含ケイ素蛍光化合物および該化合物を用いた蛍光標識剤
【課題】蛍光性有機化合物の吸収波長、蛍光波長を長波長化し、さらに蛍光量子収率を増大させるとともに、生体関連分子などとの反応性も有する官能基を結合させた、新規蛍光性物質を提供する。
【解決手段】ケイ素置換ピレン化合物、例えば1−クロロメチルジメチルシリルピレン又は2−シアノエチル[ジメチル(ピレンー1−イル)シリル]メチル ジイソプロピルホスホロアミダイト。
【解決手段】ケイ素置換ピレン化合物、例えば1−クロロメチルジメチルシリルピレン又は2−シアノエチル[ジメチル(ピレンー1−イル)シリル]メチル ジイソプロピルホスホロアミダイト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素蛍光化合物およびそれを用いた蛍光標識剤に関する。本発明はまた、前記化合物により標識されてなる新規蛍光標識コレステロール誘導体およびそれを用いたコレステロール検出試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ピレン骨格を有する蛍光物質として、米国Molecular Probe社からカルボキシル基やアミノ基などを持つピレン誘導体が市販されている。しかし、これらは何れも単純なピレンに対して、他の化合物(例えば生体関連物質)を結合させてこれらを蛍光標識化するための官能基を結合させただけの化合物であり、その蛍光特性(発光波長や蛍光の量子収率)はピレンそのものの蛍光特性を超えるものではない。
また、大阪府立大学の水野らによって幾つかのシリル化ピレン化合物に関する論文(非特許文献1)、及び特許出願(特許文献1)が出されている。それによると、水野らはトリメチルシリル基を導入した種々のピレン誘導体を合成し、これらは導入されたトリメチルシリル基の数に応じて蛍光量子収率が増大することを報告している。しかしながらこれらの物質は何れもピレン中にトリメチルシリル基、あるいはトリメチルシリルをエチニル基を介して結合したもので、さらに生体関連物質など他の化合物と結合するための官能基を持たないことから、これらを蛍光標識化剤として使用することはできない。
【化1】
【0003】
現在、特定遺伝子の検出には、一般にはフルオレセインなどの従来型の蛍光剤を核酸中に導入した蛍光プローブが多く用いられているが、これらは一本鎖状態、二重鎖状態でその蛍光挙動に大きな変化を示さないため、最終的な標的遺伝子の検出には煩雑な操作を必要とする。また、標的鎖中の一塩基多型を、蛍光挙動の変化から検出することもできない。
ピレンが導入された蛍光RNAプローブが特許文献2に開示されているが、相補的核酸と二重鎖形成を行ってもその蛍光挙動(蛍光強度)は変化しない単純な蛍光プローブであ
り、例えば溶液中などでの相補的核酸(標的核酸)の存在を、これとの単純な混合などによって検出することはできない。
【0004】
一方、細胞内コレステロール動態を観察する蛍光プローブとして従来から植物由来のコレステロールであるDehydroergosterol(DHE)が使われてきた。しかしDehydroergosterolの蛍光は非常に弱い。また、Molecular Probe社からはNBD-コレステロールが販売されているが、NBDは荷電をもち、酸化コレステロールと同様の動態を示すので、内因性コレステロールの動態を研究するのには不適である。
【特許文献1】特開2006-117593号公報
【特許文献2】特開2004-81057号公報
【非特許文献1】Chem. Lett., pp1224-1225,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蛍光性有機化合物の吸収波長、蛍光波長を長波長化し、さらに蛍光量子収率を増大させるとともに、生体関連分子などとの反応性を有する官能基を結合させた、新規蛍光性物質を開発することを課題とする。本発明はまた、コレステロールを効率よく検出するための試薬および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記一般式(I)で表される化合物を合成することに成功し、該化合物が蛍光特性に優れ、かつ、コレステロールや核酸などの目的物質を蛍光標識するのに適していることを見出した。本発明者らはさらに、下記式(III)で表される化合物を合成することに成功し、該化合物を用いてコレステロールを効率よく検出することができることを見出した。以上により、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
mは1、2または3であり、Xは、ハロゲン、または酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の置換基を示す。
【化2】
(2)mが1である、(1)の化合物。
(3)Xが−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を示す)、−NH2、−OH、または下記式(II)の置換基である、(1)または(2)の化合物。
【化3】
(4)(1)〜(3)のいずれかの化合物を含む蛍光標識剤。
(5)(1)〜(3)のいずれかの化合物と目的物質を反応させることを含む、蛍光標識された物質の製造方法。
(6)目的物質がコレステロールである、(5)の方法。
(7)目的物質が核酸である、(5)の方法。
(8)下記一般式(IV)で表される置換基が導入された標識核酸。
【化4】
mは1、2または3である。
(9)mが1である、(8)の標識核酸。
(10)(8)または(9)の標識核酸を用いることを特徴とする、遺伝子の検出方法。(11)一塩基多型を検出する、(10)の方法。
(12)下記式(III)で表される化合物。
【化5】
(13)m=1である、(12)の化合物。
(14)(12)または(13)の化合物を含むコレステロール検出試薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規含ケイ素蛍光化合物は、従来のピレン化合物に比べ吸収波長および蛍光波
長の長波長化、ならびに高い蛍光量子収率を示し、さらに反応性の基を有することによってカルボキシル基、水酸基などを持つ生体関連物質に容易に導入可能といった特徴を有する。したがって、高感度で取り扱いの容易な、アミノ酸、脂質、核酸など、様々な生体成分を蛍光標識化するための試薬として使用できる。
本発明の標識核酸は、遺伝子の簡便な検出法、あるいは遺伝子中の一塩基多型(SNPs)検出法に使用でき、遺伝病の診断、病原性微生物の遺伝子解析に基づく検出・同定や、近年増々重要度を増しつつ有るヒト遺伝子発現の網羅的解析などに利用することができる。
また、本発明の新規蛍光標識コレステロール誘導体は、コレステロールの検出試薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の化合物は下記一般式(I)で表される。
【化6】
一般式(I)において、mは1、2または3であり、好ましくは1である。
Xは、ハロゲン、または酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の基を示す。ハロゲンとしては−Clや−Brなどが挙げられる。酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の基としては、これらの原子を含み、生体分子などに含まれる水酸基やカルボキシル基、アミノ基などと反応しうる基が挙げられる。Xとしてより具体的には、−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を表し、2または6が特に好ましい)、−NH2、−OH、または下記の式(II)で表されるホスホロアミダイド基などが挙げられる。
【化7】
【0010】
一般式(I)の化合物(m=1)は、例えば、以下のスキームにしたがって合成することができる。なお、m=2の場合は、クロロメチルジメチルクロロシランの代わりにクロロエチルジメチルクロロシランを使用すればよく、m=3の場合は、クロロメチルジメチルクロロシランの代わりにクロロプロピルジメチルクロロシランを使用すればよい。
【化8】
【0011】
一般式(I)の化合物は従来のピレン化合物に比べて顕著に高い蛍光特性を示し、置換基Xを介して生体分子などの目的物質に結合させることができるため、目的物質の蛍光標識剤として使用することができる。すなわち、一般式(I)の化合物を目的物質と反応させることにより、蛍光標識化された目的物質を製造することができる。
