説明

同時ドープされた1−1−2窒化物

本発明は、式(I):(Ca,Sr,Ba)1−x−yMeSiN:Eu、式中Me=Mn2+、Mg2+、Be2+、Ni2+、Co2+および/もしくはRu2+;x=0.005〜0.20およびy<1、ならびに/または式(II):(Ca,Sr,Ba)2−xSi1−zMa:Eu、式中Ma=Hf4+、Th4+および/またはZr4+;x=0.005〜0.20;およびz<1で表される化合物、ならびに前記化合物の製造および発光団としての使用のための方法、ならびに青色発光または近UV領域に位置するLEDの発光の変換のための変換発光団に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mn2+、Mg2+、Be2+、Ni2+、Co2+、Ru4+、Hf4+、Th4+で同時ドープされた1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素からなる化合物、その調製、ならびに暖白色LEDまたはいわゆるカラーオンデマンド(colour-on-demand)用途のための蛍光体およびLED変換蛍光体としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーオンデマンドの概念は、1種または2種以上の蛍光体を用いたpcLED(=蛍光体により変換されたLED、phosphor converted LED)によって特定のカラーポイント(color point)を有する光を達成することを意味するものと解釈される。例えば、例えば照明会社ロゴ、商標などのための特定のコーポレートデザインを作り出すために、この概念が用いられる。
【0003】
蛍光体変換LEDは、その革新可能性により従来の人工光源(白熱灯、放電ランプなど)の代用の増加をもたらす、重要な光技術を代表する。半導体技術がLEDについて事実上検討し尽くされる一方で、用いられている蛍光体は、改善のための余地を提供する。LED製造者は、(出力)LEDのための赤色蛍光体についての必要性を繰り返し強調している。LEDにおいて効率的かつ効果的に用いるための赤色蛍光体の必須の特性は、とりわけ、以下のものである:
【0004】
・610〜620nm(高CRIもしくは高CCTを有する一般的な照明)または630nm〜650nm(ディスプレイ用途)の波長範囲における発光帯。
・高い蛍光消光温度(TQ50>>150℃)。
・酸および湿気に対する高い化学安定性。
・励起されたLEDの発光帯のスペクトル領域における高い吸収、蛍光体から環境への高い発光抽出および高い変換効率(QE)から生じる高い輝度。
【0005】
LED製造者によって要求される、上述の条件のうちいくつか、しかし全てではない条件を満たす、多くの蛍光体材料系がある。しかし、すべての条件を満たすことのみによって、従来の電気光源のLEDによる代替が大いに促進し、照明のために世界中で必要とされる電気エネルギーの減少がもたらされる。
【0006】
赤色で蛍光を発し、原則的に青色(またはUV)LEDと組み合わせることができる、商業的に入手できる蛍光体材料は、特に以下のものである:
a)オルトケイ酸塩:
当該材料は、高い輝度および効率を有するが、最長の発光波長は、約610nmにおいてであり、温度消光は、TQ50=150°においてである。出力LEDが、そのような高い動作温度に到達し得るため、オルトケイ酸塩は、350mAより小さい電流強度で作動するLEDにはるかにより適している(出典:M. Zachau, Praesentation Phosphor Global Summit 2006, 15.03.2007)。
【0007】
b)硫化物、チオ没食子酸塩および硫セレン化物:
これらの蛍光体は、上述の波長範囲において発光することが可能である。硫黄含有材料の最大の欠点は、大気中の酸素および湿気に対するそれらの不安定性である。いずれもシリコーン結合材料を通って蛍光体に拡散することによってLEDに極めて容易に進入し、それと反応し、その間に、それは分解される。さらに、低度のドーピングのみがしばしば可能であり、高い励起密度にて飽和現象がもたらされる。
【0008】
c)窒化物:
共有結合窒化物は、それらが、活性化体イオンの基底状態および典型的にいくつかのないし多くの励起状態が局在化されている大きなバンドギャップを有するため、原則的に蛍光体のためのマトリックスとして用いられることができる。高い共有結合性のために、窒化物は高い電子雲拡大効果を有し、その結果、希土類元素活性化体、例えばEu2+、Ce3+の励起された4f5d配置の最も低い結晶場要素のエネルギーが、低くなる。この結果、長波長励起および窒化物蛍光体からの発光がもたらされる(Krevel et al., J. Alloys Compd. 1998,268,272を参照)。
【0009】
窒化ケイ素は、特に、いずれの系もSiX四面体(X=O、N)から構成されるため、オキソシリコン(oxosilicon)化合物との密接な関係を示す。しかし、より高度な縮合のために、窒化ケイ素、はオキソシリコン化合物より高い化学安定性を有する(Xie et al., Sci. Tech. Adv. Mater. 2007,8, 588を参照)。
【0010】
特に、窒化ケイ素は、活性化体イオン、例えばEu2+およびCe3+などでドープするのに適し、ここで励起状態にある少なくとも1個の電子は、結晶場(5sおよび5d)の作用によって遮蔽されない。そのような活性化体は、環境に高度に依存した分光学的特性(対称性、共有結合性、配位、場の強度、結合距離、格子部位の大きさ)を有する。
【0011】
窒素(N3−)の高度の形式電荷は、酸素(O2−)のより低度の形式電荷とは対照的に、上述の活性化体が、類似したSi−O材料における場合よりも、窒化ケイ素における5d軌道の大きい結晶場分裂を受け、5d軌道のエネルギー中心が、低いエネルギーにシフトすることをもたらす。活性化体の励起および発光帯は、したがって、スペクトル的な赤方偏移を示す。さらに、窒化ケイ素の、オキソシリコン化合物のものと比較して安定であり、かつ堅い格子は、Stokesシフトの低減をもたらし、その結果、温度消光が、より高い温度のみにて発生し、変換効率が向上する。
【0012】
公表されるべき最初の窒化ケイ素蛍光体系は、CaSiN.Eu2+であった(Lim et al. SPIE Vol. 3241, 1997, Photoluminescence of CaSiN2:Euを参照)。この蛍光体は、それが、それらの波長範囲において励起した際に約630nmにて発光するため、青色およびUV発光LEDにおけるコンバーターとして適する。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述の1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素を、これらの化合物が一層より高い光効率を達成するように改変することにある。
