説明

含フッ素化合物,表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体

【課題】潤滑性の高い含フッ素化合物,表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される含フッ素化合物。(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(RはCk2k+1(Ck2k+1は水素或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でkは0から17の整数)),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3− を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rf,Rf′は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。)
【化28】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分子内にフルオロフェニル基を有する含フッ素化合物、これを用いた表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体に関し、特に磁気記録媒体の摺動耐久性の向上を目的とした低飛散性の表面改質剤に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置の記録密度の増加を図るため、ヘッドとディスクの距離は小さくなる傾向にある。また高速で読み取りや書き込みを行うためにディスクの回転数は大きくなってきている。そのためヘッドとディスクの接触の機会が増え、しかもより高速で接触するためディスクの摺動条件は従来に比べて更に厳しくなってきている。この摺動に対し、磁性層の摩耗を防ぐため磁気ディスクの最外層に用いられる潤滑剤は改良が加えられてきた。
【0003】このような潤滑剤は、例えば、パーフルオロオキシアルキレン鎖の両末端にピペロニル基を有する化合物(特開昭61−4727号公報),パーフルオロオキシアルキル鎖やパーフルオロアルキル鎖の末端にベンゼン環を有する化合物(特開昭63−239167号公報),パーフルオロオキシアルキレン鎖やパーフルオロオキシアルキル鎖末端にカルボン酸アンモニウム塩を有する化合物(特開平5−301954号公報)等が知られている。これらを磁気ディスク表面に塗布することによってその表面は潤滑性が向上し、磁性層の摩耗はかなり押さえることができるようになった。しかし、今後更に記録密度を上げるためヘッドとディスクとがほぼ接触した状態で使用されることも予想され、これに対応するためのより潤滑性能の高いものが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は潤滑性の高い含フッ素化合物,表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らはパーフルオロオキシアルキレン鎖、或いはパーフルオロオキシアルキル鎖を有する種々の含フッ素化合物を検討した結果、パーフルオロオキシアルキレン鎖、或いはパーフルオロオキシアルキル鎖末端にフルオロフェニル基を有する化合物が高い潤滑性を示すことを見出した。更にこれを用いた表面改質剤からなる層を表面に形成した磁気記録媒体表面の摺動特性が良好であることを見出した。具体的には下記に示す下記の含フッ素化合物,表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体が上記課題を解決することを見出した。
【0006】その第1は下記一般式で表される含フッ素化合物。
【0007】
【化4】


【0008】(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)
その第2は下記一般式で表される含フッ素化合物を1種類以上含有することを特徴とする表面改質剤。
【0009】
【化5】


【0010】(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)
その第3は非磁性支持体上に1層以上の磁性体層を備えた磁気記録媒体において、前記磁性体層、或いは前記磁性体層の外側に備えた保護層表面に下記一般式で表される含フッ素化合物を1種類以上含有する膜を形成したことを特徴とする磁気記録媒体。
【0011】
【化6】


