説明

周波数切替え装置

【課題】 回路規模が大きくなるのを抑えることができ、動作中に周波数を切り替えたときにシステム誤動作が起きるのを防ぐことのできる周波数切替え装置を提供する。
【解決手段】 周波数切替え器5は、位相周波数比較器10と、チャージポンプ回路11と、LPF回路12と、VCO回路13と、カウンタ回路14と、カウンタ回路14の動作を制御する制御部8を備える。制御部8は、逓倍数変更部16と、変更許可判定部15を備える。変更許可判定部15は、カウンタ回路14のカウンタ値に基づいて、逓倍数を目標逓倍数に変更するのを許可するか否かを判定する。例えば、カウンタ値が目標逓倍数以下の基準値(例えば、カウンタ値0)になったときに、逓倍数の変更を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数切替え装置および周波数切替え方法に関し、特にシステムの動作中に周波数の切替えを行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ機能付きの携帯電話機(カメラ付き携帯電話機ともいう)の利用者の数が増えてきている。カメラ付き携帯電話機は、電話やメールなどの通信通話機能のほかにカメラ機能を備えている。このカメラ付き携帯電話機では、カメラ画像の撮影中に電話やメールの電波を受信することも可能である。
【0003】
カメラ付き携帯電話機でカメラ画像を撮影しているとき、カメラ画像処理回路は所定の動作クロック周波数で動作している。このカメラ画像処理回路の動作クロック周波数の高調波が、電話およびメール受信で使用される無線周波数に重畳されると、ノイズとなって電話やメールなどの通信通話機能に支障をきたす場合がある。そのような場合、通信通話機能との干渉を防ぐためには、カメラ画像処理回路の動作クロック周波数を変更する処理が行われる。
【0004】
また、カメラ付き携帯電話機の場合、カメラ画像処理回路の後段に液晶表示用回路が備えられていることがある。そして、消費電力を抑えるために、液晶表示用回路の動作許容周波数が、動画処理時と静止画処理時で異なるように設定されていることがある。そのような場合にも、カメラのプレビュー状態である動画処理時と、撮影による画像取り込み状態である静止画処理時で、動作クロック周波数を変更する処理が行われる。
【0005】
そこで、PLL回路の動作中に出力周波数を切り替える方法として、PLL回路のループを一旦遮断し、所定の発振周波数(目標発振周波数ともいう)となる電圧制御発振器の入力電圧(目標入力電圧)を予めデジタル値として用意し、DAコンバーターを介して目標入力電圧を電圧制御発振器に入力した後、PLLのループを閉じるという方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−40959号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法では、DAコンバーターを別途設ける必要があるので、回路規模が大きくなるという問題がある。また、DAコンバーターは、半導体プロセス上での製造バラツキ(製造誤差)があり、実際に発振する周波数が目標発振周波数と一致しないことがあるという問題がある。また、DAコンバーター単体のテスト検査を追加する必要があり、製品のコストが上がるなどの問題がある。
【0007】
なお、PLL回路の動作中に単に動作クロック周波数の切替えを行うことも考えられる。例えば、図9に示すようなPLL回路を用いて動作クロック周波数の高速化が図られる。図9は、動作クロック周波数を高速化するPLL回路の一例を示すブロック図である。図10は、図9のPLL回路のカウンタ回路の動作の説明図である。図11は、図9のPLL回路の電圧制御発振器(VCO回路ともいう)の動作の説明図である。
【0008】
カウンタ回路は、所定の逓倍数を与えられると、電圧制御発振器からの出力信号(VCO出力信号ともいう)をその逓倍数に応じて分周する。ここで、分周とは、周波数を1/nに変換することをいう。カウンタ回路のカウンタ値の最大値をCmaxとすると、カウンタ値は、0から逓倍数まで増加して0に戻る。例えば、C1を逓倍数として設定した場合、カウンタ値は、0からC1まで増加して0に戻る。また、カウンタ値は、Cmaxになった場合にも0に戻る。逓倍数は1からCmaxまでの任意の整数で設定できる。
【0009】
