説明

同位体置換されたパントプラゾール

本発明は、式1で示される化合物並びにこれらの化合物を含有する医薬品、更に式2及び3の中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体置換されたパントプラゾール並びにその(R)−エナンチオマー及び(S)−エナンチオマーに関する。これらの化合物は、医薬組成物の製造のために医薬品産業で使用できる。
【0002】
発明の背景
それらのH+/K+−ATPアーゼ阻害作用のため、ピリジン−2−イルメチルスルフィニル−1H−ベンゾイミダゾール、例えばEP−A−0005129号、EP−A−0166287号、EP−A−0174726号、EP−A−0254588号及びEP−A−0268956号から公知のものは、胃酸分泌の増大と関連する疾患の治療においてかなり重要である。
【0003】
商業的に又は医薬臨床開発において入手可能な有効化合物の例は、5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(INN:オメプラゾール)、(S)−5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル−スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(INN:エソメプラゾール)、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ジメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(INN:パントプラゾール)、2−[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(INN:ランソプラゾール)、2−{[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル}−1H−ベンズイミダゾール(INN:ラベプラゾール)及び5−メトキシ−2−((4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジルメチル)スルフィニル)−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(INN:テナトプラゾール)である。
【0004】
前記のスルフィニル誘導体は、その作用機構からプロトンポンプ阻害剤又は略してPPIとも呼ばれる。
【0005】
関連技術分野の説明
米国特許第6,818,200号は、少なくとも1個の水素原子が重水素原子によって交換されているジヒドロピリジン化合物及び抗生物質を開示している。その重水素化された化合物は、そのH型と、重水素酸化物及び好適な触媒の混合物とを、密封容器中で激しい反応条件下で、すなわち高められた温度(60〜80℃)で、延長された反応時間(190時間まで)にわたって反応させることによって得られる。更に、これらの化合物のH/D交換による薬理学的特性への幾つかの影響を開示している。
【0006】
発明の開示
ここで驚くべきことに、以下に詳細に開示される異性体置換された化合物が、酸分泌の阻害に関するこれらの化合物の特性に大きな影響を及ぼすことが判明した。
【0007】
本発明は、一般式1
【化1】

[式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2が、メトキシであり、R3が、メトキシである]で示され、R1、R2、R3の水素原子又はR1、R2及びR3の任意の組み合わせの水素原子の少なくとも1個が、重水素原子によって交換されている化合物並びに塩、溶媒和物、有利には水和物並びにその塩の溶媒和物、有利には水和物に関する。可能な組み合わせは、R1及びR2、R1及びR3、R2及びR3又はR1及びR2及びR3である。
【0008】
本発明によれば、塩の範囲内では、無機塩基及び有機塩基との全ての塩、特にアルカリ金属との塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が含まれ、又はアルカリ土類金属との円、例えばマグネシウム塩及びカルシウム塩、また他の薬理学的に相容性の塩、例えばアルミニウム塩又は亜鉛塩が含まれる。特にナトリウム塩及びマグネシウム塩が好ましい。
【0009】
例えば、本発明による化合物の工業的規模での製造におけるプロセス生成物として最初に得ることができる薬理学的に非認容性の塩は、これらも本発明の範囲内であるが、該塩は、当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。
【0010】
本発明による化合物及びその塩は、例えばこれらが結晶形で単離される場合に種々の溶剤量を有してよいことは当業者には知られている。従ってまた本発明は、式1の化合物の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物、及びまた式1の化合物の塩の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物を包含する。溶媒和物の意味の範囲内では、係る溶媒和物をもたらすあらゆる製剤学的に認容性の溶剤が含まれる。
【0011】
本発明によれば、用語"少なくとも1個"は、重水素原子によって交換することができるR2又はR3の1〜3個の水素原子を指す。
【0012】
本発明による化合物の命名に関しては、用語"デューテロ"又は"デューテリオ"は、重水素原子([2H])を含むべきである。同様に、接頭語"トリ"又は"トリス"は、例えば特定の基中に3個の重水素原子が存在することを指す、すなわちトリデューテリオメトキシを指すべきである。
【0013】
本発明の範囲内で好ましいのは、式中、R2、R3又はR2及びR3の水素原子の少なくとも1個が重水素原子によって交換されている化合物である。また好ましいのは、式中、R1がデューテリオジフルオロメトキシである化合物である。係る化合物の例は、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、
5−ジフルオロメトキシ−2−[3−モノデューテリオメトキシ−4−メトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−ジデューテリオメトキシ−4−メトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(モノデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、又は
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(ジデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
であってよい。
【0014】
更に好ましいのは、式中、R2、R3又はR2及びR3がトリデューテリオメトキシである化合物である。より好ましいのは、式中、R3がトリデューテリオメトキシである化合物である。
【0015】
係る化合物の例は、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−トリデューテリオメトキシ−4−メトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、又は
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
であってよい。
【0016】
最も好ましいのは、式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2が、メトキシであり、かつR3が、ジデューテリオメトキシ又はトリデューテリオメトキシである化合物である。
【0017】
好ましいのは、式1の化合物のナトリウム塩又はマグネシウム塩である。有利には、ナトリウム塩は、一水和物塩であり、そしてより好ましいのは、セスキ水和物塩である。有利には、マグネシウム塩は、三水和物塩であり、そして更により好ましいのは、二水和物塩である。
【0018】
本発明による化合物は、胃酸分泌への影響に関して知られる化合物に対して大きく改善された特性を示す。
【0019】
本発明による化合物はキラル化合物である。従って、本発明は、ラセミ体並びにエナンチオマー及びそれらの任意の所望の比率の混合物に関する。医学的観点から、一定のキラル化合物は一方のエナンチオマー又は他方のエナンチオマーの形で投与することが好ましいことがあるという事実の点で、本発明の対象は、式1の化合物のエナンチオマーであり、その際、反対の立体配置を有するそれぞれの他方のエナンチオマーを事実上含まないことが好ましい。
【0020】
従って、一方で一般式1a
【化2】

[式中、R1、R2及びR3が前記の意味を有する]で示される(S)−立体配置を有する化合物が特に好ましい。
【0021】
本発明の範囲内で(S)−立体配置を有する特に好ましい化合物は、化合物(S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジルメチル)スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール並びにこの化合物の溶媒和物、有利には水和物、前記化合物の塩及び前記化合物の塩の溶媒和物、有利には水和物である。本発明の範囲内で(S)−立体配置を有するもう一つの特に好ましい化合物は、化合物(S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジルメチル)スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール並びにこの化合物の溶媒和物、有利には水和物、前記化合物の塩及び前記化合物の塩の溶媒和物、有利には水和物である。
【0022】
好ましいのは、式1aの化合物のナトリウム塩又はマグネシウム塩である。有利には、S−エナンチオマーのナトリウム塩又はマグネシウム塩は、三水和物である。
【0023】
他方で、一般式1b
【化3】

