説明

吐出装置

【課題】微粒子が分散した状態を維持し難い吐出物であっても、安定してノズルから出力できる吐出装置を提供する。
【解決手段】吐出装置1は、液状の吐出物2をワーク10に向けて吐出し、ワーク10にドットを形成するノズル3を備えた吐出用ヘッド5と、吐出物2を貯蔵する容器4を装着した装着部6と、装着された容器4から吐出用ヘッド5へ吐出物2を供給する供給路7と、容器4内の吐出物2を攪拌する攪拌手段とを有し、容器4は密閉された容器であって、その内部に磁力に反応する攪拌部材を備えており、攪拌手段は容器4を通して磁力を加えて、攪拌部材を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の吐出装置および吐出物を貯蔵する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピエゾやヒータをアクチュエータとして、複数のノズルからインクを吐出することにより印刷用紙に文字や画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置が知られている。この印刷装置では、複数のノズルを備えた印刷ヘッドを動かしながら、文字や画像を印刷するために染料インクや、粒子径が1ミクロン以下でかつその密度が2g/cm以下程度の有機顔料やカーボンブラックを含有したインクをノズルから吐出して用紙に微小なドットを形成する。そして、ドットの集合として文字や画像を用紙に記録する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷装置として開発されたインクジェット技術を用い、印刷用紙に代わるものにインク以外のものを吐出することが検討されている。特に、ピエゾアクチュエータを採用することにより、流体を加熱しないで吐出することができるので、応用範囲が広いと予想されている。さらに、液体に限らず、液体と微粒子との混合物を流体としてノズルから吐出することも検討されている。
【0004】
たとえば、液晶表示パネルにおいて、対向する基板の間隔を調整するためのスペーサをインクジェット技術を用いて吐出ヘッドから吐出してパターニングすることが考えられる。さらには、印刷用としては用いられていない金、銀、アルミ、その他の金属やガラスおよびそれらの酸化物や化合物などの比重の大きな金属微粒子が分散した液(吐出物または混合液)を陶磁器などに吐出して絵付けすることが考えられる。また、粒子径や密度が通常のインクよりも高い、無機顔料が含有された無機顔料インクを吐出物として噴出することも考えられている。
【0005】
しかしながら、発明者が実験を繰り返したところ、実際にインクジェット技術によりこれらの微粒子を大量に含む吐出物を吐出する場合は、従来のインクを印刷用紙に印刷する場合と異なり、濃淡あるいは付着した微粒子の密度の不均一が生じたり、パターンが歪んだりすることが分かった。したがって、印刷用のヘッド機構をそのまま流用したのでは、基板間にスペーサを精度良くパターニングしたり、陶磁器などへ顔料を精度良く、また一定の濃度分布で塗布することができない。
【0006】
そこで、本発明においては、固形物である顔料の密度の高い吐出物、粒径が数ミクロンあるいはそれ以上の高分子樹脂や無機材料などの粒子が含有された吐出物を安定した状態で吐出でき、精度の良いパターンを印刷用紙以外のワーク上にも確実に形成することができる吐出装置および吐出物を貯蔵する容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドを備えた吐出装置の装着部に装着可能な前記吐出物を貯蔵する容器であって、前記装着部から間接的に駆動される攪拌部材を内部に有する容器である。前記攪拌部材は、磁場あるいは光を介して駆動されることが望ましい。前記攪拌部材が動くスペースを確保し、透過性の保護ケースを有することが望ましい。
【0008】
本発明の異なる態様は、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドと、前記吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、装着された前記容器から前記吐出用ヘッドへ前記吐出物を供給する供給路と、前記容器内の吐出物を攪拌する攪拌手段とを有し、前記容器は密閉された容器であって、その内部に磁力に反応する攪拌部材を備えており、前記攪拌手段は前記容器を通して磁力を加えて、前記攪拌部材を駆動する吐出装置である。また、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドと、
前記吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、装着された前記容器から前記吐出用ヘッドへ前記吐出物を供給する供給路と、前記容器内の吐出物を攪拌する攪拌手段とを有し、前記容器は密閉された容器であって、その内部に光を受光して回転する攪拌部材を備えており、前記攪拌手段は前記容器を透過して前記攪拌部材に光を照射して前記攪拌部材を駆動する吐出装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に本発明に係る吐出用ヘッドが搭載された吐出装置の概略を示してある。本例の吐出装置1は、粒径が1ミクロンを超える微粒子や比重が2以上の金属微粒子などの比重の大きな微粒子と液体との混合物を吐出物2としてワーク10に吐出し、ホストコンピュータ(以降ではホスト)9から指示された所定のパターンを吐出物2でワーク10の表面に形成することができる装置である。
【0010】
このため、吐出装置1は、吐出物2を出力(吐出)する複数のノズル3を備えた吐出用ヘッド5と、吐出物2を貯蔵した容器4を装着可能な装着部6と、この装着部6に装着された容器4から吐出物2を吐出用ヘッド5に導く供給路7と、この吐出装置1を制御する制御装置8とを有している。
【0011】