【0014】
驚くべきことに、蛍光体CaSiN:Eu2+の変換効率の経済的に重要なさらなる向上のための要求を、2価または4価のカチオンでの同時ドーピング(co-doping)を行う場合に満たすことができることが見出された。類似した蛍光体系BaSiN:EuおよびSrSiN:Euにおいて、同時ドーピングを行うことによって、発光が顕著に増大することが、驚くべきことに同様に見出された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、450nmの励起でのCa0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
【図2】図2は、発光スペクトルa〜jのより良好な区別のための、図1からの詳細な拡大を示す。
【図3】図3は、450nmの励起波長におけるSr0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
【図4】図4は、発光スペクトルのより良好な区別のための、図3からの詳細な拡大を示す。
【図5】図5は、450nmの励起波長におけるBa0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
【図6】図6は、発光スペクトルのより良好な区別のための、図5からの詳細な拡大を示す。
【図7】図7は、蛍光体含有コーティングを有する発光ダイオードの描図を示す。
【図8】図8は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たすGolden Dragon(登録商標)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=凹部中に反射体を有する変換蛍光体)。変換蛍光体は、バインダー中に分散しており、ここで混合物は、凹部を満たす。
【図9】図9は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体、5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中に最上部の球体として塗布されている。
【図10】図10は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで、蛍光体は、バインダー中に分散した薄層として塗布されている。
【図11】図11は、原則的にUS-B 6,700,322からすでに知られている、他の用途の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明は、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウムの系列からの同時ドーパントを付加的に含む、ユウロピウムドーピングを有する1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素型化合物に関する。
「1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素」(また「1−1−2窒化物」または「1−1−2アルカリ土類金属ニトリドシリケート(nitridosilicate)」として知られている)は、組成物MSi:Eu2+を意味するものと解釈され、ここでMは、アルカリ土類金属または複数のアルカリ土類金属の混合物を表す。
【0017】
好ましくは、式I
(Ca,Sr,Ba)1−x−yMeSiN:Eu(I)
式中
Me=Mn2+、Mg2+、Be2+、Ni2+、Co2+および/またはRu2+
x=0.005〜0.20ならびに
y<1である、
で表される化合物である。
【0018】
好ましくは、さらに、本発明において、式II
(Ca,Sr,Ba)1−xSi1−zMa:Eu(II)
式中
Ma=Hf4+、Th4+および/またはZr4+
x=0.005〜0.20ならびに
z<1である、
で表される化合物である。
【0019】
y値(同時ドーパントMeまたはMaの原子濃度を意味する)が0.0005〜0.2であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.02である。
さらに、x=0.05〜0.15である場合が、好ましい。
【0020】
本発明の式I〜IIで表される化合物または蛍光体の、同一の組成であるが同時ドーパントMn、Mg、Be、Ni、Coおよび/またはRuを有しないものと比較しての大きな輝度を、当業者に知られている理論によって、活性化体イオンの励起状態の寿命に対して影響を及ぼすこれらのイオンによって説明することができる:そのような蛍光体の励起された電子は、比較的短い時間の後に蛍光の発光を伴って基底状態に戻る。即ちこれらの電子は、より多くの励起および緩和プロセスを同一の時間間隔中に行うことができる(S. Shionoya, W. M. Yen, Phosphor Handbook, CRC Press, New York, 1999, ISBN 0-8493-7560-6を参照)。
【0021】
本発明の化合物の粒径は、50nm〜30μm、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは2〜15μmである。
【0022】
さらに、1価のイオン、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばLi、Na、K、Ca、Sr、Baおよびハロゲン化物、例えばFまたはClを、さらに本発明の化合物の結晶格子中に組み込んでもよい。これらの1価のイオンは、好ましくは蛍光体の調製中にフラックス剤として用いられ、結晶品質を向上させ、粒径および粒子形態を大まかに設定する役割を果たし、したがって蛍光体の効率を向上させる高い可能性を有する。この手順は、当業者に知られている(例えば、H.S. Kang et al. Mater. Science and Engineering B 121 (2005) 81-85を参照)。
【0023】
本発明はさらに、窒化ケイ素、ユウロピウムおよびカルシウムおよび/またはストロンチウムおよび/またはバリウム含有出発物質を、少なくとも1種のマンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有同時ドーパントと固体拡散法によって混合し、その後熱的に後処理することによって得られ、ここでハロゲン化アルカリもしくはアルカリ土類金属またはまたホウ酸塩化合物の系列からのフラックス剤が任意に存在してもよい化合物に関する。
【0024】