[式中、R1、R2及びR3が前記の意味を有する]で示される(R)−立体配置を有する化合物が特に好ましい。
【0024】
本発明の範囲内で(R)−立体配置を有する特に好ましい化合物は、化合物(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジルメチル)スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール並びにこの化合物の溶媒和物、有利には水和物、前記化合物の塩及び前記化合物の塩の溶媒和物、有利には水和物である。本発明の範囲内で(R)−立体配置を有するもう一つの特に好ましい化合物は、化合物(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジルメチル)スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール並びにこの化合物の溶媒和物、有利には水和物、前記化合物の塩及び前記化合物の塩の溶媒和物、有利には水和物である。
【0025】
式1の化合物をエナンチオマーに分割することは、様々な方法に従って、例えば国際特許出願WO92/08716号に記載されるようにして又はカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。選択的に、式1a及び1bの化合物は、国際特許出願WO2004/052881号に記載されるように、スルフィドのキラル酸化によって得ることができる。
【0026】
式1、式1a及び式1bの化合物の塩は、自体公知の方法によって、式1、式1a及び式1bで示される弱酸であると見なしうる化合物と、好適な塩基、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルコキシド、例えば水酸化ナトリウム又はナトリウムメトキシドとを又はアルカリ土類金属アルコキシド、例えばマグネシウムメトキシドとを反応させることによって製造される。一例としては、式1、式1a及び式1bの化合物の有利な塩であるマグネシウム塩(ナトリウム塩以外)は、自体公知のように、式1、式1a及び式1bの化合物と、マグネシウム塩基、例えばマグネシウムアルコキシドとを反応させることによって、又は式1、式1a又は式1bの化合物の易溶性塩(例えばナトリウム塩)から、マグネシウム塩を用いて水又は水と極性有機溶剤(例えばアルコール、有利にはメタノール、エタノール又はイソプロパノール又はケトン、有利にはアセトン)との混合物中で製造される。
【0027】
本発明によれば、"(S)−立体配置を有する化合物"は、"(R)−立体配置を有する化合物を実質的に含まない(S)−立体配置を有する化合物"を含むと解される。
【0028】
本発明の文脈における、"実質的に含まない"とは、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を10質量%未満含有することを意味する。有利には、"実質的に含まない"とは、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を5質量%未満含有することを意味する。より有利には、"実質的に含まない"とは、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を2質量%未満含有することを意味する。最も好ましい実施態様において、"実質的に含まない"とは、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を1質量%未満含有することを意味する。
【0029】
本発明によれば、"(R)−立体配置を有する化合物"は、"(S)−立体配置を有する化合物を実質的に含まない(R)−立体配置を有する化合物"を含むと解される。
【0030】
本発明の文脈における、"実質的に含まない"とは、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を10質量%未満含有することを意味する。有利には、"実質的に含まない"とは、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を5質量%未満含有することを意味する。より有利には、"実質的に含まない"とは、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を2質量%未満含有することを意味する。最も好ましい実施態様において、"実質的に含まない"とは、(R)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物が、(S)−立体配置を有する化合物及び/又はそれらの塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物を1質量%未満含有することを意味する。
【0031】
本発明によれば、用語"重水素原子によって交換された水素原子"とは、そのバルク材料について少なくとも80%の重水素化の程度が定義され、その際、これらの全ての相応してあげられる水素原子は、重水素原子によって交換されているものと解されるべきである。例えば、置換基R2又はR3が、全ての3個の"重水素原子によって交換された水素原子"を有するメトキシ基を指す場合に、前記の定義によれば、バルク材料中の全てのR2又はR3のメトキシ基の少なくとも80%が−OCD3であるものと解されるべきである。残りの100%までの部分は、−OCHD2、−OCH2D又は−OCH3を含む。
【0032】
好ましいのは、バルク材料中の特定の水素原子について少なくとも90%の重水素化の程度であり、それは、交換された水素原子の少なくとも90%が、重水素原子であるべきことを意味する。より好ましいのは、バルク材料中の特定の水素原子について少なくとも92%の重水素化の程度である。更により好ましいのは、バルク材料中の特定の水素原子について少なくとも94%の重水素化の程度であり、最も好ましいのは、バルク材料中の特定の水素原子について少なくとも96%の重水素化の程度である。
【0033】
本発明の追加の発明主題は、式2
【化4】

[式中、R1、R2及びR3は、前記の意味を有し、かつR1、R2、R3の水素原子又はR1、R2及びR3の任意の組合せの水素原子の少なくとも1個が重水素原子によって交換されている]で示される化合物である。可能な組み合わせは、R1及びR2、R1及びR3、R2及びR3又はR1及びR2及びR3である。式2の化合物は、更に、その酸との塩、有利には塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩及び/又は溶媒和物である。これらの化合物は、一般式1、1a又は1bの化合物の製造のために使用することができる。式2の化合物は、式1、1a又は1bによる化合物をもたらす酸化反応のための出発材料として特に適している。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、式3
【化5】

[式中、Xは、ハロゲン又はアルコールの活性化誘導体であり、かつR2及びR3は、前記の意味を有し、かつR2、R3又はR2及びR3の水素原子の少なくとも1個は重水素原子によって交換されている]で示される化合物である。
【0035】
本発明の目的のためには、ハロゲンは、ヨウ素、臭素、塩素及びフッ素である。好ましくは、Xは塩素である。本発明の目的のためには、アルコールの活性化誘導体は、アルキルスルホネート基、例えばメシレート基又はアリールスルホネート基、例えばトシレート基又はベシレート基、又はペルフルオロアルカンスルホネート基、例えばトリフルオロメタンスルホネートである。
【0036】
式3の化合物は、式1、1a又は1bの化合物の製造のために使用することができる。有利には、式3の窒素原子を、まず第四級化させ、次いで、式4
【化6】

[式中、R1は、前記の意味を有する]で示される化合物と反応させて、前記の式2の化合物が提供される。
【0037】
R/S−パントプラゾール及びS−パントプラゾールの重水素同族体は、文献、例えばKohl他著のJ.Med.Chem.1992,35,1049ffもしくはWO2004/052881号から公知の方法に従って相応のチオ化合物の酸化によって、又は相応のスルホキシドであって、最後のトリデューテリオメトキシ基の位置に、特にピリジン基の4位にハロゲン(例えばクロロ、ブロモ又はニトロ)置換基を有するものから、トリデューテリオメトキシについてのハロゲンの交換によって製造される。
【0038】
同様に、チオ化合物は、最後のトリデューテリオメトキシ置換基の位置でのトリデューテリオメトキシによるハロゲンの交換によって、又は5−ジフルオロメトキシ−2−メルカプトベンゾイミダゾールと、相応して置換された2−クロロメチル−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−ピリジニウムクロリドとのカップリングによって、いずれかで製造される。開示した製造経路は、前記のようなトリデューテリオメトキシの代わりに、ハロゲンをジデューテリオメトキシもしくはモノデューテリオメトキシによって置換するためにも使用することができる。これらの合成は、相応に重水素化された化合物をもたらす。
【0039】
式1の化合物は、以下の反応式に従って製造できる:
【化7】

【0040】
スルホキシドと無機塩基との塩は、文献から公知の方法に従って、スルホキシドと、相応のヒドロキシドもしくはアルコキシドとを、有機溶剤又は有機溶剤と水との混合物中で反応させることによって製造される。
【0041】
選択的に、塩は、スルホキシドとアルカリ水酸化物とを反応させて、相応のアルカリ塩(Na、K、Li)を得て、更に、例えばマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛塩と反応させることによって製造される。
【0042】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、それを制限するものではない。例として表記された新規化合物並びに任意の塩、溶媒和物、有利には水和物又はこれらの化合物の塩の溶媒和物、有利にはこれらの化合物の塩の水和物は、本発明の好ましい発明主題である。
【0043】
実施例
トリデューテリオメトキシ化剤としては、>99.8原子%Dを有するメタノール−D4を使用した。全ての得られる生成物中のトリデューテリオメトキシ置換基の異性体純度は、NMR及びMSによって測定した場合に、>98.0%であった。更なる重水素化剤としては、>98.0原子%Dを有するメタノール−d2及び>98.0原子%Dを有するメタノール−d1を使用した。得られる生成物中のジデューテリオメトキシ置換基及びモノデューテリオメトキシ置換基の異性体純度は、NMR及びMSによって測定した場合に、>96.0%であった。
【0044】
実施例1
(R/S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
次亜塩素酸ナトリウムの溶液(10%濃度)(3.3ミリモル)を、1ないし2時間にわたって、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(1.0g、2.7ミリモル)を、水(20mL)、2−プロパノール(10mL)及び水酸化ナトリウム(0.5mL 40%濃度の溶液、7.1ミリモル)中に入れたスラリーに、30〜35℃で撹拌しつつ添加する。示した温度で30〜60分間後に、チオ硫酸ナトリウム(5mLの水中に溶解された0.3g)を添加し、そして撹拌を、更に15〜30分にわたり継続する。
【0045】
該反応混合物を、真空中で濃縮し(30〜40℃)、当初の容量の約三分の一にして、水(約70mL)を添加する。
【0046】
水相をジクロロメタンで抽出(2×10mLそれぞれ)した後に、再びジクロロメタン(50mL)を添加し、そしてpHを、水性リン酸二水素カリウムを撹拌しつつ添加することによって7〜8に調整する。相分離をし、水相をジクロロメタン(20mL)で1回さらに抽出し、合した有機相を水(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして乾燥剤を濾過することで、粗製表題化合物の溶液が得られる。
【0047】
石油エーテル(50/70;150mL)を添加し、そして回転蒸発器中で真空中で30〜40℃において濃縮して、約30mLの容量とし、引き続き沈殿した固体を濾過し、石油エーテル(50/70;20mL)ですすぎ、そして真空中(35℃、5時間)で乾燥させることで、表題化合物、(R/S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点135〜136℃(分解);収量1.0g(理論値の95%))として得られる。
【0048】