目的物質としては特に制限されないが、コレステロール、糖、核酸、タンパク質などの生体物質が挙げられる。具体的には、コレステロールや糖の水酸基、核酸のアミノ基やリン酸基、タンパク質のアミノ基やカルボキシル基に一般式(I)の化合物の置換基Xを反応させて、これらの生体分子に一般式(I)の化合物(Xを除いた部分:下記一般式(IV)の基)を導入し、蛍光標識することができる。なお、一般式(I)の化合物を導入する対象は天然由来の生体分子であってもよいし、生体分子の誘導体化合物であってもよい。
例えば、抗体を標識化することで、ペプチドやタンパク質などの検出に使用できる標識化抗体を得ることができる。
【化9】
【0012】
また、一般式(I)の化合物を、式(II)のアミダイド基を介してDNAやRNAなどの核酸の末端に導入することもできる。例えば、上記式(5)の化合物をDNAやRNAなどの核酸(オリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドを含む)の末端に結合させることにより、DNAやRNAなどの核酸を標識することができる。式(5)の化合物は市販のDNA合成機を用いて核酸に導入することができる。
また、特開平11−322784に記載された方法に従って、式(3)のアミン化合物を用いて核酸に導入することもできる。
【0013】
得られた標識核酸は、PCRなどに使用される核酸増幅用プライマー、マイクロアレイ(DNAチップ)などに使用される核酸検出用プローブなどとして使用することができる。
核酸プローブの長さは目的に応じて選択されるが、プローブやプライマーとして使用するときは、通常、10〜100塩基である。なお、一般式(IV)の置換基を導入する部位は核酸配列の末端でも途中でも構わないが、5'-末端が好ましい。
【0014】
本発明の標識核酸プローブは、ウイルスや病原菌由来の核酸の同定や検出、および遺伝子発現解析などに使用することができる。
また、遺伝子中に含まれる、一塩基多型(SNPs)などの変異塩基の検出に使用することもできる。これにより、疾患の遺伝子診断や個体識別などに利用できる。
【0015】
特に、本発明の、オリゴヌクレオチドの5'-末端にシリル化ピレン誘導体(上記式(5)の化合物)がリン酸ジエステル結合を介して導入された標識核酸プローブは、緩衝液中で相補鎖が存在しない一本鎖状態、あるいは相補的二重鎖を形成することができないランダム配列をもつオリゴヌクレオチドが存在する条件では、殆ど蛍光を発しない。一方、相補的な配列を持つオリゴ核酸存在下ではこれと二重鎖を形成し、著しく発光することでこれを検出することができる。したがって、従来の蛍光プローブにはなかった結合状態に応じて発光強度が変化するという顕著な効果を有するものである。
さらに、相補鎖中の二重鎖形成領域中に一塩基のミスマッチが存在する場合には、完全に相補する場合に比べて蛍光強度が弱くなる。また、ミスマッチ存在位置に依存して蛍光強度が減少し、特に3'-末端にミスマッチ塩基が存在する時には蛍光発光は殆ど発光しないことから、このような性質を利用して遺伝子中の塩基の変異を検出することができる。
【0016】
なお、一般式(I)の化合物を用いて蛍光標識化される化合物は生体分子には限られず、合成低分子化合物や合成ポリマーであってもよい。目的物質への導入反応は通常の標識
反応に準じて行うことができる。
【0017】
下記式(III)の化合物は一般式(I)の化合物をコレステロール誘導体に導入することにより得られる蛍光標識コレステロール誘導体である。
【化10】
この化合物は、例えば、以下のスキームに従って合成することができる。
【化11】
【0018】
式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体は生体内でコレステロールと同様の挙動を示すため、コレステロール検出試薬として使用することができる。例えば、細胞を含む培地に式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体を添加し、所望の時間インキュベートした後に、蛍光顕微鏡で蛍光を観察することにより生細胞の状態でコレステロールを検出することができる。
また、ピレンはその特異抗体が販売されているので、式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体とインキュベートした細胞や組織を固定化し、ピレン抗体を用いた免疫染色により該誘導体を検出することで、コレステロールを検出することもできる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
1H-NMR、及び31P-NMRは日本電子株式会社製AL-300型核磁気共鳴装置で測定した。
EI-Maa(電子イオン化質量分析)は日本電子株式会社製JMS-DX302型質量分析計で測定した。
ESI-Mass(エレクトロスプレーイオン化質量分析)はパーキンエルマー社製 Sciex API-100を用い、ポジティブイオンモードで測定した。
紫外・可視吸収スペクトル、及び蛍光発光スペクトルは、日立製作所製F-4500型分光蛍光光度計を用いて測定した。
ChroromethyldimethylchlorosilaneはWakoから、1-ブロモピレン及び3b-Hydroxy-D5-cholenic Acidは東京化成工業から購入した。
縮合剤であるDMT-MM [4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride]は文献 (Z. J. Kaminski, P. Paneth, J. Rudzinski, J. Org. Chem., 4248-4255, 63, 1998)に従って合成した。
【0021】
1) 1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1)の合成
【化12】
窒素雰囲気下で、1-ブロモピレン843 mg(2.99 mmol)をdist.テトラヒドロフラン12 mLに溶解させ、-78 ℃で攪拌した。n-ブチルリチウム2.3 mL(3.63 mmol, 1.2 eq)をゆっくり滴下し、1時間攪拌した。クロロメチルジメチルクロロシラン0.80 mL(6.09 mmol, 2.0 eq)を加えて、室温で3時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。粗生成物を10 % CH2Cl2 in Hexaneで洗浄し、吸引濾過した後、白色固体の化合物1を得た。また、その濾液の溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 100 % Hexane)で精製し、白色固体の化合物(1)を得た。
収量 685 mg
収率 73.9 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.33-8.00 (9H, m, Ar-H), 3.30 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.761 (6H, s, -Si(CH3)2-)
EI-Mass m/z 308
蛍光量子収率 0.72
【0022】
1-2) 1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1) の吸収スペクトル、及び蛍光スペクトル
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1) の吸収スペクトル、及び蛍光スペクトルは、脱気したメタノール中で測定した。得られたスペクトルを別紙(ケイ素特許資料図1、及び2)に示す。
図1に示した様に、化合物1は未修飾ピレンに比較して吸収波長(励起波長)が長波長に最大11ナノメートルシフトしているとともに、モル吸光係数も1.45倍に増大している。
また蛍光測定では、図2に示した様に化合物1は未修飾ピレンと比較して、蛍光発光波長が約3 nm長波長化するとともに蛍光発光が大きく増大しており、既知であるピレンの蛍光量子収率(0.32)1)を元に見積もった化合物1の蛍光量子収率は0.75と、2.34倍増大した。
文献1)I. B. Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,
2nd Edition, Academic Press. New York and London, 1971, pp382.