本発明はさらに、ユウロピウムドーピングを有する1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素型化合物の調製のための方法であって、以下のプロセス段階:
a)窒化ケイ素、ユウロピウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発物質を混合することによって、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料が同時ドープされ、Euがドープされた1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素化合物を、調製すること、
b)Mn、Mg、Be、Ni、Co、Ru、Hf、Thおよび/またはZrで同時ドープされた化合物を熱的に後処理すること
を有する、前記方法に関する。
【0025】
化合物の調製のための出発物質は、上述のように、窒化ケイ素(Si)、水素化カルシウムおよびフッ化ユウロピウム、ならびに少なくとも1種のMn、Mg、Be、Ni、Co、Ru、Hf、Thおよび/またはZr含有同時ドーパントからなる。好ましい窒化物、水素化物およびフッ化物に加えて、好適な出発物質はまた、他の無機および/または有機物質、例えばシアナミド、ジシアナミド、シアン化物、オキサレート、マロネート、フマレート、カーボネート、シトレート、アスコルベートおよびアセチルアセトネートなどである。
【0026】
上述の熱的後処理(プロセス段階bを参照)には、例えばフォーミングガス(例えば90/10)、純粋な水素を有する、および/または上述の雰囲気を有する、もしくは有しないアンモニア雰囲気中の還元条件下で、多数時間を要する。か焼プロセス中の温度は、1000℃〜1800℃、好ましくは1200℃〜1650℃である。
【0027】
上述のプロセスを用いることにより、本発明の化合物または蛍光体の任意の所望の外形、例えば球状粒子、薄片および構造化された材料およびセラミックスなどを作製することが可能である。これらの形状は、本発明において用語「成形体」の下で要約される。成形体は、好ましくは「蛍光体素子」である。
【0028】
したがって、本発明はさらに、本発明の化合物を含み、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子、ならびに/あるいは本発明の化合物を含み、かつユウロピウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/もしくはジルコニウムの系列からのドーパントを有する、または有しない粒子を担持する粗面を有する、成形体に関する。
【0029】
他の好ましい態様において、成形体は、構造化(例えばピラミッド形の)表面をLEDチップの反対の側に有する(WO2008/058619, Merckを参照、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる)。これによって、可能な限り多くの光が、蛍光体から分離する(decoupled)ことを可能とする。
【0030】
成形体上の構造化された表面は、すでに構造化されている好適な材料でその後コーティングすることによって、または以降の段階において、(フォト)リソグラフィープロセス、エッチングプロセスによって、またはエネルギービームもしくは材料噴流を用いた書き込みプロセスまたは機械的力の作用によって作成される。
【0031】
他の好ましい態様において、本発明の成形体は、LEDチップの反対の側に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの材料の組み合わせを含むナノ粒子、ならびに/あるいはMn、Mg、Be、Ni、Coおよび/またはRuの系列からのドーパントを有するかまたは有しない式IおよびIIで表される蛍光体組成を有する粒子を担持する粗面を有する。ここでの粗面は、数100nmまでの粗さを有する。被覆された表面は、全反射を低減するかまたは防止することができ、光が本発明の蛍光体からより良好に分離することができるという利点を有する(WO 2008/058619 (Merck)を参照。それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。)
【0032】
本発明の成形体が、チップから外方に向く表面上に一次放射線および/または蛍光体素子によって発せられる放射線の分離を単純化する整合された屈折率の層を有するのが、さらに好ましい。
【0033】
さらに好ましい態様において、成形体は、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物からなる、ならびに/あるいは活性化体ユウロピウムを含まない式IまたはIIで表される化合物からなる連続的表面コーティングを有する。この表面コーティングは、コーティング材料の屈折率の好適な漸変よって、屈折率を環境と整合させるのが可能になるという利点を有する。この場合において、蛍光体の表面における光の散乱が低減され、より大きい比率の光が、蛍光体中に浸透し、そこで吸収され、変換されることができる。さらに、整合された屈折率を有する表面コーティングによって、内部の全反射が低減されるため、より多くの光が蛍光体から分離することが可能になる。
【0034】
さらに、蛍光体をカプセル封入しなければならない場合には、連続層は有利である。これは、蛍光体またはその一部の、水または他の材料が周辺の環境において拡散することについての感度に対抗するために必要であり得る。閉じた覆いを用いて封入する他の理由は、チップにおいて生じる熱からの実際の蛍光体の熱的分断である。この熱の結果、蛍光体の蛍光収率が低減し、また蛍光の色に影響し得る。最後に、このタイプのコーティングは、蛍光体において生じる格子振動が環境中に伝播することを防止することによって蛍光体の効率が上昇することを可能にする。
【0035】
さらに、成形体が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物から、ならびに/あるいはEu、Mn、Mg、Be、Ni、Co、Ru、Hf、Thおよび/もしくはZrの系列からのドーパントを有するかまたは有しない式IまたはIIで表される化合物からなる多孔性表面コーティングを有するのが、好ましい。これらの多孔性コーティングは、単一の層の屈折率をさらに低減させる可能性を提供する。このタイプの多孔性コーティングを、WO 03/027015に記載されている3種の慣用の方法によって製造することができ、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる:ガラス(例えばソーダ石灰ガラス(US 4019884を参照))のエッチング、多孔質層の適用および多孔質層とエッチングプロセスとの組み合わせ。