吐出装置1は、さらに、供給路7の吐出物2を攪拌する第2の攪拌手段と、容器4の吐出物2を攪拌する第3の攪拌手段としての機能を果たす循環路15と、ポンプ16とを備えている。循環路15は供給路7の吐出用ヘッド5の近傍と上流側に相当する容器4とを繋いでおり、ポンプ16は循環路15の途中に接続され、循環路15を介して供給路7と容器4の吐出物2を循環することにより攪拌する。なお、循環路15はマニフォールド25の一端から循環するように設けられていても良い。
【0012】
さらに、装着部6には、容器4の板状の底面4aに接触し、容器4に振動を与えて内部の吐出物2を攪拌する第3の攪拌手段として機能する圧電素子14が配置されている。また、容器4は、底面4aに圧電素子14と接触して振動を内部の吐出物2に与えやすい剛性の高い板状の底面4aを備えている。したがって、容器4の内部の吐出物2は、循環と振動とによって効率良く攪拌されることになる。循環路15により再循環される吐出物2の量が十分であるときは圧電素子14は不用であるが、ポンプ容量が小さかったり、供給路7や循環路15の断面積が小さく、容器4の内部を攪拌するのに十分な循環量を確保できない場合は、本例のように圧電素子14を設けておくことは有効である。また、容器4を回転させながら振動を加えることにより、容器内部の吐出物2をいっそう効率良く攪拌できると共に、容器4の内部の壁面に付着している微粒子があってもその微粒子を攪拌し易くなるので、容器4が回転するようにしておくことも有効である。
【0013】
また、供給路7に吐出物2に含まれる異物などをろ過するフィルター30が配置されており、このフィルター30にも圧電素子34が取り付けられている。圧電素子34は電力を加えて駆動することにより振動させることができる。圧電素子34の振動は、フィルター30の液通過部分31に伝達され、液通過部分31を振動する。このため、液通過部分31の目詰まりを解消すると共にフィルター30の吐出物2を攪拌する効果が得られる。
【0014】
したがって、制御装置8により圧電素子14、圧電素子34およびポンプ16を駆動することにより、容器4および供給路7の吐出物2を攪拌でき、比重やサイズの大きな微粒子を吐出物2の中で分散させたまま容器4および供給路7の内部で保持することが可能である。このため、微粒子が分散された、安定した状態で吐出物2を吐出用ヘッド5に供給できる。
【0015】
本例の吐出用ヘッド5は、複数のノズル3と、各々のノズル3に連通し、各々のノズル3に対応した圧力室21と、各々の圧力室21の上流に位置し、圧力室21に共通なマニフォールド(またはリザーバ)25とを備えている。各々の圧力室21には、圧力室21の内部を加圧してノズル3から吐出物2を出力する加圧手段となる圧電素子(ピエゾ素子)26が取り付けられている。圧力室21の圧電素子26は制御装置8からの吐出信号によって伸び縮みし、その結果、圧力室内の吐出物2がノズル3から液滴2dとして出力される。このため、ワーク10に吐出された吐出物2のドットにより、制御装置8から供給された吐出信号に対応するパターンが形成される。
【0016】
さらに、マニフォールド25には、マニフォールド25を振動してマニフォールド25の内部の吐出物2を攪拌する第1の攪拌手段として機能する圧電素子18が取り付けられている。圧電素子18が振動すると、マニフォールド25の内部の吐出物2に圧力変動が生じ、それによって吐出物2は連続的に動かされて攪拌される。このため、吐出物2に含まれる微粒子は沈殿したり凝集することがなく、分散あるいは拡散された状態で維持される。したがって、マニフォールド25に供給口22を介して供給路7から供給された吐出物2は、供給されたままの微粒子が分散された安定した状態で保持される。そして、マニフォールド25から流路24を介して各々の圧力室21に、安定した品質の吐出物2が供給される。
【0017】
マニフォールド25は、圧力室21の直前に位置する箇所であり、そこから供給される吐出物2に微粒子が分散されている。このため、圧力室21で加圧されてノズル3から出力される液滴2dにも、金属微粒子などの分散させにくい微粒子が分散された状態で含まれており、微粒子の濃度あるいは分布が均一な吐出物2をワーク10に噴射できる。
【0018】
ノズル3から吐出物2を出力している間は、マニフォールド25、流路24および圧力室21にかけて吐出物2が流動しているので攪拌されている状態である。さらに、圧力室21を圧縮する圧電素子26が動くと、その圧力変動によっても吐出物2は攪拌される。しかしながら、どの圧電素子26が駆動されるかは制御回路8の駆動信号あるいは吐出信号に左右されるので、安定した攪拌効果は期待できない。さらに、常にノズル3から吐出物2が噴出されるわけでもない。このため、圧電素子26の駆動状態に関わらず圧電素子18を駆動してマニフォールド25の吐出物2を攪拌することが望ましい。
【0019】
図2に、液滴2dを出力するために圧電素子26の駆動する信号V1と、マニフォールドを振動するために圧電素子18を駆動する信号V2を示してある。駆動信号V1およびV2を同位相で制御すると、圧力素子18によりマニフォールド25に発生した圧力が圧力室21に伝播し、圧力室21でも圧電素子26により同位相の圧力変化が起きるので、圧力室21の圧力変動が過大となる。負圧側に過大となるとノズル3からエアーを吸込むことになるし、正圧側に過大になれば液滴2dの量が大きくなり過ぎ、また、その反動としてエアーを吸込む可能性がある。いずれのケースでも、吐出不良を起こす可能性があるので、圧電素子18および26の駆動信号V2およびV1は、位相をずらすことが望ましい。一方、駆動信号V2およびV1の周期をランダムにずらすと、タイミングによっては、上記と同じ状態になる可能性がある。また、圧電素子26を駆動したときのマニフォールド25の圧力条件が吐出の度に異なるのでは安定した量の吐出物2を吐出できない。したがって、圧電素子26に印加される駆動電圧V1と、マニフォールド25の圧電素子18に印加される駆動電圧V2とは同期していることが望ましい。たとえば、圧電素子26に印加される駆動電圧V1の最短周期をT、マニフォールド25の圧電素子18に印加される駆動電圧V2の周期をT1としたとき、圧電素子26の最短周期Tの整数倍または整数分の1の周期T1で圧電素子18を駆動すれば良い。すなわち、周期TおよびT1が以下の条件(1)、(2)を満たすように駆動電圧V1およびV2を制御すれば良い。
