説明

吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料の製造方法

本発明は、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を用いる、分散剤の吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料の製造方法、この方法により得られる炭酸カルシウム材料、紙、塗料、およびプラスチックへの炭酸カルシウム材料の使用、ならびに製造方法におけるリチウムイオン含有化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩含有材料の懸濁液または乾燥させた無機材料、ならびにこれらの紙、塗料、およびプラスチックへの応用、より詳細には紙シートの製造、生産、および/またはコーティングなど、これらの製紙産業への応用という技術部門に関する。
【背景技術】
【0002】
紙シート、段ボール、または類似の製品の製造方法において、当業者は、紙の性質を改善しながらもこのコストを抑える目的で、高価なセルロース繊維の一部をもっと安価な無機物質に置き換えるようになってきている。
【0003】
こうした炭酸カルシウム含有材料として、これらは当業者にはよく知られているものであるが、例えば、天然の炭酸カルシウム(GCC)(大理石、方解石、石灰石、および/またはチョークなど)、および/または合成炭酸カルシウム(PCC)(偏三角面体晶および/または菱面体晶および/または方解石性(calcitic)および/またはバテライト性(vateritic)結晶形のものなど)および多数の類似の炭酸カルシウム含有填料(白雲石など)または多様な金属の混合炭酸塩系填料(詳細には、マグネシウムが付随したカルシウムおよび類似体など)、多様な物質(タルクまたは類似体など)、ならびにそうした填料の混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、もしくは合成もしくは天然繊維との混合物)、および無機物の共構造物(タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタン共構造物など)などが含まれる。
【0004】
現在まで長い間、湿式研削方法において、無機物水性懸濁液を調製するのに、研削助剤として、一部または完全に中和したポリアクリル酸またはこの誘導体を主体とする水溶性重合体を用いることが最も一般的であった(EP0046573、EP0100947、EP0100948、EP0129329、EP0261039、EP0516656、EP0542643、EP0542644)。しかし、これらの研削助剤では、必要とされる上記の補強性および粘度基準を得ることもできず、無機物水性懸濁液に必要とされる経時的なpH安定性を得ることもできず、紙用途における末端利用者が必要とするような可視光散乱を発現させる十分な能力も提供しない。
【0005】
当業者には、Brookfield(商標)粘度が低く経時的に安定でありながらも高い乾物濃度が可能である、微細化無機材料の水性懸濁液を得るための、WO02/49766、EP0850685、WO2008/010055、WO2007/072168に開示される別の種類の溶液も既知である。この種の既知の溶液では、アクリル酸とマレイン酸など特定の分散剤様共重合体または特定の中和率または無機フッ素化合物などの使用により、湿式研削段階に続く機械的およびまたは熱的濃縮段階から生じる無機粒子を、分散剤も研削助剤も用いることなく低固形分含量で水性懸濁液にすることが開示されている。
【0006】
さらに、当業者にはUS3,006,779が既知であるが、これはリン酸ナトリウムガラス、酸化亜鉛、およびカリウムまたはリチウムの塩または水酸化物の均一混合物からなる無機分散剤に基づくまったく異なる解決法を開示する。
【0007】
同様に、WO2006/081501は、ケイ酸リチウムのような無機分散剤の使用を開示する。
【0008】
最後に、表題「Influence of polyelectrolyte adsorption on rheology of concentrated calcite dispersion」(Robert Petzenhauser−1993)という論文は、方解石懸濁液について様々なポリアクリル酸塩の影響を研究したものであるが、これはポリアクリル酸リチウムをはじめとする研究したポリアクリル酸塩全てについて得られる懸濁液の粘度の安定性という点で問題があることを確定している。
【0009】
それでも、既知の解決法のいずれも、当業者に、分散剤の吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム含有材料を、乾燥形で得ること、またはBrookfield(商標)粘度が低く経時的に安定であり、pH緩衝能力が良好であり、さらに分散剤もしくは研削助剤含有量を減らしながらおよび/または固形分含量を増やしながら作業することが可能でありながらも、高い乾物濃度が可能である懸濁液の形で得ることの解決法を、提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0046573号明細書
【特許文献2】欧州特許第0100947号明細書
【特許文献3】欧州特許第0100948号明細書
【特許文献4】欧州特許第0129329号明細書
【特許文献5】欧州特許第0261039号明細書
【特許文献6】欧州特許第0516656号明細書
【特許文献7】欧州特許第0542643号明細書
【特許文献8】欧州特許第0542644号明細書
【特許文献9】国際公開第02/49766号
【特許文献10】欧州特許第0850685号明細書
【特許文献11】国際公開第2008/010055号
【特許文献12】国際公開第2007/072168号
【特許文献13】米国特許第3,006,779号明細書
【特許文献14】国際公開第2006/081501号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Influence of polyelectrolyte adsorption on rheology of concentrated calcite dispersion(Robert Petzenhauser−1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的の1つは、高安定性懸濁液用の、分散剤の吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料を製造する方法を提供することである。
【0013】
そのうえさらに、このような方法において、使用環境において制御不能な様式で反応する恐れがある化合物が加えられないことは非常に望ましい。
【0014】
例えば、このような化合物として、水不溶性塩、水酸化物、または酸化物、または特定のpH範囲でさらなる化合物と錯形成する傾向があるイオン性化合物がある。
【0015】
従って、無機材料の環境中で、特にこの水性環境中で、任意の望ましくない副反応も起こさない化合物、即ち任意の副反応も起こさない塩の形であるが、このイオン成分に関しては無変化のままである化合物などを塩の形でまたは解離した形で用いる方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
最終製品の性質(紙の光学性質など)を低下させることなく分散剤および/または研削助剤の必要量を最小限にしながらも要求される性質を持つ無機炭酸カルシウム含有材料水性懸濁液を得るという上記の問題に対して、本出願人は、特定のリチウムイオン含有化合物が炭酸カルシウム粒子の表面の吸着性修飾剤として作用して、pHが経時的に安定であり、高い乾燥固形分含有量および低く安定したBrookfield粘度を有することが可能な炭酸カルシウム含有材料水性懸濁液を得ることを可能にすることを、予想外に見出した。
【0017】
任意の理論にも縛られるものではないが、本出願人は、特定のリチウムイオン含有化合物の使用が、炭酸カルシウム含有材料の粒子表面を修飾し、その結果炭酸カルシウム含有材料が任意の性質であっても炭酸カルシウム粒子の表面の吸着性を修飾するものと考える。
【0018】
それでも、こうしたリチウム化合物の存在はこの低いレベルのリチウム含有量で炭酸カルシウムの吸着性を修飾するものの、この元素、特に以下に記載するリチウム化合物の組み込みは、走査電子顕微鏡(SEM)画像での顔料の結晶形および/または顔料の特定表面またはXRDパターンに、視覚上の影響をほとんど与えない。
【0019】
従って、上記の目的は、以下の段階を含む、分散剤の吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料の製造方法により達成される:
a.少なくとも1種の炭酸カルシウム含有材料を水性懸濁液の形または乾燥形で提供する段階、
b.乾燥形または水溶液の形の、水酸化リチウムおよび酸化リチウム、ならびに一価および/または多価酸塩からなる群より選択される無機および/または有機単量体リチウム塩(炭酸リチウム、硫酸リチウム、クエン酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸リチウムなど)、ならびにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を提供する段階、
c.段階b)の少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物と段階a)の少なくとも1種の炭酸カルシウム材料を1つにまとめる段階。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験8aによる先行技術の材料のXRDパターンを示す。
【図2】試験8bによる本発明の材料のXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
二塩基または三塩基単量体酸のリチウム塩は、例えば、リチウムとナトリウムの混合塩((Na,Li)3PO4、例えばオリンパイト(Olympite)またはナリポイト(Nalipoite)など)でも可能である。
【0022】
得られる炭酸カルシウム材料は、乾燥形であっても懸濁液の形であってもよい。炭酸カルシウム材料は、以下の好適な実施形態のいずれかから得られるとおりに、乾燥させても、乾燥後に再懸濁させてもよい。
【0023】
本発明で用いるための少なくとも1種の炭酸カルシウム含有材料は、好ましくは、少なくとも1種のカルシウムイオン源および少なくとも1種の炭酸イオン、炭酸水素イオン、および/またはCO2源から得られる合成炭酸カルシウム(PCC)の形で、または天然の炭酸塩含有無機材料(GCC)の形で提供される。
【0024】
特に適した炭酸カルシウム含有材料は、天然の炭酸カルシウム(GCC)(大理石、方解石、石灰石、および/またはチョークなど)、沈殿炭酸カルシウム(PCC)(バテライトおよび/または方解石など)、ならびに炭酸カルシウム含有材料(白雲石など)、ならびに混合炭酸塩系填料(詳細には、マグネシウムが付随したカルシウムおよび類似体または誘導体など)、多様な物質(クレーまたはタルクまたは類似体または誘導体など)、ならびにこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、もしくは合成もしくは天然繊維との混合物)、ならびに無機物の共構造物(タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタン共構造物など)からなる群より選択される。
【0025】
さらにより好ましくは、少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、天然の炭酸カルシウム(GCC)または沈殿炭酸カルシウム(PCC)、またはGCCとPCCの混合物、またはGCCとPCCとクレーとの混合物、またはGCCとPCCとタルクとの混合物であり、なおさらに好ましくは、大理石、チョーク、方解石、および石灰石の中から選択されるGCCまたは方解石性(calcitic)PCC(菱面体晶PCCまたは偏三角面体晶PCCなど)の中から選択されるPCCである。
【0026】
上記の方法は、多数の随意段階により改善することができる:
従って、例えば、分散剤含量を減らしおよび/または固形分含量を増やした研削法および/または分散法により、炭酸カルシウム粒子の表面の吸着性修飾剤として選択されたリチウムイオン含有化合物を実装する、炭酸カルシウム含有材料粒子の水性懸濁液製造法、即ち製造方法が最適化される。
【0027】
特に好適な実施形態は研削段階を含み、この段階において、少なくとも1種の炭酸カルシウム材料が、場合により、分散剤および/または研削助剤の存在下で研削される(段階d)。
【0028】
本発明に従って用いられる分散剤または研削助剤は、任意の従来の有機分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム同種重合体および/または共重合体ならびにポリマレイン酸(polymaleinate)など)が可能である。これらは好ましくは、中和されていないおよび/または部分中和された形である。好適な分散剤は、例えば、部分中和された、完全中和された、および特別には中和されていないポリアクリル酸である。「中和されていない」は、カルボン酸基が全て遊離の酸として存在することを意味し、一方部分中和されたは、カルボン酸基の一部が塩に変換されていることを意味し、完全中和された全てのカルボン酸基が中和されていることを意味する。中和された基は、解離した形、部分的に解離した形、または解離していない形で存在することができる。
【0029】
段階d)において、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物が存在することが好ましい。
【0030】
段階d)においてGCCを用いる場合、湿式研削した天然炭酸カルシウムを段階d)の前に湿式選鉱段階にかけて、不純物(例えばケイ酸塩不純物など)を例えばフロス浮選により除去することが好ましい可能性がある。
【0031】
そのうえさらに、段階d)で得られた研削した材料を分別するおよび/または濃縮する(段階e)ことが有利となり得る。
【0032】
本発明の文脈において「分別する」は、「分別」用の既知の装置(ふるい、沈砂遠心分離(grit centrifuge)など)により実行される。「分別する」により、粒子の大きさが45μmより大きい粗い粒子を除去する選鉱と理解されなければならない。
【0033】
「濃縮(Upconcentration)」は、例えば熱的濃縮または機械的濃縮、例えば遠心、ろ過プレス、チューブプレス、またはこれらを混合した手段により、行われる。
【0034】
研削された材料を段階e)に従って分別および/または濃縮する場合、分別および/または濃縮に続いて、この材料を水性媒体に分散させる(段階f)ことが好ましいだろう。この段階において、分散が少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で行われる場合、なお好ましく、リチウムイオン含有化合物は段階d)で用いたものと異なっていても同一であってもよい。
【0035】
段階d)または段階e)または段階f)のいずれか1つで得られた研削された材料は、段階a)の炭酸カルシウム材料が水性懸濁液の形で提供される場合、乾燥させることができる(段階g)。
【0036】
一方で、段階a)の炭酸カルシウム材料が乾燥形で提供される場合、または段階e)、段階f)、および段階g)が行われない場合、段階d)で得られた研削された材料は水性媒体に分散させることができる(段階h)。
【0037】
好適な実施形態において、段階hで得られた水性懸濁液は研削することができる(段階i)。
【0038】
そのうえさらに、段階g)の乾燥材料は、水性媒体に再懸濁させることができる(段階j)。
【0039】
特に好適な実施形態において、段階i)および/または段階j)は、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で行われる。
【0040】
一般に、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の添加に関して、複数の好適な実施形態が存在する。
【0041】
例えば、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、少なくとも1種の炭酸カルシウム材料がPCCの場合、段階a)の前および/または最中および/または後に加えることができる。
【0042】
従って、リチウム化合物は、合成炭酸カルシウムの沈殿の前、最中、または後に加えることもできる。例えば、リチウム化合物は、炭酸化(carbonisation)段階の前に加えることができる。
【0043】
一方で、少なくとも1種の炭酸カルシウム材料がGCCの場合、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、段階e)および段階f)が行われない場合、好ましくは研削段階d)の前および/または最中および/または後に加えられる。
【0044】
しかしながら、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、分別および/または濃縮段階e)のみが行われる場合、研削段階d)の後および段階e)の前および/または最中および/または後に加えることもできる。
【0045】
