同期モータを作動させる方法および増幅器
本発明は、同期モータ(100、300)を作動させる方法に関する。本方法では、ステップa)において、第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに生成して、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で所定値(151)に限定された相対運動を発生させ、ステップb)において、この第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向を決定する。第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、ステップa)およびステップb)を繰り返し、ステップa)が行われるごとに、先に生成された上記磁場(111、311)に対して変化した向きを有する磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって生成し、ここで、磁場(111、311)の向きを、それぞれ所定の配向セクション(170)によって、および、上記の決定された運動方向に応じて変化させる。本発明は、さらに、同期モータ(100、300)を作動させるための増幅器(200)、および、増幅器(200)と同期モータ(100、300)とを備えたシステムにも関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材および第2のモータ部材を備えた同期モータを作動させる方法に関する。本発明は、さらに、このような同期モータを作動させるための増幅器、および、増幅器と同期モータとを備えたシステムにも関する。
【0002】
互いに対して相対的に運動できるように構成された第1のモータ部材と第2のモータ部材とを備えた同期モータは、各種実施形態において知られている。回転式の実施形態では、該モータ部材のうちの一方が、例えば、もう一方のモータ部材に対して回転する。リニア駆動またはリニアモータと称される各モータ中では、それぞれ、第1のモータ部材または第2のモータ部材が、リニア運動(並進運動)で互いに対して位置を変える。
【0003】
これらすべての各種実施形態において、運動の開始は磁場の相互作用に基づく。これを前提とすると、回転運動をする磁場または並進運動をする磁場(回転磁場または進行磁場)が、第1のモータ部材を用いて複数の電磁石(通電している導体またはコイル)によって生成される。第2のモータ部材は、静磁場が第2のモータ部材に対して供給されるように、1つ以上の永久磁石を備えている。第1のモータ部材の磁場は、第2のモータ部材の上記静磁場と相互作用し、その結果、第1のモータ部材および第2のモータ部材は互いに対して相対的に運動する。
【0004】
運動する磁場を生成するために、上記第1のモータ部材の複数の電磁石は、適時に相互に入れ替わるように駆動される、または、電流を供給される。電流が1つの電磁石から次の電磁石へこのように転送されることを、転流とも称する。同期モータを効果的に作動させるためには、第2のモータ部材の磁場に対して、転流のタイミングを調停することが求められる。
【0005】
機械的転流の場合には、複数の摺動式接触部(通常はブラシ形状である)が所定の配置で使用され、その結果、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動中に、電流が該配置に応じて切り替えられる。このようにすれば、比較的無視できる程度の回路規模で転流を実現することができる。ただし、動作中のブラシの磨耗またはブラシの損失、さらに、例えば激しいスパークの発生などの望ましくない影響は好ましくない。したがって、現在の同期モータは、通常、電子式転流によって動作する。この目的を達成するために、サーボ増幅器とも称される電子制御デバイスがモータに対して設けられ、磨耗を生じないでスムーズにモータを動作させるために必要な回転磁場が生成できるようになる。
【0006】
ただし、第1のモータ部材によって生成される回転磁場を、電子式転流の枠組みの中で、第2のモータ部材の静磁場に揃えるためには、空間内における第1のモータ部材および第2のモータ部材の相対的な位置関係が分かっていなければならない。これは、トルクを最大限に利用できる効果的な動作モードを可能にするために、同期モータの動作開始時に特に重要である。その結果、エンコーダまたはエンコーディングシステムとも称される、位置を決定する複数のデバイスが使用される。これらのデバイスは、モータ部材の位置を一義的に決定することを可能にするために、アブソリュートエンコーダと称されるエンコーダとして構成されてもよい。ただし、このようなアブソリュートエンコーダを使用すると比較的高いコストがともなうことは好ましくない。
【0007】
独国特許出願公開第10 2004 012 805 A1号明細書には、永久磁石を備えた電気モータの回転子の角位置(向き)を決定する方法が記載されている。この方法では、所定のパルスパターンしたがって、電流パルスを電気モータの固定子の巻き線(電磁石)に印加し、こうすることによって発生する回転子の角加速度を加速度センサを用いて測定し、求めたい回転子の位置をこれらのデータに基づいて算出することが提案されている。
【0008】
欧州特許出願公開第0 784 378 A2には、同期している機械の絶対的な回転子の位置を決定する方法が記載されている。該方法によれば、固定子の電磁石によって磁場を生成し、こうすることによって発生する永久的に励磁されている回転子の回転運動を検出し、固定子の磁場の向きを、回転子の回転運動が停止するまで制御方法の枠組みの中で変化させる、または、回転させる。この状態では、回転子および固定子の磁場の各向きまたは各角位置は一致し、したがって、求めたい回転子の位置が決定される。
【0009】
R. Schoenfeld, W. Hofmann著、“Elektrische Antriebe und Bewegungssteuerungen”、309頁〜310頁、VDE(出版社),2005年には、電気モータの初期角の位置を決定する方法が開示されている。1つの方法によれば、磁場を印加して、永久的に励磁されている回転子を磁場に揃える。
【0010】
独国特許出願公開第44 07 390 A1号明細書には、同期している機械の初期相および転流を実現するための方法が記載されている。この方法では、固定子の各巻き線に複数相の電流を印加することによって、回転子を試験的に励起することが提案されている。また、こうすることによって達成される最大トルクが決定される。最大トルクに関連する固定子電流の位相は、同期モータの初期動作のための転流角として使用される。
【0011】
本発明の目的は、同期モータの第1のモータ部材および第2のモータ部材、または、同期モータの磁場を、同期モータの動作開始の枠組みの中で比較的単純な様態で相対的に調節する、同期モータを作動させるためのより良い方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、同期モータを作動させるためのより良い増幅器、および、該増幅器と同期モータとを備えたシステムを提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項9に記載の増幅器、および請求項15に記載のシステムによって達成される。本発明のその他の好適な実施形態は、従属項に記載する。
【0013】
本発明によれば、互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材と第2のモータ部材とを備えた同期モータを作動させる方法が提案される。第1のモータ部材によって磁場が発生する。第2のモータ部材は第2のモータ部材に対して静止している静磁場を有する。第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場の向きに違いが発生すれば、第1のモータ部材および第2のモータ部材は互いに対して相対的に運動する。提案する本方法では、ステップa)において、第1のモータ部材によって磁場を所定の向きに生成して、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で所定値に限定された相対運動を発生させる。ステップb)では、この第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向を決定する。第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、ステップa)およびステップb)を繰り返す。これを前提として、ステップa)が行われるごとに、先に生成された上記磁場に対して変化した向きを有する磁場を第1のモータ部材によって生成し、磁場の向きを、それぞれ所定の配向セクションによって、および、上記の決定された運動方向に応じて変化させる。
【0014】
本発明に係る方法は、回転同期モータおよびリニア同期モータに対して適用してもかまわない。本方法によって、第1のモータ部材の磁場は第2のモータ部材の磁場の方向に徐々に揃えられる。磁場の相互作用が原因となってこのように発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動は所定値に限定される、その結果、あるモータ部材を全体的に比較的小さく運動させるだけで、本方法を実施することができる。第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動の運動方向を決定するために、比較的単純なエンコーダ(特に増分エンコーダ)を使用してもよく、こうすることによって本方法は低コストで実施することができる。
【0015】
第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動の運動方向が反転すると、直ちに、その時点における空間内における第1のモータ部材および第2のモータ部材の位置関係において、第2のモータ部材の磁場と第1のモータ部材によって最後に生成される磁場との間の向きの違いの方が、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の間の向きの違いより小さいという状態に達する。換言すれば、第2のモータ部材の磁場の向きは、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の向きの「間」に存在する。第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とは、このように、互いに対して「大雑把」に調節すればよい。
【0016】
ある実施形態では、第1のモータ部材は静止しており、第2のモータ部材は第1のモータ部材に対して可動である。本実施形態は、特に、第1のモータ部材が固定子として構成され、第2のモータ部材が回転子として構成された回転同期モータを対象としている。これを前提として、第1のモータ部材によって生成される磁場の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された(第2のモータ部材の)運動方向とは反対の方向に変化させる。
【0017】
別の実施形態では、第2のモータ部材は静止しているが、第1のモータ部材は第2のモータ部材に対して可動である。本実施形態は、特に、第1のモータ部材が摺動可能な一次部材として構成され、第2のモータ部材が静止している二次部材として構成されたリニア同期モータを対象としている。これを前提として、第1のモータ部材によって生成される磁場の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された(第1のモータ部材の)運動方向に対応する方向に変化させる。
【0018】
第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを「大雑把」に調節が済むと、各磁場は、さらに、「精密に」調節、または、互いに対して一致させられる。この状態から始めて、同期モータは実際の動作状態に入って、回転運動または並進運動を実行してもよい。さらに別の実施形態を用いて、各磁場の精密な調節を行ってもよい。
【0019】
好適な実施形態では、ステップa)およびステップb)を繰り返して運動方向の変化、または、反転を決定した後に、別の磁場を第1のモータ部材によって生成し、この別の磁場の向きを、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の向きの中間になるように選び、上記別の磁場の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させる。この過程によって、第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを比較的単純な様態で一致させる機会が与えられる。こうすることによって発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動は、最大で、第1のモータ部材によって最後に生成される各磁場の向きの間の、それぞれ距離(並進運動)の半分または角度範囲(回転運動)の半分に相当する。こうすることによって、いわゆる「揺動(rocking)」は第1のモータ部材と第2のモータ部材との間では発生しないので、この方法は応用範囲が広く、特に、低い吸収または粘着摩擦を有する同期モータに適している。例えば、空気ベアリングを用いる無鉄(ironless)リニア駆動がこのカテゴリーに属する。この方法は、比較的高い吸収を有する同期モータの場合でも、好適であると考えられる。
【0020】
別の実施形態では、ステップa)およびステップb)を繰り返して運動方向の変化を決定した後に、別の磁場を第1のモータ部材によって最後の向きから始めて生成し、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動を決定し、上記別の磁場の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させ、上記別の磁場の向きを、それぞれ、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動が停止するまで変化させる、または、最低限の相対運動が発生するまで変化させる。したがって、この過程によって、比較的小さな相対運動をともなうだけで、第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを一致させることができるようになる。
【0021】
別の好適な実施形態では、ステップa)が、上記磁場の強度をゼロから増加させることを含む。さらに、上記ステップa)において発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動を、好ましくは第1のモータ部材によって生成される磁場をスイッチオフすることによって、相対運動の所定値を通った後に終了させる。