【0012】(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)
化1から化6の化合物の基本構造はパーフルオロオキシアルキレン鎖、或いはパーフルオロオキシアルキル鎖末端にフルオロフェニル基を有する化合物である。
【0013】Rfはパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖を表している。またRf′及びRf″はパーフルオロポリオキシアルキル鎖を表している。これらを導入する際の原料はMontefluos 社製のFomblin(繰り返し単位は−(CF2CF2O)α−(CF2O)β−、或いは −(CF(CF3)−CF2O)α′−(CF2O)β′−),ダイキン工業社製DEMNUM(繰り返し単位は−(CF2CF2CF2O)γ−),Du Pont社製のKrytox(繰り返し単位は−(CF(CF3)CF2O)δ−)等が挙げられる。これらの平均分子量は1500前後から15000程度までのものがある。分子量が大きいほど摺動による飛散は少ない。本発明の化合物を合成する際はパーフルオロポリオキシアルキル鎖末端、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖末端にカルボキシル基,ハイドロキシメチレン基,ヨウ化エチレン基等を持ったものを用いる。パーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖の分子量が低すぎると(800未満の場合)パーフルオロヘキサン系の溶剤への溶解性が低下する傾向がある。そのため分子量は800以上が望ましい。また、更に溶解性を上げるにはRf,Rf′及びRf″の分子量をなるべく大きくすることが望ましい。そのため、できれば2000以上のものが望ましい。
【0014】−X−はRfとフルオロ基を持つベンゼン環の結合部位である。この構造は−CONR−や−CONRCH2−といったアミド結合(RはCk2k+1(Ck2k+1 は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数)),−CH2NR−や−CH2NRCH2−のようなアミン結合,−CH2OCO−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−のようなエステル結合,−COS−のようなチオエステル結合,−CH2OSO2−のようなスルホン酸エステル結合,−CH2OCH2−のようなエーテル結合が挙げられる。
【0015】これらのうち−X−が−CONR−,−CONRCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−、或いは−CO2CHCH3− 等の場合はRfの末端はCO2HやCOClといったものを用いて合成する。−CH2NR−,−CH2NRCH2−,−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−、或いは−CH2OCOCH2−等の場合はRfの末端はCH2ClやCH2OHといったものを用いて合成する。
【0016】nはフェニル基に結合しているフルオロ基の数である。摺動特性を向上するには必ずフルオロ基は必要である。またフルオロ基が多いものほど摺動特性が良好である傾向があるが、導入できる個数は最大5つである。そのためnの範囲は1から5の整数になる。
【0017】mはフルオロフェニル基の導入個数である。Rfがパーフルオロポリオキシアルキル鎖の場合は片末端がCF3 であるからフルオロフェニル基は1個導入可能となる。またRfがパーフルオロポリオキシアルキレン鎖の場合は両末端に導入できる可能性がある。そのためmは1か2である。
【0018】本発明以外の潤滑剤でも主鎖の構造はパーフルオロオキシアルキレン鎖、或いはパーフルオロオキシアルキル鎖のものが多い。そのため本発明の化合物の潤滑剤としての作用は主にパーフルオロオキシアルキレン鎖、或いはパーフルオロオキシアルキル鎖が発現していると考えられる。末端のフルオロフェニル基のフルオロ基はこの作用を更に高める何らかの役割を担っていると推定される。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明を実施例により詳細に説明する。
【0020】(実施例1)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CONHCH2−,nが5,mが2の化合物(化合物1)の合成方法を記述する。
【0021】
【化7】


【0022】化合物1はペンタフルオロベンジルアミンのアミノ基とMontefluos 社製 Fomblin のZ−DIAC(分子量約4000)のカルボキシル基を反応(この場合はアミド化)させることにより得られる。
【0023】初めにペンタフルオロベンジルアミンの合成方法を示す。ペンタフルオロベンゾニトリル(20重量部)をテトラヒドロフラン(THF)(200重量部)に溶解させ、これに水素化リチウムアルミニウム(5重量部)を加え、乾燥窒素雰囲気下6時間撹拌する。反応液を細かく砕いた氷(500重量部)に注ぐ。塩化メチレン(100重量部)で3回抽出し、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥する。エバポレータで塩化メチレンを揮発させ、酢酸エチルとn−ヘキサンから再結晶しペンタフルオロベンジルアミン(18重量部)を得る。
【0024】次にアミド化を記述する。Z−DIAC(20重量部)を3M社製フッ素系溶剤FC−72(200重量部)に溶解した後、溶液を0℃に冷却下ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(4重量部)を加え撹拌する。これに上記反応で得たペンタフルオロベンジルアミン(3重量部)を塩化メチレン(20重量部)に溶解したものを加え、0℃で2時間,引き続き常温で30時間撹拌する。撹拌後24時間静置すると2層に分離し、上層に固体が析出する。上層(塩化メチレン層)を除去後下層(FC−72層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−72をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることで目的の化合物1(20重量部)を得た。
【0025】なお図1に化合物1のIRスペクトルを示す。
【0026】(実施例2)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CONH−,nが5,mが2の化合物(化合物2)の合成方法を記述する。
【0027】
【化8】


【0028】化合物2はペンタフルオロベンジルアミンの代わりにペンタフルオロアニリン(3重量部)を用いる以外は化合物1と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0029】化合物2のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収がない以外は化合物1のスペクトルと同様であった。
【0030】(実施例3)Rfがパーフルオロオキシプロピルユニットの繰り返し単位のパーフルオロオキシアルキル基で、−X−が−CONHCH2− ,nが5,mが1の化合物(化合物3)の合成方法を記述する。
【0031】
【化9】


