説明

吸着性シート

【課題】低圧力損失、高脱臭性能、高粉塵保持量であるシートを充分な接着強力を維持した中で実現、提供すること。
【解決手段】粉粒状吸着剤、熱可塑性粉末樹脂及び水流交絡法、及びニードルパンチ法により製造した不織布を構成単位とする吸着性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵機能と脱臭機能を有した空気浄化用濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用、家庭用フィルター等の分野において、濾材の高機能化・多様化の要請が急激に高まっており、除塵機能と脱臭機能を兼備する空気浄化用濾材の検討が多くなされている。そして、これら空気浄化用濾材として、粒子状または繊維状の吸着剤と接着剤を用いてシート化する方法が多く採用されており、例えば、基材間に粒状吸着剤と粒状接着剤の混合物を散布し、これを加熱接着してなる吸着濾材が開示されている(例えば特許文献1参照)。かかる吸着濾材は低コストで通気性に優れる吸着性シートが得られるが、吸着剤層と基材層との接着が弱いため剥離が生じやすく、プリーツ加工等で外力がかかる場合、あるいはフィルタを高風量下に曝した場合では吸着剤の脱落が大きい等実用上の問題を有していた。かかる問題を解決するため、例えば接着シートを用いて吸着剤層と基材を接着した吸着性シートが開示されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、かかる吸着性シートは、接着シートが通気性を阻害して通気抵抗が高くなり、更には接着面で粉塵が目詰まりしやすい、あるいは吸着性能を阻害するという問題を有していた。
【特許文献1】特開平11−5058号公報
【特許文献2】特開2002−273123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、充分な基材層と吸着層との接着性を有し、プリーツ加工性にも優れ、低通気抵抗、かつ高脱臭性能を有する吸着性シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(1)基材層間に吸着剤及び熱可塑性樹脂を含む吸着シートであって、該基材層の少なくとも片面がニードルパンチ加工及び/又は水流交絡加工が施された不織布であることを特徴とする吸着性シート、(2) (1)に記載の不織布がバインダー成分を含まない不織布である、(3) (1)乃至(2)に記載の不織布がエレクトレット不織布である(1)〜(3)のいずれかに記載の吸着性シートである。
【発明の効果】
【0005】
本発明による吸着性シートは、基材層と吸着層間の強い接着性を有し、低通気抵抗かつ脱臭性能も良好な吸着性シートを提供できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の吸着性シートは、基材層間に吸着剤及び熱可塑性樹脂を含む吸着性シートであって、該基材層の少なくとも片面がニードルパンチ加工及び/又は水流交絡加工が施された不織布であることが好ましい。本願発明者等が知る限り、ニードルパンチ加工、水流交絡加工がなされた不織布は、毛羽が多く、表面平滑性が低いため、フィルター等に用いる吸着性シートには用いられていなかった。しかし、特に基材層間に吸着剤及び熱可塑性樹脂を含むシートに用いれば、シート全体として使用する接着剤を劇的に低減することができるという特異な効果を本願発明者等は見出した。すなわち、従来の基材シートでは、実用に耐える接着強力を得るために接着シートを使用する、あるいは吸着性シート全体への熱プレス負荷を大きくする等の処理がなされており、結果として、高通気抵抗化、脱臭性能の低下等の悪影響を招来していた。一方、本発明のニードルパンチ加工及び/又は水流交絡加工が施された不織布は毛羽が発生するが、かかる毛羽が吸着層に入り込んでアンカーとなり、吸着剤を固定するために用いる吸着層内の接着剤が吸着層と基材層を接着する機能も発揮し、シート全体として使用する接着剤を劇的に低減することが可能となり、柔軟且つ低通気抵抗の吸着性シートを得ることができる。
【0007】
なお、本発明の吸着性シートに用いる基材不織布は水流交絡法、ニードルパンチ製法により不織布とされたものであるが、これらの処理は別法により不織布とされた後に実施してもよい。たとえば、一担、加熱圧着等により長繊維不織布を形成した後、前述した交絡法を施してもよい。このような基材不織布は繊維末端が多数存在し、かかる繊維末端が吸着剤層の中に深く入り込み、吸着層と基材層の接合を強固にする。
【0008】
