌糸成長を支持している寒天のプラグを無菌で切断し、そして25mlのポテトデキストロース培養液(PDB)を含む100mlの三角フラスコ中へ移した。
c.当該培地は、ポテトスターチ(4g/1)及びデキストロース(20g/1)を炭素源として使用した。
d.当該発酵培養液を海水:蒸留水(1:1)中で調製した。
e.フラスコをローターシェーカー上で4から5日間、28-30℃で培養した。
【0047】
当該播種材料は以下のステップを含む発酵培地に播種するために使用した。
a.播種材料を、1:1の海水:蒸留水中で調製した1リットルのPDBを含む5リットルの三角フラスコ中に無菌で注いだ。
b.播種の間に当該発酵培地の温度を28-45℃にした。
c.発酵培地の培養温度を28-45℃にした。
d.発酵培地の塩度を5-30pptにした。
e.当該培地を撹拌条件下で18日間保持した。
f.温度ストレスは、発酵培地の播種温度を40-45℃で維持することにより与えた。
g.他の好適な請求項1に記載した態様では、発酵培地の培養温度を28-30℃にした。
h.更に他の好適な請求項1に記載した態様では、塩ストレスを15-17pptの塩度の発酵培地を維持することにより与えた。
【0048】
請求項1に記載の方法、以下のステップを含む抽出。
・乾燥菌蓋を超音波で分解し、そしてメタノールを用いて繰り返し抽出した。
・有機溶媒による抽出からの粗物を真空ロータリーエバポレーターで、30℃で濃縮した。
・当該粗抽出物を石油エーテル、クロロホルム及び酢酸エチルで処理し、石油エーテルフラクション、クロロホルムフラクション、及び酢酸エチルフラクションを分離した。
・白色粉末として残存した水性フラクションは、粗ポリオール(総粗抽出物の〜70%)を含んだ。
【0049】
水性粗抽出物のNMRスペクトルは、マンニトールであるポリオールを示した。マンニトールのアセチル化は、その確認のために更に用いたポリオールのヘキサアセテート(hexacetate)を供した。
【0050】
粗マンニトールを、精製のためのG-10固体支持体上でクロマトグラフにかけた。好適な請求項1に記載した態様では、使用した溶媒システムは、メタノール:水(95:5)であった。
【0051】
従って、本発明はマンニトールの生産のための新規源としてのマングローブ関連真菌、カルブラリア・ルナタ、NIO-FMlE#001、及び同一物の抽出及び精製のための単純且つ経済的な方法を発表する。
【0052】
本発明の態様では、マンニトールの生産のために使用した真菌は、マングローブの若葉アカンサス・イリシフォリウスに関連し、以下のステップにより単離した。
-新鮮な若葉を殺菌したポリエチレンバッグに集め、
-それらを殺菌した海水ですすぎ、そして2週間殺菌、湿式、培養チャンバー中に置き、
-当該葉を殺菌した外科用メスを用いて切断し、そしてPDA(ポテト寒天デキストロース)プレート(HiMedia Laboratories Ltd.)へ無菌で移し、
-48時間後、当該真菌のコロニーを除去し、そして培養物の純粋単離物が得られるまで、再びPDAプレート上へ置いた。
【0053】
本発明の他の態様では、真菌培養物のための播種材料を以下のステップにより調製した。
-最初に当該培養物をPDAスラント上で7日間成長させた。
-菌糸成長を支持している寒天のプラグを無菌で切断し、そして25mlのPDB(ポテトデキストロース培養液)を含む100ml三角フラスコ中に移した。
-当該培地を海水:蒸留水(1:1)中で調製した。
-ポテトスターチ(4g/1)及びデキストロース(20g/1)を炭素源として用いた。
-フラスコを28-30℃で4から5日間、ローターシェーカー上で培養した。
【0054】
また本発明の更なる態様では、上記播種材料を、1:1の海水:蒸留水中で調製した1リットルのポテトデキストロース培養液を含む5リットルの三角フラスコへ播くために使用した。
-播種の工程の間の発酵培地は、28-45℃であった。
-播種後、当該発酵培地を18日間、28-45℃でシェーカー上に置いた。
-使用した培地の塩度は5-30pptであった。
【0055】
また本発明の更なる他の好適な態様では、温度ストレスを播種の間、40-45℃で発酵培地を維持することにより得た。
【0056】
また本発明の更なる他の好適な態様では、発酵培地の培養温度を28-30℃で維持した。
【0057】
また本発明の更なる他の好適な態様では、発酵培地の塩度を15-17pptで維持することにより、塩ストレスを培養物へ提供した。
【0058】
また更なる他の態様では、細胞を溶解するために超音波で分解した後、菌糸体をろ過により回収し、凍結乾燥機で乾燥し、そしてメタノールで繰り返し抽出した。有機溶媒による抽出物由来の粗物を30℃で真空ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該粗抽出物を石油エーテルで処理して石油エーテルフラクションを除去し、クロロホルムで処理してクロロホルムフラクションを除去して、そして最終的に酢酸エチルで処理して酢酸エチルフラクションを除去した。総粗抽出物の約70%を構成する粗白色パウダーを含有するフラスコ中に水性フラクションは残しておいた。
【0059】