【0032】化合物3はZ−DIACの代わりにダイキン工業社製DEMNUMのSH(分子量約4000)(40重量部)を用いる以外は化合物1と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0033】化合物3のIRスペクトルは1700cm-1付近の吸収が若干小さい以外は化合物1のスペクトルと同様であった。
【0034】(実施例4)Rfがパーフルオロオキシイソプロピルユニットの繰り返し単位のパーフルオロオキシアルキル基で、−X−が−CONHCH2− ,nが5,mが1の化合物(化合物4)の合成方法を記述する。
【0035】
【化10】


【0036】化合物4はZ−DIACの代わりにDu Pont社製Krytoxの157 FS−L(分子量約1920)(20重量部)を用いる以外は化合物1と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0037】化合物4のIRスペクトルは化合物1のスペクトルとほぼ同様であった。
【0038】(実施例5)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CONHCH2− ,nが1,mが2の化合物(化合物5)の合成方法を記述する。
【0039】
【化11】


【0040】化合物5はペンタフルオロベンジルアミンの代わりに3−フルオロベンジルアミン(3重量部)を用いる以外は化合物1と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0041】なお図2に化合物5のIRスペクトルを示す。
【0042】(実施例6)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CONHCH2− ,nが2,mが2の化合物(化合物6)の合成方法を記述する。
【0043】
【化12】


【0044】化合物6はペンタフルオロベンジルアミンの代わりに3,5−ジフルオロベンジルアミン(3重量部)を用いる以外は化合物1と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0045】なお図3に化合物6のIRスペクトルを示す。
【0046】(実施例7)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CON((CH2)17CH3)CH2− ,nが1,mが2の化合物(化合物7)の合成方法を記述する。
【0047】
【化13】


【0048】化合物7はZ−DIACのカルボン酸クロライドと3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンを反応させることにより得られる。
【0049】初めにZ−DIACのカルボン酸クロライドの合成方法を示す。Z−DIAC(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これに塩化メチレン(20重量部)と塩化チオニル(1重量部)を加え、5時間還流する。還流後12時間静置し、上層(塩化メチレン層)を除く。下層(FC−72層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−72をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることでZ−DIACのカルボン酸クロライド(20重量部)を得た。この化合物は水と反応し容易にZ−DIACへ戻ってしまうので湿気を与えないよう注意する必要がある。
【0050】次に3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの合成方法を記述する。3−フルオロベンジルアミン(13重量部)をピリジン(100重量部)に溶解し、約0℃に冷却下パラトルエンスルホニルクロライド(21重量部)を加え、室温で12時間撹拌する。反応液を5%塩酸に注ぎ析出する固体を濾取する。この固体を5%塩酸で洗った後、引き続き洗液が中性になるまで水で洗う。エタノールで再結晶し3−フルオロベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミド(25重量部)を得る。
【0051】この反応で得られた3−フルオロベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミド(14重量部)をエタノール(200重量部)に懸濁し、これに1−ブロモオクタデカン(20重量部)と炭酸カリウム(8重量部)を加え、20時間還流する。反応液中のエタノールをエバポレータで揮発させた後、塩化メチレン(200重量部)を加えて良く撹拌する。塩化メチレンを水で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥する。塩化メチレンをエバポレータで揮発させた後、残渣をエタノール:アセトン=1:1の混合溶媒で再結晶し3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミド(20重量部)を得た。
【0052】この反応で得られた3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミド(20重量部)をエタノール(200重量部)に懸濁し、これに35%塩酸(50重量部)を加え12時間還流する。反応液を冷却後エバポレータで反応液を乾固し、5%炭酸ナトリウム水溶液(200重量部)と塩化メチレン(200重量部)を加え約1分間撹拌する。水層を除去し、塩化メチレン層を硫酸ナトリウムで乾燥する。エバポレータで塩化メチレンを揮発後残渣をエタノール:アセトン=1:2の混合溶媒で再結晶し3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミン(10重量部)を得た。
【0053】最後に化合物7の合成方法を記述する。上記方法で得られたZ−DIACのカルボン酸クロライド(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これに3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミン(10重量部)を塩化メチレン(100重量部)に溶解したものを加え、室温で12時間撹拌し、その後12時間静置する。上層(塩化メチレン層)を除去し、下層(FC−72層)をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることで目的の化合物7(20重量部)を得た。
【0054】なお図4に化合物7のIRスペクトルを示す。
【0055】(実施例8)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CON((CH2)17CH3)−,nが5,mが2の化合物(化合物8)の合成方法を記述する。
【0056】
【化14】


