説明

含水有機物の脱水炭化方法とその装置

【課題】 含水有機物の脱水炭化方法とその装置に関する。
【解決手段】 高含水有機物を好気性醗酵槽でメタン醗酵させて、液体分と固形分に分離した後、該固形分を、加熱水蒸気を使用する炭化炉に投入して炭化することを特徴とする。
上記メタン醗酵で発生したメタンを上記加熱水蒸気の蒸気を生成させるボイラーの燃料として使用することを特徴とする。
上記炭化炉の排ガスで上記醗酵層を加温することを特徴とする。
水性ガス化炉、ガスエンジン発電機を組合わせて、ガス化発電することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水有機物の脱水炭化方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
含水有機物を加熱乾燥して炭化処理することは特許文献1に記載されている。また高含水汚泥をバーナーで加熱乾燥して炭化することが記載されている。また汚泥を乾燥炉で乾燥して炭化することが記載されている。
含水有機物の炭化では、まず水分を乾燥することが必須であるが、上記した様に、従来技術はいずれも加熱乾燥しているので、乾燥のためのエネルギーコストが極めて高くなる欠点がある。
また有機物を連続炭化する装置として、スクリューコンベアに過熱水蒸気を吹込んで有機物を連続炭化する装置(特許文献4)が公知であるが、従来装置の欠点は、加熱水蒸気を作る装置と有機物を炭化する装置が別々で機械装置費が高価になる。また熱効率も悪く、エネルギーコストが高くなる欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、省エネ性に極めて優れた乾燥と炭化が一体になった新しい乾燥炭化装置を提供することである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−358371
【特許文献2】特開2004−337806
【特許文献3】特開2004−277464
【特許文献4】特開平11−223476
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点は下記の手段で解決できる。
すなわち、
1. 高含水有機物を好気性醗酵槽でメタン醗酵させて、液体分と固形分に分離した後、該固形分を、加熱水蒸気を使用する炭化炉に投入して炭化することを特徴とする含水有機物の脱水炭化方法。
2. 上記メタン醗酵で発生したメタンを上記加熱水蒸気の蒸気を生成させるボイラーの熱源として使用することを特徴とする上記1に記載の含水有機物の脱水炭化方法。
3. 上記炭化炉の排ガスで上記醗酵層を加温することを特徴とする上記1〜2のいずれか1項に記載の含水有機物の脱水炭化方法。
4. 上記炭化炉から排出された炭化物を水性ガス化炉に投入して、過熱水蒸気と反応させてH、CO、CHを生成させることを特徴とする炭化物のガス化方法。
5. 上記炭化炉から排出された炭化物に上記液体分を含浸してなることを特徴とする徐放性肥料。
6. 高含水有機物の好気性醗酵層と、スクリューコンベアで有機物を螺送しながら乾燥炭化する構造の有機物の乾燥炭化装置と、該醗酵槽の中で高含水有機物の好気性醗酵によって生成された固形分を該乾燥炭化装置に螺送する装置から成る高含水有機物の脱水炭化装置であって、該好気性醗酵槽は、該高含水有機物の投入口と、該投入された有機物を空気と混合攪拌する攪拌羽根と、該醗酵槽の中を加温する機構と、該有機物の醗酵によって生成した固形分と液体分を分離するフィルターを備えてなり、かつ該乾燥炭化装置は、スクリューコンベアを上下多段に連結配置し、該スクリューの中に過熱水蒸気を吹き込んで螺送する有機物を炭化する装置であって、該スクリューコンベアは、飽和水蒸気の流れるボイラーチューブを加熱する過熱水蒸気発生装置の加熱炉胴部を水平方向に貫通して配置し、かつ該過熱水蒸気発生装置で発生した過熱水蒸気を該スクリューコンベアに吹込むことを特徴とする高含水有機物の脱水炭化装置。
7. 上記加熱炉の底部にバーナーを、上記加熱炉の頂部に上記ボイラーチューブを、上記バーナーとボイラーチューブの開に上記スクリューコンベアを多段に配置してなることを特徴とする上記6に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
8. 記加熱炉の底部にバーナーを、上記バーナーの上部に上記ボイラーチューブを、上記ボイラーチューブの上に上記スクリューコンベアを多段に配置してなることを特徴とする上記6に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
9. 上記スクリューコンベアから排出された炭化物を補助燃料として上記加熱炉底部に投入することを特徴とする上記6〜8のいずれか1項に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