【0022】
さらに別の好適な実施形態では、第1のモータ部材によって磁場を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で相対運動が一切生成されない場合、もう1つの向きを前もって決定し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施する。このように運動が一切発生しないという状況は、例えば、第1のモータ部材の磁場が、第2のモータ部材の磁場の向きに対して180°ずれた向きを有するように生成されると仮定すれば、回転同期モータにおいて生じる。第1のモータ部材の磁場を第2のモータ部材の磁場と同じ向きを有するように生成することも可能である。これらの2つの場合は区別することができないので、別の向きを有する第1のモータ部材の磁場を生成することを提案する。回転同期モータにおいて、この別の向きは、例えば先の向きに対して90°回転した向きになるように選ばれる。
【0023】
本発明によれば、同期モータを作動させるための増幅器をさらに提案する。この同期モータは、第1のモータ部材と、第2のモータ部材と、エンコーダとを備えている。第1のモータ部材によって、磁場が生成される。この第2のモータ部材は第2のモータ部材に対して静止している静磁場を有する。第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場の向きに違いがある場合、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で、該エンコーダによって決定することができる相対運動が発生する。本発明に係る増幅器はパワーユニットと制御ユニットとを備えている。このパワーユニットは、磁場を複数の向きに生成するために、第1のモータ部材に電流を供給するように構成される。該増幅器の制御ユニットは、パワーユニットを制御し、エンコーダによって決定された相対運動を評価するように構成される。制御ユニットは、ステップa)において、同期モータの動作開始の枠組みの中で、第1のモータ部材による、磁場の所定の向きの生成を開始して、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で所定値に限定された相対運動を発生させ、ステップb)において、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向をエンコーダによって決定し、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、2つのステップa)およびステップb)を繰り返すようにさらに構成される。これを前提とすると、上記制御ユニットは、上記一連のステップが行われるごとに、ステップa)において、先に生成された上記磁場に対して変化した向きを有する磁場の、第1のモータ部材による生成を開始し、ここで、上記磁場の向きを、それぞれ所定の配向セクションによって、および、エンコーダによって決定された運動方向に応じて変化させる。
【0024】
本発明に係る増幅器を回転同期モータに対して用いてもよく、同様にリニア同期モータに対して用いてもよい。先述の方法に対応して、本増幅器によって、あるモータ部材を全体的に比較的小さく運動させるだけで、第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場を「大雑把」に調節できるようになる。次に、これらの各磁場を増幅器によって一致させればよい。このような増幅器と同期モータとを備えた独創的なシステムは、同じ効果を奏する。
【0025】
以下の記載では、添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、回転同期モータとサーボ増幅器とを備えたシステムの概略図である。
【0027】
図2は、3つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【0028】
図3は、1つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【0029】
図4A〜図4Cは、同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0030】
図5は、同期モータを大雑把に調節する際の、回転子運動、および、磁束ベクトルの目標値の選択の一例を示す図である。
【0031】
図6は、磁場を精密に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0032】
図7は、磁場を精密に調節するための別の動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0033】
図8A〜図8Cは、磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【0034】
図1は、回転同期モータ100と、この同期モータ100を制御するために該同期モータ100に接続された増幅器200とを備えたシステムの概略図を示している。サーボモータとも称される同期モータ100は、動かない固定子110と、固定子110内において回転可能であるように構成された回転子120とを備えている。回転子120には1つ以上の永久磁石が設けられ、こうすることによって、回転子120は一定の磁場または静磁場を有する。これと対比すると、固定子110は、図1に3つのコイルで示されている複数の電磁石を備えている。タイムリーに変位を発生させながらこれらの電磁石を駆動することによって、回転子120の静磁場と相互作用する回転磁場を生成することができるようになり、こうすることによって、回転子120は回転運動を行う。
【0035】
増幅器200は、サーボ増幅器とも称され、制御ユニット210、パワーユニット220、および、位置検出ユニット(回転カウンター)230を備えている。位置検出ユニット230を、制御ユニット210の集積部品として構成してもかまわない(図1では集積していない)。固定子110には、例えば、パワーユニット220を介して回転磁場を生成するために、電流または回転電流を供給すればよい。これを前提とすると、固定子110の電磁石には、互いに対して位相差を有する回転電流が供給される。ここで、パワーユニット220は制御ユニット210によって制御される。
【0036】
位置検出ユニット230は、パワーユニット220を制御するために、回転子120の位置における相対的変化を検出し、検出結果を制御ユニット210に供給するように作用する。この目的を達成するために、増幅器200の位置検出ユニット230は、同期モータ100に関連する増分エンコーダ130に接続されている。エンコーダ130は、対応するインパルス、または、回転子120の回転運動中に発生する信号を位置検出ユニット230へ転送するように構成される。このインパルスを利用して、位置検出ユニット230は、回転子120の回転方向および相対運動を決定すればよい。これを前提とすると、エンコーダ130は、回転子120の回転運動を機械的、視覚的、または、電磁気的な様態で決定すればよい。
【0037】
図2は、概略図において、それぞれ、同期モータ100と、同期モータ100の動作中に発生する固定子110および回転子120の各磁場とを示している。固定子110によって電気的に生成される磁場を、矢印またはベクトル111(以下の記載では固定子磁束ベクトル111と称する)で示す。回転子120の磁場は、矢印またはベクトル121(以下の記載では回転子磁束ベクトル121と称する)で示す。固定子110および回転子120の各磁場の向きが互いに異なる場合、つまり、固定子磁束ベクトル111の向きと回転子磁束ベクトル121の向きとが互いに異なる場合には、回転子磁束ベクトル121が固定子磁束ベクトル111の方向に回転し、したがって、回転子120が同様に回転する。したがって、同期モータ100の動作中に固定子磁束ベクトル111を(連続的に)回転させることによって、回転子120の回転運動が発生する。
【0038】
図2には、6つの磁極を有する同期モータ100の一実施形態を示してある。これを前提とすると、固定子110は、それぞれが磁極対として組み合わされる、固定子磁束ベクトル111を生成するための6つの磁極141、142、143を備えている。これを前提とすると、各磁極対は、例えば3つのコイル(コイルトリプレット)によって構成されればよい。磁極対の個数が3つであるこのような一実施形態では、交流電流を固定子110に経時的に印加(これは「電気的」回転とも称される)すると、この電気的回転の1/3に相当する固定子磁束ベクトル111の「機械的」回転が起こる。したがって、図2に示すように、1周期に1回転の電気的回転(360°)が起こると、120°に相当する機械的回転140が起こる。
【0039】
以下の記載については、図3に概略的に示すように、1つの磁極対141だけを有する同期モータ100の実施形態を基本形態とする。このような場合には、電気的な1回転が、固定子磁束ベクトル111の機械的な1回転140に対応し、あとの考察が容易になる。ただし、以下の記載は、磁極対の個数が異なる同期モータ100にも当てはまる。一例として、6つの磁極を有する実施形態を図2に示す。
【0040】
図1に示すシステムでは、同期モータ100に関連するエンコーダ130は安価な増分エンコーダで構成される。この増分エンコーダによって回転子120の回転運動を検出することはできるが、絶対的な位置を検出することはできない。この理由によって、同期モータ100の動作開始時には、回転子120の位置は未知であり、したがって、静磁場の向きまたは回転子磁束ベクトル121の向きも未知である。その結果、回転電流を固定子110に印加することによって回転する固定子磁束ベクトル111を生成して、回転子120の回転運動をこのような確定していない位置において開始しようとすると、例えば、トルクの低下、断続的な回転子運動、制御プロセスの不具合、同期モータ100の破損、同期モータ100に接続されたデバイスの破損などの望ましくない結果が生じることがあり得る。このような悪影響を回避するために、第1の段階では、固定子110および回転子120の各磁場を相対的に大雑把に調節する。この大雑把な調節は、回転子120を全体的に比較的小さく運動させることによって実施する。第2の段階では精密な調節を実施し、例えばこの状態から始めて、同期モータ100を、回転子120が(連続的に)回転運動を行う実際の動作状態にすればよい。
【0041】
図4A〜図4Cは、各磁場または固定子110および回転子120の各ベクトル111、121の大雑把な調節を示す。これを前提とすると、制御ユニット210は、パワーユニット220に対して、固定子磁束ベクトル111を1つ目の向きに「立ち上げる」、つまり、各磁場の1つ目の向きの強度を、ゼロから始めて所定値に達するまで増加させる(図4A)。この1つ目の向きは、例えば制御ユニット210によって任意に選ばれた向きであっても、所定の向きであってもよい。
【0042】
一般に、固定子磁束ベクトル111の1つ目の向きは、図4Aに示すように、回転子磁束ベクトル121の向きとは異なり、その結果、回転子磁束ベクトル121は、磁気力が増加することによって固定子磁束ベクトル111の方向に引き付けられ、したがって、回転子120も同様に引き付けられる。回転子120の回転運動は、エンコーダ130および位置検出ユニット230によって決定され、こうすることによって決定された回転方向が制御ユニット210に供給される。
【0043】
回転子120において発生する回転運動は、エンコーダ130および位置検出ユニット230によって回転子運動の回転方向を決定するために十分な、最小の角度値(例えば0.5°)に限定されている。これは、例えば制御ユニット210が、回転子120の回転方向に関する情報を受信すると直ちに、パワーユニット220に対して固定子磁束ベクトル111をスイッチオフさせることによって実施されればよい。
【0044】
次に、制御ユニット210は、図4Bに示すように、パワーユニット220に対して固定子磁束ベクトル111を再度立ち上げさせる。ただし、今回の固定子磁束ベクトル111の向きは、1つ目の向きに対して角度シフト170(図4C参照)だけ変化している。角度シフト170は例えば22.5°である。ここで、固定子磁束ベクトル111の(新しい)向きは、固定子磁束ベクトル111の向きが回転子磁束ベクトル121により近くなるように変えるために、先に決定した回転子120の回転方向に応じて変えられる。この場合、固定子磁束ベクトル111を生成する固定子110は静止しており、回転子磁束ベクトル121を有する回転子120は回転するので、固定子磁束ベクトル111の向きは、先に決定した回転子120の回転方向とは反対の方向に変化する。
【0045】
固定子磁束ベクトル111を再度立ち上げることと関連して、図4Bに示すように、最小の角度値に抑制される回転子120の回転運動の回転方向がエンコーダ130および位置検出ユニット230によって再度決定されて、制御ユニット210に供給される。この場合の回転方向は、先に図4Aに示す向きに生成された固定子磁束ベクトル111の場合と同じである。
【0046】
増幅器200または制御ユニット210は、図4Cに示すように、固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121を「追い抜」き、その結果、回転子120の回転方向が反転するまで、(角度シフト170だけそれぞれ変化する向きを有する)固定子磁束ベクトル111を生成し、回転子120の限定された回転運動の回転方向を決定するこれらのステップを連続して繰り返すように構成されている。図4A〜4Cに示す一例としての順序では、図4Aの「初期状態」から始まって、上記の状態か固定子磁束ベクトル111の3つ目の向きにおいてすでに達成されている。この状態で、固定子磁束ベクトル111および回転子磁束ベクトル121は、互いに対して大雑把に調節される(またはこれら両ベクトルの向きが互いに対して大雑把に調節される)。なぜならば回転子120の限定された回転運動を通過(終了)した後に、固定子磁束ベクトル111がスイッチオフされるからである。これを前提とすると、回転子磁束ベクトル121は、最後に立ち上げられた2つの固定子磁束ベクトル111によって供給される、角度セクタまたは角度シフト170内にある。
【0047】
図4A〜4Cを参照しながら記載した大雑把な調節についてさらに説明するために、図5には、回転子120の回転運動(線150で示す)、および、制御ユニット210において生成される固定子磁束ベクトル111の強度の目標値の事前選択(線160で示す)を時間(単位はms)に対して描いた一例としての図を示す。目標値の事前選択160によれば、固定子磁束ベクトル111は、選択されたそれぞれの向きについて、時間162の期間にゼロから直線的に立ち上げられて事前選択値161に達し、続いてこの事前選択値161で維持される。時間162の長さは例えば100msであり、事前選択値161は例えば固定子磁束ベクトル111の供給される最大強度の50%である。
