説明

吸引パイプ及び携帯型送風機

【課題】携帯型の送風機を吸引装置として利用する際に、送風機の出力調整を行うことなく、吸引圧を所望の圧力に低下させる。
【解決手段】動力駆動される携帯型送風機の吸気口に装着される吸引パイプ1であって、先端1tから被吸引物を吸い込み吸気口まで吸引案内する吸引案内部1Aと吸気口に着脱自在に装着される装着部1Bとを備え、吸引案内部1Aは、吸気口の口径面積より大きい口径面積で、軸方向にほぼ一定の口径面積を有する大口径区間L1が、先端側に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力駆動される携帯型送風機に装着される吸引パイプとその吸引パイプが装着された携帯型送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力駆動される送風機の吸引圧や送風圧を利用して、路上等の集塵・掃除を行う携帯型送風機が知られている。図1は、従来の携帯型送風機を吸引装置として利用する例を示した説明図である(下記特許文献1参照;同図(a)は外観図、同図(b)はファンケースの正面図)。
【0003】
この従来例は、本体J1が、ファンJ10を駆動させる原動機J11,始動用のリコイルスタータJ12,燃料タンクJ13,ファンケースJ14等で一体構成されており、ファンケースJ14の吸気口J14Aに吸引パイプJ2が着脱可能に連結され、ファンケースJ14の吹き出し口J14Bには吹き出しパイプJ3が着脱可能に連結されている。そして、吹き出しパイプJ3の吹き出し端には、適宜の通気性を有するダストバッグJ4が取り付けられている。また、作業者が把持するハンドルJ15,J16が本体J1に設けられている。また、ファンケースJ14の吸気口J14A内には、ファンJ10の駆動軸に装着されて、ファンJ10と共に回転するカッターJ5が備えられている。
【0004】
このような携帯型送風機によると、原動機J11の始動によってファンJ10が駆動され、ファンJ10の送風による吸引圧で、落葉や木片,塵芥等の被吸引物が吸引パイプJ2を介してファンケースJ14の吸気口J14A内に吸い込まれる。そこで、ファンJ10と共に回転するカッターJ5によって、吸い込まれた被吸引物が粉砕され、粉砕された被吸引物がファンケースJ14内の吸気経路を通って吹き出し口J14Bに送られ、吹き出しパイプJ3を介してダストバッグJ4内に集塵される。
【0005】
このような、携帯型送風機は、図示のような吸引装置として専用に用いるもの、吹き出し口に吹き出しノズルを取り付けて送風圧を利用した送風装置として専用に用いるもの、或いは、吸引パイプや吹き出しパイプ,吹き出しノズルを着脱自在にして、吸引圧を利用する場合は図示のような形態にし、送風圧を利用する場合は吸引パイプを取り外して吸気口に安全カバーを装着し、吹き出し口に吹き出しノズルを装着する形態を採用できる兼用装置がある。
【特許文献1】特開2000−179497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯型送風機を吸引装置として利用して、例えば、路上の落葉等を集塵する場合には、落葉等の軽い塵だけを吸引すればよいから必ずしも大きな吸引圧を必要としない。吸引圧が大きいと小石や金属片等を吸い込んでしまい、ファンケース内を被吸引物が通過する遠心型送風機では、ファンやファンケースを破損させてしまう不具合が生じる。
【0007】
しかしながら、携帯型の送風機は原動機の定格出力で作動させる設定になっており、一般に吸引圧の調整を行うことができないので、小石や金属片等を吸い込まないような低い吸引圧に出力を設定していると、大きな吸引圧が必要な他の用途への汎用性に欠けることになる。
【0008】
また、前述した兼用装置において、送風装置として利用する場合には作業効率を高めるために大きな送風量が必要になるので出力設定を高くしており、これを吸引装置として利用すると、大きな吸引圧が発生してしまい、前述したように小石や金属片等を吸い込んでしまう問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、携帯型送風機を吸引装置として利用する際に、送風機の出力調整を行うことなく、吸引圧を所望の圧力に低下させることができ、小石等の吸い込みによる送風機の破損を防止すること、用途に応じて吸引圧を低下させることで、吸引装置の汎用性を高めることができること、吸引と送風を兼用する動力式の携帯型送風機において、出力設定を送風に適する十分な高さに設定し、吸引装置として利用する場合は小石等を吸い込まない圧力での吸引を実現できること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、携帯型送風機の吸気口に装着される吸引パイプを改良したものであり、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0011】
[請求項1]動力式の携帯型送風機における吸気口に装着される吸引パイプであって、先端から被吸引物を吸い込み前記吸気口まで吸引案内する吸引案内部と前記吸気口に着脱自在に装着される装着部とを備え、前記吸引案内部は、先端側に吸引力低減部分を有することを特徴とする吸引パイプ。
【0012】