10. 上記脱水炭化装置に水性ガス化炉とガスエンジン発電機を組合わせて、該炭化炉で生成された炭化物を水性ガス化炉でガス化燃料に変換し、該ガス化燃料を使用してガスエンジン発電機を駆動させることを特徴とする上記6〜8のいずれか1項に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
【発明の効果】
【0006】
1. 高含水有機物を醗酵熱だけで脱水、乾燥できる。極めて省エネ性に優れている。
2. 炭化装置(スクリューコンベア)の断熱構造が不要。構造簡単、設備費安価。
3. 炭化、醗酵共、ランニングコストが極めて安価
4. 飽和水蒸気を過熱水蒸気に加熱する過熱水蒸気発生装置の熱源を、炭化炉を加熱する熱源に併用できる。エネルギーコストが極めて安い。
5. 生成された炭化物を使用してガス化発電が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面によって本発明を説明する。
図1は本発明の好気性醗酵槽の説明図である。
高含水有機物、たとえばフィルタープレス等で脱水された下水汚泥等をスクリュウコンベアで醗酵槽の中に投入する。投入された高含水有機物は攪拌羽根で攪拌され、空気と十分に混合される。
攪拌羽根の軸には温水あるいは温風が流れており醗酵槽の中は概ね60〜70℃程度の温度に加温され、好気性微生物による醗酵が活発に行われる。
温水、温風は、図2、図3の排気ガスの廃熱を利用して加温できる。
有機物は24〜48時間かけて醗酵して水分10〜30%の乾燥汚泥となる。
醗酵で生成した液体成分(液肥)はフィルターで濾過されて醗酵槽の下に滴下して溜まる。
水分10〜30%の乾燥汚泥(固形分)はスクリューコンベアで更に水分を圧搾されながら槽外へ排出される。
醗酵で生成したメタンは醗酵槽の上部から外に抜け、図2、図3のバーナーの燃料として利用される。
【0008】
槽外に搬出された乾燥汚泥は、図2、図3で示した炭化機に投入される。
本発明の炭化炉の構造は、飽和蒸気を過熱水蒸気に過熱する過熱炉の中に、過熱炉の胴部を水平に貫通する形でスクリューコンベアを配置して、飽和蒸気を過熱水蒸気に過熱する熱源で、このスクリューコンベアも同時に加熱するようにした構造である。そしてこの過熱炉で生成された過熱水蒸気を、このスクリューコンベアに吹込んで乾燥汚泥を連続的に乾燥炭化する構造である。スクリューコンベアは過熱炉の中の、ボイラーチューブの上、下いずれかに配置する。
図2はボイラーチューブの上に配置した構造、図3は下に配置した構造の説明図である。
【0009】
図2、図3で、スクリューコンベアは上下で多段に配置する。
過熱炉の底部は、バーナーで加熱され炎は上に上昇してスクリューコンベアとボイラーチューブを加熱して排気ガスとして炉外に排出される。
スクリューコンベアの周囲は常にバーナーの火炎で加熱されているので特別な断熱構造にする必要はなく、むしろ鉄製の機械構造がそのまま剥き出しに成ったものでよく、極めて安価に製造できる。
排出ガスはそのまま外に放出するのではなく、図示していないが、必要に応じて適宜原料の乾燥、過熱炉外周の保温に利用される。
過熱炉の中のボイラーチューブを流れる飽和水蒸気は過熱炉で過熱されて過熱水蒸気と成る。
過熱炉から出た過熱水蒸気は炭化機1〜4に吹込まれて、スクリューコンベアの中を水蒸気雰囲気、無酸素状態で、好ましくは炭化の開始する350℃以上の温度に加熱する。
過熱水蒸気の吹込みは、基本的にはスクリューコンベア最下段の末端、つまり炭化したものが排出される末尾の部分から吹込み、順次上段に上昇して原料投入口の付近から外に排出されるようにする。外に排出された過熱水蒸気はサイクロンで粉塵を除かれ、スクラバーで水に可溶成分が除去され、コンデンサーで水に凝縮されて再び循環使用される。
【0010】
図中、上段の原料投入口から原料(乾燥汚泥)が投入される。
投入した原料(乾燥汚泥)は上段から下段に順次移送され、途中乾燥、炭化されて、最下段から排出コンベアに移され、ここから外に排出され、炭化物保管庫に保管されることとなる。
炭化機の設置台数は、図中4段設置されているが、炭化する原料に応じて増減しても良い。すなわち炭化しやすいものは段数を減らしても良いし、炭化しにくいものは段数を適宜増やしても良い。
【0011】
炭化物は燃料に利用できるので、補助燃料として過熱炉の底に投入して、ブロワから風を吹込んで燃やして、バーナー燃料の節約に利用できる。
【0012】
スクリューコンベアの配置は、ボイラーチューブの上段、下段いずれでも良く、熱効率的に大きな差異は無い。状況に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
過熱水蒸気は、基本的には最下段のスクリューコンベア末端から吹込まれて、順次上段に上昇するので、原料投入口の付近の温度が350℃以上になるように吹込み温度を調整する。第1図、炭化機2から、概ね450〜550℃程度の過熱水蒸気を吹込むと、原料投入口の付近の温度が350℃程度になる。
【0014】
本発明装置では汚泥のほか全ての高含水有機物を炭化できる。