【0048】
固定子磁束ベクトル111を立ち上げることによって、回転子120は対応する回転運動150を行う。上述のように、回転子120の回転運動150は、例えば大きさが0.5°である回転角151に限定されている。これは、制御ユニット210によって開始された固定子磁束ベクトル111をスイッチオフすることによって実施される。ただし、図5に示すように、目標値の事前選択160は、制御ユニット210におけるこのプロセスの期間中継続してもよい。
【0049】
回転角150を通過した後、または、回転角151を通過したことによって可能になったことにしたがって運動を決定した後、これに続いて、固定子磁束ベクトル111が異なる向きに再度立ち上げられて、回転子120が限定された回転角151だけ再度回転するまで、時間152(例えば150ms)だけ待つ。時間152だけ待つ過程は、例えば、回転運動によって振動するシステムまたは同期モータ100が静止できるようにするために設けられる。固定子磁束ベクトル111を連続して立ち上げて、発生するおよそ回転角151の回転子運動を決定するこのプロセスは、回転子120の回転方向が反転するまで、それぞれ繰り返される(図5に点線で描いた円で示す領域Pを参照)。
【0050】
図5では、回転角151を通過する間は、回転運動150を一定の傾きで示している。ただし、実際の動作では、この傾きは、回転角151に応じて変化してもよく、または、固定子磁束ベクトル111と回転子磁束ベクトル121との間の引きつけ合う相互作用の強度が各ベクトル111、121の「近似」の進行にともなって減少するので、減少してもよい。このようにして、回転子120の運動は、図5に示す範囲を超えて、さらに目標値の事前選択160の「ステップ」へと続いていってもよい。
【0051】
固定子110および回転子120の各磁場、または、関連するベクトル111、121の大雑把な調節に続いて、該磁場をさらに互いに対して精密に調節しても、または、一致させても、つまり同一位相にさせてもよい。この状態から始めて、同期モータ100はふさわしい動作状態に入り、固定子磁束ベクトル111(回転磁場)を回転させることによって、回転子120の回転運動を発生させてもよい。精密な調節には別の実施形態を使用してもかまわない。
【0052】
精密な調節を実施できる一過程を、図6に概略的に示す。このプロセスにおいて、制御ユニット210は、パワーユニット220に対して再度固定子磁束ベクトル111を、最後に生成される2つの固定子磁束ベクトル111の向きの中間になるように選ばれる向きに生成させる、または、立ち上げさせる。この(一定の)向きでは、固定子磁束ベクトル111の強度が、ゼロから指定値まで増加する。この結果、回転子120が、回転子磁束ベクトル121と固定子磁束ベクトル111との間の磁気力の増加によって、2つのベクトル111、121が一致するまで、固定子磁束ベクトル111の方向に引き付けられる。こうすることによって発生する回転子120の回転運動180は、最大で、大雑把な調節で使用される角度シフト170の半分に相当する。
【0053】
このように回転子120を固定子磁束ベクトル111に「しっかりと」揃えることによって、回転子120の回転運動における揺動(rocking)を回避することができる。したがって、この応用範囲の広い方法は、低い吸収、または、粘着摩擦が回転子120において発生する同期モータ100に適している。ただし、この方法は、このような特性を有する同期モータ100に限定されるものではなく、例えば粘着摩擦が比較的高い場合にも好適であると考えられる。
【0054】
制御ユニット210によって制御される精密な調節を行う別の方法を、図7に概略的に示す。これを前提とすると、固定子磁束ベクトル111は、大雑把な調節野際に最後に選ばれる向きから始めて生成され、回転子120の回転運動は連続的に決定される。固定子磁束ベクトル111は、ゼロから指定値まで再度立ち上げられ、固定子磁束ベクトル111の向きは、回転子120の回転運動が停止するまで、決定された回転子運動に合わせて調整される。ここで、回転子120は、精密な調節の開始時と同じ位置にあってもかまわない。
【0055】
この「補正」によって、ベクトル111、121を、回転子120の比較的小さな回転運動180によって一致させることが可能になる。ただし、これを実現するためには、(粘着摩擦を克服する際の)回転子180の揺動または断続的な運動を回避できるように、回転子120が過小または過大な粘着摩擦を発生させないことが要求される。ここで、固定子磁束ベクトル111の所定値までの立ち上げは、例えば500msの期間に実施すればよい。固定子磁束ベクトル111は、さらに、この所定値で所定の期間(例えば3000ms)維持されてもよい。
【0056】
図4A〜図4Cを参照しながら説明した、ベクトル111、121を大雑把に調節する上記方法は、固定子磁束ベクトル111の立ち上げ時に回転子120が回転運動をするということに基づいている。ただし、固定子磁束ベクトル111の1回目の立ち上げ時に、回転子120が全く回転運動をしないということが起こり得る。これは、例えば固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121とは反対の向き、または、反平行なの向き(つまり180°回転した向き)に生成されると起こる。ただし、回転子120は、固定子磁束ベクトル111が同じ向き(つまり回転子磁束ベクトル121に一致する向き)に立ち上げらた時にも、全く運動しない。したがって、これらの2つの別個の状況を区別することができない。したがって、回転子120が固定子磁束ベクトル111の1回目の立ち上げ時に運動しない場合に備えて、増幅器200、または、制御ユニット210は、固定子磁束ベクトル111の生成を別の向きで再度開始し、さらに、上述のように大雑把な調節を継続するように構成される。この別の向きとして、例えば、先の向きに対して90°回転した向きを選択してもよい。
【0057】
この別の向きでも回転運動が発生しない場合に備えて、増幅器200、または、制御ユニット210は、例えば、例えば光または音で出力されるエラーメッセージを生成するように構成されればよい。これは、例えばエンジンブレーキが働いていれば(働いているままであれば)、または、回転運動を防止するこれ以外の状況が存在すれば起こる。
【0058】
さらに、ベクトル111、121の大雑把な調節の最後には、回転子120が固定子磁束ベクトル111の立ち上げ時に(反転方向に)回転せず、全く回転運動をしないことも起こり得る。これは、図4Cに示すように回転子磁束ベクトル121が固定子磁束ベクトル111によって「追い抜かれ」ないで、生成された固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121に一致すると起こる。この場合には、ベクトル111、121がすでに一致しているのであるから、制御ユニット210は大雑把な調節を終了し、精密な調節を開始しないように構成される。
【0059】
前述の図面を参照しながら説明した、大雑把な調整および精密な調節を実施する方法は、回転同期モータに限定されるものではなく、例えば一方のモータ部材がもう一方のモータ部材に対して並進的にシフトするリニア同期モータに対して同様に適用されてもよい。例示することを目的として、図8A〜図8Cには、このようなリニアモータ300に関して大雑把な調節を行う方法を概略図において示している。
【0060】
リニアモータ300は、静磁場を供給する静止モータ部材320(以下の記載では二次部材320と称する)を備えている。この二次部材320の磁場は、例えば複数の永久磁石を横に等間隔に極性を交互にして並べることによって生成されればよい(図示せず)。二次部材320に加えて、リニアモータ300は、二次部材320に摺動可能な様態で配置されるモータ部材310(以下の記載では一次部材310と称する)を備えている。一次部材310は電機子とも称され、電流を印加されると磁場を生成する複数の電磁石(図示せず)を備えている。交流電流を用いて、一次部材310の電磁石に位相差をともなう電流を印加することによって、並進運動する磁場(進行磁場とも称される)が生成される。ここで、一次部材310の進行磁場は、二次部材320の静磁場と相互作用し、その結果、一次部材310が並進運動する。
【0061】
二次部材320の磁場またはその向きを説明するために、それぞれ、図8A〜図8Cに単一の磁束ベクトル321(以下の記載では固定子磁束ベクトル321と称する)を示す。厳格には、固定子磁束ベクトル321は、極性が異なる2つの永久磁石(つまり1つの磁極対)の磁場しか示していない。したがって、以下の記載ではこの1つの磁極対について説明する。一次部材310の磁場は磁束ベクトル311(以下の記載では電機子磁束ベクトル311と称する)で示してある。この電機子磁束ベクトル311の向きは、それぞれ「水平方向に」シフトまたは変化してもよい。
【0062】
リニアモータ300の制御は、対応する増幅器200と、リニアモータ300(図示せず)に関連する増分エンコーダ130とを用いて、図1のシステムと同様に実施されてもよい。なお、このエンコーダ130は、この場合、一次部材310の並進運動を検出するように構成される。これらの部材に関するさらなる詳細については、上述の記載を参照はればよく、上述の記載が同様に当てはまる。ここでは、一次部材310への電流の供給は、巻き取りケーブルを介して実施されてもよい。
【0063】
リニア駆動300の場合にも、二次部材320に対する一次部材310の絶対的な位置が未知であるという上述の問題が、安価な増分エンコーダ130を使用することによって発生することがある。したがって、回転電流を一次部材310に印加することによって、進行する電機子磁束ベクトル311を生成し、並進運動を開始しようとすると、例えば、駆動トルクの低下、一次部材310の断続的な動作開始、制御プロセスの不具合、リニア駆動300の破損などの望ましくない結果が生じることがあり得る。上記と同様に、第1の段階(図8A〜図8C)では、一次部材310を全体的に比較的小さく運動させることによって、一次部材310および二次部材320の各磁場を互いに対して大雑把に調節することを提案する。第2の段階では、例えば、精密な調節を実施し、リニアモータ300をこの状態から駆動して、一次部材310を並進運動させる。
【0064】
図8Aに示すように、電機子磁束ベクトル311は1つ目の向きに立ち上げられ、そして、電機子磁束ベクトル311の強度はゼロから所定値に達するまで増やされる。1つ目の向きは、例えば任意に選ばれた向きであっても、所定の向きであってもよい。通常、電機子磁束ベクトル311の1つ目の向きは、固定子磁束ベクトル321の1つ目の向きとは異なる。電機子磁束ベクトル311は、磁気力が増加することによって固定子磁束ベクトル321の方向に引き付けられ、したがって、一次部材310も同様に引き付けられる。
【0065】
この発生する並進運動は(エンコーダ130によって)検出され、一次部材310の運動方向が決定される。ここで、一次部材310の並進運動の発生は、ここでも運動方向を決定するために十分な最小値に限定される。この目的を達成するためには、例えば、運動方向を決定したら直ちに、電機子磁束ベクトル311をスイッチオフすればよい。
【0066】
別のステップでは、電機子磁束ベクトル311が、図8Bに示すように、それぞれ1つ目の向きに対して所定の「距離」または「セクション」だけ変化した向きに立ち上げられる。より良く図示するために、先に1つ目の向き生成された電機子磁束ベクトル311の位置を、点線の矢印を用いて図8Bにさらに示す。ここで、電機子磁束ベクトル311の(新しい)向きは、電機子磁束ベクトル311の向きが固定子磁束ベクトル321により近くなるように変えるために、一次部材310の先に決定した運動方向に応じて変えられる。この場合、電機子磁束ベクトル311を生成する一次部材310は運動し、固定子磁束ベクトル321を有する二次部材320は静止しているので、電機子磁束ベクトル311の向きは、先に決定した一次部材310の運動方向に対応する方向に変化する(図1の同期モータ100とは逆)。
【0067】
電機子磁束ベクトル311を立ち上げることに関連して、図8Bによれば、最小値に限定された一次部材310の運動の運動方向が再度決定される。この運動方向は、この時点では、先に図8Aに示す向きに生成された電機子磁束ベクトル311の場合と同じである。
【0068】
電機子磁束ベクトル311を(所定のセクションによってそれぞれ変えられる向きに)生成し、一次部材310の運動方向を決定する上記各ステップは、図8Cに示すように、電機子磁束ベクトル311が固定子磁束ベクトル321を「追い抜くまで」、繰り返されてもよい。これを前提とすると、一次部材310の運動方向は反転する。図8A〜図8Cに示す一例としての順序では、図8Aの「初期状態」から始めって、この状態が、電機子磁束ベクトル311の3つ目の向きにおいてすでに存在している。この状態で、電機子磁束ベクトル311および固定子磁束ベクトル321は、互いに対して大雑把に調節される(またはこれら両ベクトルの向きが互いに対して大雑把に調節される)。なぜならば固定子磁束ベクトル321は、この状態で、最後に立ち上げられた2つの電機子磁束ベクトル311によって提供されるセクションにあるからである。
【0069】
一次部材310および二次部材320の各磁場を大雑把に調節した後に、これらの磁場をさらに、互いに対して精密に調節しても、または一致させてもよい。この目的を達成するためには、回転同期モータ100の場合と同様に、異なる2つの実施形態(図示せず)が考えられる。
【0070】
1つの過程は、ここでも電機子磁束ベクトル311を、最後に生成した2つの電機子磁束ベクトル311の向きの中間に位置する向きに立ち上げることを含む。電機子磁束ベクトル311の強度は、ここでもゼロから始めて所定値に達するまで増加する。この結果、一次部材310が、磁気力の増加によって、2つのベクトル311、321が一致するまで、固定子磁束ベクトル321の方向に引き付けられる。こうすることによって発生する一次部材310の並進運動は、最大で、大雑把な調節で使用される配向セクションの半分に相当する。電機子磁束ベクトル311の向きは、この量だけそれぞれ変化する。この方法は、例えば、特に、空気ベアリングを用いる無鉄(ironless)リニア駆動に用いる、粘着摩擦が低いリニアモータ300対象としている。
【0071】