そのうえさらに、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を分散段階f)の前および/または最中および/または後に加えることが可能である。
【0046】
炭酸カルシウム材料が段階a)および続く段階d)および段階h)において乾燥形で提供される場合、リチウムイオン含有化合物を加えるのは、段階d)の前、最中、または後に一回で、または複数回にわけてそれぞれを段階h)の前、最中、または後に行うことが好ましい。
【0047】
分散段階f)が行われ、リチウムイオン含有化合物の全部または一部が段階f)の前に加えられる場合、リチウムイオン含有化合物は好ましくは段階d)の前および/または最中および/または後に加えられる。
【0048】
上記のとおり、本発明による製造方法で得られる炭酸カルシウム含有材料水性懸濁液は、良好なpH緩衝能力を有し、即ちpHが経時的に安定しており、乾燥固形分含量が高く、および低く経時的に安定したBrookfield(商標)粘度を有する。
【0049】
本発明による「高い乾燥固形分含量」は、炭酸カルシウム含有材料水性懸濁液またはスラリーが、懸濁液またはスラリーの全重量を基準として、好ましくは10重量%から82重量%、より好ましくは50重量%から81重量%、およびさらにより好ましくは65重量%から80重量%、例えば、70重量%から78重量%の固形分含量を有することを意味する。
【0050】
「pHが経時的に安定」は、本発明の文脈において、無機物懸濁液が、貯蔵の少なくとも6日間、より好ましくは少なくとも7日間、さらにより好ましくは少なくとも8日間の間、pH値を好ましくは8.5から10.5、より好ましくは9から10、例えば9.5の狭い範囲に保てることを意味する。
【0051】
従って、本発明の方法の段階d)を、7超、好ましくは7.5超、より好ましくは8.5から10.5、さらにより好ましくは9から10、例えば9.5のpHで行うことが特に好ましい。
【0052】
これに関して、当業者は、pH値が、塩基、好ましくは一価または二価カチオンの塩基、さらにより好ましくはナトリウムまたはカルシウムの塩基の付加により(例えば殺生物剤のアルカリ性製剤の添加により)、または材料の研削中(沈殿炭酸カルシウムと天然炭酸カルシウムの共研削中など)の水酸化物(Ca(OH)2など)の放出により、影響を受けることを承知した上で、達成したい性質に関連してpH値が適した値を有するようにすることが容易にできる。
【0053】
本出願全体において、pH値は、室温(21℃±1)で、±0.3pH単位の精度で測定される。
【0054】
少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、好ましくは、乾燥形または水溶液の形の、水酸化リチウムおよび酸化リチウム、ならびに一価および/または多価酸塩からなる群より選択される無機および/または有機単量体リチウム塩(炭酸リチウム、硫酸リチウム、クエン酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸リチウムなど)、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0055】
リチウムイオン濃度は、全乾燥炭酸カルシウムに関して、好ましくは10から2000ppm、より好ましくは100から1000ppm、さらにより好ましくは200から800ppmである。
【0056】
これに関して、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、段階d)の前、最中、および/または後に加えることができるが、好ましくは全乾燥炭酸カルシウムに対して、0.0035重量%から1重量%、好ましくは0.0035重量%から0.5重量%、さらにより好ましくは0.02重量%から0.2重量%の量で存在する。
【0057】
そうしたリチウムイオン含有化合物を加えることで、Brookfield(商標)粘度が低く経時的に安定した水性懸濁液が得られる。これは、調製1時間後の炭酸カルシウム含有無機材料水性懸濁液の初期Brookfield(商標)粘度が、DV−III型Brookfield(商標)粘度計でRVスピンドルセットの適切なスピンドルを用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpm(毎分回転数)の回転速度で測定して、好ましくは4000mPa・s未満、より好ましくは2000mPa・s未満、さらにより好ましくは500mPa・s未満であること、および撹拌せずに8日間貯蔵した炭酸カルシウム材料水性懸濁液のBrookfield(商標)粘度が、DV−III型Brookfield(商標)粘度計でRVスピンドルセットの適切なスピンドルを用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpm(毎分回転数)の回転速度で測定して、4000mPa・s未満、好ましくは2000mPa・s未満、より好ましくは500mPa・s未満であることを意味する。撹拌せずに8日間貯蔵したときの粘度が、DV−III型Brookfield(商標)粘度計でRVスピンドルセットの適切なスピンドルを用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpm(毎分回転数)の回転速度で測定して、1000mPa・s未満、より好ましくは500mPa・s未満であることが特に好ましい。
【0058】
好適な実施形態において、炭酸カルシウム材料はGCCおよびPCCを含有し、PCCとGCCの重量合計を基準として、PCCは、10から90重量%、好ましくは20から80重量%、さらにより好ましくは30から70重量%の量で存在する。
【0059】
段階e)、段階f)、または段階g)が行われない場合、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、全量が好ましくは研削段階d)の前に用いられるか、少なくともこの一部が研削段階d)の前に用いられて、残りは段階d)の間に加えられる。
【0060】
また、異なるリチウムイオン含有化合物の組合せも有利に用いることができる。分散剤を用いる場合、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の使用量は、炭酸カルシウム材料の乾燥重量に対して、乾燥重量で0.01%から5%、好ましくは0.05%から2%、さらにより好ましくは0.1%から1%の範囲である。
【0061】
本発明による方法の研削段階d)は、好ましくは、5℃超、より好ましくは20℃から120℃、例えば、45℃から105℃、例えば、85℃から100℃の温度で行われる。
【0062】
そのうえさらに、研削段階d)で研削しようとする材料の水性懸濁液の固形分濃度は、10から82%(炭酸カルシウム材料の乾燥重量で)、好ましくは50から81%、さらにより好ましくは60から80%、特に好ましくは65%から72%であることが好ましい。
【0063】
本発明のさらに好適な実施形態において、段階d)で得られる研削された材料は、研削された材料の全重量を基準として、Sedigraph 5100(商標)を用いて、1μmより細かい粒子の画分を20重量%超、好ましくは60重量%超、さらにより好ましくは75重量%超、なおさらにより好ましくは85重量%超、特には95重量%超含む。
【0064】
研削された材料のd50(粒子を50重量%にわける直径値、即ち粒子径の中央値)は、好ましくは約0.2から5μm、好ましくは0.2から1.5μm、さらにより好ましくは0.25から1μm、例えば、0.45から0.7μmである。このd50値は、Sedigraph 5100(商標)を用いて求められる。
【0065】
研削段階d)において、炭酸カルシウム含有材料は、好ましくは、乾燥GCCおよび/またはPCCを1から82重量%、好ましくは15重量%から81重量%、さらにより好ましくは40重量%から80重量%、例えば、乾燥GCCを63重量%から72重量%または乾燥PCCを47から72重量%含む水性懸濁液として提供される。この水性懸濁液は、フィルターケーキ形の材料を分散させて得られるものであってもよい。
【0066】
特に好ましくは、段階d)は、任意の分散剤または研削助剤も存在しない場合、懸濁液の全重量を基準として、10重量%から35重量%の固形分含量で行われ、分散剤および/または研削助剤の存在下では、懸濁液の全重量を基準として、60重量%から82重量%の固形分含量で行われる。
【0067】
炭酸カルシウム含有懸濁液の最終固形分含量は、45重量%から82重量%の範囲である。
【0068】
好ましくは、炭酸カルシウム材料は最終固形分含量が高く、この範囲は、研削段階d)が任意の分散剤または研削助剤も存在しないで行われる場合、45重量%から75重量%、より好ましくは68重量%から73重量%であり、研削段階d)が研削助剤の存在下で行われる場合、65重量%から82重量%、好ましくは72重量%から78重量%である。
【0069】
本発明の別の目的は、本発明の方法により得られる炭酸カルシウム含有材料を提供することである。
【0070】
好ましくは、このような炭酸カルシウム含有材料は、上記の性質(経時的に安定なpH、高い乾燥固形分含量、および低く安定したBrookfield粘度など)を有するだけではなく、優れた光学的性質、例えば可視光散乱の高い性能も有する。
【0071】
光散乱の尺度は、散乱係数Sである。Sは、塗膜の可視光散乱能力を反映して20g/m2の塗膜重量に対して110m2/kgより大きくあるべきである。光散乱は、例えばWO02/49766(p.8から10)に記載される方法に従って測定することができる。従って、光散乱能力は、専門家には周知である、Kubelka and Munk(Zeitschrift fur Technische Physik 12,539,(1931)),de Kubelka(J.Optical Soc.Am.38(5),448,(1948)et J.Optical Soc.Am.44(4),330,(1954))の論文に記載される方法により求められる、Kubelka−Munk光散乱係数で表される。
【0072】
本発明の方法により得られる炭酸カルシウム材料は、20g/m2の塗膜重量に対して≧120m2/kgの散乱係数Sおよび<1000mPa・sのBrookfield(商標)粘度、好ましくは20g/m2の塗膜重量に対して≧140m2/kgの散乱係数および<500mPa・sのBrookfield(商標)粘度を有することが好ましい。
【0073】
このような炭酸カルシウム含有材料のリチウムイオン濃度は、全乾燥炭酸カルシウムに関して、好ましくは10から2000ppm、好ましくは100から1000ppm、さらにより好ましくは200から800ppmである。
【0074】
この材料が、少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を、全乾燥炭酸カルシウムに対して0.0035重量%から1重量%、好ましくは0.0035重量%から0.5重量%、さらにより好ましくは0.02重量%から0.2重量%、特には0.05%の量で含むことが特に好ましい。
【0075】
そのうえさらに、仕上がった炭酸カルシウム含有材料は、研削された材料の全重量を基準として、1μmより細かい粒子の画分を50重量%超、好ましくは80重量%超、より好ましくは85重量%超、さらにより好ましくは90重量%超、なおさらにより好ましくは95重量%超で含有することができる。
【0076】
好適な実施形態において、仕上がった炭酸カルシウム含有材料は、d50値が、好ましくは約0.2から5μm、好ましくは0.2から1.5μm、さらにより好ましくは0.25から1μm、例えば、0.45から0.7μmである。このd50値は、Sedigraph 5100(商標)を用いて求められる。
【0077】
段階g)後の乾燥形の研削された材料は、好ましくは、天然の炭酸カルシウム(GCC)(大理石、チョーク、石灰石、または方解石など)、および沈殿炭酸カルシウム(PCC)(バテライトおよび/または方解石など)、および炭酸カルシウム含有鉱物(白雲石など)、および混合炭酸塩系填料(詳細には、マグネシウムが付随したカルシウムおよび類似体または誘導体など)、多様な物質(クレーまたはタルクまたは類似体または誘導体など)、ならびにそうした填料の混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、もしくは合成もしくは天然繊維との混合物など)、および無機物の共構造物(タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタン共構造物など)などを含む群から選択される炭酸カルシウムを含む。
【0078】
好ましくは、材料は、GCCまたは沈殿炭酸カルシウム(PCC)またはGCCとPCCとの混合物、またはGCCとPCCとクレーとの混合物、またはGCCとPCCとタルクとの混合物である。
【0079】
さらにより好ましくは、材料は、大理石、チョーク、方解石、および石灰石の中から選択されるGCC、または方解石性PCC(菱面体晶PCCおよび偏三角面体晶PCCなど)の中から選択されるPCCである。
【0080】
乾燥形の研削された材料は、約0.2から5μm、好ましくは0.2から1.5μm、さらにより好ましくは0.25から1μm、例えば、0.45から0.7μmのd50も特徴とし得る。
【0081】
材料は、Sedigraph 5100(商標)を用いて、1μmより細かい粒子の画分を50重量%超、好ましくは80重量%超、より好ましくは85重量%超、さらにより好ましくは90重量%超、なおさらにより好ましくは95重量%超含み得ることも好ましい。
【0082】
最後に、本発明の別の目的は、無機材料を用いる任意の分野、特に紙、塗料、およびプラスチック分野、ならびにこの懸濁液および/または粉末を利用する任意の他の分野、より詳細にはスラリーとして紙に応用する分野(製紙および/または紙のコーティングおよび/または紙表面処理など)、または紙、段ボール、もしくは類似のシートの製造中に填料として紙に応用する分野における、本発明による炭酸カルシウム含有材料水性懸濁液および/または乾燥させた炭酸カルシウム含有材料の使用である。乾燥粉末は、好ましくはプラスチックおよび/または塗料に用いられるが、水に再懸濁させて再び懸濁液とすることもできる。填料としては、紙、段ボール、もしくは類似のシートの製造中の填料組成物として直接使用するか、または紙、段ボール、もしくは類似のシートの製造方法に塗料ブロックの再利用複合材料が用いられる場合に、この再利用複合材料として間接的に使用するかが可能である。
【0083】
特に好適であるのは、紙、塗料、およびプラスチックにおける使用である。
【0084】
本発明による紙、塗料、およびプラスチックは、本発明による研削された無機材料を含有することを特徴とする。
【0085】
最後に、本発明のさらなる態様は、本発明による吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料の製造方法における少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の使用である。
【0086】
以下に記載する図面および実施例および実験は、本発明を例示するものであって、いかなる方法でも本発明を制限することはない。
【0087】
(実施例)
【実施例1】
【0088】
この実施例は、本発明に従って処理される材料の調製に関する。
【0089】
粒子径および直径中央値は全て、Sedigraph(登録商標)5100(Micromeritics)で測定した。
【0090】
Brookfield(商標)粘度は、室温(21℃±1)で100rpm(毎分回転数)の回転速度で撹拌してRVスピンドルセットの適切なスピンドルを用いてDV−III型Brookfield(商標)粘度計で測定した。
【0091】
様々な重合体の、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、ならびに対応する多分散性および1500Dalton未満の重量画分は全て、Polymer Standard Serviceが提供するPSS−PAA 18K、PSS−PAA 8K、PSS−PAA 5K、PSS−PAA 4K、およびPSS−PAA3 Kの5種のポリアクリル酸ナトリウム標準一組で較正した水性ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって、pH8で100mol%ナトリウム塩として測定した。
【0092】
m2/g単位でのBET比表面積は、国際標準ISO4652に従って測定する。
【0093】
修飾したPCCおよびGCCのX線回折(XRD)パターンは、以下の方法に従って測定する。
【0094】
上記の炭酸カルシウムに存在する鉱物学的相はBruker D8 Advance回折計を用いて、粉末回折法によってX線回折(XRD)により求める。この回折計は、2.2kWX線管、9点試料ホルダー、シータシータ(θ−θ)ゴニオメーター、およびVÅNTEC−1検出器からなるものである。全ての実験にNiでフィルタリング(Ni−filtered)したCuKa線を用いる。プロファイルを、0.01°の2θ増加幅および1s/段階の走査速度で、20から50°の2θで自動的にチャート記録した。国際回析データセンター(ICDD)の粉末回折ファイル(PDF)データベース2を利用して、得られる粉末回折パターンを、鉱物含有量で分類する。測定したデータの組とICDDの参照パターンとの比較を、図1に示し、表1にまとめる。
【0095】
表1:測定した炭酸カルシウム粉末とこれに対応するICDD参照材料との格子パラメーターの比較。
【0096】
【表1】