ここで、図10に示すように、逓倍数をC2からC1(C1<C2とする)へ切り替えたときの動作を考える。図11に示すように、逓倍数がC2のときの電圧制御発振器の出力信号(VCO出力信号)の周波数はF2であり、逓倍数がC1のときのVCO出力信号の周波数はF1であるとする。つまり、この逓倍数をC2からC1へ切り替える動作は、VCO出力信号の周波数をF2からF1へ切り替える動作に対応している。
【0010】
ここでは、逓倍数をC2からC1へ切り替えたときに、カウンタ回路のカウンタ値がC1を超えている場合を考える。例えば、逓倍数をC2へ切り替えようとしていたとき、カウンタ値がC1を超えた後に、途中で切替え目標の逓倍数がC2からC1へ変更された場合を考える。その場合、図10に示すように、カウンタ値は、一旦、Cmaxまでカウントされてから0に戻り、C1までカウントする。そうすると、図11に示すように、電圧制御発振器からの出力信号(VCO出力信号)の周波数が過度に増加することになる。その結果、動作クロック周波数(PLL回路からの出力信号の周波数)が高速になりすぎてしまい、後段のデジタル信号処理回路の動作異常や誤動作を引き起こすおそれがあるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、回路規模が大きくなるのを抑えることができ、動作中に周波数を切り替えたときに誤動作が起きるのを防ぐことのできる周波数切替え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の周波数切替え装置は、第1入力信号と第2入力信号との位相を比較し、比較結果に応じた比較結果信号を出力する位相周波数比較手段と、前記比較結果信号に応じて電圧を増減させた電圧増減信号を出力する電圧増減手段と、前記電圧増減信号の電圧に応じた周波数の出力信号を出力する電圧制御発振手段と、所定の逓倍数に応じてカウンタ値をカウントし、前記カウンタ値に基づいて前記出力信号を分周して、前記位相周波数比較手段の前記第2入力信号として出力するカウンタ手段と、前記カウンタ手段で用いる前記逓倍数を、切替え目標の周波数に対応した目標逓倍数に変更する逓倍数変更手段と、前記カウンタ手段の前記カウンタ値に基づいて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可するか否かを判定する変更許可判定手段と、を備えた構成を有している。
【0013】
この構成により、システムの動作中に周波数の切替えを行うときには、カウンタ値に基づいて逓倍数の変更を許可するか否かが判定される。したがって、逓倍数の変更を行うときに、カウンタ値が目標逓倍数を超えており、カウンタ値がCmaxまでカウントされてから0に戻ってC1までカウントするような動作になるのを防ぐことができる。これにより、VCO出力信号の周波数が過度に増加するのを抑え、出力信号の周波数が高速になるのを抑制することができるので、システムの異常動作や誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。このようにして、システムの動作を停止させることなく、動作クロック周波数を切り替えることができる。この場合、従来のようなDAコンバーターを追加する必要がないので、回路規模が大きくなるのを抑えることができる。
【0014】
また、本発明の周波数切替え装置では、前記変更許可判定手段は、前記カウンタ値が前記目標逓倍数以下の所定の基準値になったときに、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可する構成を有している。
【0015】
この構成により、システムの動作中に周波数の切替えを行うときに、カウンタ値は目標逓倍数を超えていることがない。例えば、逓倍数をC2からC1へ切り替えようとしたときに、カウンタ回路のカウンタ値がC1を超えている場合には、カウンタ値が目標逓倍数C1以下の所定の基準値(例えばカウンタ値0)になるまで、逓倍数の変更が許可されない。そして、カウンタ値が目標逓倍数C1以下の所定の基準値(例えばカウンタ値0)になったときに、逓倍数の変更が許可される。したがって、カウンタ値は、常に基準値(例えばカウンタ値0)から目標逓倍数へカウントアップされる。つまり、カウンタ値がCmaxまでカウントされてから0に戻ってC1までカウントするような動作になるのを防ぐことができる。これにより、VCO出力信号の周波数が過度に増加するのを抑え、出力信号の周波数が高速になるのを抑制することができるので、システムの異常動作や誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の周波数切替え装置では、前記変更許可判定手段は、前記出力信号を用いて生成される映像ブランキング信号に基づいて、映像ブランキング期間に前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可する構成を有している。
