説明

含油性酵母および真菌におけるカロテノイドの産生

本発明は、カロテノイドを発現する操作された含油性酵母又は真菌を生成するためのシステムを提供する。本発明はまた、そのような酵母及び真菌を構築する方法、カロテノイドを生産するためにそのような酵母及び真菌を使用する方法、及びそのような含油性酵母又は真菌において生産されるカロテノイドを使用して、食品又は飼料添加物又は栄養補助食品などのカロテノイド含有組成物を製造する方法を提供する。特に、本発明は、改変を含まない、さもなければ同じ生物と比較して、含油性を高める及び/又はカロテノイド生産能力を変化させる1又はそれ以上の含油性及び/又はカロテノイド形成性改変を含む酵母及び真菌を作製するためのシステム及び方法を提供する。含油性生物の脂質体内に蓄積されたカロテノイドは脂質体の単離をとおして容易に単離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年3月18日に出願された米国仮出願第60/663,621号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
カロテノイドは、光合成生物(例えば植物、藻類、藍細菌)及び一部の真菌を含む、ある種の生物によって天然に生産される黄色から赤色までの範囲にわたる有機色素である。カロテノイドは、ニンジンの橙色、並びにフラミンゴ及びサケの桃色、及びロブスターならびにエビの赤色の原因である。しかしながら、動物は、カロテノイドを生産することができず、食餌を通して摂取しなければならない。
【0003】
カロテノイド色素(例えばβ−カロテン及びアスタキサンチン)は、産業上、食料及び供給原料の原料として使用されており、どちらも栄養機能に役立ち、消費者の受容性を高める。例えばアスタキサンチンは、サケの水産養殖においてその野生物の特徴である橙色の着色を与えるために広く使用されている。一部のカロテノイドはビタミンAの前駆体でもある。また、カロテノイドは抗酸化特性を有しており、様々な健康上の恩恵を有し得る(例えば非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5参照)。β−カロテン、リコペン及びルテインなどの一部のカロテノイドは現在、栄養補助食品として市販されている。
【0004】
一般に、カロテノイドを生産する生物系は、産業的に加工しにくく及び/又は商業規模での単離が実施不能である程の低レベルでしか化合物を生産しない。それ故、産業上使用される大部分のカロテノイドは化学合成によって生産される。カロテノイドを生産する改善された生物系への需要が存在する。より高レベルのカロテノイドを生産するようにある種の細菌又は真菌を遺伝子工作する努力がこれまでにも為されてきた(例えば非特許文献6;非特許文献7参照)。しかし、より高いレベルの生産とより容易な単離を可能にする改善されたシステムが必要とされている。
【非特許文献1】Jyonouchi et al.,Nutr,Cancer 16:93,1991
【非特許文献2】Giovannucci et al.,J.Natl. Cancer Inst.87:1767,1995
【非特許文献3】Miki,Pure Appl.Chem 63:141,1991
【非特許文献4】Chew et al.,Anticancer Res.19:1849,1999
【非特許文献5】Wang et al.,Antimicrob.Agents Chemother.44:2452,2000
【非特許文献6】Misawa et al.,J.Biotechnol.59:169,1998
【非特許文献7】Visser et al.,FEMS Yeast Research 4:221,2003
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、カロテノイドの生物学的生産のための改善されたシステムを提供する。1つの態様では、本発明は、含油性生物においてカロテノイドを生産することが望ましいという発見を含む。特定理論に縛られるのは望むところではないが、本願発明人は、化合物を脂質体内に隔離すれば生物系はより高いレベルのカロテノイドを蓄積し得ると提案する。絶対レベルがより高いか否かに関わらず、しかしながら、含油性生物の脂質体内に蓄積されたカロテノイドは脂質体の単離をとおして容易に単離できる。
【0006】
本発明は、それ故、1又はそれ以上のカロテノイドを生産する含油性真菌(例えば酵母又は他の単細胞真菌を含む)を提供する。本発明はまた、そのような酵母及び真菌を構築する方法、カロテノイドを生産するためにそのような酵母及び真菌を使用する方法、及びそのような含油性酵母又は真菌において生産されるカロテノイドを使用して、食品又は飼料添加物又は栄養補助食品などのカロテノイド含有組成物を製造する方法を提供する。特に、本発明は、改変を含まない、さもなければ同じ生物と比較して、含油性(oleaginicity)を高める及び/又はカロテノイド生産能力を変化させる1又はそれ以上の含油性(oleaginic)及び/又はカロテノイド形成性改変を含む酵母及び真菌を作製するためのシステム及び方法を提供する。
【0007】
本発明はさらに、脂質蓄積システムが親油性物質(イソプレノイド又はイソプレノイド由来化合物など、しかしこれらに限定されない)の生産及び/又は単離のために有用であるという一般的認識を含む。それ故、本発明によれば、そのような親油性物質を生産する及び/又は脂質を蓄積するように生物を遺伝子工作することが望ましい。
【0008】
本発明の様々な他の態様は、付属の特許請求の範囲を含む本発明の説明から当業者に明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(定義)
カロテノイド形成性改変:ここで使用する、「カロテノイド形成性改変」という用語は、ここで述べるような、1又はそれ以上のカロテノイドの生産を調節する宿主生物の改変を指す。例えばカロテノイド形成性改変は、1又はそれ以上のカロテノイドの生産レベルを上昇させ得る、及び/又は種々のカロテノイドの相対的生産レベルを変化させ得る。原則として、本発明のカロテノイド形成性改変は、同じ改変に供していない、さもなければ同じ生物において生産されるレベルと比較して、その生物によって生産される、宿主生物における1又はそれ以上のカロテノイドの生産を適切に変化させる何らかの化学的、生理的、遺伝的又は他の改変であり得る。大部分の実施形態では、しかしながら、カロテノイド形成性改変は、典型的には1又はそれ以上の選択カロテノイドの生産上昇を生じさせる、遺伝的改変を含む。一部の実施形態では、選択カロテノイドは、アスタキサンチン、β−カロテン、カンタキサンチン、ルテイン、リコペン、フィトエン、ゼアキサンチン、及び/又はゼアキサンチン又はアスタキサンチンの改変体(例えば配糖体、エステル化ゼアキサンチン又はアスタキサンチン)の1又はそれ以上である。一部の実施形態では、選択カロテノイドは、1又はそれ以上のキサントフィル、及び/又はその改変体(例えば配糖体、エステル化キサントフィル)である。ある実施形態では、選択キサントフィルは、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペン、及びそれらの改変体から成る群より選択される。一部の実施形態では、選択カロテノイドは、アスタキサンチン、β−カロテン、カンタキサンチン、ルテイン、リコペン及びゼアキサンチン及び/又はゼアキサンチン又はアスタキサンチンの改変体の1又はそれ以上である。一部の実施形態では、カロテノイドはβ−カロテンである。一部の実施形態では、選択カロテノイドはアスタキサンチンである。一部の実施形態では、選択カロテノイドはβ−カロテン以外である。
【0010】
カロテノイド形成性ポリペプチド:ここで使用する、「カロテノイド形成性ポリペプチド」という用語は、細胞においてカロテノイドを生産する過程に関与するポリペプチドを指し、カロテノイド生産以外の過程に関与するが、その活性が、例えばカロテノイド生産に直接関与するカロテノイドポリペプチドによって利用される基質又は反応物を捕捉することによって、1又はそれ以上のカロテノイドの生産の程度又はレベルに影響を及ぼすポリペプチドを含み得る。カロテノイド形成性ポリペプチドは、それらの用語がここで定義される、イソプレノイド生合成ポリペプチド、カロテノイド生合成ポリペプチド、及びイソプレノイド生合成競合ポリペプチドを含む。この用語はまた、カロテノイドが脂質体内に蓄積される程度に影響を及ぼし得るポリペプチドを包含する。
【0011】
カロテノイド:「カロテノイド」という用語は、当技術分野では、イソプレノイド経路の中間体から誘導される構造的に多様なクラスの色素を指すと理解される。カロテノイド生合成における拘束段階は、ゲラニルゲラニルピロリン酸からのフィトエンの形成である。カロテノイドは非環式又は環式であり得、酸素を含んでもよく又は含まなくてもよいので、この用語はカロテンとキサントフィルの両方を包含する。一般に、カロテノイドは、形式的にはトリテルペン(C30ジアポカロテノイド)及びテトラテルペン(C40カロテノイド)並びにそれらの酸素化誘導体及び、例えばC35、C50、C60、C70、C80の長さ又は他の長さの他の化合物を含む、5炭素化合物IPPから誘導される共役ポリエン炭素骨格を有する炭化水素化合物である。多くのカロテノイドは強力な吸光特性を有し、その長さはC200以上に及ぶ。C30ジアポカロテノイドは、典型的には、イソプレノイド単位の配置が、2個の中点メチル基が1,6−位置関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5位置関係にあるように分子の中央で逆転する方式で連結された6個のイソプレノイド単位から成る。そのようなC30カロテノイドは、形式的には、共役二重結合の長い中心鎖を有する非環式C3042構造から、(i)水素添加、(ii)脱水素、(iii)環化、(iv)酸化、(v)エステル化/グリコシル化、又はこれらの工程の何らかの組合せによって誘導され得る。C40カルテノイドは、典型的には、イソプレノイド単位の配置が、2個の中点メチル基が1,6−位置関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5位置関係にあるように分子の中央で逆転する方式で連結された8個のイソプレノイド単位から成る。そのようなC40カロテノイドは、形式的には、共役二重結合の長い中心鎖を有する非環式C4056構造から、(i)水素添加、(ii)脱水素、(iii)環化、(iv)酸化、(v)エステル化/グリコシル化、又はこれらの工程の何らかの組合せによって誘導され得る。C40カロテノイドのクラスはまた、炭素骨格の再構成から、又はこの構造の部分の(形式的な)除去によって生じるある種の化合物を含む。600個以上の異なるカロテノイドが自然界で特定された;一部の一般的なカロテノイドが図1に示されている。カロテノイドは、以下を含むがこれらに限定されない:アンテラキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプソルブリン、β−クリプトキサンチン、α−カロテン、β−カロテン、β、Ψ−カロテン、δ−カロテン、ε−カロテン、エキネノン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、γ−カロテン、Ψ−カロテン、4−ケト−γ−カロテン、ζ−カロテン、α−クリプトキサンチン、デオキシフレキシキサンチン、ジアトキサンチン、7,8−ジデヒドロアスタキサンチン、ジデヒドロリコペン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソレニエラテン、β−イソレニエラテン、ラクツカキサンチン、ルテイン、リコペン、ミクソバクトン、ネオキサンチン、ニューロスポレン、ヒドロキシニューロスポレン、ペリジニン、フィトエン、ロドピン、ロドピン配糖体、4−ケト−ルビキサンチン、シフォナキサンチン、スフェロイデン、スフェロイデノン、スピリロキサンチン、トルレン、4−ケト−トルレン、3−ヒドロキシ−4−ケト−トルレン、ウリオリド、ウリオリドアセテート、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン−β−二配糖体、ゼアキサンチン及びC30カロテノイド。付加的に、カロテノイド化合物は、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ、エポキシ、カルボキシ又はアルデヒド官能基を含み得る、これらの分子の誘導体を含む。さらに、含まれるカロテノイド化合物は、エステル(例えば配糖体エステル、脂肪酸エステル)及び硫酸誘導体(例えばエステル化キサントフィル)を含む。
【0012】
カロテノイド生合成ポリペプチド:「カロテノイド生合成ポリペプチド」という用語は、1又はそれ以上のカロテノイドの合成に関与するポリペプチドを指す。いくつか挙げると、これらのカロテノイド生合成ポリペプチドは、例えばフィトエンシンターゼ、フィトエンデヒドロゲナーゼ(又はデサチュラーゼ)、リコペンシクラーゼ、カロテノイドケトラーゼ、カロテノイドヒドロキシラーゼ、アスタキサンチンシンターゼ、カロテノイドεヒドロキシラーゼ、リコペンシクラーゼ(β及びεサブユニット)、カロテノイドグルコシルトランスフェラーゼ、及びアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを含む。カロテノイド生合成ポリペプチド配列の代表的な例を表17−25に示す。
【0013】
遺伝子:ここで使用する、「遺伝子」という用語は、一般に、場合により1又はそれ以上の遺伝子産物(すなわちRNA又はタンパク質)の発現に影響を及ぼし得るある種の調節エレメントを含む、ポリペプチドをコードする核酸を指す。
【0014】
異種:遺伝子又はポリペプチドを指すためにここで使用する、「異種」という用語は、それが発現されている生物において天然では生じない遺伝子又はポリペプチドを指す。一般に、宿主細胞への導入及び/又は宿主細胞による発現のために異種遺伝子又はポリペプチドを選択するとき、そこから異種遺伝子又はポリペプチドを選択し得る特定の供給源生物が本発明の実施にとって必須でないことは了解される。関連する考慮事項は、例えば潜在的ソースと宿主生物が進化においてどれほど密接に関連するか、又は供給源生物が、他の関連ポリペプチドの配列が選択された他の供給源生物とどのように関連するかを含み得る。
【0015】
宿主細胞:ここで使用する、「宿主細胞」は、ここで述べるように脂質を蓄積するため及び/又は1又はそれ以上のカロテノイドを発現するために本発明に従って操作される酵母又は真菌細胞である。「改変宿主細胞」は、ここで使用するとき、本発明に従った少なくとも1つの含油性改変及び/又は少なくとも1つのカロテノイド形成性改変を含む宿主細胞である。
【0016】
「単離」:ここで使用する、「単離」という用語は、単離された実体が、それがこれまで結合していた少なくとも1つの成分から分離されたことを意味する。大部分の他の成分が除去されているとき、単離された実体は「精製」されている。単離及び/又は精製は、例えば分画、抽出、沈殿又は他の分離法を含む、当技術分野で公知の何らかの手法を用いて実施し得る。
【0017】
イソプレノイド生合成競合ポリペプチド:ここで使用する、「イソプレノイド生合成競合ポリペプチド」という用語は、細胞におけるその発現が、カロテノイド生合成経路に入るために使用可能なゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)のレベルを低下させるポリペプチドを指す。例えばイソプレノイド生合成競合ポリペプチドは、より少ないGGPPが生成されるように、GGPPに先立つイソプレノイド中間体に作用する酵素を含む(例えば図5参照)。スクアレンシンターゼは、本発明に従ったイソプレノイド生合成競合ポリペプチドの1つである;代表的なスクアレンシンターゼ配列を表16に示す。プレニル二リン酸シンターゼ酵素及びパラ−ヒドロキシ安息香酸(PHB)ポリプレニルトランスフェラーゼは、本発明に従ったさらなるイソプレノイド生合成競合ポリペプチドである;代表的なプレニル二リン酸シンターゼ酵素及びPHBポリプレニルトランスフェラーゼポリペプチドをそれぞれ表29及び30に示す。
【0018】
イソプレノイド生合成ポリペプチド:「イソプレノイド生合成ポリペプチド」という用語は、イソプレノイドの合成に関与するポリペプチドを指す。例えばここで論じるように、アセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ、IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ及びGGPPシンターゼは、全てイソプレノイド生合成のためのメバロン酸経路に関与する。これらのタンパク質の各々はまた、本発明のためのイソプレノイド生合成ポリペプチドであり、これらの酵素の代表的な例の配列を表7−15に示す。
【0019】
イソプレノイド経路:「イソプレノイド経路」は、当技術分野では、5炭素代謝産物イソペンチルピロリン酸(IPP)を生産するか又は利用する代謝経路を指すと理解される。ここで論じるように、2つの異なる経路−「メバロン酸経路」と「非メバロン酸経路」−が共通のイソプレノイド前駆体IPPを生産することができる。「イソプレノイド経路」は、これらの種類の経路の両方を包含するのに十分なだけ一般的である。IPPからのイソプレノイドの生合成は、いくつかの5炭素イソプレンサブユニットの重合によって起こる。IPPから誘導されるイソプレノイド代謝産物は、環式及び非環式分子の両方を含む、様々な大きさと化学構造である。イソプレノイド代謝産物は、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、ステロール及びカロテノイドなどのポリプレノールを含むが、これらに限定されない。
【0020】
含油性改変:ここで使用する、「含油性改変」という用語は、ここで述べるように、宿主生物の望ましい含油性を調節する宿主生物の改変を指す。一部の場合、宿主生物は、その乾燥細胞重量の少なくとも約20%まで脂質を蓄積する能力を有するという意味で既に含油性である。それにもかかわらず、例えばその総脂質蓄積を上昇させるため(又は一部の場合、場合により低下させるため)、又はそれが蓄積する1又はそれ以上の特定脂質の種類又は量を調節するため(例えばトリアシルグリセロールの相対的蓄積を上昇させるため)に、本発明に従って、そのような生物に含油性改変を適用することが望ましいと考えられる。また別の場合には、宿主生物は非含油性であり得(脂質を蓄積するために他の生物において使用されるいくつかの酵素及び調節成分を含み得るが)、本発明に従って含油性になるために含油性改変を必要とし得る。本発明はまた、改変後も、ここで定義する含油性になり得ない場合でも、それらの含油性を上昇させるような非油性宿主株への含油性改変の適用を考慮する。原則として、含油性改変は、含油性改変に供していない、さもなければ同じ生物と比較して、宿主生物の含油性を適切に変化させる何らかの化学的、生理的、遺伝的又は他の改変であり得る。大部分の実施形態では、しかしながら、含油性改変は、典型的には1又はそれ以上の含油性ポリペプチドの生産及び/又は活性上昇を生じさせる、遺伝的改変を含む。一部の実施形態では、含油性改変は、少なくとも1つの化学的、生理的、遺伝的又は他の改変を含む;別の実施形態では、含油性改変は2以上の化学的、生理的、遺伝的又は他の改変を含む。2以上の改変を使用するある態様では、そのような改変は、化学的、生理的、遺伝的又は他の改変の何らかの組合せ(例えば1又はそれ以上の遺伝的改変と化学的又は生理的改変)を含み得る。
【0021】
含油性ポリペプチド:ここで使用する、「含油性ポリペプチド」という用語は、細胞における脂質蓄積の過程に関与するポリペプチドを指し、脂質生合成以外の過程に関与するが、その活性が、例えば脂質蓄積に直接関与する含油性ポリペプチドによって利用される基質又は反応物を捕捉することによって、1又はそれ以上の脂質の蓄積の程度又はレベルに影響を及ぼすポリペプチドを含み得る。例えばここで論じるように、数あるタンパク質の中でも特に、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ATP−クエン酸リアーゼ、リンゴ酸酵素、及びAMPデアミナーゼは全て細胞における脂質蓄積に関与する。一般に、ピルビン酸デカルボキシラーゼ又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼの活性を低下させること、及び/又はアセチル−CoAカルボキシラーゼ、ATP−クエン酸リアーゼ、リンゴ酸酵素及び/又はAMPデアミナーゼの活性を上昇させることは含油性を促進すると予想される。これらのタンパク質の各々は本発明のための含油性ポリペプチドであり、これらの酵素の代表的な例の配列を表1−6に示す。
【0022】
含油性:「含油性」という用語は、その乾燥細胞重量の少なくとも約20%まで脂質を蓄積する生物の能力を指す。本発明のある実施形態では、含油性酵母又は真菌は、それらの乾燥細胞重量の少なくとも約25%まで脂質を蓄積する。他の実施形態では、本発明の含油性酵母又は真菌は、それらの乾燥細胞重量の約20−45%の範囲内の脂質を蓄積する。一部の実施形態では、含油性生物は、それらの乾燥細胞重量の約70%まで脂質を蓄積し得る。本発明の一部の実施形態では、含油性生物は、全脂質蓄積の大きな画分をトリアシルグリセロールの形態で蓄積し得る。ある実施形態では、蓄積脂質の大部分がトリアシルグリセロールの形態である。代替的に、又は付加的に、脂質は細胞内脂質体又は油体(cytoplasmic oil body)の形態で蓄積し得る。ある実施形態では、本発明は、天然に含油性である酵母又は真菌を利用する。一部の態様では、天然含油性生物を、生物における蓄積脂質のレベルをさらに上昇させるように操作する(例えば遺伝学的に、化学的に又は別の方法で)。他の実施形態では、天然では含油性でない酵母又は真菌を、ここで述べるように脂質を蓄積するように操作する(例えば遺伝学的に、化学的に又は別の方法で)。本発明に関して、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)及びCandida utilisは天然含油性真菌ではない。
【0023】