【0097】
試験1aおよび1b:
この試験は、d50が0.3μmの菱面体晶PCCの調製に関する。
【0098】
このことを考慮して、反応器中、40℃の水道水1700リットルを撹拌しながら、これに酸化カルシウム(Tagger KaIk、Golling A)200kgを加える。30分間撹拌を続けて、反応器の内容物を混合して、固形分13.1%w/wの水酸化カルシウムのスラリー(「石灰ミルク」)を得、次いでこれを100μmのスクリーンで分別する。
【0099】
撹拌器ならびに懸濁液のpHおよび伝導度を観測するためのプローブを備えた1800リットルの円筒型ステンレス鋼反応器中、炭酸カルシウムを沈殿させる。
【0100】
炭酸化反応器に、上記のとおりの消和段階で得られる水酸化カルシウム懸濁液1700リットルを入れ、反応液の温度を所望の開始温度16℃に調整する。
【0101】
次いで、懸濁液を200から300rpmで振盪しながら、これにCO2を20から30体積%含有する空気を200m3/hの速度で懸濁液の下から上に向かって吹き込む。ガス供給の加圧は150から200mbarで、反応器中のCa(OH)2懸濁液の静水圧に相当する。
【0102】
炭酸化の間、懸濁液の温度は制御せず、発熱沈殿反応で生じる熱により上昇させる。伝導度が最小になってからさらに4分間吹き込みを続け、それから停止する。
【0103】
この炭酸化段階で得られる沈殿炭酸カルシウムの固形分16.7%w/wの水性スラリーを、続いて45μmスクリーンで分別し、機械的に脱水するために遠心機に供給する。遠心分離されたフィルターケーキを水に再分散させ、47.2%w/wのスラリーにする。スラリーを作る間に、Mwが12500で多分散性が2.8のポリアクリル酸ナトリウム系アニオン性分散助剤1.0%w/w(乾燥炭酸カルシウムの乾燥分として計算)を混合物に加える。
【0104】
次いで、粉砕後の平均粒子径d50が約0.3μm(Micromeritics Sedigraph(登録商標)5100)となるように、スラリーを強制的に、0.6から1.2mmのZrOビーズを媒体として含有する垂直磨砕ミル(1.4リットルDynomill(商標))に通して、主にクラスターとなって沈殿した炭酸カルシウムをばらばらにして個別の粒子にする。
【0105】
次いで、得られる離散した微細沈殿炭酸カルシウムのスラリーを、減圧エバポレーターでさらに濃縮して、固形分66.7%w/wの最終スラリーを得る。
【0106】
最終生成物の物性を以下の表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
次いで、こうして得られるスラリーを噴霧乾燥して固形分含量>99.5重量%(w%)にし、先行技術による無機物1aと呼ぶことにする。
【0109】
同等なR−PCCで上記と同じ手順を用いるが、ただし炭酸化方法に関する段階の前にLiOHを重量2000ppmで消石灰に加える。
【0110】
次いで、得られる離散した微細沈殿炭酸カルシウムのスラリーを、減圧エバポレーターでさらに濃縮して、固形分67.7%w/wの最終スラリーを得る。
【0111】
最終生成物の物性を以下の表2bに示す。
【0112】
【表3】