【0017】
この構成により、映像ブランキング期間中に動作クロック周波数の切替えを行うことができる。例えば、垂直ブランキング期間中に動作クロック周波数の切替えを行うことができる。したがって、動作クロック周波数を切り替えるときに、表示画像が乱れるのを防ぐことができる。
【0018】
本発明の周波数切替え方法は、第1入力信号と第2入力信号との位相を比較し、比較結果に応じた比較結果信号を生成し、前記比較結果信号に応じて電圧を増減させた電圧増減信号を生成し、前記電圧増減信号の電圧に応じた周波数の出力信号を生成し、所定の逓倍数に応じてカウンタ値をカウントし、前記カウンタ値に基づいて前記出力信号を分周して、前記第2入力信号を生成し、前記逓倍数を切替え目標の周波数に対応した目標逓倍数に変更することにより、前記出力信号の周波数を切り替える周波数切替え方法であって、前記カウンタ値に基づいて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更する構成を有している。
【0019】
この構成によっても、上記のように、VCO出力信号の周波数が過度に増加するのを抑え、出力信号の周波数が高速になるのを抑制することができ、システムの異常動作や誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。したがって、システムの動作を停止させることなく、動作クロック周波数を切り替えることができる。この場合も、従来のようなDAコンバーターを追加する必要がないので、回路規模が大きくなるのを抑えることができる。
【0020】
本発明の撮像装置は、撮像手段と、前記撮像手段から得られた映像信号に画像処理を施す画像処理手段と、前記映像信号の映像ブランキング期間を検出する映像ブランキング期間検出手段と、請求項1に記載の周波数切替え装置と、を備え、前記周波数切替え装置は、前記映像ブランキング期間に前記画像処理手段の動作クロック周波数の切替えを行う構成を有している。
【0021】
この構成によっても、上記のように、映像ブランキング期間中に画像処理手段の動作クロック周波数の切替えを行うことができる。例えば、垂直ブランキング期間中に画像処理手段の動作クロック周波数の切替えを行うことができる。したがって、動作クロック周波数を切り替えるときに、表示画像が乱れるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、カウンタ値に基づいて逓倍数の変更を許可するか否かを判定する変更許可判定手段を設けることにより、従来のように回路規模が大きくなるのを抑えることができ、動作中に周波数を切り替えたときにシステム誤動作を引き起こすのを防ぐことができるという効果を有する周波数切替え装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の周波数切替え装置および撮像装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、撮像装置がカメラ付き携帯電話機であり、周波数切替え装置が周波数切替え器である場合を例示する。周波数切替え器は、カメラ付き携帯電話機の画像処理部等の動作中に動作クロック周波数の切替えを行うものである。
【0024】
本発明の実施の形態のカメラ付き携帯電話機を図2に示す。図2は、カメラ付き携帯電話機の構成を示すブロック図である。図2に示すように、カメラ付き携帯電話機1は、CCDやCMOSなどで構成された撮像素子2と、撮像素子2で撮影した画像に画像処理を施す画像処理部3と、無線通信を行う無線部4を備えている。また、カメラ付き携帯電話機1は、画像処理部3の動作クロック周波数の切替えを行う周波数切替え器5と、撮像素子2から得られた映像信号の垂直ブランキング期間を検出する垂直ブランキング期間検出部6を備えている。ここでは、撮像素子2が、本発明の撮像手段に相当し、画像処理部3が、本発明の画像処理手段に相当する。また、映像ブランキング期間検出部6が、本発明の映像ブランキング期間検出手段に相当する。
【0025】
