説明

同時多重アセルベーション方法

【課題】2以上の同時多重アセルベーション機構を使用する構造化ポリマーマトリクスの調製方法
【解決手段】1つまたは複数の食品ポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液を調製する工程であって、1つまたは複数の食品ポリマーは少なくとも2つのアセルベーション機構を受けることができ、および条件は、少なくとも2つのアセルベーション機構が活性化工程より前に活性化されないようなものである工程;1つまたは複数の食品ポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液を処理して、少なくとも2つのアセルベーション機構を同時に活性化させる工程;および少なくとも2つの活性化されたアセルベーション機構を、構造化ポリマーマトリクスが得られるまで進行させる工程を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上のアセルベーション機構を同時に使用する構造化ポリマーマトリクスの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセルベーション(acervation)は、可溶性ポリマーを「積み重ね」て、溶液中で個々のポリマー分子よりもサイズが著しく大きい不溶性のマトリクス、構造、またはクラスターを形成する機構または反応である。アセルベーション機構は、とりわけ、重合、架橋、複合体形成(complexing)、沈殿(例えば、等電性、イオン性、溶媒など)、凝集、変性(例えば、pH、熱、酵素、化学薬品などによる)、およびコアセルベーションを含む。しかしながら、慣用のアセルベーション方法を用いると、それによって形成される固体ポリマーマトリクスの特性は、使用される特定のポリマーおよび/または特定のアセルベーション機構に限定される。
【0003】
例えば、プロテアーゼレンニンを用いるカゼイン、乳タンパク質の酵素処理は、非常に柔軟な構造の凝集体を生成するが、一方、カルシウム塩を用いるカゼインの処理は、密度の高いカゼインカルシウム沈殿物を形成する。カゼインのpHをその等電点に近いpHに調整することは、酸カゼインとして商業的に知られる不溶性の砂状の沈殿物をもたらす。したがって、各々の場合にカゼインを処理するために使用される特定のアセルベーション機構は、異なる構造特性およびテクスチャを有するアセルベート(すなわち、凝集体または沈殿物)をもたらす。
【0004】
半固体ポリマーマトリクス(乳からのチーズカードなど)の形成は、一般に、単一のアセルベーション機構を使用して成し遂げられる。チーズカードは、一般的に、乳製品の液体から、該液体を凝集剤または凝固剤で処理する工程を含む方法によって調製される。凝集剤は、カード化酵素(curding enzyme)(例えば、レンネット)または食用酸であってもよく、インサイチュで食用酸を産生する適当な細菌培養物を含む。結果として得られる凝塊またはカードは、一般的に、カード化プロセスによって変化させられたカゼインを包含する。一般に関与するアセルベーション機構は、一般的に、k−カゼインの酵素加水分解か、または等電沈殿のどちらかである。必要とされる酵素の量を低減させるために酵素添加の前に乳のpHを低下させることは一般に行われることであるが、最終的なカードのpHは等電点よりも著しく高いので、酵素加水分解が、関与する唯一のアセルベーション機構である。さらに、酵素加水分解とpH調整とは、同時に行われない。
【0005】
他の単一のアセルベーション機構は、当技術分野で一般に使用されている。具体的には、2つのポリマーのコアセルベーションは、カプセル化応用分野で一般に使用されている。第2の機構に関与する方法は、一般的に、第1の機構によって形成された構造/アセルベートを変更するため、または変更しようとする試みのために使用される。そのような場合において、機構は、順次行われる(非特許文献1〜5参照)。個々のアセルベーション機構または順次行われるアセルベーション機構の使用は、特定のポリマー、使用される特定のアセルベーション機構、および/または行われる特定のアセルベーション機構の順序に制限される特性を有するポリマーマトリクスをもたらす。
【0006】
コアセルベーション、相分離、および架橋のような特定のアセルベーション機構に関する様々な物理的条件(例えば、温度、剪断、pH等)が検討されてきている。例えば、ホエータンパク質の溶液を様々な温度、pH、および塩濃度で加熱することによって、ホエータンパク質の架橋または熱ゲル化が検討されてきた。(非特許文献6および7参照。)しかしながら、これらの検討において使用された物理的条件(例えば、pH、塩、および温度)は、架橋反応の反応速度論に影響を与えるが、しかし、同時に起こる第2のアセルベーション機構を引き起こすのには不十分である。例えば、pHの変動は、実質的な重合を引き起こすのに十分なほど高くない。さらに、pH調整は、順次適用されるか、または温度処理前に完了される。
【0007】
例えばリコッタチーズの製造において、乳およびチーズホエーの混合物は、典型的には、熱凝固工程前に、乳酸発酵または食品酸(例えば、酢)の直接添加によって約6.1のpHまで酸性化される。リコッタプロセスにおいて使用される主要なアセルベーション機構は、乳およびチーズホエー由来のアルブミンの熱架橋である。酸性度は主に風味目的であり、カゼインとは異なり、ホエー中のアルブミンはその等電pHにおいてでさえ凝固しない。結果として得られるリコッタカードは、典型的には、小さな粒状であり、本来、非凝集性である。
【0008】
Bakkerらに対する特許文献1は、脂肪代替材料として有用である少なくとも2つのポリマーを含むコアセルベートの形成を対象とする(特許文献1参照)。Bakkerらは、ポリマーの溶液を加熱し、続いて混合物のpHを等電点に近い値にまで調整する工程による、少なくとも2つのポリマーの複合コアセルベーションを記載する。混合物は、次いで冷却され、およびコアセルベートは単離される。潜在的に、1つより多くの関与するアセルベーション機構が存在し得るが、しかし、仮にそうであるとしても、順次起こる可能性がある。
【0009】
ポリマーの物理化学的特性および使用されるアセルベーション機構ならびに関与するポリマー−ポリマー相互作用に起因して、単一のアセルベーション機構または順次に行われる2以上のアセルベーション機構を使用して達成できていない、新規または改良された構造化ポリマーマトリクスを生成することは、当技術分野において飛躍的な進歩であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,952,007号公報
【特許文献2】米国特許第4,885,183号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Littozら、Food Hydrocolloids, 22(7): 1203-1211 (2008)
【非特許文献2】Yinら、J. Macromolecules, 36(23): 8773-8779 (2003)
【非特許文献3】Linら、J. Parmaceutical Research, 11(11): 1588-1592 (1994)
【非特許文献4】Linら、J. Biomaterials, 18(7): 559-65 (1997)
【非特許文献5】Bachtsiら、J. Applied Polymer Science, 60(1): 9-20 (1996)
【非特許文献6】Dunkeley & Hayes, J. Dairy Science & Technology, 15:191 (1980)
【非特許文献7】Xiong, J. Agric. Food Chemistry, 40: 380-384 (1992)
【非特許文献8】Laemmi, Nature, 227: 680-685 (1970)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書中に記載されるプロセスは、構造化ポリマーマトリクスを調製するための、効率的かつ経済的な方法を提供する。本明細書中に記載されるプロセスは、慣用的なアセルベーション方法の面倒かつ不便な順次処理を回避する。加えて、本明細書中に記載されるプロセスは、好ましくは食品ポリマーであるがそれに限定されない様々なポリマーまたはポリマーの組み合わせから構造的複合ポリマーマトリクスを形成するための適応性のあるプロセスを提供する。より好ましくは、ポリマーの少なくとも1つは食品タンパク質である。2以上のアセルベーション機構の同時適用は、予想外にも、アセルベーション機構が単独または順次に行われた場合に達成できない改善されたテクスチャおよび/またはプロセス効率を有する構造化ポリマーマトリクスを与える。有利にも、本明細書中に記載されるプロセスは、関与する特定のポリマーの独特の物理化学的特性、使用される特定のアセルベーション機構、関与する特定のポリマー−ポリマー相互作用および他のプロセスの制限に起因して過去に達成することのできなかった半固体ポリマーマトリクスのデザインおよび生産に大いなる適応性を提供する。本明細書中に記載されるプロセスは、同時に作用して混合された/絡み合った固体ポリマーマトリクスを形成する2以上のアセルベーション機構に関与し、該固体ポリマーマトリクスは、選択されるアセルベーション機構およびポリマーの組み合わせに依存して、柔軟で滑らかであるがさらに凝集性のカードから硬くて腰のある繊維のものまで変動するテクスチャを有して調製されることができる。
【0013】
選択されるポリマーは、本明細書中に記載される同時方法で処理する前に、水性ポリマー溶液を形成することができるべきである。本発明の目的のために、「ポリマー溶液」または同等の用語は、ポリマーが少なくとも1つのアセルベーション機構において完全に反応することができるように、1つまたは複数のポリマーが溶解され、可溶化され、または細分化された形態で(好ましくは、コロイド縣濁液の形態で)縣濁される水溶液を含む。したがって、必要ならば、例えばpH、イオン強度、温度等を調整する工程によってポリマーを処理して、ポリマー溶液を調製してもよい。
【0014】
1つまたは複数のポリマーの濃度は、信頼性のあるプロセスを提供するように選択される。ポリマーは様々な分子量、所与のpHにおいて荷電部位の様々な数を有するので、本明細書中に提供されるプロセスのためのプロセス条件は、関与する2以上のアセルベーション反応によって反応に使用される各ポリマーが大いに消費されるように選択されるべきである。このことは、同時プロセス後に、それぞれのポリマーの有意でない量は、元の可溶性の形態で残ることを保証する。加えて、形成される最終的な構造/テクスチャは、目標とされる目的のために、1つのポリマーを他のポリマーよりも優遇するようにデザインされてもよい。例えば、最終的なコアセルベートがチーズ用途に使用される場合、栄養および風味の目的のために、多糖よりもタンパク質が優遇されてもよい。ポリマー濃度は、一般的に、溶液の重量を基準として約0.01から約30パーセントのオーダーであるが、約0.1から約10パーセントのポリマー濃度が好ましい。
【0015】
1つの態様では、1つまたは複数のポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液は、少なくとも2つのアセルベーション機構を受けることができる。少なくとも1つの水溶液は、少なくとも2つのアセルベーション機構が活性化工程前に活性化されないような状態であるように、処方されおよび処理される。少なくとも1つの水溶液は、次いで、少なくとも2つのアセルベーション機構を同時に活性化するように処理され、および、次いで、少なくとも2つの活性化されたアセルベーション機構は、構造化ポリマーマトリクスが得られるまで進められることができる。