【0113】
次いで、スラリーを噴霧乾燥して固形分>99.5重量%にし、本発明による無機物1bと呼ぶことにする。
【0114】
試験2
この試験は、d50が45μmのノルウェー産天然炭酸カルシウムの研削物の調製に関する。
【0115】
直径10から300mmのノルウェーモルレ地方の大理石を、乾式自生粉砕して、d50が42から48μmの範囲の粉末度にする。このようにして得られる無機物を無機物2と呼ぶことにする。
【0116】
試験3
この試験は、d50が0.8μmのノルウェー産天然炭酸カルシウムの研削物の調製に関する。
【0117】
無機物2を水道水に加えて固形分20重量%にして、添加剤(分散および/または研削助剤など)を加えずに、垂直磨砕ミル(Dynomill(商標))で、粒子の60重量%が直径<1μmの粉末度になるまで、再循環様式で湿式研削する。研削した生成物は、直径中央値d50が0.8μmである。
【0118】
研削後、スラリーをチューブプレスで濃縮して、固形分80から83重量%の粉状(crumbles)にする。
【0119】
このようにして得られる無機物を無機物3と呼ぶことにする。
【0120】
試験4aおよび4b
これらの試験は、d50が0.6μmのノルウェー産天然炭酸カルシウムの研削物2種の調製に関する。
【0121】
無機物2を水道水に加えて固形分15から25重量%にして、添加剤(分散および/または研削助剤など)を加えずに、垂直磨砕ミル(Dynomill(商標))で、粒子の75重量%が直径<1μmの粉末度になるまで、再循環様式で湿式研削する。研削した生成物は、直径中央値d50が0.6μmである。このようにして得られる無機物を無機物4aと呼ぶことにする。
【0122】
研削後、スラリーをフィルタープレスで濃縮して、固形分69.5重量%のフィルターケーキにする。
【0123】
このようにして得られる無機物を無機物4bと呼ぶことにする。
【0124】
試験5
この試験は、d50が0.4μmのノルウェー産天然炭酸カルシウムの研削物の調製に関する。
【0125】
無機物2を水道水に加えて固形分20重量%にして、添加剤(分散および/または研削助剤など)を加えずに、垂直磨砕ミル(Dynomill(商標))で、粒子の85重量%が直径<1μmの粉末度になるまで、再循環様式で湿式研削する。研削した生成物は、直径中央値が0.4μmである。
【0126】
研削後、スラリーをチューブプレスで濃縮して、固形分78から80重量%のフィルターケーキにする。
【0127】
このようにして得られる無機物を無機物5と呼ぶことにする。
【0128】
試験6
これらの試験は、d50が0.6μmのノルウェー産天然炭酸カルシウムの研削物の調製に関する。
【0129】
無機物2を水道水に加えて固形分35重量%にして、Mwが6000で多分散性が2.6のポリアクリル酸0.25重量%を研削助剤として用いて、垂直磨砕ミル(Dynomill(商標))で、粒子の75重量%が直径<1μmの粉末度になるまで、再循環様式で湿式研削する。研削した生成物は、直径中央値d50が0.6μmである。
【0130】
このようにして得られる無機物を無機物6と呼ぶことにする。
【0131】
試験7aおよび7b
この試験は、d50が1.5μmのイタリア産天然炭酸カルシウムの研削物の調製に関する。
【0132】
最初に、直径10から300mmのイタリアトスカーナ州のカララ大理石をJaw Crasherで直径0.1から5mmに粉砕する。
【0133】
次いで、直径中央値が1.5μmである材料研削物を得る目的で、粉砕した大理石をCylpeb鉄(直径中央値が0.25mmのたる型研削ビーズ)100kgを用いるHosokawa(登録商標)ボールミルS.O.80/32に供給する。
【0134】
乾式研削を連続様式で行う。
【0135】
研削チャンバ流出物は、20×6mmの開口部を通過してAlpine Turboplex(商標)100ATP分級機に到達する。分級機は、コンプレッサーを300m3/hに、および分級機回転速度および空気流を適切な値に設定して、直径が所定の値以下である材料研削物(本明細書中以下、「有用材料」と称する。)を抽出する。この所定の値より直径が大きい残りの材料研削物は全て、研削機への供給物として再循環させる。
【0136】
研削は、いつでも材料が系中に15kg存在するようにして行う。そのため、系中に15kgあるのを維持する目的で、方法から取り出された有用材料に相当する重量の新たな材料が、供給物に連続して補給される。
【0137】
開始後、以下に示す結果を記録する前に、生じる有用生成物の量、ならびに研削容量および研削エネルギー値が安定するのが観測されるまで、研削系を稼働してあることを強調しておく。
【0138】
試験7aは、炭酸ナトリウムの量は一定に保つようにして乾式研削用添加剤を研削系へ導入することに相当する。このようにして得られる無機物を無機物7aと呼ぶことにする。
【0139】
試験7bは、炭酸リチウムの量は一定に保つようにして乾式研削用添加剤を研削系へ導入することに相当する。このようにして得られる無機物を無機物7bと呼ぶことにする。
【0140】
結果を以下の表3に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
試験8aおよび8b:
この試験は、d50が2.3μmの偏三角面体晶PCCの調製に関する。
【0143】
このことを考慮して、反応器中、40℃の水道水1700リットルを撹拌しながら、これに酸化カルシウム(Tagger KaIk、Golling A)200kgを加える。30分間撹拌を続けて、反応器の内容物を混合して、固形分13.3%w/wの水酸化カルシウムのスラリー(「石灰ミルク」)を得、次いでこれを100μmのスクリーンで分別する。
【0144】
撹拌器ならびに懸濁液のpHおよび伝導度を観測するためのプローブを備えた1800リットルの円筒型ステンレス鋼反応器中、炭酸カルシウムを沈殿させる。
【0145】
炭酸化反応器に、上記のとおりの消和段階で得られる水酸化カルシウム懸濁液1700リットルを入れ、反応液の温度を所望の開始温度50℃に調整する。
【0146】
次いで、懸濁液を200から300rpmで振盪しながら、これにCO2を20から30体積%含有する空気を200m3/hの速度で懸濁液の下から上に向かって吹き込む。ガス供給の加圧は150から200mbarで、反応器中のCa(OH)2懸濁液の静水圧に相当する。
【0147】
炭酸化の間、懸濁液の温度は制御せず、発熱沈殿反応で生じる熱により上昇させる。
【0148】
伝導度が最小になってからさらに4分間吹き込みを続け、それから停止する。この炭酸化段階で得られる生成物を、続いて45μmスクリーンで分別し、固形分が17.4%w/wの沈殿炭酸カルシウムの水性スラリーとして回収する
炭酸化後の沈殿炭酸カルシウム生成物の物性を以下の表4aに示す。
【0149】
【表5】