図1は、周波数切替え器5の構成を示すブロック図である。図1に示すように、周波数切替え器5は、PLL回路7と、PLL回路7の動作を制御する制御部8を備えている。本実施の形態では、この制御部8によりPLL回路7の動作を制御して、動作クロック周波数の切替えを行う。具体的には、基準周波数の入力信号(第1入力信号)がPLL回路7に入力されると、制御部8がPLL回路7の動作を制御して、逓倍された周波数の出力信号がデジタル信号処理回路9に出力される。すなわち、本実施の形態の周波数切替え方法は、PLL回路7の制御方法であるともいえる。
【0026】
ここでは、まず、PLL回路7の構成について説明する。図1に示すように、PLL回路7は、位相周波数比較器10と、チャージポンプ回路11と、低域通過フィルタ12(LPF回路12ともいう)と、電圧制御発振器13(VCO回路13ともいう)と、カウンタ回路14を備えている。本実施の形態では、位相周波数比較器10とチャージポンプ回路11とLPF回路12とVCO回路13とカウンタ回路14によって、位相周波数同期ループが構成されている。そして、PLL回路7から出力された出力信号が、デジタル信号処理回路9へ動作クロック信号として入力される。このデジタル信号処理回路9が、カメラ付き携帯電話機1の画像処理部3や無線部4などである。
【0027】
位相周波数比較器10は、第1入力信号と第2入力信号を比較し位相差に応じてUP信号またはDN信号を出力する。第1入力信号は、PLL回路7に入力される基準周波数(水晶発振クロックなど)の基準クロック信号である。第2入力信号は、VCO回路13の出力信号の周波数を分周した分周クロック信号である。ここで、UP信号とDN信号は、本発明の比較結果信号に相当し、位相周波数比較器10は、本発明の位相周波数比較手段に相当する。
【0028】
図3は、位相周波数比較器10の動作の説明図である。位相周波数比較器10は、第1入力信号の立上りエッジと第2入力信号の立上りエッジのどちらが時間的に早いかを比較して、比較結果に応じてUP信号またはDN信号を出力する。ここでは、信号レベルがLOからHIへ変化している部分を立上りエッジという。
【0029】
図3に示すように、第1入力信号の立上りエッジが第2入力信号の立上りエッジより早い場合には、位相周波数比較器10はUP信号を出力する。このUP信号は、第1入力信号の立上りエッジの後、第2入力信号の立上りエッジが来るまで出力される。一方、第2入力信号の立上りエッジが第1入力信号の立上りエッジより早い場合には、位相周波数比較器10はDN信号を出力する。このDN信号は、第2入力信号の立上りエッジの後、第1入力信号の立上りエッジが来るまで出力される。
【0030】
チャージポンプ回路11は、UP信号が入力されたときには電圧増加信号を出力し、DN信号が入力されたときには電圧減少信号を出力する。このチャージポンプ回路11は、本発明の電圧増減手段に相当し、電圧増加信号および電圧減少信号は、本発明の電圧増減信号に相当する。
【0031】
低域通過フィルタ12(LPF回路12)は、所定のしきい周波数よりも低い周波数の信号のみを通過させる。本実施の形態では、電圧増減信号に含まれる高調波(高周波)のノイズがLPF回路12によって除去されて、VCO入力信号が出力される。
【0032】
電圧制御発振器13(VCO回路13)は、入力されるVCO入力信号の電圧に応じた周波数のVCO出力信号を出力する。図4は、VCO回路13の動作特性を示す説明図である。図4に示すように、VCO入力信号の電圧が大きいほど、VCO出力信号の周波数は高くなり、VCO入力信号の電圧が小さいほど、VCO出力信号の周波数は低くなる。本実施の形態では、このVCO回路13からの出力信号(VCO出力信号)が、PLL回路7からの出力信号でもある。このVCO回路13が、本発明の電圧制御発振手段に相当する。
【0033】
カウンタ回路14は、VCO出力信号の周波数を逓倍数に応じて逓倍して、位相周波数比較器10への第2入力信号として出力する。カウンタ回路14からの出力信号(第2入力信号)は、カウンタ値が0となったときに、信号レベルがLOからHIへと変化する。つまり、カウンタ回路からの出力信号(第2入力信号)には、カウンタ値が0となったときに、立上りエッジが形成されているともいえる。
【0034】
