説明

含フッ素ポリマー分散体及び含フッ素ポリマー分散体製造方法

【課題】酸塩型基を有する含フッ素ポリマーに水系の分散体中で限外濾過処理及びイオン交換処理を行うことにより、効率良く高純度の含フッ素ポリマー分散体を製造する技術を提供する。
【解決手段】
含フッ素ポリマー分散体の製造方法であって、含フッ素ポリマーを含む未精製水系分散体に限外濾過を行う工程(A)と、上記工程(A)の後にカチオン交換処理を行う工程(B)を含み、上記含フッ素ポリマーは、−SO3X、−SONR及び/又は−COOX(Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有する含フッ素ポリマー分散体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリマー分散体及び含フッ素ポリマー分散体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基やカルボキシル基を有するフルオロポリマーは、近年、燃料電池、化学センサー等の電解質膜等の材料として注目されており、また、−SONa等のスルホン酸塩型基を有するフルオロポリマーは、食塩電解用イオン交換膜等としての用途がある。
【0003】
電解質膜等の製造において電解質膜の表面に触媒を固定させる媒体として、従来の有機溶媒を主体とするものに代わり、作業性の面等からフルオロポリマーの水性分散体が求められている。フルオロポリマーの水性分散体は、それ自体をコーティング用組成物として用いることができるので、キャスト製膜、含浸等に好適に用いることができ、幅広い用途がある。
【0004】
このような水性分散体の製造法として、特許文献1〜7に示す方法が開示されている。
このような水性分散体を、例えば燃料電池などの電気化学的デバイスに使用する場合、水性分散体に含まれる不純物が電気化学的な反応に対して悪影響を及ぼす場合があり、これらの不純物を除去する方法が望まれている。
【0005】
特許文献1、2、4及び5には、限外濾過による水性分散体の精製方法が開示されているが、限外濾過後に水性分散体をイオン交換することは開示されていない。限外濾過のみで高純度の水性分散体を製造するには長時間を要するという問題があった。
また、特許文献6及び7には、イオン交換樹脂による水性分散体の精製方法が開示されているが、限外濾過により不純物を除去する方法は開示されていない。これらのイオン交換樹脂による方法では、重合操作等に由来する非イオン性の水溶性不純物は除去できないという問題があった。また、イオン交換だけで高純度の水性分散体を製造するためには、多量のイオン交換材が必要になるという問題もあった。
【特許文献1】特開2001−226436号公報
【特許文献2】特開2001−226425号公報
【特許文献3】特表2001−504872号公報
【特許文献4】国際公開第2004/018527号パンフレット
【特許文献5】特開2004−075979号公報
【特許文献6】米国特許第2006/014886号明細書
【特許文献7】米国特許第2006/014887号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、酸塩型基を有する含フッ素ポリマーに水系の分散体中で限外濾過処理及びイオン交換処理を行うことにより、効率良く高純度の含フッ素ポリマー分散体を製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、含フッ素ポリマー分散体の製造方法であって、含フッ素ポリマーを含む未精製水系分散体に限外濾過を行う工程(A)と上記工程(A)の後にカチオン交換処理を行う工程(B)を含み、上記含フッ素ポリマーは、−SO3X、−SONR及び/又は−COOX(Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有することを特徴とする含フッ素ポリマー分散体製造方法である。
【0008】
本発明はまた、上記含フッ素ポリマー分散体製造方法により製造されたものであることを特徴とする含フッ素ポリマー分散体でもある。
本発明はまた、上記含フッ素ポリマー分散体と、メタノール、エタノール、プロパノール及びテトラフルオロプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種のアルコールとを含むことを特徴とする膜形成用分散体組成物でもある。
【0009】
本発明はまた、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られるものであることを特徴とする含フッ素ポリマー膜でもある。
【0010】
本発明はまた、含フッ素ポリマーと活性物質を含有する活性物質固定体であって、上記膜形成用分散体組成物を基材に塗装することにより得られることを特徴とする活性物質固定体でもある。
【0011】
本発明はまた、上記活性物質固定体を有することを特徴とする膜電極接合体でもある。
本発明はまた、上記膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池でもある。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、酸塩型基を有する含フッ素ポリマーの水系分散体の限外濾過処理及びイオン交換処理を行い、生産性良く高純度の含フッ素ポリマー分散体を製造する方法を提供するものである。
ここで含フッ素ポリマーの水性分散体とは、酸塩型基を有する含フッ素ポリマーが、水性媒体中で均質に存在する状態にあるものを意味し、分子レベルで分散した状態にあるものを包含するものである。
限外濾過は多量の低分子量の不純物を含有する含フッ素ポリマーから、不純物を除去する場合は効率的な方法であるが、高純度にすることが要求される用途では、廃液の量が多くなる等の問題がある。
また、含フッ素ポリマーを水酸化アルカリ等で加水分解処理した後、限外濾過処理を施す際に酸を追加することにより、酸型基を有する含フッ素ポリマーの水性分散体を得ることができる。この場合に発生するアルカリ金属のカチオン等の不純物は、限外濾過では除去することができないため、含フッ素ポリマー分散体中に残存することがある。これらのカチオンが存在すると、キャスト製膜する場合の造膜性に影響し、得られた膜が十分な強度が得られず、燃料電池としての耐久性が不十分になる等の問題がある。
上記問題は、含フッ素ポリマーが有する酸型基の酸性度が添加される酸よりも強いため、金属イオンは含フッ素ポリマーと結合する傾向が強くなり、限外濾過によって十分に除去できなくなることが原因であると推測される。
【0013】
限外濾過による精製では、上記水性分散体に含まれる不純物のうち、カチオン種の除去が特異的に困難である。また、上記水性分散体は、未精製状態では、含フッ素ポリマーに含まれる未反応の単量体、過剰の重合開始剤や乳化剤等の重合反応終了後の不要物、加水分解処理で使用されたアルカリ金属、設備由来の様々な金属イオンなどが含まれており、これらの不純物は、膜に加工する場合の成形性に悪影響を及ぼす可能性や、燃料電池の性能や耐久性を悪化させる可能性がある。本発明の含フッ素ポリマー分散体製造方法によれば、限外濾過に引き続きカチオン交換処理を行うことにより、効率的に高純度の水性分散体を製造することができると推測される。
【0014】
