説明

同期切換装置

【課題】長期間の使用によってもスリーブ72の内周歯108と動力伝達歯車54のドグ歯118との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない噛合クラッチを提供する。
【解決手段】軸心C方向において、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fが、ドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいという関係が維持されるので、スリーブ72の内周歯108と動力伝達歯車54のドグ歯118との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない噛合クラッチ10〜18が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源から駆動輪までの間の動力伝達経路において動力伝達経路を切り換えるために手動変速機やトランスファ等に設けられる同期切換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、エンジン等の駆動源から駆動輪までの動力伝達経路において、変速段を択一的に切り換えるために或いは2輪駆動と4輪駆動とのいずれかに切り換えるために用いられる同期切換装置を備えたものがある。たとえば、手動変速機やトランスファに設けられるものがそれである。
【0003】
上記同期切換装置は、回転軸に一体的に設けられたハブの外周歯と噛み合う内周歯を有して該ハブに軸心方向の移動可能且つ軸心まわりの相対回転不能に設けられたスリーブと、そのスリーブの内周歯と係合可能なドグ歯を有し、前記回転軸に相対回転可能に支持された動力伝達歯車と、同期歯を有して前記ハブと動力伝達歯車との間に配設され、その動力伝達歯車との回転非同期時には該同期歯が前記スリーブの内周歯に当接して該スリーブの移動を阻止する阻止位置と、その動力伝達歯車との回転同期時にはその同期歯が該スリーブの内周歯の通過を許容してそのスリーブの移動を許容する許容位置との間で相対回転させられる同期リングとを備え、切換操作にしたがってスリーブが軸心方向に移動させられたとき、動力伝達歯車とスリーブとの相対回転速度差があるうちはスリーブの移動が阻止され、その相対回転速度差がなくなって回転同期するとそのスリーブの移動が許容されてそのスリーブの内周歯とドグ歯とが噛み合うことにより回転軸と動力伝達歯車との間が一体的に連結されて動力伝達可能とされる。これにより、スリーブの内周歯とドグ歯との間の衝突やそれに起因するギヤ鳴りが防止され、耐久性が高められる。たとえば、特許文献1に記載された手動変速機の同期切換装置がそれである。
【特許文献1】特開2001−020974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の同期切換装置では、一般に、振動等に起因して、スリーブの内周歯とドグ歯とが相互に噛み合っている状態からスリーブがハブ側へ移動してそれらの噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生することの防止のために、スリーブの内周歯とそれに噛み合うドグ歯とは、先端に向かうにしたがってピッチ円上の歯寸法が大きくなるようにすなわち逆テーパ状に形成されている。
【0005】
しかしながら、長期間の使用により微小な往復振動が加えられると、上記スリーブの内周歯とそれに噛み合うドグ歯との磨耗が大きくなることから、それらの噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、長期間の使用によってもスリーブの内周歯と動力伝達歯車のドグ歯との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない車両用同期切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、ハブの外周歯とスリーブの内周歯との間の圧力角を、ドグ歯とスリーブの内周歯との間の圧力角よりも小さくすると、長期間の使用によって磨耗が進行したとしても、ハブの外周歯とスリーブの内周歯との間の摩擦力がドグ歯とスリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいという関係が維持されて、長期間の使用によってもスリーブの内周歯と動力伝達歯車のドグ歯との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しないことを見いだした。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(1)回転軸に一体的に設けられたハブの外周歯と噛み合う内周歯を有してそのハブに軸心方向の移動可能且つ軸心まわりの相対回転不能に設けられたスリーブと、そのスリーブの内周歯と係合可能なドグ歯を有し、前記回転軸に相対回転可能に支持された動力伝達歯車と、同期歯を有して前記ハブと該動力伝達歯車との間に配設され、その動力伝達歯車との回転非同期時にはその同期歯が前記スリーブの内周歯に当接してそのスリーブの移動を阻止する阻止位置と、その動力伝達歯車との回転同期時には該同期歯がそのスリーブの内周歯の通過を許容して該スリーブの移動を許容する許容位置との間で相対回転させられる同期リングとを備える車両用同期切換装置であって、(2)前記軸心方向において、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいことにある。