ポリペプチド:ここで使用する、「ポリペプチド」という用語は、一般に少なくとも3個のアミノ酸のポリマーの当技術分野で認識される意味を有する。しかし、この用語はまた、例えば含油性ポリペプチド、カロテノイド形成性ポリペプチド、イソプレノイド生合成ポリペプチド、カロテノイド生合成ポリペプチド、及びイソプレノイド生合成競合ポリペプチドなどの、特定機能クラスのポリペプチドを指すためにも使用される。各々のそのようなクラスに関して、本明細書は、そのようなポリペプチドの公知の配列のいくつかの例を提供する。当業者は、しかしながら、「ポリペプチド」という用語が、ここで(又はここで特定して言及する参考文献又はデータベースにおいて)列挙する完全な配列を有するポリペプチドだけでなく、そのような完全ポリペプチドの機能性フラグメント(すなわち少なくとも1つの活性を保持するフラグメント)であるポリペプチドも包含するのに十分なほど一般的であることが意図されている。さらに、当業者は、タンパク質配列が一般に活性を破壊することなく多少の置換を許容することを理解する。それ故、活性を保持し、同じクラスのもう1つ別のポリペプチドと、少なくとも約30−40%の全体的配列同一性、しばしば約50%、60%、70%又は80%以上の全体的配列同一性を共有し、さらに通常は、1又はそれ以上の高度に保存された領域内にはるかに高い同一性、しばしば90%以上又はさらには95%、96%、97%、98%又は99%以上の同一性の少なくとも1つの領域を含み(例えばイソクエン酸デヒドロゲナーゼポリペプチドはしばしば保存されたAMP結合モチーフを共有する;HMG−CoAレダクターゼポリペプチドは、典型的には高度に保存された触媒ドメインを含む(例えば図7参照);アセチルCoAカルボキシラーゼは、典型的にはカルボキシルトランスフェラーゼドメインを有する;例えば各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Downing et al.,Chem.Abs.93:484,1980;Gil et al.,Cell 41:249,1985;Jitrapakdee et al.Curr Protein Pept Sci.4:217,2003;米国特許第5,349,126号参照)、通常は少なくとも3−4個、しばしば20個又はそれ以上のアミノ酸を含むポリペプチドは、ここで使用する「ポリペプチド」の関連用語内に包含される。
【0024】
供給源生物:ここで使用する、「供給源生物」という用語は、特定ポリペプチド配列が天然で見出され得る生物を指す。それ故、例えば1又はそれ以上の異種ポリペプチドが宿主生物において発現される/発現されている場合、そのポリペプチドが天然で発現される(及び/又はそれらの遺伝子が最初にクローン化された)生物を「供給源生物」と称する。2以上の異種ポリペプチドが宿主生物において発現されている場合、1又はそれ以上の供給源生物を異種ポリペプチドの各々の独立した選択のために使用し得る。関連ペプチド配列を天然に含むありとあらゆる生物が、本発明に従った供給源生物として使用し得る。代表的な供給源生物は、例えば動物、哺乳動物、昆虫、植物、真菌、酵母、藻類、細菌、藍細菌、古細菌及び原生動物供給源生物を含む。
【0025】
(本発明の一部の好ましい実施形態の詳細な説明)
上述したように、本発明は、カロテノイドが含油性酵母及び真菌において望ましく生産できるという発見を含む。本発明によれば、(i)しばしば細胞質油体の形態で、及び典型的にはそれの乾燥細胞重量の少なくとも約20%まで、脂質を蓄積し;及び(ii)それらの乾燥細胞重量の少なくとも約1%、一部の実施形態では少なくとも約3−20%のレベルでカロテノイドを生産する菌株が、宿主細胞の操作を通して生成される(すなわち、例えば天然に生じる菌株、これまでに改変された菌株等を含む菌株)。その後、脂質体に分配されるカロテノイドが容易に単離できるように、これらの操作された宿主細胞を使用してカロテノイドを生産する。
【0026】
一般に、最小限の望ましいレベルの含油性が達成されるやいなや、利用することができ、生成物の生合成に転用できる実質的に全てのさらなる炭素がカロテノイド生産経路に転用されるように、本発明の細胞における含油性とカロテノイド生産のバランスをとることが望ましい。本発明の一部の実施形態では、この戦略は、細胞を含油性に遺伝子工作することを含む;他の実施形態では、細胞を、遺伝子工作された細胞がここで定義する「含油性」になり得ない場合でも、そのような遺伝子工作を受けない場合にそれらの細胞が蓄積するよりも高いレベルの脂質、特に細胞質脂質を蓄積するように遺伝子工作することを含む。他の実施形態では、含油性宿主細胞が脂質を蓄積する程度を、残りの炭素がカロテノイド生産において利用できるように実質的に低下させる。
【0027】
(宿主細胞)
当業者は、天然に含油性である又は天然にカロテノイドを生産する様々な酵母及び真菌が存在することを容易に認識する。そのような菌株のいずれもが本発明に従った宿主菌株として使用でき、本発明の含油性・カロテノイド生産菌株を生成するように遺伝子工作又はさもなければ操作し得る。代替的に、天然では含油性でなく、カロテノイド生産性でもない菌株を使用し得る。さらに、特定菌株が含油性又はカロテノイド生産の天然能力を有するときでも、脂質及び/又はカロテノイドの生産レベルを変化させるために、その天然の能力をここで述べるように調節し得る。ある実施形態では、菌株の遺伝子工作又は操作は、脂質及び/又は生産されるカロテノイドの改変を生じさせる。例えば菌株は天然に含油性及び/又はカロテノイド形成性であり得るが、蓄積される脂質の種類を変化させるため又は生産されるカロテノイドの種類を変化させるために菌株の遺伝子工作又は操作を利用し得る。
【0028】
本発明に従った使用のために特定酵母又は真菌を選択するとき、一般に、その培養特徴が商業規模生産に適合させやすいものを選択することが望ましい。例えば一般に(必ずしも常にではないが)、糸状生物、又は増殖条件に関して特に変わった又は厳密な要求事項を有する生物は避けることが望ましい。しかし、糸状生物の使用を許容する商業規模生産のための条件が適用できる場合は、これらを宿主細胞として選択し得る。本発明の一部の実施形態では、食用生物は、所望に応じて、場合により食品又は飼料添加物又は栄養補助食品に直接製剤し得るので、食用生物を宿主細胞として使用することが望ましい。生産を容易にするため、本発明の一部の実施形態は、遺伝学的に扱いやすく、分子遺伝学に供しやすく(例えば、特に確立された又は使用可能なベクターで、効率的に形質転換できる;場合により、例えば連続的に、多数の遺伝子を組み込む及び/又は組み入れることができる;及び/又は公知の遺伝子配列を有する等)、複雑な増殖必要条件(例えば光の必要性)を有さず、中温性であり(例えば約25−32℃の範囲内の増殖温度を好む)、様々な炭素及び窒素源を同化することができる及び/又は高い細胞密度に増殖することができる宿主細胞を使用する。代替的に又は付加的に、本発明の様々な実施形態は、多細胞生物ではなく単細胞として(例えば菌糸体として)増殖する宿主細胞を使用する。
【0029】
一般に、本発明に従って天然含油性生物を使用することが望ましいとき、改変可能で培養可能ないかなる含油性生成物も使用し得る。本発明のある実施形態では、Blakeslea、Candida、Cryptococcus、Cunninghamella、Lipomyces、Mortierella、Mucor、Phycomyces、Pythium、Rhodosporidium、Rhodotorula、Trichosporon及びYarrowiaを含むが、これらに限定されない属の酵母又は真菌を使用する。ある特定の実施形態では、Blakeslea trispora、Candida pulcherrima、C.revkaufi、C.tropicalis、Cryptococcus curvatus、Cunninghamella echinulata、C.elegans、C.japonica、Lipomyces starkeyi、L.lipoferus、Mortierella alpina、M.isabellina、M.ramanniana、M.vinacea、Mucor circinelloides、Phycomyces blakesleanus、Pythium irregulare、Rhodosporidium toruloides、Rhodotorula glutinis、R.gracilis、R.graminis、R.mucilaginosa、R.pinicola、Trichosporon pullans、T.cutaneum及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない種の生物を使用する。
【0030】
これらの天然含油生菌株のうちで、一部はカロテノイドも天然に生産し、また別の一部はカロテノイドを生産しない。ほとんどの場合、低いレベル(約0.05%乾燥細胞重量未満)のカロテノイドだけが、天然に生じるカロテノイド形成性の含油性酵母又は真菌によって生産される。β−カロテンのより高いレベルが時として生産されるが、他のカロテノイドの高レベルは一般に認められない。
【0031】
一般に、天然に含油性であり、非カロテノイド生産性(例えば約0.05%乾燥細胞重量未満を生産する、対象カロテノイドを生産しない)である生物は、本発明に従った宿主細胞として使用し得る。一部の実施形態では、生物は、Candida、Cryptococcus、Cunninghamella、Lipomyces、Mortierella、Pythium、Trichosporon及びYarrowiaなどの、しかしこれらに限定されない属からの酵母又は真菌である;一部の実施形態では、生物は、Mortierella alpina及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない種である。
【0032】
同等に、本発明は、天然に含油性であり、カロテノイド生産性生物を宿主細胞として使用し得る。一般に、本発明は、天然にカロテノイド生産性の生物においてイソプレノイド経路への炭素の流入を上昇させるため(特にBlakeslea及びPhycomyces以外の生物に関して)、及び/又は生産をあるカロテノイド(例えばβ−カロテン)から別のカロテノイド(例えばアスタキサンチン)に転換させるために利用し得る。本発明に従った、1又はそれ以上のカロテノイド形成性改変(例えば1又はそれ以上の内在性又は異種カロテノイド形成性ポリペプチドの発現上昇)の導入はこれらの目標を達成することが出来る。
【0033】
本発明のある実施形態では、使用される含油性・カロテノイド生産性生物は、例えばBlakeslea、Mucor、Phycomyces、Rhodosporidium及びRhodotorulaなどの、しかしこれらに限定されない属の、酵母又は真菌である;一部の実施形態では、生物は、Mucor circinelloides及びRhodotorula glutinisなどの種である。
【0034】
天然では非含油性である菌株を本発明に従った宿主細胞として使用することが望ましいとき、非含油性酵母又は真菌の属は、Aspergillus、Botrytis、Cercospora、Fusarium(Gibberella)、Kluyveromyces、Neurospora、Penicillium、Pichia(Hansenula)、Puccinia、Saccharomyces、Sclerotium、Trichoderma及びXanthophyllomyces(Phaffia)を含むが、これらに限定されない;一部の実施形態では、生物は、Aspergillus nidulans、A.niger、A.terreus、Botrytis cinerea、Cercospora nicotianae、Fusarium fujikuroi(Gibberella zeae)、Kluyveromyces lactis、K.lactis、Neurospora crassa、Pichia pastoris、Puccinia distincta、Saccharomyces cerevisiae、Sclerotium rolfsii、Trichoderma reesei、及びXanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)を含むが、これらに限定されない種である。
【0035】
ここで使用する、「非含油性」という用語は、脂質を、特に細胞質内に、蓄積するある程度の能力を天然に有するが、ここで定義する「含油性」として適格であるほど十分なレベルには有さない菌株、並びに余分な脂質、例えば膜外脂質を蓄積するいかなる能力も天然では有さない菌株の両方を包含することが認識される。さらに、本発明の一部の実施形態では、改変細胞がここで定義する含油性としては適格でない場合でも、特定宿主細胞の含油性の天然レベルを上昇させるには十分であることが認識される。
【0036】
天然含油性生物に関して、天然非含油性真菌の一部は天然にカロテノイドを生産し、また別の一部はカロテノイドを生産しない。天然ではカロテノイドを生産しない(例えば約0.05%乾燥細胞重量未満を生産する、対象カロテノイドを生産しない)天然非含油性真菌の属は、本発明に従った宿主細胞として望ましく使用でき、Aspergillus、Kluyveromyces、Penicillium、Saccharomyces及びPichiaを含むが、これらに限定されない;種は、Aspergillus niger及びSaccharomyces cerevisiaeを含むが、これらに限定されない。天然ではカロテノイドを生産せず、本発明に従った宿主細胞として望ましく使用し得る天然非含油性真菌の属は、Botrytis、Cercospora、Fusarium(Gibberella)、Neurospora、Puccinia、Sclerotium、Trichoderma及びXanthophyllomyces(Phaffia)を含むが、これらに限定されない;種は、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
上記で論じたように、様々な生物のいずれもが本発明に従った宿主細胞として使用し得る。本発明のある実施形態では、宿主細胞はYarrowia lipolytica細胞である。Y.lipolyticaの利点は、例えば遺伝学及び分子生物学での取り扱いやすさ、ゲノム配列が入手可能であること(例えばSherman et al.Nucleic Acids Res.32(Database issue):D315−8,2004参照)、様々な費用効果的増殖条件への適合性、及び高い細胞密度で増殖する能力を含む。加えて、Y.lipolyticaは天然に含油性であり、そのため含油性でカロテノイド生産性のY.lipolytica菌株を生成するには、他の生物のために必要であり得るよりも少ない操作しか必要としないと考えられる。さらに、Y.lipolyticaに関しては既に広汎な商業経験がある。
【0038】
Saccharomyces cerevisiaeも、特にその実験上の取り扱いやすさと研究者達がこの生物に関して蓄積してきた広汎な経験の故に、本発明に従った有用な宿主細胞である。高炭素条件下でのSaccharomycesの培養は高いエタノール生産を生じさせ得るが、これは一般に工程及び/又は遺伝的変化によって管理できる。
【0039】
さらなる有用な宿主は、実験的に取り扱いやすく、天然にカロテノイド形成性である、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)を含む。Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)菌株は、アスタキサンチンを含むいくつかのカロテノイドを生産することができる。
【0040】
Aspergillus niger及びMortierella alpinaは、それぞれ多量のクエン酸及び脂肪酸を蓄積する;Mortierella alpinaは同時に含油性である。
【0041】
Neurospora又はGibberellaも有用である。それらは天然に含油性ではなく、非常に低レベルのカロテノイドを生産する傾向があり、それ故、本発明に従って広範な改変が必要と考えられる。Neurospora及びGibberellaは、実験的見地から比較的取り扱いやすいと考えられる。どちらも糸状真菌であるので、商業規模での生産は、そのような菌株の使用において克服する必要のある課題であり得る。
【0042】
Mucor circinelloidesはもう1つの使用可能な有用種である、その分子遺伝学は概して一部の他の生物よりもアクセスしにくいが、天然にβ−カロテンを生産し、それ故、使用可能な他の種よりも少ない改変しか必要としないと考えられる。
【0043】
Blakesleaでは分子遺伝学を実施することができるが、かなりの努力を必要とし得る。さらに、例えば2つの交配型を混合する必要があると考えられるので、費用効果的な発酵条件が課題であり得る。Phycomyces属の真菌も可能なソースであるが、発酵工程の課題を課す潜在的可能性があり、これらの真菌はまた、いくつかの他の潜在的宿主生物よりも操作しにくいと考えられる。
【0044】
当業者は、本発明に従った使用のための特定宿主細胞の選択がまた、例えば細胞に導入する異種ポリペプチドに関して使用する発現配列の選択にも影響を及ぼし、また培養条件等の様々な態様にも影響することを認識する。本発明に従って使用する種々の宿主細胞の、様々な遺伝子調節必要条件、タンパク質ターゲティング配列の必要条件及び培養条件については多くが知られている(例えばYarrowiaに関しては、Barth et al.FEMS Microbiol Rev.19:219,1997;Madzak et al.J Biotechnol.109:63,2004参照;例えばXanthophyllomycesに関しては、Verdoes et al.Appl Environ Microbiol 69:3728−38,2003;Visser et al.FEMS Yeast Res 4:221−31,2003;Martinez et al.Antonie Van Leeuwenhoek.73(2):147−53,1998;Kim et al.Appl Environ Microbiol.64(5):1947−9,1998;Wery et al.Gene.184(l):89−97,1997参照;Saccharomycesに関しては、例えばGuthrie and Fink Methods in Enzymology 194:1−933,1991参照)。ある態様では、例えば宿主細胞(又は密接に関連する類似体)のターゲティング配列は、異種タンパク質を細胞内局在へと指令するために含むことが有用であり得る。それ故、そのような有用なターゲティング配列を、活性の適切な細胞内局在のために異種配列に付加することができる。他の態様(例えばミトコンドリアターゲティング配列の付加)では、異種ターゲティング配列を選択した異種配列において排除し得る又は変化させ得る(例えば供給源生物の植物葉緑体ターゲティング配列の変化又は除去)。
【0045】
(含油性の遺伝子工作)
全ての生体生物は、それらの膜及び様々な他の構造における使用のために脂質を合成する。しかし、ほとんどの生物は、総脂質としてそれらの乾燥細胞重量の約10%以上は蓄積せず、この脂質の大部分は一般に細胞膜内に存在する。
【0046】
微生物に含油性を付与するために必要な代謝酵素を定義するために多大の生化学的研究がなされてきた(主としてアラキドン酸及びドコサヘキサエン酸の商業的ソースとして単細胞油を工作するため;例えばその内容全体が参照によりここに組み込まれる、Ratledge Biochimie 86:807,2004参照)。この生化学的研究は必要不可欠であるが、本発明以前には、鍵となる代謝酵素をコードする遺伝子による遺伝子工作を通して新規に含油性を確立するという報告はなかった。
【0047】
含油性生物は、典型的には炭素過剰及び窒素又は他の栄養素制限の条件下で増殖するときにのみ脂質を蓄積することに留意すべきである。これらの条件下では、生物は直ちに制限栄養素を使い果たし、炭素源を同化し続ける。「過剰の」炭素は、脂質(通常はトリアシルグリセロール)が、典型的には脂質体の形態で、サイトゾル内に蓄積するように脂質生合成へと転用される。
【0048】
一般に、含油性であるためには、生物は、その後脂質を生成するために脂肪酸シンターゼ機構によって利用され得る、アセチル−CoA及びNADPHの両方をサイトゾル内で生産しなければならないと思われる。少なくとも一部の含油性生物では、アセチル−CoAは、以下の反応:
(1)クエン酸+CoA+ATP→アセチル−CoA+オキサロ酢酸+ADP+P
を触媒する、ATP−クエン酸リアーゼの作用を通してサイトゾル内で生成される。
【0049】
言うまでもなく、ATP−クエン酸リアーゼがサイトゾルにおいて適切なレベルのアセチル−CoAを生成するためには、最初にその基質クエン酸の使用可能なプールを有していなければならない。クエン酸は、トリカルボン酸(TCA)サイクルを通して全ての真核細胞のミトコンドリアにおいて生成され、クエン酸/リンゴ酸トランスロカーゼによってサイトゾルへと移動することができる(リンゴ酸と交換に)。
【0050】
大部分の含油性生物及び一部の非含油性生物では、ミトコンドリアにおけるTCAサイクルの一部として機能する、酵素イソクエン酸デヒドロゲナーゼは強くAMP依存性である。それ故、AMPがミトコンドリアから枯渇したとき、この酵素は不活性化する。イソクエン酸デヒドロゲナーゼが不活性であるとき、イソクエン酸はミトコンドリア内に蓄積する。この蓄積されたイソクエン酸はその後、おそらくアコニターゼの作用を通して、クエン酸と平衡する。それ故低AMP条件下では、クエン酸がミトコンドリア内に蓄積する。上述したように、ミトコンドリアのクエン酸は直ちにサイトゾルへと輸送される。
【0051】
含油性生物では、細胞質におけるクエン酸(及びそれ故アセチル−CoA)の蓄積を導くカスケードを開始させると考えられる、AMP枯渇は、上記の栄養素枯渇の結果として起こる。含油性細胞が、過剰炭素源の存在下であるが窒素又は一部の他の栄養素に関して制限された条件下で増殖するとき、以下の反応:
(2)AMP→イノシン5’−一リン酸+NH
を触媒する、AMPデアミナーゼの活性が強力に誘導される。この酵素の活性上昇は、サイトゾルとミトコンドリアの両方において細胞AMPを枯渇させる。ミトコンドリアからのAMPの枯渇は、AMP依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼを不活性化すると思われ、ミトコンドリアにおける、及びそれ故サイトゾルにおけるクエン酸の蓄積を生じさせる。この一連の事象を図2に図式的に示す。
【0052】
上述したように、含油性はサイトゾルのアセチル−CoAとサイトゾルNADPHの両方を必要とする。多くの含油性生物では、リンゴ酸酵素の作用を通して適切なレベルのサイトゾルNADPHが提供されると考えられる(図2における酵素3)。一部の含油性生物(例えばLipomyces及び一部のCandida)は、しかしながら、リンゴ酸酵素を持たないと思われ、そのため見かけ上は他の酵素が匹敵し得る活性を提供し得るが、おそらくNADPHの専用ソースが脂肪酸合成のために必要であると予想される(例えば、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Wynn et al.,Microbiol 145:1911,1999;Ratledge Adv.Appl.Microbiol.51:1,2002参照)。