本発明は、含フッ素ポリマー分散体の製造方法であって、含フッ素ポリマーを含む未精製水系分散体に限外濾過を行い、低分子量不純物を除去する工程(A)と、上記工程(A)の後にカチオン交換処理を行い、不純物カチオンを除去する工程(B)を含み、上記含フッ素ポリマーは、−SOX、−SONR及び/又は−COOX(Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有することを特徴とする含フッ素ポリマー分散体製造方法である。
予め上記工程(A)を行うことにより、非イオン性不純物や不純物アニオンを除去し、引き続き上記工程(B)を行って不純物カチオンを除去することにより、高純度の含フッ素ポリマー分散体を効率よく製造することができる。
【0015】
上記限外濾過は、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて低分子量不純物を除去する方法であれば特に限定されず、例えば遠心式限外濾過法、回分式限外濾過法、循環式限外濾過法等が挙げられる。上記限外濾過膜及び限外濾過膜を有する限外濾過装置は、除去する低分子量不純物の分子量、種類、水系媒体の種類、含フッ素ポリマーの分子量、種類等により適宜選択される。上記低分子量不純物としては、例えば、含フッ素アニオン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。上記限外濾過膜を有する限外濾過装置としては、市販のものを好適に使用することができ、試験的には、例えば、Centriprep(商品名、アミコン社製)、ミリタン(商品名、ミリポア社製)等が挙げられる。上記限外濾過により、加水分解時に生成する塩を除去することもできる。また、得られた含フッ素ポリマーの濃縮も行うことができる。
【0016】
本発明の含フッ素ポリマー分散体製造方法において、限外濾過を行いながら、被処理物である未精製水系分散体に精製水を追加する操作、酸を添加して被処理液の含フッ素ポリマー分散体のpHを3以下とする操作を行ってもよい。具体的には、遠心式限外濾過法及び回分式限外濾過法による処理を行った後、処理後の液に精製水や酸を添加し、再度限外濾過処理を施す工程を繰り返すことができる。また、循環式限外濾過法では、処理液タンク内に適宜、精製水や酸を追加すればよい。
【0017】
上記限外濾過の終点は、濾液に含まれる不純物の量が所定量以下になった時点とすることが適切である。簡便な方法としては、精製水を追加する方法では、濾液の電気伝導度が所定値以下になる点とすることができる。上記電気伝導度は、コンパクト導電率計(例えばHoriba社製 Twincond等)を用いて容易に測定することができ、具体的には、上記電気伝導度を1mS・cm−1以下、好ましくは100μS・cm−1以下、より好ましくは、10μS・cm−1以下とすることができる。また、上記電気伝導度の下限は、0.1μS・cm−1であることが好ましい。より好ましい下限は1μS・cm−1である。また酸を追加する方法では、ICP分析や原子吸光分析でアルカリ金属等を定量する方法、濾液を酸・塩基滴定して、酸が消費されなくなった時点とする方法などがあるが、簡便であることから、後者の方法が好ましい。
【0018】
上記カチオン交換処理は、含フッ素ポリマーの水系分散体とカチオン交換材料を接触させる処理であれば特に限定されず、カチオン交換材料を充填したカラムに水性分散体を流通させる方法や、水性分散体中にカチオン交換材料を分散させてイオン交換した後、カチオン交換材料を濾別する等して分離する方法等がある。
【0019】
イオン交換の程度は、使用するカチオン交換材料の量や接触させる時間等により制御することができ、処理後の水性分散体に含まれる不純物カチオンの量が所定量以下になる点を終点とすることが好ましい。製膜性に悪影響を及ぼさないためには、水性分散体に含まれる不純物カチオンは、1000ppm以下にすることが好ましく、より好ましくは300ppm、さらに好ましくは100ppm以下にすることが好ましい。上記不純物カチオンの量は、ICPや原子吸光分析により測定することができる。また、上記不純物カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンを挙げることができる。
【0020】
カチオン交換材料は水性分散体に含まれるカチオン不純物を、水素イオンと交換する目的で使用するものであれば特に限定されず、ゼオライト等の無機酸化物であっても良いし、有機ポリマー分子に酸性官能基を導入したカチオン交換樹脂であっても良い。取り扱いに優れている点から、カチオン交換樹脂であることが好ましい。
【0021】
使用するカチオン交換樹脂の酸性度は、ポリマー骨格と官能基の種類から、種々設定することができ、一般的にスチレン系骨格にスルホン酸官能基を導入したもの、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、パーフルオロポリマー骨格にスルホン酸、カルボン酸を導入したもの等を用いることができる。本用途では、酸性度によらず所期の目的を達成することができ、特に限定されるものではないが、入手が容易である点から、市販のものを用いることが好ましい。このようなカチオン交換樹脂は通常Na型で市販されている樹脂を鉱酸でコンディショニングしてH型に調製して用いられるが、H型で市販されている樹脂を使用してもよい。具体的には、ローム&ハース社製、アンバーライトIR120B、アンバーライトIR124、アンバーライトFPC3500、三菱化学社製、ダイヤイオンSK1B、同SK110、同SK112、ダイヤイオンWK10、同WK11、同WK100、同WK40等から選択することができる。
【0022】
本発明によって製造される含フッ素ポリマーは、−SO3X、−SONR及び/又は−COOXで表される基を有するものである。上記Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表すものである。
【0023】
上記含フッ素ポリマーは、下記一般式(I)
CF=CF−(O)n1−(CFCFY1−O)n2−(CFYn3−A (I)
で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。上記Y1は、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。n1は0又は1の整数を表す。n2は、0〜3の整数を表す。n2個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。n3は、1〜8の整数を表す。n3個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−SONR及び/又は−COOXを表す。上記Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0024】
上記未精製水系分散体は、公知の方法によって製造することができる。例えば、特表2001−504872号公報では、含フッ素ポリマー前駆体を媒体と共に圧力容器に投入し、攪拌しながら加熱することで含フッ素ポリマー前駆体を含む未精製水系分散体を得ている。また、WO2004/018527号公報では、−SOX及び/又は−COOX(Xは上記定義したものと同じ。)又はそれらの前駆体を有するモノマーとエチレン性二重結合を有するモノマーとを水系媒体中で共重合した後、必要により水酸化アルカリ等を加えることにより含フッ素ポリマー又はその前駆体を含む未精製水系分散体を得ている。
【0025】
上記未精製水系分散体は、下記一般式(III)
CF=CF−(O)n1−(CFCFY−O)n2−(CFYn3−A (III)
で表されるフルオロモノマー(以下、フルオロモノマーという。)を重合して得られるもの、又は、必要に応じてこれを加水分解することで得られるものであることが好ましい。