本発明の更なる態様では、本白色パウダーのNMRはポリオールを含むことを示し、且つ標準品と比較したNMRスペクトルデータは、マンニトールであるポリオールを示した。マンニトールをピリジン及び無水酢酸を使用してアセチル化して、ヘキサアセテートを産し、そのスペクトル値は更にマンニトールの存在を確認した。
【0060】
本発明の更なる他の態様では;精製のために粗マンニトールをG-10固体支持体上でクロマトグラフにかけた。
【0061】
本発明の更なる態様では、メタノール:水(95:5)を含む移動相を用いて、純粋マンニトールを得た。
【0062】
本発明を以下の実施例の補助により更に詳細に発表するが、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきでない。
【実施例1】
【0063】
マングローブ植物、アカンサス・イリシフォリウスの葉をSinquerim、Goa coast、India.から集めた。宿主に対して明らかな害を引き起こさない真菌培養物をアカンサス・イリシフォリウスに寄生させた。当該真菌を健常の若葉から単離した。ここで真菌感染の徴候は検出されなかった。
【0064】
アカンサスの新鮮な若葉を収集した後、それらを殺菌したポリエチレンバッグ中の実験室へ移した。当該葉を殺菌ろ過した海水ですすいで付着した粒子及び残留物質を除去した。次に当該葉を2週間殺菌培養チャンバー中で保持した。2週間終了時に、当該葉を殺菌した外科用メスの補助により切断し、そして断片をPDAプレート上に置いた。個々のコロニーを無菌で採取し、そして繰り返しPDAプレート上に移して、純粋培養物を得た。
【実施例2】
【0065】
単離した培養物をカルブラリア・ルナタ、NIO-FM1E#001として指定した。NIO-FM1E#001のコロニーを黒色が褪せた茶色から黒味を帯びた茶色へ迅速に成長させた。分生子は3つ以上の縦断(traverse)隔膜を有する淡茶色であり、そしてシンポジオ型(sympodially)に伸びた膝状分生子柄(geniculate conidiophore)の中で尖端的に孔(poroconidia)を通して形成される。分生子はより大きく色の濃い一つの中心細胞を有する円筒又は軽度に曲がったものである。
【0066】
精製した培養物をPDAスラント上で7日間成長させた。菌糸成長を支持している寒天のプラグを切断し、そして海水:蒸留水(1:1)中で調製した25mlのポテトデキストロース培養液(HiMedia Laboratories Ltd.)を含む100ml三角フラスコへ無菌で移した。この培養液中の炭素源はポテトスターチ4g/l及びデキストロース20g/lであった。フラスコを28-30℃、4-5日間、シェーカー条件下で保持した。上記フラスコからの二次培養物を、1リットルの上記培地を含む5リットルのフラスコへ無菌で移した。播種は発酵培地を40-45℃の温度に保持することにより実施した。播種後、当該フラスコをシェーカー条件下、18日間、28-30℃で保持した。
【実施例3】
【0067】
培養期間の終了時に菌糸体をろ過により回収し、そして凍結乾燥機中で乾燥して、バイオマス重量を決定した。細胞を溶解するためのケーキの超音波分解を繰り返しながら、乾燥菌蓋(ケーキ)を数回メタノールで抽出した。このようにして得たろ液を真空エバポレーション下で有機溶媒からのろ液がなくなるまで濃縮した。
【0068】
これはサンプルの粗抽出物をもたらした。当該粗抽出物を石油エーテル、クロロホルム及び酢酸エチル等の極性の大きな溶媒で連続して処理し、石油エーテルフラクション、クロロホルムフラクション、及び酢酸エチルフラクションをそれぞれ分離した。白色パウダーとしての糖アルコールを含む最後の水性フラクションは、総粗抽出物の約70%を構成した。
【実施例4】
【0069】
白色粗パウダーをメタノール:水(95:5%)を溶出剤として用いて、G-10固体支持体上でクロマトグラフィーにかけ、任意の可能性のある塩不純物をなくした。このようにして得られた純粋マンニトールを、アルドリッチカタログ、Vol.1、pp289cにおいて報告されたスペクトルとNMRデータを比較することにより同定した。
【実施例5】
【0070】
上記マンニトールのサブフラクションをアセチル化して、ポリオールのアセチル誘導体を得て、そして構造を多様な分光法によって更に確認した。
【0071】
アセチル化のためのマンニトール(30mg)をピリジン(2ml)中に溶解し、ここでのピリジン中へ3mlの無水酢酸の溶液を付加し、一晩放置した。当該混合物をクロロホルム中に採取し、そしてピリジンを希HClで洗浄することにより除去した。引き続き、蒸留水で洗浄することによりピリジンを除去した。クロロホルムを蒸発させて、そして残留物をシリカゲルを充填したクロマトグラフィーにかけて、35mgのマンニトールヘキサアセテートを産出させて、その構造を分光法及び報告されたスペクトルデータ(Fairbanks及びSinay、1995)とスペクトルを比較することにより確認した。
【0072】
本発明の利点
1.マンニトールの新規源である。
2.一般的な真菌である(Goa coastから収集したマングローブの葉のアカンサス・イリシフォリウスに関連して見出された)。
3.単離及び培養が容易である。
4.最適収率のために用いられる発酵培地が安価である。
5.発酵条件が実行可能なものであり、且つ実験室で容易に実施することができる。
6.二次代謝産物が主化合物から容易に分離され得る。
7.標準技術を用いて保存することができ、そして要求される限り回復させることができる。