【0053】
それ故、本発明によれば、宿主生物の含油性は、サイトゾルのアセチル−CoA及び/又はNADPHの生成に関与する1又はそれ以上のポリペプチドの発現又は活性を改変することによって強化し得る。例えばアセチル−CoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ATP−クエン酸リアーゼ、リンゴ酸酵素、及びAMPデアミナーゼの1又はそれ以上の発現又は活性の改変は、本発明に従った含油性を高めることができる。本発明に従った含油性を高めるために使用できる又は得られる例示的なポリペプチドは、それぞれ表1、表2、表3、表4、表5及び表6に示す
アセチル−CoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ATP−クエン酸リアーゼ、リンゴ酸酵素、及びAMPデアミナーゼポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0054】
含油性宿主細胞を用いる本発明の一部の実施形態では、含油性に関連する酵素及び調節成分は既に備えられているが、所望する場合は、例えば1又はそれ以上の含油性ポリペプチドの発現又は活性を変化させることによって及び/又は1又はそれ以上の異種含油性ポリペプチドを導入することによって、改変できる。非含油性宿主細胞を用いる本発明の実施形態では、少なくとも1又はそれ以上の異種含油性ポリペプチドが導入されると予想される。
【0055】
本発明は、異種含油性ポリペプチドの導入だけでなく、例えば構成的又は誘導的発現パターンの変化を含む、異種又は内在性含油性ポリペプチドの発現又は活性レベルの調節も考慮する。本発明の一部の実施形態では、含油性を誘導するために栄養素制限条件での増殖を必要としないように発現パターンを調節する。例えば調節配列(例えばプロモーターエレメント、ターミネーターエレメント)の変化及び/又は付加を含む遺伝子改変は、発現パターンの特定調節を与えるために利用し得る。そのような遺伝子改変は内在性遺伝子と共に使用し得る(例えば内在性含油性ポリペプチドの調節のため);代替的には、そのような遺伝子改変は、少なくとも1つの異種ポリペプチド(例えば含油性ポリペプチド)の発現の調節を与えるために含まれ得る。例えばTef1、Gpd1プロモーターを含むが、これらに限定されないプロモーターは、内在性含油性ポリペプチド及び/又は異種含油性ポリペプチドの発現パターンの改変のために内在性遺伝子及び/又は異種遺伝子と共に使用できる。同様に、例示的なターミネーター配列は、Y.lipolytica XPR2ターミネーター配列の使用を含むが、これらに限定されない。
【0056】
一部の実施形態では、少なくとも1つの含油性ポリペプチドを宿主細胞に導入する。本発明の一部の実施形態では、複数の(例えば2又はそれ以上の)異なる含油性ポリペプチドを同じ宿主細胞に導入する。一部の実施形態では、複数の含油性ポリペプチドは同じ供給源生物からのポリペプチドを含む;他の実施形態では、複数の含油性ポリペプチドは、異なる供給源生物から独立して選択されたポリペプチドを含む。
【0057】
本発明に従って宿主細胞に導入し得る又は宿主細胞において改変し得る様々な含油性ポリペプチドの代表的な例は、表1−6に示すものを含むが、これらに限定されない。上述したように、これらのポリペプチドの少なくとも一部(例えばリンゴ酸酵素及びATP−クエン酸リアーゼ)は、望ましくは協調して、おそらく脂肪酸シンターゼの1又はそれ以上の成分と共に作用するはずであるので、本発明の一部の実施形態では、同じ供給源生物から2又はそれ以上の含油性ポリペプチドを使用することが望ましい。
【0058】
一般に、本発明に従って使用する含油性ポリペプチドのための供給源生物は、Blakeslea、Candida、Cryptococcus、Cunninghamella、Lipomyces、Mortierella、Mucor、Phycomyces、Pythium、Rhodosporidium、Rhodotorula、Trichosporon、Yarrowia、Aspergillus、Botrytis、Cercospora、Fusarium(Gibberella)、Kluyveromyces、Neurospora、Penicillium、Pichia(Hansenula)、Puccinia、Saccharomyces、Sclerotium、Trichoderma及びXanthophyllomyces(Phaffia)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、ATP−クエン酸リアーゼ、リンゴ酸酵素及び/又はAMPデアミナーゼポリペプチドのためのソース種は、Aspergillus nidulans、Cryptococcus neoformans、Fusarium fujikuroi、Kluyveromyces lactis、Neurospora crassa、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Ustilago maydis及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない;一部の実施形態では、ピルビン酸デカルボキシラーゼ又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼポリペプチドのためのソース種は、Neurospora crassa、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)、Aspergillus niger、Saccharomyces cerevisiae、Mucor circinelloides、Rhodotorula glutinis、Candida utilis、Mortierella alpina及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない。
【0059】
(カロテノイド生産の遺伝子工作)
カロテノイドはイソプレノイド前駆体から合成され、その一部はステロイド及びステロールの生産にも関与する。時として「メバロン酸経路」と称される、最も一般的なイソプレノイド生合成経路を図3に一般的に示す。図に示すように、アセチル−CoAは、ヒドロキシメチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)によってメバロン酸に変換される。メバロン酸は次にリン酸化されて、5炭素化合物、イソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換される。IPPのジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)への異性化後、IPPのさらなる分子との3つの連続的縮合反応が10炭素分子、ゲラニルピロリン酸(GPP)を生成し、次に15炭素分子、ファルネシルピロリン酸(FPP)、そして最後に20炭素化合物、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を生成する。
【0060】
一部の生物(特に細菌)によって利用される選択的イソプレノイド生合成経路は、時として「メバロン酸非依存性経路」と呼ばれ、図4に示されている。この経路は、ピルビン酸とグリセルアルデヒド−3−リン酸からの1−デオキシ−D−キシログルコース−5−リン酸(DOXP)の合成によって開始される。DOXPは次に、図4に示す一連の反応を経てIPPに変換され、DMAPPに異性化されて、その後GPP及びFPPにより、図3に示すように、以下で論じるGGPPへと変換される。
【0061】
イソプレノイド生合成に関与する様々なタンパク質が多くの生物において特定され、特性決定されている。さらに、イソプレノイド生合成経路の様々な態様が、真菌、細菌、植物及び動物界全体にわたって保存されている。例えば図3に示すアセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ、IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ及びGGPPシンターゼに対応するポリペプチドが、多種多様な生物及び細胞から特定され、単離された。多種多様なそのようなポリペプチドの代表的な例を表7−15に示す。表7−15のいずれかに提示されるものから選択されるポリペプチドの1又はそれ以上は、本発明に従った方法及び組成物における使用のために利用し得る又は誘導し得る。
【0062】
本発明によれば、宿主生物におけるカロテノイド生産は、イソプレノイド生合成に関与する1又はそれ以上のタンパク質の発現又は活性を改変することによって調節し得る。一部の実施形態では、そのような改変は、1又はそれ以上の異種イソプレノイド生合成ポリペプチドの宿主細胞への導入を含む;代替的に又は付加的に、改変は、1又はそれ以上の内在性又は異種イソプレノイド生合成ポリペプチドの発現又は活性に対して施し得る。イソプレノイド生合成ポリペプチドの成分のかなりの保存を考慮すると、異種イソプレノイド生合成ポリペプチドは、しばしば有意に異なる生物においても機能すると予想される。さらに、2以上の異種イソプレノイド生合成ポリペプチドを導入することが望ましければ、多くの場合異なる供給源生物からのポリペプチドが共に機能する。本発明の一部の実施形態では、複数の異なる異種イソプレノイド生合成ポリペプチドを同じ宿主細胞に導入する。一部の実施形態では、この複数のポリペプチドは、同じ供給源生物からのポリペプチド(例えば同じ供給源生物からの、又は同じ供給源生物に由来する配列の、2又はそれ以上の配列)だけを含む;他の実施形態では、複数のポリペプチドは、異なる供給源生物から独立して選択されるポリペプチド(例えば少なくとも2つの無関係な供給源生物の、又は少なくとも2つの無関係な供給源生物に由来する配列の、2又はそれ以上の配列)を含む。
【0063】
異種イソプレノイド生合成ポリペプチドを使用する本発明の一部の実施形態では、供給源生物は、Blakeslea、Candida、Cryptococcus、Cunninghamella、Lipomyces、Mortierella、Mucor、Phycomyces、Pythium、Rhodosporidium、Rhodotorula、Trichosporon、Yarrowia、Aspergillus、Botrytis、Cercospora、Fusarium(Gibberella)、Kluyveromyces、Neurospora、Penicillium、Pichia(Hansenula)、Puccinia、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Sclerotium、Trichoderms、Ustilago及びXanthophyllomyces(Phaffia)属の真菌を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、供給源生物は、Cryptococcus neoformans、Fusarium fujikuroi、Kluyverimyces lactis、Neurospora crassa、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Ustilago maydis、及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない種である。
【0064】
上述したように、イソプレノイド生合成経路はまた、ステロール、ステロイド及び、ビタミンE又はビタミンKなどのビタミンのような、非カロテノイド化合物の生産に関与する。イソプレノイド生合成経路中間体に作用し、それらを非カロテノイド化合物の生合成へと転換させるタンパク質は、それ故、カロテノイド生合成の間接的阻害剤である(例えばイソプレノイド中間体を他の生合成経路に導く時点を例示する、図5参照)。そのようなタンパク質は、それ故、イソプレノイド生合成競合ポリペプチドとみなされる。そのようなイソプレノイド生合成競合ポリペプチドのレベル又は活性の低下は、本発明に従った宿主細胞におけるカロテノイド生産を上昇させると期待される。
【0065】
本発明の一部の実施形態では、内在性イソプレノイド生合成競合ポリペプチドの生産又は活性を宿主細胞において低下又は排除し得る。一部の実施形態では、このイソプレノイド生合成競合ポリペプチドの活性の低下又は排除は、エルゴステロール生合成経路の酵素の低分子阻害剤での宿主生物の処理によって達成され得る。エルゴステロール生合成経路の酵素は、例えばスクアレンシンターゼ、スクアレンエポキシダーゼ、2,3−オキシドスクアレン−ラノステロールシクラーゼ、シトクロムP450ラノステロール14α−デメチラーゼ、C−14ステロールレダクターゼ、C−4ステロールメチルオキシダーゼ、SAM:C−24ステロールメチルトランスフェラーゼ、C−8ステロールイソメラーゼ、C−5ステロールデサチュラーゼ、C−22ステロールデサチュラーゼ、及びC−24ステロールレダクターゼを含む。これらの酵素の各々は、イソプレノイド生合成競合ポリペプチドとみなされる。これらの酵素の調節剤も、イソプレノイド生合成競合ポリペプチドとみなし得る(例えば、他の生物における相同体を有し得る又は有さないと考えられる、酵母タンパク質Sut1(Genbankアクセッション番号JC4374 GI:2133159)及びMot3(Genbankアクセッション番号NP_013786 GI:6323715))。
【0066】
他の実施形態では、イソプレノイド生合成競合ポリペプチドの活性の低下又は排除は、ユビキノン生合成経路の活性を低下させることによって達成できる。ユビキノン生合成における拘束段階は、哺乳動物におけるチロシン又はフェニルアラニン又は細菌におけるコリスミ酸からのパラ−ヒドロキシ安息香酸(PHB)の形成、及びそれに続く、プレニル基の付加を生じさせる、PHBとイソプレン前駆体の縮合である。この反応はPHB−ポリプレニルトランスフェラーゼによって触媒される。ユビキノンのイソプレノイド側鎖は、プレニル二リン酸シンターゼ酵素によって決定される。PHBとデカプレニル二リン酸の縮合反応から生じる3−デカプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸は、ユビキノン(CoQ10)を形成するために、ヒドロキシル化、メチル化及び脱カルボキシル化を含むさらなる改変を受ける。それ故、ファルネシル二リン酸から伸長したイソプレノイドを導くプレニル二リン酸シンターゼの阻害、又はPHBポリプレニルトランスフェラーゼの阻害は、カロテノイド生合成のために使用可能なイソプレノイドの量を上昇させる上で有用であり得る。(プレニル二リン酸シンターゼ及びPHBポリプレニルトランスフェラーゼ酵素の例をそれぞれ表29及び30に示す)。
【0067】
イソプレノイド生合成競合酵素の公知の低分子阻害剤は、ザラゴジン酸(TAN1607A(Biochem Biophys Res Commun 1996 Feb 15;219(2):515−520)などのその類似体を含む)、RPR 107393(3−ヒドロキシ−3−[4−(キノリン−6−イル)フェニル]−1−アザビシクロ[2−2−2]オクタン二塩酸塩;J Pharmacol Exp Ther.1997 May;281(2):746−52)、ER−28448(5−{N−[2−ブテニル−3−(2−メトキシフェニル)]−N−メチルアミノ}−1,1−ペンチリデンビス(ホスホン酸)三ナトリウム塩;Journal of Lipid Research,Vol.41,1136−1144,July 2000)、BMS−188494(The Journal of Clinical Pharmacology,1998;38:1116−1121)、TAK−475(1−[2−[(3R,5S)−1−(3−アセトキシ−2,2−ジメチルプロピル)−7−クロロ−1,2,3,5−テトラヒドロ−2−オキソ−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−4,1−ベンゾオキサゼピン−3−イル]アセチル]ピペリジン−4−酢酸;Eur J Pharmacol.2003 Apr 11;466(1−2):155−61)、YM−53601((E)−2−[2−フルオロ−2−(キヌクリジン−3−イリデン)エトキシ]−9H−カルバゾール一塩酸塩;Br J Pharmacol.2000 Sep;131(l):63−70)、又はスクアレンシンターゼを阻害するスクアレスタチンI;スクアレンエポキシダーゼを阻害するテルビナフィン;シトクロムP450ラノステロール14α−デメチラーゼを阻害する様々なアゾール;及びC−14ステロールレダクターゼ及びC−8ステロールイソメラーゼを阻害するフェンプロピモルフを含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、異種イソプレノイド生合成競合ポリペプチド(機能性又は非機能性のいずれも;一部の実施形態では、ドミナントネガティブ突然変異体を用いる)を使用し得る。
【0068】
本発明に従って有用な1つの特定イソプレノイド生合成競合ポリペプチドは、様々な生物から特定され、特性決定されたスクアレンシンターゼである;スクアレンシンターゼポリペプチド配列の代表的な例は表16に含まれる。スクアレンシンターゼ(又はスクアレンシンターゼの改変型)を使用する本発明の一部の実施形態では、供給源生物は、Neurospora crassa、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)、Aspergillus niger、Saccharomyces cerevisiae、Mucor circinelloides、Rhotorula glutinis、Candida utilis、Mortierella alpina及びYarrowia lipolyticaを含むが、これらに限定されない。
【0069】
カロテノイド生合成経路は、GGPPが形成された時点でイソプレノイド生合成経路から枝分れする。カロテノイド生合成における拘束段階は、フィトエンシンターゼ(しばしばcrtBと呼ばれる;図6参照)によって触媒される、GGPPの2個の分子の頭−頭縮合によるフィトエンの形成である。各々が共役二重結合の数を2倍に増加させる、一連の脱水素反応が、ニューロスポレンを経てフィトエンをリコペンに変換する。経路は、広範囲のカロテノイドが生成され得るように、リコペン生産の前後両方の、様々な時点で分岐する。例えばリコペンへのシクラーゼ酵素の作用はγ−カロテンを生成する;デサチュラーゼの作用は、その代わりに3,4−ジデヒドロリコペンを生じる。γ−カロテンは、シクラーゼの作用を通してβ−カロテンに変換される。β−カロテンは、アスタキサンチンを含む多くの生成物(例えば図6C参照)のいずれかへと処理され得る(エキネノン、ヒドロキシエキネノン及びフェニコキサンチンを経て)。
【0070】
本発明によれば、宿主生物におけるカロテノイド生産は、カロテノイド生合成に関与する1又はそれ以上のタンパク質の発現又は活性を改変することによって調節し得る。指摘したように、一部の実施形態では、1又はそれ以上のカロテノイドを天然に生産する生物を宿主細胞として使用することが望ましい。一部のそのような場合には、焦点は、例えばそのカロテノイドの合成に関与する1又はそれ以上のタンパク質のレベル及び/又は活性を上昇させることによって及び/又は競合生合成経路に関与する1又はそれ以上のタンパク質のレベル又は活性を低下させることによって、天然に生産されるカロテノイドの生産量を増加させることにある。代替的に又は付加的に、一部の実施形態では、宿主細胞によって天然では生産されない1又はそれ以上のカロテノイドの生産を生じさせることが望ましい。
【0071】
本発明の一部の実施形態によれば、1又はそれ以上の異種カロテノイド形成性ポリペプチドを宿主細胞に導入することが望ましい。当業者には明白であるように、様々な異種ポリペプチドのいずれも使用し得る;選択は、例えばその生産を高めるべき特定カロテノイドを考慮する。本発明は、異種カロテノイド形成性ポリペプチドの導入だけでなく、例えば構成的又は誘導的発現パターンの変化を含む、異種又は内在性カロテノイド形成性ポリペプチドの発現又は活性レベルの調節も考慮する。本発明の一部の実施形態では、含油性を誘導するために栄養素制限条件での増殖を必要としないように発現パターンを調節する。例えば調節配列(例えばプロモーターエレメント、ターミネーターエレメント)の変化及び/又は付加を含む遺伝子改変は、発現パターンの特定調節を与えるために利用し得る。そのような遺伝子改変は内在性遺伝子と共に使用し得る(例えば内在性カロテノイド形成性の調節のため);代替的には、そのような遺伝子改変は、少なくとも1つの異種ポリペプチド(例えばカロテノイド形成性ポリペプチド)の発現の調節を与えるために含まれ得る。例えばTef1、Gpd1プロモーターを含むが、これらに限定されないプロモーターは、内在性カロテノイド形成性ポリペプチド及び/又は異種カロテノイド形成性ポリペプチドの発現パターンの改変のために内在性遺伝子及び/又は異種遺伝子と共に使用できる。同様に、例示的なターミネーター配列は、Y.lipolytica XPR2ターミネーター配列の使用を含むが、これらに限定されない。
【0072】
図6及び文献において指摘されるように、カロテノイド生合成に関与するタンパク質は、フィトエンシンターゼ、フィトエンデヒドロゲナーゼ、リコペンシクラーゼ、カロテノイドケトラーゼ、カロテノイドヒドロキシラーゼ、アスタキサンチンシンターゼ(典型的にはケトラーゼとヒドロキシラーゼ活性の両方を有する、一部の供給源生物で認められる単一多機能酵素)、カロテノイドεヒドロキシラーゼ、リコペンシクラーゼ(β及びεサブユニット)、カロテノイドグルコシルトランスフェラーゼ、及びアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを含むが、これらに限定されない。これらのカロテノイド生合成ポリペプチドについての代表例配列を表17−25に示す。
【0073】
キサントフィルは、それらの環状末端基上の酸素含有官能基の存在によって他のカロテノイドと区別することができる。例えばルテイン及びゼアキサンチンはそれらの末端環構造の各々に1個のヒドロキシル基を含み、一方アスタキサンチンは各々の末端環にケト基とヒドロキシル基の両方を含む。この性質は、キサントフィルをβ−カロテン及びリコペンなどのカロテンよりも極性にし、それ故脂肪及び脂質におけるそれらの溶解度を劇的に低下させる。天然に生じるキサントフィルは、しばしば末端ヒドロキシル基のエステルとして、脂肪酸のモノ及びジエステルの両方として認められる。それらはまた、細菌の一部の種では配糖体として生じる。キサントフィルの溶解度及び分散性はエステル部分の付加によって大きく改変され、エステル化はまた、所与のカロテノイドの吸収性及び/又はバイオアベイラビリティーにも影響を及ぼし得ることが知られている。含油性酵母の細胞内トリアシルグリセリド画分内に蓄積する特定キサントフィルの量を最大化することが本発明の1つの目的であり、この目標を達成するための1つの機序は、蓄積するキサントフィル生成物の疎水性を高めることである。これを達成する1つの方法は、標的キサントフィル化合物の脂肪アシルモノ及び/又はジエステルの生産を遺伝子工作することである。
