説明

含硫黄多分岐化合物及び不飽和基含有多分岐化合物

【課題】光学材料等に好適な、含硫黄多分岐化合物及び不飽和基含有多分岐化合物を提供する。
【解決手段】(a)分子中にx個(xは2以上)のハロゲン化アルキル基を有する化合物と、(b)分子中にy個(yは2以上、但しxが2のときyは3以上)のチオール基を有する化合物との反応により得られる含硫黄多分岐化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含硫黄多分岐化合物、不飽和基含有多分岐化合物、並びにそれを含有する硬化性組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂とは異なり、加熱処理過程を必要としないことと、有機溶剤の使用を抑えることが可能なことから、省エネルギー、環境保全、生産性の向上が期待できる。従来のUV硬化性樹脂は、塗料、印刷用インキ、接着剤、観光性ドライフィルム等に応用されてきた。近年、さらにその用途の拡大が期待され、半導体、光ファイバー用コート材、光導波路等、エレクトロニクス分野の応用が期待されている。
【0003】
その中で、アクリル酸エステル構造を有するウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリル系(ラジカル重合系)樹脂が、UV硬化性樹脂として最も多量に用いられている。これらは、光硬化性や硬化物性に優れ、原料の供給が安定し、価格も比較的低価格である。しかし、問題点として、高い粘度、硬化時の体積収縮、酸素による硬化阻害を受けやすいことが挙げられる。
【0004】
一方、高分子材料の屈折率を高めるには、分極率を高めることが一般的な手法である。分極率を高める要素として高分子鎖中にベンゼン環、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子等を導入する手法が検討されている。しかし、分極率を高めると高分子鎖の配向を乱すために複屈折率が高くなる。
そこで、これらの課題を解決する新しい機能性材料の開発が求められている。
【0005】
ところで、多分岐構造を有する多分岐化合物は同一直鎖状高分子に比べ溶融粘度が小さく、有機溶剤に対し高い溶解性を示し、非晶性であることが知られている。また、一段階で容易に合成可能なことから工業的な見地からも大変有用である。さらに、末端反応性基を多く有することから機能化が可能である(非特許文献1)。
【0006】
本発明者らは、オキセタン化合物とトリカルボン酸との反応による多分岐ポリエステルの合成を行い、この多分岐ポリエステルのオキセタニル基と、メタクリル酸を反応させて得られた不飽和基含有多分岐化合物は活性エネルギー線照射により速やかに硬化することを報告している。さらに多塩基酸無水物を反応させて得られた不飽和基含有多分岐化合物は、アルカリ可溶性であることを報告している(特許文献1)。
【非特許文献1】B.Voit,J.Polym.Sci.,PartA.,38,2505(2000)
【特許文献1】特開2002−3585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光学材料等に好適な、含硫黄多分岐化合物、不飽和基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の含硫黄多分岐化合物、不飽和基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及びその硬化物等が提供される。
1.(a)分子中にx個(xは2以上)のハロゲン化アルキル基を有する化合物と、(b)分子中にy個(yは2以上、但しxが2のときyは3以上)のチオール基を有する化合物との反応により得られる含硫黄多分岐化合物。
2.下記式(1)で示される構造単位を有する1に記載の含硫黄多分岐化合物。
【化6】

(式中、Aは前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aは前記チオール基を有する化合物(b)の残基である。nは1以上の整数である。)
3.末端基が水素原子、又は下記式(2)〜(4)で示される基の少なくとも一種である2に記載の含硫黄多分岐化合物。
【化7】

(式中、Aは前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aは前記チオール基を有する化合物(b)の残基であり、Xはハロゲン原子である。)
4.前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)が、下記式(5)で示される化合物である1〜3のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物。
【化8】

(式中、X及びXはそれぞれハロゲン原子であり、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基であり、Arは置換又は無置換のアリーレン基である。)
5.前記チオール基を有する化合物(b)が、1,3,5−トリチオシアヌル酸である1〜4のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物。
6.上記1〜5のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物に、さらに(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸を反応させて得られる不飽和基含有多分岐化合物。
7.末端基の少なくとも1つが下記式(6)で示される基である6記載の不飽和基含有多分岐化合物。
【化9】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はシアノ基である。)
8.末端基の少なくとも1つが下記式(7)〜(9)で示される基である7記載の不飽和基含有多分岐化合物。
【化10】