【0150】
次いで、このようにして得られる無機物スラリーを噴霧乾燥して固形分含量>99.5重量%(w%)にし、先行技術による無機物8aと呼ぶことにする。
【0151】
同等なS−PCCで上記と同じ手順を用いるが、ただし炭酸化方法に関する段階の前にLiOHを重量2000ppmで消石灰に加える。次いで、このようにして得られる無機物スラリーを噴霧乾燥して固形分含量>99.5重量%にし、本発明による無機物8bと呼ぶことにする。
【0152】
炭酸化後の沈殿炭酸カルシウム生成物の物性を以下に示す。
【0153】
【表6】

表4a対表4bからわかるとおり、沈殿中にLiOHが存在しても、S−PCCで測定される物性に影響はなかった。
【実施例2】
【0154】
この実施例は、吸着性修飾剤としてのリチウムイオン含有化合物の使用を例示する。リチウムイオン含有化合物は、低く経時的に安定したBrookfield(商標)粘度および良好なpH緩衝能力を同時に持ちながらも高い乾燥固形分含量が可能な炭酸カルシウム水性懸濁液を得ることを可能にする。
【0155】
より詳細には、この実施例は、炭酸カルシウム粒子表面の吸着性を修飾し、その結果として、直径中央値d50が0.6μmの湿式研削した大理石の分散を改善することを考慮して、湿式研削後に炭酸リチウムを導入することを例示する。
【0156】
塗膜が可視光を散乱する能力を反映する20g/m2の塗膜重量に対して110m2/kgより大きい散乱係数Sは、WO02/49766(p.8から10)に記載の方法に従って測定する。従って、光散乱能力は、専門家には既知の、Kubelka and Munkの論文に記載される方法で求められるKubelka−Munk光散乱係数で表される(Zeitschrift fur Technische Physik 12,539,(1931),de Kubelka(J.Optical Soc.Am.38(5),448,(1948)et J.Optical Soc.Am.44(4),330,(1954))。
【0157】
試験9:
この試験は先行技術を例示する。
【0158】
この試験を行うため、Mw=6000のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和した従来品の乾燥無機物0.9重量%を、固形分35w%の無機物6懸濁液に加え、それから研究室中開ループで濃縮する。次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0159】
試験10:
この試験は試験本発明を例示する。
【0160】
この試験を行うため、試験9と同じポリアクリル酸カリウムの乾燥無機物0.15重量%および炭酸リチウムの乾燥無機物0.33w%を、固形分35w%の無機物6懸濁液に加え、それから研究室中開ループで固形分含量69.1重量%に濃縮する。
【0161】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0162】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵したBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0163】
試験11:
この試験は本発明を例示する。
【0164】
この試験を行うため、試験9と同じポリアクリル酸カリウムの乾燥無機物0.15重量%および炭酸リチウムの乾燥無機物0.33w%を、固形分35w%の無機物6懸濁液に加え、それから研究室中開ループで固形分含量71.0重量%に濃縮する。
【0165】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0166】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵したBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0167】
試験12
この試験は本発明を例示する。
【0168】
この試験を行うため、試験9と同じポリアクリル酸カリウムの乾燥無機物0.15重量%および炭酸リチウムの乾燥無機物0.33w%を、固形分35w%の無機物6懸濁液に加え、それから研究室中開ループで固形分含量72.5重量%に濃縮する。
【0169】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0170】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵したBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0171】
試験13
この試験は本発明を例示する。
【0172】
この試験を行うため、試験9と同じポリアクリル酸カリウムの乾燥無機物0.085重量%および炭酸リチウムの乾燥無機物0.33w%(625ppmのLi+に相当)を、固形分35w%の無機物6懸濁液に加え、それから研究室中開ループで固形分含量73.7重量%に濃縮する。
【0173】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0174】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵したBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)にて100rpmで測定する。
【0175】
結果を以下の表5に示す:
【0176】
【表7】