【0074】
様々な酵素がカロテノイドをエステル化するために機能し得る。例えばカロテノイドグルコシルトランスフェラーゼがいくつかの細菌種において特定された(例えば表24参照)。加えて、トリアシルグリセロール生合成の最終段階で働く、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)及びアシルCoA:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)は、キサントフィルのエステル化において付加的な役割を果たすと考えられる。代表的なDGATポリペプチドを表25に示す。さらに、他の酵素は、カロテノイド及び同様の構造の分子(例えばステロール)を特異的に改変すると考えられ、改変及びエステル生産のために使用可能であり得る。
【0075】
本発明の一部の実施形態では、カロテノイド生合成ポリペプチドのための潜在的供給源生物は、天然にカロテノイドを生産する、天然に含油性又は非含油性の属を含むが、これらに限定されない。これらは、Botrytis、Cercospora、Fusarium(Gibberella)、Mucor、Neurospora、Phycomyces、Puccina、Rhodotorula、Sclerotium、Trichoderma及びXanthophyllomycesを含むが、これらに限定されない。例示的な種は、Neurospora crassa、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffla rhodozyma)、Mucor circinelloides及びRhodotorula glutinisを含むが、これらに限定されない。言うまでもなく、カロテノイドは、植物、藻類、酵母、真菌、細菌、藍細菌等のような広い範囲の多様な生物によって生産される。いかなるそのような生物も、本発明に従ったカロテノイド生合成ポリペプチドのための供給源生物であり得る。
【0076】
本発明に従って宿主細胞に適用する特定カロテノイド形成性改変が、いずれのカロテノイドの生産を所望するかによって影響されることは認識される。例えばイソプレノイド生合成ポリペプチドは大部分のカロテノイドの生産に関連する。カロテノイド生合成ポリペプチドも広く関連する。ケトラーゼは、カンタキサンチンの生産のために特に適切であり、同様にヒドロキシラーゼは、中でも特に、ルテイン及びゼアキサンチンの生産に関連する。ヒドロキシラーゼ及びケトラーゼ(又はアスタキサンチンシンターゼ)の両方がアスタキサンチンの生産のために特に有用である。
【0077】
(カロテノイドの生産と単離)
上記で論じたように、含油性生物における脂質体の蓄積は、一般に過剰の炭素源と制限窒素の存在下で関連生物を増殖させることによって誘導される。そのような蓄積を誘導するための詳細な条件は、これまでに多くの異なる含油性生物に関して確立されている(例えば、おのおのその全体が参照によりここに組み込まれる、Wolf(ed.)Nonconventional yeasts in biotechnology Vol.1,Springer−Verlag,Berlin,Germany,pp.313−338;Lipids 18(9):623,1983;Indian J.Exp.Biol.35(3):313,1997;J.Ind.Microbiol.Biotechnol.30(l):75,2003;Bioresour Technol.95(3):287,2004参照)。
【0078】
一般に、本発明の改変宿主細胞を、それらの乾燥細胞重量の少なくとも約20%を脂質として蓄積することを許容する条件下で培養することが望ましい。他の実施形態では、本発明の改変宿主細胞を、それらの乾燥細胞重量の少なくとも約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%又はさらには80%を脂質として蓄積することを許容する条件下で増殖させる。ある実施形態では、使用する宿主細胞は、天然に含油性であり、所望レベルまで脂質を生産するように誘導された細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、天然に脂質を生産するが、所望レベルの脂質生産及び蓄積を達成するように、脂質の生産を高めるように遺伝子工作された細胞である。
【0079】
ある実施形態では、本発明の宿主細胞は、天然では含油性でないが、所望レベルの脂質生産が得られるように、脂質を生産するように遺伝子工作されている。当業者は、一般に、供給源生物における脂質蓄積を誘導するために有効な増殖条件はまた、供給源生物の含油性ポリペプチドが導入された宿主細胞における脂質蓄積を誘導するためにも誘導であり得ることを認識する。いうまでもなく、改変は宿主細胞の性質から鑑みて必要であると考えられ、そのような改変は当業者の技術範囲内である。
【0080】
また、一般に本発明の改変宿主細胞による所望カロテノイドの生産が、カロテノイドが脂質体内に蓄積するように含油性の誘導に関して適切な時点で起こることを確実にすることが望ましいことも当業者によって認識される。一部の実施形態では、検出可能なレベルのカロテノイドが生産されるように、天然ではカロテノイドを生産しない宿主細胞においてカロテノイドの生産を誘導することが望ましい。ある態様では、天然ではある種のカロテノイドを生産しない宿主細胞が他のカロテノイドを生産することができる(例えばある宿主細胞は、例えばβ−カロテンを天然に生産し得るが、天然ではアスタキサンチンを生産できない);他の態様では、宿主細胞は、天然ではいかなるカロテノイドも生産しない。他の実施形態では、高い検出可能レベルのカロテノイドが生産されるように、天然で低レベルのカロテノイドを生産する宿主細胞においてカロテノイドの生産レベルを上昇させることが望ましい。ある態様では、天然でカロテノイド(例えばβ−カロテン)を生産する宿主細胞が付加的なカロテノイド(例えばアスタキサンチン等)も生産する;さらなる他の態様では、天然でカロテノイド(例えばβ−カロテン)を生産する細胞は付加的なカロテノイドを生産しない。
【0081】
本発明のある実施形態では、カロテノイドを、細胞の乾燥重量の少なくとも約1%以上のレベル(すなわち生産される全てのカロテノイドの総量を合わせて考慮して)まで蓄積することが望ましい。一部の実施形態では、脂質体における総カロテノイド蓄積は、細胞の総乾燥重量の少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%又はそれ以上のレベルまでである。本発明のある実施形態では、細胞の乾燥重量の少なくとも約1%以上の脂質体内のカロテノイド蓄積の総レベル(すなわち生産される全てのカロテノイドの総量を合わせて考慮して)を達成することが望ましい。一部の実施形態では、脂質体内の総カロテノイド蓄積は、細胞の総乾燥重量の少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%又はそれ以上のレベルまでである。
【0082】
細菌のカロテノイド形成性遺伝子は、他の生物に転移し得ることが既に明らかにされており、それ故本発明に従って特に有用である(例えばMiura et al.,Appl.Environ.Microbiol.64:1226,1998参照)。他の実施形態では、植物、藻類又は微細藻類などの他の供給源生物からの遺伝子を使用することが望ましいと考えられる;これらの生物は、ケトラーゼ及びヒドロキシラーゼポリペプチドのための多様な潜在的ソースを提供する。さらなる他の有用な供給源生物は、ポリペプチドの真菌、酵母、昆虫、原生動物及び哺乳動物ソースを含む。
【0083】
ある実施形態では、Mucor circinelloides多機能性フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼ及びNeurospora crassaフィトエンデヒドロゲナーゼ遺伝子がYarrowia lipolyticaにおいて発現され得る。その後の、N.crassaヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼからの触媒ドメインの過剰発現及び/又はスクアレンシンターゼ阻害剤、ザラゴジン酸による改変Y.lipolytica菌株の処理は、カロテノイド生産をさらに上昇させる。最後に、カロテノイドヒドロキシラーゼ及びカロテノイドケトラーゼ酵素をコードするParacoccus marcusii遺伝子は、Y.lipolytica β−カロテン生産菌株において発現され、この改変はアスタキサンチンの蓄積を生じさせる。カロテノイド生産を高めるための同様のアプローチは、他の含油性又は非含油性宿主生物において使用でき、同じ、相同な又は機能的に類似するカロテノイド形成性ポリペプチドを使用して実施できる。
【0084】
2以上のカロテノイドを生産する本発明の生物に関して、増殖条件を調節することによって生産される個々のカロテノイドの相対量を調節することが時として可能であることに留意すべきである。例えば、培養の間に培養物中の溶解酸素の濃度を制御することは、β−カロテン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、アステロイデノン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン及びアスタキサンチンなどの一部のカロテノイドの相対生産レベルを調節できることが報告された(例えば、その内容全体が参照によりここに組み込まれる、Tsubokura et al.への米国特許第6,825,002号参照)。
【0085】
特にアスタキサンチンの生産を対象とする本発明の実施形態に関して、天然アスタキサンチン生産生物からの1又はそれ以上の遺伝子を使用することがしばしば望ましい。多数の異種ポリペプチドを発現させる場合、全てに同じ供給源生物を使用すること、又は密接に関連する供給源生物を使用することが望ましいと考えられる。
【0086】
本発明によって提供される1つの利点は、高レベルのカロテノイドの生産を可能にすることに加えて、生産された化合物が含油性生成物の脂質体内に蓄積されるので、本発明は、それらを容易に単離することを可能にする。脂質体を単離するための方法及びシステムは多種多様な含油性生物に関して確立されている(例えば、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,164,308号;同第5,374,657号;同第5,422,247号;同第5,550,156号;同第5,583,019号;同第6,166,231号;同第6,541,049号;同第6,727,373号;同第6,750,048号;及び同第6,812,001号参照)。簡単に述べると、細胞を、しばしば噴霧乾燥、ろ過又は遠心分離によって、典型的には培養から回収する。一部の場合には、細胞を均質化し、その後超臨界液体抽出又は溶媒抽出(例えばクロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル等のような溶媒による)に供して、粗油懸濁液を生成する。この油懸濁液を、場合により当技術分野で公知のように精製する。精製した油は飼料又は食品添加物として直接使用し得る。代替的に又は付加的に、従来の手法を用いてカロテノイドを油から単離することができる。
【0087】
一般的に酸化に対するカロテノイドの感受性を考慮して、本発明の多くの実施形態は、カロテノイド単離の間及び/又は単離後に酸化安定剤(例えばトコフェロール、ビタミンC;エトキシキン;ビタミンE、BHT、BHA、TBHQ等、又はそれらの組合せ)を使用する。代替的に又は付加的に、例えばタンパク質による、マイクロカプセル化は、酸化に対する物理的障壁を追加するため及び/又は取り扱いを改善するために使用し得る(例えば米国特許出願第2004/0191365号参照)。
【0088】
(使用)
本発明に従って生産されるカロテノイドは、例えばそれらの生物学的又は栄養特性(例えば抗酸化、抗増殖等)及び/又はそれらの色素特性を利用して、多様な適用のいずれかにおいて使用できる。例えば本発明によれば、カロテノイドは、医薬品(例えばBertram,Nutr.Rev.57:182,1999;Singh et al.,Oncology 12:1643,1998;Rock,Pharmacol.Ther.75:185,1997;Edge et al,J.Photochem Photobiol 41:189,1997;米国特許出願第2004/0116514号;米国特許出願第2004/0259959号参照)、栄養補助食品(例えばKoyama et al,J.Photochem Photobiol 9:265,1991;Bauernfeind,Carotenoids as colorants and vitamin A precursors,Academic Press,NY,1981;米国特許出願第2004/0115309号;米国特許出願第2004/0234579号参照)、電気光学適用、動物飼料添加物(例えばKrinski,Pure Appl.Chem.66:1003,1994;Polazza et al.,Meth.Enzymol.213:403,1992参照)、化粧品(抗酸化剤として及び/又は香料を含む、化粧品として;例えば米国特許出願第2004/0127554号参照)等において使用し得る。本発明に従って生産されるカロテノイドはまた、他の化合物(例えばステロイド等)の生産における中間体としても使用し得る。
【0089】
例えばアスタキサンチン及び/又はそのエステルは、炎症性疾患、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー、多発性骨髄腫、動脈硬化症、心臓血管疾患、肝臓病、脳血管疾患、血栓症、癌、リウマチ、糖尿病性網膜症を含む血管新生関連疾患;黄斑変性及び脳障害、高脂血症、腎虚血、糖尿病、高血圧症、腫瘍増殖及び転移;及び代謝性疾患の治療を含む、様々な医薬適用及び健康食品において有用であり得る。付加的に、カロテノイド及びアスタキサンチンは、疲労の予防及び治療、炎症性疾患からの腎症において腎機能を改善するため、並びに他の生活習慣関連疾患の予防及び治療において有用であり得る。さらに、アスタキサンチンは、インターロイキン阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ホスホリパーゼA2阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、毛細血管内皮細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤を含む、様々な生物学的過程の阻害剤として役割を果たすことが認められた。例えば2006年1月26日公開の日本特許公開第2006022121号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301156号);2006年1月19日公開の日本特許公開第2006016408号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301155号);2006年1月19日公開の日本特許公開第2006016409号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301157号);2006年1月19日公開の日本特許公開第2006016407号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301153号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008717号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301151号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008716号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301150号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008720号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005− 301158号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008719号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301154号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008718号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301152号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008713号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301147号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008715号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301149号);2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008714号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301148号);及び2006年1月12日公開の日本特許公開第2006008712号(2005年10月17日出願の日本特許出願第2005−301146号)参照。
【0090】
本発明の一部の実施形態では、ここで述べるように遺伝子操作された宿主細胞によって生産されるカロテノイドが、宿主細胞に関する最終製品(例えば栄養補助食品又は飼料、医薬品、化粧品、染料含有製品等)に組み込まれることは認識される。例えば宿主細胞は、凍結乾燥、凍結又はさもなければ不活性化することができ、その後全細胞を最終製品に組み込み得るか又は最終製品として使用し得る。宿主細胞はまた、生成物への組込みの前に、生物学的利用率を高めるために処理し得る(例えば溶解によって)。代替的に又は付加的に、最終製品は、全体から分離された、宿主細胞の一部だけ(例えば大きさ、溶解度によって分画された)を組み込み得る。例えば本発明の一部の実施形態では、脂質滴を宿主細胞から単離し、最終製品に組み込むか又は最終製品として使用する。他の実施形態では、カロテノイド自体又は個々のカロテノイド化合物を単離し、最終製品に再製剤する。
【0091】
上述したように、脂肪酸と配糖体のエステルは自然界で認められる主要なカロテノイドエステルであるが、有用な製品形態を生成するために付加的なエステルを(例えば有機酸又は無機リン酸と)合成することができる。送達のために、カロテノイドエステルはまた、エステル形態の塩として製剤することもできる(例えば米国特許公開第20050096477号参照)。
【0092】
所与の生成物に組み込まれるカロテノイドの量は、製品及び関与する特定カロテノイドに依存して劇的に異なり得る。量は、例えば生成物の0.01重量%未満から1%以上、10%、20%、30%又はそれ以上の範囲にわたり得る;一部の場合には、カロテノイドは生成物の100%を構成し得る。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、生産された1又はそれ以上のカロテノイドを食品又は飼料(例えば栄養補助食品)の成分に組み込む。本発明に従ってカロテノイドを組み込むことができる食品の種類は特に限定されず、茶、ジュース及び酒などの飲料;ゼリーやビスケットなどの菓子;乳製品などの脂肪含有食品及び飲料;米及び軟質米(又は粥)などの加工食品;特殊調製粉乳等を含む。本発明のこの態様の一部の実施形態では、食用脂質体内にカロテノイドを組み込むことは、ある種の脂肪含有食品への組込みを容易にし得るので、有用であると考えられる。
【0094】
本発明に従って生産されるカロテノイドを組み込み得る飼料の例は、例えばキャットフード、ドッグフード等のようなペットフード、観賞魚、養殖魚又は甲殻類等のための飼料、農場で飼育される動物(家畜を含み、さらに水産養殖で育てられる魚又は甲殻類を含む)のための飼料を含む。本発明に従って生産されるカロテノイドを組み込む食品又は飼料材料は、好ましくは意図される受容者である生物にとって口当たりがよい。この食品又は飼料材料は、食品材料に関して現在公知の何らかの物理的性質(例えば固体、液体、軟質)を有し得る。
【0095】
本発明の一部の実施形態では、生産された1又はそれ以上のカロテノイドを化粧品に組み込む。そのような化粧品の例は、例えば皮膚用化粧品(例えばローション、乳液、クリーム等)、口紅、日焼け防止化粧品、メーキャップ化粧品、香料、日用品(例えば歯磨き粉、うがい薬、口臭予防剤、固形石けん、液体石けん、シャンプー、コンディショナー)等を含む。
【0096】
一部の実施形態では、生産された1又はそれ以上のカロテノイドを医薬品に組み込む。そのような医薬品の例は、例えば様々な種類の錠剤、カプセル、ドリンク剤、トローチ、うがい薬等を含む。一部の実施形態では、医薬品は局所適用に適する。投与形態は特に限定されず、カプセル、油、顆粒、微細顆粒、粉末、錠剤、丸剤、トローチ等を含む。油及び油充填カプセルは、製造の間の成分分解がないこと及び本発明のカロテノイド含有脂質滴が油性製剤に容易に組み込まれ得ることの両方の理由で、付加的な利点を提供し得る。
【0097】
本発明に従った医薬品は、例えば米国薬局方に述べられている一般手順を含む、当技術分野において確立された手法に従って製造し得る。
【0098】
本発明に従って生産されるカロテノイドは、例えば織物、塗料等を含む色素含有製品に組み込み得る。それらはまた、環境指標である製品又は検出試薬としての使用のためのバイオセンサーなどの装置にも組み込み得る。
【実施例】
【0099】
下の表26は、以下の実施例において使用したあるYarrowia lipolytica菌株を説明する:
【0100】
【表1】