【0049】
実施例2
(S)(−)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
室温で、2.0gの5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールを、20mLのメチルイソブチルケトン中で、(+)−L−酒石酸 ビス(N−ピロリジンアミド)(2.3g)及びジルコニウム(IV) n−プロポキシド(1.0g、プロパノール中70%)と一緒に懸濁させる。該混合物を40℃で1時間加熱し、ほぼ澄明な溶液が形成する。室温に冷却した後に、N−エチルジイソプロピルアミン(0.07mL)及びクメン ヒドロペルオキシド(1.05mL)を添加する。該混合物を、室温で、酸化が完了するまで(10〜24時間、TLCによってモニタリング)撹拌する。澄明な溶液を、10mlのメチルイソブチルケトンで希釈し、そして14mLの重炭酸ナトリウム飽和溶液中の0.08gのチオ硫酸ナトリウムでクエンチングし、そして更に2時間撹拌する。相分離後に、該混合物を5mlの重炭酸ナトリウム飽和溶液で2回洗浄する。15mLの水をメチルイソブチルケトン相に添加し、そしてpHを、水酸化ナトリウムの40質量%濃度の水溶液を用いてpH=13に調整する。相分離後に、メチルイソブチルケトン相を更なる5mlの水でpH13で抽出する。水相を合し、そして40℃で減圧下に初期蒸留を行う。濾過助剤としてのHyflo Super Cell(0.05g)を添加し、そして20〜25℃で1時間撹拌した後に、濾別する。40〜45℃で、粗製表題化合物を、10%濃度の酢酸を濾液に添加してpH=9.0とすることによって沈殿させる。該混合物をpHを監視しながら更に12時間撹拌する。ベージュ色の結晶を濾過分離し、そして10mLの水で洗浄する。表題化合物は、約1.6g(理論値の75%)の収量及び光学純度>98%で得られる。
【0050】
純度を高めるために、(−)−パントプラゾールを、水/水酸化ナトリウム水溶液中にpH=13で溶解させ、そして酢酸(10%)を用いてpH=9.0で再沈殿させる。
【0051】
ジクロロメタン/t−ブチルメチルエーテルから再結晶化させることで、表題化合物、S(−)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点146〜148℃(分解);収量1.6g)として得られる。
【0052】
実施例3
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−5−ジフルオロメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール(20g)を、4回に分けて、30〜60分にわたり50〜60℃で、ナトリウム トリデューテリオメタノレート(デューテロメタノールD4(7.8g)と水素化ナトリウム(8.6g、パラフィン中60%濃度)から製造された)をN−メチルピロリジン−2−オン(150mL)中に溶かした溶液に添加する。
【0053】
示した温度で4時間後に、該反応混合物を、20〜25℃に冷却し、そして水(500mL)を、撹拌しつつ1〜2時間にわたり添加する。2Nの水性塩酸でpH7に調整した後に、該混合物を、更に1時間20〜25℃で撹拌する。
【0054】
沈殿物を、吸引フィルタを介して濾別し、水(200mL)で数回に分けてすすぎ、そして乾燥させる(35℃、20ミリバール、20時間)。乾燥させた粗生成物(22g)を、トルエン(250mL)中に80〜85℃で溶解させ、そして酸化アルミニウム(Merck、90活性型;10g)を添加する。指定した温度で30分間撹拌した後に、該混合物を濾過し、そして澄明な濾液を、真空中(40〜50℃)で濃縮して、50mLの容量とする。
【0055】
2時間かけて10℃に冷却することによって、無色の沈殿物が分離し、そこから吸引フィルタを介して濾別し、トルエン(10mL)ですすぎ、そして乾燥させる(40℃、20ミリバール、20時間)。
【0056】
16g(理論値の80%)の表題化合物、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の結晶性固体(融点119〜120℃)として得られる。
【0057】
実施例3の代替的な合成
2.12gの2−クロロメチル−3−mエトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジニウム クロリドを、2.08gの2−メルカプト−5−ジフルオロメトキシ−1H−ベンゾイミダゾールを40mLのエタノールと20mLの1N水酸化ナトリウム溶液中に溶かした溶液に添加し、該混合物を、20℃で2時間にわたり撹拌し、そして次いで更に1時間にわたり40℃で撹拌する。エタノールを回転蒸発器(10ミリバール/40℃)で留去し、そしてそれにより分離した無色の沈殿物を吸引フィルタを介して濾別する。それを1Nの水酸化ナトリウム溶液及び水ですすぎ、そして乾燥させる。実施例3に従ってトルエンから再結晶化させた後に、表題化合物が、オフホワイト色の結晶性固体(収量2.9g;融点118〜120℃)として得られる。
【0058】
実施例4
出発材料、2−クロロメチル−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリドの合成
3−メトキシ−2−メチル−4−トリデューテリオメトキシピリジン N−オキシドの製造
4−クロロ−3−メトキシ−2−メチルピリジン N−オキシド(10g)及びナトリウム トリデューテリオメタノレート(6.2g)をデューテロメタノールd4(20mL)中に入れたものを、還流で加熱した。15時間後に、溶剤を真空中で蒸発させ、残留物を高温のトルエン(50mL)で抽出し、そして不溶物を濾別した。濾液にジイソプロピルエーテルを添加することで、固体が沈殿し、それを真空中で乾燥させた後に、8.1gの3−メトキシ−2−メチル−4−トリデューテロメトキシピリジン N−オキシドが、淡褐色の粉末として得られた。それを、引き続き後続工程に使用した。
【0059】
2−ヒドロキシメチル−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジンの製造
前工程からの生成物(8.1g)を、無水酢酸(50mL)中に溶解させ、そして90℃で2時間加熱した。真空中で蒸発させた後に、暗色の油状残留物を、2NのNaOH(20mL)と一緒に80℃で2時間撹拌した。冷却した後に、生成物を、ジクロロメタン中で抽出し、乾燥(K2CO3)させ、そして真空中で濃縮することで、容量を少なくした。石油エーテル(50/70)を添加することで、濾過と真空中での乾燥の後に、2−ヒドロキシ−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジンが、淡褐色の固体(5.5g)として得られ、それを後続工程で使用した。
【0060】
2−クロロメチル−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリドの製造
前工程からの生成物(5.5g)を、無水ジクロロメタン(40mL)中に溶解させ、そして塩化チオニル(3mL)を、撹拌しつつ5〜10℃で滴加した。該混合物を、20℃にまで加温させ、そして3時間後に、真空中で濃縮乾涸させた。
【0061】
トルエン(20mL)を添加することで、6.6gの表題化合物、2−クロロメチル−3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリドが、淡褐色の固体として得られた。
【0062】
前記のように合成された材料は、幾らかの除去困難な不純物を含有していた。それらは、後続工程を通して大抵、一般式(2)の化合物と、最終的には一般式(1)の化合物に導くという傾向を示した。例外的に高い純度を有する一般式(1)の化合物の製造のためには、従って、しばしば、実施例3及び14に特徴付けられるデューテリオアルコキシ化を行うことが好ましい。
【0063】
実施例5
ナトリウム (S)−{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド} 水和物の合成
5.0gの(S)−{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール}を、25mlのイソブチルメチルケトン(MIBK)及び2.5mlの2−プロパノール中に懸濁させ、そして45℃の内部温度に加熱する。該懸濁液を、前記温度で15分間撹拌する。45℃で、1.25gの40%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液及び0.25mlの水を、前記懸濁液にゆっくりと滴加する。該溶液を室温にまでゆっくりと冷却する。45〜30℃の間で、結晶化が開始し、それは播種によって促進させることができる。得られた懸濁液を、<20℃の内部温度で、更に18時間にわたり撹拌する。次いで、該懸濁液を濾過し、そして結晶を、2mlのMIBKで洗浄する。乾燥は、真空乾燥棚中で、<50ミリバール及び35℃で行う。表題化合物は、白色ないしオフホワイト色の結晶性固体として得られる;収量5.9g、理論値の99%;含水率は、12〜14%であり、三水和物に相当する;融点:95℃で分解開始、純度HPLC >99.7%、キラルHPLC >98.0%ee;[α]20D=−89.0゜(c=0.5,MeOH)。
【0064】
実施例6
ナトリウム (R/S)−{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド} 水和物の合成
9.5gの{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール}を、57mlのアセトン中に懸濁させ、そして45℃の内部温度に加熱する。該懸濁液を、前記温度で15分間撹拌する。45℃で、2.4gの40%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を、前記懸濁液にゆっくりと添加する。該溶液を室温にまでゆっくりと冷却する。30〜25℃の間で、結晶化が開始し、それは播種によって促進させることができる。4mlの水を添加する。得られた懸濁液を、<20℃の内部温度で、18時間にわたり撹拌する。次いで、該懸濁液を濾過し、そして結晶を、5mlのアセトンで洗浄する。乾燥は、真空乾燥棚中で、<50ミリバール及び40℃で行う。表題化合物は、白色ないしオフホワイト色の固体として得られる;収量8.8g、理論値の88%;含水率は、カール・フィッシャー滴定により5.2%であり、それは一水和物に相当する;融点:155〜158℃(分解)、純度 HPLCにより>99.3%。
【0065】