【0009】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の面圧力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の面圧力よりも小さいことにある。
【0010】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の圧力角が前記ドグ歯とそのスリーブの内周歯との間の圧力角よりも小さいことにある。
【0011】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の圧接時において該スリーブに該スリーブの内周歯の先端側へ向かう軸心方向に平行な方向の推力が発生するように、ピッチ面上において前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の幅寸法が先端に向かうほど大きくなるように形成されていることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両用同期切換装置によれば、(1)回転軸に一体的に設けられたハブの外周歯と噛み合う内周歯を有してそのハブに軸心方向の移動可能且つ軸心まわりの相対回転不能に設けられたスリーブと、そのスリーブの内周歯と係合可能なドグ歯を有し、前記回転軸に相対回転可能に支持された動力伝達歯車と、同期歯を有して前記ハブと該動力伝達歯車との間に配設され、その動力伝達歯車との回転非同期時にはその同期歯が前記スリーブの内周歯に当接してそのスリーブの移動を阻止する阻止位置と、その動力伝達歯車との回転同期時には該同期歯がそのスリーブの内周歯の通過を許容して該スリーブの移動を許容する許容位置との間で相対回転させられる同期リングとを備え、(2)前記軸心方向において、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいという関係が維持されるので、スリーブの内周歯と動力伝達歯車のドグ歯との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない車両用同期切換装置が得られる。
【0013】
また、請求項2に係る発明の車両用同期切換装置によれば、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の面圧力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の面圧力よりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいという関係が維持されるので、スリーブの内周歯と動力伝達歯車のドグ歯との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない車両用同期切換装置が得られる。
【0014】
また、請求項3に係る発明の車両用同期切換装置によれば、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の圧力角が前記ドグ歯とそのスリーブの内周歯との間の圧力角よりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいという関係が維持されるので、スリーブの内周歯と動力伝達歯車のドグ歯との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない車両用同期切換装置が得られる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の車両用同期切換装置によれば、前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の圧接時において該スリーブに該スリーブの内周歯の先端側へ向かう軸心方向に平行な方向の推力が発生するように、ピッチ面上において前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の幅寸法が先端に向かうほど大きくなるように形成されていることから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいという関係が維持されることによるギヤ抜け効果と、逆テーパによるギヤ抜け効果とが同時に得られるので、一層確実にギヤ抜けが発生しない車両用同期切換装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例の噛合クラッチ(同期切換装置)10、12、14、16、18を備えた変速機20を含む車両用駆動装置22の構成を説明する骨子図である。