説明

周波数制御回路及び出力周波数制御方法

【課題】接地電位が変動した場合においても、通信品質の劣化が生じない周波数制御回路及び出力周波数制御方法を提供すること
【解決手段】本発明にかかる周波数制御回路は、入力電圧に応じて出力周波数を変化させる電圧制御発振器10と、電圧制御発振器10から出力される出力周波数と基準周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力電圧を変化させる位相検出器11と、電圧制御発振器10における接地電位と位相検出器11における基準接地電位との間に発生する抵抗によって生じる電位差を、出力電圧に加算して電圧制御発振器10へ出力する加算器12と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周波数制御回路及び出力周波数制御方法に関し、特にPLL回路を備える周波数制御回路と、PLL回路を用いた出力周波数制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波無線通信装置は、高周波帯の電圧制御発振器(VCO)と、混合器(MIX)と、送信最終段増幅器である電力増幅器(PA)と、中間周波数帯の電力増幅器と、電源等、それぞれの機能を有する複数の回路により構成される。これらの内のいくつかの機能を集め、数点の機能部品(モジュール)として構成し、組み立てる場合がある。
【0003】
この場合、各モジュール間の接地電位(GND)は、モジュール間を、コネクタを用いて接続することによって、または、GNDとして用いられているモジュールの筐体同士をネジ留めすることによって接続される。ここで、図4を用いてマイクロ波無線通信装置の一例を示す。
【0004】
図4のマイクロ波無線通信装置は、VCO120と、送信MIX130と、受信MIX140と、PA150と、受信初段増幅器である低雑音増幅器(LNA)160と、を用いて構成される高周波数帯モジュール110を備えている。さらに、マイクロ波無線通信装置は、中間周波数帯の増幅器220と、中間周波数帯の増幅器230と、電源回路240と、PLL回路250と、を用いて構成されるモジュール210とを備えている。
【0005】
モジュール110とモジュール210との間における信号又は電源等は、コネクタを用いて入出力されている。高周波数帯のモジュール110は、高周波信号を扱うため、使用される基板は高周波用基板となる。高周波用基板は、中間周波数帯にて使用する基板と比較し高価であるため、モジュール110に組み込む機能を絞り、面積を狭くする必要がある。そのため、VCO120へ入力する電圧を生成するPLL回路250や、モジュール110に電源供給する電源回路240のように高周波信号を処理しない機能は、モジュール210に配置される。これにより、電源回路240とモジュール110とは、モジュール110とモジュール210との間に設けられるコネクタにより接続される構成となっている。
【0006】
VCO120は、周波数制御電圧端子に印加された電圧により、出力周波数の制御を行う。周波数制御電圧端子に印可される電圧VtはPLL回路250より出力される。
【0007】
特許文献1には、上述したPLL回路と、VCOと、を含む回路の構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−158738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、図5のマイクロ波無線通信装置を用いて、発生する課題について説明する。モジュール210は、中間周波数帯の増幅器220と、中間周波数帯の増幅器230と、PLL IC260と、ループフィルタ270と、電源回路240と、を備えている。PLL IC260は、位相比較器、チャージポンプ、分周器等の機能を有する。
【0010】
モジュール110は、VCO120と、送信MIX130と、受信MIX140と、送信PA150と、LNA160と、を備えている。ここで、装置の消費電力を抑え、不要な信号を出力しないために、送信PA150の電源は、送信信号がない場合OFFに設定されている。また、モジュール110及びモジュール210のGNDは、それぞれの筐体をネジ止めすることにより接続されている。この場合、モジュール110の接地電位とモジュール210の接地電位との間には、筐体の接触による抵抗310が生じる。
【0011】
抵抗310の抵抗値をRとし、抵抗310に流れている電流をIとすると、V=RIにて計算される電位差が生ずる。よって、モジュール210の接地電位を基準とした場合、モジュール110の接地電位は、厳密にはモジュール210の接地電位と等電位ではない。モジュール110の接地電位をGND1とする。
【0012】
ここで、VCO120の周波数制御電圧端子は、ループフィルタ270の出力電圧Vtが印加されている。この周波数制御電圧Vtは、モジュール210のPLL IC260内部の位相比較器により検出された位相差に対してPLL IC260から出力される電圧が、ループフィルタ270を介して平均化された後の電圧値である。モジュール110の接地電位は、GND1である。そのため、VCO120に対する周波数制御電圧は、Vt−GND1となる。これより、VCO120は、Vt−GND1に対応する周波数の信号を出力する。この、VCO120に対する周波数制御電圧をVt(VCO)とする。