【0036】
他の好ましい態様において、成形体は、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、環境への化学的または物理的結合を促進する官能基を担持する表面を有する。これらの官能基は、例えばエポキシドおよび/またはシリコーンをベースとする結合剤の構成要素への結合を形成することが可能であるオキソ基を介して結合した、エステルまたは他の誘導体であることができる。このタイプの表面は、蛍光体の結合剤中への均一な取り込みが促進されるという利点を有する。さらに、蛍光体/結合剤系の流動学的特性およびまたポットライフを、したがってある程度調整することができる。混合処理は、このように単純化される。この文脈に関して、環境への物理的結合は、電荷ゆらぎまたは部分電荷を介した系間の静電相互作用を意味するものと解釈される。
【0037】
LEDチップに適用される本発明の蛍光体層が、好ましくはシリコーンおよび均一な蛍光体粒子の混合物からなり、かつ、シリコーンが表面張力を有するため、この蛍光体層は、微視的レベルにて均一ではなく、または層の厚さは、完全に一定ではない。
【0038】
他の好ましい態様として、薄片形態の蛍光体を、対応する金属および/または希土類塩から慣用のプロセスによって調製する。調製プロセスは、EP 763573およびWO2008/058620に詳細に記載されており、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。これらの薄片形態の蛍光体は、例えば極めて大きいアスペクト比、原子的に平滑な表面および調整可能な厚さを有する雲母薄片、SiO薄片、Al薄片、ZrO薄片、ガラス薄片またはTiO薄片の天然の、または合成的に生成した、高度に安定な担体または支持体を、蛍光体層で、水分散体または懸濁液中で沈殿反応によって被覆することによって、調製することができる。
【0039】
雲母、ZrO、SiO、Al、ガラスもしくはTiOまたはそれらの混合物に加えて、薄片はまた、蛍光体材料自体からなるか、または材料から構築され得る。薄片自体が単に、蛍光体コーティングのための担体としての役割を果たす場合には、後者は、LEDからの一次放射線に対して透明であるか、または一次放射線を吸収し、このエネルギーを蛍光体層に伝達する材料からならなければならない。薄片形態の蛍光体を、樹脂(例えばシリコーンまたはエポキシ樹脂)中に分散させ、この分散体を、LEDチップに適用する。
【0040】
薄片形態の蛍光体を、工業的大規模に、50nm〜約20μm、好ましくは150nm〜5μmの厚さにおいて調製することができる。ここでの直径は、50nm〜20μmである。
これらは一般的に、1:1〜400:1、特に3:1〜100:1のアスペクト比(直径対粒子の厚さの比)を有する。
【0041】
薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。薄片はまた、特にそれらが特に小さい寸法を有する場合には、変換層内の散乱の中心として適する。
LEDチップに面する本発明の薄片形態の蛍光体の表面に、LEDチップによって発せられた一次放射線に関する反射低減作用を有するコーティングを設けることができる。この結果、一次放射線の後方散乱の低減がもたらされ、本発明の蛍光体素子中への後者の結合が促進される。
【0042】
この目的のために適するのは、例えば、以下の厚さd:d=[LEDチップからの一次放射線の波長/(4*蛍光体セラミックスの屈折率)]を有しなければならない、屈折率を整合させたコーティングである。例えばGerthsen, Physik [Physics], Springer Verlag, 第18版、1995を参照。このコーティングはまた、フォトニック結晶からなっていてもよく、それはまた、特定の機能を達成するために薄片形態の蛍光体の表面を構造化することを包含する。
【0043】
セラミックス素子の形態の本発明の成形体の製造は、WO 2008/017353 (Merck)に記載されているプロセスと同様にして行われ、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。本明細書の蛍光体は、対応する出発物質およびドーパントを混合し、その後当該混合物をアイソスタティックに圧縮し、均一であり、薄く、非孔質の薄片の形態での当該混合物をチップの表面に直接、またはチップからある距離にて(遠隔蛍光体概念)適用することによって調製される。それぞれの配置は、とりわけLEDデバイスの構造に依存し、当業者は、有利な配置を選択することが可能である。
【0044】
蛍光体からの励起および蛍光体の発光の位置依存の変化は、したがって発生せず、それを用いて提供されたLEDが、恒常的な色の均一な光円錐を発して、高い発光力を有することをもたらす。セラミックス蛍光体素子を、工業的大規模で、例えば数100nm〜約500μmの厚さにおける薄片として製造することができる。薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。チップに直接適用する場合において、薄片の寸法を、好適なチップ配置(例えばフリップチップ配置)の場合においてチップ表面の約10%〜30%の特定の余分な寸法を有するチップの寸法(約100μm*100μm〜数mm)に従って、または相応に選択しなければならない。蛍光体薄片を完成したLEDの最上部上に設置する場合には、発せられた光円錐のすべては、薄片に達する。
【0045】
セラミックス蛍光体要素の側面を、軽金属または貴金属、好ましくはアルミニウムまたは銀で金属化することができる。金属化は、光が蛍光体要素から横方向に出ないという効果を有する。横方向に出る光は、LEDから分離する光束を低減し得る。セラミックス蛍光体要素の金属化を、棒または薄片を得るアイソスタティックに圧縮した後のプロセス段階において行ない、ここで、所望により、棒または薄片を、金属化の前に必要な大きさに切断することができる。このために、側面を、例えば硝酸銀およびグルコースの溶液で湿潤させ、その後アンモニア雰囲気に高温にて曝露する。この操作の間、銀コーティングが、例えば側面上で形成する。
【0046】
あるいはまた、無電解金属化処理が好適である。例えば、Hollemann-Wiberg, Lehrbuch der anorganischen Chemie [Textbook of Inorganic Chemistry], Walter de Gruyter VerlagまたはUllmanns Enzyklopaedie der chemischen Technologie [Ullmann’s Encyclopaedia of Chemical Technology]を参照。