吸着の改善、およびその結果として分散性の改善におけるリチウムイオン含有化合物、詳細には炭酸リチウムの使用による支援は、上記の表に高い散乱ポテンシャルとしてはっきり表れている。
【実施例3】
【0177】
この実施例は、直径中央値d50が0.6μmの湿式研削した大理石を濃縮して得られるフィルターケーキの分散に関して、機械濃縮段階後の、従来の重合体と組み合わせたリチウム塩の導入に関する。
【0178】
試験14
この試験は先行技術を例示する。
【0179】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量67.8重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和した従来品の乾燥無機物0.54重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0180】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0181】
試験15
この試験は先行技術を例示する。
【0182】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量67.8重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和した従来品の乾燥無機物0.68重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0183】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0184】
試験16
この試験は本発明を例示する。
【0185】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量70.9重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和したものの乾燥無機物0.23重量%および炭酸リチウム0.28重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0186】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0187】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵した後のBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0188】
pH値を2回測定する:製造1時間後の初期pHおよび8日間貯蔵後の8日後pH。
【0189】
試験17
この試験は本発明を例示する。
【0190】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量70.9重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和したものの乾燥無機物0.31重量%および炭酸リチウム0.28重量%(530ppmのLi+に相当する。)とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0191】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0192】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵した後のBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0193】
pH値を2回測定する:製造1時間後の初期pHおよび8日間貯蔵後の8日後pH。
【0194】
試験18
この試験は本発明を例示する。
【0195】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量70.9重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%カリウムで中和したものの乾燥無機物0.39重量%および炭酸リチウム0.28重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0196】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0197】
撹拌しないで室温(21℃±1)で8日間貯蔵した後のBrookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0198】
pH値を2回測定する:製造1時間後の初期pHおよび8日間貯蔵後の8日後pH。
【0199】
結果を以下の表6にまとめる。
【0200】
【表8】

【0201】
従来の重合体と、従来の重合体に炭酸リチウムを組み合わせたものとを比較することで、直径中央値d50が0.6μmの湿式研削した大理石を濃縮して得られるフィルターケーキを分散させる目的で炭酸リチウムを用いる方法の効率が、はっきり表に示されている。
【実施例4】
【0202】
この実施例は、乾式研削における炭酸リチウムの使用および乾式研削した炭酸カルシウムの高固形分懸濁液の調製を例示する。
【0203】
試験19
この試験は先行技術を例示する。
【0204】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物7aを固形分含量68.5重量%で、Mw=3500で多分散性2.9のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和したものの乾燥無機物0.23重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0205】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0206】
試験20
この試験は本発明を例示する。
【0207】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物7bを固形分含量68.5重量%で、Mw=3500で多分散性2.9のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和したものの乾燥無機物0.23重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0208】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0209】
結果を以下の表7にまとめる。
【0210】
【表9】

【0211】
Li2CO3の使用は、乾式研削中に加える先行技術のNa2CO3の使用に勝る利点を示す。
【実施例5】
【0212】
この実施例は、研削した天然炭酸カルシウムの高固形分懸濁液の調製についての異なるリチウム塩の使用を例示する。
【0213】
試験21
この試験は先行技術を例示する。
【0214】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4b、602グラムを固形分含量66.5重量%で、Mw=6000で多分散性2.6のポリアクリル酸を70mol%ナトリウム30mol%カルシウムで中和したもの様々な量とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0215】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル4を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0216】
結果:
【0217】
【表10】

【0218】
試験22
この試験は本発明を例示する。
【0219】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4b、602グラムを固形分含量67.5重量%で、以下の「調製添加剤A」とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間):
Mw=6000で多分散性2.6のポリアクリル酸を70mol%ナトリウム30mol%カルシウムで中和したものの32重量%溶液76.14gを23.5重量%Li2SO4溶液42.6gと混合して「調製添加剤A」の透明溶液とした。
【0220】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0221】
【表11】

【0222】
試験23
この試験は本発明を例示する。
【0223】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4b、602グラムを固形分含量67.5重量%で、以下の「調製添加剤B」とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間):
Mw=6000で多分散性2.6のポリアクリル酸を70mol%ナトリウム30mol%カルシウムで中和したものの32重量%溶液134gをクエン酸リチウム70gと混合して「調製添加剤B」とする。「調製添加剤B」は透明な溶液で、貯蔵するとわずかに濁りが生じる。
【0224】
次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0225】
【表12】

【実施例6】
【0226】
この実施例は、研削した天然炭酸カルシウムの高固形分懸濁液の調製についての高多分散性ポリアクリル酸塩とリチウム塩の併用を例示する。
【0227】
高多分散性ポリアクリル酸ナトリウムを得るため、以下のポリアクリル酸ナトリウムを混合して「調製添加剤C」とする:
Mw=6000で多分散性2.6であり<1500Daltonの画分が18から20重量%であるポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和したもの100gと、
Mw=3500で多分散性2.4であり<1500Daltonの画分が28から30重量%であるポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和したもの100gと、および
Mw=1200で多分散性2.8であり<1500Daltonの画分が>70重量%であるポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和したもの100g。
【0228】
対応する「調製添加剤C」は、Mw=3600で多分散性2.8であり、<1500Daltonの画分が34から36重量%である。
【0229】
試験24
この試験は先行技術を例示する。
【0230】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物7aを固形分含量66重量%で分散させ(3000rpmの速度で5から10分間)、「調製添加剤C」をこの乾燥分の重量%に関して様々な量で用いてBrookfield粘度を制御した。次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0231】
結果:
【0232】
【表13】

【0233】
試験25
この試験は本発明を例示する。
【0234】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物7aを固形分含量66重量%で分散させ(3000rpmの速度で5から10分間)、炭酸リチウムと併用して「調製添加剤C」をこの乾燥分の重量%に関して様々な量で用いてBrookfield粘度を制御した。次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、室温(21℃±1)で100rpmで1分間撹拌後に、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型で測定する。
【0235】
結果:
【0236】
【表14】

【0237】
試験26
この試験は先行技術を例示する。
【0238】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量55重量%で分散させ(3000rpmの速度で5から10分間)、Mw1500で>1500の画分が65重量%であるポリアクリル酸ナトリウムマグネシウムを乾燥分で1.05重量%で用いてBrookfield粘度を制御した。次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0239】
結果:
【0240】
【表15】

【0241】
試験27
この試験は本発明を例示する。
【0242】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物4bを固形分含量60重量%で分散させ(3000rpmの速度で5から10分間)、炭酸リチウムを炭酸カルシウムの乾燥分に関して0.5重量%で併用して、Mw1500で>1500の画分が65重量%であるポリアクリル酸ナトリウムマグネシウムを乾燥分で0.45重量%で用いてBrookfield粘度を制御した。次いで、製造1時間後に初期Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0243】
結果:
【0244】
【表16】