【0057】化合物8は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりにペンタフルオロ−N−ヘキシルアニリン(8重量部)を用いる以外は化合物7と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0058】ペンタフルオロ−N−ヘキシルアニリンは3−フルオロベンジルアミンの代わりにペンタフルオロアニリンを用い、1−ブロモオクタデカンの代わりに1−ブロモヘキサンを用いる以外は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンを合成する際と同様の方法で得られる。
【0059】化合物8のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が若干小さい以外は化合物7のスペクトルと同様であった。
【0060】(実施例9)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CO2CH2−,nが5,mが2の化合物(化合物9)の合成方法を記述する。
【0061】
【化15】


【0062】化合物9は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりにペンタフルオロベンジルアルコール(8重量部)を用いる以外は化合物7と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0063】なお図5に化合物9のIRスペクトルを示す。
【0064】(実施例10)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CO2− ,nが5,mが2の化合物(化合物10)の合成方法を記述する。
【0065】
【化16】


【0066】化合物10は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりにペンタフルオロフェノール(7重量部)を用いる以外は化合物7と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0067】化合物10のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収がない以外は化合物9のスペクトルと同様であった。
【0068】(実施例11)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CO2CHCH3−,nが5,mが2の化合物(化合物11)の合成方法を記述する。
【0069】
【化17】


【0070】化合物11は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりに1−(ペンタフルオロフェニル)エタノール(8重量部)を用いる以外は化合物7と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0071】化合物11のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が若干大きい以外は化合物9のスペクトルとほぼ同様であった。
【0072】(実施例12)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−COS−,nが5,mが2の化合物(化合物12)の合成方法を記述する。
【0073】
【化18】


【0074】化合物12は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりにペンタフルオロチオフェノール(8重量部)を用いる以外は化合物7と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0075】化合物12のIRスペクトルは1700cm-1付近と2900cm-1付近の吸収がない以外は化合物9のスペクトルとほぼ同様であった。
【0076】(実施例13)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2N((CH2)17CH3)CH2−,nが1,mが2の化合物(化合物13)の合成方法を記述する。
【0077】
【化19】


【0078】化合物13は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンと、Montefluos社製Fomblin のZ−DOL(分子量約4000)の水酸基をクロル基に置換した化合物を反応させることにより得られる。
【0079】初めにZ−DOLの水酸基をクロル基に置換した化合物の合成方法を示す。Z−DOL(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これにピリジン(10重量部)を塩化メチレン(50重量部)に溶かしたものを加え、更に塩化チオニル(5重量部)を加え、5時間還流する。還流後12時間静置し、上層(塩化メチレン層)を除く。下層(FC−72層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−72をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることでZ−DOLの水酸基をクロル基に置換した化合物(20重量部)を得た。なお、3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの合成は実施例7中に記述した。
【0080】次に化合物13の合成方法を記述する。上記方法で得られたZ−DOLの水酸基をクロル基に置換した化合物(20重量部)を3M社製フッ素系溶剤FC−77(100重量部)に溶解し、これに3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミン(10重量部)と炭酸カリウム(5重量部)をエタノール(100重量部)に懸濁したものを加え、12時間還流し、その後室温で48時間静置する。上層(エタノール層)を除去し、下層(FC−77層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−77をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることで目的の化合物13(20重量部)を得た。
【0081】なお図6に化合物13のIRスペクトルを示す。
【0082】(実施例14)Rf′がパーフルオロオキシアルキレン基で、nが1の化合物(化合物14)の合成方法を記述する。
【0083】
【化20】


【0084】化合物14は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりに3−フルオロベンジルアミン(0.3重量部)を用い、FomblinのZ−DOLの代わりにダイキン工業社製DEMNUMのSA(分子量約4000)(20重量部)を用いる以外は化合物13と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0085】化合物14のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が小さい以外は化合物13のスペクトルとほぼ同様であった。
【0086】(実施例15)Rf″がパーフルオロオキシアルキレン基で、nが5の化合物(化合物15)の合成方法を記述する。
【0087】
【化21】