(式中、Aはチオール基を有する化合物(b)の残基を表し、Aはハロゲン化アルキル基を有する化合物の残基を表し、Wは前記式(6)で示される基を表わす。)
9.(A)上記6〜8のいずれか記載の不飽和基含有多分岐化合物、及び(B)重合開始剤を含有する硬化性組成物。
10.さらに(C)熱硬化性成分を含有する9に記載の硬化性組成物。
11.さらに希釈剤を含有する9又は10に記載の硬化性組成物。
12.上記9〜11のいずれか記載の硬化性組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学材料等に好適な含硫黄多分岐化合物、不飽和基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の含硫黄多分岐化合物は、(a)分子中にx個(xは2以上)のハロゲン化アルキル基を有する化合物と、(b)分子中にy個(yは2以上、但しxが2のときyは3以上)のチオール基を有する化合物との反応により得られる含硫黄多分岐化合物との反応により得られる。
本発明の含硫黄多分岐化合物において、好ましくは、xは2〜10である。好ましくは、yは2〜10である。
【0011】
本発明の含硫黄多分岐化合物は、多分岐構造のため、種々の溶媒に対する溶解性が高く、また溶融粘度が低い。
【0012】
この含硫黄多分岐化合物は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低屈折率等)、熱的特性、機械的特性等が良好であり、かつ、成形加工性、生産性が良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VT等)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、フレネルレンズ等の各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、高磁気ディスク基板等の光記憶媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
【0013】
本発明の不飽和基含有多分岐化合物は、上述した含硫黄多分岐化合物に、さらに(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸を反応させて得られる。
【0014】
この不飽和基含有多分岐化合物は、末端に不飽和二重結合を持つ構造を有する。1分子当たりの重合性基の含有量が多いため、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、不飽和二重結合の存在により熱ラジカルによる加熱硬化が可能である。
【0015】
また、多分岐構造のため、同じ分子量の線状ポリマーと比較すると、分子同士の絡み合いがなくなるため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できる。
【0016】
本発明の不飽和基含有多分岐化合物は、前記したような優れた特性を有するため、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。得られた硬化物は種々の分野に適用することができる。例えば、プリント配線板のソルダーレジスト層や層間絶縁層の形成、光導波路、光学レンズ、光学用封止材、光学用接着剤、液晶表示装置等の電気・電子分野、光学用途に有利に適用することができる。
【0017】
上述したように本発明の含硫黄多分岐化合物は、ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)と、チオール基を有する化合物(b)との反応により製造することができる。
例えば、化合物(a)としてジハロゲン化アルキル化合物を用い、化合物(b)としてトリチオールを用いた場合、下記式(1)で示されるような構造単位を有する含硫黄多分岐化合物が得られる。
【化11】

【0018】
式中、Aはハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aはトリチオール化合物(b)の残基である。
nは1以上の整数であり、その上限は所望の分子量に応じて適宜制御できる。
【0019】
尚、ハロゲン化アルキル化合物(a)とチオール化合物(b)の双方に三官能以上の化合物を使用すると、さらに分岐の状態は複雑になる。
【0020】
式(1)において、末端基はチオール基、又はハロゲン化アルキル基となる。
具体的には、末端基は水素原子、又は下記式(2)〜(4)で示される基の少なくとも一種である。
【化12】

(式中、Aはハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aはチオール基を有する化合物(b)の残基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0021】
反応は、反応促進剤の存在下、ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)と、チオール基を有する化合物(b)を混合し、重縮合反応させることにより実施できる。
【0022】
反応において、ハロゲン化アルキル化合物(a)とチオール化合物(b)との割合(反応混合物中の仕込み割合)は、それぞれの官能基(化合物(a)はハロゲン化アルキル基、化合物(b)はチオール基)のモル比で0.1≦(b)/(a)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.2≦(b)/(a)≦5の範囲である。
【0023】
官能基比のモルバランスがくずれると、所望の分子量の多分岐化合物が得られないか、架橋反応が進行しゲル化する恐れがある。
【0024】
反応時間や反応温度等の反応条件を変えることにより、また、前記した当量比の範囲内において配合比を制御することにより、生成する含硫黄多分岐化合物の分子量及び分岐状態をある程度制御することが可能となる。
【0025】
このようにして、分子量の大きさに応じて液状から固形状までの含硫黄多分岐化合物を合成することができる。
含硫黄多分岐化合物の好適な数平均分子量は、500〜500,000であり、より好ましくは1,000〜10,000である。
【0026】
本発明に用いられるハロゲン化アルキル化合物(a)としては、分子中にハロゲン化アルキル基を2以上有していればよく、その構造は特に制限はない。
ハロゲン化アルキル基としては、例えば、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化プロピル基等が好ましい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられるが、塩素原子が好ましい。
【0027】
ハロゲン化アルキル化合物(a)の具体例として、例えば、下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【化13】