【実施例7】
【0245】
この実施例は、吸着性修飾剤としてのリチウムイオン含有化合物の使用を例示する。リチウムイオン含有化合物は、経時的に低く安定したBrookfield(商標)粘度および良好なpH緩衝能力を同時に持ちながらも高い乾燥固形分含量が可能なS−PCC水性懸濁液を得ることを可能にする。
【0246】
試験28
この試験は先行技術を例示する。
【0247】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8aを固形分含量50.0重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムマグネシウム(1:1の比)で中和した従来品を乾燥無機物で0.44重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0248】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0249】
試験29
この試験は先行技術を例示する。
【0250】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8aを固形分含量60.1重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムマグネシウム(1:1の比)で中和した従来品を乾燥無機物で1.50重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0251】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0252】
試験30
この試験は先行技術を例示する。
【0253】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8aを固形分含量50.0重量%で、Mw=3500のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和した従来品を乾燥無機物で0.30重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0254】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0255】
試験31
この試験は先行技術を例示する。
【0256】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8aを固形分含量55.6重量%で、Mw=3500のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和した従来品を乾燥無機物で0.30重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0257】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0258】
Brookfield粘度が高過ぎて固形分60.0重量%にするのは不可能であったことを強調しなくてはならない。
【0259】
試験32
この試験は本発明を例示する。
【0260】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8bを固形分含量50.0重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムマグネシウム(1:1の比)で中和した従来品を乾燥無機物で0.22重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0261】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0262】
試験33
この試験は本発明を例示する。
【0263】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8bを固形分含量59.5重量%で、Mw=6000で多分散性2.7のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムマグネシウム(1:1の比)で中和した従来品を乾燥無機物で0.46重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0264】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0265】
試験34
この試験は本発明を例示する。
【0266】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8bを固形分含量49.9重量%で、Mw=3500のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和した従来品を乾燥無機物で0.32重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0267】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0268】
試験35
この試験は本発明を例示する。
【0269】
この試験を行うため、Pendraulik歯付き円盤撹拌器を用いて、無機物8bを固形分含量59.4重量%で、Mw=3500のポリアクリル酸を100mol%ナトリウムで中和した従来品を乾燥無機物で0.53重量%とともに分散させる(3000rpmの速度で5から10分間)。
【0270】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0271】
結果を以下の表8にまとめる。
【0272】
【表17】

表8を見ると、本発明のリチウムイオンを用いたS−PCCの修飾の効率がはっきりと実証されている。
【実施例8】
【0273】
この実施例は、吸着性修飾剤としてのリチウムイオン含有化合物の使用を例示する。リチウムイオン含有化合物は、経時的に低く安定したBrookfield(商標)粘度および良好なpH緩衝能力を同時に持ちながらも高い乾燥固形分濃度が可能な炭酸カルシウム水性懸濁液を得ることを可能にする。
【0274】
より詳細には、この実施例は、高固形分での湿式研削中に炭酸リチウムを導入することを例示する。
【0275】
試験36:
この試験は先行技術を例示する。
【0276】
この試験を行うため、一般的なポリアクリル酸ナトリウムマグネシウム(Mw6000、多分散性(Mw/Mn)2.5)を0.55重量%(乾燥重量対乾燥重量)で用いて、無機物2を固形分76重量%で分散させ、1.5リットル磨砕ミルメジアン(median)(Dynomill)で再循環させながら湿式研削して、直径中央値d50が0.85μmで、<2μmが91重量%、<1μmが63重量%、<0.2μmが21重量%の状態にした。
【0277】
次いで、研削後の初期Brookfield粘度を、製造1時間後に、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0278】
試験37:
この試験は本発明を例示する。
【0279】
この試験を行うため、一般的なポリアクリル酸ナトリウムマグネシウム(Mw6000、多分散性(Mw/Mn)2.5)を0.55重量%(乾燥重量対乾燥重量)およびLi2CO3としてLiイオン500ppmを用いて、無機物2を固形分78重量%で分散させ、次いで1.5リットル磨砕ミルメジアン(median)(Dynomill)で再循環させながら湿式研削して、直径中央値d50が0.87μmで、<2μmが90重量%、<1μmが62重量%、<0.2μmが22重量%の状態にした。
【0280】
次いで、研削後の初期Brookfield粘度を、製造1時間後に、および60℃で長期貯蔵後に、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。
【0281】
試験38:
この試験は本発明を例示する。
【0282】
この試験を行うため、一般的なポリアクリル酸ナトリウムマグネシウム(Mw6000、多分散性(Mw/Mn)2.5)を0.55重量%(乾燥重量対乾燥重量)およびLiOHxH2OとしてLiイオン500ppmを用いて、無機物2を固形分76重量%で分散させ、次いで1.5リットル磨砕ミルメジアン(median)(Dynomill)で再循環させながら湿式研削して、直径中央値d50が0.81μmで、<2μmが93重量%、<1μmが65重量%、<0.2μmが23重量%の状態にした。
【0283】
次いで、研削後の初期Brookfield(商標)粘度を、製造1時間後に、室温(21℃±1)で1分間撹拌してから、および60℃で長期貯蔵後に、スピンドル3を備えたBrookfield(商標)粘度計DV−III型を用いて、20℃で100rpmで測定する。
【0284】
結果を以下の表9に示す。
【0285】
【表18】

【実施例9】
【0286】
この実施例は、吸着性修飾剤としてのリチウムイオン含有化合物の使用を例示する。リチウムイオン含有化合物は、他の炭酸アルカリ塩の添加と比較して、経時的に低く安定したBrookfield(商標)粘度および良好なpH緩衝能力、ならびに良好な散乱ポテンシャルを同時に持ちながらも高い乾燥固形分濃度の炭酸カルシウム水性懸濁液を得ることを可能にする。
【0287】
より詳細には、この実施例は、炭酸カルシウム粒子表面の吸着性を修飾し、その結果直径中央値d50が0.8μm(<2μmが91重量%、<1μmが63重量%、<0.2μmが21重量%、に相当)の湿式研削した大理石の分散を改善することに関して、一般的なポリアクリル酸ナトリウムマグネシウム(Mw6000、多分散性(Mw/Mn)2.5)を0.55重量%(乾燥重量対乾燥重量)で用い、高固形分での湿式研削後に炭酸リチウムを導入することを例示する。研削中の懸濁液固形分は、63重量%であった。→無機物懸濁液(A)
塗膜が可視光を散乱する能力を反映する20g/m2の塗膜重量に対して110m2/kgより大きい散乱係数Sは、WO02/49766(p.8から10)に記載の方法に従って測定する。従って、光散乱能力は、専門家には既知の、Kubelka and Munkの論文に記載される方法で求められるKubelka−Munk光散乱係数で表される(Zeitschrift fur Technische Physik 12,539,(1931)),de Kubelka(J.Optical Soc.Am.38(5),448,(1948)et J.Optical Soc.Am.44(4),330,(1954))。
【0288】
試験39:
この試験は先行技術を例示する。
【0289】
5分間撹拌しながら、この無機物懸濁液(A)に、粉末K2CO3を1.3重量%加えた。
【0290】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。貯蔵後、さらに粘度および散乱ポテンシャルを測定した。
【0291】
試験40:
この試験は先行技術を例示する。
【0292】
5分間撹拌しながら、この無機物懸濁液(A)に、粉末Na2CO3を1.0重量%加えた。
【0293】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。貯蔵後、さらに粘度および散乱ポテンシャルを測定した。
【0294】
試験41:
この試験は本発明を例示する。
【0295】
5分間撹拌しながら、この無機物懸濁液(A)に、粉末Li2CO3を0.7重量%加えた。
【0296】
次いで、Brookfield粘度を、スピンドル3を備えたBrookfield粘度計DV−III型を用いて、1分間撹拌してから、室温(21℃±1)で100rpmで測定する。貯蔵後、さらに粘度および散乱ポテンシャルを測定した。
【0297】
結果を以下の表10に示す。
【0298】
【表19】