【0026】
上記フルオロモノマーは、上記一般式(III)におけるn1が、0〜1の整数を表すものである。上記n1は、1であることが好ましい。上記n2は、0〜3の整数を表す。上記n2は、0又は1であることが好ましい。上記n3は、1〜8の整数を表す。上記n3は2、3又は4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(III)におけるYは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表し、n1個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(III)におけるYは、ハロゲン原子を表し、n2個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記Y及びYのハロゲン原子としては特に限定されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の何れであってもよいが、好ましくは、フッ素原子である。上記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。上記一般式(III)において、Yは、トリフルオロメチル基であることが好ましく、Yは、フッ素原子であることが好ましい。
【0028】
上記一般式(III)中Aは、−SO、−SONR、−SO31/L、−SONR、−COONR、−COOM1/L又は−COORを表す。Yは、ハロゲン原子を表す。Mは、水素又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
上記フルオロモノマーとしては、上記一般式(I)におけるYがトリフルオロメチル基、Yがフッ素原子、n1が0又は1、及び、n2が2であるものが好ましい。
【0029】
上記一般式(I)中、Y1は、トリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子であり、n1は、0又は1であり、n2は、2であることが好ましい。
【0030】
上記含フッ素ポリマーは、通常、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーと、上記フルオロモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、2元以上の共重合体であることが好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体は、ビニル基を有するものであれば特に限定されず、上記フルオロモノマーとは異なるものである。
【0031】
上記含フッ素ポリマーは、少なくとも1種類以上の、−SO又は−COORを有するフルオロモノマーに由来する構成単位を有する前駆体を加水分解することによって得られることが好ましい。このような製造方法によって得られたものは、加水分解工程及び中和工程において多量のイオン性の不純物が系中に混入しやすいため、本発明の製造方法による処理を行った場合の効果がより顕著なものとなる。
【0032】
上記含フッ素ポリマーは、フルオロモノマーに由来する構成単位及び含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体であることが好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、下記一般式(II)
CF=CF−R (II)
(式中、Rは、フッ素原子、塩素原子、R又はORを表し、Rは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表されるハロエチレン性モノマーであることが好ましい。上記ハロエチレン性モノマーは、テトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0033】
また、上記含フッ素エチレン性単量体としては、下記一般式(IV)
CHY=CFY (IV)
(式中、Yは、水素原子又はフッ素原子を表し、Yは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、R又は−ORを表す。Rは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される水素含有フルオロエチレン性単量体等を挙げることができる。
【0034】
上記含フッ素エチレン性単量体は、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CF=CFH、CH=CFH、CF=CFCF、及び、CF=CF−O−R(式中、Rは、炭素数1〜9のフルオロアルキル基又は炭素数1〜9のフルオロポリエーテル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記フルオロビニルエーテルは、Rの炭素数が1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0035】
上記含フッ素エチレン性単量体は、パーハロエチレン性単量体、特にパーフルオロエチレン性単量体であることが好ましく、CF=CFであることがより好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体としては、1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記含フッ素エチレン性単量体以外にも、更に、上記含フッ素ポリマーに種々の機能を付与するために、含フッ素ポリマーとしての基本的な性能を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を添加してもよい。上記その他の共重合可能なモノマーとしては特に限定されず、例えば、重合速度の制御、ポリマー組成の制御、弾性率等の機械的物性の制御、架橋サイトの導入等の目的に応じて共重合可能なモノマーのなかから適宜選択され、パーフルオロジビニルエーテル等の不飽和結合を2つ以上有するモノマー、CF=CFOCFCFCN等のシアノ基を含有するモノマー等が挙げられる。
【0037】
上記含フッ素ポリマーは、フルオロモノマー単位の含有率が5〜40モル%であるものが好ましい。5モル%未満であると、上述の酸処理工程を経て、又は、上述の酸処理工程とアルカリ処理工程とを経て得られる含フッ素ポリマーの電解質としての性能が低下する場合があり、40モル%を超えると、上記含フッ素ポリマーを用いて得られる膜の機械的強度が不充分になる場合がある。上記フルオロモノマー単位の含有率は、上記一般式(I)におけるAの存在比率が含フッ素ポリマーからなる微粒子の粒子内部よりも粒子表面の方が大きい場合、含フッ素ポリマーからなる微粒子の粒子表面において上記範囲であることが好ましい。
上記「粒子内部」とは、粒子の全質量のうち中心の50質量%を占める部分を意味する。上記「粒子表面」とは、粒子のうち、上記粒子内部を除く部分を意味する。
【0038】
本明細書において、上記「フルオロモノマー単位」とは、上記含フッ素ポリマーの分子構造上の一部分であって、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する部分を意味する。