本発明の基材不織布は、繊維径が3〜100μmが好ましい範囲である。かかる範囲であれば、柔軟性を保持しつつ、吸着層と基材層をつなぎ止める役割を十分に果たすことができるからである。より好ましくは5〜80μm、更に好ましくは10〜60μmである。
【0009】
本発明の基材不織布は、繊維長20〜200mmであることが好ましい。かかる範囲であれば、基材の強度を保持しつつ、適度な数の繊維末端が存在するからである。より好ましくは、30mm〜150mm、更に好ましくは40mm〜100mmである。
【0010】
本発明の基材層を構成する基材不織布の充填密度は0.15g/cc以下、であることが好ましい。なぜなら、後に述べる粉粒状吸着剤と熱可塑性粉末樹脂の混合粉粒体をこの基材不織布上に散布後、熱プレスし吸着性シートを得ようとするとある程度基材不織布の充填密度が低い方が低通気抵抗化を実現でき、かつ接着性も向上し、一体構造化できるからである。より好ましくは0.10g/cc以下である。
【0011】
本発明の基材不織布は、厚みは0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。0.1mm以下であれば目付斑も考慮すると粉粒状吸着剤の抜け、脱落の懸念が生じ、また1.0mm以上であればシート全体の厚みが厚すぎるため、プリーツ状ユニットとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてユニット全体での圧損が高くなり過ぎ実用上問題がある。目付量としては5〜100g/m2であることが好ましい。5g/m2未満であれば粉粒状吸着剤、及び熱可塑性粉末樹脂の抜けが多くなり実用上問題となる。100g/m2以上であれば、シート厚みが厚くなるためプリーツ状ユニットとした場合の構造抵抗が大きくなり実用上問題となる。
【0012】
本発明の基材不織布を構成する繊維材質はポリオレフィン系、レーヨン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート等特に規定はなく、芯鞘繊維を使用しても種々の混合繊維であっても当然構わない。また、タバコ煙粒子、カーボン粒子、海塩粒子をはじめとするサブミクロン粒子に対する除去効果も増大することができる帯電した不織布、いわゆるエレクトレットシートを基材に使用することもできる。エレクトレットシートを基材とすることにより、ダスト等が吸着層に侵入して吸着層内の細孔が閉塞することを防止し、フィルター寿命を延長することができるからである。
【0013】
また、繊維同士の接着は繊維成分自体の融着、あるいは一般に後加工で付与するようなバインダー成分を含まないことが好ましい。これら樹脂成分により低通気抵抗性が損なわれるだけでなく、粉粒状吸着剤と熱可塑性粉末樹脂混合品と熱処理により一体化しても、繊維同士の接着性が強固となるため、結果として粉粒状吸着剤層と基材不織布の接着性は見かけ上小さくなりがちになり、層間剥離等が発生しやすくなり品質上問題が生じやすくなる。すなわち、吸着性シートにプリーツ加工等で何らかの外力が加えられた場合、基材層を構成する繊維が接着剤で強固に接合されていると、吸着層と基材層間の接合点で破壊が起こるのに対し、基材層がニードルパンチ加工及び/又は水流交絡法のみでなれば、変形時に基材層内の繊維間でスリップして変形を吸収し、吸着層と基材層の接合点の破壊を防止できるからである。このような問題を避けるために低融点成分、あるいは低ガラス転移温度を有するバインダーを使用しても接着力はアップするが同時に粉粒状吸着剤の表面被覆率が高くなるため吸着特性の低下等のデメリットが生じる。いずれにしても、基材層内の繊維同士の接着はあまり強固にならないことが好ましい。
【0014】
本発明の吸着性シートに用いる基材層は、融点又は分解温度が、吸着層を構成する熱可塑性樹脂の融点より高い材料からなることが好ましい。基材層を構成する材料の融点又は分解温度が熱可塑性樹脂の融点より高ければ、吸着層を加熱接着する際、上述のような問題を生じ難いからである。具体的には10℃以上熱可塑性樹脂の融点より高いことが好ましく、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上である。上限は特に問題とならないが、200℃を超えても、効果は変わらず、一般的にコストパフォーマンスが低下する。
【0015】
本発明の基材不織布の繊維配向はランダム状、クロス状、パラレル状いずれでも構わない。また、ニードルパンチ加工を行う場合、ぺネ数5〜120本/cm2であることが好ましい。かかる範囲であれば、粒子状接着剤が基材層内に一部侵入して圧力損失が高くなることを防止しつつ、吸着層と基材層との接合が強くなるからである。より好ましくは10〜100本/cm2、更に好ましくは15〜80本/cm2である。