【0088】化合物15は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりにペンタフルオロアニリン(0.4重量部)を用い、FomblinのZ−DOLの代わりにSA(20重量部)を用いる以外は化合物13と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0089】化合物15のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が小さい以外は化合物13のスペクトルとほぼ同様であった。
【0090】(実施例16)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2N(SO264CH3)CH2− ,nが1,mが2の化合物(化合物16)の合成方法を記述する。
【0091】
【化22】


【0092】化合物16は3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの代わりに3−フルオロベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミド(10重量部)を用いる以外は化合物13と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。ところで3−フルオロベンジルアミンとパラトルエンスルホン酸からなるアミドは実施例7の3−フルオロ−N−オクタデシルベンジルアミンの合成の際の中間体であり、その合成方法は実施例7で記述している。
【0093】化合物16のIRスペクトルは3300〜3200cm-1付近の吸収が若干大きい以外は化合物13のスペクトルとほぼ同様であった。
【0094】(実施例17)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2CO2−,nが5,mが2の化合物(化合物17)の合成方法を記述する。
【0095】
【化23】


【0096】Z−DOL(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これにピリジン(5重量部)を塩化メチレン(50重量部)に溶かしたものを加え、更にペンタフルオロ安息香酸クロライド(5重量部)を加え、5時間還流する。還流後12時間静置し、上層(塩化メチレン層)を除く。下層(FC−72層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−72をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることで化合物17(20重量部)を得た。
【0097】なお図7に化合物17のIRスペクトルを示す。
【0098】(実施例18)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2OSO2− ,nが5,mが2の化合物(化合物18)の合成方法を記述する。
【0099】
【化24】


【0100】化合物18はペンタフルオロ安息香酸クロライドの代わりにペンタフルオロスルホン酸クロライド(6重量部)を用いる以外は化合物17と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0101】化合物18のIRスペクトルは1700cm-1付近の吸収がない以外は化合物17のスペクトルとほぼ同様であった。
【0102】(実施例19)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2OCOCH2−,nが5,mが2の化合物(化合物19)の合成方法を記述する。
【0103】
【化25】


【0104】化合物19はペンタフルオロ安息香酸クロライドの代わりにペンタフルオロフェニル酢酸クロライド(7重量部)を用いる以外は化合物17と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0105】ペンタフルオロフェニル酢酸クロライドはペンタフルオロフェニル酢酸(7重量部)と塩化チオニル(7重量部)を塩化メチレン(50重量部)に溶解し、5時間還流後、反応液をエバポレータで揮発させることによって得られる。
【0106】化合物19のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が若干大きい以外は化合物17のスペクトルとほぼ同様であった。
【0107】(実施例20)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2OCOCH2O−,nが5,mが2の化合物(化合物20)の合成方法を記述する。
【0108】
【化26】


【0109】化合物20はペンタフルオロ安息香酸クロライドの代わりにペンタフルオロフェノキシ酢酸クロライド(8重量部)を用いる以外は化合物17と同様の方法で得られた。収量は20重量部である。
【0110】ペンタフルオロフェノキシ酢酸クロライドはペンタフルオロフェノキシ酢酸(8重量部)と塩化チオニル(7重量部)を塩化メチレン(50重量部)に溶解し、5時間還流後、反応液をエバポレータで揮発させることによって得られる。化合物20のIRスペクトルは2900cm-1付近の吸収が若干大きい以外は化合物17のスペクトルとほぼ同様であった。
【0111】(実施例21)Rfがパーフルオロオキシアルキレン基で、−X−が−CH2OCH2− ,nが5,mが2の化合物(化合物21)の合成方法を記述する。
【0112】
【化27】