8.菌蓋由来のマンニトールの抽出工程、及び同一物の精製は、マンニトールの商業的調製と比較して単純な技術を含んで成る。
9.我々はマンニトールの生産の際、室温及び室内の気圧を用い、且つ触媒を用いなかった。市販のマンニトールは、50:50のフルクトース:グルコース混合物の触媒的水素化により生産され、それは高温且つ高圧で、触媒としてのラネーニッケルと共に水素を使用する。
10.我々はマンニトールを、任意の他のポリオール不純物なしで、良好な収率で生産した(粗抽出物の〜70%)。商業的フルクトースシロップの水素化、又は転化糖は、他の糖アルコール、ソルビトールの共生産をもたらし、そしてマンニトールの収率はわずか25%である。
11.本発明では、最終的な精製のために、粗マンニトールを固体支持体としてG-10を用いて、溶出剤としてメタノール:水(95:5)を用いてクロマトグラフィーにかけた。一方、マンニトールの商業的生産における精製ステップは冗長なものである。
【0073】
参考文献
・Bi Y., Wang H.,Chen Y.,Xie J.,(2001).Studies on chemical constituents of mycelium of fungus Cephalosporium sp.AL031 (1). Journal of Chinese Medicinal Materials.Vol.24(8),568-569.
・Debord B.,Lefebvre C.,Guyot-Hermann A.M.,Hubert J.,Bouche R.,and Guyot J.C. (1987). Study of different forms of mannitol:Comparative behaviour under compression. Drug Development and Industrial Pharmacy,13,1533-1546.
・Domelsmith L.N.,Klich M.A.,Goynes W.R.,(1988).Production of mannitol by fungi form cotton dust. Applied and Environmental Microbiology. Vol. 54 (7),1784-1790.
・Dwivedi B.K.,(1978).Low calorie and special dietary foods. West Palm Beach:CRC Press,Inc.
・Fairbanks A.J. and Sinay P.,(1995).Synthesis of a peracetylated stereoisomer of De Rosa's Calditol:Some Questions about the Corrections of the Original Structure Assigned to this Natural Product. Tetrahedron Letters, Vol.36(6),893-896.
・Griffin W.C. and Lynch M.J.,(1972).Polyhydric alcohol. In T.E.,Furia(ed) CRC Handbook of food additives. Vol.1(2nded) (pp 431-455). Cleveland,OH:CRC Press Inc.
・Jennings D.H.,(1984). Polyol metabolism in fungi. Advances in Microbial Physiology, 25,149-193.
・Jennings D.B.,Ehrenshaft M;Pharr D.M., Williamson J.D.,(1998). Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America. Vol. 95 (25), 15129-15133.
・Kets E.P.W.,De Bont J.A.M., and Heipieper H.J.(1996). Physiological response of Pseudomonas putida S.,12 subjected to reduced water activity. FEMS Microbiology Letters, 139,133-137.
・Lewis R.J., Mannitol:The treatment of choice in the acute phase of ciguatera;Ciguatera Inf. Bull.,(1992),2,9-10.
・Makkee M.,Kieboom A.P.G., and Van Bekkum H.,(1985). Production methods of D-mannitol. Starch, 37,136-141.
・Muraleedharan G. Nair and Basil A. Burke.(1988). A new fatty and methyl ester and other biologically active compound from Aspergillus niger. Phytochemistry. Vol. 27 (10), 3169-3173.