【0023】
2) 2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a) 及び6-Aminohexylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-b)の合成
【化13】
トルエン(20 mL)中に1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 0.1g(0.324 mmol)及びエチ
レンジアミン0.33 mL(4.9 mmol)を溶解し、12時間加熱還流した。反応終了後反応液を分液ロートを用いて蒸留水で洗浄した後、分離したトルエン溶液を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ジクロロメタン:メタノール:アンモニア水= 4 : 1 : 0.2)で精製し、化合物2-a (n=2)を得た。また、エチレンジアミンに変えてヘキサメチレンジアミンを用いた同様の操作によって、化合物2-b (n=6)を得た。
化合物2-a (n=2)
収量 60 mg
収率55.7 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.34-7.95 (9H, m, Ar-H), 2.70-2.64 (4H, m, -NH-CH2CH2-NH2), 2.60 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.63 (6H, s, -Si(CH3)2-)
化合物2-b (n=6)
収量 78 mg
収率61.7 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.36-7.95 (9H, m, Ar-H), 2.66 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2.71-1.17
(12H, m, -NH-(CH2)6-NH2), 0.65 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0024】
3) 1-Aminomethyldimethylsilylpyrene (3)の合成
【化14】
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 0.21g (0.680 mmol)及びNaN3 0.44 g (6.8 mmol)をDMF (30 mL)と蒸留水 (9 mL)の混合液中に溶解し、100 ℃で12時間加熱撹拌した。反応終了後反応液にジエチルエーテル (30 mL)を加えた後、分液ロート中で蒸留水を用いて洗浄した (30mL 3回)。回収した有機層を硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣は精製すること無く引き続きメタノール (20 mL)中に溶解し、これにNaNH4 (0.2 g, 5.29 mmol)を加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液に1 Mの水酸化ナトリウム溶液(20 mL)及びジエチルエーテル(30 mL)を加えて撹拌した後、有機層を回収した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ジクロロメタン:ヘキサン=1 : 4)で精製し、白色固体の化合物(1)を得た。
収量 103 mg
収率 52.3 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.20-7.89 (9H, m, Ar-H), 3.22 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.63 (6H,
s, -Si(CH3)2-)
【0025】
4) Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4)の合成
4-1) Acetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4)の合成
【化15】
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 1 536 mg(1.74 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド62 mLに溶解させ、酢酸ナトリウム1429 mg(17.4 mmol, 10 eq)と水20 mLを加え、100 ℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテルを加え抽出した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:20-50 % CH2Cl2 in Hexane )で精製し、acetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4)を得た。
収量 357 mg
収率 61.9 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.33-7.97 (9H, m, Ar-H), 4.28 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2.04 (3H, s, OCOCH3),
0.66 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0026】
4-2) Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4)の合成
上で得られたAcetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4) 329 mg(0.990 mmol)をメタノール10 mLに溶解させ、1M 水酸化ナトリウム水溶液1 mL(1.00 mmol, 1 eq)を加えて、室温で16時間半攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンと水を加えて、分液した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 9-33 % Ethyl Acetate in Hexane )で精製し、白色固体の化合物4を得た。
収量 280 mg
収率 97.4 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.39-7.98 (9H, m, Ar-H), 3.91 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.66 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0027】
5) 2-Cyanoethyl [dimethyl(pyren-1-yl)silyl]methyl diisopropylphosphoramidite (5)の合成
【化16】
窒素雰囲気下で、Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4) 50 mg (0.172 mmol) をdist.ジクロロメタン2.5 mLに溶解させ、氷浴下、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.06 mL (0.344 mmol, 2.0 eq)を加えた。そして、室温で2-シアノエトキシ- N,N-ジイソプロピル
アミノクロロホスフィン0.06 mL (0.274 mmol)を加え、1時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、分液した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 Hexane:Ethyl Acetate:Triethylamine =86:12:2)で精製し、無色オイル状のホスホロアミダイト化合物5を得た。
収量 56 mg
収率 66.4%
1H-NMR(CDCl3)
δ8.39-7.98 (9H, m, Ar-H), 3.88-3.52 (6H, m, [(CH3)2CH]2NP[OCH2Si(CH3)2Ar]OCH2CH2CN),
2.46 (2H, m, CH2CH2CN ), 1.18-1.13 (12H, t, -PN[CH(CH3)2]2), 0.67 (6 H, s, -Si(CH3)2-)
31P-NMR(CDCl3)
δ150.97
【0028】
シリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸の合成
上記化合物5を用いたシリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸の合成は、Applied Biosystemes社製DNA/RNA自動合成機(Model-392型)を用い、1マイクロモルスケールで行った。合成では化合物5のアセトニトリル溶液濃度を0.3 M とすること,及び化合物5の縮合時間を360秒とすること以外は、全てメーカー推奨の合成プロトコルに従って行った。詳しくは以下の通りである。
化合物5のアセトニトリル溶液(0.3 M)を調製し、これを合成機専用ボトルを用いて自動合成機に装着した。デオキシチミジン(1マイクロモル)が結合したコントロールドポアガラス担体を用い、合成機よってオリゴDNA(デオキシチミジル酸5量体)を合成し、引き続きその5'-末端に化合物5を反応させた。反応後、通常のプロトコルに従い濃アンモニア水処理による担体からの修飾オリゴ核酸の切り出し、及び脱保護を行った後、これを逆相HPLCによって精製した。核酸に由来する260ナノメートルでのUV吸収、及びピレンに由来する375ナノメートルでのUV吸収が一致するピークを分取し、さらにこれをエタノール沈澱、ゲルろ過などの通常の操作によって精製した。以上の手順により、シリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸を合成することに成功した。
収率 68.9 %
ESI-Mass m/z 1805.4 (Calcd. 1805.3)
【0029】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042:配列番号2)の合成
HIV-1 mRNAのtat/rev領域(配列番号1)の一部に相当するDNA配列(GK-1027)に相補的なシリル化ピレン導入核酸として、5'-末端にシリル化ピレンを導入した修飾核酸(GK-2042)の合成を試みた(図3)。合成は、Applied Biosystemes社製DNA/RNA自動合成機(Model-392型)を用い、1マイクロモルスケールで行った。シリル化ピレンアミダイト体(化合物5)の0.3Mアセトニトリル溶液を用い、これを合成機専用ボトルを用いて自動合成機に装着した。各天然型ヌクレオシドのホスホロアミダイト体の縮合反応はメーカー推奨のプロトコルに従って行い、引き続きその5'-末端に化合物(化合物5)を縮合時間360秒で反応を行った。