醗酵槽の下に溜まった液肥は肥料としてそのまま使用できる。また得られた炭化物に含浸させたものを畑に施肥すると、肥料成分が長期間に亘って徐々にしみだすので徐放性肥料として有効である。
【0015】
図4は水性ガス化炉とガスエンジン発電機を組合わせて、ガス化発電するシステムの説明図である。
図2、3で説明したスクリュー式の炭化機で生成された炭化物は炭化物の貯蔵庫に貯蔵され、必要に応じてガス化炉に投入される。
ガス化炉には過熱水蒸気が吹き込まれ温度は800〜1200℃に保持されている。
投入された炭化物は過熱水蒸気と反応(水性ガス化反応)してCOガス、Hガス、CHガスが生成される。
生成されたガスはガスタンクに貯蔵し、ガスエンジン発電機のガスエンジンを駆動させる燃料として使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
汚泥等の高含水有機物の乾燥炭化に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好気性醗酵槽の説明図である。
【図2】本発明の炭化機の説明図である。
【図3】本発明の別の炭化機の説明図である。
【図4】ガス化炉、ガスエンジン発電機と組合わせた本発明実施例の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水有機物を好気性醗酵槽でメタン醗酵させて、液体分と固形分に分離した後、該固形分を、加熱水蒸気を使用する炭化炉に投入して炭化することを特徴とする含水有機物の脱水炭化方法。
【請求項2】
上記メタン醗酵で発生したメタンを上記加熱水蒸気の蒸気を生成させるボイラーの燃料として使用することを特徴とする請求項1に記載の含水有機物の脱水炭化方法。
【請求項3】
上記炭化炉の排ガスで上記醗酵層を加温することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の含水有機物の脱水炭化方法。
【請求項4】
上記炭化炉から排出された炭化物を水性ガス化炉に投入して、過熱水蒸気と反応させてH、CO、CHを生成させることを特徴とする炭化物のガス化方法。
【請求項5】
上記炭化炉から排出された炭化物に上記液体分を含浸してなることを特徴とする徐放性肥料。
【請求項6】
高含水有機物の好気性醗酵層と、スクリューコンベアで有機物を螺送しながら乾燥炭化する構造の有機物の乾燥炭化装置と、該醗酵槽の中で高含水有機物の好気性醗酵によって生成された固形分を該乾燥炭化装置に螺送する装置から成る高含水有機物の脱水炭化装置であって、該好気性醗酵槽は、該高含水有機物の投入口と、該投入された有機物を空気と混合攪拌する攪拌羽根と、該醗酵槽の中を加温する機構と、該有機物の醗酵によって生成した固形分と液体分を分離するフィルターを備えてなり、かつ該乾燥炭化装置は、スクリューコンベアを上下多段に連結配置し、該スクリューの中に過熱水蒸気を吹き込んで螺送する有機物を炭化する装置であって、該スクリューコンベアは、飽和水蒸気の流れるボイラーチューブを加熱する過熱水蒸気発生装置の加熱炉胴部を水平方向に貫通して配置し、かつ該過熱水蒸気発生装置で発生した過熱水蒸気を該スクリューコンベアに吹込むことを特徴とする高含水有機物の脱水炭化装置。
【請求項7】
上記加熱炉の底部にバーナーを、上記加熱炉の頂部に上記ボイラーチューブを、上記バーナーとボイラーチューブの間に上記スクリューコンベアを多段に配置してなることを特徴とする請求項6に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
【請求項8】
上記加熱炉の底部にバーナーを、上記バーナーの上部に上記ボイラーチューブを、上記ボイラーチューブの上に上記スクリューコンベアを多段に配置してなることを特徴とする請求項6に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
【請求項9】
上記スクリューコンベアから排出された炭化物を補助燃料として上記加熱炉底部に投入することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。
【請求項10】
上記脱水炭化装置に水性ガス化炉とガスエンジン発電機を組合わせて、該炭化炉で生成された炭化物を水性ガス化炉でガス化燃料に変換し、該ガス化燃料を使用してガスエンジン発電機を駆動させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の高含水有機物の脱水炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−83217(P2007−83217A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306332(P2005−306332)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(301047957)株式会社テラボンド (11)
【Fターム(参考)】