【0066】
実施例7
マグネシウム (S)−ビス{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド} 水和物の合成
3.0gのナトリウム (S)−{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド}(無水物質として計算した)を、26mlの水中に懸濁させる。該懸濁液を、35〜40℃に加熱し、そして更に10分間撹拌する。これにより澄明な溶液が得られる。その澄明な溶液を、22〜27℃に冷却する。1.43gの塩化マグネシウム六水和物を、10mlの水中に溶解させ、そして室温でかつ撹拌しつつ、この溶液を、前記ナトリウム塩溶液にゆっくりと滴加する。次いで、得られた懸濁液を、室温で、更に18時間撹拌する。該懸濁液を、濾過し、そして生成物を、10mlの水で2回洗浄する。真空乾燥棚中で<50ミリバール及び40〜45℃で乾燥させることで、2.2g(74%)の表題化合物が得られる(融点:169℃で分解開始;カール・フィッシャー滴定による含水率6.4%、それは三水和物に相当する;純度 >99.7%HPLC、キラルHPLC >99.0%ee;[α]20D=−122゜(c=0.5,MeOH)。
【0067】
実施例8
マグネシウム (R/S)−ビス{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド} 水和物の合成
3.0gのナトリウム (R/S)−{[5−(ジフルオロメトキシ)]−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾリド}(無水物質として計算した)を、26mlの水中に懸濁させる。該懸濁液を、35〜40℃に加熱し、そして35〜40℃で更に10分間撹拌する。これにより澄明な溶液が得られる。その澄明な溶液を、22〜27℃に冷却する。1.43gの塩化マグネシウム六水和物を、10mlの水中に溶解させ、そして室温でかつ撹拌しつつ、この溶液を、前記ナトリウム塩溶液にゆっくりと滴加する。次いで、得られた懸濁液を、室温で、更に4時間撹拌する。該懸濁液を、濾過し、そして生成物を、15mlの水で2回洗浄する。真空乾燥棚中で<50ミリバール及び40〜45℃で乾燥させることで、2.1g(70%)の表題化合物が得られる(融点:179〜181℃(分解))。カール・フィッシャー滴定による含水率4.7%、それは二水和物に相当する、純度:99.5%HPLC。
【0068】
実施例9
4−クロロ−2−クロロメチル−3−メトキシピリジニウムクロリド
85〜95℃で、4−クロロ−3−メトキシ−2−メチルピリジン−N−オキシド(19.2kg、111モル)をトルエン(148L)中に溶かした溶液を、無水酢酸(71L)に、5〜7時間にわたって添加した。約60℃で真空下で、該反応混合物を、約170Lが留去されるまで濃縮した。トルエン(160L)を添加し、そして溶剤を留去した(160L)。この最後の作業を、もう一度繰り返した。次いで、トルエン(14L)及び40%の水性NaOH(14.6L)を、35〜45℃で添加し、そして該反応混合物を、前記温度で2〜3時間保持した。この時点でpHが13未満であれば、より多量のNaOHを添加し、そして加熱を2時間以上継続した。その得られた二相反応混合物を、トルエン(26L)及び飽和水性重炭酸ナトリウム(26L)で希釈し、相を分離させ、そして水層を、トルエンで3回抽出した(26L及び2×13L)。最後に、合した有機相を、飽和水性重炭酸ナトリウム(13L)で洗浄し、そして真空下で50〜65℃において、約115Lが留去されるまで濃縮した。トルエン(100L)で希釈した後に、更に100Lの溶剤を留去した。
【0069】
4−クロロ−2−ヒドロキシメチル−3−メトキシピリジン(〜30%濃度)の得られた溶液を、CH2Cl2(48L)で希釈した。DMF(65.5g、0.896モル)を一回で添加し、次いで塩化チオニル(11.1kg、93.2モル)を、15〜30℃で3〜5時間にわたり添加した。更に1.5時間撹拌した後に、約45Lの溶剤を留去した。トルエン(20L)を添加し、そして再び、20Lの溶剤を蒸留によって除去した。次いで、エタノール(1.5L)を、得られた濃いスラリーに添加した。固体を10〜15℃で濾別し、トルエン(17L)で洗浄し、そして真空中で30℃で乾燥させることで、4−クロロ−2−クロロメチル−3−メトキシピリジニウムクロリドが、オフホワイトの固体(融点132℃;収量15.0kg(59%))として得られた。
【0070】

【0071】
実施例10
4−クロロ−2−クロロメチル−3−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリド
出発材料、4−クロロ−2−メチル−3−トリデューテリオメトキシピリジン−N−オキシドを、J.Med.Chem.1992,35,1049−1057における重水素化されていない類似体についての方法Dに従って製造した:
3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロンから出発して、DMF中の炭酸カリウムの存在下でトリデューテリオヨードメタンを用いて変換することで、2−メチル−3−トリデューテリオメトキシ−4−ピロン(収率:83〜96%)が得られ、それをアンモニアと一緒に150℃でエタノール中で加熱した後に、アセトン/イソプロパノール4:1から結晶化させた後に、4−ヒドロキシ−2−メチル−トリデューテリオメトキシピリジン(収率:52〜60%)が得られた。この材料を酸塩化リンで処理することで、4−クロロ−2−メチル−トリデューテリオメトキシピリジン(収率:64〜81%)の形成がもたらされた。引き続き、酢酸中で過酸化水素を用いて酸化させることで、4−クロロ−2−メチル−3−トリデューテリオメトキシピリジン−N−オキシドが、僅かに黄色の固体(収率:87〜89%)として得られた。4−クロロ−2−ヒドロキシメチル−3−トリデューテリオメトキシピリジンを介する最終的な変換を、実施例9に記載されるように実施することで、4−クロロ−2−クロロメチル−3−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリドが、無色の結晶性固体(融点129〜130℃;収量19.6g(42%))として得られた。
【0072】
実施例11
2−クロロメチル−3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)ピリジニウムクロリド
前記の実施例4に記載される方法に従って、4−クロロ−2−メチル−3−トリデューテリオメトキシピリジン−N−オキシド(25.3g、144ミリモル;製造については実施例10を参照のこと)を変換して、2−メチル−3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)ピリジン−N−オキシド(収量:23.5g、96%)を得て、そこからまた、2−ヒドロキシメチル−3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)ピリジン(収量:13.0g、56%)と、最終的には、2−クロロメチル−3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)ピリジニウムクロリド(収量:15.4g、89%)が、オフホワイト色の結晶性固体として得られた。
【0073】
実施例12
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
55〜65℃で、4−クロロ−2−クロロメチル−3−メトキシピリジニウムクロリド(10.0kg、43.8モル)を水(20L)中に溶かした溶液を、2〜3時間にわたって、5−ジフルオロメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−チオール(8.84kg、40.9モル)、トルエン(43L)、水(21L)及び40%水性NaOH(10.3kg、103モル)の混合物に添加した。60℃での撹拌を2〜3時間にわたり継続してから、反応混合物を、10〜15℃に冷却した。沈殿物を、遠心分離し、トルエン(16L)で洗浄し、そして水(122L)中で再溶解させた。遠心分離に引き続き、水で洗浄し(32L)、そして真空中で35℃で乾燥させることで、5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(KF=4.6%)が、オフホワイト色の固体(融点95〜99℃;収量14.2kg(92%))として得られた。
【0074】

【0075】
実施例13
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
4−クロロ−2−クロロメチル−3−トリデューテリオメトキシピリジニウムクロリド(5.00g、21.6ミリモル、実施例10)から出発して、実施例12に記載される方法に従って、5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(KF=4.7%)が、オフホワイト色の固体(融点94〜99℃;収量7.24g(85%))として得られた。
【0076】