合成後、濃アンモニア水を用いてオリゴマーをCPGから切り出した。続いてこれを55℃で12時間加熱して核塩基の脱保護を行った後、逆相HPLCによって精製した。核酸に由来する260ナノメートルでのUV吸収、及びピレンに由来する375ナノメートルでのUV吸収が一致するピークを分取し、さらにこれをエタノール沈澱、ゲルろ過などの通常の操作によって精製した。
【0030】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の精製(DMTr-ON)
得られた生成物の逆相HPLCによる精製を試みた。核塩基由来の260nm、及び、ピレンに由来する375nmの2波長でオリゴマーの検出を行ったところ、各々の波長において14分付近に重複したピークが出現したことから(図4)、これを目的とするオリゴマーであるとして分取した。続いて、ゲルろ過を行った。
また、ESI-Massによる構造確認を行ったところ、各イオンピークにより算出したオリゴDNAの分子量の平均値は、いずれも計算値とほぼ一致し、目的のオリゴDNA(GK-2042)であることを確認した。
以上までの実験により、ここで示され手法によってオリゴ核酸の5'-末端に導入されたシリル化ピレンは、濃アンモニア水を用いた加熱処理に対しても安定であり、シリル化ピレン修飾オリゴ核酸の合成法を確立することに成功した。
【0031】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の熱的安定性の測定
100 mMのNaClを含む10 mMリン酸緩衝液(pH 7.2)中、GK-2042(配列番号2)とこれに相補的なGK-1027(配列番号3)、さらにこれに一塩基の変異(変異塩基の導入位置及びその種類は図5に下線で表示)を様々な位置に導入したGK-1016(配列番号4), 1017(配列番号5), 1055(配列番号6)のいずれかを混合して二重鎖を形成させた。これを温度変化率0.1℃/min.で260 nmにおける吸光度を30℃から90℃までモニターし、得られたUV融解曲線の一次微分から二重鎖の融解温度(Tm値)を求めた。その結果、図5の表に示されるように、GK-2042は完全相補的な核酸に対して、対応する未修飾オリゴDNA(GK-1048)に比べて若干安定性の高い二重鎖を形成すること(相補的二重鎖形成能が若干向上している)こと、変異塩基を含む相補鎖に対しては、その位置に依存して二重鎖の安定性が低下するものの、いずれの場合も室温付近では二重鎖を形成していることなどが判明した。
【0032】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の蛍光スペクトルの測定
測定は、UV融解温度測定と同様の緩衝液(pH 7.2)中でGK-2042と各オリゴ核酸を等量(3 μM)混合し、2時間後に励起波長335 nmで測定を行った(図6)。
図6に示す蛍光スペクトルの面積比(AREA比、蛍光強度比)をコンピュータを用いて(使用ソフトImageJ)算出した。GK-2042(1本鎖)のAREAを1とした時の各二重鎖のAREA比を以下の表(表1)に示す。図6及び表1から明らかなように、GK-2042は完全相補的なオリゴ核酸(GK-1027)と結合するとその蛍光強度は約7倍以上に増大する。また、相補鎖中に一塩基の変異が存在すると、その存在位置に応じて蛍光強度は減少し、特に変異塩基がGK-2042の5'-末端の核塩基に対応する位置にある場合、及び混合したオリゴ核酸が全く相補性を持たない場合(GK-1028:配列番号7)には、蛍光強度は一本鎖状態と殆ど変わらない。
【0033】
【表1】
【0034】
蛍光スペクトルの経時的測定
まず室温でGK-1027(配列番号3)とGK-2042を等量(3mM)ずつ混合し、直後から30分後まで測定を行ったところ、蛍光強度は経時的に増大した。30分後以降は蛍光強度はほぼ一定であった(図7)。
次に上記のサンプルを90℃で10分間加熱し、二重鎖を融解させた直後、及び1時間後に測定を行った。二重鎖融解直後の蛍光スペクトルは1本鎖のときとほぼ同じ強度を示し、一方1時間後の蛍光スペクトルは、室温で30分放置したときとほぼ同じ強度を示した(図示せず)。
【0035】
次にGK-2042とGK-1027の混合液を90℃で10分間加熱し、二重鎖を完全に解離した後1分後、30分後(室温)に蛍光スペクトルを測定した(図8)。加熱直後の二重鎖解離状態では蛍光は殆ど観測されず、加熱30分後の、ほぼ室温まで冷却された状態では、室温におけるGK-2042とGK-1027の混合30分後とほぼ等しい強度の蛍光が観測された。
【0036】
6) 2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a)を用いた脂質(コレステロール誘導体)の蛍光ラベル化
【化17】
2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a, 50 mg, 0.15 mmol)及び3b-Hydroxy-D5-cholenic Acid (57 mg, 0.15 mmol)をメタノール 20 mL中に溶解し、縮合剤DMT-MM
(200 mg, 0.72 mmol)を加えた後、室温で36時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン= 20:80)で精製し、シリル化ピレンで標識化された目的物を得た。
収量 65.8 mg
収率 63.7 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.32-7.99 (9H, m, Ar-H of pyrene), 5.32-5.29 (1H, m, C=CH-CH2-), 3.52-3.41 (4H, m, -NH-CH2CH2-NH2), 2.76 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2,23-0.89 (26H, m, cholesterol環 ), 0.99 (3H, s, CH3-10 of cholesterol), 0.79 (3H, d, J=7.5Hz, CH3-18 of cholesterol), 0.76 (6H, s, -Si(CH3)2-), 0.61 (3H, s, CH3-13 of cholesterol)
ESI-Mass MH+ 689.5 (Calcd. 688.4)
ここで得られた蛍光標識コレステロール誘導体をCholesterol-Pyreneと呼び、以下の実験に使用した。
【0037】
生細胞を用いたCholesterol-Pyreneによる染色
MIN6細胞(マウス膵β細胞由来)をDMEM培地で2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneまたは(50 μM)のDHE(Molecular Probe 社)を添加し、37℃で5分、1時間、2時間、または16時間インキュベートした後に蛍光顕微鏡で観察した。結果を図9に示す。新規プローブCholesterol-Pyreneは既存プローブDHEより強い蛍光強度を示すことがわかった。
【0038】
細胞免疫染色
MIN6細胞を2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneを添加して、37℃で30分または1時間インキュベートした。細胞を4% paraformaldyhydeで固定した後、500倍に希釈した抗Pyrene抗体(Cat. NO. 7894-5004, Biogenesis 社)を4℃で20時間、反応させた。次に、2500倍希釈した2次抗体(蛍光標識抗マウスIgG抗体:Jackson社)で25℃、2時間反応させた後、蛍光顕微鏡で観察した。また、抗インスリン抗体を用いた染色も行った。結果を図10に示した。これにより、Cholesterol-Pyreneによりインスリンなどのホルモンを含む分泌顆粒が染色されていることが考えられた。内分泌細胞でコレステロールは、分泌顆粒に濃縮する。Cholesterol-Pyreneは細胞内でインスリン(分泌顆粒マーカー)と同様の局在を示すので、分泌顆粒に濃縮していると考えられる。
【0039】
細胞分画
MIN6細胞を2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneを添加して、37℃で4時間インキュベートした。その後、20%〜70%の濃度勾配のショ糖密度遠心法で分画した。各画分における蛍光強度を図11に示した。Cholesterol-Pyreneはインスリン同様に分泌顆粒画分(fraction6)に濃縮することがわかった。
【0040】
Cholesterol-Pyreneの効果を下記の化合物(Pyreneとの結合部分にケイ素を有さない化合物)と比較した。すなわち、0.5μM、5μM、50μM、100μMのCholesterol-Pyreneまたは下記化合物を、MIN6細胞に添加して1時間インキュベートした後に蛍光顕微鏡で観察した。結果を図12に示す。また、抗Pyrene抗体を用いた細胞免疫染色の結果を図13に示す。
Cholesterol-Pyreneと比較化合物は細胞内の分泌顆粒に同程度取り込まれているが(図13)、図12から、Cholesterol-Pyreneは比較化合物よりもはるかに強い蛍光強度を示すことがわかった。
【化18】
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】未修飾ピレン(Pyrene)およびクロロメチルジメチルシリルピレン(1)の吸収スペクトルを示す図。未修飾ピレンおよびクロロメチルジメチルシリルピレンの脱気メタノール溶液(33μM)を用い、室温で測定した。
【図2】未修飾ピレン(Pyrene)およびクロロメチルジメチルシリルピレン(1)の蛍光スペクトルを示す図。未修飾ピレンおよびクロロメチルジメチルシリルピレンの脱気メタノール溶液(33μM)を用い、未修飾ピレンは334nmで、クロロメチルジメチルシリルピレンは345nmで励起し、室温で測定した。
【図3】GK-2042及びGK-1027の塩基配列を示す図。
【図4】GK-2042のHPLC分析チャートを示す図。
【図5】GK-2042と様々なオリゴ核酸とのUV融解曲線および二重鎖融解温度(Tm値) を示す図。
【図6】GK-2042を様々なオリゴ核酸と混合したときの蛍光スペクトルを示す図。
【図7】GK-2042と相補鎖(GK-1027)室温混合物の蛍光スペクトルの経時的変化を示す図。
【図8】GK-2042とGK-1027混合物の加熱後の蛍光スペクトル変化を示す図。
【図9】Cholesterol-Pyreneの蛍光強度を示す図(写真)。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、図に示す時間(5分、1時間、2時間、16時間)で、DHE(デハイドロエルゴステロール)またはCholesterol-Pyreneを取り込み、各プローブの自家蛍光を観察して、蛍光強度を比較した。(A)は400倍、(B)は1000倍の倍率である。