別の構成としては、電機子磁束ベクトル311を、大雑把調節の際に最後に選ばれた向きから始めて生成してもよい。また、一次部材310の並進運動を連続的に検出してもよい。電機子磁束ベクトル311は、ゼロから始めて所定値に達するまで再度立ち上げられ、電機子磁束ベクトル311の向きは、一次部材310の並進運動にしたがって、一次部材310が運動しなくなるまで補正または構成される。これを前提とすると、一次部材310は、精密な調節の開始時と同じ位置にあってもかまわない。補正プロセス中に、一次部材310を比較的小さく並進運動させることによって、ベクトル311、321を一致させてもかまわない。
【0072】
リニアモータ300の大雑把な調節を実施する枠組みの中で、一次部材310が、電機子磁束ベクトル311の立ち上げ時に全く並進運動をしない、または、もはや並進運動をしないということも起こり得る。一次部材310が電機子磁束ベクトル311の1回目の立ち上げ時に運動しない場合に備えて、同期モータ100に関して、電機子磁束ベクトル311を別の向きに生成して、さらに(適宜)上記の大雑把な調節プロセスを継続することを提案する。この別の向きであっても並進運動が全く発生しない場合に備えて、光または音で出力されるエラーメッセージを(増幅器200によって)生成してもよい。これは、例えばエンジンブレーキが働いていれば(働いているままであれば)、または、一次部材310の運動を防止するこれ以外の状況が存在すれば起こり得る。
【0073】
一次部材310が電機子磁束ベクトル311の先の立ち上げ時には毎回(異なる向きで)運動したにもかかわらず、一次部材310が電機子磁束ベクトル311の生成時には運動しない場合には、ベクトル311、321がすでに一致しているのであるから、大雑把な調節を終了してもかまわず、その後、精密な調節を開始する必要はない。
【0074】
上記図面を参照しながら説明した実施形態は、本発明の好ましい、または、一例としての実施形態を表わしている。また、上記の実施形態の変更または組み合わせを表わす、上記以外の実施形態もさらに考え得る。
【0075】
特に、固定電機子機器と称されるモータを示す図1に示す同期モータ100の大雑把な調整および精密な調節の方法を、回転子が回転磁場を生成し、固定子が直流磁場を供給するように構成された外部磁極機器と称されるに対して使用してもかまわない。これは、図8A〜図8Cに示すリニア駆動300とは逆に、進行磁場を生成するために使用される一次部材が静止しており、静磁場を供給するために使用される二次部材が摺動可能な様態に構成されたリニア駆動にも同様に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】回転同期モータとサーボ増幅器とを備えたシステムの概略図である。
【図2】3つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【図3】1つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【図4A】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図4B】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図4C】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図5】同期モータを大雑把に調節する際の、回転子運動、および、磁束ベクトルの目標値の選択の一例を示す図である。
【図6】磁場を精密に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図7】磁場を精密に調節するための別の動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図8A】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【図8B】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【図8C】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材および第2のモータ部材を備えた同期モータを作動させる方法に関する。本発明は、さらに、このような同期モータを作動させるための増幅器、および、増幅器と同期モータとを備えたシステムにも関する。
【0002】
互いに対して相対的に運動できるように構成された第1のモータ部材と第2のモータ部材とを備えた同期モータは、各種実施形態において知られている。回転式の実施形態では、該モータ部材のうちの一方が、例えば、もう一方のモータ部材に対して回転する。リニア駆動またはリニアモータと称される各モータ中では、それぞれ、第1のモータ部材または第2のモータ部材が、リニア運動(並進運動)で互いに対して位置を変える。
【0003】
これらすべての各種実施形態において、運動の開始は磁場の相互作用に基づく。これを前提とすると、回転運動をする磁場または並進運動をする磁場(回転磁場または進行磁場)が、第1のモータ部材を用いて複数の電磁石(通電している導体またはコイル)によって生成される。第2のモータ部材は、静磁場が第2のモータ部材に対して供給されるように、1つ以上の永久磁石を備えている。第1のモータ部材の磁場は、第2のモータ部材の上記静磁場と相互作用し、その結果、第1のモータ部材および第2のモータ部材は互いに対して相対的に運動する。
【0004】
運動する磁場を生成するために、上記第1のモータ部材の複数の電磁石は、適時に相互に入れ替わるように駆動される、または、電流を供給される。電流が1つの電磁石から次の電磁石へこのように転送されることを、転流とも称する。同期モータを効果的に作動させるためには、第2のモータ部材の磁場に対して、転流のタイミングを調停することが求められる。
【0005】
機械的転流の場合には、複数の摺動式接触部(通常はブラシ形状である)が所定の配置で使用され、その結果、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動中に、電流が該配置に応じて切り替えられる。このようにすれば、比較的無視できる程度の回路規模で転流を実現することができる。ただし、動作中のブラシの磨耗またはブラシの損失、さらに、例えば激しいスパークの発生などの望ましくない影響は好ましくない。したがって、現在の同期モータは、通常、電子式転流によって動作する。この目的を達成するために、サーボ増幅器とも称される電子制御デバイスがモータに対して設けられ、磨耗を生じないでスムーズにモータを動作させるために必要な回転磁場が生成できるようになる。
【0006】
ただし、第1のモータ部材によって生成される回転磁場を、電子式転流の枠組みの中で、第2のモータ部材の静磁場に揃えるためには、空間内における第1のモータ部材および第2のモータ部材の相対的な位置関係が分かっていなければならない。これは、トルクを最大限に利用できる効果的な動作モードを可能にするために、同期モータの動作開始時に特に重要である。その結果、エンコーダまたはエンコーディングシステムとも称される、位置を決定する複数のデバイスが使用される。これらのデバイスは、モータ部材の位置を一義的に決定することを可能にするために、アブソリュートエンコーダと称されるエンコーダとして構成されてもよい。ただし、このようなアブソリュートエンコーダを使用すると比較的高いコストがともなうことは好ましくない。
【0007】
独国特許出願公開第10 2004 012 805 A1号明細書には、永久磁石を備えた電気モータの回転子の角位置(向き)を決定する方法が記載されている。この方法では、所定のパルスパターンしたがって、電流パルスを電気モータの固定子の巻き線(電磁石)に印加し、こうすることによって発生する回転子の角加速度を加速度センサを用いて測定し、求めたい回転子の位置をこれらのデータに基づいて算出することが提案されている。
【0008】
欧州特許出願公開第0 784 378 A2には、同期している機械の絶対的な回転子の位置を決定する方法が記載されている。該方法によれば、固定子の電磁石によって磁場を生成し、こうすることによって発生する永久的に励磁されている回転子の回転運動を検出し、固定子の磁場の向きを、回転子の回転運動が停止するまで制御方法の枠組みの中で変化させる、または、回転させる。この状態では、回転子および固定子の磁場の各向きまたは各角位置は一致し、したがって、求めたい回転子の位置が決定される。
【0009】
R. Schoenfeld, W. Hofmann著、“Elektrische Antriebe und Bewegungssteuerungen”、309頁〜310頁、VDE(出版社),2005年には、電気モータの初期角の位置を決定する方法が開示されている。1つの方法によれば、磁場を印加して、永久的に励磁されている回転子を磁場に揃える。
【0010】
独国特許出願公開第44 07 390 A1号明細書には、同期している機械の初期相および転流を実現するための方法が記載されている。この方法では、固定子の各巻き線に複数相の電流を印加することによって、回転子を試験的に励起することが提案されている。また、こうすることによって達成される最大トルクが決定される。最大トルクに関連する固定子電流の位相は、同期モータの初期動作のための転流角として使用される。
【0011】
本発明の目的は、同期モータの第1のモータ部材および第2のモータ部材、または、同期モータの磁場を、同期モータの動作開始の枠組みの中で比較的単純な様態で相対的に調節する、同期モータを作動させるためのより良い方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、同期モータを作動させるためのより良い増幅器、および、該増幅器と同期モータとを備えたシステムを提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項9に記載の増幅器、および請求項15に記載のシステムによって達成される。本発明のその他の好適な実施形態は、従属項に記載する。
【0013】
本発明によれば、互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材と第2のモータ部材とを備えた同期モータを作動させる方法が提案される。第1のモータ部材によって磁場が発生する。第2のモータ部材は第2のモータ部材に対して静止している静磁場を有する。第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場の向きに違いが発生すれば、第1のモータ部材および第2のモータ部材は互いに対して相対的に運動する。提案する本方法では、ステップa)において、第1のモータ部材によって磁場を所定の向きに生成して、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で所定値に限定された相対運動を発生させる。ステップb)では、この第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向を決定する。第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、ステップa)およびステップb)を繰り返す。これを前提として、ステップa)が行われるごとに、先に生成された上記磁場に対して変化した向きを有する磁場を第1のモータ部材によって生成し、磁場の向きを、それぞれ所定の配向セクションによって、および、上記の決定された運動方向に応じて変化させる。
【0014】
本発明に係る方法は、回転同期モータおよびリニア同期モータに対して適用してもかまわない。本方法によって、第1のモータ部材の磁場は第2のモータ部材の磁場の方向に徐々に揃えられる。磁場の相互作用が原因となってこのように発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動は所定値に限定される、その結果、あるモータ部材を全体的に比較的小さく運動させるだけで、本方法を実施することができる。第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動の運動方向を決定するために、比較的単純なエンコーダ(特に増分エンコーダ)を使用してもよく、こうすることによって本方法は低コストで実施することができる。
【0015】
第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動の運動方向が反転すると、直ちに、その時点における空間内における第1のモータ部材および第2のモータ部材の位置関係において、第2のモータ部材の磁場と第1のモータ部材によって最後に生成される磁場との間の向きの違いの方が、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の間の向きの違いより小さいという状態に達する。換言すれば、第2のモータ部材の磁場の向きは、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の向きの「間」に存在する。第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とは、このように、互いに対して「大雑把」に調節すればよい。
【0016】
ある実施形態では、第1のモータ部材は静止しており、第2のモータ部材は第1のモータ部材に対して可動である。本実施形態は、特に、第1のモータ部材が固定子として構成され、第2のモータ部材が回転子として構成された回転同期モータを対象としている。これを前提として、第1のモータ部材によって生成される磁場の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された(第2のモータ部材の)運動方向とは反対の方向に変化させる。
【0017】
別の実施形態では、第2のモータ部材は静止しているが、第1のモータ部材は第2のモータ部材に対して可動である。本実施形態は、特に、第1のモータ部材が摺動可能な一次部材として構成され、第2のモータ部材が静止している二次部材として構成されたリニア同期モータを対象としている。これを前提として、第1のモータ部材によって生成される磁場の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された(第1のモータ部材の)運動方向に対応する方向に変化させる。
【0018】
第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを「大雑把」に調節が済むと、各磁場は、さらに、「精密に」調節、または、互いに対して一致させられる。この状態から始めて、同期モータは実際の動作状態に入って、回転運動または並進運動を実行してもよい。さらに別の実施形態を用いて、各磁場の精密な調節を行ってもよい。
【0019】