上記「フルオロモノマー単位の含有率」は、含フッ素ポリマーの分子における全単量体単位が由来する単量体のモル数に占める、フルオロモノマー単位が由来するフルオロモノマーのモル数の割合である。上記「全単量体単位」は、上記含フッ素ポリマーの分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。上記「全単量体単位が由来する単量体」は、上記含フッ素ポリマーをなすこととなった単量体全量である。
上記フルオロモノマー単位の含有率は、赤外吸収スペクトル分析[IR]、又は、300℃における溶融NMRを用いて得られる値である。
【0039】
上記フルオロモノマーに由来する構成単位を有するフルオロポリマー又はその前駆体を得るための重合反応は、乳化重合であることが好ましい。本明細書において、本発明の含フッ素ポリマー分散体製造方法についての「乳化重合」とは、水系反応媒体中において、乳化剤及び/又は乳化作用剤を用いて行う重合を意味する。上記乳化剤は、従来の乳化重合に通常用いられている乳化剤又は上記既存乳化剤とは異なるものを使用してもよいし、既存乳化剤と新規乳化剤との両方を使用してもよい。
【0040】
上記乳化剤としては、炭素数が4から12の酸素を含んでも良いフルオロアルキル基と解離性極性基からなる化合物をもちいることができ、例えばパーフルオロオクタン酸アンモニウム[C15COONH]、パーフルオロヘキサン酸[C11COONH]等が挙げられる。上記乳化重合に用いる上記乳化剤は、一般に、水系反応媒体の0.01〜10質量%使用することができる。
【0041】
上記乳化作用剤としては、上記一般式(III)のうち、Aが−SO31/L、−SONR、−COONR、−COOM1/Lのフルオロモノマーを用いることができ、特にCF=CFOCFCFSONa、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSONa、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCONa等の重合反応に関与してポリマー乳化剤を与え得るフルオロモノマーが好ましい。上記フルオロモノマーは、乳化重合において乳化作用を有するとともに、エチレン性化合物であるので、重合反応における単量体として付加させ、含フッ素ポリマーの分子構造上の少なくとも一部となるように重合させることができる。
【0042】
上記乳化作用剤を使用した場合、水系反応媒体は既存乳化剤を有さなくても乳化することができるので、乳化剤を使用せずに乳化重合を行うことができる。
【0043】
上記乳化重合は、重合条件によっては、得られる含フッ素ポリマーの粒子数が低下して粒子径が大きくなり、上記限外濾過において限外濾過膜に負荷がかかる場合があり、また、製膜の際に膜が不均質になる場合があるので、上記乳化重合は、上記乳化剤を用いることが好ましい場合もある。また、粒子数を増やすためには、多量の乳化剤を用いて重合し得られたディスパージョンを希釈し、引き続き重合を継続する、いわゆる「シード重合」を行うことができる。
【0044】
本明細書において、上記「水系反応媒体」とは、上記重合において用いられる水からなる媒体であって、水そのもの、又は、水に有機媒体を溶解若しくは分散させてなる媒体を意味する。上記水系反応媒体は、上記有機媒体を含まないものが好ましく、上記有機媒体を含むものであってもごく微量であることが好ましい。
【0045】
上記重合反応は、重合開始剤を用いて行ってもよい。上記重合開始剤としては特に限定されず、通常、フルオロポリマーの重合に用いられているものであればよく、例えば有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。特に、過硫酸アンモニウム[APS]を用いることが好ましい。上記重合開始剤の添加量としては、重合反応に使用する全ての単量体の合計の0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0046】
上記重合反応における水系反応媒体のpHとしては、4〜7であることが好ましい。pHが上記範囲内であると、重合反応が円滑に進行し、また、重合反応中のフルオロモノマー及び/又は含フッ素ポリマーが有する−SO、並びに/若しくは−COOR(Y、Rは、上記定義したものと同じ。)の加水分解を最小限に抑えることができる。
【0047】
上記重合反応における反応温度等の反応条件は、特に限定されず通常の方法に従って行うことができる。
【0048】
上記Aが−SO、−COORである場合は、重合によって得られたフルオロポリマー前駆体の加水分解反応を行うことによって、目的とするフルオロポリマーを得ることができる。上記加水分解は、0℃〜100℃で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物の水溶液を添加しながらpH8〜14の条件下で行うことができる。
【0049】
上記含フッ素ポリマー分散体製造方法により製造された含フッ素ポリマー分散体もまた、本発明の一つである。
上記含フッ素ポリマー分散体は、上述のように、含フッ素ポリマーからなる微粒子が水系分散媒に分散したものである。
上記水系分散媒は、水からなるものであっても、水及び水溶性の有機溶剤からなるものであってもよい。上記水系分散媒は、水系の分散体に通常用いられる界面活性剤、安定剤等の添加剤を有するものであってもよい。
上記水系分散媒は、水含有率が10〜100質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、分散性が悪化しやすく環境及び人体への影響の点でも好ましくない。より好ましい下限は40質量%である。
【0050】
上記含フッ素ポリマー前駆体は、上記加水分解を行った後、酸処理を行うことが好ましい。すなわち、加水分解は塩基性で行うことが多いため、加水分解後の含フッ素ポリマーは塩の構造を有する。このため、Hへ置換するために酸処理を行うことが好ましい。酸処理工程の後に更にアルカリ工程を行うことによって、−SO1/L若しくは−SONR、及び/又は、−COOM1/L若しくは−COONR(MはL価の金属を表し、L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。R、R、R、及び、R6は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)とすることもできる。
【0051】
上記含フッ素ポリマー分散体に含まれる上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の固形分質量は、上記含フッ素ポリマー分散体の合計質量の2〜80質量%が好ましい。上記含フッ素ポリマー分散体中の含フッ素ポリマーからなる微粒子の量は、通常、上記含フッ素ポリマー分散体中の固形分質量に相当する。含フッ素ポリマー分散体中の含フッ素ポリマーからなる微粒子の含有量が2質量%未満であると、水系分散媒の量が多くなり製膜に用いた場合、生産性が低下する場合がある。一方、80質量%を超えると、粘度が高くなり取り扱いが困難になりやすい。より好ましい下限は、5質量%、より好ましい上限は、60質量%である。
【0052】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。
本明細書において、上記「含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含む」とは、含フッ素ポリマーからなる微粒子の25質量%以上が含フッ素ポリマー球形微粒子であることを意味する。
【0053】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の粒子形状は、アスペクト比を目安にすることができる。