【0016】
本発明で用いる接着剤は、熱可塑性粉末樹脂であることが好ましい。粉末樹脂であれば、吸着剤及び基材不織布の毛羽部分に均一に分散することができるからである。
【0017】
熱可塑性粉末樹脂として種類はポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エチレンーアクリル共重合体、ポリアクリレート、ポリアーレン、ポリアクリル、ポリジエン、エチレンー酢酸ビニル、PVC、PS等があげられる。
【0018】
熱可塑性粉末樹脂の大きさは平均で1〜40μmが好ましい。より好ましくは5〜30μmである。更に好ましくは1〜40μmの範囲に95重量%以上が含まれることである。かかる範囲の粒子径であれば、熱可塑性樹脂が、粉粒状吸着剤の表面細孔を塞ぐことを低減できる一方、吸着剤との混合時にファンデルワールス力や静電気力による粉粒状吸着剤への予備接着が有効になされ、均一に分散することができ、吸着剤層と基材層の部分的剥離を効果的に防止することができるからである。
【0019】
熱可塑性粉末樹脂の形状は特に規定はないが、球状、破砕状等があげられる。当然ながら、2種以上の熱可塑性粉末樹脂を併用もできる。更には、薬品担持した粉粒状吸着剤あるいは薬品担持した基材不織布を使用した場合でもこの処方であれば、粉粒状吸着剤表面に熱可塑性粉末樹脂がドライ状態の混合時から仮接着した状態になるため仮に該薬品が相異なる性質のものであっても後のシート化工程でも互いに干渉することを避けることができるので充分な効果が発揮される。
【0020】
熱可塑性粉末樹脂の融点は、移動車両等の室内の環境温度等考慮すると80℃以上がよい。より好ましくは100℃以上がよい。
【0021】
熱可塑性粉末樹脂の溶融時の流動性はJIS K 7210記載のMI値でみれば1〜80g/10minがよい。より好ましくは3〜30g/10minである。かかる範囲であれば、吸着剤の表面の閉塞を防止しつつ、吸着層と基材層を強固に接着することができる。
【0022】
熱可塑性粉末樹脂の使用量は粉粒状吸着剤に対して1〜40重量%使用するのが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。かかる範囲内であれば、基材層との接着力、通気抵抗、脱臭性能に優れる吸着シートが得られるからである。
【0023】
熱可塑性粉末樹脂の粒径調整法は、機械粉砕、冷凍粉砕、化学調整法等があげられる。また最終的に篩にかけ一定粒径を得ることができるが、一定の粒径を確保できる方法であれば特に限定されない。
【0024】
構成単位としては基材不織布と粉粒状吸着剤及び熱可塑性粉末樹脂の混合粉粒体であるが、更に取り扱い性を良好にするために粉粒状吸着剤剥き出し側、つまり基材不織布との対抗面に通気性の良好な基材層(以下通気性シート)を積層することができる。通気性シートは粉粒状吸着剤表面に熱可塑性粉末樹脂が付着しているため、この熱可塑性粉末樹脂を有効利用し接着できる。通気性シートは基材不織布と同様のものが使用可能であるが、吸着性シートをプリーツ形状、波状形状等の空気浄化用フィルターユニットとして使用する場合、シート厚みが薄い方が、折り山ピッチを小さくし、吸着性シート面積を大きくし、通気抵抗低減、脱臭性能を向上させることが可能となるため通気性シートも薄いものを使用する方が好ましい。おおよそ全体厚みとして0.3〜2.5mmが好ましい。
【0025】
本発明の吸着性シートに用いられる吸着剤の平均粒子径は、通気性、吸着材の脱落、シート加工性等を考慮して、JIS標準ふるい(JIS Z8801)による値で平均60〜800μmであることが好ましく、100〜600μmであればより好ましい。平均粒子径が60μm未満の場合には、一定の高吸着容量を得るのに通気抵抗が大きくなりすぎ、また、同時にシート充填密度が高くなりやすく、粉塵供給時に早期の通気抵抗上昇を引き起こす原因にもなる。平均粒子径が800μmを越える場合には、脱落が生じやすくなり、またワンパスでの初期吸着性能が極端に低くなり、更にはプリーツ形状及び波状等の空気浄化用フィルターユニットとしたときの折り曲げ、及び波状加工時の加工性が悪くなる。なお、上記の粒状粉粒状吸着剤は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
【0026】