【0013】
送信PA150の電源が時間t_1にONからOFFに変動した場合のGND1、Vt、Vt(VCO)のそれぞれの電圧の変化を図6に示す。送信PA150の電源がONの時に、抵抗310に流れる電流をI=2i、送信PA150の電源がOFF時に抵抗310に流れる電流をI=iとする。Vtは、VCO120から出力される周波数の位相差に対して出力される電圧である。そのため、時間t_1では、Vtは、モジュール110の送信PA150の電源がON状態及びOFF状態に切り替えられることにより変化しない。
【0014】
また、モジュール110の送信PA150の電源がONからOFFに変化すると、モジュール110とモジュール210との間の抵抗310に流れる電流が変化する。抵抗310に流れる電流の変化に伴い、抵抗310に発生する電圧も変化する。そのため、モジュール110の送信PA150の電源がONからOFFに変化すると、GND1の値は、変化する。
【0015】
図6に示した例では、送信PA150の電源がONからOFFに変化することにより、モジュール110に流れる電流は、送信PA150の電源がON状態のときと比較して1/2となっている。そのため、GND1の値も2i×Rからi×Rへと1/2となる。図6より、送信PA150の電源がONの時のVt(VCO)は、Vt(VCO)_PAON=Vt−2i×Rであり、送信PA150の電源がOFFとなった瞬間(時間t_1)のVt(VCO)は、Vt(VCO)_PAOFF=Vt−i×Rである。
【0016】
図7にVCO120の出力周波数と、VCOに対する周波数制御電圧との特性の一例を示す。VCO120に対する周波数制御電圧がVt(VCO)_PAONからVt(VCO)_PAOFFに変化すると、出力周波数がF_PAONからF_PAOFFに変化する。出力周波数が変動した後のVt、Vt(VCO)の変化について再び図6を用いて説明する。周波数が変化したことにより、PLL IC260内部の位相比較器で位相差が検出され、位相差に対してPLL IC260より出力される電圧が変化する。Vtは、ループ回路の特性に従って変化し、Vt(VCO)の電圧は時間t_1からt_2にてVt(VCO)_PAOFFからVt(VCO)_PAONに戻る。これにより出力周波数もF_PAOFFからF_PAONに戻る。送信PA150の電源が時間t_1にONからOFFに変動した場合の周波数変化を図8に示す。出力周波数が時間t_1にF_PAONからF_PAOFFへ変動し、その後、時間t_1からt_2にて再びF_PAONに戻る。上述したように、送信PA150の電源の状態が変化した時に、モジュール110の接地電位(GND1)が変化する。それにより、VCO120に対する周波数制御電圧Vt(VCO)が変化し、VCOの出力周波数が変動する。近年のマイクロ波無線通信装置では狭帯域、多値の変調方式が使用される。そのため、図5において説明したPLL回路を用いてVCO120の出力周波数の制御を行う場合、接地電位の変動に応じて発生する周波数の変動が通信品質の劣化につながるという問題が生じる。
【0017】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、接地電位が変動した場合においても、通信品質の劣化が生じない周波数制御回路及び出力周波数制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様にかかる周波数制御回路は、入力電圧に応じて出力周波数を変化させる電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される出力周波数と基準周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力電圧を変化させる位相検出器と、前記電圧制御発振器における接地電位と前記位相検出器における基準接地電位との間に発生する抵抗によって生じる電位差を、前記出力電圧に加算して前記電圧制御発振器へ出力する加算器と、を備えるものである。
【0019】
本発明の第2の態様にかかる出力周波数制御方法は、入力電圧に応じて出力周波数を変化させる電圧制御発振器から出力される出力周波数と、基準周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力する出力電圧を変化させるステップと、前記出力電圧と、前記電圧制御発振器における接地電位と当該接地電位に抵抗を介して接続される基準接地電位との間の電位差とを加算するステップと、前記加算された電圧を前記電圧制御発振器へ出力するステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、接地電位が変動した場合においても、通信品質の劣化が生じない周波数制御回路及び出力周波数制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1にかかる無線通信装置の構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる無線通信装置の構成図である。