(式中、X及びXはそれぞれハロゲン原子であり、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基であり、Arは置換又は無置換のアリーレン基である。)
【0028】
及びXが示すハロゲン原子の例は、上述したものと同様である。
及びRが示す炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
Arは、置換又は無置換のアリーレン基であり、具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
アリーレン基の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基(ヨウ素、フッ素、塩素、臭素)等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるチオール基を有する化合物(b)のうち、1分子中に2つ以上のチオール基を有する化合物としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスメルカプトアセテート、エチレングリコールビスメルカプトアセテート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)等が挙げられる。
【0030】
また本発明では、ジチオール類として、下記式(10)で示されるジチオールを用いることができる。
【化14】

【0031】
式(10)中、Rは、−O−、−S−、−CH−、−NH−、−SO−、−CH(CH)−、−C(CH−又は−C(CF−を表わす。
【0032】
1分子中に3個のメルカプト基を有する化合物としては、例えば、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスメルカプトアセテート等が挙げられる。
【0033】
前記1分子中に4個のメルカプト基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキスメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキスメルカプトアセテート等が挙げられる。
【0034】
本発明では、1分子中に3個のメルカプト基を有する化合物が好ましく、特に、1,3,5−トリチオシアヌル酸が好ましい。
【0035】
前記含硫黄多分岐化合物及び後述する不飽和基含有多分岐化合物の合成に使用する反応促進剤としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体又はホスホニウムイリドの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等が挙げられる。
【0037】
三級アミン塩としては、例えば、サンアプロ(株)製のU−CATシリーズ等が挙げられる。
【0038】
四級オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0039】
特に好ましいものは、アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。
アンモニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)等のテトラn−ブチルアンモニウムハライドや、テトラn−ブチルアンモニウムアセテート(TBAAc)等が挙げられる。
【0040】
ホスホニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、テトラn−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBBI)等のテトラn−ブチルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)等のテトラフェニルホスホニウムハライドや、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ETPPB)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(ETPPAc)等が挙げられる。
【0041】
三級ホスフィンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、又はアリール基を有する、三価の有機リン化合物であればよい。
【0042】
具体例としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0043】
さらに、三級アミン又は三級ホスフィンと、カルボン酸又は酸性の強いフェノールとの付加反応により形成される四級オニウム塩も反応促進剤として使用可能である。
【0044】
これらは、反応系に添加する前に四級塩を形成するか、又はそれぞれを別に添加して反応系中で四級塩形成を行なわせるいずれの方法でもよい。
【0045】
具体的には、トリブチルアミンと酢酸より得られるトリブチルアミン酢酸塩、トリフェニルホスフィンと酢酸より形成されるトリフェニルホスフィン酢酸塩等が挙げられる。
【0046】
また、クラウンエーテル錯体の具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等のクラウンエーテル類と、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属塩との錯体が挙げられる。
【0047】
ホスホニウムイリドとしては、ホスホニウム塩と塩基との反応により得られる化合物であれば公知のものが使用可能であるが、取扱いの容易さから安定性の高いものの方が好ましい。
【0048】
具体的な例としては、(ホルミルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ピバロイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メトキシベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メチルベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−ニトロベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ナフトイル)トリフェニルホスフィン、(メトキシカルボニル)トリフェニルホスフィン、(ジアセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルシアノ)トリフェニルホスフィン、(ジシアノメチレン)トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0049】
これら反応促進剤の使用量は、ハロゲン化アルキル化合物(a)のハロゲン化アルキル基1モルに対して0.5〜2.0モルであることが望ましく、さらに好ましくは0.6〜1.8モルであり、より好ましくは0.8〜1.5モルである。
【0050】
反応促進剤の使用量がハロゲン化アルキル基に対して0.5モルよりも少ない割合の場合、実用的な速度で反応が進行し難く、一方、2モルを超えて多量に存在しても顕著な反応促進効果は見られないため、経済性の点で好ましくない。
【0051】
含硫黄多分岐化合物の合成の反応温度としては、−30〜60℃の範囲が望ましく、さらに好ましくは−10〜40℃である。
【0052】
反応温度が−10℃よりも低い場合には、反応が進行し難くなるので好ましくない。
一方、60℃を超えた場合には、反応が制御できずゲル化しやすくなるので好ましくない。
【0053】
反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよいが、約30分〜24時間が好ましく、さらに好ましくは約40分〜10時間で行うとよい。
【0054】
前記反応は無溶剤下でも進行するが、反応時の撹拌効率を改善するために希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
用いる希釈剤としては反応温度を維持できるものであれば特に限定されないが、好ましくは原料を溶解するものがよい。
また、合成時の希釈剤として有機溶媒を用いた場合は、減圧蒸留等の公知の方法にて溶媒を除去してもよい。
さらには、製造時に後述する反応性希釈剤(D)の存在下で行なうことも可能である。
【0055】
有機溶剤は、反応に悪影響を与えず、反応温度を維持できるものであれば公知のものが使用できる。
具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;トルエン、キシレン等の炭化水素類が挙げられる。
【0056】
次に、不飽和基含有多分岐化合物及びその製造方法について説明する。
【0057】
不飽和基含有多分岐化合物は、上記の含硫黄多分岐化合物のハロゲン化アルキル基及び/又はチオール基に、さらに(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸無水物及び(メタ)アクリル酸を、纏めて(メタ)アクリル酸化合物という。)を反応させて得ることができる。
尚、本明細書中において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタアクリル酸を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0058】
不飽和基含有多分岐化合物は、チオール基とメタクリル酸無水物、またはハロゲン化アルキル基と(メタ)アクリル酸との付加反応にとの付加反応によって合成される。
【0059】
不飽和基含有多分岐化合物の製造には、上述した含硫黄多分岐化合物を用いることができる。従って、不飽和基含有多分岐化合物は、例えば、上記式(1)で示される構造単位を有し、さらに、末端基の少なくとも1つが下記式(6)で示される基である。
【化15】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はシアノ基である。)
【0060】
具体的には、下記式(7)〜(9)で示される基が挙げられる。
【化16】