T≦T1のとき、T1=nT(nは整数) ・・・(1)
T>T1のとき、T1=T/n(nは整数) ・・・(2)
【0020】
図2(a)および(b)は、駆動信号V2の周期T1が駆動電圧V1の最短周期Tと等しい場合を示してある。圧電素子26の駆動するタイミング(時刻t11、時刻t12)と圧電素子18の駆動するタイミング(時刻t21、時刻t22)の時間差または位相差t1は所望の値に保持され、常に一定の圧力で吐出物2をノズル3から出力できる。
【0021】
さらに、圧電素子26の駆動信号V1が低レベルになるタイミング(時刻t11)と圧電素子18の駆動信号V2が低レベルになるタイミング(時刻t21)との時間差(位相差)t1が、圧力素子26が駆動信号V1により駆動されて圧力室21が負圧になってから正圧になるまでの時間t2と同じまたはそれ以上になるように駆動信号V2を制御することが望ましい。すなわち、駆動信号V1およびV2の位相差t1を、圧力が回復する時間t2に対し以下の条件(3)を満たすように制御することが望ましい。
t2≦t1 ・・・(3)
【0022】
図2(a)に示した駆動波形V1により圧電素子26が1回振動すると、図2(c)に示すような圧力変動P1が圧力室(キャビティ)21に発生する。すなわち、圧電素子26により、圧力室21の圧力を、ノズル3のメニスカスを内部に引き込むように負圧にした後に、その引き込んだメニスカスを外部に押し出すように正圧にして、圧力室21の吐出物2をノズル3から出力する。このような方法は引き打ち法とも呼ばれ、インクジェットプリンタなどで多く採用されている方法である。このような引き打ち法であると、圧電素子26が駆動された直後に圧力室21が負圧になったタイミングでさらに圧電素子18によりマニフォールド25に負圧が発生すると、マニフォールド25で発生した負圧が圧力室21に加わってノズル3のメニスカスがより強く内部に引き込まれることになる。このようになると、メニスカスの引き込み時に空気または外気をノズル3から取り込んでしまい、吐出性能が悪化する。したがって、圧力室21が負圧になっている間の時間t2は、圧電素子18を駆動せずに、マニフォールド25に発生される負圧が圧力室21に加わらないようにすることが望ましいのである。
【0023】
一方、吐出装置1がスタンバイ状態で、ノズル3から液滴2dを吐出するために圧電素子26が作動していない状態では、任意の周期で圧電素子18を駆動してマニフォールド25の吐出物2を攪拌しておくことが可能である。さらに、吐出装置1がスタンバイ状態のときに、圧力室21の圧電素子26を微小振動させて圧力室内の吐出物2の攪拌を行なうことも有効である。圧電素子26の駆動電圧V1を、吐出物2がノズルから出力しない程度に低下させるか、パルス幅t0を出力が起こらない程度に短くするか、あるいは長くすることにより、液滴2dを出力しないで圧力室21の吐出物2を攪拌することができる。スタンバイ状態で圧電素子26を振動させる場合は、マニフォールド25の圧電素子18を上記の条件で制御し、マニフォールド25の圧力変動と圧力室21の圧力変動が共鳴しないようにすることが望ましい。
【0024】
さらに、本例の吐出ヘッド5においては、ノズルの最小径を吐出物2に含まれる粒子の最大径の6倍以上にして、液滴2dの吐出方向を安定させている。図3に、ノズル3から吐出物2が吐出される様子を模式的に示してある。ピエゾ型のインクジェットプリンタで、引き打ち法と呼ばれる駆動方法で吐出する例である。まず、図3(a)に示すように、吐出を行なわない待機状態では、圧力室21を若干負圧にしてノズル3の先端のメニスカスを内部に引き込んでおく(駆動電圧V1が低い値に保持された状態である)。次に、図3(b)に示すように、吐出の直前に圧電素子26を制御して、圧力室21を負圧にし、メニスカス35が圧力室21の内部に吸い込まれるようにする(駆動電圧V1を0にした状態である)。さらに、図3(c)に示すように、圧電素子26に駆動電圧V1を加えて圧電素子26を変形して圧力室21を加圧すると吐出物2が押し出される。この際、ノズル3の先端から吐出物2が軸36に対称となる形で押し出されて液柱を形成することにより、ノズル3の延長方向に真っ直ぐに液滴が出力される。
【0025】
しかしながら、ノズル3の一部が吐出物2に含まれる粒子によって塞がれていたり、ノズル3の内部に引き込んだメニスカス35の形状が吐出物2に含まれる粒子によって非対称になったり、ノズル3から液柱を形成するときに粒子とノズル3との間に不均一な摩擦力などが発生する可能性がある。その結果、図3(d)に示すように、軸36に対し非対称な液柱が形成され、ノズル3から出力される吐出物2の飛行方向が変わったり、途中で曲がったり、粒子の通過の有無により液滴スピードが変動したりする可能性があり、実際にそのような現象が見られる。また、ノズル3の出口3aが粒子により塞がれていると、メニスカス35を引き込んだときに、メニスカス35が分離して、圧力室21の内部にエアーを引き込む可能性があり、それによる吐出性能の悪化も危惧される現象の1つである。
【0026】
図4にノズル3の最小径Dを変えながら、最大径dが5ミクロンの微粒子を含む吐出物2を出力したときの実験結果を示してある。ノズル3の最小径とは、ノズル3の断面が円形である場合は、図3に示した出口3aの径を示す。一方、図5のように、ノズル3の出口3aの形状が台形などの非円形である場合は、その出口3aの内接円C1の直径を示す。粒子の最大径dは、図6に示すように、粒子2aが球でなければ、粒子2aの外接球C2の直径を示す。柱状の粒子2aであれば、その断面の外接円の直径を示す。
【0027】