(LYCl、LYSl、XPR2及びPEX17における遺伝子型は交配において決定されず、ATCC菌株に関しても確認されなかった。)
ここで述べる全ての基本的分子生物学及びDNA操作手順は、一般にSambrook et al.又はAusubel et al.(Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T(eds).1989.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York;Ausubel FM,Brent R,Kingston RE,Moore DD,Seidman JG,Smith JA,Struhl K(eds).1998.Current Protocols in Molecular Biology.Wiley:New York)に従って実施される。
【0101】
(実施例1)
カロテノイド菌株構築のためのプラスミドの生産
カロテノイド生産菌株の構築のためにプラスミドを作製した。以下の項は、カロテノイド形成性ポリペプチドをコードするプラスミドの生産を説明する。これらの試験において使用したプラスミド及びそれらの構築の詳細を表27に示す。さらなるプラスミド構築の詳細及びそれらの使用の説明は、関連する章の本文に述べられている。全てのPCR増幅は、異なる記載がない限りNRRL Y−1095ゲノムDNAを鋳型として使用した。以下で述べるURA5遺伝子は、上記ura2−21栄養要求性株と対立遺伝子である。GPD1及びTEF1プロモーターは、XPR2ターミネーターと同様にY.lipolyticaからである。
【0102】
GGS1は、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼをコードするY.lipolytica遺伝子をコードする遺伝子である。核酸コード配列、及びpMB4591及びpMB4683のコードされるGgs1タンパク質は以下の通りである:
【0103】
【化1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