(式中、Aはチオール基を有する化合物(b)の残基を表し、Aはハロゲン化アルキル基を有する化合物の残基を表し、Wは前記式(6)で示される基を表わす。)
【0061】
不飽和基含多分岐化合物の好適な数平均分子量は、500〜500,000であり、より好ましくは1,000〜20,000である。
【0062】
(メタ)アクリル酸化合物と、含硫黄多分岐化合物との反応は、例えば約−50〜150℃、好ましくは0〜50℃の温度範囲で行なうことができる。
反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよい。
【0063】
(メタ)アクリル酸化合物の使用量は、前記含硫黄多分岐化合物中のヒドロキシメチル基とチオール基1化学当量に対して、0.1〜3.0モルが好適である。
0.1モルより少ないと導入される(メタ)アクリレート基の量が少なくなり、好ましくない。一方、3.0モルを越えて多量に配合すると、未反応の多塩基酸無水物が樹脂中に残存し、耐久性、電気特性等の特性を低下させる恐れがあるため好ましくない。
【0064】
反応の際、塩基を用いることが好ましく、塩基としては、三級アミン化合物、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウム等の金属酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物が使用可能である。特に、DBUが好ましい。
【0065】
その使用量は(メタ)アクリル酸化合物1化学等量に対して好ましくは0.3〜3モルの範囲であり、さらに好ましくは1〜2モルである。
【0066】
前記反応は、有機溶媒の存在下、又は無溶媒下でも進行するが、反応時撹拌効率を改善するため反応性希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
【0067】
また、前記反応においては、不飽和二重結合の重合によるゲル化を防止する目的で、空気を吹き込んだり、重合禁止剤を加えてもよい。
【0068】
重合禁止剤の例としては、メトキノン、ハイドロキノン、トルキノン、メトキシフェノール、フェノチアジン、トリフェニルアンチモン、塩化銅等が挙げられる。
【0069】
本発明の不飽和基含有多分岐化合物の1種又は2種以上の混合物に、重合開始剤(B)として光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を混合することにより、光硬化性及び/又は熱硬化性の組成物が得られる。この組成物は、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、又はさらに加熱によって硬化し、基材との密着性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化物を形成することができる。
【0070】
この光硬化性・熱硬化性組成物は、その塗膜を露光・現像することで画像形成が可能であり、さらに現像後加熱することで、硬化収縮を生じることなく、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、耐クラック性等の諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。
【0071】
さらに前記のような硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物に、反応性希釈剤(D)として後述するような反応性モノマーを添加することにより、光硬化性を向上させることができる。
【0072】
前記重合開始剤(B)として用いられる光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
これらの光ラジカル重合開始剤の配合量は、不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。
【0074】
光ラジカル重合開始剤の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、又は照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤を添加しても、硬化性に変化は無く、経済的に好ましくない。
【0075】
本発明の硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物においては、活性エネルギー線による硬化を促進させるために、硬化促進剤及び/又は増感剤を上記のような光ラジカル重合開始剤と併用してもよい。
【0076】
硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等の三級アミン類;β−チオジグリコール等のチオエーテル類等が挙げられる。
【0077】
増感剤としては、(ケト)クマリン、チオキサンテン等の増感色素類;及びシアニン、ローダミン、サフラニン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等の色素のアルキルホウ酸塩等が挙げられる。
【0078】
これらの硬化促進剤及び/又は増感剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その使用量は、不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。
【0079】
前記重合開始剤(B)として用いられる熱ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレイト、4,4’−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2’−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられ、より好ましくはノンシアン、ノンハロゲンタイプの1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が挙げられる。
【0080】
熱ラジカル重合開始剤は、不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の割合で用いられる。
【0081】
また、熱ラジカル重合開始剤として有機過酸化物のうち硬化速度の小さいものを用いる場合には、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチル−p−トルイジン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の三級アミン、又はナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の金属石鹸を促進剤として用いることができる。
【0082】
本発明の硬化性組成物は熱硬化性成分(C)を含むことができる。熱硬化性成分(C)としては、1分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン基及び/又はオキセタニル基を有する多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)を好適に用いることができる。
【0083】
多官能エポキシ化合物(C−1)としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドを酸触媒下で反応させて得られるノボラック類に、エピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1027、EPPN−201、BREN−S;ダウ・ケミカル社製のDEN−431、DEN−438;大日本インキ化学工業(株)製のN−730、N−770、N−865、N−665、N−673、N−695、VH−4150等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール、ビスフェノール、ビスフェノール、テトラブロモビスフェノール等のビスフェノール類にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、油化シェルエポキシ(株)製のエピコート1004、エピコート1002;ダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337等)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502等)、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェノールジグリシジルエーテル、その他脂環式エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂、カルド型エポキシ樹脂、カリックスアレーン型エポキシ樹脂等公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
多官能オキセタン化合物(C−2)の代表例としては、分子中に2つのオキセタン環を有するビスオキセタン類や、分子中に3つ以上のオキセタン環を有すトリスオキセタン類等が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
前記多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)の配合量は、不飽和基含有多分岐化合物100質量部に対して好ましくは5〜100質量部の割合が適当であり、より好ましくは15〜60質量部である。
【0086】
さらに、熱硬化反応を促進するために、三級アミン類、四級オニウム塩類、三級ホスフィン類、クラウンエーテル錯体等や、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド等の公知の硬化促進剤を少量併用することができる。硬化促進剤は、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上混合して用いてもよい。その他、ホスホニウムイリド等、公知の硬化促進剤を使用できる。
【0087】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0088】
市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ等が挙げられる。
経時安定性向上を図るものとしては、旭チバ(株)製のノバキュアHX−3721、HX−3748、HX−3741、HX−3088、HX−3722、HX−3742、HX−3921HP、HX−3941HP、HX−3613等も挙げられる。
【0089】
硬化促進剤の使用量は、前記多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)のオキシラン基及び/又はオキセタニル基1モルに対して好ましくは0.1〜25モル%の範囲であり、より好ましくは0.5〜20モル%であり、より好ましくは1〜15モル%である。
【0090】
硬化促進剤の使用量が、オキシラン基/オキセタニル基に対して0.1モルよりも少ないと実用的な速度で硬化反応が進行し難い恐れがあり、一方、25モル%よりも多量に存在しても顕著な反応促進硬化は見られないので、経済性の点で好ましくない。
【0091】
本発明の硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物には、反応性希釈剤(D)を合成時又は合成後に加えることができる。
【0092】
反応性希釈剤(D)としては、前記した有機溶剤の他、硬化反応に関与することができる重合性基を有する化合物を好適に用いることができ、単官能(メタ)アクリレート類及び/又は多官能(メタ)アクリレート類等の公知の反応性希釈剤が使用可能である。
【0093】
具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び二塩基酸無水物と1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有するアルコールとの反応物等を挙げることができる。
反応性希釈剤(D)は、単独で又は2種以上の混合物で用いられ、その使用量には制限が無い。
【0094】
本発明の硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物には、さらに必要に応じて硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等の公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック等の公知慣用の着色顔料、消泡剤、密着付与剤、レベリング剤等の各種添加剤を加えてもよい。
【0095】
尚、前記硬化性組成物として、不飽和基含有多分岐化合物の代わり又は共に、本発明の含硫黄多分岐化合物を用いることもできる。
【0096】
前記硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物を硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が適当である。また、レーザー光線等も露光用活性光源として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線中性子線等も利用可能である。
【0097】
本発明の光学材料は、上記の硬化性組成物を硬化させた硬化物からなる。屈折率は1.5〜1.9が好ましい。
【0098】
上記の硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物は、希釈剤の添加により粘度を調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、及びスピンコーティング法等の塗布方法により塗布し、例えば約60〜120℃の温度で仮乾燥することで組成物中に含まれる有機溶剤を除去し、塗膜を形成できる。
【0099】
ドライフィルムの形態にある場合には、そのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線を照射することにより、速やかに硬化する。
【0100】
また、光硬化性成分として不飽和基含有多分岐化合物を含有する組成物の場合、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を有機溶剤、又はアルカリ水溶液により現像してパターンを形成できる。
【0101】
さらに、熱硬化性成分を含有する光硬化性・熱硬化性組成物の場合、上記露光・現像後に約100〜200℃の温度で加熱して熱硬化させることにより、密着性、機械的強度、はんだ耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐電蝕性等の諸特性に優れた硬化皮膜が形成できる。また、熱硬化前又は後にポストUV硬化を行なうことにより、諸特性をさらに向上させることができる。
【0102】
前記有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加してもよい。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド等の水溶液が使用できる。現像液中のアルカリの濃度は概ね0.1〜5wt%であればよい。
現像方式はディップ現像、パドル現像、スプレー現像等の公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでない。
【0104】
[含硫黄多分岐化合物]
実施例1
下記の反応により、含硫黄多分岐化合物(HBP−TE)を合成した。
【化17】