図4から分かるように、ノズル3の最小径Dが30ミクロン以上、すなわち、ノズル径Dが、粒子の最大径dの6倍以上であると、安定した吐出が得られる。すなわち、液滴の方向がずれたりすることがなく、所望のパターンを精度よく吐出物により描くことができる。ノズル3の最小径Dが25ミクロン以下、すなわち、ノズル径Dが、粒子の最大径dの6倍未満であると、駆動周波数が1kHzであっても、パターンがゆがんだり、所定の形状からずれたりする現象が見られる。
【0028】
さらに、ノズル3の最小径Dが35ミクロン以上、すなわち、ノズル径Dが粒子の最大径dの7倍以上であると、駆動周波数を5kHzと高速で動かしても安定した吐出が得られる。したがって、ノズル径Dは、吐出物2の粒子の最大径dの6倍以上が好ましく、7倍以上がさらに好ましいことが分かる。ノズル径Dが粒子径dに対して十分に大きい場合は、上記のような現象があっても、それによって液滴2dの出射方向にほとんど影響を及ぼさず、本実験のような結果が得られるものと考えられる。一方、ノズル径Dが非常に大きいと、吐出される液滴2dの量が増え、液滴2dのサイズも大きくなり、ドットの解像度も低くなる。したがって、ノズル径Dは、吐出物2に含まれる粒子の最大径dの6倍から20倍程度の範囲が好ましい。さらに、吐出安定性が高く、解像度の高いパターンを吐出物で描くためには、ノズルの最小径Dは、吐出物2に含まれる粒子の最大径dの7倍から12倍程度の範囲が好ましい。
【0029】
吐出物2に含まれる微粒子の大きさにばらつきがあるときには、最大外接球や最大外接円の直径の平均値を最大径dとして採用できる。ただし、最大外接球や最大外接円の直径の分布が±20パーセント以上ある場合は、分布の中で最大の値を最大径dとすることが望ましい。また、このようにして求めた、分布の中で最大の値が全体分布の中で1パーセント以下の場合は分布の中で大きいほうから2〜10パーセント程度の値を最大径dとして採用することが望ましい。このように最大径dを決定することにより吐出物2を安定して吐出することができるノズルサイズを決定することが可能であり、吐出物2を吐出するのに適したノズルを選択して利用することができる。
【0030】
このように、本例の吐出装置1では、マニフォールド25の吐出物2を圧電素子18によって攪拌することにより、常に微粒子が分散された状態の吐出物2を圧力室21に供給しノズル3から出力できる。したがって、金属微粒子などの比重の大きな微粒子を含む吐出物や、微粒子の密度が2g/cm以上の高密度の吐出物2であっても、含まれる微粒子が沈殿したり凝集して分布が偏ったりすることなく、所望の混合状態の吐出物をノズル3から出力できる。さらに、ノズル径Dを上記の範囲に選択することにより、吐出物を安定してワーク10に吐出することができ、所望のパターンを精度良く吐出物により描くことができる。このため、本例の吐出装置1であれば、様々な微粒子を含む流体を用い、常に安定した状態で精度の高いパターンをワーク上に形成することが可能であり、液晶パネルを製造するためのスペーサを塗布したり、比重の高い金属粒子や、サイズの大きな粒子を含む無機顔料をセラミックなどに塗布するなどの様々な目的に利用することが可能となる。
【0031】
以上に本発明の1つの実施の形態の一例を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。たとえば、図7に示すように、供給路7の内面7aに管の中心に向けて突き出た複数の突起37を設けることも有効である。突起37により供給路7を流れる吐出物2の流れが乱されるので、より攪拌する効果が得られる。突起37を設ける代わりに、吐出物2の流速を上げて乱流化することによってもさらに攪拌する効果が得られる。たとえば、供給路7の管径が10mm以下の場合であれば、吐出物2の流速を毎秒1cm以上となるようにポンプ16を駆動することにより、乱流状態を形成できる。
【0032】
また、図8に示すように、循環路15を設けて供給路7の流れを確保して吐出物2を攪拌する代わりに、圧電素子などの複数の振動源37を第2の攪拌手段として設けることも可能である。たとえば、供給路7の外周部の一部に接するように、数箇所に圧電素子などの振動源37を取り付ければ良い。供給路7をステンレスなどの金属管やポリエチレンなどの硬い部材で構成することにより、振動源37の振動を供給路内の吐出物2に伝達し易くなり吐出物2の攪拌効果を高めることが可能である。
【0033】
図9(a)および(b)に示した例では、振動源37の振動が振動伝達部材39を介して供給路7に伝達され、供給路内の吐出物2が攪拌される。振動伝達部材39と振動源37は接触させる代わりに、連結部材を介して連結しておくことも可能である。そして、振動伝達部材39は、図9(c)に示すように、供給路7の外周面7bに沿うような断面形状とすることも可能である。これにより、振動伝達部材39と供給路7との接触面積を増やすことが可能になり、振動源37の振動を供給路内の吐出物2にいっそう効率良く伝達して攪拌効果を高めることができる。
【0034】
図10(a)および(b)に示した例では、振動伝達部材39を供給路7の内部に配置し、この振動伝達部材39を連結部材40で外部の振動源37と接続している。振動伝達部材39により供給路7の内部から吐出物2を攪拌できる。
【0035】
図11(a)および(b)に示した例では、円筒状の振動素子、たとえば、グールタイプの圧電素子を振動源37として採用し、供給路7の外周面7bを囲っている。供給路7の外周面7bに部分的に設けても良く、外周面7bの全体に設けても良い。さらに、供給路7の外周面7bの代わりに、供給路7の内周面7aに設けても良い。これらの例のように、振動により供給路7の吐出物2を攪拌する場合は、供給路7を回転させながら振動を加えることも有効である。このようにすると、供給路7の内部の吐出物2を効率良く攪拌できる。また、供給路7の内周面7aに付着した微粒子があってもその微粒子を攪拌し易い。
【0036】
図12および図13に、容器4の吐出物2を攪拌する第3の攪拌手段の変形例を示してある。図12(a)は、一方の端が容器4の内部に突出している棒状または傘状の振動伝達部材42を、装着部6に設けられた圧電素子などの振動源41により振動させて内部の吐出物2を攪拌する例である。振動伝達部材42の形状は振動を吐出物2に効率良く伝えられる形状であれば良い。