表27において言及する一部のオリゴヌクレオチドは以下の通りである:
【0106】
【化2】

1A:フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼをコードするpMB4628(teflp−carRP LEU2)の生産:イントロンを含むcarRPを、MO4525及びMO4541:
【0107】
【化3】

を使用してM.circinelloides(ATCC90680)ゲノムDNAから増幅し、生じた1.9kbフラグメントをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化した。生じたフラグメントを、EcoRVで切断したpBluescriptSKII−に平滑末端連結し、pMB4599を生成した。pMB4599からの1.9kb XbaI−MluIフラグメントを、NheI及びMluIで切断したpMB4603に挿入し、pMB4628を生成した。イントロンを含む核酸コード配列、及びpMB4628のコードされるCarRPタンパク質は以下の通りである:
【0108】
【化4−1】

【0109】
【化4−2】

代替的には、pMB4599も、MO4318、MO4643、MO4644及びMO4639:
【0110】
【化5】

を用いたPCR増幅のための鋳型として使用し、生じた0.5及び0.95kbのフラグメントを、その後、それぞれAcc65IとBsaI、及びBsaIとPpuMIで切断した。これらのフラグメントを、Acc65I及びPpuMIで消化しておいたpMB4599に連結し、イントロンのないcarRPを担持するpMB4613を生成した。pMB4613からの1.85kb XbaI−MluIフラグメントをNheI及びMluI切断したpMB4603に挿入して、pCarRPdelIを生成することができる。
【0111】
1B:フィトエンデヒドロゲナーゼをコードする、pMB4638(tef1p−carB ADE1)の生産:イントロンを含むcarBを、MO4530及びMO4542:
【0112】
【化6】

を使用してM.circinelloides(ATCC90680)ゲノムDNAから増幅し、生じた1.9kbフラグメントをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化して、EcoRVで切断したpBS−SKI−に平滑末端連結し、pMB4606を生成した。pMB4606を、次に、MO4318とMO4648、及びMO4646とMO4647、及びMO4343とMO4645:
【0113】
【化7】

を用いたPCR増幅のための鋳型として使用し、生じた0.4及び0.85及び0.7kbのフラグメントを、その後、Acc65IとBsaI、及びBsaI、及びBsaIとBamHIでそれぞれ切断した。これらのフラグメントを、Acc65IとBamHIで切断しておいたpBS−SKII−に連結し、イントロンのないcarBを担持するpMB4619を生成した。pMB4619からの1.75kb XbaI−MluIフラグメントを、NheI及びMluI切断したpMB4629に挿入し、pMB4638を生成した。生じた核酸コード配列及びpMB4638のコードされるCarBタンパク質は以下の通りである:
【0114】
【化8】

1C.フィトエンデヒドロゲナーゼをコードするpMB4660(tef1p−carB URA3)の生産:pMB4638からの4.3kb XhoI−NotIフラグメント及び1.8kb NotI−SpeIフラグメントを、MO4684及びMO4685:
【0115】
【化9】

を用いたY.lipolyticaゲノムDNAのPCR増幅によって生成した1.9kb BsaI及びSpeI切断URA3遺伝子に連結し、pMB4660を作製した。生じた核酸コード配列及びpMB4660のコードされるCarB(i)タンパク質は以下の通りである:
【0116】
【化10】

1D.切断型HMG1をコードするpMB4637及びpTef−HMGの生産:S.cerevisiaeに由来する77アミノ酸リーダー配列を同時にコードする、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子の切断型変異体の生産のために、以下のオリゴヌクレオチドを合成する:
【0117】
【化11】

プライマーO及びPは、ゲノムDNAを鋳型として用いて、Met−Ala及びそれに続くS.cerevisiaeのHmg1タンパク質の残基530−604をコードする0.23kbフラグメントを増幅するために使用する。プライマーQ及びMO4658は、ゲノムDNAを鋳型として用いて、Y.lipolyticaのHmg1タンパク質のC末端448残基をコードする1.4kbフラグメントを増幅するために使用する。これらのフラグメントを適切なクローニングベクターに連結し、pOP及びpQMO4658と称する、生じたプラスミドを、配列決定によって確認する。OPフラグメントをXbaIとAseIで遊離させ、QMO4658フラグメントをMaeIとMluIで遊離させる。これらのフラグメントを、次に、XbaIとMluIで切断したADE1 TEF1p発現ベクターpMB4629に連結して、pTefHMGを生産する。
【0118】
代替的には、Y.lipolyticaからの天然HMG1遺伝子を、プライマーMO4658(上述した)及びMO4657:
【0119】
【化12】

を用いて上記表に示したS.cerevisiae配列なしで改変して、pMB4637を作製し得る。生じた核酸コード配列及びpMB4637のコードされるHmg1truncタンパク質は以下の通りである:
【0120】
【化13−1】

【化13−2】

1E.カロテンヒドロキシラーゼをコードするpMB4692(URA3 tef1p−crtZ)の生産:Y.lipolyticaのコドン使用の偏りを利用して、Novosphingobium aromaticivoransのタンパク質配列に基づき、以下のカロテンヒドロキシラーゼ(CrtZ)ORF配列を合成した:
【0121】
【化14】

この配列を、XbaIとMluIを用いて切断し、pMB4629からのAcc65I−NheI TEF1プロモーターフラグメントと共に、Acc65IとMluIで切断したpMB4662に連結して、pMB4692を作製した。核酸コード配列を上記に太字下線で示す。生じたpMB4692のコードされるcrtZタンパク質は以下の通りである:
【0122】
【化15】

1F.カロテンケトラーゼをコードするpMB4698(ADE1 tef1p−crtW)の生産:Sargasso Sea(Genbankアクセッション番号AACY01034193.1)から単離した環境配列のタンパク質配列に基づき、以下のカロテンケトラーゼ(CrtW)ORF配列を合成した:
【0123】
【化16】

この配列を、XbaIとMluIを用いて切断し、NheIとMluIで切断したpMB4629に連結して、pMB4698を作製した。核酸コード配列を上記に太字下線で示す。生じたpMB4698のコードされるcrtWタンパク質は以下の通りである:
【0124】
【化17】

(実施例2)
カロテノイド生産上昇のためのYarrowia lipolyticaの遺伝子工作
2A.ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ及びフィトエンデヒドロゲナーゼを発現するY.lipolyticaの生産:MF350(MATB ura2−21 leu2−35 ade1)を、SspIによってURA5の上流で切断しておいたpMB4591(tef1p−GGS1)で形質転換した;ura2遺伝子座にプラスミドを担持するUra形質転換体を特定し、MF364と命名した。それをその後、SspIによってADE1で切断しておいたpMB4638(tef1p−carB)で形質転換し、ade1遺伝子座にプラスミドを担持する原栄養株形質転換体を選択した。この菌株をMF502と命名した。
【0125】
2B.ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ、フィトエンデヒドロゲナーゼ及びフィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼを発現するY.lipolyticaの生産:MF502を、SspIで処理しておいたpMB4628(tef1p−CarRP)で形質転換した。2−3日間の増殖後に形質転換プレート(1%グルコース及び0.1%グルタミン酸を添加したYNB寒天[YNBglut])で着色なし、橙色又は強い橙色であった9個の原栄養性コロニーを選択した。MF597とMF600(強い橙色)の2個は、YPDにおける30℃で4日間の増殖後、乾燥細胞重量(DCW)g当り4mg以上のカロテンを生産した。サザン分析は、MF597及びMF600からのゲノムDNAにおいて異なる単一KpnI−HindIIIバンドを明らかにし、いずれもleu2−270において相同的組込みが起こらないことを示唆した。
【0126】
2C.フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼ及びフィトエンデヒドロゲナーゼを発現するY.lipolyticaの生産:ATCC201249(MATA ura3−302 leu2−270 lys8−ll)を、SspI切断したpMB4628で形質転換した。数百個のLeuコロニーをプールし、再増殖させて、SalIによってURA3の上流で切断しておいたpMB4660(tef1p−carB)で形質転換した。YNBglutプラス0.6mMリシン上で30℃にて5日後、著明に黄色であった1個のコロニーを選択し、MF447と命名して、YPDにおける4日間の増殖後に乾燥細胞重量のグラム当り0.2mgのカロテンを生産することを認めた。
【0127】
MF447を1g/Lの5−フルオロオロチン酸で攻撃誘発し、Ura分離株(segregants)を選択した。驚くべきことに、それらは全て親と同じ黄色の外観を保持することが認められ、機能的URA3遺伝子の喪失が機能的CarB酵素の喪失と一致しないことを示唆した。サザン分析は、MF447 DNAのKpnI−HindIII消化物からの2個のフラグメントがURA3pにハイブリダイズする配列を含み、そのうちの1個だけがcarBにもハイブリダイズすることを明らかにする。他方はMF578には存在せず、Ura3分離株をさらなる操作のために選択した。菌株MF447、MF597(実施例2c)及びMF600(実施例2c)におけるプラスミド救済及びcarBPイントロンを含むDNA配列の分析は、エクソン1及び2が隣接し、もとの内部SspI部位(pMB4628に存在する)を持たないイントロン配列によって各々分離されていることを明らかにした。
【0128】
2D.フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼ、フィトエンデヒドロゲナーゼ及びゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼを発現するY.lipolyticaの生産:MF578を、SalI(URA3の上流)又はStuI(GGS1 ORF内)で切断しておいたpMB4683(tef1p−GGS1)で形質転換した。UraLeuコロニーは、両方の場合に、YNBglut+Lys及びYPDで明るい橙色に見え、いくつかは、上記のように増殖させたとき乾燥細胞重量のグラム当り4mg以上のカロテンを生産した。一方のMF633は、サザン分析から推測されたように、GGS1遺伝子座に1コピーのプラスミドを含んだ。他方は非相同的又はより複雑な組込みによって生じた。
【0129】
2E.フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼ、フィトエンデヒドロゲナーゼ及びゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼを発現するY.lipolyticaの生産:MF364をMF578と交配し、生じた二倍体からの胞子を30℃で2−3日間YPDにプレートする。橙色のLeuAdeUraコロニーをtefp−carB、tefp−carRP及びtefp−GGS1の存在に関してPCRによってスクリーニングし、YPD液体培地での増殖後、高カロテノイド(>4mg/g乾燥細胞重量)生産に関してスクリーニングする。これらの判定基準に合致し、並びにura3−302対立遺伝子を担持することの指標である、5−フルオロオロチン酸に対する耐性を示すコロニーをさらなる検討のために選択し、以下GBRPua菌株と称する。そのような菌株をさらなる分析及び改変のために選択する。
【0130】
(実施例3)
Yarrowia lipolytica細胞からのカロテノイドの抽出
生成した菌株の振とうフラスコ試験を、YPD培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース)を用いて実施した。125mlフラスコ中の培養物20mlを30℃で増殖させた。Y.lipolytica細胞を72−96時間培養物から採集し、カロテノイドの形態及び量を測定するために抽出を行った。培養物1.8mlをエッペンドルフチューブに入れた。細胞をペレット化し、HO 1mlで2回洗った。2回目の洗浄後、再懸濁した細胞を、上部に開けた穴がある、あらかじめ計量したスナップ式キャップのチューブに移し、細胞を一晩凍結乾燥した。完全に乾燥した後、乾燥細胞重量を算定するためにチューブを計量した。同じ振とうフラスコ培養から0.25mlを、カロテノイド抽出のために2mlスクリューキャップチューブに入れた。細胞をペレット化し、上清を吸引した。ペレット化した細胞は、−80℃で凍結し、保存し得る。等容積のキュービックジルコニアビーズを、氷冷抽出溶媒(0.01%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むヘキサンと酢酸エチルの50/50 v/v混合物)1mlと共に、細胞ペレットに添加した。次に混合物を4℃で5分間、最大速度にて攪拌した(Mini−BeadBeater−8,BioSpec Products,Inc.)。その後混合物を最大速度で1分間遠心し、上清を収集して、低温16mlガラスバイアルにおいて沈殿させた。残りの細胞デブリを、キュービックジルコニアビーズを添加せずに少なくとも3回再抽出した;全ての上清を16mlガラスバイアルにプールした。抽出後、ガラスバイアルをSorvall卓上遠心分離機において4℃にて2000rpmで5分間遠心し、上清を新しい低温16mlガラスバイアルに移した。上清を濃縮するためにSpeed Vacを使用し(暗所にて室温で)、試料をHPLC分析の直前まで−20℃又は−80℃で保存した。HPLC分析の前に、試料を氷冷溶媒1mlに再懸濁し、その後低温アンバーバイアルに移した。プロトコール全体を通して、酸素、光、熱及び酸との接触を避けるように注意を払った。
【0131】
(実施例4)
HPLCによるカロテノイド生産の定量化
カロテノイド分析のため、試料を氷冷抽出溶媒(0.01%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むヘキサンと酢酸エチルの50/50 v/v混合物)に再懸濁した。 Waters XBridge C18カラム(3.5μm、2.1×50mm)及びThermo Basic 8ガードカラム(2.1×10mm)を備えたAlliance 2795HPLC(Waters)を、25℃でカロテノイドを分解するために使用した;基準カロテノイド試料を標準品として使用した。移動相及び流速を以下に示す(溶媒A=酢酸エチル;溶媒B=水;溶媒C=メタノール;溶媒D=アセトニトリル)。注入量は10μLであった。検出器は、Waters996フォトダイオードアレイ検出器であった。親油性分子についての保持時間は、アスタキサンチン(1.159分)、ゼアキサンチン(1.335分)、β−アポ−8’−カロテナール(2.86分)、エルゴステロール(3.11分)、リコペン(3.69分)、β−カロテン(4.02分)及びフィトエン(4.13分)を含む。アスタキサンチン、ゼアキサンチン、β−アポ−8’−カロテナール、リコペン及びβ−カロテンは475nmで検出し、エルゴステロールとフィトエンは286nmで検出した。
【0132】
【表4】

(実施例5)
切断型HMG−CoAレダクターゼの発現はカロテノイド生産の上昇を生じさせる
カロテノイド生産を高めるため、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子の切断型変異体を導入することによってイソプレノイド経路を通る炭素の流れを強化する。
【0133】
1つのアプローチでは、S.cerevisiae Hmg1に由来する77アミノ酸リーダー配列を同時にコードするHMG−CoAレダクターゼ遺伝子の切断型変異体をGRPBua菌株(上記実施例2Eで述べた)に導入する。プラスミドpTefHMGを、GRPBua菌株において、ade1遺伝子座での組込みを指令するためにSnaBI、BbvCI又はBsu36Iで、又はHMG1遺伝子座での組込みを指令するためにBamHIで、又はランダムな組込みを促進するためにEcoRVで切断し、それらをアデニン原栄養性に回復させることができる。生じるAde形質転換体をカロテノイド生産上昇に関してスクリーニングする。
【0134】
代替的には、Y.lipolyticaからの天然HMG1遺伝子を、pMB4637を生成するように、上記実施例1Dで述べたようにS.cerevisiae配列なしで改変し得る。このプラスミドを、pTefHMGに関して述べたように消化し、GRPBua菌株に形質転換して、生じた形質転換体を上述したようにカロテノイド生産上昇に関してスクリーニングすることができる。
【0135】
さらにもう1つのアプローチでは、N.crassa HMG−CoAレダクターゼ遺伝子の切断型変異体を使用して、Y.lipolytica菌株に導入し得る。異種HMG−CoAレダクターゼの発現に適したプラスミドを作製するため、p641P(Yeast 2001;18(2001):97−113)を、ICL1プロモーターをGPDプロモーターで置換し、フレオマイシンに対する耐性を与える配列を付加することによって改変する。Y.lipolyticaゲノムDNAを2個のプライマー:
【0136】
【化18】

で増幅し、生じたフラグメント(0.7kb)をBamHIとKpnIで消化して、BamHI及びKpnI切断p641Pに連結して、プラスミド「p641Pgpd」を作製する。A. nidulans GPDプロモーターの制御下のble遺伝子を、次に、pBCphleo(Silar,Fungal Genetics Newsletter 42:73)から3.2kbのBclI−BamHIフラグメントとして切り出し、GPDプロモーターに近接するBamHI部位を保存する方向で、「p641Pgpd」のユニークBamHI部位に挿入して、「p641Pgpdble」を作製する。
【0137】
N.crassaゲノムDNAを2個のプライマー:
【0138】
【化19】