【0016】
別の態様では、2以上の水性ポリマー溶液は、2以上のアセルベーション機構が直ちにおよび同時に起こるように剪断を加えまたは加えずに、一緒に混合される。2以上のアセルベーション機構が混合の際に同時に起こって所望の構造化ポリマーマトリクスが形成されるように、ポリマー溶液が組み合わせられた直後に各アセルベーション機構が起こるために必要な条件が提供されるように、少なくとも2つのポリマー溶液が処方される。
【0017】
少なくとも1つのポリマー溶液中に使用されるポリマーは、同一または異なるポリマーであってもよい。本明細書中に記載される方法は、多様なポリマーおよびポリマーの組み合わせを使用して行われることができる。好ましくは、ポリマーは、食品ポリマーである。より好ましくは、食品ポリマーの少なくとも1つは食品タンパク質である。
【0018】
一般的に、本明細書中に記載される方法において使用するために適当なアセルベーション機構は、重合、熱架橋、イオン架橋、等電沈殿、イオン沈殿、酵素架橋/凝集、コアセルベーション、化学的複合化、ゲル化、溶媒沈殿、(pH、熱、酵素、化学薬品によるような)タンパク質変性などを含む。本明細書中に記載される同時の方法において使用される特定のポリマーおよびアセルベーション機構は、所望のテクスチャを提供するように、または特定の目的を達成するように選択されることができ、単一のアセルベーション機構または順次行われるアセルベーション機構を伴う慣用の方法に由来するアセルベート化ポリマーマトリクスと比較して、望ましくないテクスチャの欠陥(例えば、粒状性)を軽減し、高いエネルギーを消費するプロセス工程(例えば、高剪断)を回避し、材料節約を可能にし(例えば、低ポリマー濃度で構造を形成する)、および/または物理的機能(例えば、保水力)を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書中に記載される方法は、2以上のアセルベーション機構が同時に起こるように少なくとも1つのポリマー溶液を処理することによって構造化ポリマーマトリクスを調製することを対象とする。好ましくは、2以上のポリマー溶液は、2以上のアセルベーション機構が2以上のポリマー溶液を混合する際に同時に起こるように処理される。2以上のアセルベーション機構の同時使用は、予想外にも、個々または順次に行われるアセルベーション機構によって生成されるポリマーマトリクスと比較して、改善されたプロセス効率および独特であるテクスチャを有する細かく絡み合ったマトリクスを与える。加えて、本明細書中に提供される方法は、多様なポリマー、好ましくは、しかし限定されるものではないが、食品ポリマー由来の構造化ポリマーマトリクスを形成するための適応性のあるプロセスを提供し、および最も好ましくは、少なくとも1つの食品ポリマーは、食品タンパク質である。驚くべきことに、2以上のアセルベーション反応を同時に行うことは予想外の最終反応マトリクスをもたらすこと、および所望のテクスチャ特性を有するマトリクスを提供するように反応条件を選択することができることが見出された。驚くべきことに、本明細書中に記載される方法から得られるマトリクスは、単一のアセルベーション機構のいずれも、結果として得られるマトリクスの構造または特性を決定付けまたは制御することがないように形成される。換言すれば、本明細書中に記載される同時の方法によって形成されるマトリクスは、個々または順次に行われる同一のアセルベーション機構によって生成されるものに対して、独特である。本明細書中に記載されるような、同時のアセルベーション方法の使用は、有利にも、結果として得られるマトリクスの機能特性を、さもなければ単一のアセルベーション反応または順次に行われるアセルベーション反応の組み合わせに基づいて得ることが困難または不可能であろう用途の特定のニーズに合わせることを可能にする。
【0020】
1つの態様では、本明細書中に記載される同時方法を使用して、テクスチャおよび外観の両方においてフレッシュチーズカードに類似する、滑らかで凝集性のテクスチャを有する混合された/絡み合った固体ポリマーマトリクスを調製することができる。別の態様では、本明細書中に記載される同時方法を使用して、繊維状の構造化ポリマーマトリクスを生成することができる。
【0021】
選択されるポリマーは、本明細書中に記載される同時方法を用いる処理の前に、水性ポリマー溶液を形成することが可能であるべきである。本発明の目的のために、「ポリマー溶液」または同義語は、ポリマーが少なくとも1つのアセルベーション機構において完全に反応することができるように、1つまたは複数のポリマーが溶解し、可溶化され、または細分化された形態(好ましくは、コロイド縣濁液の形態)で縣濁される水溶液を含む。したがって、ポリマーを、必要ならば、例えば、pH、イオン強度、温度等を調整することによって処理して、ポリマー溶液を調製してもよい。
【0022】
本明細書中に記載される方法において有用なポリマーは、好ましくは、タンパク質、多糖、それらの誘導体、およびそれらの混合物のような食品ポリマーから選択される。適当なタンパク質は、植物源、動物源、イースト由来源等を含む。適当な植物源は、マメ科植物(legume)、エンドウ豆、穀類、豆(bean)、木の実、シリアル、大豆、ピーナッツ、脂肪種子(オイルシード、コットンシード、キャノーラ、ヒマワリの種等)等を含む。適当な動物源は、乳製品タンパク質、卵タンパク質、魚タンパク質、肉タンパク質、植物由来タンパク質、微生物由来タンパク質等を含む。適当な肉タンパク質源は、家禽、牛肉、豚肉、魚、および他の海産物、ならびに、ゼラチン、セラム、アルブミン等のような由来物を含む。適当な乳製品タンパク質源は、乳、スキムミルク、粉乳、カゼイン、ホエータンパク質、分画乳タンパク質、濃縮乳製品タンパク質源、乳製品タンパク質単離物等のような乳由来物を含む。本明細書中で使用される際に、「濃縮乳製品タンパク質源」は、タンパク質が、それらが由来する乳製品の液体よりも高い濃度で再構成されるかまたは再構成されることができるタンパク質源である。濃縮乳製品タンパク質源の例は、ホエータンパク質濃縮物、乳タンパク質濃縮物、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。典型的には、ホエータンパク質濃縮物および乳タンパク質濃縮物は、少なくとも約34パーセントのタンパク質濃度を有する。乳製品タンパク質単離物の例は、ホエータンパク質単離物、乳タンパク質単離物等を含むが、それらに限定されない。本明細書中で使用される際に、「カゼイン」は、乳中の任意のまたは全てのリンタンパク質、およびそれらの任意の混合物に関連する。多くのカゼイン成分は、α−カゼイン(αs1−カゼインおよびαs2−カゼインを含む)、β−カゼイン、k−カゼインおよびそれらの遺伝的変異体を含むが、それらに限定されないと認識されている。本明細書中で使用される際に、「ホエータンパク質」は、乳または乳製品の液体を含有する乳成分をカード化して半固体としてのチーズ製造用カードを製造するときにカードの上澄みとして得られる乳製品の液体(たとえば、ホエー)中に含有されるタンパク質に関連する。ホエータンパク質は、一般的に、主に球状タンパク質のβ−ラクトグロブリンおよびα−ラクトグロブリンを含むと理解されている。ホエータンパク質は、ヒトにとって高栄養価を有し、およびそれらが組み込まれる乳製品に対してクリーミーで塗り広げることができる品質を与える、好ましい官能的品質を提供することができる。適当な多糖類は、キサンタン、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ペクチン、デンプン類、ローストビーンガム、トラガカントガム、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム(gum ghatti)、グアーガム、セルロースガム、ヘミセルロース、キトサン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを含む。多糖類に関して、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸塩、CMC、キサンタン、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム、ジェラン、寒天、キトサン等のようなイオン性のゴムが、特に規制(例えば、同一性の基準)または経済的理由などのために強いマトリクスが所望されまたは低いポリマー濃度が所望される場合に、タンパク質とコアセルベートしおよびイオン誘起されたゲル化を受けるそれらの能力のために好ましい。対照的に、天然および加工デンプン、マルトデキストリン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース等のような非イオン性のゴムは、弱い構造が所望される場合に好ましい。また、必要ならば、乳、チーズホエー、卵、肉スラリー、果物ピューレ等のような食品ポリマーを含有する生または加工食品材料を使用してもよい。
【0023】
ポリマーの組み合わせ、各ポリマーの濃度、および少なくとも1つのポリマー溶液の物理化学的状態は、結果として得られる構造化マトリクスの所望の特性に基づいて選択される。テクスチャのような、構造化マトリクスの特性は、以下の要因:(1)使用されるポリマー(単数または複数)(例えば、タンパク質、多糖)の種類;(2)異なるポリマーの数、(3)各ポリマーの濃度/割合;および(4)pH、イオン強度、温度、剪断/混合、および少なくとも2つのポリマー溶液が使用される場合はポリマー溶液の混合割合のような、構造化マトリクスが形成される物理化学的条件に基づいて調整されることができる。また、構造化マトリクスの特性は、使用される場合には硬化剤または架橋材の種類および濃度、ならびに使用される場合には増量剤(filler)の種類および濃度によって影響され得る。
【0024】
2以上のアセルベーション機構は、2以上のアセルベーション機構が同時に進行するのに適当な条件下でポリマー(単数または複数)および任意の必要とされる反応物質が処理される任意の方法を使用して、行われることができる。2以上のアセルベーション機構がどのように活性化されるかは、2以上の機構が本質的に同時のやり方で(すなわち、機構および結果として得られる反応が同時に起こるように)活性化される限り、重要でない。
したがって、1つまたは複数のポリマーを含有する単一の溶液を調製し、および、次いで条件(例えば、温度、pH、添加される試薬等)をすばやく変更して、2以上の機構を活性化させることができる。例えば、溶液は、高pHおよび高温(例えば、ホエータンパク質の架橋温度より上)でホエータンパク質およびカラギーナンを含んで調整されることができる。ホエータンパク質およびカラギーナンは同一のpHであり、およびしたがって、同様に帯電しているので、2つのポリマーは、コアセルベートまたは架橋することができない。酸を、約5.0の目標pHまでpHを低下させるのに十分な量で添加し、このようにして、コアセルベーションおよび熱架橋を同時に起こすきっかけとすることができる。
【0025】