【0037】
図12(b)は、容器4の底部4aがフィルムやゴムなどの変形可能な可撓性部材とし、装着部6に設けられた可動部43により可撓性部材の底4aを介して吐出物2を攪拌する。可動部43は、モータなどの駆動源により左右および/または上下に動くものである。
【0038】
図12(c)は、可動部43が、上下に伸縮するストローク運動を行ないやすいように蛇腹状46になった例である。
【0039】
図12(d)は、装着部6に加熱装置(ヒーター)48を設け、これにより容器4の内部の吐出物2の一部を加熱して容器4の内部に温度差による循環流を起こして攪拌するものである。図12(e)は、装着部6に冷却装置49を用意して、容器4の吐出物2の一部を冷却することにより循環流を起こして攪拌するものである。加熱装置48と冷却装置49の両方を設けることも可能である。これらの加熱装置48あるいは冷却装置49としては温度制御の容易なペルチェ素子が適している。
【0040】
図13(a)は、密閉された容器4の内部に金属または磁石を組み込んだ回転子52が取り付けられており、装着部6に設けられた磁石または金属の駆動部材54により磁力を介して回転子52が回転して吐出物2が攪拌されるものである。装着部6には、駆動部材54を回転するためのモータ55が配置されている。
【0041】
図13(b)は、回転子52が金属あるいは樹脂などにより形成された籠あるいはネット状で吐出物が透過する保護ケース58に収納されている。容器4がフィルムやゴムなどの変形可能な部材から形成されていると、吐出物2が減少するのに伴って容器4が縮み、回転子52の動きを阻害する。したがって、ハードな変形し難い保護ケース58を設けて回転子52が回転するスペースを確保して、ソフトな変形しやすい容器4においても最後まで吐出物2を攪拌できるようにしている。
【0042】
図13(c)は、吐出物2を容器4から取り出す箇所または取り出し口となるスパウト部62に保護ケース58を設けて回転子52により攪拌するようにしている。これにより供給路7に出力される直前の吐出物2を攪拌することが可能であり、品質のより安定した吐出物2を供給路7に出力できる。
【0043】
回転子52は磁力を介さずに装着部6に設けられたモータと連結して回転するようにしても良いが、連結部分のシールなどの問題があり、間接的に回転子52を駆動できる上記の方法が優れている。磁力の代わりに、光や電波を介して駆動用のエネルギーを容器内の回転子や回転子を駆動するアクチュエータに供給しても良い。また、容器4および/または供給路7を水などの液体に浸して超音波振動により振動を与えて内部の吐出物2を攪拌することも可能である。
【0044】
上記に示したように、容器4の吐出物2を攪拌して吐出物に含まれた微粒子が凝集あるいは沈降しないようにすることは、これらの微粒子が比較的安定して液体と混合している準安定な吐出物においても有効である。すなわち、凝集や沈降が起こりやすい吐出物を吐出する装置においては、上記のように、容器からマニフォールドにわたる全体を攪拌して微粒子が拡散された状態を保持することが望ましいが、微粒子の沈降が比較的遅い吐出物をハンドリングする場合は、容器4に攪拌手段を設けることにより準安定な吐出物を安定して吐出することが可能となる。
【0045】
ここで準安定な吐出物とは、吐出物を放置したときに10%の密度変化が起きる時間Tbが、吐出装置1において容器4から供給された吐出物2がノズル3から吐出されるまでの消費時間Taより短いものをいう。消費時間Taは以下のように算出することができる。
Ta=Vol/Δvol ・・・(4)
Volは、容器4の出口からノズル3の先端までの供給路7を含めた容積であり、Δvolは、パターニングや乾燥防止の目的でノズル3から消費される時間当りの平均的な液消費体積である。
【0046】
また、準安定な吐出物をハンドリングする吐出装置1においても、容器4に加えてフィルター30にも振動手段34を設けておくことが望ましい。フィルター30では微粒子がフィルタリングのメッシュ部材に付着することが多く、いったん付着し始めると流路抵抗となり、その近傍の流速が下がり、付着面積も増加するので加速度的に付着が進み閉塞する可能性があるからである。
【0047】
図14に本発明の吐出装置の異なる例を示してある。この吐出装置1では、循環路15がマニフォールド25の流出口23に接続されており、マニフォールド25の内部も吐出物2が循環するようになっている。したがって、流出口23が第1の攪拌手段としての機能を果たしており、マニフォールド25に設けられていた圧電素子18を省くことができる。
【0048】
以上に説明したように、吐出用ヘッドのノズルに吐出物を供給するためのマニフォールド内の吐出物を攪拌する手段を設けることにより、吐出物に含まれる微粒子を、吐出される直前まで安定して拡散した状態に保持することができる。したがって、そのままでは安定して拡散した状態に保持することが難しい、1ミクロン以上の微粒子を含む吐出物、比重が2以上の微粒子を含む吐出物であっても安定した状態で吐出することが可能であり、精度良く所望のパターンを吐出物により描くことができる。
【0049】
上記に開示されている吐出用ヘッドは、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、ワーク上にドットを形成する複数のノズルと、各々のノズルに連通した複数の圧力室と、それぞれの圧力室の吐出物を加圧してノズルから吐出物を出力する加圧手段と、供給口から供給された吐出物をそれぞれの圧力室に導くマニフォールドと、マニフォールドの吐出物を攪拌する第1の攪拌手段とを有する吐出用ヘッドである。第1の攪拌手段を設けることにより、まず、吐出用ヘッドにおいて吐出する段階の吐出物の品質を一様に保つようにしている。
【0050】