図5は、カウンタ回路14の動作の説明図である。カウンタ回路14はカウンタ機能を備えており、カウンタ値は0からCmaxまで増加して、Cmaxになると0に戻る。逓倍数は、任意に設定される数であり、1からCmaxまでの整数が設定される。例えば、C1を逓倍数として設定した場合には、カウンタ値は0からC1まで増加して0に戻る。ここでは、このカウンタ回路14が、本発明のカウンタ手段に相当する。
【0035】
つぎに、制御部8の構成について説明する。図1に示すように、制御部8は、カウンタ値に基づいて逓倍数の変更を許可するか否かを判定する変更許可判定部15と、カウンタ回路14で用いる逓倍数を切り替える逓倍数変更部16を備えている。この変更許可判定部15は、カウンタ回路14のカウンタ値を常に検知している。ここでは、変更許可判定部15が、本発明の変更許可判定手段に相当し、逓倍数変更部16が、本発明の逓倍数変更手段に相当する。
【0036】
以上のように構成されたカメラ付き携帯電話機1について、図面を用いてその動作を説明する。ここでは、画像処理部3の動作クロック周波数の切替えを行うときの周波数切替え器5の動作について説明する。
【0037】
図6は、周波数切替え器5で動作クロック周波数の切替えを行うときのフロー図である。また、図7は、垂直ブランキング期間の説明図であり、図8は、動作クロック周波数の切替え(逓倍数の変更)の動作の説明図である。ここでは、図8に示すように、PLL回路7の出力信号の周波数(動作クロック周波数)を切り替えるために、カウンタ回路14の逓倍数をC2からC1へ切り替えるときの動作について説明する。この場合、C1が本発明の目標逓倍数である。
【0038】
本実施の形態では、図4に示すように、カウンタ回路14の逓倍数がC2のとき(PLL回路7の出力信号の周波数の切替え前)、VCO入力信号の電圧はV2であり、VCO出力信号の周波数はF2である。そして、カウンタ回路14の逓倍数がC1のとき(PLL回路7の出力信号の周波数の切替え後)、VCO入力信号の電圧はV1であり、VCO出力信号の周波数はF2である。
【0039】
図6に示すように、本実施の形態のカメラ付き携帯電話機1において、画像処理部3の動作クロック周波数の切替えを行うときには、まず、垂直ブランキング信号の検出が行われ(S1)、垂直ブランキング期間が開始したか否かの判定が行われる(S2)。本実施の形態では、映像ブランキング期間検出部6が垂直ブランキング信号を常に検知しており、垂直ブランキング信号に基づいて垂直ブランキング期間開始の判定を行う。図7に示した例では、垂直ブランキング信号の信号レベルがHからLになったときに、垂直ブランキング期間が開始したと判定される。
【0040】
垂直ブランキング期間が開始したと判定された場合には、カウンタ値の検出が行われ(S3)、カウンタ値が0であるか否かの判定が行われる(S4)。本実施の形態では、変更許可判定部15が、カウンタ値を常に検知しており、カウンタ値が0であるかの判定を行う。そして、カウンタ値が0のときに、カウンタ回路14で用いる逓倍数の変更が行われる(S5)。そうすると、図7に示すように、PLL回路7からの出力信号の周波数は過渡応答によって変化しながら、動作クロック周波数の切替えが行われる。
【0041】
図8に示した例では、逓倍数をC2からC1へ変更しようとしたとき、カウンタ回路14のカウンタ値はn−1である。このようなときには逓倍数の変更はすぐに行われず、その後、カウンタ値が0になったときに逓倍数の変更が許可される。そして、カウンタ回路14のカウンタ値が0になった次の出力信号(VCO出力信号)の立上りエッジのときに、逓倍数がC2からC1へ変更される。
【0042】
本実施の形態では、図8に示すように、カウンタ回路14のカウンタ値が0になると、VCO出力信号の次の立上りエッジのときに、第2入力信号の信号レベルがLからHへ立ち上がる。この場合、この第2入力信号の信号レベルは、4クロックが経過したとき(カウンタ値が4のとき)に、HからLに戻る(立ち下がる)ように設定されている。なお、位相周波数比較器10は、入力信号の立上りエッジを用いて位相の比較を行っており、入力信号の立下りエッジは用いていない。したがって、第2入力信号の信号レベルは、任意のクロックが経過したとき(任意のカウンタ値のとき)に、HからLに戻るように設定されてもよい。
【0043】
このような発明の実施の形態の周波数切替え装置によれば、カウンタ値に基づいて逓倍数の変更を許可するか否かを判定する変更許可判定部15を設けることにより、従来のように回路規模が大きくなるのを抑えることができ、動作中に周波数を切り替えたときにシステム誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。