あるいはまた、2以上のポリマー溶液(同一のまたは異なるポリマーを含有する)は、どの機構も活性化されない条件下で調製され、および次いで、2以上のポリマー溶液は、それによって機構が活性化される条件下で混合されることができる。個々の溶液は、別個の溶液が一緒に混合される場合にのみ2以上のアセルベーション機構が活性化されるように、調整される。特に実験室規模の実験に関して、この手段は、所望される同時アセルベーション反応を達成するために便利および有効な方法を提供する。そのような手段は、本発明を特徴付けるために、本明細書中に示される実施例のために使用された。同様に、本明細書中の検討および一般的な特徴化は、便宜上一般的に、この個々のポリマー溶液の観点で示される。当業者は理解するであろうが、他の方法は、2以上のアセルベーション反応が同時に起こるように使用されることができる。
【0026】
ポリマーの組み合わせは、各ポリマーの固有特性に基づいて選択される。ポリマー溶液は、それ自体によって物理化学的条件(例えば、温度またはpH)の突然の変化の下で、および/または別のポリマーを用いてポリマー−ポリマー相互作用(例えば、架橋、コアセルベーション、または複合化)を通して、急速なアセルベーションを受ける可能性がある。例えば、熱い、酸性の、熱変性可能なタンパク質溶液(約pH3.0および約80℃など)は、熱い、塩基性の、多糖溶液(約pH9.0および80℃)と混合して、約5.0のpHを有す得混合物を形成されることができる。この系において、複合および合成マトリクスは、同時に行われる少なくとも3つのアセルベーション機構、すなわち、(1)強度に正に荷電したタンパク質分子および強度に負に荷電した多糖分子の間のコアセルベーション、(2)タンパク質の等電沈殿、および(3)熱によって誘導された共有結合性の(例えば、ジスルフィド)結合形成によるタンパク質分子の共有結合性架橋を通して形成されることができる。2つの熱いポリマー溶液を混合する前に、低pHでのタンパク質分子の熱架橋は、透明または半透明のタンパク質溶液によって明らかなように、タンパク質分子間の静電反発力によって抑制される。溶液が塩基性の多糖溶液と混合され、および混合物のpHが中和される場合は、架橋はもはや抑制されない。したがって、(1)関与する1つまたは両方のポリマーの濃度、(2)2つのポリマー溶液の割合、(3)2つの溶液を混合した後の目標pH、および(4)2つの溶液を混合した後の溶液温度を変動させることによって、柔軟から硬いまで変動するテクスチャおよびカード状から繊維状まで変動する概観を有する、非均質の、混合された、絡み合った、および/または合成の構造を急速に形成することができる。形成されたマトリクスをタンパク質特異的および多糖特異的な染料で着色することを用いてもよい。同時コアセルベーション機構の少なくともいくつかの態様を視覚的に見るためにそのような染料を使用することは、急速、同時、多重のアセルベーション反応に起因して、分子排除が、十分にまたは十分に早く起こらないことを示唆する。理論によって制限されることを望むものではないが、着色は、ポリマーが、分離できない複合体(例えば、粒子、繊維等)を形成し、および各ポリマーからアセルベートを分離しないことを示唆する。
【0027】
本明細書中に記載される方法において、ポリマー濃度は、溶液の重量を基準にして、約0.01から約30パーセントであるが、約1.0から約10パーセントのポリマー濃度が好ましい。1つの態様では、1つまたは複数のポリマーを含有する溶液は、2以上のアセルベーション機構が同時に起こって、構造化ポリマーマトリクスを形成するように処理される。別の態様では、2以上のポリマー溶液は、少なくとも2つのアセルベーション機構が混合の際に同時に起こって、構造化ポリマーマトリクスを形成するように組み合わされる。別の態様では、少なくとも3つのポリマー溶液は、2以上のアセルベーション機構が混合の際に同時に起こって構造化ポリマーマトリクスを形成するように、処理されおよび組み合わされる。別の態様では、少なくとも2つのポリマー溶液は、3以上のアセルベーション機構が混合の際同時に起こって構造化ポリマーマトリクスを形成するように、組み合わされおよび処理される。2以上の溶液中のポリマーは、同一または異なるポリマーであってもよい。
【0028】
一般的に、本明細書中に記載される同時の方法において使用されることができるアセルベーション機構は、重合、熱架橋、イオン架橋、等電沈殿、イオン沈殿、ゲル化、酵素凝集、コアセルベーション、化学的複合化、等電沈殿、イオン沈殿、ゲル化、溶媒沈殿、変性(pH、熱、酵素、化学薬品によるタンパク質変性など)等を含む。複合された、混合された、絡み合った、または合成の構造は、微視的に均質であってもまたはでなくてもよいように形成され、および使用されるポリマーは、両方のポリマーがプロセス中にほとんど完全に消費される場合は、個々に識別できなくてもよい。
【0029】
結果として得られる構造化マトリクスの所望の特性に基づく2以上のアセルベーション機構の特定の選択は、当業者の容易に可能な範囲内であろう。アセルベーション機構の選択は、選択されるポリマーの特定の組み合わせ、ならびに結果として得られる構造マトリクスの所望の特性に依存する。加えて、当業者は、ポリマーの全ての組み合わせおよび/または全てのアセルベーション機構が同時反応を可能にするのに適当またはさらに実行可能であるとは限らないことを認識するであろう。例えば、熱架橋は、ホエータンパク質に関して一般に使用されるアセルベーション機構であり、一方、酵素凝集は、カゼインに関して一般に使用されるアセルベーション機構である。しかしながら、酵素凝集は一般的に時間をかけてゆっくりと進行するので、両方のアセルベーション機構が同時および有効に起こるのを可能にするようにプロセスを設計することは、常に可能なわけではない。例えば、乳、すなわちカゼインとホエータンパク質の両方の混合物を加熱してホエータンパク質を架橋し、および次いで冷却し、その後凝集酵素を添加して、カゼインカードを形成することができる。あるいはまた、乳を、凝集酵素で処理し、次いで加熱することもできる。しかしながら、どちらの方法も、同時アセルベーション機構を提供しない。ホエータンパク質の熱架橋は、ホエータンパク質の濃度、pH、加熱温度、および加熱時間に高度に依存する動力学的なプロセスであり、一方、同様にゆっくりとした動力学的に推進されるプロセスであるカゼインの酵素凝集は、ホエータンパク質の最低架橋温度未満でのみしか起こることができない。2つの機構は進行するために有意に異なる温度を必要とし、および酵素凝集は熱架橋よりもはるかに長い時間がかかるので、両方のアセルベーション機構が同時に起こるのを可能にするプロセスを創り出すことは実行可能であるように見えない。1つのポリマー溶液がホエータンパク質単離物を含みおよび他のポリマー溶液がカゼインを含む別の例として、熱架橋および酵素凝集の両方を含む同時アセルベーション機構は、特に不可能である。しかしながら、カゼインは、等電沈殿のような、酵素凝集以外の機構によってアセルベーションを受けることができるので、酵素凝集以外の機構を使用して同時多重アセルベーションプロセスをデザインしてもよい。例えば、約3.5のpHおよび約180°Fの温度のホエータンパク質単離物を含む第1ポリマー溶液および8.0のpHおよび約180°Fの温度のカゼイン塩を含む第2ポリマー溶液は、混合されて、約4.6の最終的な平衡pHを提供することができ、そこで、少なくとも2つのアセルベーション反応が同時に起こることができる(ホエータンパク質の熱架橋およびカゼイン塩の酸沈殿)。低pHでのホエータンパク質分子の熱架橋は、透明または半透明のタンパク質溶液によって明らかであるように、タンパク質分子の間の静電反発力によって抑制される。溶液がカゼイン塩溶液と混合され、および混合物のpHが中和されるとき、架橋はもはや抑制されない。したがって、ポリマーおよびアセルベーション機構の組み合わせの選択は、選択される各ポリマーおよびアセルベーション機構に固有の物理的制限に依存する。
【0030】
本明細書中に記載される同時の方法は、ポリマー、アセルベーション機構、および物理化学的条件を、同一のアセルベーション反応を単独でまたは順次に行うことによってはこれまでに達成されなかった構造化ポリマーマトリクスが形成されるように選択することによって、多重アセルベーション反応を同時に行うための適応性のあるプロセスを提供する。制限することを意図するものではないが、いくつかのアセルベーション機構は、本明細書中により詳細に記載される。
【0031】
コアセルベーション
コアセルベーションは、一般的に、溶液中の2つの逆荷電したポリマーを組み合わせて、不溶性の複合体の分離またはコアセルベートを引き起こすことに関与する。コアセルベーションにおいて、2つの逆荷電ポリマー溶液を調製する。好ましくは、正に荷電したタンパク質溶液および負に荷電した多糖溶液である。あるいはまた、必要ならば、正に荷電した複合多糖溶液(たとえば、キトサン)および負に荷電したタンパク質または別の多糖溶液を使用することができる。第1ポリマーの水溶液を調製し、食品等級の酸を使用してpHを約2から約5に調整して、正に荷電したポリマーを形成する。適当な食品等級の酸は、リン酸、塩酸、硫酸、乳酸、クエン酸、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。第1ポリマーは主に正に荷電しているので、同様に荷電した分子は反発力を示す。第2ポリマーの水溶液を調製し、食品等級の塩基を使用してpHを約8から約11に調整して、負に荷電したポリマーを形成する。適当な食品等級の塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。第2ポリマーは主に負に荷電しているので、同様に荷電した分子は反発力を示し、およびポリマーは溶液中に可溶性のままである。逆荷電したポリマー溶液は、次いで、組み合わされ、および逆荷電したポリマーは互いに引き付け合い、したがって、不溶性の混合されたポリマーマトリクスを形成し、その後、第1および第2ポリマーのイオン電荷は中和される。混合されたポリマーマトリクスを形成する反応は、一般的に、不可逆であり、しかし、非常に高いかまたは低いpHのような極端な条件下で、可逆であってもよい。しかしながら、典型的なまたはほとんどの最終用途の条件下(食品製品中など)で、混合されたポリマーマトリクスの形成は、不可逆である。
【0032】
また、コアセルベーションは、2つのポリマー(典型的には、可溶性タンパク質およびイオン性多糖)の混合溶液を調製し、続いて、溶液のpHを、タンパク質の等電pHのわずかに下まで漸増させて、コアセルベーションを引き起こすことによって提供されることができる。そのようなpHにおいて、タンパク質は主に正に荷電されるようになるが、一方、イオン性多糖は負に荷電され、および分子間の静電的引力に起因して、不溶性のマトリクスが形成される。
【0033】
本明細書中に定義されるように、自己アセルベーションは、コアセルベーションの特定の種類である。自己アセルベーションにおいて、コアセルベーションに使用される第1および第2ポリマーは、同一のポリマーである。自己アセルベーションは、一般的に、両性のポリマー、好ましくは両性タンパク質に限定される。例えば、正に荷電した第1ポリマー溶液および負に荷電した第2ポリマー溶液は共に、ホエータンパク質単離物を含む。必要ならば、自己アセルベーション機構において他のポリマーを同様に使用してもよい。いくつかの多糖は、自己アセルベーション機構のために適当でない可能性がある。例えば、アニオン性多糖は、一般的に、本明細書中に記載されるような自己アセルベーションを受けることができない。食品ポリマーのうち、ひき肉および乳のようなタンパク質およびタンパク質に関係する材料のみが、知られている両性ポリマーである。他の両性分子は、しばしば、食べることができず、または低い分子量を有し、構造形成の可能性がほとんど無いかまたは無い。
【0034】