セラミックス蛍光体要素を、必要に応じて、LEDチップの支持体に、水ガラス溶液を用いて固定することができる。
【0047】
他の態様において、セラミックス蛍光体要素は、LEDチップの反対の側上に構造化された(例えばピラミッド形の)表面を有する。これによって、可能な限り多くの光が蛍光体要素から分離するのが可能になる。蛍光体要素上の構造化された表面は、構造化されたプレスプレートを有する型を用いてアイソスタティック圧縮を行い、したがって構造を表面中にエンボス加工することによって、作成される。構造化された表面は、目的が最も薄い可能な蛍光体要素または薄片を製造することにある場合に所望される。圧縮条件は、当業者に知られている(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], 第4章、Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照)。用いる圧縮温度が圧縮されるべき物質の融点の2/3〜5/6であるのが、重要である。
【0048】
本発明はさらに、成形体、好ましくは蛍光体素子の製造のための方法であって、以下のプロセス段階:
a)窒化ケイ素、ユウロピウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発物質を混合することによって、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料が同時ドープされ、ユウロピウムがドープされた1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素化合物を調製すること、
【0049】
b)マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウムを同時ドープした化合物を熱的に後処理し、粗面を有する成形体を形成すること、
c)粗面を、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子で、あるいは本発明の化合物を含むナノ粒子で被覆すること
を有する、前記方法に関する。
【0050】
さらに、本発明の蛍光体は、約410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nmに及ぶ広範囲にわたり励起することができる。したがって、これらの蛍光体は、UVまたは青色発光一次光源、例えばLED、または慣用の放電ランプ(例えばHgをベースとする)による励起に適するのみならず、451nmにおける青色In3+線を利用するもののような光源にも適する。
【0051】
本発明はさらに、少なくとも1つの一次光源を有する照明単位であって、発光極大が、410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nm、特に好ましくは440〜480nmの範囲内にあり、ここで一次放射線が、本発明の化合物または蛍光体によって、より長い波長の放射線に部分的に、または完全に変換される、前記照明単位に関する。この照明単位は、好ましくは白色光を発するか、または特定のカラーポイントを有する光を発する(カラーオンデマンド原理)。本発明の照明単位の好ましい態様を、図7〜18に図示する。
【0052】
本発明の照明単位の好ましい態様において、光源は、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦kであり、i+j+k=1である、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムである。
このタイプの光源の可能な形態は、当業者に知られている。それらは、種々の構造を有する発光LEDチップであり得る。
【0053】
本発明の照明単位の他の好ましい態様において、光源は、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeもしくはSiCをベースとする発光配置、または有機発光層(OLED)をベースとする配置である。
本発明の照明単位の他の好ましい態様において、光源は、エレクトロルミネセンスおよび/またはフォトルミネセンスを示す源である。光源はさらにまた、プラズマ源または放電源であり得る。
【0054】
本発明の蛍光体は、樹脂(例えばエポキシもしくはシリコーン樹脂)中に分散するか、または好適な大きさの比率の場合には、一次光源上に直接配置されるか、または用途に依存して、そこから離れて配置されることができる(後者の配置はまた、「遠隔蛍光体技術」を含む)。遠隔蛍光体技術の利点は、当業者に知られており、例えば以下の刊行物中で公開されている:Japanese Journ. of Appl. Phys. Vol. 44, No. 21 (2005). L649-L651。
【0055】
他の態様において、蛍光体と一次光源との間の照明単位の光結合を、光伝導配置によって達成するのが好ましい。これによって、一次光源を中央の位置に設置し、蛍光体に光伝導性デバイス、例えば光伝導性繊維などによって光学的に結合させることが可能になる。このようにして、光スクリーンを形成するために配置され得る、照明の要請に適合し、単に1種または種々の蛍光体からなるランプ、および一次光源に結合する光伝導体を、達成することができる。このようにして、強力な一次光源を、電気的設置に好ましい位置に位置させ、光伝導体に結合した蛍光体を含むランプを、さらなる電気的配線を伴わずにしかし代わりに単に光伝導体を取り付けることによって、任意の所望の位置に設置することが、可能である。
【0056】
本発明はさらに、本発明の化合物の、発光ダイオードからの青色または近紫外線発光の部分的な、または完全な変換のための変換蛍光体としての使用に関する。
本発明の化合物を、さらに好ましくは、青色または近紫外線発光を可視白色放射線に変換するために用いる。本発明の化合物を、さらに好ましくは、一次放射線を特定のカラーポイントに「カラーオンデマンド」概念に従って変換するために用いる。
【0057】
本発明の式IおよびIIで表される化合物を、個別に、または当業者に精通されている以下の蛍光体との混合物として用いることができる:
【数1】

【0058】
【数2】

【0059】
【数3】

【0060】
【数4】

【0061】
【数5】

【0062】
【数6】

【0063】
【数7】

【0064】
【数8】

【0065】
【数9】

【0066】
【数10】

【0067】
【数11】

【0068】