【0077】
実施例14
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールのための代替的方法
15〜30℃で、メタノール−d4(2.26kg、62.7モル)を、30〜60分にわたり、ナトリウム t−ブトキシド(6.00kg、62.4モル)をDMAc(27L)中に入れた混合物に添加した。57〜65℃に加熱した後に、5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(6.08kg、15.6モル)をDMAc(10L)中に溶かした溶液を、30〜60分にわたり添加した。57〜65℃での撹拌を、約10時間にわたり継続した。該反応混合物を、20〜30℃に冷却し、そして水(21L)で希釈してから、pHを、20%の水性HCl(〜7.5L)で7〜8に調整した。生成物の沈殿は、約4時間にわたり水(75h)を添加することによって達成された。得られたスラリーを、35〜45℃に1.5時間にわたり加熱してから、10〜15℃に冷却した。5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、水湿の帯褐色の固体として、水でのすすぎ(58L)、水中での再溶解(78L)を含む遠心分離と、再び更なる水でのすすぎ(58L)を含む遠心分離によって得られた(収量10.4kg、KF=49.7%(91%))。
【0078】
水湿生成物のサンプル(16.2g、KF=49.7%)を真空中で25℃で乾燥させることで、非晶質の固体が得られ、トルエン(30mL)から結晶化させた後に、無水の5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(5.80g、71%回収、融点〜115〜116℃)として得られた。
【0079】

【0080】
実施例15
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(28.6g、73.4ミリモル)及びメタノール−d2(10.0g、294ミリモル)から出発して、引き続き実施例14に記載される方法を行うことで、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、水湿の帯褐色の固体(収量46.4g、KF=51.6%(82%))として得られた。
【0081】

【0082】
実施例16
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(29.5g、75.6ミリモル)及びメタノール−d1(10.0g、303ミリモル)から出発して、引き続き実施例14に記載される方法を行うことで、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、水湿の帯褐色の固体(収量50.3g、KF=50.8%(89%))として得られた。
【0083】

【0084】
実施例17
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−メトキシ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−クロロ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール一水和物(6.97g、17.7ミリモル)及びメタノール(2.28g、71.2ミリモル)から出発して、引き続き実施例14に記載される方法を行うことで、5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−メトキシ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、水湿の帯褐色の固体(収量7.01g、KF=19.1%(87%))として得られた。
【0085】

【0086】
実施例18
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール
50〜55℃で、2−クロロメチル−3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)ピリジニウムクロリド(15.4g、66.8ミリモル)を、30分間にわたって、5−ジフルオロメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−チオール(14.5g、66.8ミリモル)、エタノール(133mL)及び2Mの水性NaOH(73.5mL、147ミリモル)の混合物に少しずつ添加した。50〜55℃での撹拌を1〜2時間継続してから、エタノールを蒸留により40℃で真空下で除去した。残りの水性エマルジョンを、水(50mL)で希釈し、そしてジクロロメタン(165mL部)で3回抽出した。合した有機相を、0.1Mの水性NaOH(165mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして蒸発乾涸させることで、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾールが、褐色の油状物(収量23.8g(95%))として得られた。
【0087】
実施例19
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール − 大規模法
25〜35℃で、水性次亜塩素酸ナトリウム(10%濃度で10.5kg、14.2モル)を、3〜4時間にわたり、5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(10.4kg、KF=49.7%、14.2モル)及び40%の水性NaOH(2.84kg)を水(49L)とイソプロパノール(49L)との混合物中に溶かした溶液に添加した。25〜35℃での撹拌を0.5〜1時間にわたり継続してから、反応を、1%の水性Na223(4.3L)の添加によってクエンチングした。次いで、約65Lの溶剤を、30〜45℃で真空下で留去した。水(55L)で希釈した後に、更なる部の溶剤(8〜10L)を蒸留によって除去した。反応混合物を40〜45℃で保持しつつ、10%の水性酢酸(〜13L)を、1.5時間にわたり、pH8.5〜9.5に至るまで添加した。結晶化が開始したら、pHを、より多くの10%の水性酢酸(〜0.6L)を添加することによって、6.8〜7.2にゆっくりと調整した。20〜25℃に冷却した後に、粗生成物を濾別し、そして水(7.5L)で洗浄し、そして水(80L)、40%水性NaOH(1.6L)及びNa223(60g)の混合物中に再溶解させた。得られた僅かに混濁した水溶液を、MIBK(それぞれ12L)で2回洗浄し、そしてHyflo処理(0.40kg)によって澄明化させてから、pHを、10%水性酢酸(〜8L)の添加によって40〜45℃で9.0〜9.5に調整した。生成物の結晶化が開始したら、更なる10%の酢酸を添加して、9.0〜9.5のpHを連続的に維持した。最後に、水でのすすぎ(7.5L)及び真空中での約50℃での乾燥を含む遠心分離をすることで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点=134〜135℃(分解);収量3.59kg(65%))として得られた。
【0088】

【0089】
実施例20
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
湿潤の5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(32.7g、KF=51.6%、42.8ミリモル)から出発し、実施例19に記載される方法を行うことで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点=133〜135℃(分解);収量10.8g(65%))として得られた。
【0090】

【0091】
実施例21
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテロメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
湿潤の5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(34.8g、KF=50.8%、46.5ミリモル)から出発し、実施例19に記載される方法を行うことで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点=134〜135℃(分解);収量14.0g(78%))として得られた。
【0092】

【0093】
実施例22
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−メトキシ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
湿潤の5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−メトキシ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(3.00g、KF=19.1%、6.55ミリモル)から出発し、実施例23に記載される方法を行うことで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(4−メトキシ−3−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、TBME(10mL)からの結晶化後に、オフホワイト色の固体(融点=133〜134℃(分解);収量1.83g(72%))として得られた。
【0094】

【0095】
実施例23
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(23.8g、63.7ミリモル)を、CH2Cl2(210mL)中に溶解させ、そして−55℃〜−40℃に冷却した。前記温度で、3−クロロペルオキシ安息香酸(湿潤、77%濃度、15.8g、70.5ミリモル)をCH2Cl2(110mL)中に溶かした溶液を、1.5時間にわたりゆっくりと添加した。1時間より長く、−55℃〜−40℃にした後で、トリエチルアミン(12.3mL、88.5ミリモル)及び6%水性Na2CO3と2%水性Na223(140mL)との1:1混合物を、連続的に、該混合物を約0℃にまで加温しつつ添加した。撹拌を周囲温度で1時間にわたり継続した。相を分離させ、そして有機層を、6%水性Na2CO3と2%水性Na223との1:1混合物で2回洗浄し、そして水(それぞれ140mL)で1回洗浄してから、蒸発乾涸させた。ジイソプロピルエーテル(700mL)から結晶化させた後に、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(収量20.9g(84%))として得られた。
【0096】
実施例24
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール(8.10g、21.0ミリモル)から出発して、実施例6に記載される方法を行うことで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−ジデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物が、オフホワイト色の固体(融点=150〜152℃(分解)、KF=4.8%;収量6.05g(68%))として得られた。
【0097】

【0098】
実施例25
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール(10.2g、26.5ミリモル)から出発して、実施例6に記載される方法を行うことで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−モノデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物が、オフホワイト色の固体(融点=151〜152℃(分解)、KF=4.1%;収量8.95g(79%))として得られた。
【0099】

【0100】
実施例26
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物
15〜25℃で、6Mの水性NaOH(8.92mL、53.5ミリモル)を、約15分にわたって、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール(21.0g、53.9ミリモル)を、エタノール/ジクロロメタンの6:1混合物(725mL)中に溶かした溶液に添加した。更に室温で10分間撹拌した後に、殆どの溶剤を留去した。得られた濃縮物(115g)を、ジイソプロピルエーテル(1.7L)で希釈した。幾らかの暗色の蝋状の残留物が未溶解状態に保ち、そして上清の澄明な黄色の溶液をデカンテーションした。この溶液に、更なる部のジイソプロピルエーテル(3.4L)を添加して、生成物の沈殿を行った。該懸濁液を0℃に冷却し、そして固体を濾別し、ジイソプロピルエーテル(100mL)で洗浄し、そして40℃で真空中で乾燥させることで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3,4−ビス(トリデューテリオメトキシ)−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物が、オフホワイト色の固体(KF=4.0%;収量18.9g(82%))として得られた。
【0101】