いくつかの場合では、コアセルベーションによって形成されるアセルベートは、望ましくない特性を有する可能性があり、それによって、食品製品中におけるそれらの使用を制限する。そのような場合には、第2またはさらに第3のアセルベーション機構を組み入れて同時多重アセルベーション反応を提供して、構造化マトリクスを達成してもよい。実際に、ポリマー、条件、およびアセルベーション機構を変動させることによって、食品産業において現在は可能でない有用な特性を有する構造化マトリクスを提供することができる可能性がある。
【0035】
熱架橋
熱架橋では、ポリマー分子の重合は、熱処理により誘発される。例えば、含硫アミノ酸に富む食品タンパク質を十分に高温で加熱する場合、分子間共有結合性−S−S−結合が、異なるポリマー分子内に位置する−SH基間に形成され、および不溶性ポリマーマトリクスまたは粒子の形成をもたらす。含硫アミノ酸に富む食品タンパク質は、ホエータンパク質、卵タンパク質、野菜タンパク質等を含むが、それらに限定されない。ホエータンパク質の熱架橋は、動力学的制御反応であり、架橋の度合いは、タンパク質濃度、温度、加熱時間、およびpHによって影響される。熱架橋を、ポリマーの等電pHと著しく異なる(例えば、2以上のpH単位)溶液のpHにおいて、防止または実質的に低減することができるので、ホエータンパク質の熱架橋は、同時多重アセルベーション反応を少なくとも1つの他のポリマーおよびアセルベーション機構に提供するために望ましいアセルベーション機構である。反応条件は、1つまたは複数の他のポリマー溶液と混合する前に起こる架橋の量を最小限にするように選択されるべきである。例えば、ホエータンパク質の架橋を、約30分間のような長時間の熱処理にわたって、pH3.5未満、約90℃の温度で、実質的に低減(例えば、約30パーセント未満)することができる。あるいはまた、架橋可能なポリマーを含有する溶液を、より低い温度で維持してもよく、および他の溶液(架橋可能なポリマーを含有しない溶液)を、混合された場合に混合物の温度が架橋反応にとって適当であるような温度にまで加熱してもよい。他のアセルベーション方法および/またはポリマーの条件は、当業者により容易に選択されることができる。
【0036】
同時コアセルベーションおよび熱架橋
第1ポリマーおよび第2ポリマー間のコアセルベーションが第1ポリマーの熱架橋と同時に起こるのを可能にする同時多重アセルベーションプロセスを提供するために、第1ポリマーは、2つのポリマーを含有する溶液を混合する際に提供される温度かまたはそれを超える温度で架橋を形成することができるべきである。第1および第2ポリマーは、ポリマー間のコアセルベーションを可能にするために、逆荷電されるべきである。そうするために、第1ポリマーの水溶液を調製し、pHを、食品等級の酸を使用して第1ポリマーの等電pHよりも十分に低いpH(例えば、約2から5のpH)に調整して、正に荷電したポリマー溶液を形成する。第1ポリマーは低pH条件下で主に正に荷電するので、同様に荷電した第1ポリマーの分子は、反発力を示し、高度に酸性の溶液中で可溶性のままである。また、分子間反発力は、高度に酸性の溶液が、通常の、またはより低い酸性pH(例えば、第1ポリマーの等電pHよりも約1pH単位低い)において、著しい架橋を誘発することなしに、第1ポリマーの架橋温度と同等またはそれより高い温度にまで加熱されることを可能にする。有利にも、ポリマーは、熱くて高度に酸性の溶液中において、可溶性および非アセルベート化されたままであるので、第1ポリマー溶液は、外観において透明または半透明のままである。第2ポリマー溶液を、第2ポリマーを水中に溶解させることによって調製し、および溶液のpHを、食品等級の塩基を使用して、第2ポリマーの等電pHよりも十分に高いpH(例えば、約8から11のpH)に調整して、負に荷電した第2ポリマー溶液を形成する。第2ポリマーは主に負に荷電しているので、同様に荷電した分子もまた反発力を示し、および、高温においてでさえ、高度に塩基性の溶液中に可溶性のままである。負に荷電した第2ポリマー溶液は、第1ポリマー溶液の温度と同等かまたはそれより高い温度に加熱される。架橋可能なポリマーは、個々の溶液中で同様に荷電しており、および反発力を示すので、ポリマーは、比較的厳しい熱処理下においてでさえ、実質的に非架橋のままである。一般的に、酸性および塩基性のポリマー溶液は、2つの溶液を混合する前に、約150から約200°F、好ましくは、約170から約185°Fまでの範囲にわたる温度に加熱される。
【0037】
2つの溶液のpHおよび2つの溶液が組み合わされる割合は、2つのポリマー溶液を混合する際の目標最終pHに基づいて選択される。目標最終pHは、そこで第1ポリマーの熱架橋が自由、迅速、および効率的に起こるpHであり、同様に、そこで2つのポリマーのコアセルベーションが起こることができるpHであるべきである。例えば、仮に、第1ポリマーがホエータンパク質であり、第2ポリマーがカラギーナンである場合は、適当な目標pHは、約4.2から約5.2の範囲内であるべきである。原則として、加熱工程は、必要な場合は、加熱押出機内のような高圧で行うことができ、その場合、温度は適当に調整される。ポリマー溶液を冷却させることなく、2つの逆荷電ポリマー溶液は混合され、このことは、少なくとも2つの反応がほとんど同時に起こるきっかけとなる:(1)コアセルベーション:第1および第2ポリマーは、2つの逆荷電ポリマー間の静電気引力に起因して形成され;および(2)架橋:混合物のpHは中和され、したがって、当初同様に荷電したポリマー間の反発力の除去をもたらし、およびジスルフィド共有結合を介した第1ポリマー分子間の架橋をもたらす。重合ポリマーは、−S−S−結合による変性タンパク質(unfolded proteins)の架橋に由来する。一般的に、結果として起こる分子量の増大は、ポリマーとの架橋の増大を示す。原則として、少なくとも約50パーセントのジスルフィド架橋を達成することができる可能性があるが、約少なくとも80パーセントの範囲における架橋が一般的に好ましい。架橋度は、例えば、ジチオスレイトールのようなジスルフィド還元剤を用いるポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、評価することができる(例えば、特許文献2および非特許文献8参照。これらは共に、参照としてその全体が本明細書中に組み込まれる)。結果として得られる混合構造化ポリマーマトリクスは、第1ポリマーの架橋、および第1および第2ポリマーのコアセルベートを含む。構造化ポリマーマトリクスは、冷蔵温度にまで冷却し、および後の使用のために貯蔵しておくことができ、または、構造化ポリマーマトリクスは、例えば、テクスチャ材料または脂肪模倣剤としてクリームチーズ流中に添加するためなど、食品製品中に組み入れるために、マトリクス形成後、すぐに処理することができる。
【0038】
コアセルベーションおよび熱架橋の同時使用は、いくつかの利益を提供する。同時方法を使用するマトリクスを調製する場合に、より低いポリマー濃度を使用することができる。例えば、慣用の架橋機構をそれ自体で利用して、5から8パーセントのホエータンパク質溶液を約30から60分間にわたって高温で加熱して、架橋ホエータンパク質を形成する。対照的に、本明細書中に記載される同時多重アセルベーションプロセスは、3パーセント未満のホエータンパク質を必要とし、およびほとんど瞬時に構造化マトリクスを形成する。また、同時の方法は、他の方法と比べて、より効率的であり、およびあまりエネルギー大量消費的でないプロセスである。一般的に、慣用の架橋機構においては、一定の高剪断および混合が、架橋の粒径を制御するために必要とされる。数々の単位操作が慣用的に使用されて、所望の粒径の架橋ホエータンパク質が生成され、および長い高温曝露に起因して、異臭がしばしば生み出される。さらに、チーズホエー中のホエータンパク質の濃度は極度に低く(0.5パーセント未満)、例えば限外濾過によって、濃縮されおよび抽出されなければならないので、ホエータンパク質の生成は、高価であり、およびエネルギー大量消費型である。
【0039】
等電沈殿
等電点は、ポリマー、特に両性ポリマーの正味荷電がゼロであるpHである。ポリマーの等電点またはその付近における溶液中のポリマー分子が、静電的安定性の欠如および増大した分子内および分子間疎水性力に起因して、不溶性および/または互いの上に倒壊するようになる場合に、等電沈殿が起こる。等電沈殿は、溶液のpHまたはイオン強度を調整することによって開始されることができる。例えば、等電沈殿は、食用酸で乳のpHをカゼインの等電pH(約4.6)に調整することによって乳から商業的なカゼイン塩を製造するために一般に使用される。不溶性カゼインは、沈殿物または密度の高いカードを形成し、および残存ホエーから容易に分離されることができる。等電沈殿は、同時多重コアセルベーションプロセスのデザインに使用されることができる。
【0040】
イオン沈殿
ポリマーのイオン沈殿は、典型的には、多価カチオン無機イオンの存在下における負に荷電したポリマー分子の間のイオン架橋に関与する。多くの食品タンパク質および多くのアニオン食品多糖を含む多くの食品ポリマーは、それぞれの等電pHよりも高いpHで、イオン沈殿を受ける。アニオン食品多糖は、カラギーナン、キサンタン、アルギン酸塩、寒天、カルボキシメチルセルロース、低メトキシペクチン、ジェラン、寒天等およびそれらの混合物を含むが、しかしそれらに限定されない。例えば、二価カチオン(例えば、CaCl2)の溶液を、負に荷電したポリマー(例えば、アルギン酸塩)の溶液に添加する場合、隣接するアルギン酸塩分子間に、カルシウムの橋が形成される。一般的に、約0.01パーセントの二価カチオンが使用される。材料の相対的濃度および物理的条件次第で、正に荷電したカルシウムイオンによる多糖の負荷電の中和、およびアルギン酸塩分子間のカルシウムの橋の形成は、ポリマーの沈殿および/またはゲル化を引き起こす。理論的には、イオン沈殿は、同様に、正に荷電したポリマーおよび適当なアニオン(例えば、リン酸イオン)の間で起こり得るが、しかし、このタイプのイオン沈殿は、食品系においてはあまり一般的でない。
【0041】
多糖および/または無機カチオンの濃度を変更させることによって、関連する機構を提供することができる。低濃度のCa2+カチオンは、低濃度のアルギン酸塩溶液をゲルにする。対照的に、高濃度のCa2+カチオンは、多糖の完全な中和および不溶性の濃度の高いアルギン酸カルシウムの沈殿を引き起こす。
【0042】
同時等電沈殿およびイオン沈殿
混合構造化ポリマーマトリクスを形成するために同時に行われる1つのポリマーの等電沈殿および別のポリマーのイオン沈殿は、本発明のプロセスに基づいて可能である。一般的に、2以上のポリマー溶液を調製する。第1ポリマー溶液を、食品等級の塩基を使用して、約8から約10のpHに調製して、負に荷電したポリマー溶液を形成する。第2ポリマー溶液を、食品等級の酸を使用して、約pH3から約pH4に調整して、正に荷電したポリマー溶液を形成する。塩を含有する多価無機カチオンを、ポリマー溶液のうちのどちらかに添加する(例えば、約0.01パーセントのカチオン)。第1および第2ポリマー溶液のpHは、それらの混合割合と同様に、2つのポリマー溶液を混合した後の最終的なpHが、沈殿するべきポリマーの等電点付近であるように選択される。2つのポリマー溶液を混合する際に、いくつかの変化が同時に発生し:(1)沈殿するべきポリマーの等電pHに実質的に近いpHまでへの混合物の中和;(2)第1ポリマーの等電沈殿;および(3)第2ポリマーの無機カチオンとのイオン沈殿を含む。結果として、同一のポリマーで行われる単一のアセルベーションまたは順次のアセルベーション機構によって生成されるマトリクスとは異なる、カード状の外観およびテクスチャを有する混合構造化マトリクスが形成される。例えば、テクスチャの違いは、知覚的(例えば、外観、口当たり(mouth feel)等)、物理的(メカニカル、密度等)、および機能的違い(例えば、保水力)を含むことができる。