本明細書において、上記「実質的に球形である」とは、アスペクト比が3以下であることを意味する。通常、アスペクト比が1に近づくほど球形に近くなる。上記含フッ素ポリマーからなる微粒子のアスペクト比は、3以下であることが好ましい。より好ましい上限は、2であり、更に好ましい上限は、1.5である。
一般に、ポリマー微粒子の粒子形状に異方性があると、上記ポリマー微粒子の分散体は高粘度になりやすく、上記ポリマー微粒子の分散体が高粘度であると、分散体中のポリマー微粒子の濃度を高くすることが困難になることから好ましくない。
【0054】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子が、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものであると、例えば、含フッ素ポリマー分散体の粘度を、上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の形状が実質的に球形でない場合に比べて、低くすることが可能であり、含フッ素ポリマー分散体の固形分濃度を高くすることができ、ひいてはキャスト製膜等の方法によって製膜する際、高い生産性を実現することが可能である。
【0055】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子は、含フッ素ポリマー球形微粒子を50質量%以上含むものであることがより好ましい。
含フッ素ポリマー球形微粒子を上記範囲内の含有率で有する含フッ素ポリマー分散体は、乳化重合により得たディスパージョンから調製することにより得ることができる。乳化重合により得たディスパージョンから含フッ素ポリマー球形微粒子が90質量%以上のものも得ることができる。本発明の含フッ素ポリマー分散体は、含フッ素ポリマー球形微粒子を比較的高い含有率で有する分散体に、含フッ素ポリマーからなる微粒子のうち、実質的に球形ではない微粒子を配合して目的に応じた性能を発揮するよう調整することも可能である。
上記球形微粒子を50質量%以上含む含フッ素ポリマーからなる微粒子は、例えば、−SOFを有するフルオロモノマーを乳化重合させ、その後加水分解することによって製造することができる。
【0056】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子は、平均粒子径が10nm以上であることが好ましい。10nm未満であると、電極材料として使用する場合において、活性点を被覆してしまい良好な電池特性が得られない場合がある。
上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、含フッ素ポリマー分散体の安定性や含フッ素ポリマーの作りやすさという点から、上限を例えば300nmとすることができるが、300nmを超えるものであっても電池特性に大きく影響を与えるものではない。
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子は、平均粒子径が10〜300nmであるものがより好ましい。平均粒子径の更に好ましい下限は、30nmであり、更に好ましい上限は、160nmである。
【0057】
上述のアスペクト比と平均粒子径とは、走査型若しくは透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で、上記含フッ素ポリマー分散体をガラス板に塗布したのち水系分散媒を除去して得られた上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の集合体を観測し、得られた画像上の20個以上の微粒子について測定した長軸及び短軸の長さの比(長軸/短軸)を上記アスペクト比、長軸及び短軸の長さの平均値を後述の平均粒子径としてそれぞれ得ることができる。
【0058】
上記含フッ素ポリマー分散体は、含フッ素ポリマーからなる微粒子のうち、平均粒子径が10nm以上である含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。
上記含フッ素ポリマー分散体は、含フッ素ポリマーからなる微粒子のうち、平均粒子径が10〜300nmである含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることがより好ましい。
上記含フッ素ポリマー分散体は、含フッ素ポリマーからなる微粒子のうち、平均粒子径が30〜160nmである含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることが更に好ましい。
【0059】
本発明の含フッ素ポリマー分散体は、上記含フッ素ポリマーからなる微粒子のほか、必要に応じて、添加剤を添加してなるものであってよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕等のフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート〔PET〕等の熱可塑性樹脂;ポリアミド、ポリイミド等の熱硬化性樹脂;他のイオン交換樹脂等の微粉末;アルミナ、シリカ、ジルコニア、カーボン等の無機材料の微粉末等が挙げられる。
【0060】
本発明の含フッ素ポリマー分散体は、必要に応じて上述の水系分散媒とは異なる液状媒体を配合して、後述する多孔性支持体に含浸させて製膜したり、キャスト製膜したりして、膜形成用途に好適に用いることができる。本発明の含フッ素ポリマー分散体は、また、必要に応じてポリエチレングリコール等を配合して、厚膜を形成する用途に用いることもできる。
上記液状媒体は、上記含フッ素ポリマーからなる微粒子を濡らし得る液体である。上記液状媒体は室温で液体であることが好ましい。
上記液状媒体としては、上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の良好な分散性が望まれる場合には、例えば、アルコール類;N−メチルピロリドン〔NMP〕等の含窒素溶剤;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジグライム、テトラヒドロフラン〔THF〕等の極性エーテル類;ジエチレンカーボネート等の炭酸エステル類;ジメチルスルホキシド〔DMSO〕等のスルホン類等の極性を有する有機溶剤が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を混合して用いることができる。上記液状媒体は、上述の水系分散媒における水溶性有機溶剤を含み得る概念である。
【0061】
上記アルコール類は、キャスト製膜、含浸等により膜状に成形する目的において、レベリング性を改善するために用いることができる。
上記アルコール類としては特に限定されず、通常、膜形成のためにポリマー分散体に配合するものであればよく、例えば、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のフッ素原子により置換されていてもよいアルカノールが挙げられ、上記アルカノールは、炭素数1〜3のものが好ましい。このようなアルカノールとしては特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラフルオロプロパノール等が挙げられる。
【0062】