本発明の吸着性シートに用いられる粉粒状吸着剤は粉末状、粒状、破砕状、造粒状、ビーズ状があげられるが幅広く種々のガスを吸着できる活性炭系が好ましい。例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系、ピッチ系等の活性炭が好適に用いられる。表面観察によって見られる内部への導入孔いわゆるマクロ孔数は多い方がよい。活性炭と熱可塑性粉末樹脂から混合粉粒体をつくった際に、熱可塑性粉末樹脂が活性炭表面を被覆しても熱プレス加工時に細孔内部からのガス脱着により、吸着可能な細孔を開放することができる。また、活性炭表面はある程度粗い方が溶融した樹脂の流動性も悪くなり、吸着性能低下を抑えることができる。
【0027】
本発明の吸着性シートに用いられる粉粒状吸着剤のJIS K1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は、20重量%以上が好ましい。悪臭ガス等の無極性のガス状及び液状物質に対して高い吸着性能を必要とするためである。
【0028】
本発明の吸着性シートに用いられる吸着剤は、極性物質やアルデヒド類の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。
【0029】
ガス薬品処理に用いられる薬品としては、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、P―アニシジン、スルファニル酸等のアミン系薬剤や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5.5―ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2.2―イミノジエタノール、2.2.2―ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2.2−イミノジエタノール塩酸塩、P―アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L―アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸等が好適に用いられる。なお、薬品処理は、例えば、活性炭に薬品を担持させたり、添着することにより行う。また、活性炭に直接薬品を処理する以外に、シート面表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法やシート全体に含浸添着することも可能である。この際、アルギン酸ソーダやポリエチレンオキサイド等の増粘剤を混入した薬品水溶液をつくり、これを担持、添着を実施する方法もできる。この方法では水への溶解度が低い薬品を担持、添着し、更に薬品の脱落を抑制するのにも有効である。
【0030】
本発明の吸着性シートは、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は繊維類や不織布、織物中に練り込んでも、後加工で添着、及び担持して付与してもよい。例えば、難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した吸着性シートを製造することが可能である。
【0031】
上記の付随的機能を有する成分は、粉粒状吸着剤等へ添着又は担持してもよい。但し、この際には、粉粒状吸着剤本来の吸着機能を損なわないよう留意する必要がある。また、基材不織布や通気性シート等の繊維に吸着性能を有する機能を付与、例えば、酸やアルカリの薬剤を添着したりイオン交換繊維等を用いることにより、脱臭機能を強化することも可能である。
【0032】
吸着性シートの基本的な製法について説明する。まず、粉粒状吸着剤と熱可塑性粉末樹脂を所定の重量秤量し、シェーカー(撹拌器)に入れ、約10分間回転速度30rpmで撹拌する。この際の水分率は混合物重量の15%以内が好ましい。この時点で熱可塑性粉末樹脂が粉粒状吸着剤表面に仮接着された混合物となっている。次に、この混合粉粒体を基材不織布の上に散布し、熱プレス処理を実施する。熱プレスの際のシート表面温度は熱可塑性粉末樹脂融点の3〜30℃、好ましくは5〜20℃高い程度が好ましい。この際、通気性シートを更に積層すれば、より取り扱い性に優れた吸着性シートが得られる。
【0033】
また、熱処理する前に赤外線等で予め予備加熱し、仮接着しておけば、プレス時におこりがちな混合粉粒体の不規則な流動も生じず、より分散性が良好な吸着性シートが製造できる。赤外線による熱処理は、気流などを起こさず、混合粉粒体を静置した状態で加熱することができ、混合粉粒体の飛散などを防止することができる。
【0034】
最終的に熱プレスしシート製造するにはよく使用されるロール間熱プレス法、あるいは上下ともフラットな熱ベルトコンベヤー間にはさみこむフラットベッドラミネート法等があげられる。より均一な厚み、接着状態をつくりだすには後者の方がより好ましい。また、本特許で記載する基材不織布と上記製法の特徴の組み合わせにより、粉粒状吸着剤同志の過度の結着を抑制することができると同時に、基材不織布との実用上充分な接着強力を得ることができる。