すなわち、印刷用紙に印刷する際に使用しているインクは、インクに含まれる微粒子の径が約1ミクロン以下で、かつ、その密度が2g/cm以下の低密度な混合物である。このため、微粒子が分子レベルで溶解していたり、微粒子の密度が小さくてその粒径も小さく、高分子分散剤などの各種分散剤や界面活性剤などにより数日から半永久的に長期間安定した分散状態または溶解状態が保持される。したがって、インクを吐出するのであれば、微粒子の分散状態を意識する必要はなく、吐出するインクの品質を吐出直前でも一様に保持するという考え方はない。増して、多少の分布が生じたとしても、インクジェット方式であると圧力室で加圧されるノズルから噴出されるときに混合されるので、印刷結果の一様性、たとえば色や濃淡を維持するのは容易であった。
【0051】
これに対し、金属粒子などの比重の大きい粒子を含んだ吐出物や、微粒子であっても密度の大きな吐出物であると、含有されている粒子が沈降したり、凝集したりすることに起因する吐出物の密度の変動や粒子の分布あるいは濃度の変動が、吐出結果にも反映されてしまうことが判明した。このため、本発明においては、吐出物がノズルから吐出される直前に蓄積される吐出用ヘッド内のマニフォールドに攪拌手段を設けることにより、粒子を含んだ吐出物の吐出される直前の品質あるいは状態を積極的に安定させ、吐出結果に濃淡や歪みなどが生じないようにしている。すなわち、マニフォールドに攪拌手段を設けることにより、粒子を含む吐出物であっても、粒子を含めて攪拌されるので、粒子は流体内に恒常的にほぼ一様に分散された状態となる。このため、質量の大きな粒子や、大量の微粒子を含む吐出物であっても、粒子の分布や濃度の変動を抑制できるので、ノズルからは一様な状態の流体を一様な条件で噴出することが可能となり、吐出結果の精度や品質を高く保持できる。
【0052】
マニフォールドの吐出物を攪拌する第1の攪拌手段としては、マニフォールドの内側あるいは外側から吐出物に振動や熱変化を与える手段を採用できる。吐出物に対する熱の影響を避け、さらには、吐出物と第1の攪拌手段が直に接することによる吐出物と攪拌手段との間の相互の影響を防止するためには、マニフォールドを振動する手段を採用することが望ましい。振動源としては、コンパクトでノズルの加圧手段としても実績のあるピエゾなどの圧電素子を採用することが望ましい。第1の攪拌手段はマニフォールドの一部を加熱する熱源であってもよい。
【0053】
第1の攪拌手段によりマニフォールドを振動させる場合、加圧手段により吐出物を加圧して吐出するときのマニフォールドの圧力状態がその都度変動すると、吐出するときの条件が一致しないので吐出結果に影響がでる。したがって、加圧手段の最短周期の整数倍または整数分の1の周期で行なうように吐出物を攪拌する手段を第1の攪拌手段として採用するか、第1の攪拌手段をそのように制御することが望ましい。特に、圧力室が負圧になるタイミングでマニフォールドも負圧になると、ノズルの先端のメニスカスがより内部に強く引き込まれ、ノズルの先端から空気を取り込んでしまう要因になる。したがって、第1の攪拌手段によりマニフォールドが負圧になるタイミングと、加圧手段により圧力室が負圧になるタイミングとを一致させないような第1の攪拌手段を採用するか、第1の攪拌手段を制御することが望ましい。また、吐出物を各々のノズルから吐出しないときに、加圧手段を各々のノズルから吐出物が吐出されない範囲で駆動する制御方法を採用することにより、圧力室内の吐出物も攪拌することができる。第1の攪拌手段は供給口からマニフォールドに流入した吐出物を循環するための流出口であってもよい。
【0054】
吐出物は液体と微粒子の混合物であれば、ノズルの最小径は微粒子の最大径の6倍以上であることが望ましい。ノズルから噴出される直前の吐出物の状態が安定しても、ノズルの径が小さい場合は、吐出方向が不安定になり、その結果、吐出結果の品質が劣化する要因となることも分かった。このため、吐出用ヘッドのノズルは、その最小径が、吐出物に含まれる微粒子の最大径の6倍以上になっていることが望ましい。ノズル径が小さく、微粒子の粒径が数ミクロン以上ある場合は、ノズルの形状に粒子が影響を与えて対称なメニスカスが形成され難くなり、吐出物が異なる方角に出力されたり、飛行中に曲がる可能性がある。ノズルの最小径を微粒子の最大径の6倍以上とすることにより、微粒子の有無に影響されずに安定した形状のメニスカスが形成される。したがって、所望の方向に、安定して吐出物が吐出され、所望の品質の吐出結果が得られる。ここで、ノズルの最小径とは、ノズルが台形、四角形、半円形などの非円形のノズルであれば内接円の直径であり、微粒子の最大径とは微粒子が外接する円または球の直径である。
【0055】
上記の吐出用ヘッドを搭載することにより、長時間安定した状態を作ることが難しい粒子を含んだ吐出物、たとえば、粒子の比重が2以上であったり、粒径が1μmを超えるものを含んだ吐出物であっても、安定した吐出結果を得ることができる吐出装置を提供することができる。一方、吐出用ヘッドと、吐出物を貯蔵する容器を装着可能な装着部と、装着された容器からマニフォールドへ吐出物を供給する供給路とを有する吐出装置においては、供給路内や容器内で吐出物の微粒子が沈降したり凝集してしまう可能性があり、それがマニフォールドの吐出物の品質に影響する可能性がある。このため、供給路内の吐出物を攪拌する第2の攪拌手段と、容器内の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段とを設けることが望ましい。一形態は、吐出用ヘッドと、吐出物を貯蔵する容器を装着可能な装着部と、装着された容器からマニフォールドへ吐出物を供給する供給路と、供給路内の吐出物を攪拌する第2の攪拌手段と、容器内の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段とを有する吐出装置である。
【0056】