好適な実施形態では、ステップa)およびステップb)を繰り返して運動方向の変化、または、反転を決定した後に、別の磁場を第1のモータ部材によって生成し、この別の磁場の向きを、第1のモータ部材によって最後に生成される2つの磁場の向きの中間になるように選び、上記別の磁場の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させる。この過程によって、第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを比較的単純な様態で一致させる機会が与えられる。こうすることによって発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動は、最大で、第1のモータ部材によって最後に生成される各磁場の向きの間の、それぞれ距離(並進運動)の半分または角度範囲(回転運動)の半分に相当する。こうすることによって、いわゆる「揺動(rocking)」は第1のモータ部材と第2のモータ部材との間では発生しないので、この方法は応用範囲が広く、特に、低い吸収または粘着摩擦を有する同期モータに適している。例えば、空気ベアリングを用いる無鉄(ironless)リニア駆動がこのカテゴリーに属する。この方法は、比較的高い吸収を有する同期モータの場合でも、好適であると考えられる。
【0020】
別の実施形態では、ステップa)およびステップb)を繰り返して運動方向の変化を決定した後に、別の磁場を第1のモータ部材によって最後の向きから始めて生成し、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動を決定し、上記別の磁場の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させ、上記別の磁場の向きを、それぞれ、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動が停止するまで変化させる、または、最低限の相対運動が発生するまで変化させる。したがって、この過程によって、比較的小さな相対運動をともなうだけで、第1のモータ部材の磁場と第2のモータ部材の磁場とを一致させることができるようになる。
【0021】
別の好適な実施形態では、ステップa)が、上記磁場の強度をゼロから増加させることを含む。さらに、上記ステップa)において発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の相対運動を、好ましくは第1のモータ部材によって生成される磁場をスイッチオフすることによって、相対運動の所定値を通った後に終了させる。
【0022】
さらに別の好適な実施形態では、第1のモータ部材によって磁場を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で相対運動が一切生成されない場合、もう1つの向きを前もって決定し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施する。このように運動が一切発生しないという状況は、例えば、第1のモータ部材の磁場が、第2のモータ部材の磁場の向きに対して180°ずれた向きを有するように生成されると仮定すれば、回転同期モータにおいて生じる。第1のモータ部材の磁場を第2のモータ部材の磁場と同じ向きを有するように生成することも可能である。これらの2つの場合は区別することができないので、別の向きを有する第1のモータ部材の磁場を生成することを提案する。回転同期モータにおいて、この別の向きは、例えば先の向きに対して90°回転した向きになるように選ばれる。
【0023】
本発明によれば、同期モータを作動させるための増幅器をさらに提案する。この同期モータは、第1のモータ部材と、第2のモータ部材と、エンコーダとを備えている。第1のモータ部材によって、磁場が生成される。この第2のモータ部材は第2のモータ部材に対して静止している静磁場を有する。第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場の向きに違いがある場合、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で、該エンコーダによって決定することができる相対運動が発生する。本発明に係る増幅器はパワーユニットと制御ユニットとを備えている。このパワーユニットは、磁場を複数の向きに生成するために、第1のモータ部材に電流を供給するように構成される。該増幅器の制御ユニットは、パワーユニットを制御し、エンコーダによって決定された相対運動を評価するように構成される。制御ユニットは、ステップa)において、同期モータの動作開始の枠組みの中で、第1のモータ部材による、磁場の所定の向きの生成を開始して、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間で所定値に限定された相対運動を発生させ、ステップb)において、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向をエンコーダによって決定し、第1のモータ部材と第2のモータ部材との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、2つのステップa)およびステップb)を繰り返すようにさらに構成される。これを前提とすると、上記制御ユニットは、上記一連のステップが行われるごとに、ステップa)において、先に生成された上記磁場に対して変化した向きを有する磁場の、第1のモータ部材による生成を開始し、ここで、上記磁場の向きを、それぞれ所定の配向セクションによって、および、エンコーダによって決定された運動方向に応じて変化させる。
【0024】
本発明に係る増幅器を回転同期モータに対して用いてもよく、同様にリニア同期モータに対して用いてもよい。先述の方法に対応して、本増幅器によって、あるモータ部材を全体的に比較的小さく運動させるだけで、第1のモータ部材および第2のモータ部材の各磁場を「大雑把」に調節できるようになる。次に、これらの各磁場を増幅器によって一致させればよい。このような増幅器と同期モータとを備えた独創的なシステムは、同じ効果を奏する。
【0025】
以下の記載では、添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、回転同期モータとサーボ増幅器とを備えたシステムの概略図である。
【0027】
図2は、3つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【0028】
図3は、1つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【0029】
図4A〜図4Cは、同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0030】
図5は、同期モータを大雑把に調節する際の、回転子運動、および、磁束ベクトルの目標値の選択の一例を示す図である。
【0031】
図6は、磁場を精密に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0032】
図7は、磁場を精密に調節するための別の動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【0033】
図8A〜図8Cは、磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【0034】
図1は、回転同期モータ100と、この同期モータ100を制御するために該同期モータ100に接続された増幅器200とを備えたシステムの概略図を示している。サーボモータとも称される同期モータ100は、動かない固定子110と、固定子110内において回転可能であるように構成された回転子120とを備えている。回転子120には1つ以上の永久磁石が設けられ、こうすることによって、回転子120は一定の磁場または静磁場を有する。これと対比すると、固定子110は、図1に3つのコイルで示されている複数の電磁石を備えている。タイムリーに変位を発生させながらこれらの電磁石を駆動することによって、回転子120の静磁場と相互作用する回転磁場を生成することができるようになり、こうすることによって、回転子120は回転運動を行う。
【0035】
増幅器200は、サーボ増幅器とも称され、制御ユニット210、パワーユニット220、および、位置検出ユニット(回転カウンター)230を備えている。位置検出ユニット230を、制御ユニット210の集積部品として構成してもかまわない(図1では集積していない)。固定子110には、例えば、パワーユニット220を介して回転磁場を生成するために、電流または回転電流を供給すればよい。これを前提とすると、固定子110の電磁石には、互いに対して位相差を有する回転電流が供給される。ここで、パワーユニット220は制御ユニット210によって制御される。
【0036】
位置検出ユニット230は、パワーユニット220を制御するために、回転子120の位置における相対的変化を検出し、検出結果を制御ユニット210に供給するように作用する。この目的を達成するために、増幅器200の位置検出ユニット230は、同期モータ100に関連する増分エンコーダ130に接続されている。エンコーダ130は、対応するインパルス、または、回転子120の回転運動中に発生する信号を位置検出ユニット230へ転送するように構成される。このインパルスを利用して、位置検出ユニット230は、回転子120の回転方向および相対運動を決定すればよい。これを前提とすると、エンコーダ130は、回転子120の回転運動を機械的、視覚的、または、電磁気的な様態で決定すればよい。
【0037】
図2は、概略図において、それぞれ、同期モータ100と、同期モータ100の動作中に発生する固定子110および回転子120の各磁場とを示している。固定子110によって電気的に生成される磁場を、矢印またはベクトル111(以下の記載では固定子磁束ベクトル111と称する)で示す。回転子120の磁場は、矢印またはベクトル121(以下の記載では回転子磁束ベクトル121と称する)で示す。固定子110および回転子120の各磁場の向きが互いに異なる場合、つまり、固定子磁束ベクトル111の向きと回転子磁束ベクトル121の向きとが互いに異なる場合には、回転子磁束ベクトル121が固定子磁束ベクトル111の方向に回転し、したがって、回転子120が同様に回転する。したがって、同期モータ100の動作中に固定子磁束ベクトル111を(連続的に)回転させることによって、回転子120の回転運動が発生する。
【0038】
図2には、6つの磁極を有する同期モータ100の一実施形態を示してある。これを前提とすると、固定子110は、それぞれが磁極対として組み合わされる、固定子磁束ベクトル111を生成するための6つの磁極141、142、143を備えている。これを前提とすると、各磁極対は、例えば3つのコイル(コイルトリプレット)によって構成されればよい。磁極対の個数が3つであるこのような一実施形態では、交流電流を固定子110に経時的に印加(これは「電気的」回転とも称される)すると、この電気的回転の1/3に相当する固定子磁束ベクトル111の「機械的」回転が起こる。したがって、図2に示すように、1周期に1回転の電気的回転(360°)が起こると、120°に相当する機械的回転140が起こる。
【0039】
以下の記載については、図3に概略的に示すように、1つの磁極対141だけを有する同期モータ100の実施形態を基本形態とする。このような場合には、電気的な1回転が、固定子磁束ベクトル111の機械的な1回転140に対応し、あとの考察が容易になる。ただし、以下の記載は、磁極対の個数が異なる同期モータ100にも当てはまる。一例として、6つの磁極を有する実施形態を図2に示す。
【0040】
図1に示すシステムでは、同期モータ100に関連するエンコーダ130は安価な増分エンコーダで構成される。この増分エンコーダによって回転子120の回転運動を検出することはできるが、絶対的な位置を検出することはできない。この理由によって、同期モータ100の動作開始時には、回転子120の位置は未知であり、したがって、静磁場の向きまたは回転子磁束ベクトル121の向きも未知である。その結果、回転電流を固定子110に印加することによって回転する固定子磁束ベクトル111を生成して、回転子120の回転運動をこのような確定していない位置において開始しようとすると、例えば、トルクの低下、断続的な回転子運動、制御プロセスの不具合、同期モータ100の破損、同期モータ100に接続されたデバイスの破損などの望ましくない結果が生じることがあり得る。このような悪影響を回避するために、第1の段階では、固定子110および回転子120の各磁場を相対的に大雑把に調節する。この大雑把な調節は、回転子120を全体的に比較的小さく運動させることによって実施する。第2の段階では精密な調節を実施し、例えばこの状態から始めて、同期モータ100を、回転子120が(連続的に)回転運動を行う実際の動作状態にすればよい。
【0041】
図4A〜図4Cは、各磁場または固定子110および回転子120の各ベクトル111、121の大雑把な調節を示す。これを前提とすると、制御ユニット210は、パワーユニット220に対して、固定子磁束ベクトル111を1つ目の向きに「立ち上げる」、つまり、各磁場の1つ目の向きの強度を、ゼロから始めて所定値に達するまで増加させる(図4A)。この1つ目の向きは、例えば制御ユニット210によって任意に選ばれた向きであっても、所定の向きであってもよい。
【0042】
一般に、固定子磁束ベクトル111の1つ目の向きは、図4Aに示すように、回転子磁束ベクトル121の向きとは異なり、その結果、回転子磁束ベクトル121は、磁気力が増加することによって固定子磁束ベクトル111の方向に引き付けられ、したがって、回転子120も同様に引き付けられる。回転子120の回転運動は、エンコーダ130および位置検出ユニット230によって決定され、こうすることによって決定された回転方向が制御ユニット210に供給される。
【0043】
回転子120において発生する回転運動は、エンコーダ130および位置検出ユニット230によって回転子運動の回転方向を決定するために十分な、最小の角度値(例えば0.5°)に限定されている。これは、例えば制御ユニット210が、回転子120の回転方向に関する情報を受信すると直ちに、パワーユニット220に対して固定子磁束ベクトル111をスイッチオフさせることによって実施されればよい。
【0044】