図1において、車両用駆動装置22は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、走行用の駆動源としてのエンジン24と、乾式単板式の摩擦クラッチであるクラッチ26と、上記変速機20と、終減速機としても機能する差動歯車装置28と、駆動軸88R、88Lと、駆動輪90R、90Lとを備えている。上記噛合クラッチ10〜18は、車両のエンジン24から駆動輪90R、90Lまでの動力伝達経路において動力伝達経路を切り換えるためのものである。なお、図1は、後述の入力軸32、出力軸34、リングギヤ80、およびフォークシャフト77のそれぞれの軸心を共通の平面内に示した展開図である。
【0018】
変速機20は、手動変速機などに用いられるよく知られた平行2軸型常時噛合式の前進5速の有段変速機であって、差動歯車装置28と共に共通のハウジング30内に配設されてトランスアクスルを構成しており、そのハウジング30内に所定量だけ充填された潤滑油に浸漬されて差動歯車装置28と共に潤滑されるようになっている。変速機20は、平行な2軸すなわち入力軸(回転軸)32と出力軸(回転軸)34とを備えており、その入力軸32および出力軸34は、軸受40〜46を介してハウジング30に回転可能に支持されている。また、入力軸32の一端は、スプライン嵌合継手36を介してクラッチ26のクラッチ出力軸37に連結されている。
【0019】
入力軸32と出力軸34との間には、それらのうちの一方に相対回転可能に支持された動力伝達歯車54と、その動力伝達歯車54に常時噛み合わされた状態で他方にスプライン嵌合などにより相対回転不能に固設された動力伝達固定歯車48とから成る、ギヤ比がそれぞれ異なる変速ギヤ対58、60、62、64、66がそれぞれ配設されている。上記動力伝達固定歯車48は、上記入力軸32および出力軸34のうちの他方と一体回転させられ、上記動力伝達歯車54は、噛合クラッチ10〜18の何れか1を介して上記入力軸32および出力軸34のうちの一方と選択的に連結されるようになっている。また、入力軸32と出力軸34とには、互いに噛み合わない状態で後進ギヤ対68が配設されており、後進変速段は、図示しないリバースアイドルシャフトに配設された後進用アイドル歯車が上記後進ギヤ対68の後進ギヤとそれぞれ噛み合わされることにより成立するようになっている。
【0020】
また、変速機20には、噛合クラッチ10〜18を構成するスリーブ70、72、74に対してそれらの軸心まわりの相対回転可能にそれぞれ係合させられた状態で設けられ、それらスリーブ70〜74をそれぞれの軸心方向に選択的に移動させることにより上記噛合クラッチ10〜18の何れか1を連結状態とする3つのフォーク76(他の2つは図示せず)と、入力軸32および出力軸34に略平行な軸心を有して上記フォーク76がそれぞれ固設された3本のフォークシャフト77(他の2本は図示せず)と、フォークシャフト77に略直角な方向に設けられて上記3本のフォークシャフト77のうち何れか1をその軸心方向に移動させるためのシフトアンドセレクトシャフト78とが、備えられている。
【0021】
上記シフトアンドセレクトシャフト78は、その軸心に直角な方向に突き出して設けられたアーム部79を有しており、例えば運転者に操作される図示しないシフト操作レバーに連動して機械的にシフトアンドセレクトシャフト78の軸心方向であるセレクト方向へ移動させられることにより、アーム部79を介して3本のフォークシャフト77の何れか1に選択的に係合させられるようになっている。すなわち、シフトアンドセレクトシャフト78は、フォークシャフト77およびフォーク76を介してスリーブ70と係合可能な第1セレクト位置と、スリーブ72と係合可能な第2セレクト位置と、スリーブ74と係合可能な第3セレクト位置とへ移動させられるようになっている。
【0022】
また、シフトアンドセレクトシャフト78は、前記シフト操作レバーに連動して機械的にシフトアンドセレクトシャフト78の軸心まわりに回動させられることにより、アーム部79を介して3本のフォークシャフト77の何れか1をその軸心方向に移動させるようになっている。すなわち、シフトアンドセレクトシャフト78は、上記第1セレクト位置〜第3セレクト位置の何れか1の位置において、フォークシャフト77およびフォーク76を介してスリーブ70〜74の何れか1が図1の右方向に移動させられて噛合クラッチ10、14、18のいずれか1が連結状態とされる第1シフト位置と、スリーブ70、72のどちらかが図1の左方向に移動させられて噛合クラッチ12、16のどちらかが連結状態とされる第2シフト位置と、噛合クラッチ12〜18がいずれも係合されないニュートラル状態となるニュートラル位置とへ移動させられるようになっている。
【0023】