[請求項5]吸引と送風を兼用する動力式の携帯型送風機であって、吸引パイプが着脱自在に装着される吸気口と該吸気口に装着される吸引パイプを備え、該吸引パイプは、先端(1t)から被吸引物を吸い込み前記吸気口まで吸引案内する吸引案内部(1A)と前記吸気口に着脱自在に装着される装着部(1B)とを備え、前記吸引案内部(1A)は、先端側に前記吸気口の口径面積より大きい口径面積で軸方向にほぼ一定の口径面積を有する大口径区間(L1)によって形成される吸引力低減部分を有することを特徴とする携帯型送風機。
【0013】
このような特徴によると、携帯型送風機を吸引装置として利用する際に、前述した特徴の吸引パイプを用いることで、送風機の出力調整を行うことなく、吸引圧を所望の圧力に低下させることができ、小石等の吸い込みによる送風機の破損を防止することができる。また、前述した特徴の吸引パイプを選択的に採用することで、用途に応じて吸引圧を低下させることができ、吸引装置の汎用性を高めることができる。また、吸引と送風を兼用する携帯型送風機においては、出力設定を送風に適する十分な高さに設定し、吸引装置として利用する場合は小石等を吸い込まない圧力での吸引を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は本発明の一実施形態に係る吸引パイプの構成例を示す説明図である。本発明の実施形態に係る吸引パイプ1は、動力駆動される携帯型送風機の吸気口に装着されるものであって、先端1tから被吸引物を吸い込み吸気口まで吸引案内する吸引案内部1Aと吸気口に着脱自在に装着される装着部1Bとを備えている。
【0015】
そして、一つの特徴としては、吸引案内部1Aは、先端側に吸引力低減部分を有している。この吸引力低減部分によって、携帯型送風機に吸引パイプ1を装着することで、携帯型送風機の出力設定がかなり高い場合であっても、吸引パイプ1の先端部分での吸引圧を低減することができ、小石等の重量物を吸い上げる不具合を解消することができる。
【0016】
吸引力低減部分の一例としては、図示の例のように、吸気口の口径面積より大きい口径面積で、軸方向にほぼ一定の口径面積を有する大口径区間L1が先端1t側に形成されている。大口径区間L1は、重量物の吸い込みを確実に無くすためには、吸引案内部1Aの長さ全体の1/2以上、好ましくは2/3以上の長さにすることが好ましい。大径区間L1の断面形状は、円形の他、楕円や多角形等でもよいが、その断面積が軸方向に沿って略一定であることが必要である。
【0017】
このような特徴によると、送風機の吸気口の口径面積に対して、大きい口径面積の大口径区間L1を先端側に所定の長さ設けているので、そこでの吸引圧を低下させることができる。これに対して、大口径区間L1の口径面積を徐々に拡げている場合には、有効な吸引圧低下は生じない。口径を拡げた部分の口径面積を軸方向にほぼ一定にすることで、先端1tの吸い込み口での吸引圧を大きくした口径面積に応じて所定値に下げることができる。
【0018】
このような吸引パイプ1を携帯型送風機の吸気口に装着すると、出力調整ができない携帯型送風機であっても、効果的に吸引圧を低下させることができ、路上の集塵を行う場合等に落葉等の軽量物は吸い込むが小石や金属片等の重量物は吸い込まない吸引圧に低減することで、小石等を吸い込んで送風機を損傷させてしまう不具合を未然に防ぐことができる。
【0019】
また、送風機の出力をある程度高く設定しておき、高い吸引圧が必要な場合には、大口径区間L1が無く送風機の吸気口の口径と同等の口径を有する吸引パイプを選択して装着し、高い吸引圧が必要ない場合には大口径区間L1を有する吸引パイプ1を選択して装着することで、出力調整ができない送風機であっても、その汎用性を高めることができる。
【0020】
更には、送風装置と吸引装置の兼用装置となる送風機に対してこの吸引パイプ1を採用する場合には、送風装置としての利用時に高い作業性を得ることができるように、送風機の出力を高く設定することができ、吸引装置としての利用時には、この吸引パイプ1を装着することで、吸引圧を所定の圧力に低下させ、小石や金属片等の重力物を吸い込まない仕様を実現することができる。したがって、出力調整を行わなくても、この吸引パイプ1を採用するだけで、送風装置と吸引装置の両方で必要となる圧力設定を実現することができる。
【0021】
本発明の実施形態に係る吸引パイプ1の他の特徴は、前述した吸引案内部1Aが、装着部1Bから前述した大口径区間L1に至る間に、吸気口と同等の口径面積を有する小口径区間L2と該小口径区間L2から大口径区間L1に向けて連続的に拡径する繋ぎ区間L3を有していることである。
【0022】
これによると、繋ぎ区間L3の存在によって、被吸引物の流れを円滑化して、落葉等の軽量物を確実に吸気口に送り込むことができる。したがって、大口径区間L1によって吸引圧を低下させた場合にも、必要な軽量物の吸引を確実に行うことができ、良好な吸引作業性を確保することができる。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る吸引パイプ1の他の特徴は、前述した装着部が、吸引と送風を兼用する携帯型送風機の吸気口に対して、脱着自在に接続される接続機構を有することである。図示の例では、装着部1Bにはバヨネット溝1B1が形成されており、これが送風機の吸気口に設けられたバヨネット爪と係合して着脱自在に接続できるようになっている。これによると、吸引と送風を兼用する携帯型送風機に対して、吸引パイプ1を脱着することができ、吸引と送風のそれぞれで所望の能力を発揮させることができる。
【0024】