本発明の膜形成用分散体組成物は、上記含フッ素ポリマー分散体と、メタノール、エタノール、プロパノール及びテトラフルオロプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種のアルコールとからなるものである。上記アルコールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0063】
上記アルコールの添加量は、上記含フッ素ポリマー分散体に対して10〜80容量%であることが好ましい。アルコールを上記範囲の量で添加することにより、上記膜形成用分散体組成物の表面張力を調整することができ、上記膜形成用分散体組成物を用いて後述するように膜を形成する場合に、均質な膜を得ることができる。
【0064】
上記膜形成用分散体組成物は、上記膜形成用分散体組成物の製膜性等の特性を損なわない範囲で、上記含フッ素ポリマー分散体及び上記アルコール以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば上記アルコール以外のその他のアルコール、造膜補助剤、後述する活性物質等が挙げられる。
【0065】
上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物は、膜の形成に好適に用いることができる。本明細書において、上記「膜」は、いわゆる薄膜を含む膜であり、フィルム、シート等をも含む概念である。上記膜は、例えばキャスト製膜、含浸、コーティング等により得られる膜であってもよく、製膜時に用いる基材、多孔性支持体等は含まない。
【0066】
本発明の含フッ素ポリマー膜は、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られたものである。上記「キャスト製膜」とは、通常、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物をガラス等の基材の表面に塗布し、常温下及び/又は加熱下で乾燥し、必要に応じて水中に浸漬して基材の表面から剥離することにより薄膜を得ることをいう。含フッ素ポリマー分散体又は膜形成用分散体組成物を塗布して得られる含フッ素ポリマー膜は、上記乾燥を常温下でのみ行うと、水等に容易に溶解することがあるので、少なくとも加熱下で乾燥を行うことが好ましい。なお、本明細書において、「常温下」は、30℃付近の温度であり、「加熱下」は、含フッ素ポリマーの融点以上の温度であり、通常、80〜400℃の温度である。上記乾燥の温度は、200℃以上であることが好ましい。
【0067】
本発明の含フッ素ポリマー膜はまた、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより得られたものである。液状媒体は、通常、常温下及び/又は加熱下で乾燥することにより除去することができる。上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物を含浸して得られる含フッ素ポリマー膜は、上記乾燥を常温下のみで行った場合、水等に容易に溶解することがあるので、少なくとも加熱下で乾燥を行うことが好ましい。上記含浸における「加熱下で乾燥」は、含フッ素ポリマーの融点以上の温度、例えば、200〜350℃で行うことができる。
【0068】
上記多孔性支持体は、多孔構造を有するものであれば特に限定されず、有機又は無機の材料の何れでもよく、例えばグラスウール、セラミック、アルミナ、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]製多孔フィルム、カーボン、不織布、各種ポリマーからなるもの等が挙げられる。
【0069】
上述したキャスト製膜を行うことにより得られた含フッ素ポリマー膜及び多孔性支持体に形成された含フッ素ポリマー膜の膜厚は、5〜50μmであることが好ましい。5μm未満であると、膜の機械的強度が不充分であり、50μmを超えると、例えば後述する固体高分子電解質型燃料電池に用いた場合、燃料電池としての性能が低下することがあるので好ましくない。
【0070】
本発明の活性物質固定体は、含フッ素ポリマーと活性物質とからなるものであって、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物と、上記活性物質とからなる液状組成物を基材に塗装することにより得られたものである。上記液状組成物を基材に塗装することにより、上記含フッ素ポリマー及び活性物質が基材上に固定される。
【0071】
上記活性物質としては上記活性物質固定体において活性を有し得るものであれば特に限定されず、本発明の活性物質固定体の目的に応じて適宜選択される。上記活性物質は、触媒であることが好ましい。
上記触媒としては、電極触媒として通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、白金、ルテニウム等を含有する金属;1種類以上の金属からなる中心金属をもつ有機金属錯体であって、その中心金属の少なくとも1つが白金又はルテニウムである有機金属錯体等が挙げられる。上記白金、ルテニウム等を含有する金属としては、ルテニウムを含有する金属、例えば、ルテニウム単体等であってもよいが、白金を含有する金属が好ましく、上記白金を含有する金属としては特に限定されず、例えば、白金の単体(白金黒);白金−ルテニウム合金等が挙げられる。上記触媒は、白金を含有する金属であることが好ましい。上記触媒は、通常、シリカ、アルミナ、カーボン等の担体上に担持させて用いる。
【0072】
上記液状組成物は、少なくとも、上記含フッ素ポリマー分散体又は上記膜形成用分散体組成物に、更に上記活性物質を含有させたものであり、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば造膜補助剤等が挙げられる。
【0073】
上記基材としては特に限定されず、例えば上述した多孔性支持体、樹脂成形体、金属板等が挙げられ、燃料電池等に用いられる電解質膜、多孔性カーボン電極等が好ましい。上記電解質膜としては、フルオロポリマーからなるものが好ましく、上記含フッ素ポリマーからなるものであってもよい。
【0074】
上記「液状組成物を基材に塗装する」ことは、上記液状組成物を上記基材に塗布し、必要に応じて乾燥し、通常更に含フッ素ポリマーの融点以上の温度で加熱することよりなる。上記加熱の条件は含フッ素ポリマーと活性物質とを基材上に固定することができるものであれば特に限定されないが、例えば200〜350℃で数分間、例えば2〜30分間加熱することが好ましい。
【0075】
本発明の膜電極接合体は、上記活性物質固定体を用いるものである。
本発明の膜を、固体高分子型燃料電池に用いる場合、本発明の膜をアノードとカソードの間に密着保持されてなる膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、しばしば「MEA」と称する)として使用することができる。ここでアノードはアノード触媒層からなり、プロトン伝導性を有し、カソードはカソード触媒層からなり、プロトン伝導性を有する。また、アノード触媒層とカソード触媒層のそれぞれの外側表面に後述するガス拡散層を接合したものもMEAと呼ぶ。
【0076】
上記アノード触媒層は、燃料(例えば水素)を酸化して容易にプロトンを生ぜしめる触媒を包含し、カソード触媒層は、プロトン及び電子と酸化剤(例えば酸素や空気)を反応させて水を生成させる触媒を包含する。アノードとカソードのいずれについても、触媒としては上述したものを好適に用いることができ、10〜1000オングストローム以下の触媒粒子であることが好ましい。また、このような触媒粒子は、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、活性炭、黒鉛といった0.01〜10μm程度の大きさの導電性粒子に担持されていることが好ましい。触媒層投影面積に対する触媒粒子の担持量は、0.001mg/cm以上、10mg/cm以下であることが好ましい。