上記第1セレクト位置における第1シフト位置では、噛合クラッチ10が連結状態とされることにより変速比(=入力軸32の回転数/出力軸34の回転数)が最も大きい第1変速段が成立させられ、第1セレクト位置における第2シフト位置では、噛合クラッチ12が連結状態とされることにより変速比が2番目に大きい第2変速段が成立させられる。また、第2セレクト位置における第1シフト位置では、噛合クラッチ14が連結状態とされることにより変速比が3番目に大きい第3変速段が成立させられ、第2セレクト位置における第2シフト位置では、噛合クラッチ16が連結状態とされることにより変速比が4番目に大きい第4変速段が成立させられる。また、第3セレクト位置における第1シフト位置では、噛合クラッチ18が連結状態とされることにより変速比が最も小さい第5変速段が成立させられる。
【0024】
差動歯車装置28は、よく知られた所謂傘歯車型のものであり、その構成のうちのリングギヤ80は、出力軸34に固設された出力歯車82を介して変速機20と連結されている。リングギヤ80と共に回転するピニオンギヤ84を挟んで相対向する1対のサイドギヤ86R、86Lには、それぞれドライブシャフト(駆動軸)88R、88Lの一端がスプライン嵌合などによって連結されており、差動歯車装置28は、回転差を許容しつつ一対のドライブシャフト88R、88Lを介して左右一対の前輪(駆動輪)90R、90Lを回転駆動させるようになっている。
【0025】
上記噛合クラッチ10〜18は同様に構成されている。以下、変速機20の略中央に位置する噛合クラッチ16について具体的に説明する。図2は、図1の変速機20のうち噛合クラッチ16およびその周辺の具体的構成を示すII矢視部断面図である。図2に示すように、噛合クラッチ16は、前記スリーブ72および動力伝達歯車54の他に、ハブ92と、キー94と、シンクロナイザリング(同期リング)96とを備えている。
【0026】
ハブ92は、軸心Cを有する短円筒状であり、その外周面に軸心Cに平行であってその軸心Cまわりに等角度間隔で突設された複数の外周歯100を備えている。また、ハブ92の外周面には、軸心Cに平行であってその軸心Cまわりに等角度間隔で形成された所定幅の複数(本実施例では3本)の溝103が設けられている。また、ハブ92は、スプライン嵌合によって入力軸32に一体的に設けられ、その入力軸32と一体回転させられるとともに、スナップリング106や軸心C方向の両側に配設された動力伝達歯車54によって軸心C方向に位置決めされている。
【0027】
スリーブ72は、軸心Cを有する短円筒状であり、上記ハブ92の外周歯100と噛み合う内周歯108を有してハブ92にスプライン嵌合させられることにより、そのハブ92に対して軸心C方向の相対移動可能且つ軸心Cまわりの相対回転不能に設けられている。また、スリーブ72は、フォーク76によって軸心C方向に離間した一対の変速位置すなわち図2の右方向の3速位置および左方向の4速位置と、その一対の変速位置の中間に位置して動力伝達を遮断する中立位置(図2の状態)とへ移動させられる。上記フォーク76は、前記運転者に操作される図示しないシフト操作レバーに連動してシフトアンドセレクトシャフト78等を介して機械的に図2の左右方向へ移動させられるようになっている。
【0028】
キー94は、軸心Cを中心とする半径外側方向の一面から突き出す凸部110を有する直方体状である。また、キー94は、ハブ92の溝103に嵌め入れられた状態でスリーブ72の内周側に等角度間隔で複数(本実施例では3つ)配設されており、それぞれハブ92に対する軸心C方向の相対移動は許容されるようになっているが、軸心Cまわりの相対回転はハブ92との係合によって阻止されている。スリーブ72の内周面のうち軸心C方向の中央部には、軸心Cまわりにおけるキー94に対応する箇所を含む部位に周方向の溝112が設けられており、キー94は、一対の部分輪状(C状)のスプリング114によってスリーブ72の内周面に押圧させられることにより、そのキー94の凸部110が溝112に嵌り込んでスリーブ72の軸心C方向の略中央に位置決めされるようになっている。なお、キー94は、そのキー94に所定の負荷が作用することでスプリング114の付勢力に抗して溝112から抜け出し、スリーブ72に対して軸心C方向へ相対移動できるようになる。
【0029】
動力伝達歯車54は、スリーブ72の内周歯102と周方向の相対回転不能に係合可能すなわちスプライン嵌合可能なドグ歯118を有し、ニードルベアリング116等により入力軸32に相対回転可能に支持されている。具体的には、動力伝達歯車54には、そのハブ92側の端部に、軸心Cを有する短円筒状であって、その外周面にスリーブ72の内周歯102とスプライン嵌合可能な上記ドグ歯118を有し、そのドグ歯118とハブ92との間においてドグ歯118に接近するほど大径となるテーパ状外周面(コーン面)120が形成されたギヤピース122が、スプライン嵌合によって一体的に嵌着されている。本実施例においては、スリーブ72がフォーク76により前記4速位置へ移動させられることにより、そのスリーブ72の内周歯108と上記ギヤピース122のドグ歯118とがスプライン嵌合されて、動力伝達歯車54が入力軸32と一体回転させられるようになっている。
【0030】