また、回転式接続機構を採用することで、大口径区間L1を手で持って接続を行うことで、回転式接続機構の接続トルクを小さな力で得ることができ、接続時の操作を簡易に行うことができる。この際、図示のように、大径区間L1の外表面に滑り止め部1pを設けることで、更に接続操作を行い易くすることできる。
【0025】
図示した実施形態に係る吸引パイプ1のその他の細部を説明すると、先端1pには部分的に切り欠き部1tsが形成されている。このように切り欠き部1tsを部分的に設けることで、地面に対して切り欠き部1tsを当接させた場合にも、先端1tの切り欠き部1ts以外の部分が開放されることになり、吸引パイプ1の先端1tを塞ぐことなく吸引作業を行うことができる。
【0026】
また、小径区間L2の外表面に突起1sを設けることによって、吸引パイプ1の装着を装着部1Bの手元で行う場合に、突起1sを持って作業性良く接続操作を行うことができる。
【0027】
本発明の実施例としては、吸引案内部1Aの全長(L1+L2+L3)を862cmとした場合に、大口径区間L1を620cm、小口径区間L2を157cm、繋ぎ区間L3を85cmにした。この吸引パイプ1を吸気口に装着することで、兼用装置を吸引装置として用いる場合にも、小石等の重量物を吸い込むことなく効果的に落葉等の集塵作業を行うことができた。
【0028】
図3は、本発明の他の実施形態を示す説明図である(前述した実施形態と同一部位は同一符号を付して重複説明を省略する)。この実施形態は、吸引パイプ1を複数片に分割可能にしたものであり、図示の例では、全体を3分割にするための分割接続部Aが形成されている。分割接続部Aは図示のようなねじ式の他にその他の接続形態を採用しても良い。この際、分割接続部での気密性が十分に確保でき、吸引パイプ1の内面に段差ができない構造であることが好ましい。このように吸引パイプ1を分割可能にすることで、長尺な吸引パイプ1を持ち運ぶ際の収容スペースが確保し易くなる利点が得られる。
【0029】
図2及び図3に示した本発明の実施形態に係る吸引パイプ1が着脱自在に装着される吸引口J14Aを備えた従来の携帯型送風機に吸引パイプ1を装着すると、吸引と送風を兼用する携帯型送風機を効果的に活用することができる。すなわち、この携帯型送風機は、送風時に十分な能力を発揮できるように出力設定をしておき、吸引時には、前述した吸引パイプ1を吸引口J14Aに装着することで、吸引パイプ1の先端側で吸引圧を下げた状態を実現することができる。これによると、吸引と送風の兼用機において、出力調整を行うことなく、安全性の高い吸引作業と、効率的な送風作業を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る吸引パイプの説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る吸引パイプの説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1:吸引パイプ,1A:吸引案内部,1B:装着部,1t:先端
L1:大径区間,L2:小径区間,L3:繋ぎ区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力式の携帯型送風機における吸気口に装着される吸引パイプ(1)であって、
先端(1t)から被吸引物を吸い込み前記吸気口まで吸引案内する吸引案内部(1A)と前記吸気口に着脱自在に装着される装着部(1B)とを備え、
前記吸引案内部(1A)は、先端側に吸引力低減部分を有することを特徴とする吸引パイプ。
【請求項2】
前記吸引力低減部分は、前記吸気口の口径面積より大きい口径面積で、軸方向にほぼ一定の口径面積を有する大口径区間(L1)によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸引パイプ。
【請求項3】
前記吸引案内部(1A)は、前記装着部(1B)から前記大口径区間(L1)に至る間に、前記吸気口と同等の口径面積を有する小口径区間(L2)と該小口径区間(L2)から前記大口径区間(L1)に向けて連続的に拡径する繋ぎ区間(L3)を有することを特徴とする請求項2に記載の吸引パイプ。
【請求項4】
前記装着部(1B)は、吸引と送風を兼用する携帯型送風機の吸気口に対して、脱着自在に接続される接続機構を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸引パイプ。
【請求項5】
吸引と送風を兼用する動力式の携帯型送風機であって、
吸引パイプが着脱自在に装着される吸気口と該吸気口に装着される吸引パイプを備え、
前記吸引パイプは、先端(1t)から被吸引物を吸い込み前記吸気口まで吸引案内する吸引案内部(1A)と前記吸気口に着脱自在に装着される装着部(1B)とを備え、前記吸引案内部(1A)は、先端側に前記吸気口の口径面積より大きい口径面積で軸方向にほぼ一定の口径面積を有する大口径区間(L1)によって形成される吸引力低減部分を有することを特徴とする携帯型送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−91914(P2009−91914A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260977(P2007−260977)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】