以下の例は、本発明を例示することを意図する。しかし、それらを、いかなる方法においても限定的であると見なすべきではない。組成物において用いることができるすべての化合物または構成成分は、知られており、商業的に入手できるか、または既知の方法によって合成することができる。例において示す温度を、常に℃で示す。さらに、記載において、およびまた例において、組成物中の構成成分の添加量は常に、合計100%まで加えられることは、言うまでもない。示した百分率データは、常に示した関連性において考慮されるべきである。しかし、それらは通常、常に、示した部分的量または合計量の重量に関する。
【0069】

例1:CaSiN:Eu(2at%)の調製
・対照の蛍光体を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で調製する。
・0.98molのCaH(41.2364g)、0.33molのSi(46.2934g)および0.02molのEuF(4.179g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0070】
例1a:0.005at%のMgで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのMgF(0.0031g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0071】
例1b:0.005at%のBeで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのBeF(0.0023g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0072】
例1c:0.005at%のMnで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのMnCl(0.0062g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0073】
例1d:0.005at%のNiで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのNiF(0.0047g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0074】
例1e:0.005at%のCoで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのCoF(0.0047g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0075】
例1f:0.005at%のRuで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.979951molのCaH(41.2341g)、0.33molのSi(46.2934g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.000049molのRuF(0.0059g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0076】
例1g:0.005at%のHfで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.98molのCaH(41.2364g)、0.32995molのSi(46.2863g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.00005molのHfF(0.0127g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0077】
例1h:0.005at%のThで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.98molのCaH(41.2364g)、0.32995molのSi(46.2863g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.00005molのThF(0.0154g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0078】
例1i:0.005at%のZrで同時ドープされたCaSiN:Eu(2at%)の調製
・調製を、乾燥N雰囲気(相対大気湿度<1%)下、グローブボックス中で行う。
・0.98molのCaH(41.2364g)、0.32995molのSi(46.2863g)、0.02molのEuF(4.179g)および0.00005molのZrF(0.0084g)を、グローブボックス中で秤量し、めのう乳鉢中で均質化する。
・混合物をMoるつぼ中に導入し、適当な輸送容器中へ移す。
・当該るつぼを、アルゴンの連続流の下で管状炉中へ移し、1500℃にて8時間、フォーミングガス90/10およびNHの下で加熱する。
【0079】
図面の説明
本発明を、多数の作業例を参照して以下にさらに詳細に説明する。図面は、以下のことを示す:
図1は、450nmの励起でのCa0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
a)純粋なCa0.98SiN:Eu0.02
b)〜j)同時ドーパントを有するCa0.98SiN:Eu0.02(各々0.005at%):
b=Mg、c=Be、d=Mn、e=Ni、f=Co、g=Zr、h=Ru、i=Hf、j=Th
【0080】
図2は、発光スペクトルa〜jのより良好な区別のための、図1からの詳細な拡大を示す。
図3は、450nmの励起波長におけるSr0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
【0081】
図4は、発光スペクトルのより良好な区別のための、図3からの詳細な拡大を示す。a)は、純粋なSr0.98SiN:Eu0.02を示す、b)は、0.005at%のMgまたはBeで同時ドープされたSr0.98SiN:Eu0.02を示す;c)は、0.005at%のNiまたはCoで同時ドープされたSr0.98SiN:Eu0.02を示す;d)0.005at%のRuまたはMnまたはZrで同時ドープされたSr0.98SiN:Eu0.02を示す;e)は、0.005at%のHfまたはThで同時ドープされたSr0.98SiN:Eu0.02を示す。
【0082】
図5は、450nmの励起波長におけるBa0.98SiN:Eu0.02および同時ドープされた蛍光体の発光スペクトルを示す。
【0083】