第2の攪拌手段としては、供給路を振動する手段、たとえば、モータや圧電素子を採用することが可能である。供給路の外周または内周に沿って円筒状に形成した圧電素子を配置することにより、供給路に沿って一様な振動を発生させ、より確実に供給路内の吐出物を攪拌できる。また、供給路が回転するようにしておけば、供給路内の吐出物を振動によりいっそう効率良く攪拌できる。そして、供給路が回転すれば、供給路内の壁面に付着した微粒子があっても攪拌し易い。供給路の少なくとも一部を液体に浸漬して超音波振動を与える手段により振動することも可能である。供給路と共に容器の少なくとも一部を浸漬すれば、供給路内の吐出物と容器内の吐出物に対して同時に振動を与えることができ、第2の攪拌手段と第3の攪拌手段とを兼ねることができる。振動する手段の典型的なものは圧電素子である。圧電素子は供給路の外周または内周に沿って円筒状に形成できる。振動する手段は、供給路の少なくとも一部が浸漬された液体を介して超音波振動を与える手段であってもよい。容器の少なくとも一部が液体中に浸漬されており、振動する手段は第3の攪拌手段を兼ねてもよい。
【0057】
また、第2の攪拌手段としては、供給路の一部を加熱する熱源を採用することも可能である。さらに、振動の代わりに供給路内に恒常的な流れを作って吐出物を攪拌することも可能であり、そのために、供給路内の吐出物を上流に戻す循環路と、吐出物を循環するポンプとを設けることも有効である。さらに、吐出用ヘッドのマニフォールド内も吐出物の流れにより攪拌することが可能である。そのために、第1の攪拌手段を供給口からマニフォールドに流入した吐出物を循環するための流出口とし、循環路と流出口と繋ぐことができる。さらに、循環路を容器に繋げば、容器内も流れにより吐出物を攪拌することが可能である。循環あるいは流れにより吐出物を攪拌する際に、供給路内の流れは層流よりも乱流である方が攪拌の効率が良い。このため、供給路および/または循環路の内部に突起を断続的に形成したり、ポンプの性能を乱流状態になるように選択することが望ましい。第2の攪拌手段は、供給路内の吐出物を継続して流すために供給路内の吐出物を上流に戻す循環路と、吐出物を循環するポンプとを備えていることが望ましい。第1の攪拌手段は供給口からマニフォールドに流入した吐出物を循環するための流出口であり、循環路は流出口と繋がっていることが望ましい。循環路は容器に繋がり、第2の攪拌手段は第3の攪拌手段を兼ねていることが望ましい。また、供給路および/または循環路の内部に突起が断続的に形成されていることが望ましい。さらに、ポンプは、吐出物を供給路および循環路を乱流状態で循環可能であることが望ましい。
【0058】
典型的な吐出装置の1つは、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、ワーク上にドットを形成する複数のノズルを備えた吐出用ヘッドと、吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、装着された容器から吐出用ヘッドへ吐出物を供給する供給路と、容器内の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段とを有する吐出装置である。容器内の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段としては、容器を振動する手段を採用できる。そのため、容器に蛇腹形状などをした可撓部を設け、この可撓部を振動する手段で振動したり、容器に板状の部分を設け、この板状の部分に圧電素子を接触させて振動させることができる。そして、容器が回転するようにしておけば、容器内の吐出物を振動によりいっそう効率良く攪拌できると共に、容器内の壁面に付着した微粒子があっても攪拌し易くなる。液体を介して超音波振動を与えても良い。また、容器の一部をヒーターおよび/または冷却装置の熱源に接して内部の吐出物を温度差で循環させることにより攪拌しても良い。たとえば、ヒータおよび冷却装置としてペルチェ素子を採用できる。すなわち、第3の攪拌手段の典型的なものは容器を振動する手段である。容器が回転してもよい。容器が可撓部を備えており、振動する手段は当該可撓部を振動するものであってもよい。可撓部が蛇腹形状をしていてもよい。容器が板状の部分を備えており、振動する手段は板状の部分に接している圧電素子であってもよい。振動する手段は、容器の少なくとも一部が浸漬された液体を介して超音波振動を与える手段であってもよい。第3の攪拌手段は容器の一部を加熱する熱源であってもよい。熱源の典型的なものはヒーターおよび/または冷却装置である。熱源はペルチェ素子であってもよい。
【0059】
容器は密閉された容器であって、その内部に磁力に反応する攪拌部材を備えており、第3の攪拌手段は容器を通して磁力を加えて、攪拌部材を駆動する吐出装置も含まれる。容器は密閉された容器であって、その内部に光を受光して回転する攪拌部材を備えており、第3の攪拌手段は容器を透過して攪拌部材に光を照射して攪拌部材を駆動する吐出装置も含まれる。供給路に配置されたフィルターを有し、フィルターを振動する手段を有している吐出装置も含まれる。
【0060】
また、密閉された容器の内部に磁力に反応する攪拌部材を設け、第3の攪拌手段により容器を通して磁力で攪拌部材を駆動して容器内の吐出物を攪拌しても良い。磁力に反応する攪拌部材の代わりに、光を受光して回転する攪拌部材を容器内に設け、第3の攪拌手段により容器を透過して攪拌部材に光を照射しても良い。このように容器内に吐出物を攪拌するための素子(攪拌部材)を入れる際には、この素子の外周部を覆うように樹脂などで構成された部材を、容器に固定されている部材、または容器の注入口を構成する部材と一体に構成すれば、容器内で素子が移動するのを防止でき、常に適切な位置で吐出物を攪拌できる。特に、容器内の吐出物が減ってきたときであっても予め決められた位置で常に駆動できるので望ましい。
【0061】