シンクロナイザリング96は、短円筒状であって、その外周面にスリーブ72の内周歯102と係合可能な同期歯124を有し、その内周面に前記ドグ歯118とハブ92との間においてそのドグ歯118に接近するほど大径となるテーパ状内周面(コーン面)126を有して、ハブ92と動力伝達歯車54のギヤピース122との間におけるテーパ状外周面120の外周面側において、そのギヤピース122に対して相対回転可能且つ軸心C方向の相対移動可能に配設されている。シンクロナイザリング96のテーパ状内周面126は、動力伝達歯車54との回転非同期時には、軸心C方向においてギヤピース122側へ押圧されることにより、そのギヤピース122のテーパ状外周面120とテーパ嵌合させられ摩擦係合させられ、相互の回転速度差を減少させるようになっている。
【0031】
また、シンクロナイザリング96には、そのハブ92側の端部において、前記キー94の軸方向の端部に軸心Cまわりの所定角度の相対回転を許容する状態で係合させられるキー溝128が設けられており、シンクロナイザリング96は、上記所定角度の遊びを有する状態でハブ92と共に回転させられる。ここで、上記所定角度は、シンクロナイザリング96と動力伝達歯車54との回転非同期時には上記同期歯124がスリーブ72の内周歯108に当接してそのスリーブ72の移動を阻止する阻止位置(後述の図3および図4に示す)と、シンクロナイザリング96と動力伝達歯車54との回転同期時には同期歯124がスリーブ72の内周歯108の通過を許容してスリーブ72の第2シフト位置への移動を許容する許容位置(後述の図5および図6に示す)との間で、シンクロナイザリング96がスリーブ72およびハブ92に対して上記所定角度の相対回転させられるように設定される。
【0032】
以上のように構成された噛合クラッチ16が、図2に示すニュートラル位置からスリーブ72と動力伝達歯車54との連結位置すなわち前記4速位置へ切換操作された場合の作動を説明する。図3乃至図6は、噛合クラッチ16の作動を説明する図であって、図3および図5は、上記作動の途中の状態をそれぞれ示す、図2におけるIII矢視部に相当する断面図であり、図4は、上記図3において内周歯108および外周歯100のピッチ面と、内周歯108およびドグ歯118のピッチ面とを含むIV−IV矢視断面を一平面内に示した展開図であり、図6は、上記図5において内周歯108および外周歯100のピッチ面と、内周歯108およびドグ歯118のピッチ面とを含むVI−VI矢視断面を一平面内に示した展開図である。
【0033】
切換操作にしたがってスリーブ72が軸心C方向における動力伝達歯車54側に向かって移動させられると、先ず、キー94がシンクロナイザリング96のキー溝128の軸方向端面128aに当接させられてシンクロナイザリング96がギヤピース122側へ押圧されることにより、そのシンクロナイザリング96とギヤピース66とが摺接させられる。この際、スリーブ72と動力伝達歯車54との相対回転速度差があるうちは、シンクロナイザリング96のテーパ状内周面126とギヤピース66のテーパ状外周面120との間の相対回転により発生する摩擦力によってシンクロナイザリング96と動力伝達歯車54との回転が次第に同期させられる。この同期までの期間においては、図3および図4に示すように、シンクロナイザリング96の同期歯124がスリーブ72の内周歯108に当接して、スリーブ72の動力伝達歯車54側への更なる軸心C方向の移動が阻止される。
【0034】
次いで、上記相対回転速度差がなくなってシンクロナイザリング96と動力伝達歯車54とが回転同期されると、上記摩擦力が減少して内周歯108に対する同期歯124の阻止力が弱くなり、上記スリーブ72の動力伝達歯車54側への更なる軸心C方向への移動が許容される。そして、スリーブ72に加えられる動力伝達歯車54側への操作荷重に従って、スプリング114の付勢力に抗してキー94の凸部110が溝112から抜け出すと、スリーブ72が動力伝達歯車54側へ移動させられ、図5および図6に示すように、スリーブ72の内周歯108とギヤピース122のドグ歯118とが互いに噛み合わされて噛合クラッチ16が連結状態とされる。これにより、入力軸32に入力された動力がハブ92、スリーブ72および変速ギヤ対64を順次介して出力軸34に伝達される。本実施例では、上記シンクロナイザリング96、テーパ状内周面126、テーパ状外周面120、キー94などが同期装置として機能している。
【0035】
以下、本実施例の噛合クラッチ16において、その噛合クラッチ16が連結状態とされて入力軸32が回転駆動された場合に、スリーブ72の内周歯108とギヤスリーブ122のドグ歯118との間で発生する摩擦力f、およびスリーブ72の内周歯108とハブ92の外周歯100との間に発生する摩擦力fについて説明する。図7は、図6におけるVII矢視部を拡大して示す、内周歯108およびドグ歯118のピッチ面と、内周歯108および外周歯100のピッチ面とを含む断面を一平面内に示した展開図である。また、図8は、図7のVIII−VIII矢視部に相当する、内周歯108とドグ歯118との噛み合い部を示す断面図であり、図9は、図5のIX−IX矢視部に相当する、内周歯108と外周歯100との噛み合い部を示す断面図である。