【0035】
当然ながら前述した構成単位を複数層重ね合わせることもできる。該処方の詳細は実施例中で述べる。
【0036】
本発明の濾材を使用したプリーツ状フィルタユニットの厚みは、10〜400mmが好ましい。カーエアコンに内蔵装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルターユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると好ましい。
【0037】
本発明のフィルタユニットのひだ山頂点間隔は2〜30mmが好ましい。2mm以下ではひだ山間が密着しすぎでデッドスペースが多く、効率的にシートを活用できなくなる。一方、30mm以上ではシート展開面積が小さくなるためフィルター厚みに応じた除去効果を得ることができなくなる。
【0038】
本発明のフィルターユニットは、いずれの面を上流側に使用しても構わないが、嵩高いシート面を上流に使用する方が粉塵保持量も大きくなり好ましい。
【実施例】
【0039】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0040】
尚、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0041】
(1)厚み
荷重7gf/cm2の圧力を加えた時の値
【0042】
(2)ASHRAEダスト粉塵保持量
(線速30cm/s、供給濃度0.5g/m3の条件下で測定)
粉塵に対する目詰まり度の代用特性。初期通気抵抗から150Pa上昇したときを寿命と判断し、該時点において濾材に堆積した粉塵量を天秤で秤量した値である。サンプルサイズは15cm×15cmで測定実施した。本実施例中では基材シート(粉粒状吸着剤散布側)を上流にして負荷試験を実施。
【0043】
(3)通気抵抗は線速30cm/sの条件下での値。測定は70φに切り取ったサンプルで実施。
【0044】
(4)脱臭性能
トルエンガスを用いて線速16cm/sにおいてフィルターの上下流の濃度 をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス 濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6c m×6cmに切り取ったサンプルで実施。なお、本特許では上流側濃度は80 ppmとし、測定開始から1分後の除去率のデータを実施例に記載した。
【0045】
(5)剥離強度
基材シートと粉粒状吸着剤層の平均剥離強度を測定。試験片の大きさは幅50mm、長さ200mmとして、引張速度100mm/minとして実施。
【0046】
以下、実施例で詳細説明する。
【0047】
シートA:融点163℃のポリプロピレン繊維2.2dtex×51mmをカードにかけウェッブを作製後、ウォーターパンチ法にてシート化し、目付35g/m2、厚み0.5mm、通気抵抗6Paのスパンレース不織布を製造した。その後、このシートをコロナ荷電法により帯電させた。
【0048】
シートB:融点165℃のポリプロピレン繊維5dの繊度で、目付50g/m2のウェッブをスパンボンド法で作製し、その後、ニードルパンチを施し、繊維を絡ませながら厚み0.7mm、通気抵抗4Paシートを製造した。その後、このシートをコロナ荷電法により帯電させた。
【0049】
シートC:2.2dtex×51mm、融点163℃のポリプロピレン繊維及び1.7dtex×44mm、融点260℃のポリエステル繊維を重量比1:1で混合したシートを、ニードルパンチによりシート化及び繊維同士を摩擦させ目付25g/m2の帯電された不織布を作製した。
【0050】
シートD:融点163℃のポリプロピレン製フィルムをコロナ荷電実施することにより帯電させた。このフィルムをスプリット後、カードにかけウェッブを作製し、更にポリプロピレン製の目付15g/m2のスパンボンド不織布とニードルパンチにて一体加工し、総目付40g/m2、通気抵抗4Paの帯電不織布を作製した。
【0051】
シートE:ポリエステル芯鞘繊維4.4dtex×51mm、15重量%(芯部融点265℃、鞘部融点150℃)、ポリエステル芯鞘繊維22dtex×51mm、70重量%(芯部融点265℃、鞘部融点190℃)、及び非芯鞘繊維17dtex×51mm、15重量%(融点265℃)の繊維をカードにより混合後ウェッブ化し、その後、プレス加工実施することにより目付65g/m2、厚み0.3mm、通気抵抗4.0Paの不織布をサーマルボンド法にて作製した。
【0052】