容器内部の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段は、凝集や沈降が比較的遅い、準安定な吐出物を吐出する吐出装置においても有効である。すなわち、準安定な吐出物を吐出する吐出装置においては、第3の攪拌手段を設けるだけで、品質の安定した吐出物をワークに出力することができる。したがって、本発明においては、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、ワーク上にドットを形成する複数のノズルを備えた吐出用ヘッドと、吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、装着された容器から吐出用ヘッドへ吐出物を供給する供給路と、容器内の吐出物を攪拌する第3の攪拌手段とを有する吐出装置も有用である。
【0062】
したがって、液状の吐出物をワークに向けて吐出し、ワーク上にドットを形成する複数のノズルを備えた吐出用ヘッドを備えた吐出装置の装着部に装着可能な吐出物を貯蔵する容器であって、装着部から間接的に駆動される攪拌部材を内部に有する容器も本発明に含まれる。上述したように、攪拌部材は、磁場あるいは光を介して駆動されることが望ましい。さらに、容器が変形可能なものの場合は、攪拌部材が動くスペースを確保し、変形し難い透過性の保護ケースを設けておくことが望ましい。
【0063】
また、供給路にフィルターを設けられている場合は、フィルターを振動する手段も一緒に設けることが望ましい。吐出物が流れる流路(供給路)の一部に構成されているフィルターを振動することにより、フィルターの目詰まりの解消と共に、供給路内の吐出物を攪拌する効果が得られる。フィルターを振動する手段は振動源としてフィルターに接触して直接に振動させるものでも良く、フィルターを固定している部材と振動源を連結したものでも良い。
【0064】
吐出用ヘッドと、吐出物を貯蔵する容器を装着可能な装着部と、装着された容器からマニフォールドへ吐出物を供給する供給路とを有する吐出装置の制御方法においては、吐出物を各々のノズルから吐出するときに、加圧手段の最短周期の整数倍または整数分の1の周期で第1の攪拌手段を駆動することが望ましい。吐出物を各々のノズルから吐出しないときに、加圧手段を各々のノズルから吐出物が吐出されない範囲で駆動することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】インクジェット装置の全体構成を示す図である。
【図2】吐出用ヘッドの制御を示す図である。
【図3】ノズルの先端に形成されるメニスカスの様子を示す図である。
【図4】微粒子を含む吐出物をノズルの最小径を代えて出力したときの実験結果を示す図である。
【図5】ノズルの出口が台形断面をしているときのノズルの最小径を示す図である。
【図6】微粒子の最大径を説明するための図である。
【図7】供給路の内部の構造を示す図である。
【図8】本発明の吐出装置の異なる例を示す図である。
【図9】供給路を振動する異なる例を示す図である。
【図10】供給路を振動するさらに異なる例を示す図である。
【図11】供給路を振動するさらに異なる例を示す図である。
【図12】容器内の吐出物を攪拌する異なる例を示す図である。
【図13】容器内の吐出物を攪拌するさらに異なる例を示す図である。
【図14】本発明の吐出装置のさらに異なる例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 吐出装置
2 吐出物 2a 微粒子
3 ノズル 5 吐出用ヘッド 6 装着部
7 供給路
10 ワーク
14 圧電素子(第3の攪拌手段)
15 循環路 16 ポンプ
18 圧電素子(第1の攪拌手段)
21 圧力室 22 供給口 23 流出口
25 マニフォールド
26 圧電素子(加圧手段)
30 フィルター
34 圧電素子(フィルターを振動する手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドを備えた吐出装置の装着部に装着可能な前記吐出物を貯蔵する容器であって、前記装着部から間接的に駆動される攪拌部材を内部に有する容器。
【請求項2】
請求項1において、前記攪拌部材は、磁場あるいは光を介して駆動される容器。
【請求項3】
請求項1または2において、前記攪拌部材が動くスペースを確保し、透過性の保護ケースを有する容器。
【請求項4】
液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドと、
前記吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、
装着された前記容器から前記吐出用ヘッドへ前記吐出物を供給する供給路と、
前記容器内の吐出物を攪拌する攪拌手段とを有し、
前記容器は密閉された容器であって、その内部に磁力に反応する攪拌部材を備えており、
前記攪拌手段は前記容器を通して磁力を加えて、前記攪拌部材を駆動する吐出装置。
【請求項5】
液状の吐出物をワークに向けて吐出し、前記ワーク上にドットを形成する少なくとも1つのノズルを備えた吐出用ヘッドと、
前記吐出物を貯蔵する容器を装着した装着部と、
装着された前記容器から前記吐出用ヘッドへ前記吐出物を供給する供給路と、
前記容器内の吐出物を攪拌する攪拌手段とを有し、
前記容器は密閉された容器であって、その内部に光を受光して回転する攪拌部材を備えており、
前記攪拌手段は前記容器を透過して前記攪拌部材に光を照射して前記攪拌部材を駆動する吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−18587(P2009−18587A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191869(P2008−191869)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【分割の表示】特願2001−263767(P2001−263767)の分割
【原出願日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【出願人】(598086589)株式会社マイクロジェット (16)
【Fターム(参考)】