【0036】
図8に示すように、噛合クラッチ16が連結状態とされて入力軸32が回転駆動された場合、入力軸32に入力された軸心Cまわりのトルクの円周方向成分であるトルク荷重F[N]が内周歯108からドグ歯118へ作用する。そして、そのトルク荷重Fに起因してスリーブ72がギヤピース122に対して共通の軸心Cを有する状態で相対的に固定されていることによって発生する反力N[N]とに釣り合う力、すなわち噛み合い点Aにおける歯形の接線に直角な方向の面圧力σ[N/m2](図示しない)に由来する面直荷重F[N]が発生する。この面直荷重Fは、上記トルク荷重Fおよび内周歯108のピッチ面上における圧力角α[rad]により次式(1)のように表される。
【0037】
F = F* cos(α) ・・・(1)
【0038】
また、図9に示すように、噛合クラッチ16が連結状態とされて入力軸32が回転駆動された場合、前記トルク荷重Fが外周歯100から内周は108へ作用する。そして、そのトルク荷重Fに起因してハブ92がスリーブ72に対して共通の軸心Cを有する状態で相対的に固定されていることによって発生する反力N[N]とに釣り合う力、すなわち噛み合い点Bにおける歯形の接線に直角な方向の面圧力σ[N/m2](図示しない)に由来する面直荷重F[N]が発生する。この面直荷重Fは、上記トルク荷重Fおよび外周歯100のピッチ面上における圧力角α'[rad]により次式(2)のように表される。
【0039】
F = F* cos(α') ・・・(2)
【0040】
ここで、本実施例における噛合クラッチ16は、図9に示すハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の圧力角α'が、図8に示すギヤピース122のドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の圧力角αよりも小さくなるように構成されている。また、本実施例における噛合クラッチ16においては、図7に示すように、ピッチ面上において内周歯108のうちドグ歯118と噛み合う所定範囲の周方向の幅寸法が先端すなわち図7の左側に向かうほど大きくなるように逆テーパ状に形成されており、ドグ歯118の周方向の幅寸法が先端すなわち図7の右側に向かうほど大きくなるように逆テーパ状に形成されている。これらにより、噛合クラッチ16が連結状態とされて入力軸32が回転駆動された時すなわちスリーブ72の内周歯108とギヤピース122のドグ歯118との周方向の圧接時において、スリーブ72にそのスリーブ72の内周歯108の先端側へ向かう軸心方向に平行な方向の推力すなわち前記摩擦力fおよび摩擦力fが各圧接部分にそれぞれ発生する。これら摩擦力f、fは、それぞれの部材間の摩擦係数μ、μおよび前記面直荷重F、Fにより次式(3)、(4)のように表される。
【0041】
= μ * F ・・・(3)
= μ * F ・・・(4)
【0042】
そして、式(1)〜式(4)から、次式(5)、(6)が導かれる。
【0043】
= (μ * F) / cosα ・・・(5)
= (μ * F) / cosα' ・・・(6)
【0044】
式(5)および式(6)に示すように、前述のように圧力角α'が圧力角αよりも小さい(α>α')ことから、上記摩擦係数μと摩擦係数μとが等しい(μ=μ=μ) 場合には、軸心C方向において、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fが、ドグ歯118と上記スリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さく(f>f)なる。また、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の面圧力σが、ドグ歯118と上記スリーブ72の内周歯108との間の面圧σよりも小さくなる。すなわち、スリーブ72に対して運転者による操作荷重が加えられない場合、そのスリーブ72が動力伝達歯車54との連結状態から抜け出る力(摩擦力f)が、スリーブ72が動力伝達歯車54との連結状態を維持する力(摩擦力f)よりも小さくなる。
【0045】
上述のように、本実施例の噛合クラッチ10〜18(車両用同期切換装置)によれば、(1)入力軸または出力軸の他方に一体的に設けられたハブ92の外周歯100と噛み合う内周歯108を有してそのハブ92に軸心C方向の移動可能且つ軸心Cまわりの相対回転不能に設けられたスリーブ72と、そのスリーブ72の内周歯108と係合可能なドグ歯118を有し、前記入力軸または出力軸の他方に相対回転可能に支持された動力伝達歯車54と、同期歯124を有してハブ92と動力伝達歯車54との間に配設され、その動力伝達歯車54との回転非同期時にはその同期歯124がスリーブ72の内周歯108に当接してそのスリーブ72の移動を阻止する阻止位置と、その動力伝達歯車54との回転同期時には同期歯124がスリーブ72の内周歯108の通過を許容してそのスリーブ72の移動を許容する許容位置との間で相対回転させられるシンクロナイザリング96とを備え、(2)軸心C方向において、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいという関係が維持されるので、スリーブ72の内周歯108と動力伝達歯車54のドグ歯118との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない噛合クラッチ10〜18が得られる。
