説明

含フッ素共重合体およびその製造方法

【課題】 低吸湿性、透明性に優れ、かつ良好な機械強度、耐熱性を有するポリマーを提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む共重合体。一般式(1)


(一般式(1)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)一般式(2)


(一般式(2)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低吸湿性および透明性に優れた含フッ素ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学部材の技術分野においては、低吸湿性、透明性、耐熱性に優れたポリマー素材が求められており、これらを満たしうるポリマー素材として種々の含フッ素(共)重合体が開発されている。例としては、特許文献1に提案されている、非晶質の含フッ素ポリマーなどが挙げられるが、溶剤への溶解性や他のフッ素ポリマーとの接着性などの問題点を有していた。
これを解決する手段として、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとビニルモノマーの共重合が提案されており(非特許文献1、特許文献2)、高い透明性を有することが記載されている。ここで、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルはラジカル単独重合性に乏しく他のコモノマーと共重合させる必要があるが、電子求引性のオレフィンに属するため、ラジカル共重合する場合には電子供与性の置換基を有するビニルモノマーを利用することが好ましい。ビニルエーテル類とビニルエステル類がその典型である。しかしながらビニルエーテルとの共重合は発熱が大きくバルク重合(無溶媒での重合)が困難であるという問題点を有し、分子量分布が広くなりやすく透明性が低下する懸念がある。また、一般式CH2=CHOCORで表されるビニルエステル類との共重合体も特許文献2で提案されているが、耐熱性が低く、機械強度が低いという問題点を有している。
そのため、低吸湿性、透明性、耐熱性に優れ、かつバルク重合が可能で機械強度も良好な含フッ素ポリマーの開発が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特公昭63−18964号公報
【特許文献2】特開2002−201231号公報
【非特許文献1】Macromol.Chem.Phys. 196, 2840 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低吸湿性、透明性に優れ、かつ良好な機械強度、耐熱性を有するポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、2−トリフルオロメチルアクリル酸エステルと酢酸イソプロペニルを始めとするイソプロペニルエステル類および類縁体の共重合系を見出すことにより、本課題を解決するに至った。
具体的には、下記手段により達成された。
(1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む共重合体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
(2)前記一般式(1)中のR1が、フッ素原子を含むアルキル基である、(1)に記載の共重合体。
(3)前記一般式(2)のR2がアルキル基である、(1)または(2)に記載の共重合体。
(4)前記一般式(1)で表される繰り返し単位および前記一般式(2)で表される繰り返し単位を、それぞれ、30モル%以上ずつ含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の共重合体。
(5)少なくとも、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、下記一般式(4)で表される化合物1種以上とを重合させてなる共重合体。
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
(6)前記一般式(3)中のR1が、フッ素原子を含むアルキル基である、(5)に記載の共重合体。
(7)前記一般式(4)のR2がアルキル基である、(5)または(6)に記載の共重合体。
(8)数平均分子量(Mn)が103〜106である(1)〜(7)のいずれかに記載の共重合体。
(9)少なくとも、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、下記一般式(4)で表される化合物1種以上とを、重合させる工程を含む、共重合体の製造方法。
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明は、透明性、低吸湿性に優れ、かつ耐熱性、機械強度が良好なポリマーを与える。また、本発明のポリマーは塊状重合による製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後に記載される数値を最小値および最大値として含む範囲を意味する。また、「繰り返し単位AとBを含む共重合体」「モノマーAとBを重合させてできる共重合体」などの記述は、A,Bのみからなるものであってもよく、A,Bをともに含みさらにその他の成分を含むものであってもよい。
【0008】
以下、本発明の共重合体について説明する。
本発明の共重合体は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む共重合体である。
一般式(1)
【化7】