で増幅し、生じたフラグメントをBamHIで切断して、BamHI消化した「p641Pgpdble」に正しい方向で挿入する。生じるプラスミド、「pZg」は、構成的GPDプロモーターの制御下でN.crassaからのヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼの切断型サイトゾル触媒ドメインをコードする配列(Genbankアクセッション番号:XP_324892)を含む。このプラスミドを、上記実施例2Eで作製したY.lipolytica菌株に導入することができ、形質転換体をフレオマイシン(100μg/ml)に対するそれらの耐性によって選択する。生じた形質転換体を、上述したように、β−カロテン生産に関して試験する。
【0139】
(実施例6)
アスタキサンチンの生産のための、カロテノイドを生産するY.lipolytica菌株への異種カロテンヒドロキシラーゼ及びカロテンケトラーゼ遺伝子の導入
カロテノイド産生Y.lipolyticaへのカロテンヒドロキシラーゼ及びカロテンケトラーゼの導入のために、上記実施例1E及び1Fで述べたpMB4692及びpMB4698をGRPBua菌株(実施例2Eで述べた)に連続的に導入することができる。pMB4692の導入のためには、ura3遺伝子座での組込みを指令するためにSalI又はBsrGIで、又はランダムな組込みを促進するためにXbaIで切断し、ウラシル原栄養性を選択する。pMB4692を内包するGRPBua Ura形質転換体をYPDにおけるゼアキサンチン生産に関してスクリーニングする。ゼアキサンチン産生細胞をpMB4698(ade1遺伝子座での組込みを指令するためにPpuMI、SspI又はBbvCIで、又はランダムな組込みを促進するためにEcoRVで切断し得る)で形質転換し、原栄養性コロニーをアスタキサンチン生産に関してスクリーニングする。
【0140】
代替的には、プラスミド形質転換の順序を逆にしてもよく、pMB4698を最初に形質転換し、形質転換体をアデニン原栄養性に関してスクリーニングする。pMB4698を内包するGRPBua Ade形質転換体をカンタキサンチン生産に関してスクリーニングする。カンタキサンチン産生GRPBua[pMB4698]細胞をpMB4692で形質転換し、原栄養性コロニーをアスタキサンチン生産に関してスクリーニングする。
【0141】
もう1つのアプローチでは、β−カロテンをアスタキサンチンに変換するために、P.marcusiiからのカロテノイドケトラーゼ及びカロテノイドヒドロキシラーゼ遺伝子を上記実施例2で述べた菌株に導入することができる。P.marcusiiゲノムDNAを2個のプライマー:
【0142】
【化20】

で増幅し、生じたフラグメントをBsmBIで切断して、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで改変し、BglIIで切断する。このフラグメントを、hp4dプロモーター、XPR2ターミネーター、選択可能なLEU2遺伝子、及び大腸菌における選択と増殖のために必要な配列を含む、PmlI及びBamHI切断したpINA1269(J. Mol.Microbiol.Biotechnol.2(2000):207−216)に挿入する。生じるプラスミド「pA」は、hp4dプロモーターの制御下でP.marcusiiからのカロテンヒドロキシラーゼをコードする配列(crtZ遺伝子)(Genbankアクセッション番号:CAB56060.1)を含む。
【0143】
「pYEG1TEF」を、以下のようにXPR2ターミネーターをLIP2ターミネーターで置換することによって改変する。pINA1291をAvrIIで消化し、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで改変して、EcoRIで切断し、その小さなLIP2t含有フラグメントを、SacIIで消化し、dNTPの存在下にT4 DNAポリメラーゼで改変して、EcoRIで切断しておいた「pYEG1TEF」に連結する。生じるプラスミドを「pYEG1TEF−LIP2t」と命名する。
【0144】
カロテノイドケトラーゼ遺伝子を増幅するため、P.marcusiiゲノムDNAを2個のプライマー:
【0145】
【化21】

で増幅し、生じたフラグメントをAvrIIとHindIIIで切断して、AvrII及びHindIII切断した「pYEG1TEF−LIP2t」に挿入する。生じるプラスミド「pBt」は、構成的TEF1プロモーターの制御下でカロテンケトラーゼをコードする配列(crtW遺伝子)(Genbankアクセッション番号:CAB56059.1)を含む。
【0146】
2個の発現カセットを1個のプラスミド内で組み合わせるため、「pBt」をClaIで切断し、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで改変して、EcoRIで切断し、crtW含有フラグメントを単離して、リン酸化オリゴヌクレオチドアダプター対:
【0147】
【化22】

と混合して、NotIで切断し、NotI消化した「pA」に連結する。生じるプラスミド「pABt」は、TEF1p/crtW/LIP2tカセット及びhp4d/crtZ/XPR2tカセット並びに選択可能なLEU2遺伝子を含む。
【0148】
「pABt」は、実施例4で上述したY.lipolytica菌株(TEF1p/al−1/XPR2t;hp4d/carRP/LIP2t;GPDp/HMGRtrunc)に導入することができ、形質転換体をロイシン原栄養性に関して選択する。
【0149】
(実施例7)
スクアレンシンターゼをコードするY.lipolytica ERG9遺伝子の部分的不活性化はカロテノイド生産の上昇を生じさせる
7A.スクアレンシンターゼをコードするERG9遺伝子を部分的に不活性化するため、隣接するFOL3遺伝子を機能破壊し、フォリン酸要求性を生じさせる。次にこの菌株を、部分的に2個の遺伝子にわたる突然変異誘発したフラグメントで形質転換し、Fol形質転換体をスクアレンシンターゼ活性の低下に関してスクリーニングする。
【0150】
以下のオリゴヌクレオチド:
【0151】
【化23】

を合成し、Pfuポリメラーゼを使用して、FOL3遺伝子の大部分にわたるY.lipolyticaゲノムDNAからの2.3kbフラグメントを増幅するために使用する。生じるフラグメントをXbaIで切断し、リン酸化して、その後、KpnIで切断し、dNTPの存在下にT4 DNAポリメラーゼ(T4pol)で処理して、その後XbaIで切断しておいたpBluescriptSKに連結する。pBS−fol3と称する、生じたプラスミドを、Acc65IとEcoRIで切断し、上記のようにT4polで処理して、pMB4529からの3.4kb EcoRV−SpeI ADE1フラグメント(T4polで処理した)に連結する。
【0152】
生じるプラスミド、pBSfol3ΔadeをBsiWIとXbaIで切断して、5.5kbフラグメントを遊離させ、それを、上述したGRBPua菌株をアデニン原栄養性に形質転換するために使用する。生じたAde形質転換体をフォリン酸要求性に関して、及びPCR分析によって相同的組込みに関してスクリーニングする。
【0153】
生じるfol3ΔADE1対立遺伝子を内包する菌株を、プライマー:
【0154】
【化24】

及び鋳型としてY.lipolyticaゲノムDNAを用いて突然変異誘発性PCR増幅によって作製した3.5kb DNAフラグメントで形質転換することができる。FOL3 ORFのN末端側の4分の3及びERG9 ORFのC末端側の10分の9を含む、生じたフラグメントを、菌株を形質転換するために使用する。生じるFolAde形質転換体を、ザラゴジン酸、イトラコナゾール又はフルコナゾールなどの薬剤に対する感受性によってスクアレンシンターゼ活性の低下に関してスクリーニングする。付加的に、生じる形質転換体をカロテノイド生産の上昇に関してスクリーニングする。
【0155】
7B.代替的には、7Aで作製したPCRフラグメントをクローニングし、ERG9遺伝子の3’非翻訳領域を除去するように変化させ得る。このフラグメントによるfol3ΔADE1機能破壊体の置換は、7Aにおけるように確認できる、スクアレンシンターゼの発現低下を生じさせる[Schuldiner et al.(2005),Cell 123:507−519][Muhlrad and Parker(1999),RNA 5:1299−1307]。このアプローチはまた、ERG9 3’−UTRを機能破壊するためのADE1マーカーを用いて、FolAde菌株においても使用し得る。
【0156】
7C.さらにもう1つのアプローチでは、部分的欠損性ERG9対立遺伝子を、プラスミドシャッフリング手法[Boeke et al.(1987),Methods Enzymol.154:164−175]を用いて、及び薬剤感受性を表現型として使用して、S.cerevisiaeにおいて特定することができる。欠損遺伝子を、標準分子遺伝学手法を用いてY.lipolyticaに移入することができる。
【0157】
(実施例8)
イソプレノイド生合成競合ポリペプチドの阻害剤によるカロテノイド産生Y.lipolytica菌株の処理はカロテノイド生産の上昇を生じさせる
実施例2で生成した培養物を、スクアレンシンターゼ阻害剤、ザラゴジン酸(0.5μMのザラゴジン酸)で処理し、上述したようにβ−カロテン生産に関して観測する。
【0158】
(実施例9)
Saccharomyces cerevisiaeの含油性菌株の構築
N.crassaからのATP−クエン酸リアーゼの2個のサブユニット、Saccharomyces cerevisiaeからのAMPデアミナーゼ及びM.circinelloidesからのサイトゾルリンゴ酸酵素をコードする遺伝子を、総脂質含量を高めるためにS.cereviseae菌株において過剰発現させる。脂質生産を強化するための同様にアプローチを、同じ、相同又は機能的に類似の含油性ポリペプチドを使用して、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)などの他の宿主生物において使用できる。
【0159】
Qiagen RΝAEasyキット(Qiagen,Valencia,CA.)を、N.crassaの培養物から調製した凍結乾燥バイオマスからメッセンジャーRNAを作製するために使用する。その後、RT−PCRを、mRNA鋳型及び以下のプライマー対:
【0160】
【化25】

のいずれかを含む2つの反応において実施する。
【0161】
acl1反応から生じたフラグメントをSpeIとBamHIで切断し、acl2反応からのフラグメントをBamHIとSphIで切断して、両方を、NheIとSphIで消化しておいたYEp24に連結して、プラスミド「p12」を作製する。二方向性GAL1−10プロモーターを、プライマー:
【0162】
【化26】

を使用してS.cerevisiaeゲノムDNAから増幅し、生じた0.67kbフラグメントをBamHIで切断し、BamHI消化した「p12」にいずれかの方向で連結して、それぞれGAL1−acl1/GAL10−acl2及びGAL10−acl1 /GAL1−acl2(Genbankアクセッション番号:acl1:CAB91740.2;acl2:CAB91741.2)を含む、「p1gal2」及び「p2gal1」を作製する。
【0163】
AMPデアミナーゼをコードするS.cereviseae遺伝子及びこの遺伝子を発現するのに適したプロモーターを増幅するため、S.cereviseaeゲノムDNAを別々の反応において2個のプライマー対:
【0164】
【化27】

を用いて増幅し、AMD1反応から生じたフラグメント(2.4kb)をSacIとAvrIIで切断し、GAL7反応からのフラグメント(0.7kb)をBamHIとSphIで切断して、両方を、NheIとBamHIで消化しておいたYEp13に連結して、プラスミド「pAMPD」を作製する。このプラスミドは、ガラクトース誘導的GAL7プロモーターの制御下に、S.cerevisiae遺伝子、AMPデアミナーゼをコードするAMD1を担持する。
【0165】
メッセンジャーRNAを上述したようにM.circinelloidesの凍結乾燥バイオマスから調製し、そのmRNA鋳型を2個のプライマー:
【0166】
【化28】

と共にRT−PCR反応において使用して、生じたフラグメントをNheIとSalIで切断し、XbaIとXhoIで消化したpRS413TEF(Mumberg,D.et al.(1995)Gene,156:119−122)に連結して、構成的TEF1プロモーターの制御下にM.circinelloidesからのサイトゾルNADP依存性リンゴ酸酵素をコードする配列(E.C.1.1.1.40;mce遺伝子;Genbankアクセッション番号:AY209191)を含む、プラスミド「pTEFMAE」を作製する。
【0167】
プラスミド「p1gal2」、「pAMPD」及び「pTEFMAE」を、ウラシル(「p1gal2」)、ロイシン(「pAMPD」)及びヒスチジン(「pTEFMAE」)に対する原栄養性を回復するためS.cereviseaeの菌株に連続的に形質転換する(Guthrie and Fink Methods in Enzymology 194:1−933,1991)。生じた形質転換体を、実施例3で述べたように、ウラシル、ロイシン及びヒスチジンを含まない合成完全(SC)培地、又は2段階発酵工程のいずれかにおける振とうフラスコ試験後に総脂質含量に関して試験する。2段階工程では、ウラシル、ロイシン及びヒスチジンを欠くSC培地を含む一晩の回転管培養物2mlからの細胞1.5mlを遠心分離し、蒸留水で洗って、脂質蓄積に適する窒素制限培地20ml(30g/Lグルコース、1.5g/L酵母抽出物、0.5g/L NHCl、7g/L KHPO、5g/L NaHPO−12HO、1.5g/L MgSO−7HO、0.08g/L FeCl−6HO、0.01g/L ZnSO−7HO、0.1g/L CaCl−2HO、0.1mg/L MnSO−5HO、0.1mg/L CuSO−5HO、0.1mg/L Co(NO−6HO;pH5.5(J Am Oil Chem Soc 70:891−894(1993))に再懸濁する。
【0168】
改変S.cerevisiae菌株と対照菌株の細胞内脂質含量を、蛍光プローブ、ナイルレッドを用いて分析する(J Microbiol Meth(2004)56:331−338)。簡単に述べると、緩衝液に希釈した細胞をナイルレッドで染色し、488nmで励起して、400−700nmの波長領域内の蛍光発光スペクトルを獲得し、ナイルレッドで染色していない細胞からの対応するスペクトルと比較する。迅速推定法からの結果を確認するため、記述されているように(Appl Microbiol Biotechnol.2002 Nov;60(3):275−80)、乾燥細胞から直接トランスメチルエステル化した総脂肪酸のガスクロマトグラフィー分析によって総脂質含量を測定する。非形質転換S.cerevisiae菌株は、YPD及び脂質蓄積培地における増殖後、それぞれ6%及び10%総脂質(乾燥細胞重量ベース)を生産する。多数の含油性ポリペプチドを発現する酵母菌株は、YPD及び脂質蓄積培地における増殖後、それぞれ17%及び25%総脂質を生産する。
【0169】
(実施例10)
ゼアキサンチンの生産のための、カロテノイド産生Y.lipolytica菌株への異種カロテンヒドロキシラーゼの導入
MF578(tef−carRP tef−carB)を、SalIで切断しておいたpMB4692で形質転換した。PCR分析により、tef−crtZを含むと推定されるいくつかのUraコロニーは、YPD振とうフラスコにおいてゼアキサンチンを生産することができ、ある場合には、全てのカロテンが使い尽くされた。
【0170】
以下の表は、本書全体を通して参照される:
【0171】
【表5】