【0043】
当業者にとって容易に明らかとなるように、アセルベーション機構の様々な組み合わせを同時に行って、所望のテクチャ、物理的および機能的特性を有する構造化ポリマーマトリクスを形成することができる。同様に容易に明らかであるように、上述のもの以外の、アセルベーション機構を同時に活性化させる様々な方法もまた、使用することができる。2以上のアセルベーション機構を同時に行うことは、独特な、かつ単独または順次に行われる同一の2以上のアセルベーション機構の結果として形成されるものよりも優れている、構造化ポリマーマトリクスをもたらすことが、驚くべきことに見出された。機構および/またはポリマーの全ての可能な組み合わせを本明細書中において検討することはできないが、本明細書中に記載される同時多重アセルベーションプロセスは、広範囲のアセルベーション機構およびポリマーの組み合わせに適用すると考えられる。
【0044】
必要ならば、1つまたは複数の任意選択的な増量剤を、1つまたは複数のポリマー溶液に添加することができる。増量剤は、意図されるポリマーマトリクスの構造形成を実質的に阻害しないように選択されるべきである。増量剤は、最終的なマトリクスに基づいて、約0から約70パーセントで添加されることができる。本明細書中の増量剤は、実質的に不活性または非反応性の食品材料であり、および機能的に構造スペーサーとしての役目を務める食用材料として定義される。増量剤は、天然または加工デンプン、マルトデキストリン、デンプンまたは穀類由来物(例えば、コーンシロップ固形物、米ぬか)、αセルロース、微結晶性セルロース、繊維、変性タンパク質(例えば、ラクトアルブミン、固形物バターミルク、等)、中性ゴム(例えば、ローカスビーンガム、グアーガム等)、脂質およびそれらの混合物から選択されるが、しかしそれらに限定されない。不活性増量剤は、本明細書中において、主に、同時多重アセルベーションプロセスによって形成される最終的なマトリクス構造を修正するために使用される。例えば、バターミルク固形物、すなわちバター由来の非反応性の変性乳膜タンパク質は、完成された食品製品(例えば、クリームチーズ)のマトリクス構造形成中にテクスチャに実質的に貢献しないが、しかし、本明細書中に記載される同時の方法を使用して形成される2つの他のポリマーの共重合体マトリクス構造中に組み込まれるかまたは構造的に封入されることができる。増量剤を組み込むことの実益は、多様であり、および最終的なポリマーマトリクスまたはポリマーマトリクスを含有する最終的な食品製品の増大した収量/容量、増大した保水力、低減した密度、低減した強度/堅牢性、および改善された口当たりを含むが、しかしそれらに限定されない。
【0045】
必要ならば、乳化剤、塩、甘味料、酸味料、着色剤、香味料、安定剤等のような任意選択的な材料を、少なくとも2つのポリマー溶液の一方または両方に、約0から約10パーセントの総レベルで、意図されるポリマーマトリクスの構造形成を実質的に阻害しないように、添加することができる。香味料は、例えば、バター風味、乳風味、チーズ風味、肉風味、調味料、ハーブ、および果物または野菜ピューレまたは粉末を含む。また、例えば、β−カロチン、アンナット、人工食品着色剤等のような着色剤を、使用してもよい。適当な安定剤は、酸化防止剤、抗菌剤等を含むが、それらに限定されない。これらの任意選択的な材料は、構造化ポリマーマトリクスの形成を、不利な態様で阻害またはさもなければ影響を与えないように選択されるべきであり、しかし、有益な態様で阻害するように選択されてもよい。
【0046】
本明細書中に記載される同時の方法によって生成される構造化ポリマーマトリクスは、食品製品中に直接使用されることができ、または、必要ならば、例えば、遠心分離、濾過等による任意の適当な方法を使用して、反応混合物から回収され、および、次いで、食品製品中に使用されることができる。本明細書中に記載される同時の方法によって生成される構造化ポリマーマトリクスは、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、チーズ状製品、肉製品または類似物、大豆製品(例えば、テクスチャー加工された大豆製品)、ソース、ドレッシング、デザート、菓子、パンの詰め物等の製造に使用されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の実施例は、本発明の方法および物を記載しおよび説明する。これらの実施例は、本発明の単なる例示であることを意図するものであり、範囲および精神のどちらの点においてもそれを制限するものではない。これらの実施例中に記載される材料、条件、およびプロセスのバリエーションを使用することができることを、当業者は容易に理解するであろう。本明細書中に引用される全ての参照文献は、参照によってその全体が組み込まれる。特に断りのない限り、全てのパーセンテージは、言及される組成の重量による。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
本実施例は、同時アセルベーション反応(本発明)の重要性を、1度に1つのアセルベーション反応が行われる様々な対照反応に対比して、説明する。2つの溶液を調製した。溶液Aは、DI水中3パーセントのホエータンパク質単離物(Bipro:ミネソタ州、Le Sueur、Davisco Foods International, Inc.社由来)を含み、およびpHは、5NのHClを用いて11.55にpH調整された。溶液Bは、DI水中3パーセントの予め溶解されたカラギーナン(Gelcarin GP 911:ペンシルベニア州、フィラデルフィア、FMC Corp.社由来)を含み、および5NのNaOHを用いて11.55にpH調整された。同時アセルベーション反応の重要性を示すために、4つの実施例を実施した。
【0049】
対照A: 溶液Aおよび溶液Bの等量を室温で混合し、および少なくとも10分間にわたって反応させた。対照Aは、カラギーナンおよびホエータンパク質の典型的なコアセルベーションを示す。
【0050】
対照B: 溶液Aおよび溶液Bの等量を室温で混合し、および少なくとも10分間にわたって反応させ、および次いでホエータンパク質を熱架橋させるために180°Fに加熱した。コアセルベーション後、混合物のpHは、架橋を可能にする。混合物は、次いで、密封ガラスジャー中で周囲条件下で冷却された。対照Bは、順次行われたカラギーナンおよびホエータンパク質のコアセルベーションおよびホエータンパク質の熱架橋を示す。
【0051】
対照C: 溶液Aおよび溶液Bの等量を、別個に180°Fに加熱し、および密封ガラスジャー中で周囲条件下で冷却した。溶液のpHに起因して、ほとんどまたは全く架橋は起こらなかった(すなわち、30パーセント未満)。周囲環境に冷却後、溶液AおよびBを共に混合し、および少なくとも10分間にわたって反応させた。対照Cは、順次に行われた少量の架橋を伴うコアセルベーションの異なるバリエーションを示す。
【0052】
本発明: 溶液AおよびBの等量を、別個に180°Fに加熱した。目標温度に到達後直ちに、溶液AおよびBを一緒に混合し、および密閉ガラスジャー中で周囲条件下で冷却した。このプロセスは、同時コアセルベーションおよび熱架橋をもたらした。
【0053】
各実施例で生じたカードの量を濾過により測定した。上記実施例からの各試料は、US50の篩に通され、および篩の上部に保持される塊(mass)を測定した。結果を下記第1表に提供する。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明の同時反応由来の本発明の試料は、単一のコアセルベーション(対照A)または順次のコアセルベーションおよび熱架橋(対照Bおよび対照C)によって形成されたものよりも著しく多いカードを有していた。
【0056】
(実施例2)
同時反応の重要性をさらに示すために、実験の別の組を、様々な反応温度において実施した。4つの別個の溶液(溶液AおよびBのそれぞれは、実施例1に記載されるように調製された)を、それぞれ、130°F、150°F、170°Fおよび180°Fに加熱した。目標温度まで加熱後直ちに、同一温度の溶液Aおよび溶液Bの等量を一緒に混合した(すなわち、130°Fの溶液Aは130°Fの溶液Bと混合され、150°Fの溶液Aは150°Fの溶液Bと混合された、等)。各混合物は、次いで、密封ガラスジャー中で周囲条件下で冷却された。生じたカードの量を、上述のように濾過によって測定し、および結果を下記第2表に提供する。
【0057】
【表2】

【0058】
130°Fおよび150°Fの溶液は、170°Fおよび180°Fで混合された溶液と比較して、著しく少量のカードを形成した。これは、ホエータンパク質の最小量の熱架橋は150°F以下で起こるからであると考えられる。170°Fの溶液で、および180°Fの溶液で調製された試料は、両方とも、同時コアセルベーションおよび熱架橋反応を示す。130°Fおよび150°Fの溶液で調製された試料は、主にコアセルベーション反応を示すと考えられる。この実験は、さらに、多重反応を同時に有することの特異性を示す。
【0059】
(実施例3)
異なるポリマーを用いた、順次に行われる2つのアセルベーション機構を使用する方法 ホエータンパク質単離物(WPI)および乳タンパク質濃縮物(MPC)間の熱架橋およびコアセルベーション:DI水中に10%のタンパク質粉末を混合し、およびそれぞれ食品等級のHClおよびNaOHを使用して、溶液pHを3.45および8.0に調整することによって、酸性(pH=3.45)WPIおよび塩基性MPC(Nutrilac 7318、Arla Foods Ingredients、ニュージャージー州)溶液を調製した。2つのタンパク質溶液を電子レンジで約90℃の温度に加熱した。両方の加熱された溶液は、外観は透明のままであり、これは、タンパク質は、微細構造の点でおそらく著しく変ってはいなかった可能性を示す。2つの熱溶液を、90℃に到達後直ちに(すなわち、約60秒意以内に)1:1の割合で一緒に混合した。
【0060】
この実験は、2つのアセルベーション機構(ホエータンパク質の熱架橋および2つの異なるタンパク質の間のコアセルベーション)を同時に実施して、テクスチャおよび外観が通常のフレッシュチーズに類似した柔軟で、滑らかで、および凝集性のカードを形成した。2つの異なるおよび逆荷電したタンパク質分子間のコアセルベーションの後援を受けて、ホエータンパク質の熱架橋は、局所的なpHで可能になった。
【0061】
(実施例4)
本実施例は、2つのアセルベーション機構を順次に行うことの、同一のアセルベーション機構を同時に行うことと対比した、種々の影響を例示する。
【0062】
発明の実施例
この実験は、2つのアセルベーション機構(ホエータンパク質の熱架橋および正に荷電したタンパク質および負に荷電した多糖の間のコアセルベーション)を同時に実施して、柔軟で、滑らかで、および凝集性のカードを形成した本発明の実施形態を例示する。ホエータンパク質の酸性溶液を、DI水中10パーセントのホエータンパク質単離物を混合しおよび食品等級のHClを使用してpHを3.45に調整することによって調製した。キサンタンの塩基性溶液を、DI水中0.5パーセントのキサンタン(CP Kelco由来のKeltrol 510)を混合し、および食品等級のNaOHを使用してpHを11.6に調整することによって調製した。
【0063】