(一般式(1)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化8】

(一般式(2)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
【0009】
一般式(1)中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基としては直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基(ヘキサフルオロイソプロピル基)などが挙げられる。
アリール基である場合は、炭素数6〜9であることが好ましく、フェニル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基が好ましく、ペンタフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0010】
一般式(2)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、アルキル基が好ましい。
アルキル基である場合、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。好ましいアルキル基の具体的としてはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
アリール基である場合、炭素数6〜9であることが好ましく、具体的にはフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
アルコキシ基である場合は、炭素数1〜7であることが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基などが挙げられる。
アミノ基(アニリノ基を含む)である場合は炭素数1〜7であることが好ましく、具体的にはN,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基、アニリノ基などが挙げられる。
【0011】
1およびR2は、それぞれ、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
この中でも、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0012】
本発明の共重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位および一般式(2)で表される繰り返し単位を、例えば、それぞれ1%以上含み、好ましくはそれぞれ30%以上を含む。また、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の合計量は、本発明の共重合体を構成するモノマーの50モル%以上を占めることが好ましい。加えて、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位の含量比(モル%)は、1:2〜2:1の範囲であることが好ましい。
また、一般式(1)で表される繰り返し単位および一般式(2)で表される繰り返し単位は、それぞれ、1種類のみを含んでいてもよいし、いずれかまたは両方について2種類以上を含んでいてもよい。
【0013】
以下に本発明の共重合体の具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。x、y、zは繰り返し単位の割合(モル%)を表し、0≦x+y+z≦100であり(すなわち、これら以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。)。さらに、例えば、1<x<99、1<y<99であるが、xおよびyのいずれもが30以上であることが好ましい。
【0014】
【化9】

【0015】
【化10】

【0016】
【化11】

【0017】
次に本発明の共重合体の原料となるモノマーについて説明する。
本発明の共重合体は、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、一般式(4)で表される化合物1種以上を重合させて製造することができる。さらに、1種または2種以上の別の化合物(モノマー)を含んで重合させてもよい。
また、本発明では、一般式(3)で表される化合物および/または一般式(4)で表される化合物を、複数種類用いてもよい。
【0018】
一般式(3)
【化12】

(一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化13】

(一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
【0019】
一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、一般式(1)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、一般式(2)におけるR2と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0020】
本発明の共重合体の製造に用いることができる、他のモノマー(化合物)としては、その種類は特に限られず、上記一般式(3)で表される化合物および一般式(4)で表される化合物と、共重合しうるあらゆるモノマーを用いることができる。具体的には、アクリレート類、メタクリレート類、スチレン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ジオキセン類などが挙げられる。
【0021】
以下に本発明で用いられる一般式(3)で表されるモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0022】
【化14】

【0023】
以下に本発明で用いられる一般式(4)で表されるモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0024】
【化15】