図6は、発光スペクトルのより良好な区別のための、図5からの詳細な拡大を示す。a)は、純粋なBa0.98SiN:Eu0.02を示す;b)は、0.005at%のMgで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;c)は、0.005at%のBeで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;d)は、0.005at%のMnで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;e)は、0.005at%のNiまたはCoで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;f)は、0.005at%のZrで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;g)は、0.005at%のRuまたはHfで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す;h)は、0.005at%のZrまたはThで同時ドープされたBa0.98SiN:Eu0.02を示す。
【0084】
図7は、蛍光体含有コーティングを有する発光ダイオードの描図を示す。当該素子は、チップ状LED1を放射線源として含む。LEDは、調整フレーム2によって保持されるカップ形状の反射体中に搭載されている。チップ1は、平坦なケーブル7を介して第1の接点6に、および直接第2の電気的接点6’に接続されている。本発明の変換蛍光体を含むコーティングは、反射体カップの内部の湾曲に塗布されている。蛍光体は、互いに別個に、または混合物として用いられる。(部(part)の番号のリスト:1 発光ダイオード、2 反射体、3 樹脂、4 変換蛍光体、5 拡散器、6 電極、7 平坦なケーブル)
【0085】
図8は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たすGolden Dragon(登録商標)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=凹部中に反射体を有する変換蛍光体)。変換蛍光体は、バインダー中に分散しており、ここで混合物は、凹部を満たす。
【0086】
図9は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体、5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中に最上部の球体として塗布されている。蛍光体/バインダー層のこの形態は、二次的光学素子としての役割を果たすことができ、例えば光伝播に影響し得る。
【0087】
図10は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで、蛍光体は、バインダー中に分散した薄層として塗布されている。二次的光学素子、例えばレンズとしての役割を果たす他の部品を、この層に容易に適用することができる。
【0088】
図11は、原則的にUS-B 6,700,322からすでに知られている、他の用途の例を示す。本発明の蛍光体は、ここでOLEDと共に用いられる。光源は、存在する有機フィルム30および透明な支持体32からなる有機発光ダイオード31である。フィルム30は、例えばPVK:PBD:クマリン(PVK、ポリ(n−ビニルカルバゾール)の省略形;PBD、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールの省略形)によって生み出され、特に青色の一次光を発する。発光は、本発明の蛍光体の層33から形成する被覆層によって、黄色の二次的に発せられた光に部分的に変換され、したがって白色発光が、一次的に、および二次的に発せられた光の色混合によって全体的に達成される。
【0089】
OLEDは本質的に、自体公知の材料、例えばアノードとしてのITO(酸化インジウムスズの省略形)およびカソードとしての高度に反応性の金属、例えばBaまたはCaからなる2つの電極間の、発光ポリマーまたはいわゆる小分子の少なくとも1つの層からなる。正孔輸送層としての、または小分子の領域においてはまた電子輸送層としての役割を果たす複数の層が、またしばしば電極間で用いられる。用いる発光ポリマーは、例えばポリフルオレンまたはポリスピロ材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mn、Mg、Be、Ni、Co、Ru、Hf、Thおよび/またはZrの系列からの同時ドーパントを付加的に含む、ユウロピウムドーピングを有する1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素型化合物。
【請求項2】
式I
(Ca,Sr,Ba)1−x−yMeSiN:Eu(I)
式中
Me=Mn2+、Mg2+、Be2+、Ni2+、Co2+および/またはRu2+
x=0.005〜0.20ならびに
y<1である、
を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式II
(Ca,Sr,Ba)1−xSi1−zMa:Eu(II)
式中
Ma=Hf4+、Th4+および/またはZr4+
x=0.005〜0.20ならびに
z<1である、
を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
y=0.0005〜0.2かつ/またはz=0.0005〜0.2であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
x=0.05〜0.15かつ/またはy=0.001〜0.02かつ/またはz=0.001〜0.02であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
窒化ケイ素、ユウロピウムおよびカルシウムおよび/またはストロンチウムおよび/またはバリウム含有出発物質を、少なくとも1種のマンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有同時ドーパントと、固体拡散法によって混合し、その後熱的に後処理することによって得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の調製のための方法であって、以下のプロセス段階:
a)窒化ケイ素、ユウロピウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発物質を混合することによって、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料が同時ドープされ、ユウロピウムがドープされた1−1−2アルカリ土類金属窒化ケイ素化合物を調製すること、
b)マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウムが同時ドープされた化合物を熱的に後処理すること
を有する、前記方法。