【0102】
実施例27
rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 セスキ水和物
48〜55℃で、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 一水和物(2.93kg、6.87モル)を、イソプロパノール(12L)と水(0.50L)との混合物中に溶解させた。Hyflo Super Cel(56g)で処理し、そして18〜25℃に冷却した後に、結晶化は、生成物の基準サンプルで播種し、引き続き18〜25℃で40時間にわたり、かつ更に10〜15℃で5時間にわたり撹拌することで達成された。遠心分離をし、45℃で真空中で乾燥させることで、rac−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 セスキ水和物が、白色の固体(融点=140〜142℃(分解)、KF=6.6%;収量2.28kg(78%))として得られた。
【0103】
実施例28
(S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール − 所望の出発材料のための大規模法
室温で、382gの湿潤の5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(KF=47.6%、0.540モル)を、2.44Lのメチルイソブチルケトン中に、(+)−L−酒石酸 ビス(N−ピロリジンアミド)(55.0g)と一緒に懸濁させた。該混合物を、40℃に加熱し、そして約1.25Lの溶剤を、真空下で蒸発させて、水を除去した。次いで、ジルコニウム(IV) n−プロポキシド(24.0mL、n−プロパノール中70%)を添加し、そして40℃での撹拌を、1時間より長く継続した。30℃に冷却した後に、N−エチルジイソプロピルアミン(6.5mL)及びクメンヒドロペルオキシド(103mL、〜80%濃度)を添加した。30℃で約18時間撹拌した後に、TLCは、出発材料の更なる変換を示さなかった。澄明な反応混合物を、500mLのメチルイソブチルケトンで希釈し、そして7.0gのチオ硫酸ナトリウムを800mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液中に入れたものでクエンチングした。相分離後に、有機層を400mLの重炭酸ナトリウム飽和溶液で2回洗浄した。その有機相に、1.5Lの水を添加し、そしてpHを、40%水性水酸化ナトリウムを用いてpH=13に調整した。有機層を、更に400mLの水でpH13で抽出した。Hyflo Super Cel(5.0g)で処理した後に、合した水相のpHを、10%の水性酢酸を40〜45℃で添加することによって約9に調整した。生成物の沈殿が開始したら、該混合物を、更に12時間にわたり、pHを随時再調整しつつ撹拌した。光学純度>98%を有する粗生成物(160g、75%収率)が、水でのすすぎ(200mL)を含む濾過によって得られた。
【0104】
更に純度を高めるために、粗生成物を、ジクロロメタン(2.0L)中に溶解させ、そして水(400mL)で洗浄した。結晶化は、TBMEでの溶剤追加(最終容量約1.1L)によって達成された。その結晶を、約0℃で濾別し、TBME(400mL)で洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥させることで、(S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテロメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点146〜148℃(分解);KF=0.8%;収量135g(64%))として得られた。
【0105】
キラルHPLC:>98.0%ee;旋光度:[α]D=−98゜(MeOH,c=0.50)。
【0106】

【0107】
実施例29
(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール
5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルチオ]−1H−ベンゾイミダゾール(70.7g、KF=47.6%、100ミリモル)から出発して、キラル配位子として(−)−D−酒石酸 ビス(N−ピロリジンアミド)(10.3g、40.0ミリモル)を用いて、実施例28に記載される方法を行うことで、TBMEからの再結晶化後に、(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールが、オフホワイト色の固体(融点140〜142℃(分解);KF=0.8%;収量22.2g(57%))として得られた。
【0108】
キラルHPLC:>98.0%ee;旋光度:[α]D=+97゜(MeOH,c=0.50)。
【0109】