【0172】
【表6】

【0173】
【表7】

【0174】
【表8】

【0175】
【表9】

【0176】
【表10】

【0177】
【表11】

【0178】
【表12】

【0179】
【表13】

【0180】
【表14】

【0181】
【表15】

【0182】
【表16】

【0183】
【表17】

【0184】
【表18】

【0185】
【表19】

【0186】
【表20】

【0187】
【表21】

【0188】
【表22】

【0189】
【表23】

【0190】
【表24】

【0191】
【表25】

【0192】
【表26】

【0193】
【表27】

【0194】
【表28】

【0195】
【表29】

【0196】
【表30】

【0197】
【表31】

【0198】
【表32】

【0199】
【表33】

【0200】
【表34】

【0201】
【表35】

【0202】
【表36】

【0203】
【表37】

【0204】
【表38】

【0205】
【表39】

【0206】
【表40】

【0207】
【表41】

【0208】
【表42】

【0209】
【表43】

【0210】
【表44】

【0211】
【表45】

【0212】
【表46】

【0213】
【表47】

【0214】
【表48】

【0215】
【表49】

【0216】
【表50】

【0217】
【表51】

【0218】
【表52】

【0219】
【表53】

【0220】
【表54】

当業者は、ここで述べる本発明の特定実施形態の多くの等価物を認識する、又は単に常套的な実験を用いて確認することができる。本発明の範囲は上記説明に限定されることを意図されず、付属の特許請求の範囲に述べられている通りである。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1A】図1A−1Dは、ある種の一般的なカロテノイドを示す。
【図1B】図1A−1Dは、ある種の一般的なカロテノイドを示す。
【図1C】図1A−1Dは、ある種の一般的なカロテノイドを示す。
【図1D】図1A−1Dは、ある種の一般的なカロテノイドを示す。
【図2】図2は、重要なレベルのサイトゾル脂質の生産を可能にする十分なレベルのアセチル−CoA及びNADPHがどのようにして含油性生物のサイトゾル内に蓄積され得るかを示す。酵素:1、ピルビン酸デカルボキシラーゼ;2、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ;3、リンゴ酸酵素;4、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ;5、クエン酸シンターゼ;6、ATP−クエン酸リアーゼ;7、クエン酸/リンゴ酸トランスロカーゼ。
【図3A】図3Aは、典型的には真菌を含む真核生物において作動する、メバロン酸イソプレノイド生合成経路を示す。
【図3B】図3Bは、典型的には真菌を含む真核生物において作動する、メバロン酸イソプレノイド生合成経路を示す。
【図4】図4は、典型的には細菌及び植物の色素体において作動する、DXP経路としても知られるメバロン酸非依存性イソプレノイド生合成経路を示す。
【図5】図5は、イソプレノイド生合成経路における中間体、及びそれらがどのようにしてカロテノイド並びにステロール、ステロイド及びビタミンE又はビタミンKなどのビタミンのような非カロテノイド化合物を含む他の生体分子の生合成経路に供給されるかを示す。
【図6A】図6A−6Dは、様々なカロテノイド生合成経路を例示する。図6Aは、様々な環式及び非環式キサントフィルを導く分枝を強調する。
【図6B】図6A−6Dは、様々なカロテノイド生合成経路を例示する。図6Bは、アスタキサンチンを含む、二環式及び単環式カロテノイドを生成するある種のX.dendrorhous経路を示す。
【図6C】図6A−6Dは、様々なカロテノイド生合成経路を例示する。図6Cは、β−カロテンを、アスタキサンチンを含む様々な他のカロテノイドのいずれかに変換するための相互連結経路を示すす。
【図6D】図6A−6Dは、様々なカロテノイド生合成経路を例示する。図6Dは、ニューロスポレンからの環式カロテノイド及び一般的な植物及び藻類キサントフィルの可能な合成経路を示す。
【図7A】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7B】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7C】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7D】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7E】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7F】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7G】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7H】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図7I】図7A−7Cは、ある種の代表的な真菌HMG−CoAレダクターゼポリペプチドのアラインメントを示す。図からわかるように、これらのポリペプチドは触媒領域全体にわたって非常に高い同一性を示し、同時に複雑な膜貫通ドメインを有する。本発明の一部の実施形態では、例えば高活性型のポリペプチドを生産し得るように、膜貫通ドメインを切断するか又は除去する。
【図8A】図8A−8Dは、実施例において作製し、詳細に説明するプラスミドの図式的表示である。
【図8B】図8A−8Dは、実施例において作製し、詳細に説明するプラスミドの図式的表示である。
【図8C】図8A−8Dは、実施例において作製し、詳細に説明するプラスミドの図式的表示である。
【図8D】図8A−8Dは、実施例において作製し、詳細に説明するプラスミドの図式的表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.真菌が、その乾燥細胞重量の少なくとも約20%まで脂質を蓄積できるという意味で含油性であり;及び
b.該真菌が少なくとも1つのカロテノイドを生産し、該生産されたカロテノイドをその乾燥細胞重量の少なくとも約1%まで蓄積することができ、
ここで、該真菌は、カロテノイド形成性改変、含油性改変及びそれらの組合せから成る群より選択される少なくとも1つの改変を含み、そして、その少なくとも1つの改変は、該真菌の含油性を変化させるか、該真菌に含油性を付与するか、該真菌に該少なくとも1つのカロテノイドをその乾燥細胞重量の少なくとも約1%のレベルまで生産する能力を付与するか、又は該真菌に該真菌が天然では生産しない少なくとも1つのカロテノイドを生産する能力を付与する、
ことを特徴とする組換え真菌。
【請求項2】
天然に含油性である、請求項1に記載の真菌。
【請求項3】
天然に含油性ではない、請求項1に記載の真菌。
【請求項4】
前記の少なくとも1つのカロテノイドを天然では生産しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項5】
前記の少なくとも1つのカロテノイドを天然に生産する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項6】
前記真菌が少なくとも1つのカロテノイドも天然では生産しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項7】
前記真菌が少なくとも1つのカロテノイドを天然に生産する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項8】
前記真菌が単細胞として増殖する、請求項1に記載の真菌。
【請求項9】
前記真菌が酵母である、請求項1に記載の真菌。
【請求項10】
前記真菌が少なくとも1つの含油性改変を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項11】
前記少なくとも1つの含油性改変が前記真菌に含油性を付与する、請求項10に記載の真菌。
【請求項12】
前記少なくとも1つの含油性改変が前記真菌の含油性を変化させる、請求項10に記載の真菌。
【請求項13】
前記真菌が少なくとも1つのカロテノイド形成性改変をさらに含み、該カロテノイド形成性改変が、該真菌に少なくとも1つのカロテノイドをその乾燥細胞重量の少なくとも約1%のレベルまで生産する能力を付与するか、又は該真菌に該真菌が天然では生産しない少なくとも1つのカロテノイドを生産する能力を付与する、請求項10に記載の真菌。
【請求項14】
前記少なくとも1つの含油性改変が、少なくとも1つの含油性ポリペプチドの発現又は活性を上昇させる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項15】
前記少なくとも1つの含油性改変が、少なくとも1つの含油性ポリペプチドの発現又は活性を低下させる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項16】
前記少なくとも1つの含油性改変が、少なくとも1つの含油性ポリペプチドの発現又は活性を上昇させ、かつ少なくとも1つの他の含油性ポリペプチドの発現又は活性を低下させる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項17】
前記真菌が、Xanthophyllomyces dendrorhous(Phaffia rhodozyma)種である、請求項11に記載の真菌。
【請求項18】
前記真菌が、Saccharomyces cerevisae種である、請求項11に記載の真菌。
【請求項19】
前記少なくとも1つの含油性ポリペプチドが、アセチル−CoAカルボキシラーゼポリペプチド、ピルビン酸デカルボキシラーゼポリペプチド、イソクエン酸デヒドロゲナーゼポリペプチド、ATP−クエン酸リアーゼポリペプチド、リンゴ酸酵素ポリペプチド、AMPデアミナーゼポリペプチド、及びそれらの組合せから成る群より選択される、請求項14又は15に記載の真菌。
【請求項20】
前記少なくとも1つの含油性ポリペプチドが、表1から6のいずれかの中のポリペプチドから成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドである、請求項14又は15に記載の真菌。
【請求項21】
前記少なくとも1つの含油性改変が、前記真菌における少なくとも1つの異種含油性ポリペプチドの発現を含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項22】
前記少なくとも1つの含油性改変が、前記少なくとも1つの異種含油性ポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種遺伝子の発現を含む、請求項21に記載の真菌。
【請求項23】
前記少なくとも1つの異種含油性ポリペプチドが、動物ポリペプチド、哺乳動物ポリペプチド、昆虫ポリペプチド、植物ポリペプチド、真菌ポリペプチド、酵母ポリペプチド、藻類ポリペプチド、細菌ポリペプチド、藍細菌ポリペプチド、古細菌ポリペプチド、又は原生動物ポリペプチドを含む、請求項21に記載の真菌。
【請求項24】
前記少なくとも1つの異種含油性ポリペプチドが、少なくとも2つの異種含油性ポリペプチドを含む、請求項21に記載の真菌。
【請求項25】
前記少なくとも2つの異種含油性ポリペプチドが単一の供給源生物に由来する、請求項24に記載の真菌。
【請求項26】
前記少なくとも2つの異種含油性ポリペプチドが、少なくとも2つの異なる供給源生物に由来する、請求項24に記載の真菌。
【請求項27】
前記真菌が、少なくとも1つのカロテノイド形成性改変を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項28】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、前記真菌に、前記少なくとも1つのカロテノイドをその乾燥細胞重量の少なくとも約1%のレベルまで生産する能力を付与する、請求項27に記載の真菌。
【請求項29】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、前記真菌に、該真菌が天然では生産しない少なくとも1つのカロテノイドを生産する能力を付与する、請求項27に記載の真菌。
【請求項30】
前記真菌が、少なくとも1つの含油性改変をさらに含み、該含油性改変が、該真菌の含油性を変化させるか、又は該真菌に含油性を付与する、請求項27に記載の真菌。
【請求項31】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、前記少なくとも1つのカロテノイドを、前記真菌の乾燥細胞重量の少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約5%、及び少なくとも約10%から成る群より選択されるレベルまで生産する能力を該真菌に付与する、請求項27〜30のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項32】
前記少なくとも1つのカロテノイドが、アスタキサンチン、β−カロテン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン、及びそれらの組合せから成る群より選択される、請求項27〜31のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項33】
前記少なくとも1つのカロテノイドが主としてアスタキサンチンである、請求項27〜31のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項34】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、カロテノイド形成性ポリペプチドの発現又は活性を上昇させる、請求項27〜31のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項35】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、カロテノイド形成性ポリペプチドの発現又は活性を低下させる、請求項27〜31のいずれかに記載の真菌。
【請求項36】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、少なくとも1つのカロテノイド形成性ポリペプチドの発現又は活性を上昇させ、かつ少なくとも1つの他のカロテノイド形成性ポリペプチドの発現又は活性を低下させる、請求項27〜31のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項37】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、少なくとも1つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドの発現を含む、請求項34〜36のいずれか1項に記載の真菌。
【請求項38】
前記少なくとも1つのカロテノイド形成性改変が、前記少なくとも1つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種遺伝子の発現を含む、請求項37に記載の真菌。
【請求項39】
前記カロテノイド形成性ポリペプチドが、イソプレノイド生合成ポリペプチド、カロテノイド生合成ポリペプチド、イソプレノイド生合成競合ポリペプチド、及びそれらの組合せから成る群より選択される、請求項34又は35に記載の真菌。
【請求項40】
前記イソプレノイド生合成ポリペプチドが、アセトアセチル−CoAチオラーゼポリペプチド、HMG−CoAシンターゼポリペプチド、HMG−CoAレダクターゼポリペプチド、メバロン酸キナーゼポリペプチド、ホスホメバロン酸キナーゼポリペプチド、メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼポリペプチド、IPPイソメラーゼポリペプチド、FPPシンターゼポリペプチド及びGGPPシンターゼポリペプチドから成る群より選択される、請求項39に記載の真菌。
【請求項41】
前記カロテノイド生合成ポリペプチドが、フィトエンシンターゼポリペプチド、フィトエンデヒドロゲナーゼポリペプチド、リコペンシクラーゼポリペプチド、カロテノイドケトラーゼポリペプチド、カロテノイドヒドロキシラーゼポリペプチド、アスタキサンチンシンターゼポリペプチド、カロテノイドεヒドロキシラーゼポリペプチド、カロテノイドグルコシルトランスフェラーゼポリペプチド、リコペンシクラーゼ(β及びεサブユニット)ポリペプチド、及びアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼポリペプチドから成る群より選択される、請求項39に記載の真菌。
【請求項42】
前記イソプレノイド生合成競合ポリペプチドが、スクアレンシンターゼポリペプチド、プレニル二リン酸シンターゼ及びPHBポリプレニルトランスフェラーゼから成る群より選択される、請求項39に記載の真菌。
【請求項43】
前記カロテノイド形成性ポリペプチドが、表7〜25、表29及び表30のいずれか1つのうちの任意のポリペプチド、及びその組合せから成る群より選択される、請求項39に記載の真菌。
【請求項44】
前記少なくとも1つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドが、動物ポリペプチド、哺乳動物ポリペプチド、昆虫ポリペプチド、植物ポリペプチド、真菌ポリペプチド、酵母ポリペプチド、藻類ポリペプチド、細菌ポリペプチド、藍細菌ポリペプチド、古細菌ポリペプチド、又は原生動物ポリペプチドを含む、請求項37に記載の真菌。
【請求項45】
前記少なくとも1つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドが、少なくとも2つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドを含む、請求項37に記載の真菌。
【請求項46】
前記少なくとも2つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドが単一の供給源生物に由来する、請求項45に記載の真菌。
【請求項47】
前記少なくとも2つの異種カロテノイド形成性ポリペプチドが、少なくとも2つの異なる供給源生物に由来する、請求項45に記載の真菌。
【請求項48】
前記真菌が、前記生産された少なくとも1つのカロテノイドを該真菌の乾燥細胞重量の約1%以上、約2%以上、約3%以上、約5%以上、及び約10%以上から成る群より選択されるレベルまで蓄積する、請求項1〜47のいずれかに記載の真菌。
【請求項49】
前記真菌が脂質を細胞質内封入体の形態で蓄積することを特徴とする、請求項1〜48のいずれかに記載の真菌。
【請求項50】
前記少なくとも1つのカロテノイドが細胞質内油体として蓄積する、請求項49に記載の真菌。
【請求項51】
菌株がその乾燥細胞重量の1%−10%を少なくとも1つのカロテノイドとして蓄積するように、含油性改変、カロテノイド形成性改変、及びそれらの組合せから成る群より選択される1又はそれ以上の改変を含むYarrowia lipolyticaの菌株。
【請求項52】
菌株がその乾燥細胞重量の20%−50%を脂質として蓄積することをさらなる特徴とする、請求項51に記載の菌株。
【請求項53】
前記菌株が、その乾燥細胞重量の20%−50%を細胞質内油体の形態の脂質として蓄積する、請求項52に記載の菌株。
【請求項54】
前記菌株が、
a.N末端膜貫通ドメインを持たない切断型内在性HMG CoAレダクターゼポリペプチド、アセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、FPPシンターゼ及びGGPPシンターゼから成る群より選択されるポリペプチドの発現;
b.フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、リコペンシクラーゼ、カロテノイドケトラーゼ、カロテノイドヒドロキシラーゼ、及びそれらの組合せから成る群より選択される異種ポリペプチドの発現;
c.スクアレンシンターゼポリペプチド、プレニル二リン酸シンターゼポリペプチド及びPHBポリプレニルトランスフェラーゼポリペプチドから成る群より選択される内在性ポリペプチドの発現又は活性低下;
及びそれらの組合せから成る群より選択されるカロテノイド形成性改変を含む、請求項51に記載の菌株。
【請求項55】
前記菌株がその乾燥細胞重量の1−10%をβ−カロテンとして蓄積する、請求項51〜54のいずれか1項に記載の菌株。
【請求項56】
前記菌株が、
a.N末端膜貫通ドメインを持たない切断型内在性HMG CoAレダクターゼポリペプチド、アセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、FPPシンターゼ及びGGPPシンターゼから成る群より選択されるポリペプチドの発現;
b.フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、リコペンシクラーゼ、カロテノイドケトラーゼ、カロテノイドヒドロキシラーゼ、アスタキサンチンシンターゼ、カロテノイドεヒドロキシラーゼ、リコペンシクラーゼ(β及びεサブユニット)、カロテノイドグルコシルトランスフェラーゼ、及びアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ及びそれらの組合せから成る群より選択される異種ポリペプチドの発現;
c.内在性スクアレンシンターゼポリペプチドの発現又は活性低下;
及びそれらの組合せから成る群より選択されるカロテノイド形成性改変を含む、請求項51に記載の菌株。
【請求項57】
前記菌株がその乾燥細胞重量の1−10%をアスタキサンチン又はルテインとして蓄積する、請求項51〜53又は56のいずれか1項に記載の菌株。
【請求項58】
a.請求項1〜57のいずれかに記載の真菌を、カロテノイドの生産を可能にする条件下で培養する工程;
b.該生産されたカロテノイドを単離する工程
を含む、カロテノイドを生産する方法。
【請求項59】
前記単離の工程が、少なくとも1つのカロテノイド富化画分を得るために培養培地を分画することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記培養の工程が、細胞質内油体における前記カロテノイドの蓄積を可能にする条件下で前記真菌を培養することを含み、かつ前記単離の工程が、該細胞質内油体に由来する油を単離することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記カロテノイドが、アスタキサンチン、β−カロテン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン、及びそれらの組合せから成る群より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記カロテノイドがアスタキサンチンを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
a.請求項1〜57のいずれかに記載の真菌を、カロテノイドの生産を可能にする条件下で培養する工程;
b.該カロテノイドを単離する工程;及び
c.該単離したカロテノイドを1又はそれ以上の他の食品又は飼料添加物成分と組み合わせる工程
を含む、カロテノイドを含有する食品又は飼料添加物を製造する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2008−537878(P2008−537878A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502155(P2008−502155)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/010271
【国際公開番号】WO2006/102342
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507310329)マイクロビア, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】