【0113】化合物21はZ−DOLをパラトルエンスルホニル化(トシル化)した化合物とペンタフルオロベンジルブロマイドを縮合(この場合はエーテル化)することにより得られる。
【0114】まずZ−DOLをトシル化した化合物の合成方法を示す。Z−DOL(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これにピリジン(10重量部)を塩化メチレン(50重量部)に溶かしたものを加え、更にパラトルエンスルホニルクロライド(4重量部)を加え、5時間還流する。還流後12時間静置し、上層(塩化メチレン層)を除く。下層(FC−72層)をG2のフィルタで濾過し、濾液中のFC−72をエバポレータで揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることでZ−DOLをトシル化した化合物(20重量部)を得た。
【0115】次に化合物21の合成方法を示す。Z−DOLをトシル化した化合物(20重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これに水素化ナトリウム(1重量部)をTHF(100重量部)に懸濁したものを加え良く撹拌する。更にペンタフルオロベンジルブロマイドをTHF(100重量部)に溶解したものを2時間かけて滴下後、乾燥窒素雰囲気下6時間撹拌する。反応液を細かく砕いた氷(500重量部)に注ぐ。FC−72(100重量部)で3回抽出し、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥する。エバポレータでFC−72を揮発させ、更に真空ポンプで完全に揮発させることで目的の化合物21(20重量部)を得た。
【0116】化合物21のIRスペクトルは1300〜1000cm-1付近の吸収が若干小さい以外は化合物14のスペクトルとほぼ同様であった。
【0117】(実施例22)5.25 インチのAl合金ディスク表面のNi−P層とその上にCo層を設け、この上にNi−Co系の磁性層を50nmの厚さにスパッタ蒸着し、更にカーボンからなる保護層を50nmの厚さに製膜したディスクを用意する。このディスクを化合物1から21の0.1wt% のFC−72溶液に1分間浸漬し、その後引上げ速度1mm/sで引上げた後、室温に2時間放置して溶剤を揮発させ、化合物1から21の膜を表面に形成したディスクを作成した。このディスクの構成の模式図を図8に示す。
【0118】これらディスクの摺動特性をCSS法(コンタクトスタートストップ法:試験機は小野田セメント(株)製)で評価した。条件は回転数:3600rpm ,1サイクル:30秒,最終サイクル数1000サイクル,ヘッド荷重:10gで、最終サイクルのスティクション時の摩擦力で評価した。これらの比較例としてステアリン酸アンモニウム(表1では化合物22と記述)も評価した。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】


【0120】この結果より、本発明の磁気記録媒体の表面の摺動特性は非常に高いことがわかった。また、このことから本発明の化合物は潤滑性を向上する表面改質剤として作用することもわかった。
【0121】
【発明の効果】潤滑性の高い含フッ素化合物,表面改質剤、及びこれを用いた磁気記録媒体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物1のIRスペクトル図。
【図2】化合物5のIRスペクトル図。
【図3】化合物6のIRスペクトル図。
【図4】化合物7のIRスペクトル図。
【図5】化合物9のIRスペクトル図。
【図6】化合物13のIRスペクトル図。
【図7】化合物17のIRスペクトル図。
【図8】本発明の磁気記録媒体の断面図。
【符号の説明】
1…Al合金、2…Ni−P層、3…Cr層、4…Ni−Co合金の磁性層、5…カーボン層、6…化合物を含む層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記一般式で表される含フッ素化合物。
【化1】


(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)
【請求項2】下記一般式で表される含フッ素化合物を1種類以上含有することを特徴とする表面改質剤。
【化2】


(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)
【請求項3】非磁性支持体上に1層以上の磁性体層を備えた磁気記録媒体において、前記磁性体層、或いは前記磁性体層の外側に備えた保護層表面に下記一般式で表される含フッ素化合物を1種類以上含有する膜を形成したことを特徴とする磁気記録媒体。
【化3】


(式中−X−は−CONR−,−CH2NR−,−CONRCH2−,−CH2NRCH2−(−Rは−Ck2k+1(Ck2k+1は水素、或いは直鎖か分岐のアルキル鎖でありkは0から17の整数),−SO2CH3,−SO264CH3,−SO265、或いは−SO2107),−CH2OSO2−,−CH2OCO−,−CH2OCH2−,−CH2OCOCH2O−,−CH2OCOCH2−,−COS−,−CO2CH2−,−CO2−,−CO2CHCH3−を表す。nは1から5の整数。mは1又は2。Rfは平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖、又はパーフルオロポリオキシアルキレン鎖。Rf′及びRf″は平均分子量800以上のパーフルオロポリオキシアルキル鎖。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平9−255608
【公開日】平成9年(1997)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−73588
【出願日】平成8年(1996)3月28日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)