本発明のLi塩の使用により、散乱ポテンシャルを標準的な生成物よりも改善し、経時的に良好な粘度とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階:
a.少なくとも1種の炭酸カルシウム含有材料を水性懸濁液の形または乾燥形で提供する段階、
b.乾燥形または水溶液の形の、水酸化リチウムおよび酸化リチウム、ならびに一価および/または多価酸塩からなる群より選択される無機および/または有機単量体リチウム塩(炭酸リチウム、硫酸リチウム、クエン酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸リチウムなど)、ならびにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を提供する段階、
c.段階b)の少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物と段階a)の少なくとも1種の炭酸カルシウム材料を1つにまとめる段階、
を含む、分散剤の吸着性が改善された粒子表面を有する炭酸カルシウム材料の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、少なくとも1種のカルシウムイオン源および少なくとも1種の炭酸イオン、炭酸水素イオン、および/またはCO2源から得られる合成炭酸カルシウム(PCC)の形で、または無機材料を含有する天然炭酸塩(GCC)の形で提供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、天然の炭酸カルシウム(GCC)(大理石、方解石、石灰石、および/またはチョークなど)、沈殿炭酸カルシウム(PCC)(バテライトおよび/または方解石など)、ならびに炭酸カルシウム含有材料(白雲石など)、ならびに混合炭酸塩系填料(詳細には、マグネシウムが付随したカルシウムおよび類似体または誘導体など)、多様な物質(クレーまたはタルクまたは類似体または誘導体など)、ならびにこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、もしくは合成もしくは天然繊維との混合物)、ならびに無機物の共構造物(タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタン共構造物など)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、天然の炭酸カルシウム(GCC)、または沈殿炭酸カルシウム(PCC)、またはGCCとPCCとの混合物、またはGCCとPCCとクレーとの混合物、またはGCCとPCCとタルクとの混合物であり、およびさらにより好ましくは、大理石、チョーク、方解石、および石灰石の中から選択されるGCC、または方解石性(calcitic)PCCの中から選択されるPCC(菱面体晶PCCまたは偏三角面体晶PCCなど)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、場合により、分散剤および/または研削助剤の存在下で、および好ましくは前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で研削される(段階d)ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記研削された材料は、分別および/または濃縮される(段階e)ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分別および/または濃縮(段階e)に続いて、前記材料を、好ましくは前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で、水性媒体に分散させる(段階f)ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記研削された材料を乾燥させる(段階g)ことを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
段階a)で炭酸カルシウム材料が乾燥形で提供された場合に、段階d)で研削された炭酸カルシウム材料を水性媒体に分散させる(段階h)ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
段階h)で得られた水性懸濁液を、好ましくは前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で、研削する(段階i)ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階g)の乾燥させた材料を、好ましくは前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の存在下で、水性媒体に再分散させる(段階j)ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の炭酸カルシウム材料がPCCの場合、前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、段階a)の前および/または最中および/または後に加えられることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の炭酸カルシウム材料がGCCの場合、前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、研削段階d)の前および/または最中および/または後に加えられることを特徴とする、請求項5または8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、研削段階d)の後であって、分別および/または濃縮段階e)の前および/または最中および/または後に加えられることを特徴とする、請求項6または8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、分散段階f)の前および/または最中および/または後に加えられることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、研削段階d)の最中または後に1回で加えられるか、複数回にわけてそれぞれが分散段階h)の前、最中、または後に加えられることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の量の全部または一部が分散段階f)の前に加えられる場合、前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は研削段階d)の前および/または最中および/または後に加えられることを特徴とする、請求項7から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
研削段階d)は、7超、好ましくは7.5超、より好ましくは8.5から10.5、およびさらにより好ましくは9から10、例えば9.5のpHで行われることを特徴とする、請求項5から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
全乾燥炭酸カルシウムに対するリチウムイオン濃度は、10から2000ppm、好ましくは100から1000ppm、さらにより好ましくは200から800ppmであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、全乾燥炭酸カルシウムに対して、0.0035重量%から1重量%、好ましくは0.0035重量%から0.8重量%、およびさらにより好ましくは0.02重量%から0.4重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の炭酸カルシウム材料は、GCCとPCCを含み、PCCは、PCCとGCCの合計重量を基準として、10から90重量%、好ましくは20から80重量%、およびさらにより好ましくは30から70重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
段階e)、f)、またはg)が行われない場合、前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物は、全量が研削段階d)の前に用いられるか、または前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の一部が研削段階d)の前に用いられて、残りは段階d)の最中に加えられることを特徴とする、請求項5、9から10、12から13、16、または18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
分散剤を用いる場合、前記少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の使用量は、前記炭酸カルシウム材料の乾燥重量に対して、乾燥重量で0.01%から5%、好ましくは0.05%から2%、さらにより好ましくは0.1%から1%の範囲であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
研削段階d)は、5℃超、好ましくは20℃から120℃、より好ましくは45℃から105℃、およびさらにより好ましくは85℃から100℃の温度で行われることを特徴とする、請求項5から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
研削段階d)で研削しようとする材料の水性懸濁液の前記固形分濃度は、10から82%(炭酸カルシウム材料の乾燥重量で)、好ましくは50から81%、さらにより好ましくは60から80%、および特に好ましくは65%から72%であることを特徴とする、請求項5から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
段階d)で得られる前記研削された材料は、前記研削された材料の全重量を基準として、1μmより細かい粒子の画分を20重量%超、好ましくは60重量%超、より好ましくは75重量%超、およびなおより好ましくは85重量%超、およびさらにより好ましくは95重量%超含むことを特徴とする、請求項5から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の炭酸カルシウム含有材料は、乾燥GCCおよび/またはPCCを1重量%から82重量%、好ましくは15重量%から81重量%、およびさらにより好ましくは40重量%から80重量%含む水性懸濁液として、および詳細には乾燥GCCを63重量%から72重量%および/または乾燥PCCを47重量%から72重量%含む水性懸濁液として提供されることを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
研削段階d)は、任意の分散剤または研削助剤も存在しない場合、前記懸濁液の全重量を基準として、10重量%から35重量%の固形分含量で行われ、分散剤および/または研削助剤の存在下では、前記懸濁液の全重量を基準として、60重量%から82重量%の固形分含量で行われることを特徴とする、請求項5から27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記最終炭酸カルシウム材料懸濁液の固形分含量は、概して、研削段階d)が任意の分散剤または研削助剤も存在しないで行われる場合、45重量%から82重量%、および好ましくは45重量%から75重量%、より好ましくは68重量%から73重量%の範囲であり、研削段階d)が研削助剤の存在下で行われる場合、65重量%から82重量%、およびより好ましくは72重量%から78重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記最終炭酸カルシウム材料懸濁液のBrookfield(商標)粘度は経時的に安定であり、調製1時間後の前記炭酸カルシウム材料水性懸濁液のBrookfield(商標)粘度は、4000mPa・s未満、好ましくは2000mPa・s未満、より好ましくは500mPa・s未満であり、撹拌せずに8日間貯蔵した後の前記炭酸カルシウム材料水性懸濁液のBrookfield(商標)粘度は、4000mPa・s未満、好ましくは2000mPa・s未満、より好ましくは1000mPa・s未満、特には500mPa・s未満であることを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記最終炭酸カルシウム材料懸濁液は、20g/m2の塗膜重量で散乱係数Sが≧120m2/kgおよびBrookfield(商標)粘度が<1000mPa・sであり、好ましくは20g/m2の塗膜重量で散乱係数Sが≧140m2/kgおよびBrookfield(商標)粘度が<500mPa・sであることを特徴とする、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする、炭酸カルシウム材料。
【請求項33】
全乾燥炭酸カルシウムに対するリチウムイオン濃度は、10から2000ppm、好ましくは100から1000ppm、さらにより好ましくは200から800ppmであることを特徴とする、請求項32に記載の炭酸カルシウム材料。
【請求項34】
少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物を、全乾燥炭酸カルシウムに対して、0.0035重量%から1重量%、好ましくは0.0035重量%から0.5重量%、およびさらにより好ましくは0.02重量%から0.2重量%、詳細には0.05%の量で含むことを特徴とする、請求項32または33のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム材料。
【請求項35】
Sedigraph 5100(商標)を用いて求められたd50が、約0.2から5μm、好ましくは0.2から1.5μm、さらにより好ましくは0.25から1μm、およびより詳細には0.45μmから0.7μmであることを特徴とする、請求項32から34のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム材料。
【請求項36】
研削された材料の全重量を基準として、1μmより細かい粒子の画分が50重量%超、好ましくは80重量%超、より好ましくは85重量%超、さらにより好ましくは90重量%超、およびさらにより好ましくは95重量%超であることを特徴とする、請求項32から35のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム材料。
【請求項37】
20g/m2の塗膜重量で散乱係数Sが≧120m2/kgおよびBrookfield(商標)粘度が<1000mPa・sであり、好ましくは20g/m2の塗膜重量で散乱係数Sが≧140m2/kgおよびBrookfield(商標)粘度が<500mPa・sであることを特徴とする、請求項32から36のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム材料。
【請求項38】
紙、塗料、およびプラスチックへの、請求項32から37のいずれか一項に記載の前記炭酸カルシウム材料の使用。
【請求項39】
請求項32から37のいずれか前記に記載の前記炭酸カルシウム材料を含有する紙。
【請求項40】
請求項32から37のいずれか一項に記載の前記炭酸カルシウム材料を含有するプラスチック。
【請求項41】
請求項32から37のいずれか一項に記載の前記炭酸カルシウム材料を含有する塗料。
【請求項42】
請求項1から31のいずれか一項に記載の前記製造方法における少なくとも1種のリチウムイオン含有化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511073(P2012−511073A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539015(P2011−539015)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066223
【国際公開番号】WO2010/063757
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】