次に、制御ユニット210は、図4Bに示すように、パワーユニット220に対して固定子磁束ベクトル111を再度立ち上げさせる。ただし、今回の固定子磁束ベクトル111の向きは、1つ目の向きに対して角度シフト170(図4C参照)だけ変化している。角度シフト170は例えば22.5°である。ここで、固定子磁束ベクトル111の(新しい)向きは、固定子磁束ベクトル111の向きが回転子磁束ベクトル121により近くなるように変えるために、先に決定した回転子120の回転方向に応じて変えられる。この場合、固定子磁束ベクトル111を生成する固定子110は静止しており、回転子磁束ベクトル121を有する回転子120は回転するので、固定子磁束ベクトル111の向きは、先に決定した回転子120の回転方向とは反対の方向に変化する。
【0045】
固定子磁束ベクトル111を再度立ち上げることと関連して、図4Bに示すように、最小の角度値に抑制される回転子120の回転運動の回転方向がエンコーダ130および位置検出ユニット230によって再度決定されて、制御ユニット210に供給される。この場合の回転方向は、先に図4Aに示す向きに生成された固定子磁束ベクトル111の場合と同じである。
【0046】
増幅器200または制御ユニット210は、図4Cに示すように、固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121を「追い抜」き、その結果、回転子120の回転方向が反転するまで、(角度シフト170だけそれぞれ変化する向きを有する)固定子磁束ベクトル111を生成し、回転子120の限定された回転運動の回転方向を決定するこれらのステップを連続して繰り返すように構成されている。図4A〜4Cに示す一例としての順序では、図4Aの「初期状態」から始まって、上記の状態か固定子磁束ベクトル111の3つ目の向きにおいてすでに達成されている。この状態で、固定子磁束ベクトル111および回転子磁束ベクトル121は、互いに対して大雑把に調節される(またはこれら両ベクトルの向きが互いに対して大雑把に調節される)。なぜならば回転子120の限定された回転運動を通過(終了)した後に、固定子磁束ベクトル111がスイッチオフされるからである。これを前提とすると、回転子磁束ベクトル121は、最後に立ち上げられた2つの固定子磁束ベクトル111によって供給される、角度セクタまたは角度シフト170内にある。
【0047】
図4A〜4Cを参照しながら記載した大雑把な調節についてさらに説明するために、図5には、回転子120の回転運動(線150で示す)、および、制御ユニット210において生成される固定子磁束ベクトル111の強度の目標値の事前選択(線160で示す)を時間(単位はms)に対して描いた一例としての図を示す。目標値の事前選択160によれば、固定子磁束ベクトル111は、選択されたそれぞれの向きについて、時間162の期間にゼロから直線的に立ち上げられて事前選択値161に達し、続いてこの事前選択値161で維持される。時間162の長さは例えば100msであり、事前選択値161は例えば固定子磁束ベクトル111の供給される最大強度の50%である。
【0048】
固定子磁束ベクトル111を立ち上げることによって、回転子120は対応する回転運動150を行う。上述のように、回転子120の回転運動150は、例えば大きさが0.5°である回転角151に限定されている。これは、制御ユニット210によって開始された固定子磁束ベクトル111をスイッチオフすることによって実施される。ただし、図5に示すように、目標値の事前選択160は、制御ユニット210におけるこのプロセスの期間中継続してもよい。
【0049】
回転角150を通過した後、または、回転角151を通過したことによって可能になったことにしたがって運動を決定した後、これに続いて、固定子磁束ベクトル111が異なる向きに再度立ち上げられて、回転子120が限定された回転角151だけ再度回転するまで、時間152(例えば150ms)だけ待つ。時間152だけ待つ過程は、例えば、回転運動によって振動するシステムまたは同期モータ100が静止できるようにするために設けられる。固定子磁束ベクトル111を連続して立ち上げて、発生するおよそ回転角151の回転子運動を決定するこのプロセスは、回転子120の回転方向が反転するまで、それぞれ繰り返される(図5に点線で描いた円で示す領域Pを参照)。
【0050】
図5では、回転角151を通過する間は、回転運動150を一定の傾きで示している。ただし、実際の動作では、この傾きは、回転角151に応じて変化してもよく、または、固定子磁束ベクトル111と回転子磁束ベクトル121との間の引きつけ合う相互作用の強度が各ベクトル111、121の「近似」の進行にともなって減少するので、減少してもよい。このようにして、回転子120の運動は、図5に示す範囲を超えて、さらに目標値の事前選択160の「ステップ」へと続いていってもよい。
【0051】
固定子110および回転子120の各磁場、または、関連するベクトル111、121の大雑把な調節に続いて、該磁場をさらに互いに対して精密に調節しても、または、一致させても、つまり同一位相にさせてもよい。この状態から始めて、同期モータ100はふさわしい動作状態に入り、固定子磁束ベクトル111(回転磁場)を回転させることによって、回転子120の回転運動を発生させてもよい。精密な調節には別の実施形態を使用してもかまわない。
【0052】
精密な調節を実施できる一過程を、図6に概略的に示す。このプロセスにおいて、制御ユニット210は、パワーユニット220に対して再度固定子磁束ベクトル111を、最後に生成される2つの固定子磁束ベクトル111の向きの中間になるように選ばれる向きに生成させる、または、立ち上げさせる。この(一定の)向きでは、固定子磁束ベクトル111の強度が、ゼロから指定値まで増加する。この結果、回転子120が、回転子磁束ベクトル121と固定子磁束ベクトル111との間の磁気力の増加によって、2つのベクトル111、121が一致するまで、固定子磁束ベクトル111の方向に引き付けられる。こうすることによって発生する回転子120の回転運動180は、最大で、大雑把な調節で使用される角度シフト170の半分に相当する。
【0053】
このように回転子120を固定子磁束ベクトル111に「しっかりと」揃えることによって、回転子120の回転運動における揺動(rocking)を回避することができる。したがって、この応用範囲の広い方法は、低い吸収、または、粘着摩擦が回転子120において発生する同期モータ100に適している。ただし、この方法は、このような特性を有する同期モータ100に限定されるものではなく、例えば粘着摩擦が比較的高い場合にも好適であると考えられる。
【0054】
制御ユニット210によって制御される精密な調節を行う別の方法を、図7に概略的に示す。これを前提とすると、固定子磁束ベクトル111は、大雑把な調節野際に最後に選ばれる向きから始めて生成され、回転子120の回転運動は連続的に決定される。固定子磁束ベクトル111は、ゼロから指定値まで再度立ち上げられ、固定子磁束ベクトル111の向きは、回転子120の回転運動が停止するまで、決定された回転子運動に合わせて調整される。ここで、回転子120は、精密な調節の開始時と同じ位置にあってもかまわない。
【0055】
この「補正」によって、ベクトル111、121を、回転子120の比較的小さな回転運動180によって一致させることが可能になる。ただし、これを実現するためには、(粘着摩擦を克服する際の)回転子180の揺動または断続的な運動を回避できるように、回転子120が過小または過大な粘着摩擦を発生させないことが要求される。ここで、固定子磁束ベクトル111の所定値までの立ち上げは、例えば500msの期間に実施すればよい。固定子磁束ベクトル111は、さらに、この所定値で所定の期間(例えば3000ms)維持されてもよい。
【0056】
図4A〜図4Cを参照しながら説明した、ベクトル111、121を大雑把に調節する上記方法は、固定子磁束ベクトル111の立ち上げ時に回転子120が回転運動をするということに基づいている。ただし、固定子磁束ベクトル111の1回目の立ち上げ時に、回転子120が全く回転運動をしないということが起こり得る。これは、例えば固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121とは反対の向き、または、反平行なの向き(つまり180°回転した向き)に生成されると起こる。ただし、回転子120は、固定子磁束ベクトル111が同じ向き(つまり回転子磁束ベクトル121に一致する向き)に立ち上げらた時にも、全く運動しない。したがって、これらの2つの別個の状況を区別することができない。したがって、回転子120が固定子磁束ベクトル111の1回目の立ち上げ時に運動しない場合に備えて、増幅器200、または、制御ユニット210は、固定子磁束ベクトル111の生成を別の向きで再度開始し、さらに、上述のように大雑把な調節を継続するように構成される。この別の向きとして、例えば、先の向きに対して90°回転した向きを選択してもよい。
【0057】
この別の向きでも回転運動が発生しない場合に備えて、増幅器200、または、制御ユニット210は、例えば、例えば光または音で出力されるエラーメッセージを生成するように構成されればよい。これは、例えばエンジンブレーキが働いていれば(働いているままであれば)、または、回転運動を防止するこれ以外の状況が存在すれば起こる。
【0058】
さらに、ベクトル111、121の大雑把な調節の最後には、回転子120が固定子磁束ベクトル111の立ち上げ時に(反転方向に)回転せず、全く回転運動をしないことも起こり得る。これは、図4Cに示すように回転子磁束ベクトル121が固定子磁束ベクトル111によって「追い抜かれ」ないで、生成された固定子磁束ベクトル111が回転子磁束ベクトル121に一致すると起こる。この場合には、ベクトル111、121がすでに一致しているのであるから、制御ユニット210は大雑把な調節を終了し、精密な調節を開始しないように構成される。
【0059】
前述の図面を参照しながら説明した、大雑把な調整および精密な調節を実施する方法は、回転同期モータに限定されるものではなく、例えば一方のモータ部材がもう一方のモータ部材に対して並進的にシフトするリニア同期モータに対して同様に適用されてもよい。例示することを目的として、図8A〜図8Cには、このようなリニアモータ300に関して大雑把な調節を行う方法を概略図において示している。
【0060】
リニアモータ300は、静磁場を供給する静止モータ部材320(以下の記載では二次部材320と称する)を備えている。この二次部材320の磁場は、例えば複数の永久磁石を横に等間隔に極性を交互にして並べることによって生成されればよい(図示せず)。二次部材320に加えて、リニアモータ300は、二次部材320に摺動可能な様態で配置されるモータ部材310(以下の記載では一次部材310と称する)を備えている。一次部材310は電機子とも称され、電流を印加されると磁場を生成する複数の電磁石(図示せず)を備えている。交流電流を用いて、一次部材310の電磁石に位相差をともなう電流を印加することによって、並進運動する磁場(進行磁場とも称される)が生成される。ここで、一次部材310の進行磁場は、二次部材320の静磁場と相互作用し、その結果、一次部材310が並進運動する。
【0061】
二次部材320の磁場またはその向きを説明するために、それぞれ、図8A〜図8Cに単一の磁束ベクトル321(以下の記載では固定子磁束ベクトル321と称する)を示す。厳格には、固定子磁束ベクトル321は、極性が異なる2つの永久磁石(つまり1つの磁極対)の磁場しか示していない。したがって、以下の記載ではこの1つの磁極対について説明する。一次部材310の磁場は磁束ベクトル311(以下の記載では電機子磁束ベクトル311と称する)で示してある。この電機子磁束ベクトル311の向きは、それぞれ「水平方向に」シフトまたは変化してもよい。
【0062】
リニアモータ300の制御は、対応する増幅器200と、リニアモータ300(図示せず)に関連する増分エンコーダ130とを用いて、図1のシステムと同様に実施されてもよい。なお、このエンコーダ130は、この場合、一次部材310の並進運動を検出するように構成される。これらの部材に関するさらなる詳細については、上述の記載を参照はればよく、上述の記載が同様に当てはまる。ここでは、一次部材310への電流の供給は、巻き取りケーブルを介して実施されてもよい。
【0063】
リニア駆動300の場合にも、二次部材320に対する一次部材310の絶対的な位置が未知であるという上述の問題が、安価な増分エンコーダ130を使用することによって発生することがある。したがって、回転電流を一次部材310に印加することによって、進行する電機子磁束ベクトル311を生成し、並進運動を開始しようとすると、例えば、駆動トルクの低下、一次部材310の断続的な動作開始、制御プロセスの不具合、リニア駆動300の破損などの望ましくない結果が生じることがあり得る。上記と同様に、第1の段階(図8A〜図8C)では、一次部材310を全体的に比較的小さく運動させることによって、一次部材310および二次部材320の各磁場を互いに対して大雑把に調節することを提案する。第2の段階では、例えば、精密な調節を実施し、リニアモータ300をこの状態から駆動して、一次部材310を並進運動させる。
【0064】
図8Aに示すように、電機子磁束ベクトル311は1つ目の向きに立ち上げられ、そして、電機子磁束ベクトル311の強度はゼロから所定値に達するまで増やされる。1つ目の向きは、例えば任意に選ばれた向きであっても、所定の向きであってもよい。通常、電機子磁束ベクトル311の1つ目の向きは、固定子磁束ベクトル321の1つ目の向きとは異なる。電機子磁束ベクトル311は、磁気力が増加することによって固定子磁束ベクトル321の方向に引き付けられ、したがって、一次部材310も同様に引き付けられる。
【0065】
この発生する並進運動は(エンコーダ130によって)検出され、一次部材310の運動方向が決定される。ここで、一次部材310の並進運動の発生は、ここでも運動方向を決定するために十分な最小値に限定される。この目的を達成するためには、例えば、運動方向を決定したら直ちに、電機子磁束ベクトル311をスイッチオフすればよい。
【0066】
別のステップでは、電機子磁束ベクトル311が、図8Bに示すように、それぞれ1つ目の向きに対して所定の「距離」または「セクション」だけ変化した向きに立ち上げられる。より良く図示するために、先に1つ目の向き生成された電機子磁束ベクトル311の位置を、点線の矢印を用いて図8Bにさらに示す。ここで、電機子磁束ベクトル311の(新しい)向きは、電機子磁束ベクトル311の向きが固定子磁束ベクトル321により近くなるように変えるために、一次部材310の先に決定した運動方向に応じて変えられる。この場合、電機子磁束ベクトル311を生成する一次部材310は運動し、固定子磁束ベクトル321を有する二次部材320は静止しているので、電機子磁束ベクトル311の向きは、先に決定した一次部材310の運動方向に対応する方向に変化する(図1の同期モータ100とは逆)。
【0067】