・Niklas Von Weymarn, Mervi Hujanen and Matti Leisola(2002) Production of D-mannitol by heterofermentative lactic acid bacteria. Process Biochemistry. 37,1207-1213.
・Soetaert W.,(1991).Synthesis of D-mannitol and L-sorbose by microbial hydrogenation and dehydrogenation of monosaccharides. Ph.D.Thesis, University of Gent, Gent, Belgium.
・Song K.H.,Lee J.K.,Song J.Y.,Hong S.G.,Baek H., Kim S.Y.,Hym H.H.,(2002).Production of mannitol by a novel strain of Candida magnoliae. Biotechnology letters Vol. 24(1), 9-12.
・Stoop J.M.H., and Pharr B.M.,(1994). Mannitol metabolism in celery stressed by excess macronutrients. Plant Physiology, 106,503-511.
・Yun J.W., and Kang S.C and Song S.K.(1996). Microbial transformation of fructose to mannitol by Lactobacillus sp. KY-107. Biotechnology Letters. 18,35-40.
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、マンニトールの抽出及び精製のためのフローダイアグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタ(Culvularia lunata)。
【請求項2】
前記マングローブ植物が、アカンサス・イリシフォリウス(Acanthus illicifolius)である、請求項1に記載の真菌。
【請求項3】
前記真菌が迅速に成長している真菌である、請求項1に記載の真菌。
【請求項4】
前記真菌が黒色が褪せた(black reverse)、茶色から黒味を帯びた茶色である、請求項1に記載の真菌。
【請求項5】
前記真菌が3つ以上の横断壁を有する淡茶色の分生子を有し、そしてシンポジオ型(sympodially)に伸びた膝状分生子柄(geniculate conidiophore)の中で尖端的に孔(poroconidia)を通して形成される、請求項1に記載の真菌。
【請求項6】
前記真菌がより大きく色の濃い一つの中心細胞を有する、円筒型又は軽度に曲がった型の分生子を示す、請求項1に記載の真菌。
【請求項7】
国際寄託番号MTCC 5109の植物マングローブ関連真菌カルブラリア・ルナタからのマンニトールを高純度の収率で得るための単純且つ有効な方法であって、以下のステップ:
a.当該植物マングローブから葉を獲得し、
b.当該葉を殺菌した海水の中ですすぎ、そして殺菌、湿式、培養チャンバー中でそれらを約2週間保持し、
c.当該葉を小さな断片に切断し、そしてポテト寒天デキストロース(PDA)プレート上に48時間置き、
d.殺菌した新鮮なPDAプレートへ個々のコロニーを無菌で移し、純粋な培養物を得て、
e.PDAスラント上の当該単離した真菌培養物を約7日間維持して、菌糸体を得て、
f.炭素源としてスターチ及び糖を用いて、海水と蒸留水を有する新鮮なPDBへ当該菌糸体を移し、
g.当該培養物を26-32℃の温度範囲で約3-6日間培養して、播種材料を得て、
h.当該播種材料と共に、当該海水及び蒸留水を有するPBDを培養し、
i.当該培養物を約17-19日間、ストレス条件の原因となる26-47℃の温度範囲、及び4-32pptの塩度範囲で維持し、菌蓋(mycelial mat)を獲得し、
j.当該菌蓋を超音波で分解して細胞を溶解し、
k.メタノールを使用して当該超音波で分解した菌蓋からの粗物を繰り返し抽出し、
l.当該粗物を濃縮し、
m.極性が増大した溶媒で当該濃縮粗抽出物を処理し、
n.当該処理後、粗マンニトールを含む水性フラクションを白色のパウダー残留物として獲得し、
o.当該粗マンニトールをクロマトグラフィーにより精製して、総粗抽出物の約75%の純度のマンニトールを得ること、
を含んで成る方法。
【請求項8】
前記植物がアカンサス・イリシフォリウスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スターチが3-5g/1の濃度範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記デキストロースが18-22g/1の濃度範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記海水と蒸留水の比率が1:5から5:1、好適には1:1の範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ストレス条件が40-45℃の温度範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレス条件が15-17pptの塩度範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記ストレス条件が高いパーセンテージのマンニトールの収率を導く、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記葉が若葉であり、且つ生きている葉である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
真空エバポレーターを用いて、28-32℃の温度範囲で、前記粗物を濃縮する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記極性の増大した溶媒が石油エーテル、クロロホルム、及び酢酸エチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記クロマトグラフィーがG-10固体支持体上にある、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−527192(P2007−527192A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500715(P2005−500715)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004985
【国際公開番号】WO2004/111204
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】