【0044】
すなわち、本実施の形態では、システムの動作中に周波数の切替えを行うときには、カウンタ回路14のカウンタ値に基づいて逓倍数の変更を許可するか否かが判定される。したがって、逓倍数の変更を行うときに、カウンタ値が目標逓倍数を超えており、カウンタ値がCmaxまでカウントされてから0に戻ってC1までカウントするような動作になるのを防ぐことができる。これにより、VCO出力信号の周波数が過度に増加するのを抑え、出力信号の周波数が高速になるのを抑制することができるので、システムの異常動作や誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。このようにして、後段のデジタル信号処理回路9を停止させることなく、カウンタ回路14の逓倍数を変更し、システムの動作クロック周波数(出力信号の周波数)をF2からF1へ変更することができる。この場合、従来のようなDAコンバーターを追加する必要がないので、回路規模が大きくなるのを抑えることができる。
【0045】
この場合、変更許可判定部は、カウンタ値が目標逓倍数以下の所定の基準値になったときに、逓倍数を目標逓倍数に変更するのを許可する。したがって、システムの動作中に周波数の切替えを行うときに、カウンタ値が目標逓倍数を超えていることがない。例えば、逓倍数をC2からC1へ切り替えようとしたときに、カウンタ回路のカウンタ値がC1を超えている場合には、カウンタ値が目標逓倍数C1以下の所定の基準値(例えばカウンタ値0)になるまで、逓倍数の変更が許可されない。そして、カウンタ値が目標逓倍数C1以下の所定の基準値(例えばカウンタ値0)になったときに、逓倍数の変更が許可される。したがって、カウンタ値は、常に基準値(例えばカウンタ値0)から目標逓倍数へカウントアップされる。つまり、逓倍数をC2からC1へ減らした場合でも、カウンタ値がCmaxまでカウントされてから0に戻ってC1までカウントするような動作になるのを防ぐことができ、カウンタ値0からC1へとスムーズに対応できる。これにより、VCO出力信号の周波数が過度に増加するのを抑え、出力信号の周波数が高速になるのを抑制することができるので、システムの異常動作や誤動作を引き起こすのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施の形態では、映像ブランキング期間中にカメラ付き携帯電話機の画像処理部の動作クロック周波数の切替えを行うことができる。例えば、垂直ブランキング期間中に画像処理手段の動作クロック周波数の切替えを行うことができる。したがって、動作クロック周波数を切り替えるときに、過渡応答によって周波数が変化しても、表示画像を乱すことなくフレームレートを変更することができる。また、この場合、PLL回路7にリセットをかけずに動作クロック周波数の変更ができるので、垂直ブランキング期間の引き延ばしが、PLL回路7の逓倍数の変更による過渡応答の時間だけで十分であり、必要最小限の引き延ばしで済む。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0048】
例えば、以上の説明では、カウンタ値が0のときに逓倍数の変更を許可する例について説明したが、本発明の範囲はこれに限られるものではなく、目標逓倍数以下のカウンタ値であれば、0以外のカウンタ値で逓倍数の変更を許可してもよい。
【0049】
また、以上の説明では、逓倍数の変更は、カウンタ値が0になった次の出力信号の立上りエッジで行われる例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、カウンタ値が0以外の値となった次の出力信号の立ち上がりで行ってもよい。
【0050】
また、逓倍数の変更は、第1入力信号や第2入力信号の波形の状態変化(信号レベルの変化)をトリガにして行ってもよい。例えば、第1入力信号や第2入力信号の立上りエッジのときに、逓倍数の変更を行ってもよい。
【0051】
また、PLL回路7の構成は、画像撮影装置あるいは画像表示装置と同一チップあるいは別チップのどちらの構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる周波数切替え装置は、回路規模が大きくなるのを抑えることができ、動作中に周波数を切り替えたときにシステム誤動作が起きるのを防ぐことができるという効果を有し、カメラ付き携帯電話機の周波数切替え器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態における周波数切替え装置のブロック図