電機子磁束ベクトル311を立ち上げることに関連して、図8Bによれば、最小値に限定された一次部材310の運動の運動方向が再度決定される。この運動方向は、この時点では、先に図8Aに示す向きに生成された電機子磁束ベクトル311の場合と同じである。
【0068】
電機子磁束ベクトル311を(所定のセクションによってそれぞれ変えられる向きに)生成し、一次部材310の運動方向を決定する上記各ステップは、図8Cに示すように、電機子磁束ベクトル311が固定子磁束ベクトル321を「追い抜くまで」、繰り返されてもよい。これを前提とすると、一次部材310の運動方向は反転する。図8A〜図8Cに示す一例としての順序では、図8Aの「初期状態」から始めって、この状態が、電機子磁束ベクトル311の3つ目の向きにおいてすでに存在している。この状態で、電機子磁束ベクトル311および固定子磁束ベクトル321は、互いに対して大雑把に調節される(またはこれら両ベクトルの向きが互いに対して大雑把に調節される)。なぜならば固定子磁束ベクトル321は、この状態で、最後に立ち上げられた2つの電機子磁束ベクトル311によって提供されるセクションにあるからである。
【0069】
一次部材310および二次部材320の各磁場を大雑把に調節した後に、これらの磁場をさらに、互いに対して精密に調節しても、または一致させてもよい。この目的を達成するためには、回転同期モータ100の場合と同様に、異なる2つの実施形態(図示せず)が考えられる。
【0070】
1つの過程は、ここでも電機子磁束ベクトル311を、最後に生成した2つの電機子磁束ベクトル311の向きの中間に位置する向きに立ち上げることを含む。電機子磁束ベクトル311の強度は、ここでもゼロから始めて所定値に達するまで増加する。この結果、一次部材310が、磁気力の増加によって、2つのベクトル311、321が一致するまで、固定子磁束ベクトル321の方向に引き付けられる。こうすることによって発生する一次部材310の並進運動は、最大で、大雑把な調節で使用される配向セクションの半分に相当する。電機子磁束ベクトル311の向きは、この量だけそれぞれ変化する。この方法は、例えば、特に、空気ベアリングを用いる無鉄(ironless)リニア駆動に用いる、粘着摩擦が低いリニアモータ300対象としている。
【0071】
別の構成としては、電機子磁束ベクトル311を、大雑把調節の際に最後に選ばれた向きから始めて生成してもよい。また、一次部材310の並進運動を連続的に検出してもよい。電機子磁束ベクトル311は、ゼロから始めて所定値に達するまで再度立ち上げられ、電機子磁束ベクトル311の向きは、一次部材310の並進運動にしたがって、一次部材310が運動しなくなるまで補正または構成される。これを前提とすると、一次部材310は、精密な調節の開始時と同じ位置にあってもかまわない。補正プロセス中に、一次部材310を比較的小さく並進運動させることによって、ベクトル311、321を一致させてもかまわない。
【0072】
リニアモータ300の大雑把な調節を実施する枠組みの中で、一次部材310が、電機子磁束ベクトル311の立ち上げ時に全く並進運動をしない、または、もはや並進運動をしないということも起こり得る。一次部材310が電機子磁束ベクトル311の1回目の立ち上げ時に運動しない場合に備えて、同期モータ100に関して、電機子磁束ベクトル311を別の向きに生成して、さらに(適宜)上記の大雑把な調節プロセスを継続することを提案する。この別の向きであっても並進運動が全く発生しない場合に備えて、光または音で出力されるエラーメッセージを(増幅器200によって)生成してもよい。これは、例えばエンジンブレーキが働いていれば(働いているままであれば)、または、一次部材310の運動を防止するこれ以外の状況が存在すれば起こり得る。
【0073】
一次部材310が電機子磁束ベクトル311の先の立ち上げ時には毎回(異なる向きで)運動したにもかかわらず、一次部材310が電機子磁束ベクトル311の生成時には運動しない場合には、ベクトル311、321がすでに一致しているのであるから、大雑把な調節を終了してもかまわず、その後、精密な調節を開始する必要はない。
【0074】
上記図面を参照しながら説明した実施形態は、本発明の好ましい、または、一例としての実施形態を表わしている。また、上記の実施形態の変更または組み合わせを表わす、上記以外の実施形態もさらに考え得る。
【0075】
特に、固定電機子機器と称されるモータを示す図1に示す同期モータ100の大雑把な調整および精密な調節の方法を、回転子が回転磁場を生成し、固定子が直流磁場を供給するように構成された外部磁極機器と称されるに対して使用してもかまわない。これは、図8A〜図8Cに示すリニア駆動300とは逆に、進行磁場を生成するために使用される一次部材が静止しており、静磁場を供給するために使用される二次部材が摺動可能な様態に構成されたリニア駆動にも同様に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】回転同期モータとサーボ増幅器とを備えたシステムの概略図である。
【図2】3つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【図3】1つの磁極対を有する、図1の同期モータの概略図である。
【図4A】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図4B】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図4C】同期モータの磁場を大雑把に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図5】同期モータを大雑把に調節する際の、回転子運動、および、磁束ベクトルの目標値の選択の一例を示す図である。
【図6】磁場を精密に調節するための動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図7】磁場を精密に調節するための別の動作状態にある、図3の同期モータを示している。
【図8A】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【図8B】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【図8C】磁場を大雑把に調節するための動作状態にあるリニア同期モータの概略図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材(110、310)と第2のモータ部材(120、320)とを備えた同期モータ(100、300)を作動させる方法であって、
該第1のモータ部材(110、310)が磁場(111、311)を生成するように構成され、
該第2のモータ部材(120、320)が第2のモータ部材(120、320)に対して静止している磁場(121、321)を有し、
該第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)の各磁場(111、121、311、321)の向きに違いがある場合、第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)が互いに対して相対的に運動し、
a)該第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに生成して、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で所定値(151)に限定された相対運動を発生させるステップと、
b)この第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向を決定するステップと、
c)第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、ステップa)およびステップb)を繰り返すステップとを実行し、
ステップa)およびステップb)を繰り返す間に、ステップa)が行われるごとに、先に生成された上記磁場(111、311)に対して変化した向きを有する磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって生成し、ここで、磁場(111、311)の向きを、それぞれ所定の配向セクション(170)によって、および、上記の決定された運動方向に応じて変化させ、
上記ステップa)〜ステップc)によって、該第1のモータ部材(110、310)の磁場(111、311)を第2のモータ部材(120、320)の磁場(121、321)の方向に徐々に揃える、方法。
【請求項2】
上記第1のモータ部材(110)が静止しており、
上記第2のモータ部材(120)が上記第1のモータ部材(110)に対して可動であり、
上記第1のモータ部材(110)によって生成される磁場(111)の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された運動方向とは反対の方向に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記第2のモータ部材(320)が静止しており、
上記第1のモータ部材(310)が上記第2のモータ部材(320)に対して可動であり、
上記第1のモータ部材(310)によって生成される磁場(311)の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された運動方向に対応する方向に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)の後に、別の磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって生成し、
この別の磁場(111、311)の向きを、第1のモータ部材(110、310)によって最後に生成される2つの磁場(111、311)の向きの中間になるように選び、
上記別の磁場(111、311)の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)の後に、別の磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって最後の向きから始めて生成し、
上記第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動を決定し、
上記別の磁場(111、311)の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させ、
上記別の磁場(111、311)の向きを、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が停止するまで変化させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、上記磁場(111、311)の強度をゼロから増加させることを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記ステップa)において発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動を、第1のモータ部材(110、310)によって生成される磁場(111、311)をスイッチオフすることによって、相対運動の所定値(151)を通った後に終了させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で相対運動が一切生成されない場合、もう1つの向きを前もって決定し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のモータ部材(110、310)と、第2のモータ部材(120、320)と、エンコーダ(130)とを備えた同期モータ(100、300)を作動させるための増幅器であって、
該第1のモータ部材(110、310)が磁場(111、311)を生成するように構成され、
該第2のモータ部材(120、320)が第2のモータ部材(120、320)に対して静止している磁場(121、321)を有し、
該第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)の各磁場(111、121、311、321)の向きに違いがある場合、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で、該エンコーダ(130)によって決定することができる相対運動が発生し、
該増幅器(200)が、パワーユニット(220)と制御ユニット(210、230)とを備え、
該パワーユニット(220)が、磁場(111、311)を複数の向きに生成するために、第1のモータ部材(110、310)に電流を供給するように構成され、
該制御ユニット(210、230)が、パワーユニット(220)を制御し、エンコーダ(130)によって決定された相対運動を評価するように構成され、
該制御ユニット(210、320)が、第1のモータ部材(110、310)の磁場(111、311)を、同期モータ(110、300)の動作開始の枠組みの中で、第2のモータ部材(120、320)の磁場(121、321)の方向に徐々に揃えることを開始するようにさらに構成され、
この同期モータ(110、300)の動作開始は、該制御ユニット(210、230)が、
ステップa)において、第1のモータ部材(110、310)による、磁場(111、311)の所定の向きの生成を開始して、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で所定値に限定された相対運動を発生させ、
ステップb)において、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向をエンコーダ(130)によって決定し、
第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、2つのステップa)およびステップb)を繰り返し、
ステップa)およびステップb)を繰り返す間に、制御ユニット(210、230)が、上記一連のステップが行われるごとに、ステップa)において、先に生成された上記磁場(111、311)に対して変化した向きを有する磁場(111、311)の、第1のモータ部材(110、310)による生成を開始し、
ここで、上記磁場(111、311)の向きを、それぞれ所定の配向セクション(170)によって、および、エンコーダ(130)によって決定された運動方向に応じて変化させることによって実行される、増幅器。
【請求項10】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)およびステップb)を繰り返した後に、第1のモータ部材(110、310)による別の磁場(111、311)の生成を開始するようにさらに構成され、