2つの逆荷電ポリマー溶液を電子レンジで約90℃の温度に加熱した。酸性のホエータンパク質溶液と混合する際に、塩基性のキサンタン溶液に対して、付加的な5NのNaOHを、約5.5のPHを提供するのに効果的な量で、添加した。両方の加熱された溶液は、外観は透明のままであり、したがって、ポリマーは、熱処理によって微細構造の点で著しく変っていないことを示した。2つの加熱されたポリマー溶液を、熱処理後直ちに、2.5:1のタンパク質単離物溶液対キサンタン溶液の割合で、一緒に混合した。混合物は、約5.7のpHを有するフルボディのカードを形成した。
【0064】
比較例
ホエータンパク質単離物の酸性溶液(pH3.45)およびキサンタンの塩基性溶液(pH11.6)を上述のように調製した。2つの逆荷電溶液を、予め熱処理することなく、室温にて混合した。結果として得られる混合物は、比較的高い流動性のミルク状分散物を形成したが(おそらく、コアセルベーション由来)、しかし、周囲温度で約20分間にわたって保持した後に、カードは形成されなかった。混合物は冷却され、および冷蔵温度で24時間貯蔵後に、カードを形成しなかった。理論によって縛られることを望むものではないが、ホエータンパク質の、相当量のキサンタンとのコアセルベーションは、ホエータンパク質の架橋能力を損なうと考えられる。
【0065】
この実験の結果は、同時アセルベーション機構は、広範囲のポリマーに有効であることを示す。
【0066】
(実施例5)
本実施例は、多重アセルベーション機構を同時に行うことが、アルギン酸塩および乳タンパク質濃縮物をポリマーとして使用する単一のアセルベーション機構(等電沈殿)の生成物と非常に異なる構造化マトリクスをどのようにもたらすかを例示する。
【0067】
本発明の実施例
酸性アルギン酸塩溶液を、DI水を1パーセントのアルギン酸(Kimica Corp.、日本)と混合し、および食品等級のHClを使用してpHを3.0に調整することによって調製した。塩基性乳タンパク質濃縮物溶液を、2、3滴の0.1MのCaCl2溶液を、DI水中10パーセントの乳タンパク質濃縮物(Arla Foods由来のNutrilac)に対して添加し、続いて食品等級NaOHを使用してpHを8.2に調整することによって調製した。2つの溶液を、アルギン酸塩溶液対乳タンパク質濃縮物溶液が3:1の割合で、何ら熱処理することなく室温で、一緒に混合して、4.8の最終pHを提供した。カゼイン塩およびホエータンパク質の等電点pHは、それぞれ約4.6および5.1であり、およびカゼイン塩およびホエータンパク質の両方は、pH4.8で、大いに不溶性になった。CaCl2は混合の際にイオン架橋を引き起こし、一方、乳タンパク質の等電沈殿が同時に起こった。結果として得られる混合物は、シネレシス(ホエー分離)の明らかな証拠を有するカード状テクスチャを有した。
【0068】
比較例
酸性アルギン酸塩溶液および塩基性乳タンパク質濃縮物溶液を、塩基性乳タンパク質溶液にCaCl2を添加しなかったことを除けば、上述のように調製した。2つの溶液を、アルギン酸塩溶液対乳タンパク質濃縮物溶液3:1の割合で、何ら熱処理することなく室温で、一緒に混合して、乳タンパク質の等電沈殿を提供した。イオン架橋は起こらなかった。アルギン酸塩は、両性ポリマーではなく、およびpH3.0で荷電しない。したがって、乳タンパク質およびアルギン酸塩の間のコアセルベーションは、ありそうにないと思われる。結果として得られた混合物は、不透明であり、カード形成することなく、流動性であった。
【0069】
本実施例は、本発明のプロセスは、一般的に、非熱アセルベーション機構の組み合わせに適用できることを示す。
【0070】
(実施例6)
100パーセント ホエータンパク質チーズ
リコッタチーズのような、一般に「ホエーチーズ」と呼ばれる多くのチーズは、実際は、一般に、カゼイン(全乳の形態で>75パーセント)からできており、および単に、(レンネットを使用する代わりに)高温でカードフレークの形成を可能にするために、チーズホエーで補完されるに過ぎない。本実施例は、3つのアセルベーション機構の同時使用を、100パーセントホエータンパク質(カゼインが含まれていない)ハードチーズを調製するために使用することができることを示す。
【0071】
10パーセントのホエータンパク質単離物(BiPro:ミネソタ州、La Sueur、Davisco Foods International, Inc.社由来)溶液を最初に調製し、分配し、およびpH調整して、酸性(pH3.5)および塩基性(pH8.5)のホエータンパク質単離物溶液をそれぞれ提供した。タンパク質濃度に基づいて等量の無水乳脂肪(AMF)を、ホエータンパク質単離物溶液に添加し、および研究用ブレンダー中で約145°Fで均質化して、ホエータンパク質単離物エマルションを形成した。結果として得られるホエータンパク質単離物エマルションを、電子レンジ中で約190から210°Fにまで加熱した。2つの加熱したホエータンパク質単離物エマルションを、容器中で穏やかに(スパチュラを用いて10秒間にわたって)一緒に混合した。約10分間の滞留時間の後、混合物をチーズ布を備えるストレーナーに注ぎ、カード(約64パーセント)をホエー(約36パーセント)から分離した。カードを、さらに、2.5パーセント(カードの重量に基づく)の食卓塩で塩味を付け、および2時間にわたって型に詰め/押圧して、ブロックチーズを形成した。約12時間にわたる冷却の後、結果として得られる100パーセントホエーチーズを、小さな専門家パネルによって評価し、および、カゼインベースのフレッシュ・メキシカン・チーズのものと類似する、許容できる風味、味、テクスチャおよび外観であることを決定した。本実施例において、ホエータンパク質分子は、自己アセルベーション、等電沈殿、および熱架橋を同時に受けると思われた。
【0072】
(実施例7)
増大した高度を有するクリームチーズ
以下の配合および手順に従う同時多重コアセルベーション反応を使用して、チーズカード状の複合体を調製し、および次いで、低脂肪クリームチーズモデルで評価した。
【0073】
溶液「A1」を、DI水中に7パーセントのホエータンパク質単離物(Bipro)を混合し、および88パーセントの乳酸を使用してpH3.5に調整することによって、調製した。溶液A1を、次いで、電子レンジ中で165°Fにまで加熱し、続いて直ちに室温まで冷却した。溶液「A2」を、DI水中に7パーセントのホエータンパク質単離物(Bipro)を混合し、および88パーセントの乳酸を使用してpH3.5に調整し、および次いで195°Fにまで電子レンジ中で加熱することによって、調製した。溶液A2を、190から約195°Fで維持して、溶液を熱く、しかし沸騰せずに、20分間にわたって保ち、その後、周囲温度未満に冷却した。溶液「B1」を、バターミルク固形物(25パーセント)およびカルボキシメチルセルロース(0.16パーセント)を全乳中に混合しおよび6NのNaOHを使用してpH8.5にpH調整をすることによって調製した。溶液「B2」を、バターミルク固形物(25パーセント)およびカラギーナン(0.16パーセント)を全乳中に混合しおよび6NのNaOHを使用してpH8.5にpH調整をすることによって調製した。
【0074】
溶液A1およびA2を、次いで、それぞれ43.7対8.3の割合で一緒に混合して、以下の第3表に示されるような、溶液A混合物を形成した。別個に、溶液B1およびB2を、それぞれ33.3対16.7の割合で一緒に混合して、溶液B混合物を形成した。溶液A混合物の1部および溶液B混合物の一部を、別個に190°Fにまで加熱した。付加的な88パーセントの乳酸をA溶液の熱混合物に添加して、5.1の最終的な複合体のpHを目標とした。熱B溶液混合物を、熱A溶液混合物と、サーモミクス(Thermomix)中で穏やかに混合して、複合体を形成した。複合体を、室温に冷却し、および冷蔵庫に貯蔵し、その後、クリームチーズ調製に使用した。柔軟なクリームチーズカード状複合体が得られた。
【0075】
【表3】

【0076】
次いで、クリームチーズカード状複合体を使用して、以下の第4表に従うクリームチーズ製品を調製した。UFカードを、乳およびクリームの混合物を培養および発酵させおよび次いで限外濾過を使用してカードをホエーから分離することによって、調製した。第4表中の処方に従うUFカード、カード状複合体、クリーム、およびバターミルクを、ライトニング(Lightning)ミキサー(Grafton、ウィスコンシン州)を使用して混合した。pHを、少量の44パーセント乳酸でpH4.9に調整した。混合物を、次いで、サーモミクスミキサー中で140°Fにまで加熱した。混合物を、二段階ホモゲナイザーを使用して5000/5000psiで均質化した。残りの材料を添加し、および混合物を185°Fにまでサーモミクス中で加熱した。温度を、185°Fに少なくとも30分間にわたって保持した。混合物を、次いで、5000/5000psiで均質化し、および試料を8オンスのプラスチック管中に回収した。管を、次いで冷却し、および冷蔵下で貯蔵した。
【0077】
対照のクリームチーズ製品(カード状複合体なし)を、第4表中の処方に従って上述のように調製した。
【0078】
【表4】

【0079】
結果として得られる本発明および対照のクリームチーズ製品は、以下の第5表中に示されるように、同様の水分、脂肪、タンパク質、ラクトース、塩、およびカゼイン/ホエー含有量を有した。
【0080】
【表5】

【0081】
本発明のカード状複合体で製造したクリームチーズ試料は、対照は非常に類似する水分、脂肪、タンパク質、ラクトースおよび塩含有量を有していたにもかかわらず、降伏応力に基づいて20パーセントを上回って、より硬かった。専門家の知覚に関するパネルは、2つのクリームチーズ試料の間の違いを立証した。加えて、ほとんどのパネリストは、本発明の試料は、認識されるクリーミーさを損なうものとして知られているそのより高い硬度にもかかわらず、対照と同等かまたはそれよりもわずかにクリーミーであったことを示した。
【0082】
有利にも、脂肪およびタンパク質含有量は、「ライト」なソフトクリームチーズ中に典型的に見出されるよりも低い(すなわち、1オンスのサービング毎に3.4g未満の脂肪)。本実施例は、本発明のカード状複合体は、培養された風味を必要とすることなしに、クリームチーズ風味を提供するために使用されることができることを示す。本実施例は、さらに、本発明のカード状複合体はクリームチーズ系における優れたテクスチャ・ビルダーであることを示す。
【0083】
(実施例8)
低脂肪クリームチーズ中のテクスチャ・ビルダーおよび脂肪模倣剤としてのカード状複合体
パートI: カード状複合体を、以下の処方および手順に従って調製した。溶液Aを、7パーセントのホエータンパク質単離物(Provon 90: Glanbia Nutritionals由来)をDI水中に溶解しおよび88パーセントの乳酸を使用してpH3.5に酸性化することによって、調製した。溶液Bを、0.16パーセントのカラギーナンおよび25パーセントのバターミルク固形物(3.62%の水分、96.38%の固形物、7.03%の脂肪、33%のタンパク質、50%のラクトース、8%の灰)を全乳(87.4%の水分、3.7%の脂肪、3.5%のタンパク質、4.9%のラクトース、0.7%の灰)中に溶解しおよび6NのNaOHでpHをpH8.5に調整することによって、調製した。付加的な88%の乳酸を必要に応じて溶液Aに添加して、5.1のpHを有する最終的な複合体を目標とした。
【0084】