【0105】
300mLのナスフラスコに、1,3,5−トリチオシアヌル酸(TCA)3.554g(20mmol)、溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)100mL、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)9.12g(60mmol)を加えた。この溶液を冷却しながら、α,α’−ジクロロ−パラキシレン(DCPX)5.24g(30mmol)のNMP溶液(100mL)を徐々に滴下した。その後、反応温度を0℃とし、70分間反応させた。
反応終了後、反応溶液を1Nの塩酸1Lに滴下し沈殿物を回収した。この沈殿物をテトラヒドロフラン(THF)中で撹拌して、THF可溶部/不溶部に分離した。それぞれをろ別後、可溶部をTHF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥し、含硫黄多分岐化合物を得た(収率:65%)。
【0106】
得られた含硫黄多分岐化合物の構造を、H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。
図1に含硫黄多分岐化合物のIRスペクトルを、図2にH−NMRスペクトルを示す。
また、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、数平均分子量は3650、分子量分布は6.26であった。
【0107】
含硫黄多分岐化合物のH−NMRの分析結果を以下に示す。
H−NMR(600MHz、THF−d
δ(ppm):4.33(br,3.7H,H),4.59(br,0.75H,He),7.01(br,0.53H,H),7.29(br,4.0H,H)10.9(s,0.22H,H
【0108】
参考例
含硫黄多分岐化合物(HBP−TE)の合成にあたり、反応濃度、使用溶媒等を変更して、ゲルの発生や収率を調査した結果を表1に示す。合成は以下のように行った。
10mLナスフラスコに、TCA 0.0886g(0.5mmol)、溶媒(全使用量の1/2)、DBU 0.228g(1.5mmol)を加え、溶液を冷却しながら、DCPX 0.131g(0.75mmol)の溶液(全使用量の1/2)を徐々に滴下した。その後、表1に記載の反応溶媒、反応温度、反応濃度で反応を行った。
尚、溶媒の全使用量は、TCAとDCPXの合計濃度(mol/L)が表1の値になるように調整した。
反応終了後、反応溶液を1Nの塩酸300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHF中で撹拌してTHF可溶部/不溶部に分離した。それぞれをろ別後、可溶部をTHF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥した。
反応条件及び結果を表1及び表2に示す。尚、実施例1は試験No.20に基づいて実施した。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
含硫黄多分岐化合物(HBP−TE)の各溶剤への溶解性を評価した。結果を表2に示す。尚、評価方法は以下のとおりである。
表3に示す各溶剤2mL(室温)に、HBP−TEの粉体2mgを添加し、粉体が溶解するか目視にて観察した。
【0112】
【表3】