【図10】Cholesterol-Pyreneの細胞内局在を示す図(写真)。マウス膵由来内分泌細胞MIN6細胞に、図に示す時間(30分、1時間)Cholesterol-Pyreneを取り込み、Pyrene特異抗体を用いて、局在を調べた。左はCholesterol-Pyrene、中はインスリン、右は両イメージを重ね合わせた結果を示す。
【図11】Cholesterol-Pyreneの細胞内局在を示す図。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、Cholesterol-Pyreneを取り込んだ後、細胞内オルガネラをショ糖密度遠心法で分画した。コントロールには何も加えないMIN6細胞を用いた。
【図12】Cholesterol-Pyreneまたは比較化合物の蛍光強度を示す図(写真)。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、1時間、Cholesterol-Pyrene上段)または比較化合物(下段)を取り込み、各プローブの自家蛍光を観察して、蛍光強度を比較した。
【図13】Cholesterol-Pyreneまたは比較化合物の細胞内局在を示す図(写真)。マウス膵由来内分泌細胞MIN6細胞に、1時間、50μMのCholesterol-Pyrene(上段)または比較化合物(下段)を取り込み、Pyrene特異抗体を用いて、局在を調べた。左は抗ピレン抗体(500倍希釈)による染色、中は抗インスリン抗体(500倍希釈)による染色、右は両イメージを重ね合わせた結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素蛍光化合物およびそれを用いた蛍光標識剤に関する。本発明はまた、前記化合物により標識されてなる新規蛍光標識コレステロール誘導体およびそれを用いたコレステロール検出試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ピレン骨格を有する蛍光物質として、米国Molecular Probe社からカルボキシル基やアミノ基などを持つピレン誘導体が市販されている。しかし、これらは何れも単純なピレンに対して、他の化合物(例えば生体関連物質)を結合させてこれらを蛍光標識化するための官能基を結合させただけの化合物であり、その蛍光特性(発光波長や蛍光の量子収率)はピレンそのものの蛍光特性を超えるものではない。
また、大阪府立大学の水野らによって幾つかのシリル化ピレン化合物に関する論文(非特許文献1)、及び特許出願(特許文献1)が出されている。それによると、水野らはトリメチルシリル基を導入した種々のピレン誘導体を合成し、これらは導入されたトリメチルシリル基の数に応じて蛍光量子収率が増大することを報告している。しかしながらこれらの物質は何れもピレン中にトリメチルシリル基、あるいはトリメチルシリルをエチニル基を介して結合したもので、さらに生体関連物質など他の化合物と結合するための官能基を持たないことから、これらを蛍光標識化剤として使用することはできない。
【化1】
【0003】
現在、特定遺伝子の検出には、一般にはフルオレセインなどの従来型の蛍光剤を核酸中に導入した蛍光プローブが多く用いられているが、これらは一本鎖状態、二重鎖状態でその蛍光挙動に大きな変化を示さないため、最終的な標的遺伝子の検出には煩雑な操作を必要とする。また、標的鎖中の一塩基多型を、蛍光挙動の変化から検出することもできない。
ピレンが導入された蛍光RNAプローブが特許文献2に開示されているが、相補的核酸と二重鎖形成を行ってもその蛍光挙動(蛍光強度)は変化しない単純な蛍光プローブであ
り、例えば溶液中などでの相補的核酸(標的核酸)の存在を、これとの単純な混合などによって検出することはできない。
【0004】
一方、細胞内コレステロール動態を観察する蛍光プローブとして従来から植物由来のコレステロールであるDehydroergosterol(DHE)が使われてきた。しかしDehydroergosterolの蛍光は非常に弱い。また、Molecular Probe社からはNBD-コレステロールが販売されているが、NBDは荷電をもち、酸化コレステロールと同様の動態を示すので、内因性コレステロールの動態を研究するのには不適である。
【特許文献1】特開2006-117593号公報
【特許文献2】特開2004-81057号公報
【非特許文献1】Chem. Lett., pp1224-1225,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蛍光性有機化合物の吸収波長、蛍光波長を長波長化し、さらに蛍光量子収率を増大させるとともに、生体関連分子などとの反応性を有する官能基を結合させた、新規蛍光性物質を開発することを課題とする。本発明はまた、コレステロールを効率よく検出するための試薬および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記一般式(I)で表される化合物を合成することに成功し、該化合物が蛍光特性に優れ、かつ、コレステロールや核酸などの目的物質を蛍光標識するのに適していることを見出した。本発明者らはさらに、下記式(III)で表される化合物を合成することに成功し、該化合物を用いてコレステロールを効率よく検出することができることを見出した。以上により、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
mは1、2または3であり、Xは、ハロゲン、または酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の置換基を示す。
【化2】
(2)mが1である、(1)の化合物。
(3)Xが−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を示す)、−NH2、−OH、または下記式(II)の置換基である、(1)または(2)の化合物。
【化3】
(4)(1)〜(3)のいずれかの化合物を含む蛍光標識剤。
(5)(1)〜(3)のいずれかの化合物と目的物質を反応させることを含む、蛍光標識された物質の製造方法。
(6)目的物質がコレステロールである、(5)の方法。
(7)目的物質が核酸である、(5)の方法。
(8)下記一般式(IV)で表される置換基が導入された標識核酸。
【化4】
mは1、2または3である。
(9)mが1である、(8)の標識核酸。
(10)(8)または(9)の標識核酸を用いることを特徴とする、遺伝子の検出方法。(11)一塩基多型を検出する、(10)の方法。
(12)下記式(III)で表される化合物。
【化5】
(13)m=1である、(12)の化合物。
(14)(12)または(13)の化合物を含むコレステロール検出試薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規含ケイ素蛍光化合物は、従来のピレン化合物に比べ吸収波長および蛍光波
長の長波長化、ならびに高い蛍光量子収率を示し、さらに反応性の基を有することによってカルボキシル基、水酸基などを持つ生体関連物質に容易に導入可能といった特徴を有する。したがって、高感度で取り扱いの容易な、アミノ酸、脂質、核酸など、様々な生体成分を蛍光標識化するための試薬として使用できる。
本発明の標識核酸は、遺伝子の簡便な検出法、あるいは遺伝子中の一塩基多型(SNPs)検出法に使用でき、遺伝病の診断、病原性微生物の遺伝子解析に基づく検出・同定や、近年増々重要度を増しつつ有るヒト遺伝子発現の網羅的解析などに利用することができる。
また、本発明の新規蛍光標識コレステロール誘導体は、コレステロールの検出試薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の化合物は下記一般式(I)で表される。
【化6】
一般式(I)において、mは1、2または3であり、好ましくは1である。
Xは、ハロゲン、または酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の基を示す。ハロゲンとしては−Clや−Brなどが挙げられる。酸素原子もしくは窒素原子を含む反応性の基としては、これらの原子を含み、生体分子などに含まれる水酸基やカルボキシル基、アミノ基などと反応しうる基が挙げられる。Xとしてより具体的には、−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を表し、2または6が特に好ましい)、−NH2、−OH、または下記の式(II)で表されるホスホロアミダイド基などが挙げられる。
【化7】
【0010】
一般式(I)の化合物(m=1)は、例えば、以下のスキームにしたがって合成することができる。なお、m=2の場合は、クロロメチルジメチルクロロシランの代わりにクロロエチルジメチルクロロシランを使用すればよく、m=3の場合は、クロロメチルジメチルクロロシランの代わりにクロロプロピルジメチルクロロシランを使用すればよい。
【化8】
【0011】
一般式(I)の化合物は従来のピレン化合物に比べて顕著に高い蛍光特性を示し、置換基Xを介して生体分子などの目的物質に結合させることができるため、目的物質の蛍光標識剤として使用することができる。すなわち、一般式(I)の化合物を目的物質と反応させることにより、蛍光標識化された目的物質を製造することができる。
目的物質としては特に制限されないが、コレステロール、糖、核酸、タンパク質などの生体物質が挙げられる。具体的には、コレステロールや糖の水酸基、核酸のアミノ基やリン酸基、タンパク質のアミノ基やカルボキシル基に一般式(I)の化合物の置換基Xを反応させて、これらの生体分子に一般式(I)の化合物(Xを除いた部分:下記一般式(IV)の基)を導入し、蛍光標識することができる。なお、一般式(I)の化合物を導入する対象は天然由来の生体分子であってもよいし、生体分子の誘導体化合物であってもよい。
例えば、抗体を標識化することで、ペプチドやタンパク質などの検出に使用できる標識化抗体を得ることができる。
【化9】
【0012】
また、一般式(I)の化合物を、式(II)のアミダイド基を介してDNAやRNAなどの核酸の末端に導入することもできる。例えば、上記式(5)の化合物をDNAやRNAなどの核酸(オリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドを含む)の末端に結合させることにより、DNAやRNAなどの核酸を標識することができる。式(5)の化合物は市販のDNA合成機を用いて核酸に導入することができる。
また、特開平11−322784に記載された方法に従って、式(3)のアミン化合物を用いて核酸に導入することもできる。
【0013】
得られた標識核酸は、PCRなどに使用される核酸増幅用プライマー、マイクロアレイ(DNAチップ)などに使用される核酸検出用プローブなどとして使用することができる。
核酸プローブの長さは目的に応じて選択されるが、プローブやプライマーとして使用するときは、通常、10〜100塩基である。なお、一般式(IV)の置換基を導入する部位は核酸配列の末端でも途中でも構わないが、5'-末端が好ましい。
【0014】
本発明の標識核酸プローブは、ウイルスや病原菌由来の核酸の同定や検出、および遺伝子発現解析などに使用することができる。
また、遺伝子中に含まれる、一塩基多型(SNPs)などの変異塩基の検出に使用することもできる。これにより、疾患の遺伝子診断や個体識別などに利用できる。