【0110】
実施例30
(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 三水和物
(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール(15.5g、40.1ミリモル)から出発して、実施例5に記載される方法を行うことで、(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩 三水和物が、白色の固体(融点98〜103℃(分解);KF=11.3%;収量17.4g(94%))として得られた。
【0111】
キラルHPLC:>98.0%ee;旋光度:[α]D=+91゜(MeOH,c=0.50)。
【0112】
実施例31
ビス−[(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール] マグネシウム塩 三水和物
(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール ナトリウム塩(2.30g、KF=11.3%、5.00ミリモル)から出発して、実施例7に記載される方法を行うことで、ビス[(R)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール]マグネシウム塩 三水和物が、白色の固体(融点141〜145℃(分解);KF=6.9%;収量1.23g(58%))として得られた。
【0113】
キラルHPLC:>99.0%ee;旋光度:[α]D=+120゜(MeOH,c=0.50)。
【0114】
産業上利用性
一般式1の化合物並びにそれらの塩及び溶媒和物、有利には水和物及びそれらの塩の溶媒和物、有利には水和物(以下で、"本発明の化合物"とする)は、それらを産業上利用可能にする有用な薬理学的特性を有する。特に、これらは、胃酸分泌に顕著な阻害作用を有し、かつ温血動物、特にヒトにおいて優れた胃腸保護作用を有する。ここで、本発明による化合物は、非常に選択的な作用、有利な作用期間、特に高い生物学的利用能、種々異なる個体間での一様な代謝プロフィール、重大な副作用の欠如及び広範な治療スペクトルの点で顕著である。
【0115】
この関連で、"胃腸保護"とは、例えば微生物(例えばヘリコバクター・ピロリ)、細菌毒、医薬品(例えば一定の抗炎症薬及び抗リウマチ薬)、化学物質(エタノール)、胃酸又はストレスによって引き起こされうる胃腸疾患、特に胃腸炎症性疾患及び病巣(例えば胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、酸の産生増大又は医薬品の結果としての過敏性腸、GERD、クローン病、IBD)の予防及び治療として解されるべきである。
【0116】
それらの優れた特性と共に、本発明による化合物は、抗腫瘍発生特性及び抗分泌特性の測定用の種々のモデルにおいて、特にそれらの代謝特性の点で、従来の化合物に対して驚くべきことに明らかに優れていることが判明した。これらの改善された代謝特性は、例えば治療もしくは予防に必要とされる本発明による化合物の量の低減を可能にする。又は、技術水準の化合物について成されるのと同量の本発明による化合物を使用することによって、より長期の作用期間を達成することができる。これらの特性に関連して、患者の安全性又は経済的観点、例えば薬剤費用などに関して好ましい。これらの特性のため、本発明による化合物は、ヒト医学及び獣医学における使用のために極めて適しており、その際、前記化合物は殊に胃腸疾患の治療及び/又は予防のために使用される。
【0117】
従って、本発明は更に、上記疾患を治療及び/又は予防するための本発明による化合物の使用を提供する。
【0118】
また本発明は、前記の疾病の治療及び/又は予防のために使用される医薬組成物の製造のための、本発明による化合物の使用を含む。
【0119】
また本発明は、本発明による化合物を含有する医薬組成物を提供する。特に、本発明は、式1、式1a又は式1bの化合物をそれらの製剤学的に認容性の塩の形で、特にナトリウム塩又はマグネシウム塩の形で、及び/又はかかる塩の水和物の形で含有する、医薬組成物を提供する。
【0120】
医薬組成物は、当業者によく知られた自体公知の方法によって製造される。医薬組成物としては、本発明による化合物は、それ自体として又は、有利には好適な医薬品助剤又は担体と組み合わせて、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、坐剤、パッチ剤(例えばTTS)、乳剤、懸濁液又は液剤の形で使用され、その際、有効化合物の含有率は有利には約0.1〜約95%であり、かつ助剤及び担体の適当な選択によって、有効化合物に厳密に適合された、及び/又は及び/又は所望の作用開始及び/又は作用所要時間に厳密に適合された医薬品剤形(例えば遅延放出形又は腸溶形)を製造できる。
【0121】
所望の医薬製剤に適した助剤又は担体は当業者に公知である。有効化合物用の溶剤、ゲル形成剤、坐剤基剤、打錠助剤及び他の担体の他に、例えば、酸化防止剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、矯味矯臭剤、保存剤、可溶化剤、着色剤、又は殊に浸透促進剤及び錯化剤(例えばシクロデキストリン)を使用することができる。
【0122】
本発明による化合物は、経口的、非経口的又は経皮的に投与することができる。有利には、本発明の化合物は、経口投与される。
【0123】
ヒト医学において、一般に、本発明による化合物を、経口投与する場合には、体重1kg当たりに、約0.01〜約1mg、有利には約0.02〜約0.5mg、特に約0.04〜約0.3mg[本発明による化合物の遊離形、すなわち塩形でないもの(="遊離化合物")に基づいて計算して]の日用量において、適宜、複数の個別投与で、有利には1〜4回の個別投与で投与して、所望の成果を得ることが好ましいことが判明している。非経口治療のためには、同様の用量又は(特に有効化合物を静脈内投与する場合には)一般により少量の用量を使用することができる。それぞれの場合に必要とされる有効化合物の最適用量及び投与型は当業者によって容易に決定できる。
【0124】
このように、本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む医薬組成物である。
【0125】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む医薬組成物である。
【0126】
本発明の更なる態様は、胃腸疾患の治療のための本発明による化合物の使用である。
【0127】
本発明の更なる一態様は、本発明による化合物を、胃腸疾患の治療又は予防用の医薬組成物の製造のために用いる使用である。
【0128】
本発明の更なる一態様は、本発明による1種以上の化合物を含有する医薬組成物を投与することによって胃腸疾患を治療する方法である。
【0129】
本発明の更なる態様は、代謝が遅い患者における胃腸疾患の治療のための本発明による化合物の使用である。
【0130】
本発明の更なる態様は、薬物相互作用の危険性がある患者における胃腸疾患の治療のための本発明による化合物の使用である。
【0131】
本発明の更なる態様は、長期間に亘る酸分泌の阻害が必要な患者における胃腸疾患の治療のための本発明による化合物の使用である。
【0132】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、代謝が遅い患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0133】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、代謝が遅い患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0134】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、薬剤相互作用の危険性がある患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0135】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、薬剤相互作用の危険性がある患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0136】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、延長された期間にわたり酸分泌の阻害を必要とする患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0137】
本発明の更なる一態様は、1種以上の本発明による化合物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、延長された期間にわたり酸分泌の阻害を必要とする患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0138】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、代謝が遅い患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0139】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、代謝が遅い患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0140】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、薬剤相互作用の危険性がある患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0141】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、薬剤相互作用の危険性がある患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0142】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約2〜約60mgの遊離化合物を含む、延長された期間にわたり酸分泌の阻害を必要とする患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0143】
本発明の更なる一態様は、経口固形適用形で本発明による製剤学的に認容性の塩又はそれらの水和物と一緒に、一種以上の慣用の助剤を含有し、単一用量が約4〜約40mgの遊離化合物を含む、延長された期間にわたり酸分泌の阻害を必要とする患者で使用するための胃腸疾患治療用の医薬組成物である。
【0144】
本発明による化合物を前記の疾病を治療するために使用すべきであれば、医薬品調剤は、他の医薬品群からの1種以上の薬理学的有効成分を含有してもよい。挙げられる例は、精神安定剤(例えばベンゾジアゼピン、例えばジアゼパム)、鎮痙薬(例えばビエタミベリン又はカミロフィン)、抗コリン作動薬(例えばオキシフェンシクリミン又はフェンカルバミド)、局所麻酔薬(例えばテトラカイン又はプロカイン)、場合によりまた酵素、ビタミン又はアミノ酸を含む。
【0145】
この関連で、特に強調されるものは、本発明による化合物と、胃酸を緩衝又は中和するか、又は酸分泌を阻害する他の医薬品、例えば制酸薬(例えばマガルドレート)又はH2遮断薬(例えばシメチジン、ラニチジン)及び主作用を相加的又は超相加的に増強する及び/又は副作用を排除又は低減する又はより迅速な作用開始を獲得する目的のガストリンアンタゴニストとの組合せ物である。NSAIDによって引き起こされる胃腸障害を予防するためのNSAID(例えばエトフェナメート、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン又はピロキシカム)との固定組合せ物又は自由組合せ物、又は胃腸運動性を変更する化合物との固定組合せ物又は自由組合せ物、又は一過性下部食道括約筋弛緩(TLOSR)の発生率を減らす化合物との固定組合せ物又は自由組合せ物、又はヘリコバクター・ピロリの制御のための抗細菌物質(例えばセファロスポリン、テトラサイクリン、ペニシリン、マクロライド、ニトロイミダゾール又はビスマス塩)との固定組合せ物又は自由組合せ物をも挙げることができる。挙げることができる適当な抗細菌性の組合せ相手は、例えばメズロシリン、アンピシリン、アモキシシリン、セファロチン、セフォキシチン、セフォタキシム、イミペネム、ゲンタマイシン、アミカシン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、クラリスロマイシン、アジスロマイシン及びこれらの組合せ(例えばクラリスロマイシン+メトロニダゾール又はアモキシシリン+クラリスロマイシン)である。
【0146】
本発明の実施において、本発明による化合物は、組合せ療法において、別々に、連続的に、同時に又は時間的にずらして(例えば組合せ単位投与形として、別々の単位投与形として、隣接した不連続な単位投与形として、固定組合せ物又は非固定組合せ物として、小分けキットとして又は混合物として)、1種以上の標準的な前記の療法剤と一緒に投与してよい。
【0147】
本発明による用語"組合せ物"は、固定組合せ物、非固定組合せ物又は小分けキットとして存在してよい。
【0148】
"固定組合せ物"は、第一の有効成分と第二の有効成分とが1つの単位用量中に又は単一物中に一緒に存在する組合せ物として定義される。"固定組合せ物"の一例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが、例えば一製剤中に同時の投与のために混合物で存在する医薬組成物である。"固定組合せ物"のもう一つの例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが、混合されることなく1つの単位中に存在する医薬組成物である。
【0149】
"小分けキット"は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが1単位より多くで存在する組合せ物として定義される。"小分けキット"の一例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが別々に存在する組合せ物である。小分けキットの成分は、別々に、連続的に、同時に又は時間的にずらして投与してよい。
【0150】
薬理学
肝ミクロソームにおける代謝
材料と方法
パントプラゾール又は実施例1もしくは2(それぞれ10μM)を、肝ミクロソーム(起源:全てはTEBU社製のミニブタ以外のGenTestから)と一緒にインキュベートした。インキュベートは、1mg/mlのタンパク質、100mMのトリス塩酸(pH7.4)、1mMのNADPH2中で行った。反応は、90分後に液体窒素によって停止させ、親化合物を、HPLC(10mMのKH2PO4、pH7.4、アセトニトリルグラジエント20〜44%)によって検出した。
【0151】
第1表:
ミクロソームを用いた90分のインキュベート時間後のH−パントプラゾール対デューテロ化合物(実施例1、2)の代謝(種依存性)
【表1】