【図2】本実施の形態におけるカメラ付き携帯電話機のブロック図
【図3】本実施の形態における位相周波数比較器の動作を示す説明図
【図4】本実施の形態におけるVCO回路の動作の説明図
【図5】本実施の形態におけるカウンタ回路の動作の説明図
【図6】本実施の形態における周波数切替え装置の動作を説明するためのフロー図
【図7】本実施の形態における垂直ブランキング期間の説明図
【図8】本実施の形態における周波数の切替え(逓倍数の変更)の動作の説明図
【図9】従来のPLL回路のブロック図
【図10】従来のカウンタ回路の動作の説明図
【図11】従来のVCO回路の動作の説明図
【符号の説明】
【0054】
1 カメラ付き携帯電話機
2 撮像素子
3 画像処理部
5 周波数切替え器
6 垂直ブランキング期間検出部
7 PLL回路
8 制御部
9 デジタル信号処理回路
10 位相周波数比較器
11 チャージポンプ回路
13 電圧制御発振器(VCO回路)
14 カウンタ回路
15 変更許可判定部
16 逓倍数変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力信号と第2入力信号との位相を比較し、比較結果に応じた比較結果信号を出力する位相周波数比較手段と、
前記比較結果信号に応じて電圧を増減させた電圧増減信号を出力する電圧増減手段と、
前記電圧増減信号の電圧に応じた周波数の出力信号を出力する電圧制御発振手段と、
所定の逓倍数に応じてカウンタ値をカウントし、前記カウンタ値に基づいて前記出力信号を分周して、前記位相周波数比較手段の前記第2入力信号として出力するカウンタ手段と、
前記カウンタ手段で用いる前記逓倍数を、切替え目標の周波数に対応した目標逓倍数に変更する逓倍数変更手段と、
前記カウンタ手段の前記カウンタ値に基づいて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可するか否かを判定する変更許可判定手段と、
を備えたことを特徴とする周波数切替え装置。
【請求項2】
前記変更許可判定手段は、
前記カウンタ値が前記目標逓倍数以下の所定の基準値になったときに、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可することを特徴とする請求項1に記載の周波数切替え装置。
【請求項3】
前記変更許可判定手段は、
前記出力信号を用いて生成される映像ブランキング信号に基づいて、映像ブランキング期間に前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の周波数切替え装置。
【請求項4】
第1入力信号と第2入力信号との位相を比較し、比較結果に応じた比較結果信号を生成し、
前記比較結果信号に応じて電圧を増減させた電圧増減信号を生成し、
前記電圧増減信号の電圧に応じた周波数の出力信号を生成し、
所定の逓倍数に応じてカウンタ値をカウントし、前記カウンタ値に基づいて前記出力信号を分周して、前記第2入力信号を生成し、
前記逓倍数を切替え目標の周波数に対応した目標逓倍数に変更することにより、前記出力信号の周波数を切り替える周波数切替え方法であって、
前記カウンタ値に基づいて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更するのを許可するか否かを判定し、
前記判定結果に応じて、前記逓倍数を前記目標逓倍数に変更することを特徴とする周波数切替え方法。
【請求項5】
撮像手段と、
前記撮像手段から得られた映像信号に画像処理を施す画像処理手段と、
前記映像信号の映像ブランキング期間を検出する映像ブランキング期間検出手段と、
請求項1に記載の周波数切替え装置と、
を備え、
前記周波数切替え装置は、前記映像ブランキング期間に前記画像処理手段の動作クロック周波数の切替えを行うことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−172384(P2008−172384A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1915(P2007−1915)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】