【0015】
特に、本発明の、オリゴヌクレオチドの5'-末端にシリル化ピレン誘導体(上記式(5)の化合物)がリン酸ジエステル結合を介して導入された標識核酸プローブは、緩衝液中で相補鎖が存在しない一本鎖状態、あるいは相補的二重鎖を形成することができないランダム配列をもつオリゴヌクレオチドが存在する条件では、殆ど蛍光を発しない。一方、相補的な配列を持つオリゴ核酸存在下ではこれと二重鎖を形成し、著しく発光することでこれを検出することができる。したがって、従来の蛍光プローブにはなかった結合状態に応じて発光強度が変化するという顕著な効果を有するものである。
さらに、相補鎖中の二重鎖形成領域中に一塩基のミスマッチが存在する場合には、完全に相補する場合に比べて蛍光強度が弱くなる。また、ミスマッチ存在位置に依存して蛍光強度が減少し、特に3'-末端にミスマッチ塩基が存在する時には蛍光発光は殆ど発光しないことから、このような性質を利用して遺伝子中の塩基の変異を検出することができる。
【0016】
なお、一般式(I)の化合物を用いて蛍光標識化される化合物は生体分子には限られず、合成低分子化合物や合成ポリマーであってもよい。目的物質への導入反応は通常の標識
反応に準じて行うことができる。
【0017】
下記式(III)の化合物は一般式(I)の化合物をコレステロール誘導体に導入することにより得られる蛍光標識コレステロール誘導体である。
【化10】
この化合物は、例えば、以下のスキームに従って合成することができる。
【化11】
【0018】
式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体は生体内でコレステロールと同様の挙動を示すため、コレステロール検出試薬として使用することができる。例えば、細胞を含む培地に式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体を添加し、所望の時間インキュベートした後に、蛍光顕微鏡で蛍光を観察することにより生細胞の状態でコレステロールを検出することができる。
また、ピレンはその特異抗体が販売されているので、式(III)の蛍光標識コレステロール誘導体とインキュベートした細胞や組織を固定化し、ピレン抗体を用いた免疫染色により該誘導体を検出することで、コレステロールを検出することもできる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
1H-NMR、及び31P-NMRは日本電子株式会社製AL-300型核磁気共鳴装置で測定した。
EI-Maa(電子イオン化質量分析)は日本電子株式会社製JMS-DX302型質量分析計で測定した。
ESI-Mass(エレクトロスプレーイオン化質量分析)はパーキンエルマー社製 Sciex API-100を用い、ポジティブイオンモードで測定した。
紫外・可視吸収スペクトル、及び蛍光発光スペクトルは、日立製作所製F-4500型分光蛍光光度計を用いて測定した。
ChroromethyldimethylchlorosilaneはWakoから、1-ブロモピレン及び3b-Hydroxy-D5-cholenic Acidは東京化成工業から購入した。
縮合剤であるDMT-MM [4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride]は文献 (Z. J. Kaminski, P. Paneth, J. Rudzinski, J. Org. Chem., 4248-4255, 63, 1998)に従って合成した。
【0021】
1) 1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1)の合成
【化12】
窒素雰囲気下で、1-ブロモピレン843 mg(2.99 mmol)をdist.テトラヒドロフラン12 mLに溶解させ、-78 ℃で攪拌した。n-ブチルリチウム2.3 mL(3.63 mmol, 1.2 eq)をゆっくり滴下し、1時間攪拌した。クロロメチルジメチルクロロシラン0.80 mL(6.09 mmol, 2.0 eq)を加えて、室温で3時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。粗生成物を10 % CH2Cl2 in Hexaneで洗浄し、吸引濾過した後、白色固体の化合物1を得た。また、その濾液の溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 100 % Hexane)で精製し、白色固体の化合物(1)を得た。
収量 685 mg
収率 73.9 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.33-8.00 (9H, m, Ar-H), 3.30 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.761 (6H, s, -Si(CH3)2-)
EI-Mass m/z 308
蛍光量子収率 0.72
【0022】
1-2) 1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1) の吸収スペクトル、及び蛍光スペクトル
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene (1) の吸収スペクトル、及び蛍光スペクトルは、脱気したメタノール中で測定した。得られたスペクトルを別紙(ケイ素特許資料図1、及び2)に示す。
図1に示した様に、化合物1は未修飾ピレンに比較して吸収波長(励起波長)が長波長に最大11ナノメートルシフトしているとともに、モル吸光係数も1.45倍に増大している。
また蛍光測定では、図2に示した様に化合物1は未修飾ピレンと比較して、蛍光発光波長が約3 nm長波長化するとともに蛍光発光が大きく増大しており、既知であるピレンの蛍光量子収率(0.32)1)を元に見積もった化合物1の蛍光量子収率は0.75と、2.34倍増大した。
文献1)I. B. Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,
2nd Edition, Academic Press. New York and London, 1971, pp382.
【0023】
2) 2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a) 及び6-Aminohexylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-b)の合成
【化13】
トルエン(20 mL)中に1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 0.1g(0.324 mmol)及びエチ
レンジアミン0.33 mL(4.9 mmol)を溶解し、12時間加熱還流した。反応終了後反応液を分液ロートを用いて蒸留水で洗浄した後、分離したトルエン溶液を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ジクロロメタン:メタノール:アンモニア水= 4 : 1 : 0.2)で精製し、化合物2-a (n=2)を得た。また、エチレンジアミンに変えてヘキサメチレンジアミンを用いた同様の操作によって、化合物2-b (n=6)を得た。
化合物2-a (n=2)
収量 60 mg
収率55.7 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.34-7.95 (9H, m, Ar-H), 2.70-2.64 (4H, m, -NH-CH2CH2-NH2), 2.60 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.63 (6H, s, -Si(CH3)2-)
化合物2-b (n=6)
収量 78 mg
収率61.7 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.36-7.95 (9H, m, Ar-H), 2.66 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2.71-1.17
(12H, m, -NH-(CH2)6-NH2), 0.65 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0024】
3) 1-Aminomethyldimethylsilylpyrene (3)の合成
【化14】
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 0.21g (0.680 mmol)及びNaN3 0.44 g (6.8 mmol)をDMF (30 mL)と蒸留水 (9 mL)の混合液中に溶解し、100 ℃で12時間加熱撹拌した。反応終了後反応液にジエチルエーテル (30 mL)を加えた後、分液ロート中で蒸留水を用いて洗浄した (30mL 3回)。回収した有機層を硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣は精製すること無く引き続きメタノール (20 mL)中に溶解し、これにNaNH4 (0.2 g, 5.29 mmol)を加えて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液に1 Mの水酸化ナトリウム溶液(20 mL)及びジエチルエーテル(30 mL)を加えて撹拌した後、有機層を回収した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 ジクロロメタン:ヘキサン=1 : 4)で精製し、白色固体の化合物(1)を得た。
収量 103 mg
収率 52.3 %
1H-NMR(CDCl3); δ8.20-7.89 (9H, m, Ar-H), 3.22 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.63 (6H,
s, -Si(CH3)2-)
【0025】
4) Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4)の合成
4-1) Acetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4)の合成
【化15】
1-Chlorometyldimetylsilylpyrene 1 536 mg(1.74 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド62 mLに溶解させ、酢酸ナトリウム1429 mg(17.4 mmol, 10 eq)と水20 mLを加え、100 ℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液にジエチルエーテルを加え抽出した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:20-50 % CH2Cl2 in Hexane )で精製し、acetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4)を得た。