【0046】
また、本実施例の噛合クラッチ10〜18によれば、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の面圧力σがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の面圧力σよりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいという関係が維持されるので、スリーブ72の内周歯108と動力伝達歯車54のドグ歯118との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない噛合クラッチ10〜18が得られる。
【0047】
また、本実施例の噛合クラッチ10〜18によれば、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の圧力角α'がドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の圧力角αよりも小さいことから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいという関係が維持されるので、スリーブ72の内周歯108と動力伝達歯車54のドグ歯118との噛み合いが解かれることすなわちギヤ抜けが発生しない噛合クラッチ10〜18が得られる。
【0048】
また、本実施例の噛合クラッチ10〜18によれば、スリーブ72の内周歯108とドグ歯118との周方向の圧接時において、スリーブ72にそのスリーブ72の内周歯108の先端側へ向かう軸心方向に平行な方向の推力すなわち前記摩擦力fおよび摩擦力fが発生するように、ピッチ面上においてスリーブ72の内周歯108とドグ歯118との周方向の幅寸法が各先端に向かうほど大きくなるように形成されていることから、長期間の使用による磨耗が発生しても、そのハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fがドグ歯118とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さいという関係が維持されることによるギヤ抜け効果と、逆テーパによるギヤ抜け効果とが同時に得られるので、一層確実にギヤ抜けが発生しない噛合クラッチ10〜18が得られる。
【0049】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0050】
たとえば、前述の実施例における噛合クラッチ10〜18は、圧力角α'が圧力角αよりも小さく、面圧力σが面圧力σよりも小さくなるように構成されていたが、必ずしもこのように構成されなくてもよい。要するに、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fが、ドグ歯118と上記スリーブ72の内周歯108との間の摩擦力fよりも小さくなるように構成されていればよい。たとえば、圧力角α'が圧力角αと等しくても、たとえば、外周歯100と内周歯108との間の材質および/または表面処理の組み合わせと、ドグ歯118と内周歯108との間の材質および/または表面処理の組み合わせとを、相互に変更すること等により、ハブ92の外周歯100とスリーブ72の内周歯108との間の摩擦係数μが、ドグ歯118と上記スリーブ72の内周歯108との間の摩擦係数μよりも小さくなるように構成されていればよい。
【0051】
また、本実施例における噛合クラッチ16においては、ピッチ面上において内周歯108のうちドグ歯118と噛み合う所定範囲の周方向の幅寸法が先端すなわち図5の左側に向かうほど大きくなるように逆テーパ状に形成されており、ドグ歯118の周方向の幅寸法が先端すなわち図5の右側に向かうほど大きくなるように逆テーパ状に形成されていたが、これに限られず、たとえば上記周方向の幅寸法が軸心C方向において同じであっても、一応の効果は得られる。
【0052】
また、前述の実施例における変速機20は、運転者の手動操作で機械的に変速される手動変速機であったが、油圧アクチュエータなどの駆動手段によってスリーブ70〜74を軸心C方向へ移動させることにより変速段を自動で切り換える形式の変速機であってもよい。変速段の数は適宜定められる等、変速機自体の構成は適宜定められる。また、本発明は、上記変速機20以外にも例えば2輪駆動と4輪駆動との切換を行う噛合クラッチを備えたトランスファ等に対しても適用され得る。
【0053】
また、前述の実施例では、互いにスプライン嵌合されたギヤピース122と動力伝達歯車54とは、相互に別体で構成されていたが、一体で構成されていても差し支えない。