【0077】
MEAの作製方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、安定化フルオロポリマーの加水分解体をアルコールと水の混合溶液に溶解したものに、触媒として市販の白金担持カーボン(例えば、日本国田中貴金属(株)社製TEC10E40E)を分散させてペースト状にする。これを2枚のPTFEシートのそれぞれの片面に一定量塗布して乾燥させて触媒層を形成する。次に、各PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に本発明の高分子電解質膜を挟み込み、100〜200℃で熱プレスにより転写接合してから、PTFEシートを取り除くことにより、MEAを得ることができる。当業者にはMEAの作製方法は周知である。MEAの作製方法は、例えば、JOURNAL OF APPLIED ELECTROCHEMISTRY,22(1992)p.1−7に詳しく記載されている。
【0078】
ガス拡散層としては、市販のカーボンクロスもしくはカーボンペーパーを用いることができる。前者の代表例としては、米国DE NORA NORTH AMERICA社製カーボンクロスE−tek、B−1が挙げられ、後者の代表例としては、CARBEL(登録商標、日本国ジャパンゴアテックス(株))、日本国東レ社製TGP−H、米国SPECTRACORP社製カーボンペーパー2050等が挙げられる。
【0079】
また、電極触媒層とガス拡散層が一体化した構造体は「ガス拡散電極」と呼ばれる。ガス拡散電極を本発明の高分子電解質膜に接合しても、MEAが得られる。市販のガス拡散電極の代表例としては、米国DE NORA NORTH AMERICA社製ガス拡散電極ELAT(登録商標)(ガス拡散層としてカーボンクロスを使用)が挙げられる。
【0080】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものである。上記固体高分子電解質型燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、固体高分子電解質型燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。
【0081】
上述した膜形成用分散体組成物、キャスト製膜を行うことにより得られた膜、多孔性支持体上に形成された膜、活性物質固定体、膜電極接合体、又は固体高分子電解質型燃料電池は、何れも、−SOH及び/若しくは−COOHを有する含フッ素ポリマー、又は、−SOX及び/若しくは−COOZを有する含フッ素ポリマーを用いてなるものであるが、−SOHを有する含フッ素ポリマー、又は、−SOXを有する含フッ素ポリマーを用いてなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0082】
本発明の含フッ素ポリマー分散体製造方法は、上述の構成を有するので、高純度の水性分散体を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
実施例1
(1.1)ディスパージョンの合成
容積3000mlのステンレス製攪拌式オートクレーブに、C15COONHの10%水溶液300gと純水1170gを仕込み、充分に真空、窒素置換を行った。オートクレーブを充分に真空にした後、テトラフルオロエチレン〔TFE〕ガスをゲージ圧力で0.2MPaまで導入し、50℃まで昇温した。その後、CF=CFOCFCFSOFを100g注入し、TFEガスを導入してゲージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続き0.5gの過硫酸アンモニウム[APS]を60gの純水に溶解した水溶液を注入して重合を開始した。
重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにした。さらに供給したTFEに対して、質量比で0.53倍に相当する量のCF=CFOCFCFSOFを連続的に供給して重合を継続した。
供給したTFEが522gになった時点で、オートクレーブの圧力を開放し、重合を停止した。その後室温まで冷却し、SOFを含む過フッ化ポリマーを約33質量%含有する、やや白濁した水性分散体2450gを得た。
得られた水性分散体の一部を硝酸を用いて凝析し、得られたポリマーを純水で十分に洗浄した後乾燥した。このポリマーを300℃で溶融NMR測定した結果、含フッ素ポリマーA中のCF=CFOCFCFSOF単位の含有率は19モル%であった。
【0085】
(1.2)加水分解
(1.1)で得られた水性分散体1Lを純水を用いて2倍に希釈し、容積5Lの三口フラスコ中で攪拌し、温度を80℃にして、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpHを10以上に保持して、含フッ素ポリマーが有する−SOFの加水分解を行った。約3時間後にpHの低下がみられなくなったが、加水分解を更に2時間継続し、停止した。この間、含フッ素ポリマーの析出は目視により確認されなかった。
【0086】
(1.3)精製
(1.3.1)限外濾過
(1.2)で得られた反応液を、ミリポア社製限外濾過装置を用いて限外濾過を施した。限外濾過膜は、分画分子量1万のもの(ミリポア社製 Pelicon 2 Filter)を用い、ミリポア社製ステンレス製ホルダーに挟み込み、限外濾過ユニットを設けた。(1.2)で得られた反応液を、5Lビーカーにいれ、送液ポンプ(ミリポア社製 easy−load MasterFlex 1/P)を用いて上記限外濾過ユニットに供給した。不純物を含む濾液は系外に排出し、処理液はビーカーに戻した。除去した濾液に相当する量の精製水を、適宜ビーカーに加えながら限外濾過を行い、濾液の電気伝導度が10μS・cm−1になった時点で純水の追加を停止し、処理液が1Lになった時点で限外濾過を停止して水性分散体Aを得た。電気伝導度の測定は、堀場製作所社製 Twin Cond B−173電気伝導度計を用いた。限外濾過処理の時間は5時間であった。
【0087】
(1.3.2)イオン交換
ローム&ハース社製、アンバーライトIR120B 200gを硫酸を用いて酸型に変換した後、純水で十分に洗浄し、硝子製ビュレットに充填した。
(1.3.1)で得られた水性分散体200gを、上記ビュレットを1時間かけて通過させ、酸型の水性分散体Bを得た。
【0088】
(1.4)粒径測定
(1.3.2)で得られた水性分散体Bを適宜希釈し、アルミ板の上に滴下し、60℃で乾燥して粒子形状測定用サンプルを作成した。同サンプルを原子間力顕微鏡[AFM SIIナノテクノロジー社製SPA−300型]で測定し、得られた画像内の20個の微粒子を無作為に抽出してアスペクト比、平均粒子径を測定した。アスペクト比は1.0、平均粒子径は110nmであった。
【0089】
(1.5)ナトリウム含有量の定量
(1.3.2)で得られた水性分散体B10gに、弱アルカリ性になるまでアンモニア水を加えた後、白金坩堝内で強熱して灰化した。室温まで冷却した後、希硝酸を加えて残滓を溶解し、純水で100ccに希釈した。この溶液中のナトリウム含有量を、原子吸光度計((株)日立製作所製のZ8000)を用いて定量したところ、10ppmであった。このことは、水性分散体Bに含まれるナトリウムが、100ppmであることを示す。