収量 357 mg
収率 61.9 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.33-7.97 (9H, m, Ar-H), 4.28 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2.04 (3H, s, OCOCH3),
0.66 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0026】
4-2) Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4)の合成
上で得られたAcetoxymethyldimethylsilylpyrene (1-4) 329 mg(0.990 mmol)をメタノール10 mLに溶解させ、1M 水酸化ナトリウム水溶液1 mL(1.00 mmol, 1 eq)を加えて、室温で16時間半攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンと水を加えて、分液した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 9-33 % Ethyl Acetate in Hexane )で精製し、白色固体の化合物4を得た。
収量 280 mg
収率 97.4 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.39-7.98 (9H, m, Ar-H), 3.91 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 0.66 (6H, s, -Si(CH3)2-)
【0027】
5) 2-Cyanoethyl [dimethyl(pyren-1-yl)silyl]methyl diisopropylphosphoramidite (5)の合成
【化16】
窒素雰囲気下で、Hydroxymethyldimethylsilylpyrene (4) 50 mg (0.172 mmol) をdist.ジクロロメタン2.5 mLに溶解させ、氷浴下、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.06 mL (0.344 mmol, 2.0 eq)を加えた。そして、室温で2-シアノエトキシ- N,N-ジイソプロピル
アミノクロロホスフィン0.06 mL (0.274 mmol)を加え、1時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、分液した。続いて、有機層に硫酸ナトリウムを加えて、乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 Hexane:Ethyl Acetate:Triethylamine =86:12:2)で精製し、無色オイル状のホスホロアミダイト化合物5を得た。
収量 56 mg
収率 66.4%
1H-NMR(CDCl3)
δ8.39-7.98 (9H, m, Ar-H), 3.88-3.52 (6H, m, [(CH3)2CH]2NP[OCH2Si(CH3)2Ar]OCH2CH2CN),
2.46 (2H, m, CH2CH2CN ), 1.18-1.13 (12H, t, -PN[CH(CH3)2]2), 0.67 (6 H, s, -Si(CH3)2-)
31P-NMR(CDCl3)
δ150.97
【0028】
シリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸の合成
上記化合物5を用いたシリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸の合成は、Applied Biosystemes社製DNA/RNA自動合成機(Model-392型)を用い、1マイクロモルスケールで行った。合成では化合物5のアセトニトリル溶液濃度を0.3 M とすること,及び化合物5の縮合時間を360秒とすること以外は、全てメーカー推奨の合成プロトコルに従って行った。詳しくは以下の通りである。
化合物5のアセトニトリル溶液(0.3 M)を調製し、これを合成機専用ボトルを用いて自動合成機に装着した。デオキシチミジン(1マイクロモル)が結合したコントロールドポアガラス担体を用い、合成機よってオリゴDNA(デオキシチミジル酸5量体)を合成し、引き続きその5'-末端に化合物5を反応させた。反応後、通常のプロトコルに従い濃アンモニア水処理による担体からの修飾オリゴ核酸の切り出し、及び脱保護を行った後、これを逆相HPLCによって精製した。核酸に由来する260ナノメートルでのUV吸収、及びピレンに由来する375ナノメートルでのUV吸収が一致するピークを分取し、さらにこれをエタノール沈澱、ゲルろ過などの通常の操作によって精製した。以上の手順により、シリル化ピレンで修飾されたオリゴ核酸を合成することに成功した。
収率 68.9 %
ESI-Mass m/z 1805.4 (Calcd. 1805.3)
【0029】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042:配列番号2)の合成
HIV-1 mRNAのtat/rev領域(配列番号1)の一部に相当するDNA配列(GK-1027)に相補的なシリル化ピレン導入核酸として、5'-末端にシリル化ピレンを導入した修飾核酸(GK-2042)の合成を試みた(図3)。合成は、Applied Biosystemes社製DNA/RNA自動合成機(Model-392型)を用い、1マイクロモルスケールで行った。シリル化ピレンアミダイト体(化合物5)の0.3Mアセトニトリル溶液を用い、これを合成機専用ボトルを用いて自動合成機に装着した。各天然型ヌクレオシドのホスホロアミダイト体の縮合反応はメーカー推奨のプロトコルに従って行い、引き続きその5'-末端に化合物(化合物5)を縮合時間360秒で反応を行った。
合成後、濃アンモニア水を用いてオリゴマーをCPGから切り出した。続いてこれを55℃で12時間加熱して核塩基の脱保護を行った後、逆相HPLCによって精製した。核酸に由来する260ナノメートルでのUV吸収、及びピレンに由来する375ナノメートルでのUV吸収が一致するピークを分取し、さらにこれをエタノール沈澱、ゲルろ過などの通常の操作によって精製した。
【0030】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の精製(DMTr-ON)
得られた生成物の逆相HPLCによる精製を試みた。核塩基由来の260nm、及び、ピレンに由来する375nmの2波長でオリゴマーの検出を行ったところ、各々の波長において14分付近に重複したピークが出現したことから(図4)、これを目的とするオリゴマーであるとして分取した。続いて、ゲルろ過を行った。
また、ESI-Massによる構造確認を行ったところ、各イオンピークにより算出したオリゴDNAの分子量の平均値は、いずれも計算値とほぼ一致し、目的のオリゴDNA(GK-2042)であることを確認した。
以上までの実験により、ここで示され手法によってオリゴ核酸の5'-末端に導入されたシリル化ピレンは、濃アンモニア水を用いた加熱処理に対しても安定であり、シリル化ピレン修飾オリゴ核酸の合成法を確立することに成功した。
【0031】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の熱的安定性の測定
100 mMのNaClを含む10 mMリン酸緩衝液(pH 7.2)中、GK-2042(配列番号2)とこれに相補的なGK-1027(配列番号3)、さらにこれに一塩基の変異(変異塩基の導入位置及びその種類は図5に下線で表示)を様々な位置に導入したGK-1016(配列番号4), 1017(配列番号5), 1055(配列番号6)のいずれかを混合して二重鎖を形成させた。これを温度変化率0.1℃/min.で260 nmにおける吸光度を30℃から90℃までモニターし、得られたUV融解曲線の一次微分から二重鎖の融解温度(Tm値)を求めた。その結果、図5の表に示されるように、GK-2042は完全相補的な核酸に対して、対応する未修飾オリゴDNA(GK-1048)に比べて若干安定性の高い二重鎖を形成すること(相補的二重鎖形成能が若干向上している)こと、変異塩基を含む相補鎖に対しては、その位置に依存して二重鎖の安定性が低下するものの、いずれの場合も室温付近では二重鎖を形成していることなどが判明した。
【0032】
シリル化ピレン修飾核酸(GK-2042)の蛍光スペクトルの測定
測定は、UV融解温度測定と同様の緩衝液(pH 7.2)中でGK-2042と各オリゴ核酸を等量(3 μM)混合し、2時間後に励起波長335 nmで測定を行った(図6)。
図6に示す蛍光スペクトルの面積比(AREA比、蛍光強度比)をコンピュータを用いて(使用ソフトImageJ)算出した。GK-2042(1本鎖)のAREAを1とした時の各二重鎖のAREA比を以下の表(表1)に示す。図6及び表1から明らかなように、GK-2042は完全相補的なオリゴ核酸(GK-1027)と結合するとその蛍光強度は約7倍以上に増大する。また、相補鎖中に一塩基の変異が存在すると、その存在位置に応じて蛍光強度は減少し、特に変異塩基がGK-2042の5'-末端の核塩基に対応する位置にある場合、及び混合したオリゴ核酸が全く相補性を持たない場合(GK-1028:配列番号7)には、蛍光強度は一本鎖状態と殆ど変わらない。
【0033】
【表1】
【0034】
蛍光スペクトルの経時的測定
まず室温でGK-1027(配列番号3)とGK-2042を等量(3mM)ずつ混合し、直後から30分後まで測定を行ったところ、蛍光強度は経時的に増大した。30分後以降は蛍光強度はほぼ一定であった(図7)。
次に上記のサンプルを90℃で10分間加熱し、二重鎖を融解させた直後、及び1時間後に測定を行った。二重鎖融解直後の蛍光スペクトルは1本鎖のときとほぼ同じ強度を示し、一方1時間後の蛍光スペクトルは、室温で30分放置したときとほぼ同じ強度を示した(図示せず)。
【0035】
次にGK-2042とGK-1027の混合液を90℃で10分間加熱し、二重鎖を完全に解離した後1分後、30分後(室温)に蛍光スペクトルを測定した(図8)。加熱直後の二重鎖解離状態では蛍光は殆ど観測されず、加熱30分後の、ほぼ室温まで冷却された状態では、室温におけるGK-2042とGK-1027の混合30分後とほぼ等しい強度の蛍光が観測された。
【0036】
6) 2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a)を用いた脂質(コレステロール誘導体)の蛍光ラベル化
【化17】
2-Aminoethylaminomethyldimethylsilylpyrene (2-a, 50 mg, 0.15 mmol)及び3b-Hydroxy-D5-cholenic Acid (57 mg, 0.15 mmol)をメタノール 20 mL中に溶解し、縮合剤DMT-MM
(200 mg, 0.72 mmol)を加えた後、室温で36時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン= 20:80)で精製し、シリル化ピレンで標識化された目的物を得た。