【0152】
代謝クリアランス
本発明による化合物の特性を評価するために、組み換えヒトシトクロムP450(CYP)のイソ酵素、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4及びCYP3A5での化合物固有クリアランスを、重水素化されていない化合物と比較して測定した。
【0153】
材料と方法
実施例5、6、22、24、25及び30に記載される化合物と、更なる[1H]ラセミ体のパントプラゾール ナトリウム セスキ水和物並びに相応のS−及びR−エナンチオマーを、1ナノモル/mLの組み換えP450(Cypex、Dundee、UK)、4mg/mLのミクロソームタンパク質、100ミリモル/Lのトリス塩酸(pH7.4)及び1ミリモル/LのNADPHを含有するバッファー中で、37℃において、0、3、6、12及び15分又は30分にわたりインキュベートした。インキュベートは、三重反復試験で実施した。固有クリアランスを、親化合物の消失率に基づき決定した。パントプラゾールと重水素化された類似体は、HPLC−UVによって測定した。実験の変動性に基づくアッセイ感度の下限は、17.6μl/分/ナノモルP450であった。
【0154】
結果
CYP2C19及びCYP3A4は、パントプラゾール及びその重水素化された類似体の酸化的代謝に寄与することが見出された。全ての他のシトクロムP450のイソ酵素(CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A5)は、アッセイ感度の下限より高くで調査されたいかなる化合物の代謝にも寄与しなかった。
【0155】
パントプラゾールM2(5−(ジフルオロメトキシ)−2−[[(3−メトキシ−4−スルフェート−2−ピリジル)メチル]スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾールの生成動力学
本発明による化合物の代謝クリアランスのP450酵素を介した評価に引き続き、ヒトにいおいて同定される主要な代謝物、すなわちM2(5−(ジフルオロメトキシ)−2−[[(3−メトキシ−4−スルフェート−2−ピリジル)メチル]スルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール)の生成動力学を測定した。M2の生成は、4−メトキシ−ピリジル基のCYP2C19による酸化と、引き続いての未確認のスルホトランスフェラーゼによる3′−ホスホアデノシン−5′−ホスホスルフェート(PAPS)との結合に関与しているため、ヒトの凍結肝細胞を使用した。それというのも、フェーズI酵素及びフェーズII酵素の両方が前記のインビトロ系において機能的であるからである。
【0156】
材料と方法
実施例5、6、22、24、25及び30に記載される化合物と、更なるラセミ体の[1H]パントプラゾール ナトリウム セスキ水和物並びに相応のS−及びR−エナンチオマーを、84μg/mLのアミカシン、1マイクロモル/Lの塩化カルシウム、20ミリモル/LのHepes、4.2マイクロモル/Lのヘパトン酸(hepatonic acid)、28.5ミリモル/Lの重炭酸ナトリウム及びヒトの凍結肝細胞(10つのドナープール、InVitro Technologies,Baltimore,MD US)を含有するクレブス・ヘンゼライトバッファー(KHB)中で106細胞/mLの濃度でインキュベートした。これらの条件下でのM2生成速度は、60分まで線形であった。M2生成速度を、9種の異なる化合物濃度(0、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、25.0、50.0及び100マイクロモル/L)で、37℃で60分間にわたり二重反復試験でインキュベートして測定した。M2は、LC−MS/MSを用いて定量化した。ヒトの尿から単離されたM2を、外部標準として使用した。半最高生成速度に達する濃度(KM値)と最高生成速度(Vmax)は、ミハエリス・メンテン式を用いて非線形回帰分析によって得られた。固有クリアランス(Clint)は、VmaxをKMで除算して得られた。
【0157】
結果
パントプラゾール、そのエナンチオマー並びに実施例5、6、22、24、25及び30に記載される化合物からのM2の生成は、100μMより高い基質濃度によって阻害されるものと思われた。従って、100μMと250μMの基質濃度でのインキュベートについてのデータは、KM及びVmaxの計算から除外した。ラセミ体の[1H]パントプラゾール及びエナンチオマーからのM2の生成は、立体特異的な差異を示した(図1A)。ラセミ体の、(R)及び(S)−類似体(4−メトキシ−ピリジル位で重水素化された実施例6、30及び5)は、それらの重水素化されていない相当物と比較して少なくとも2.5倍も低減された生成速度を示した(図1B)。4−メトキシ−ピリジル位で重水素化されたラセミ体の、(R)及び(S)−類似体(実施例6、30及び5)の固有クリアランスは、それらの重水素化されていない相当物と比較して少なくとも4.7倍も低減された(第2表)。[1H]パントプラゾール類似体について観察されたM2生成速度における立体特異的な差異は、4−メトキシ−ピリジル位で重水素化された類似体についてはあまり顕著でなかった(図1B)。驚くべきことに、重水素化されていな化合物と比較したM2生成の低減は、分子のピリジル部におけるトリデューテリオメトキシ基の位置に依存していると思われる(図2)。分子の4−メトキシピリジル位における[2H]原子によって置換された[1H]原子の数が多くなると([1H]、[21]実施例25、[22]実施例24、及び[23]実施例6)、M2生成速度が低下した(図3)。
【0158】
第2表:
パントプラゾール及び本発明による化合物とのインキュベートにより得られた、プールされたヒト肝細胞における固有クリアランス(Clint
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は、プールされたヒトの凍結肝細胞における、(A)ラセミ体の[1H]パントプラゾール及びエナンチオマーと、(B)[23]パントプラゾール(実施例6)及び相応のエナンチオマー(実施例5及び30)からのM2生成の動力学を示すグラフである。
【図2】図2は、プールされたヒトの凍結肝細胞における、ラセミ体の[1H]パントプラゾールと、4−メトキシ−ピリジル位で重水素化された(実施例6)、又は3−メトキシ−ピリジル位で重水素化された(実施例22)[23]類似体からのM2生成速度の動力学を示すグラフである。
【図3】図3は、プールされたヒトの凍結肝細胞における、ラセミ体のパントプラゾール類似体([1H]パントプラゾール、実施例25、24及び6)からのM2生成速度の動力学に対する[2H]同位体効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
【化1】

[式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2が、メトキシであり、R3が、メトキシである]で示され、R1、R2、R3の水素原子又はR1、R2及びR3の任意の組み合わせの水素原子の少なくとも1個が、重水素原子によって交換されている化合物並びに塩、溶媒和物、有利には水和物並びにその塩の溶媒和物、有利には水和物。
【請求項2】
式2
【化2】

[式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2及びR3が、メトキシである]で示され、R1、R2、R3の水素原子又はR1、R2及びR3の任意の組合せの水素原子の少なくとも1個が、重水素原子によって交換されている化合物並びに塩、溶媒和物又はその塩の溶媒和物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R2、R3又はR2及びR3の少なくとも1個の水素原子が、重水素原子によって交換されている化合物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R1がデューテリオジフルオロメトキシである化合物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R2、R3又はR2及びR3がトリデューテリオメトキシである化合物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2が、メトキシであり、かつR3がトリデューテリオメトキシである化合物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R2、R3又はR2及びR3がジデューテリオメトキシである化合物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、R2が、メトキシであり、かつR3がジデューテリオメトキシである化合物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の化合物であって、式中、R1が、ジフルオロメトキシであり、かつR2及びR3が、トリデューテリオメトキシである化合物。
【請求項10】
(R/S)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、並びに製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又はその製剤学的に認容性の塩の溶媒和物。
【請求項11】
S(−)−5−ジフルオロメトキシ−2−[(3−メトキシ−4−トリデューテリオメトキシ−2−ピリジニル)メチルスルフィニル]−1H−ベンゾイミダゾール、並びに製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又はその製剤学的に認容性の塩の溶媒和物。
【請求項12】
請求項1又は3から11までのいずれか1項に記載の1種以上の化合物、製剤学的に認容性の塩又は溶媒和物と一緒に、1種以上の製剤学的に認容性の賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項13】
請求項1又は3から11までのいずれか1項に記載の1種以上の化合物、製剤学的に認容性の塩又は溶媒和物と一緒に、1種以上の製剤学的に認容性の賦形剤を含有し、単一用量が、約2〜60mgの一般式1の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項14】
請求項1又は3から11までのいずれか1項に記載の化合物を、胃腸疾患の治療及び/又は予防のために用いる使用。
【請求項15】
請求項2から9までのいずれか1項に記載の化合物を、請求項1又は3から9までのいずれか1項に定義される式1の化合物の製造のために用いる使用。
【請求項16】
式3
【化3】

[式中、Xが、ハロゲンであり、R2及びR3が、メトキシであり、R2、R3又はR2及びR3の水素原子の少なくとも1個が、重水素原子によって交換されている]で示される化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物であって、式中、Xが、ヨウ素、臭素、フッ素又は塩素である化合物。
【請求項18】
請求項16に記載の化合物であって、式中、Xが塩素である化合物。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項に記載の化合物であって、式中、R2、R3又はR2及びR3が、トリデューテリオメトキシである化合物。
【請求項20】
請求項16から18までのいずれか1項に記載の化合物であって、式中、R2、R3又はR2及びR3が、ジデューテリオメトキシである化合物。
【請求項21】
請求項16から20までのいずれか1項に記載の化合物を、請求項1から9までのいずれか1項に定義される式1又は式2の化合物の製造のために用いる使用。
【請求項22】
請求項1又は3から9までのいずれか1項に記載の式1の化合物の製造方法において、請求項2から9までのいずれか1項に定義される式2の化合物を酸化させる工程を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、請求項2から9までのいずれか1項に定義される式2の化合物を、請求項16から20までのいずれか1項に定義される式3の化合物を第四級化させ、そして引き続き、得られた式3の第四級化された化合物と、式4
【化4】

[式中、R1がジフルオロメトキシ又はデューテリオジフルオロメトキシである]の化合物とを反応させる方法によって製造する方法。
【請求項24】
請求項2から7までのいずれか1項に定義される式2の化合物の製造方法において、請求項16から20までのいずれか1項に定義される式3の化合物を第四級化させ、そして引き続き、得られた式3の第四級化された化合物と、式4
【化5】

[式中、R1がジフルオロメトキシ又はデューテリオジフルオロメトキシである]の化合物とを反応させる工程を含む方法。
【請求項25】
請求項1又は3から9までのいずれか1項に記載の化合物を、胃腸疾患の治療及び/又は予防用の医薬品の製造のために用いる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−502872(P2009−502872A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523355(P2008−523355)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064669
【国際公開番号】WO2007/012651
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】