【0090】
(1.6)製膜試験
(1.3.2)で得られた水性分散体Bに当量のDMSO(ジメチルスルホキシド)を加えて混合した。この溶液の10gを、直径90mmのステンレスシャーレに入れ、水平に調製したホットプレートの上で、180℃に加熱・乾燥して電解質膜を得た。得られた電解質膜は、強靭であり、水中で煮沸しても膜状態を保っていた。
比較試験例
水性分散体Bの代わりに、(1.3.1)で得られた水性分散体Aを用いたこと以外は、(1.6)と同様にして、電解質膜を得た。得られた電解質膜は強度が小さく、裂け易いものであった。
【0091】
比較試験例
(1.3.1)と同様に限外濾過工程を繰り返し、水性分散体Aを得た。引き続き、純水を追加する代わりに、1質量%の硫酸を追加して限外濾過を2時間継続した。その後、追加する液を純水に戻し、濾液の電気伝導度が10μS・cm−1になった時点で純水の追加を停止して、水性分散体Cを得た。
(1.5)と同様に、水性分散体Cのナトリウム含有量を測定したところ、400ppmであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の含フッ素ポリマー分散体製造方法は、含フッ素ポリマー水性分散体を好適に製造することができ、膜形成用分散体組成物、膜、活性物質固定体、膜電極接合体、固体高分子型燃料電池において好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ポリマー分散体の製造方法であって、
含フッ素ポリマーを含む未精製水系分散体に限外濾過を行う工程(A)と
前記工程(A)の後にカチオン交換処理を行う工程(B)を含み、
前記含フッ素ポリマーは、−SO3X、−SONR及び/又は−COOX(Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有する
ことを特徴とする含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項2】
カチオン交換処理は、含フッ素ポリマーを含む水系分散体をカチオン交換型イオン交換樹脂と接触させるものである請求項1記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項3】
含フッ素ポリマーは、下記一般式(I)
CF=CF−(O)n1−(CFCFY1−O)n2−(CFYn3−A (I)
(式中、Y1は、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。n1は0又は1の整数を表す。n2は、0〜3の整数を表す。n2個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。n3は、1〜8の整数を表す。n3個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−SONR及び/又は−COOX(Xは、M1/L又はNRを表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族、13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。))で表されるフルオロビニルエーテル誘導体に由来する構成単位を有する請求項1又は2記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項4】
含フッ素ポリマーは、少なくとも1種類以上の、−SO又は−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有する含フッ素ポリマー前駆体を加水分解する工程によって得られた請求項1、2又は3記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項5】
含フッ素ポリマーは、前記一般式(I)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体に由来する構成単位、及び、その他の含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体である請求項3または4記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項6】
含フッ素エチレン性単量体は、下記一般式(II)
CF=CF−R (II)
(式中、Rは、フッ素原子、塩素原子、R又はORを表す。Rは、エーテル酸素を有していてもよい炭素数1〜9の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種のパーハロエチレン性単量体である請求項5記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項7】
パーハロエチレン性単量体は、一部又は全部がテトラフルオロエチレンである請求項6記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項8】
1はトリフルオロメチル基であり、Y2はフッ素原子であり、n1は0又は1であり、n2は、2である請求項3、4、5、6又は7記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の含フッ素ポリマー分散体製造方法により製造されたものであることを特徴とする含フッ素ポリマー分散体。
【請求項10】
請求項9記載の含フッ素ポリマー分散体と、
メタノール、エタノール、プロパノール及びテトラフルオロプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種のアルコールとを含む
ことを特徴とする膜形成用分散体組成物。
【請求項11】
更に活性物質を含有する請求項10記載の膜形成用分散体組成物。
【請求項12】
請求項9記載の含フッ素ポリマー分散体又は請求項10又は11記載の膜形成用分散体組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られるものである
ことを特徴とする含フッ素ポリマー膜。
【請求項13】
請求項9記載の含フッ素ポリマー分散体又は請求項10記載の膜形成用分散体組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより得られるものである
ことを特徴とする含フッ素ポリマー膜。
【請求項14】
含フッ素ポリマーと活性物質を含有する活性物質固定体であって、
請求項11記載の膜形成用分散体組成物を基材に塗装することにより得られる
ことを特徴とする活性物質固定体。
【請求項15】
活性物質は、触媒である請求項14記載の活性物質固定体。
【請求項16】
前記触媒は、白金を含有する金属である請求項15記載の活性物質固定体。
【請求項17】
請求項15又は16記載の活性物質固定体を有する
ことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項18】
請求項17記載の膜電極接合体を有する
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。

【公開番号】特開2009−102490(P2009−102490A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274465(P2007−274465)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】