収量 65.8 mg
収率 63.7 %
1H-NMR(CDCl3)
δ8.32-7.99 (9H, m, Ar-H of pyrene), 5.32-5.29 (1H, m, C=CH-CH2-), 3.52-3.41 (4H, m, -NH-CH2CH2-NH2), 2.76 (2H, s, -Si(CH3)2CH2-), 2,23-0.89 (26H, m, cholesterol環 ), 0.99 (3H, s, CH3-10 of cholesterol), 0.79 (3H, d, J=7.5Hz, CH3-18 of cholesterol), 0.76 (6H, s, -Si(CH3)2-), 0.61 (3H, s, CH3-13 of cholesterol)
ESI-Mass MH+ 689.5 (Calcd. 688.4)
ここで得られた蛍光標識コレステロール誘導体をCholesterol-Pyreneと呼び、以下の実験に使用した。
【0037】
生細胞を用いたCholesterol-Pyreneによる染色
MIN6細胞(マウス膵β細胞由来)をDMEM培地で2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneまたは(50 μM)のDHE(Molecular Probe 社)を添加し、37℃で5分、1時間、2時間、または16時間インキュベートした後に蛍光顕微鏡で観察した。結果を図9に示す。新規プローブCholesterol-Pyreneは既存プローブDHEより強い蛍光強度を示すことがわかった。
【0038】
細胞免疫染色
MIN6細胞を2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneを添加して、37℃で30分または1時間インキュベートした。細胞を4% paraformaldyhydeで固定した後、500倍に希釈した抗Pyrene抗体(Cat. NO. 7894-5004, Biogenesis 社)を4℃で20時間、反応させた。次に、2500倍希釈した2次抗体(蛍光標識抗マウスIgG抗体:Jackson社)で25℃、2時間反応させた後、蛍光顕微鏡で観察した。また、抗インスリン抗体を用いた染色も行った。結果を図10に示した。これにより、Cholesterol-Pyreneによりインスリンなどのホルモンを含む分泌顆粒が染色されていることが考えられた。内分泌細胞でコレステロールは、分泌顆粒に濃縮する。Cholesterol-Pyreneは細胞内でインスリン(分泌顆粒マーカー)と同様の局在を示すので、分泌顆粒に濃縮していると考えられる。
【0039】
細胞分画
MIN6細胞を2日間培養後、25 μMのCholesterol-Pyreneを添加して、37℃で4時間インキュベートした。その後、20%〜70%の濃度勾配のショ糖密度遠心法で分画した。各画分における蛍光強度を図11に示した。Cholesterol-Pyreneはインスリン同様に分泌顆粒画分(fraction6)に濃縮することがわかった。
【0040】
Cholesterol-Pyreneの効果を下記の化合物(Pyreneとの結合部分にケイ素を有さない化合物)と比較した。すなわち、0.5μM、5μM、50μM、100μMのCholesterol-Pyreneまたは下記化合物を、MIN6細胞に添加して1時間インキュベートした後に蛍光顕微鏡で観察した。結果を図12に示す。また、抗Pyrene抗体を用いた細胞免疫染色の結果を図13に示す。
Cholesterol-Pyreneと比較化合物は細胞内の分泌顆粒に同程度取り込まれているが(図13)、図12から、Cholesterol-Pyreneは比較化合物よりもはるかに強い蛍光強度を示すことがわかった。
【化18】
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】未修飾ピレン(Pyrene)およびクロロメチルジメチルシリルピレン(1)の吸収スペクトルを示す図。未修飾ピレンおよびクロロメチルジメチルシリルピレンの脱気メタノール溶液(33μM)を用い、室温で測定した。
【図2】未修飾ピレン(Pyrene)およびクロロメチルジメチルシリルピレン(1)の蛍光スペクトルを示す図。未修飾ピレンおよびクロロメチルジメチルシリルピレンの脱気メタノール溶液(33μM)を用い、未修飾ピレンは334nmで、クロロメチルジメチルシリルピレンは345nmで励起し、室温で測定した。
【図3】GK-2042及びGK-1027の塩基配列を示す図。
【図4】GK-2042のHPLC分析チャートを示す図。
【図5】GK-2042と様々なオリゴ核酸とのUV融解曲線および二重鎖融解温度(Tm値) を示す図。
【図6】GK-2042を様々なオリゴ核酸と混合したときの蛍光スペクトルを示す図。
【図7】GK-2042と相補鎖(GK-1027)室温混合物の蛍光スペクトルの経時的変化を示す図。
【図8】GK-2042とGK-1027混合物の加熱後の蛍光スペクトル変化を示す図。
【図9】Cholesterol-Pyreneの蛍光強度を示す図(写真)。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、図に示す時間(5分、1時間、2時間、16時間)で、DHE(デハイドロエルゴステロール)またはCholesterol-Pyreneを取り込み、各プローブの自家蛍光を観察して、蛍光強度を比較した。(A)は400倍、(B)は1000倍の倍率である。
【図10】Cholesterol-Pyreneの細胞内局在を示す図(写真)。マウス膵由来内分泌細胞MIN6細胞に、図に示す時間(30分、1時間)Cholesterol-Pyreneを取り込み、Pyrene特異抗体を用いて、局在を調べた。左はCholesterol-Pyrene、中はインスリン、右は両イメージを重ね合わせた結果を示す。
【図11】Cholesterol-Pyreneの細胞内局在を示す図。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、Cholesterol-Pyreneを取り込んだ後、細胞内オルガネラをショ糖密度遠心法で分画した。コントロールには何も加えないMIN6細胞を用いた。
【図12】Cholesterol-Pyreneまたは比較化合物の蛍光強度を示す図(写真)。マウス膵・由来内分泌細胞MIN6細胞に、1時間、Cholesterol-Pyrene上段)または比較化合物(下段)を取り込み、各プローブの自家蛍光を観察して、蛍光強度を比較した。
【図13】Cholesterol-Pyreneまたは比較化合物の細胞内局在を示す図(写真)。マウス膵由来内分泌細胞MIN6細胞に、1時間、50μMのCholesterol-Pyrene(上段)または比較化合物(下段)を取り込み、Pyrene特異抗体を用いて、局在を調べた。左は抗ピレン抗体(500倍希釈)による染色、中は抗インスリン抗体(500倍希釈)による染色、右は両イメージを重ね合わせた結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
式(I)において、mは1、2または3であり、Xは、ハロゲン、または窒素原子もしくは酸素原子を含む反応性の置換基を示す。
【化1】
【請求項2】
mが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を示す)、−NH2、−OH、または下記式(II)の置換基である、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含む蛍光標識剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と目的物質を反応させることを含む、蛍光標識された物質の製造方法。
【請求項6】
目的物質がコレステロールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
目的物質が核酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
下記一般式(IV)で表される置換基が導入された標識核酸。
【化3】
mは1、2または3である。
【請求項9】
mが1である、請求項8に記載の標識核酸。
【請求項10】
請求項8または9に記載の標識核酸を用いることを特徴とする、遺伝子の検出方法。
【請求項11】
一塩基多型を検出する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
下記式(III)で表される化合物。
【化4】
【請求項13】
m=1である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の化合物を含むコレステロール検出試薬。
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
式(I)において、mは1、2または3であり、Xは、ハロゲン、または窒素原子もしくは酸素原子を含む反応性の置換基を示す。
【化1】
【請求項2】
mが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが−Cl、−NH(CH2)nNH2(nは2〜6の整数を示す)、−NH2、−OH、または下記式(II)の置換基である、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含む蛍光標識剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と目的物質を反応させることを含む、蛍光標識された物質の製造方法。
【請求項6】
目的物質がコレステロールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
目的物質が核酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
下記一般式(IV)で表される置換基が導入された標識核酸。
【化3】
mは1、2または3である。
【請求項9】
mが1である、請求項8に記載の標識核酸。
【請求項10】
請求項8または9に記載の標識核酸を用いることを特徴とする、遺伝子の検出方法。
【請求項11】
一塩基多型を検出する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
下記式(III)で表される化合物。
【化4】
【請求項13】
m=1である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の化合物を含むコレステロール検出試薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−115353(P2008−115353A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75414(P2007−75414)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
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