表中、○はHBP−TEが溶解し、粉体が消滅したものであり、−は全く溶解しなかったものである。
【0113】
HBP−TEはNMP、THF、ジオキサン、DMF(分子量によっては不溶)に可溶で、NMPに対して優れた溶解性を示す。尚、分子量が大きくなるとNMP以外の溶媒には不溶となることがあった。
【0114】
実施例2
トリチオシアヌル酸(TCA)とα,α’−ジクロロ−パラキシレン(DCPX)の仕込み比を表3に示すように変更して、含硫黄多分岐化合物(HBP−TE)を合成した。
10mLナスフラスコに、TCA 0.0710g(0.4mmol)、NMP2mL、DBU 0.183g(1.2mmol)を加え、溶液を冷却しながら、DCPXのNMP溶液(2mL)を徐々に滴下した。その後、0℃、70分間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1Nの塩酸300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHFに溶解させ、THF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥した。
結果を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
表4のプロトン比は、含硫黄多分岐化合物(HBP−TE)の全プロトンに対するクロロメチル由来のプロトン比であり、HBP−TEの総プロトン(積分値)を100としたときのプロトン(クロロメチル基由来)の積分比より算出した。その結果、DCPXの仕込み量の増加と共にクロロメチル基の増加が確認されたことから、相対的に、末端のSHが減少したと考えられる。
【0117】
[不飽和基含有多分岐化合物]
以下の実施例3〜6では、図3に示す反応経路によって、不飽和基含有多分岐化合物(HBPTE−MA)を合成した。
実施例3
10mLナスフラスコに、実施例1で合成したHBP−TE 0.2g、NMP 2mL、メタクリル酸(MA) 0.173g(2mmol)、DBU 0.305g(2mmol)を加え、30℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHFに溶解させ、THF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥し、HBPTE−MAを得た(収率:2%)。
【0118】
実施例4
反応時間を1時間とした他は、実施例3と同様にした。HBPTE−MAの収率は1%であった。
【0119】
実施例5
10mLナスフラスコに、TCA 0.0710g(0.4mmol)、NMP 2mL、DBU 0.183g(1.2mmol)を加え、溶液を冷却しながら、DCPX0.1048g(0.6mmol)のNMP溶液0.5mLを徐々に滴下した。その後、0℃で70分間反応を行った。
反応後、反応溶液にNMP 1mL、MA 0.173g(2mmol)、DBU 0.305g(2mmol)の混合溶液を加え、30℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸 300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHFに溶解させ、THF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥し、HBPTE−MAを得た(収率:35%)。GPCによる測定結果(ポリスチレン換算)から、このHBPTE−MAのMnは7850、PDIは10.23であった。
【0120】
実施例6
10mLナスフラスコに、TCA 0.0710g(0.4mmol)、NMP 2mL、DBU 0.183g(1.2mmol)を加え、溶液を冷却しながら、DCPX0.1048g(0.6mmol)のNMP溶液0.5mLを徐々に滴下した。その後、0℃で70分間反応を行った。
反応後、反応溶液にNMP 1mL、無水メタクリル酸(MAA)0.173g(2mmol)及びDBU 0.305g(2mmol)の混合溶液を加え、30℃で6時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を1Nの塩酸300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHFに溶解させ、THF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥し、HBPTE−MAを得た(収率:88%)。GPCによる測定結果(ポリスチレン換算)から、このHBPTE−MAのMnは3470、PDIは6.24であった。
【0121】
合成例1
10mLナスフラスコに、TCA 0.0710g(0.4mmol)、NMP 2mL、DBU 0.183g(1.2mmol)を加え、溶液を冷却しながら、DCPX0.1048g(0.6mmol)のNMP溶液0.5mLを徐々に滴下した。その後、0℃、70分間反応を行った。
反応後、反応溶液にNMP 1mL、DCPX 0.173g(2mmol)、DBU 0.305g(2mmol)の混合溶液を加え、30℃で6時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を1N塩酸 300mLに滴下し再沈殿を行い、沈殿物をTHFに溶解させ、THF/n−ヘキサン系にてさらに再沈殿を行った。得られた沈殿物を24時間減圧乾燥し、末端がアルキルハライド化された溶媒可溶のハイパーブランチポリマーを収率5%で得た。しかし、生成したHBPTEの分子間反応が進行したため、THF不溶のゲル化したポリマー成分の収率が78%となった。
【0122】
合成例2
溶液濃度を0.1mol/Lとした他は、合成例1と同様にした。末端がアルキルハライド化された溶媒可溶ハイパーブランチポリマーの収率は5%であった。しかし、生成したHBPTEの分子間反応が進行したため、THF不溶のゲル化したポリマー成分の収率が61%となった。
【0123】
実施例3〜6の結果から、無水メタクリル酸(MAA)を用いることで、HBPTE−MAの収率を向上できることが確認できた。これは、MAAの無水酢酸部位が優先的に−SH基に反応し、Michael付加反応が抑制されたためと考えられる。
図4に実施例6で合成したHBPTE−MAのH−NMRスペクトル(b)を示す。尚、比較として、実施例1で合成したHBP−TEのH−NMRスペクトル(a)に示す。図5にHBPTE−MAのIRスペクトルを示す。
【0124】
不飽和基含有多分岐化合物(HBPTE−MA)の各溶剤への溶解性を評価した。結果を表5に示す。尚、評価方法は以下のとおりである。
表5に示す各溶剤2mL(室温)に、HBPTE−MAの粉体2mgを添加し、粉体が溶解するか目視にて観察した。
【0125】
【表5】