【0025】
本発明の共重合体の製造方法は特に限定されないが、一般式(3)で表される化合物および(4)で表される化合物を用いて、重合開始剤の存在下、ラジカル重合にてポリマーを得ることが好ましい。ラジカル重合で製造することにより、水分の存在が許容され操作の簡便性の観点で有利であり、比較的高分子量体を得やすいなどの利点がある。ラジカル重合で製造する方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、塊状重合、溶液重合、水中またはエマルジョン中での乳化重合、懸濁重合などの方法を適宜選択する。このうち塊状重合には再沈などの取り出し工程を経ずに、モノマーの反応の工程により直接成形体を得ることが可能という利点があり、例えばプラスチック光ファイバーの製造方法などに採用されている。溶液重合に用いられる溶媒は特に限らないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトンなどが例として挙げられる。
【0026】
重合開始剤は用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
水性媒体中で行うプロセスの場合には、さらに無機のフリ−ラジカル発生剤、例えば過硫酸塩または「レドックス」化合物を用いることができる。
【0027】
また、分子量調節のために、適宜、連鎖移動剤を用いてもよい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記連鎖移動剤については、重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0028】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
一般に、重合温度は選択した開始剤系の分解速度に依存し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは40〜120℃である。ガス状のモノマーをコモノマーとして使用する場合はオートクレ−ブなどの耐圧容器で重合することが好ましく、その時にかかる圧力は、例えば、大気圧から50bar、好ましくは2〜20barである。
【0030】
本発明の共重合体の分子量は、数平均分子量(Mn)で、好ましくは1,000〜1,000,000(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定したスチレン換算での数平均分子量)であり、より好ましくは2,000〜800,000、さらに好ましくは10,000〜600,000であり、最も好ましくは、55,000〜200,000である。
重量平均分子量(Mw)では、好ましくは、4,000〜1,000,000であり、より好ましくは20,000〜600,000である。
Mw/Mn比は、好ましくは、4.5以下であり、より好ましくは3.5以下である。
また、ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25〜250℃、より好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは80〜180℃である。
【0031】
本発明の共重合体の引張強度は、後術する実施例に記載の条件で、25Mpa以上であることが好ましく、30〜45Mpaであることがより好ましい。
また、本発明の共重合体の弾性率は、後術する実施例に記載の条件で、2000Mpa以上であることが好ましく、2000〜3000Mpaであることがより好ましい。
さらに、本発明の共重合体の屈折率は、1.5以下が好ましく、1.45以下がより好ましい。
【0032】
本発明の共重合体は、透明であることが好ましい。
【0033】
本発明の重合体は、フィルム状にして用いることができる。
本発明の重合体は、光学部材の材料として有用である。本発明の重合体を含む光学部材として、例えば光ファイバー(車載用も含む)、光導波路等の光導性素子類、スチールカメラ用、ビデオカメラ用、望遠鏡用、眼鏡用、プラスチックコンタクトレンズ用、太陽光集光用等のレンズ類、凹面鏡、ポリゴン等の鏡類、ペンタプリズム類等のプリズム類などが挙げられる。そして、高耐熱性、低吸湿性、モノマーを選択することにより複屈折の非常に小さいポリマーも得ることが可能であることから散乱板、光ディスクなどの基板、および光スイッチに用いることも可能である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手段等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
平均分子量
ポリマーの平均分子量は、得られたコポリマーの一部をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。本発明におけるコポリマーの数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質とした値である。
なお、装置は、HLC−8220(東ソー製)、カラムはTSKgel SuperHZM-H ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、TSKgel SuperHZ4000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、 TSKgel SuperHZ2000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm ) の3本を連結して使用した。
試料濃度は2質量%、インジェクト量は10μl、流速0.35 ml/minで、RI検出器を用いて行った。
【0036】
成分比
共重合体を構成する各モノマーの割合(モル比)は、1H NMRの積分値より決定した。このときの溶媒にはアセトン-d6、またはTHF-d8を用いた。
【0037】
ガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子社製、DSC6200、)を用いて10℃/分で昇温して測定した。
【0038】
引張試験
まず、高温プレス機を用い後術する再沈精製後の粉末状ポリマーから厚さ200μmのポリマーフィルムを作製し、ここから100mm×500mmのフィルムを切り出してこれを試験片とした。この試験片を用い、テンシロン万能試験機(ORIENTEC 社製、品番 RTC−1210A)によって、引張速度3mm/分、測定温度25℃にて弾性率、引張破断強度(引張強度)を測定した。
【0039】
屈折率
屈折率計(DR−M2、ATAGO社製)を用い、観測波長589nm、測定温度25℃にて上記で作製したフィルム試験片の屈折率測定を行った。
【0040】
[実施例1] 共重合体 P−1の合成例
2−トリフルオロエチル−α−トリフルオロメチルアクリレート(3−1)(東ソー製)、酢酸イソプロペニル(4−1)(東京化成工業製)、重合開始剤として2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製)を用いて合成した。
容量20mlの試験管に(3−1)3.51g(15.8mmol)、(4−1)1.58g(15.8mmol)および2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)14.6mg(0.064mmol)を入れて軽く振り混ぜた。アルゴンで置換した後シリコン栓で密栓し、50℃で24時間静置して重合を行った。試験管を割ってロッド状のポリマーを取り出し、これをTHFに溶解し、ヘキサンに注いで再沈を行った。得られた粉体を再度THFに溶解し、ヘキサンに注いで再度再沈操作を行い、減圧乾燥して白色粉体3.97g(78%)を得た。1H−NMRの積分値から算出した組成比(モル比)は、(3−1)47%、(4−1)53%であった。GPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は7.9万、重量平均分子量(Mw)は25.7万、Mw/Mn=3.2であった。
この共重合体のTgは83℃、屈折率は1.420であった。また、本発明の共重合体は、光学部材として用いるに好ましい低吸湿性を有していた。
この共重合体をTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させた。得られたフィルムは完全に透明であった。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、この共重合体の弾性率は2330MPa、引張強度は36.3MPaであった。
【0041】
[実施例2]共重合体P−2の合成例
用いるモノマーを(3−1)を等モル(15.8mmol)の(3−2)に代えて、実施例1と同様にして、粉体状の共重合体を得た(収率74%)。1H−NMRの積分値から算出した組成比(モル比)は、(3−1)46%、(4−1)54%であった。GPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は7.6万、重量平均分子量(Mw)は24.8万、Mw/Mn=3.3であった。
この共重合体のTgは81℃、屈折率は1.423であった。
この共重合体をTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させて得たフィルムは完全に透明であった。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、この共重合体の弾性率は2280MPa、引張強度は33.8MPaであった。
【0042】
[比較例1]共重合体R−1の合成
【化16】