この別の磁場(111、311)の向きが、第1のモータ部材(110、310)によって最後に生成される2つの磁場(111、311)の向きの中間になるように選ばれ、
上記別の磁場(111、311)の強度が、ゼロから始めて所定値に達するまで増加させられる、請求項9に記載の増幅器。
【請求項11】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)およびステップb)を繰り返した後に、第1のモータ部材(110、310)によって別の磁場(111、311)を最後の向きから始めて生成することを開始するようにさらに構成され、
上記別の磁場(111、311)の強度が、ゼロから初めて所定値に達するまで増加させられ、
上記別の磁場(111、311)の向きが、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が停止するまで変えられる、請求項9に記載の増幅器。
【請求項12】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)において上記磁場(111、311)の強度をゼロから増加させることを開始するように構成される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項13】
上記制御ユニット(210、230)が、エンコーダ(130)によって決定された第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が所定値を通った場合に、ステップa)において第1のモータ部材(111、311)によって生成された磁場(111、311)の終了を開始するように構成される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項14】
上記制御ユニット(210、310)が、第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で相対運動が一切生成されない場合、第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)をもう1つの向きに生成することを開始し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施するように構成される、請求項9〜13のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一項に記載の増幅器(200)と同期モータ(100、300)とを備えたシステム。
【請求項1】
互いに対して相対的に可動な第1のモータ部材(110、310)と第2のモータ部材(120、320)とを備えた同期モータ(100、300)を作動させる方法であって、
該第1のモータ部材(110、310)が磁場(111、311)を生成するように構成され、
該第2のモータ部材(120、320)が第2のモータ部材(120、320)に対して静止している磁場(121、321)を有し、
該第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)の各磁場(111、121、311、321)の向きに違いがある場合、第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)が互いに対して相対的に運動し、
a)該第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに生成して、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で所定値(151)に限定された相対運動を発生させるステップと、
b)この第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向を決定するステップと、
c)第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、ステップa)およびステップb)を繰り返すステップとを実行し、
ステップa)およびステップb)を繰り返す間に、ステップa)が行われるごとに、先に生成された上記磁場(111、311)に対して変化した向きを有する磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって生成し、ここで、磁場(111、311)の向きを、それぞれ所定の配向セクション(170)によって、および、上記の決定された運動方向に応じて変化させ、
上記ステップa)〜ステップc)によって、該第1のモータ部材(110、310)の磁場(111、311)を第2のモータ部材(120、320)の磁場(121、321)の方向に徐々に揃える、方法。
【請求項2】
上記第1のモータ部材(110)が静止しており、
上記第2のモータ部材(120)が上記第1のモータ部材(110)に対して可動であり、
上記第1のモータ部材(110)によって生成される磁場(111)の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された運動方向とは反対の方向に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記第2のモータ部材(320)が静止しており、
上記第1のモータ部材(310)が上記第2のモータ部材(320)に対して可動であり、
上記第1のモータ部材(310)によって生成される磁場(311)の向きを、上記一連のステップが行われるごとに、上記の決定された運動方向に対応する方向に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)の後に、別の磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって生成し、
この別の磁場(111、311)の向きを、第1のモータ部材(110、310)によって最後に生成される2つの磁場(111、311)の向きの中間になるように選び、
上記別の磁場(111、311)の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)の後に、別の磁場(111、311)を第1のモータ部材(110、310)によって最後の向きから始めて生成し、
上記第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動を決定し、
上記別の磁場(111、311)の強度をゼロから始めて所定値に達するまで増加させ、
上記別の磁場(111、311)の向きを、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が停止するまで変化させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、上記磁場(111、311)の強度をゼロから増加させることを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記ステップa)において発生する第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動を、第1のモータ部材(110、310)によって生成される磁場(111、311)をスイッチオフすることによって、相対運動の所定値(151)を通った後に終了させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で相対運動が一切生成されない場合、もう1つの向きを前もって決定し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のモータ部材(110、310)と、第2のモータ部材(120、320)と、エンコーダ(130)とを備えた同期モータ(100、300)を作動させるための増幅器であって、
該第1のモータ部材(110、310)が磁場(111、311)を生成するように構成され、
該第2のモータ部材(120、320)が第2のモータ部材(120、320)に対して静止している磁場(121、321)を有し、
該第1のモータ部材および第2のモータ部材(110、120、310、320)の各磁場(111、121、311、321)の向きに違いがある場合、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で、該エンコーダ(130)によって決定することができる相対運動が発生し、
該増幅器(200)が、パワーユニット(220)と制御ユニット(210、230)とを備え、
該パワーユニット(220)が、磁場(111、311)を複数の向きに生成するために、第1のモータ部材(110、310)に電流を供給するように構成され、
該制御ユニット(210、230)が、パワーユニット(220)を制御し、エンコーダ(130)によって決定された相対運動を評価するように構成され、
該制御ユニット(210、320)が、第1のモータ部材(110、310)の磁場(111、311)を、同期モータ(110、300)の動作開始の枠組みの中で、第2のモータ部材(120、320)の磁場(121、321)の方向に徐々に揃えることを開始するようにさらに構成され、
この同期モータ(110、300)の動作開始は、該制御ユニット(210、230)が、
ステップa)において、第1のモータ部材(110、310)による、磁場(111、311)の所定の向きの生成を開始して、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で所定値に限定された相対運動を発生させ、
ステップb)において、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向をエンコーダ(130)によって決定し、
第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の限定された相対運動の運動方向に変化が発生するまで、2つのステップa)およびステップb)を繰り返し、
ステップa)およびステップb)を繰り返す間に、制御ユニット(210、230)が、上記一連のステップが行われるごとに、ステップa)において、先に生成された上記磁場(111、311)に対して変化した向きを有する磁場(111、311)の、第1のモータ部材(110、310)による生成を開始し、
ここで、上記磁場(111、311)の向きを、それぞれ所定の配向セクション(170)によって、および、エンコーダ(130)によって決定された運動方向に応じて変化させることによって実行される、増幅器。
【請求項10】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)およびステップb)を繰り返した後に、第1のモータ部材(110、310)による別の磁場(111、311)の生成を開始するようにさらに構成され、
この別の磁場(111、311)の向きが、第1のモータ部材(110、310)によって最後に生成される2つの磁場(111、311)の向きの中間になるように選ばれ、
上記別の磁場(111、311)の強度が、ゼロから始めて所定値に達するまで増加させられる、請求項9に記載の増幅器。
【請求項11】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)およびステップb)を繰り返した後に、第1のモータ部材(110、310)によって別の磁場(111、311)を最後の向きから始めて生成することを開始するようにさらに構成され、
上記別の磁場(111、311)の強度が、ゼロから初めて所定値に達するまで増加させられ、
上記別の磁場(111、311)の向きが、第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が停止するまで変えられる、請求項9に記載の増幅器。
【請求項12】
上記制御ユニット(210、230)が、ステップa)において上記磁場(111、311)の強度をゼロから増加させることを開始するように構成される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項13】
上記制御ユニット(210、230)が、エンコーダ(130)によって決定された第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間の相対運動が所定値を通った場合に、ステップa)において第1のモータ部材(111、311)によって生成された磁場(111、311)の終了を開始するように構成される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項14】
上記制御ユニット(210、310)が、第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)を所定の向きに第1回目に生成する間に、ステップa)では第1のモータ部材と第2のモータ部材(110、120、310、320)との間で相対運動が一切生成されない場合、第1のモータ部材(110、310)によって磁場(111、311)をもう1つの向きに生成することを開始し、ステップa)をこのもう1つの向きを用いて再度実施するように構成される、請求項9〜13のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一項に記載の増幅器(200)と同期モータ(100、300)とを備えたシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公表番号】特表2012−522476(P2012−522476A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501211(P2012−501211)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052270
【国際公開番号】WO2010/108741
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505344063)ベックホフ オートメーション ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052270
【国際公開番号】WO2010/108741
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505344063)ベックホフ オートメーション ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】
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