表中、○はHBP−MAが溶解し、粉体が消失したものであり、−は全く溶解しなかったものである。
【0126】
HBPTE−MAは1,4−ジオキサン、THFに可溶で、NMPに対してのみ非常に高い溶解性を示した。
【0127】
[硬化性組成物]
実施例7
実施例6で合成したHBPTE−MAに、光ラジカル開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Irgacure907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))を3wt%添加し、少量のTHFに溶解させた。このサンプルをKBr板に塗布し、フィルムを形成させた。これに光源として250W超高圧水銀灯(5.5mW/cm、250nm)を用いて約15分間光照射を行い、光ラジカル重合させた。その結果、メタクリロイル基のC=Cに起因する1630cm−1の吸収ピークが光照射時間の経過に伴い減少したことが確認された、光照射15分後のメタクリロイル基の転化率は96%であった。
図6にメタクリロイル基の転化率の結果を示す。尚、測定装置はThermo ELECTRON(株)製のNICOLET 380 FT−IRである。
【0128】
[屈折率の測定]
上記各例で合成したHBPTE、HBPTE−MA及び硬化後のHBPTE−MAの屈折率測定を行った。具体的に、試料2mgを1mlのTHFに溶解させ、シリコンウェハー上に塗布し、膜厚約1000Åの薄膜を作製した。薄膜を室温で減圧下24時間乾燥した後、エリプソメーター(λ=632.8nm)を用いて屈折率の測定を行った。測定は1つのサンプルに対してウェハーを3枚作製し、それぞれ16回測定を行ったものの平均値を屈折率とした。結果を表6に示す。
【0129】
【表6】