【0043】
用いるモノマーを(4−1)から等モル(15.8mmol)の酢酸ビニルに代えて、実施例1と同様にして共重合体を得た(収率80%)。ただし再沈して得られたポリマーは粉体ではなくゴム状であった。
GPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は5.1万、重量平均分子量(Mw)は57万、Mw/Mn=11.1であった。
この共重合体の屈折率は1.420であった。
この共重合体をTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させて得たフィルムは完全に透明であった。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、この共重合体の弾性率は1820MPa、引張強度は28.6MPaであった。
【0044】
[比較例2]共重合体R−2の合成
【化17】

用いるモノマーを(4−1)から等モル(15.8mmol)のシクロヘキシルビニルエーテルに代えて、実施例1と同様にして共重合体を得た。反応は激しい発熱を伴って起こり、得られたロッド状ポリマーには多くの気泡が生成していた。また再沈して得られたポリマーは粉体ではなくゴム状であった。
GPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は10.1万、重量平均分子量(Mw)は70万、Mw/Mn=6.9であった。
この共重合体の屈折率は1.452であった。
この共重合体をTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させて得たフィルムはわずかに白くにごっていた。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、この共重合体の弾性率は1320MPa、引張強度は19.9MPaであった。
【0045】
表1に、実施例1〜3、比較例1、2で合成したポリマーに関する測定結果について記載する。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明のイソプロペニルエステルをモノマーとして用いたポリマーは、ビニルエステル(R−1)やビニルエーテル(R−2)を用いたポリマーに比べて、分子量分布が狭く、機械強度が良好で、Tgも高い傾向にあることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む共重合体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR1が、フッ素原子を含むアルキル基である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記一般式(2)のR2がアルキル基である、請求項1または2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位および前記一般式(2)で表される繰り返し単位を、それぞれ、30モル%以上ずつ含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
少なくとも、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、下記一般式(4)で表される化合物1種以上とを重合させてなる共重合体。
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(3)中のR1が、フッ素原子を含むアルキル基である、請求項5に記載の共重合体。
【請求項7】
前記一般式(4)のR2がアルキル基である、請求項5または6に記載の共重合体。
【請求項8】
数平均分子量(Mn)が103〜106である請求項1〜7のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項9】
少なくとも、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、下記一般式(4)で表される化合物1種以上とを、重合させる工程を含む、共重合体の製造方法。
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R1はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、R2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)

【公開番号】特開2007−16083(P2007−16083A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196877(P2005−196877)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】