溶液Aを、サーモミクス(Vorwerk USA社、Longwood、フロリダ州)中で加熱し、および180°Fで維持した。別個に、溶液Bを、170〜180°Fにまで加熱した。熱溶液Bをサーモミクスに添加し、および、穏やかに混合しながら180°Fで2、3分間にわたって維持して、第6表に従う組成を有する複合体を形成した。このようにして形成された複合体は、ソフトクリームチーズカード状の塊であった。複合体は、室温まで冷却され、および冷蔵貯蔵され、その後、クリームチーズの調製に使用された。
【0085】
【表6】

【0086】
カード状の塊は、78.3パーセントの水分、21.7パーセントの固形物、2.75パーセントの脂肪、9.03パーセントのタンパク質(52/48のカゼイン/ホエーの割合を有する)、8.73パーセントのラクトース、および1.35パーセントの灰を含んでいた。
【0087】
パートII: 3バッチのライトなソフトクリームチーズを、以下の第7表に提供される処方に従って調製した。UFカードを、乳およびクリームの混合物を培養および発酵させおよび次いで濃縮もしくは限外濾過を使用して過剰水を除去することによって、調製した。UFカード、上述のように調製されるSMAR複合体、バターミルク、およびホエータンパク質単離物(Bipro 95:Danisco Food International由来)をビーカー中で組み合わせて、およびライトニングミキサー(Grafton、ウィスコンシン州)を使用して混合した。バター脂(主に、クリーム由来)はクリームチーズの非常に機能的な成分であるので、各試料中で使用されるクリームの量は、完成品のクリームチーズ中の全体的な脂肪含有量を調整するために、変動した。各混合物のpHは、44パーセントの乳酸でpH4.9に調整され、およびサーモミクスミキサー中で140°Fにまで加熱された。含水率をチェックし、および次いで、必要に応じて、約71パーセントの目標値にまで調整した。各混合物を5000/5000psiで均質化し、および残りの材料を次いで添加した。各混合物を、次いで、サーモミクスミキサー中で180°Fにまで加熱し、および、水分損失を最小化するためにカバーをかけながら、少なくとも15分間にわたって維持した。混合物を、次いで、ふたたび5000/500psiで均質化し、および8オンスのプラスチック管中に回収した。管を冷却し、冷蔵下で貯蔵した。
【0088】
【表7】

【0089】
同一の全体組成(例えば、脂肪含有量)を有し、およびSMAR複合体による増大するレベルのチーズカードの置換を有するライトなソフトクリームチーズ試料は、より硬く、および一般的によりクリーミーであることが見出された。試料2は、専門家の知覚に関するパネルによって、3つの試料のうち最もクリーミーであるとして確認された。依然として非常にクリーミーと思われているが、試料3(最も高いレベルのカード置換を有する)の比較的に低いクリーミーさは、試料3の顕著に(37パーセントに至るまでの)より高い硬度によって部分的に説明されるかもしれない。SMAR複合体は、例外的なテクスチャ/硬度ビルダーであり、同時に、高水分、低脂肪、低タンパク質のクリームチーズ製品中に高度のクリーミーさを依然として維持することが結論付けられた。
【0090】
(実施例9)
肉タンパク質繊維
機械的に分離された七面鳥(「MST」)を酸性の水(pH3.0)または塩基性の水(pH11)と、1部のMSTおよび4部のpH調整された水の割合で混合して、肉タンパク質を、最大限のタンパク質可溶化および最小限の変性で抽出した。付加的なHClまたはNaOHを必要に応じて定期的に添加して、最初のpHを最大限の抽出効率のために約20分間にわたって維持した。各pH調整された混合物を、次いで、3,000rpmで30分間にわたって遠心分離し、および脂肪および沈殿物の両方を除去して、酸性および塩基性のタンパク質に富む溶液を得た。酸性および塩基性のタンパク質に富む溶液を、次いで、1:1の割合で一緒に混合し、およびpH調整して、約5.5の最終的な平衡pHを有する混合物を形成し、そこで、両方の溶液からのタンパク質は、篩上に捕捉される構造のない微粉に等電沈殿した。
【0091】
酸性および塩基性タンパク質溶液の両方を、最初に190°Fにまで30分間にわたって加熱し、その後190°Fで一緒に混合したこと以外は、同一の実験を繰り返した。混合の際、等電沈殿および熱架橋の両方が同時に起こって、予想外に大きく、粗く、繊維質の構造を有する不溶性タンパク質の塊を生成した。
【0092】
(実施例10)
改善された保水力を有する七面鳥のひき肉
本実施例は、高容量、高水分の再構造化された七面鳥の肉を作り出すための、同時アセルベーション反応の使用を示す。七面鳥のひき肉のエマルション(「エマルションA」)を、赤身の七面鳥のひき肉の1部をDI水の2部とブレンドすることによって調製した。エマルションの1部を、エマルションA1およびA2に分配した。七面鳥エマルションA1の1部を、5NのHClでpH3.0に調整した。エマルションA2の1部を、5NのNaOHでpH11.0に調整した。3組の実験を実施して、同時反応の重要性を示した。
【0093】
第1の実験(以後、「対照1」)において、エマルションAを180°Fにまで2分間にわたって加熱した。対照1は、七面鳥エマルションの慣用的な熱変性を示した。
【0094】
第2の実験(以後、「対照2」)において、エマルションA1およびエマルションA2の等量を、室温で混合し、および次いで、180°Fにまで2分間にわたって加熱した。対照2は、順次に行われる七面鳥タンパク質のコアセルベーションおよび熱変性を示す。
【0095】
第3の実験(以後、「本発明」)において、エマルションA1およびエマルションA2の等量を、別個に180°Fにまで加熱し、および次いで一緒に混合し、および2分間にわたって保持した。本実験は、同時に行われる2つの反応−コアセルベーションおよび熱変性−を示した。
【0096】
全ての実験は、6.37±0.07の最終pHをもたらした。US18篩の上部に保持される肉の重量パーセントを、次いで測定した。結果を、下記第8表中に要約する。本発明の同時反応から製造された試料は、熱変性(対照1)および順次に行われたコアセルベーションおよび熱変性(対照2)から製造されたものと比較して、はるかに高い排水重量を有した。以下の第8表中に提供されるように、対照1、対照2、および本発明の試料に関する排水重量のパーセンテージは、それぞれ、41.1パーセント、36.4パーセント、および50.1パーセントであった。本発明の試料は、対照1に比べて18パーセントの改善、および対照2に比べて約27パーセントの改善を示した。
【0097】
【表8】

【0098】
上述の詳細な説明を考慮した上で、本明細書中に記載したプロセスの実際上の数々の変更および変動が起こることは当業者にとって予期される。したがって、そのような変更および変動は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の食品ポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液を調製する工程であって、前記1つまたは複数の食品ポリマーは少なくとも2つのアセルベーション機構を受けることができ、および条件は、前記少なくとも2つのアセルベーション機構が活性化工程より前に活性化されないようなものである工程;
1つまたは複数の食品ポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液を処理して、少なくとも2つのアセルベーション機構を同時に活性化させる工程;および
少なくとも2つの活性化されたアセルベーション機構を、構造化ポリマーマトリクスが得られるまで進行させる工程
を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成するための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの水溶液は、タンパク質、多糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの食品ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの水溶液は、食品タンパク質およびアニオン性多糖を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つのアセルベーション機構は、重合、熱架橋、コアセルベーション、化学的複合化、等電沈殿、イオン沈殿、溶媒沈殿、ゲル化、および変性からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つのアセルベーション機構は、熱架橋およびコアセルベーションを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2以上の水性ポリマー溶液を調製する工程であって、各溶液は1つまたは複数の食用ポリマーを含み、各溶液中の前記1つまたは複数の食用ポリマーは、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることが可能であり、および各溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーション機構が各溶液中で活性化されないようなものである工程;および
2以上の水性ポリマー溶液を組み合わせて、それによって2以上のアセルベーション機構が同時に起こる条件を提供する工程
を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成するための方法。
【請求項7】
2以上のポリマー溶液のそれぞれは、タンパク質、多糖、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの食品ポリマーを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのポリマー溶液は、乳、チーズホエー、卵、および肉スラリーからなる群からの食品材料を使用して調製されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのポリマー溶液は食品タンパク質を含み、および少なくとも1つのポリマー溶液はアニオン性多糖を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのポリマー溶液は、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム、ジェラン、寒天、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性多糖を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2以上のアセルベーション機構は、重合、熱架橋、イオン架橋、コアセルベーション、化学的複合化、等電沈殿、イオン沈殿、イオン架橋、溶媒沈殿、ゲル化、および変性からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
2以上のアセルベーション機構は、コアセルベーションおよび熱架橋、等電沈殿およびイオン沈殿、イオン架橋およびイオン沈殿、コアセルベーションおよび熱変性、および等電沈殿および熱架橋からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項13】
2以上のアセルベーション機構はコアセルベーションおよび熱変性を含み、および2以上のポリマー溶液は肉スラリーを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