【0130】
各試料は1.64〜1.72の非常に高い屈折率を有していた。これは、HBPTE及びHBPTE−MAが、主鎖骨格に分子屈折及び原子屈折の大きいベンゼン環と硫黄原子を有しているためであると考えられる。また、HBPTEのほうがHBPTE−MAよりも高い屈折率を示したのは、メタクリロイル基の導入により硫黄原子の割合が減少したためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の含硫黄多分岐化合物は、高屈折率で複屈折率が少ない光学材料として使用できる。
本発明の不飽和基含有多分岐化合物は、光硬化性に優れた樹脂であると共にアルカリ水溶液、又は有機溶剤に対して優れた溶解性を示し、溶剤現像型、又はアルカリ現像型の感光性樹脂として有用である。
【0132】
これらの不飽和基含有多分岐化合物は加熱による硬化も可能であり、得られる硬化物は、各種基材に対する密着性に優れると共に、強度、靭性等の機械的特性や、耐熱性、熱安定性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られるため、接着剤、コーティング剤、プリント配線板の製造時に使用されるソルダーレジスト、エッチングレジスト、ビルドアップ基板用層間絶縁材、メッキレジスト、ドライフィルム、さらに、光導波路、光学レンズ、光学用封止材、光学用接着剤、光学フィルム、光ファイバー、光ディスク、液晶表示装置等の光学材料として、広範囲に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】実施例1で合成した含硫黄多分岐化合物のIRスペクトルである。
【図2】実施例1で合成した含硫黄多分岐化合物のH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例3〜6、合成例1,2の反応経路を示す図である。
【図4】実施例6で合成した不飽和基含有多分岐化合物のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例6で合成した不飽和基含有多分岐化合物のIRスペクトルである。
【図6】実施例7の硬化性組成物の光照射に伴うメタクリロイル基の転化率と光照射時間の関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子中にx個(xは2以上)のハロゲン化アルキル基を有する化合物と、(b)分子中にy個(yは2以上、但しxが2のときyは3以上)のチオール基を有する化合物との反応により得られる含硫黄多分岐化合物。
【請求項2】
下記式(1)で示される構造単位を有する請求項1に記載の含硫黄多分岐化合物。
【化1】

(式中、Aは前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aは前記チオール基を有する化合物(b)の残基である。nは1以上の整数である。)
【請求項3】
末端基が水素原子、又は下記式(2)〜(4)で示される基の少なくとも一種である請求項2に記載の含硫黄多分岐化合物。
【化2】

(式中、Aは前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)の残基であり、Aは前記チオール基を有する化合物(b)の残基であり、Xはハロゲン原子である。)
【請求項4】
前記ハロゲン化アルキル基を有する化合物(a)が、下記式(5)で示される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物。
【化3】

(式中、X及びXはそれぞれハロゲン原子であり、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基であり、Arは置換又は無置換のアリーレン基である。)
【請求項5】
前記チオール基を有する化合物(b)が、1,3,5−トリチオシアヌル酸である請求項1〜4のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の含硫黄多分岐化合物に、さらに(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸を反応させて得られる不飽和基含有多分岐化合物。
【請求項7】
末端基の少なくとも1つが下記式(6)で示される基である請求項6記載の不飽和基含有多分岐化合物。
【化4】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はシアノ基である。)
【請求項8】
末端基の少なくとも1つが下記式(7)〜(9)で示される基である請求項7記載の不飽和基含有多分岐化合物。
【化5】

(式中、Aはチオール基を有する化合物(b)の残基を表し、Aはハロゲン化アルキル基を有する化合物の残基を表し、Wは前記式(6)で示される基を表わす。)
【請求項9】
(A)請求項6〜8のいずれか記載の不飽和基含有多分岐化合物、及び(B)重合開始剤を含有する硬化性組成物。
【請求項10】
さらに(C)熱硬化性成分を含有する請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに希釈剤を含有する請求項9又は10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか記載の硬化性組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−203248(P2009−203248A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34802(P2008−34802)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】