【0054】
また、前述の実施例の噛合クラッチ10〜18の同期装置は、シンクロナイザリング96にキー溝128が形成され、そのキー溝128にキー94が係合させられるキーインデックスタイプの同期装置であったが、ハブインデックスタイプの同期装置であってもよいし、マルチコーンタイプのクラッチに適用された同期装置であってもよい。
【0055】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例の噛合クラッチ(同期切換装置)を備えた変速機を含む車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の変速機のうちその中央に位置する噛合クラッチおよびその周辺の具体的構成を示すII矢視部断面図である。
【図3】図2の噛合クラッチの作動を説明する図であって、シンクロナイザリングの同期歯がスリーブの内周歯に係合されている状態を示している。
【図4】図3においてスリーブの内周歯およびハブの外周歯のピッチ面と、その内周歯およびドグ歯のピッチ面とを含むIV−IV矢視断面を一平面内に示した展開図である。
【図5】図2の噛合クラッチの作動を説明する図であって、スリーブの内周歯とドグ歯とが噛合わされた状態を示している。
【図6】図5においてスリーブの内周歯およびハブの外周歯のピッチ面と、その内周歯およびドグ歯のピッチ面とを含むVI−VI矢視断面を一平面内に示した展開図である。
【図7】図6におけるVII矢視部を拡大して示す図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視部に相当する、スリーブの内周歯とギヤピースのドグ歯との噛み合い部を示す断面図である。
【図9】図7のIX−IX矢視部に相当する、スリーブの内周歯とハブの外周歯との噛み合い部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10,12,14,16,18:噛合クラッチ(車両用同期切換装置)
32:入力軸(回転軸)
34:出力軸(回転軸)
48:動力伝達固定歯車
54:動力伝達歯車
70,72,74:スリーブ
92:ハブ
96:シンクロナイザリング(同期リング)
100:外周歯
108:内周歯
118:ドグ歯
124:同期歯
C:軸心
F:トルク荷重
,F:面直荷重
,N:反力
,f:摩擦力
α,α':圧力角
σ,σ:面圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に一体的に設けられたハブの外周歯と噛み合う内周歯を有して該ハブに軸心方向の移動可能且つ軸心まわりの相対回転不能に設けられたスリーブと、該スリーブの内周歯と係合可能なドグ歯を有し、前記回転軸に相対回転可能に支持された動力伝達歯車と、同期歯を有して前記ハブと該動力伝達歯車との間に配設され、該動力伝達歯車との回転非同期時には該同期歯が前記スリーブの内周歯に当接して該スリーブの移動を阻止する阻止位置と、該動力伝達歯車との回転同期時には該同期歯が該スリーブの内周歯の通過を許容して該スリーブの移動を許容する許容位置との間で相対回転させられる同期リングとを備える車両用同期切換装置であって、
前記軸心方向において、前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の摩擦力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の摩擦力よりも小さいことを特徴とする車両用同期切換装置。
【請求項2】
前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の面圧力が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の面圧力よりも小さいことを特徴とする請求項1の車両用同期切換装置。
【請求項3】
前記ハブの外周歯と前記スリーブの内周歯との間の圧力角が前記ドグ歯と該スリーブの内周歯との間の圧力角よりも小さいことを特徴とする請求項1または2の車両用同期切換装置。
【請求項4】
前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の圧接時において該スリーブに該スリーブの内周歯の先端側へ向かう軸心方向に平行な方向の推力が発生するように、ピッチ面上において前記スリーブの内周歯と前記ドグ歯との周方向の幅寸法が先端に向かうほど大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用同期切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−250287(P2009−250287A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96593(P2008−96593)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】