【請求項8】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子、ならびに/あるいはユウロピウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/もしくはジルコニウムの系列からのドーパントを有する、または有しない請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む粒子を担持する粗面を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む成形体。
【請求項9】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物、ならびに/あるいは活性化体ユウロピウムを有しない請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物からなる連続的表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む成形体。
【請求項10】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物、ならびに/あるいはユウロピウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/もしくはジルコニウムの系列からのドーパントを有する、または有しない請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物からなる多孔性の表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む成形体。
【請求項11】
表面が、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、環境への化学的または物理的結合を促進する官能基を担持することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む成形体。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の成形体の製造のための方法であって、以下のプロセス段階:
a)窒化ケイ素、ユウロピウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発物質を混合することによって、マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウム含有材料が同時ドープされ、1−1−2ユウロピウムがドープされたアルカリ土類金属窒化ケイ素化合物を、調製すること、
b)マンガン、マグネシウム、ベリリウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ハフニウム、トリウムおよび/またはジルコニウムが同時ドープされた化合物を熱的に後処理し、粗面を有する成形体を形成すること、
c)粗面を、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物を含むナノ粒子で、あるいはドーパントを有する、または有しない請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含むナノ粒子で被覆すること
を有する、前記方法。
【請求項13】
発光極大が410nm〜530nm、好ましくは430nm〜500nmの範囲内にある少なくとも1つの一次光源を有し、ここでこの放射線が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物および/または蛍光体素子によって、より長い波長の放射線に部分的にまたは完全に変換される、照明単位。
【請求項14】
光源が、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦kであり、i+j+k=1である、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムであることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項15】
光源が、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeまたはSiCをベースとする発光性化合物であることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項16】
光源が有機発光層をベースとする材料であることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項17】
光源がプラズマまたは放電ランプであることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項18】
蛍光体が一次光源上に直接、および/またはそこから離れて配置されていることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか一項に記載の照明単位。
【請求項19】
蛍光体と一次光源との間の光結合が、光伝導配置によって達成されることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一項に記載の照明単位。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物の、発光ダイオードからの青色または近紫外線発光を部分的に、または完全に変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物の、一次放射線を特定のカラーポイントに、カラーオンデマンド概念に従って変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項22】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の成形体の、蛍光体素子としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−509238(P2012−509238A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536754(P2011−536754)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007826
【国際公開番号】WO2010/057572
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】