2以上のアセルベーション機構は等電沈殿および熱架橋を含み、および2以上のポリマー溶液は肉スラリーを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
2以上のアセルベーション機構はコアセルベーションおよび熱架橋を含み、および2以上のポリマー溶液の少なくとも1つはホエータンパク質を含み、および2以上のポリマー溶液の少なくとも1つは、カラギーナン、乳タンパク質濃縮物、キサンタン、ペクチン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム、ジェラン、寒天、およびそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
2以上のアセルベーション機構はイオン架橋およびイオン沈殿を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つはアルギン酸塩を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つは乳タンパク質を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
約2から約5のpHおよび少なくとも約160°Fの温度を有する正に荷電した水溶液を調製する工程であって、前記溶液は、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、前記溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
約8から約11のpHおよび少なくとも約160°Fの温度を有する負に荷電した第2水溶液を調製する工程であって、前記溶液は、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、前記溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーションが活性化されないようなものである工程;および
前記2つの加熱されたポリマー溶液を組み合わせて、それによって2以上のアセルベーション機構が同時に起こる条件を提供する工程
を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成する方法。
【請求項18】
第1および第2ポリマー溶液のそれぞれは、タンパク質および多糖からなる群から選択される少なくとも1つの食品ポリマーを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのポリマー溶液は、乳、チーズホエー、卵、および肉スラリーからなる群からの食品材料を使用して調製されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
2以上のアセルベーション機構はコアセルベーションおよび熱架橋を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つはホエータンパク質を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つは、乳タンパク質濃縮物、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム、ジェラン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
2以上のアセルベーション機構は、コアセルベーションおよび熱架橋、等電沈殿およびイオン沈殿、イオン架橋およびイオン沈殿、コアセルベーションおよび熱変性、および等電沈殿および熱架橋からなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
2以上のアセルベーション機構はコアセルベーションおよび熱変性を含み、および2以上のポリマー溶液は肉スラリーを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
2以上のアセルベーション機構は等電沈殿および熱架橋を含み、および2以上のポリマー溶液は肉スラリーを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
2以上のアセルベーション機構はコアセルベーションおよび熱架橋を含み、および2以上のポリマー溶液の少なくとも1つはホエータンパク質を含み、および2以上のポリマー溶液の少なくとも1つは、カラギーナン、乳タンパク質濃縮物、キサンタン、ペクチン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、カラヤゴム、ガッティゴム、ジェラン、寒天およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
2以上のアセルベーション機構はイオン架橋およびイオン沈殿を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つはアルギン酸塩を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つは乳タンパク質濃縮物を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
第1および第2ポリマー溶液は同一のポリマーを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項27】
約2から約5のpHを有する正に荷電した第1水性ポリマー含有溶液を調製する工程であって、前記溶液は、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、前記pHは、前記ポリマーの等電pH未満であり、および前記溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
約8から約11のpHを有する負に荷電した第2水性ポリマー含有溶液を調製する工程であって、前記溶液は、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、および前記溶液中の条件は、少なくとも1つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
第1ポリマー溶液を、第1ポリマーが架橋を形成するであろう温度よりも高いかまたはそれと等しい温度にまで、第1ポリマーの等電点よりも約1pH単位未満低いpHで、加熱する工程;
第2ポリマー溶液を、第1ポリマー溶液の温度よりも高いかまたはそれと等しい温度にまで加熱する工程;および
前記2つの加熱されたポリマー溶液を組み合わせて、コアセルベーションおよび熱架橋機構が同時に起こるように、混合の際の最終pHを提供する工程
を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成する方法。
【請求項28】
第1ポリマーはホエータンパク質であり、および第2ポリマーは、カラギーナン、乳タンパク質濃縮物、キサンタン、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質単離物、およびアルギン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
約2から約4のpHを有する正に荷電した第1水性ポリマー溶液を調製する工程であって、前記溶液は少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、および前記溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
約8から約10のpHを有する負に荷電した第2水性ポリマー溶液を調製する工程であって、前記溶液は、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができる少なくとも1つの食品ポリマーを含み、および前記溶液中の条件は、前記少なくとも1つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
多価無機カチオンを、前記第1および第2ポリマー溶液に添加する工程;
前記第1および第2ポリマー溶液を少なくとも約160°Fの温度に加熱する工程;および
前記2つの加熱されたポリマー溶液を組み合わせて、同時の等電沈殿がイオン沈殿と同時に起こるように、最終pHを提供する工程
を含むことを特徴とする構造化ポリマーマトリクスを生成する方法。
【請求項30】
第1ポリマーは、ホエータンパク質濃縮物およびホエータンパク質単離物からなる群から選択され、および第2ポリマーはカラギーナン、キサンタン、およびアルギン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1つまたは複数の食品ポリマーを含有する少なくとも1つの水溶液を調製する工程であって、前記1つまたは複数の食品ポリマーは、少なくとも2つのアセルベーション機構を受けることができ、および条件は、前記少なくとも2つのアセルベーション機構が活性化されないようなものである工程;
前記少なくとも1つの水溶液を処理して、前記少なくとも2つのアセルベーション機構を同時に活性化させる工程;および
前記少なくとも2つの活性化されたアセルベーション機構を、構造化ポリマーが得られるまで進行させる工程
を含む方法によって形成されることを特徴とする構造化ポリマー複合体。
【請求項32】
2以上のポリマー溶液のそれぞれは、タンパク質、多糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの食品ポリマーを含むことを特徴とする請求項31に記載の構造化ポリマー複合体。
【請求項33】
ポリマー溶液の少なくとも1つは食品タンパク質を含み、およびポリマー溶液の少なくとも1つはアニオン性多糖を含むことを特徴とする請求項31に記載の構造化ポリマー複合体。
【請求項34】
2以上のアセルベーション機構は、重合、熱架橋、コアセルベーション、等電沈殿、イオン沈殿、溶媒沈殿、ゲル化、および変性からなる群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の構造化ポリマー複合体。
【請求項35】
2以上の水性ポリマー溶液を調製する工程であって、各溶液は、1つまたは複数の食用ポリマーを含み、各溶液中の前記1つまたは複数の食用ポリマーは、少なくとも1つのアセルベーション機構を受けることができ、および各溶液中の条件は、少なくとも1つのアセルベーション機構が各溶液中で活性化されないようなものである工程;および
前記2以上の水性ポリマー溶液を組み合わせて、それによって2以上のアセルベーション機構が同時に起こる条件を提供する工程
を含む方法によって形成されることを特徴とする構造化ポリマー複合体。
【請求項36】
請求項31または35に記載の構造化ポリマー複合体を含むことを特徴とする食品製品。
【請求項37】
食品製品は、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、チーズ状製品、肉製品または類似物、大豆製品、ソース、ドレッシング、デザート、菓子およびパンの詰め物からなる群から選択されることを特徴とする請求項36に記載の食品製品。

【公開番号】特開2010−29188(P2010−29188A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−175641(P2009−175641)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】