シートF:スパンボンド法により融点265℃のポリエステル長繊維不織布2.2dtex、目付20g/m2、厚み0.18mm、通気抵抗5Paの不織布を作製した(東洋紡製エクーレ6201A)。
【0053】
シートG:シートFにアクリル系エマルジョンバインダー(ガラス転移点0℃)を10g/m2塗布し目付30g/m2、厚み0.20mm、通気抵抗7Paの不織布を作製した。
【0054】
(実施例1)平均粒径300μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が47重量%である石炭系粒状活性炭を1kg、熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209(エチレンーアクリル酸共重合、平均粒径10μm、MI9g/10min、融点105℃)を0.1kg重量部秤量し、約10分間撹拌混合した。この混合粉粒体をシートAの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせテフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.9mm、圧力10N/cm2に設定し120℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の吸着性シートを得た。
【0055】
(実施例2)実施例1同様の材料、方法で粒状活性炭/熱可塑性粉末樹脂混合物を作製し、この混合粉粒体をシートBの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせ、実施例1同様の方法で熱プレス、冷却を実施し所望の吸着性シートを得た。
【0056】
(実施例3)実施例1同様の材料、方法で粒状活性炭/熱可塑性粉末樹脂混合物を作製し、この混合粉粒体をシートCの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせ、実施例1同様の方法で熱プレス、冷却を実施し所望の吸着性シートを得た。
【0057】
(比較例1)実施例1同様の材料、方法で粒状活性炭/熱可塑性粉末樹脂混合物を作製し、この混合粉粒体をシートFの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせ、実施例1同様の方法で熱プレス、冷却を実施し所望の吸着性シートを得た。
【0058】
(比較例2)実施例1同様の材料、方法で粒状活性炭/熱可塑性粉末樹脂混合物を作製し、この混合粉粒体をシートGの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせ、実施例1同様の方法で熱プレス、冷却を実施し所望の吸着性シートを得た。
表1に主なデータ等をまとめた。
【0059】
(実施例4)実施例1同様の材料、方法で粒状活性炭/熱可塑性粉末樹脂混合物を作製し、この混合粉粒体をシートDの上に220g/m2になるように散布し、更にシートEを上から重ね合わせ、実施例1同様の方法で熱プレス、冷却を実施し所望の吸着性シートを得た。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
以上述べた如く、本発明の吸着性シートは、粒子状吸着材、熱可塑性粉末樹脂及び基材に使用する不織布を選定することにより、低圧力損失、高脱臭性能、高粉塵保持量を充分な接着性を維持した中で実現することができ、産業界に貢献することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の吸着性シートの模式図
【符号の説明】
【0063】
1 吸着性シート
2 基材シート
3 粉粒状吸着剤
4 通気性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層間に吸着剤及び熱可塑性樹脂を含む吸着シートであって、該基材層の少なくとも片面がニードルパンチ加工及び/又は水流交絡加工が施された不織布であることを特徴とする吸着性シート。
【請求項2】
前記不織布がバインダー成分を含まない不織布であることを特徴とする請求項1記載の吸着性シート。
【請求項3】
前記不織布がエレクトレット不織布であることを特徴とする吸着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−301434(P2007−301434A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129300(P2006−129300)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】