【図3】実施の形態1にかかる増幅器の電源状態を変化させた時の電圧の変化を示す図である。
【図4】一般的なPLL回路を用いた無線通信装置の構成図である。
【図5】一般的なPLL回路を用いた無線通信装置の構成図である。
【図6】一般的なPLL回路を用いた無線通信装置において、増幅器の電源状態を変化させた時の電圧の変化を示す図である。
【図7】一般的な電圧制御発振器における制御電圧と出力周波数との関係を示す図である。
【図8】一般的なPLL回路を用いた無線通信装置において、増幅器の電源状態を変化させた時の出力周波数の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1を用いて本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成例について説明する。無線通信装置は、電圧制御発振器10と、位相検出器11と、加算器12とを備えている。
【0023】
電圧制御発振器10は、入力電圧に応じて出力周波数を変化させる。電圧制御発振器10は、VCO(Voltage Controlled oscillator)と称され、変化する出力周波数を発振周波数とする発振器である。
【0024】
位相検出器11は、水晶発振器等(図示せず)、もしくは水晶発振器等から出力された周波数を分周して入力された基準周波数と、電圧制御発振器10から出力された出力周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力する出力電圧Vtを変化させる。例えば、位相検出器11は、基準周波数と出力周波数とを比較し、出力周波数と基準周波数とを一致させるように制御するために、出力電圧Vtを変化させる。図7において説明したように、電圧制御発振器10に入力される電圧が大きくなるほど、出力される周波数が大きくなると仮定すると、位相検出器11は、基準周波数と比較して出力周波数が小さい場合、出力する電圧Vtを大きくして、電圧制御発振器10から出力される周波数を大きくするように制御する。
【0025】
電圧制御発振器10における接地電位と位相検出器11における基準接地電位13との電位差をGND1とする。加算器12は、位相検出器11から出力される出力電圧Vtと、GND1と、を加算して電圧制御発振器10へ出力する。ここで、位相検出器11における基準接地電位13と、電圧制御発振器10における接地電位との関係について説明する。例えば、電圧制御発振器10が、電圧制御発振器10を備える筺体にねじ留めされることにより接地され、基準接地電位13も、位相検出器11を有する筺体にねじ止めされることにより接地されている場合に、それぞれの筺体を接続することにより、接地電位が接続される。この場合、筺体を接続することにより、位相検出器11における基準接地電位13と、電圧制御発振器における接地電位との間に、抵抗14が発生する。抵抗14の抵抗値をR、抵抗14に流れる電流をIとすると、電圧制御発振器10における接地電位は、基準接地電位13を基準とすると、基準接地電位13よりも、I×R高くなる。
【0026】
加算器12は、位相検出器11から出力される出力電圧Vtと、電位差GND1と、を加算した、Vt(VCO)=Vt+GND1を電圧制御発振器10へ出力する。
【0027】
ここで、無線通信装置内の増幅器等(図示せず)のスイッチがONもしくはOFFに切り替えられることにより、無線通信装置内を流れる電流の値が変化する。たとえば、電圧制御発振器10に増幅器が接続されており、無線通信装置から外部装置へ送信する送信信号が無い場合には、増幅器のスイッチをOFFにする場合について説明する。このように増幅器のスイッチをOFFにすることにより、不要な信号の出力を抑制することができる。
【0028】
増幅器のスイッチがON状態の場合に、基準接地電位13に流れる電流を2iとし、増幅器のスイッチがOFF状態の場合に、基準接地電位13に流れる電流をiとする。この場合、抵抗14において発生する電圧は、増幅器のスイッチがON状態の場合、2i×Rとなり、増幅器のスイッチがOFF状態の場合、i×Rとなる。これにより、増幅器のスイッチがONもしくはOFFに切り替えられることにより、電圧制御発振器10における接地電位は変化する。
【0029】
ここで、電圧制御発振器10における電圧V(VCO)は、加算器12から入力される電圧Vt(VCO)から、電圧制御発振器10における接地電位GND1を減算した、Vt(VCO)−GND1となる。Vt(VCO)=Vt+GND1であることから、V(VCO)=Vtとなる。これにより、電圧制御発振器10における電圧V(VCO)は、GND1の値によらず位相検出器11から出力されるVtによって定まる。
【0030】
以上説明したように、図1における無線通信装置内に加算器12を設けることにより、位相検出器11から出力される電圧Vtと、電圧制御発振器10における接地電位GND1とを加算した電圧Vt(VCO)を出力することができる。これより、電圧制御発振器10において、接地電位の変動による出力周波数の変動を抑制することにより、通信品質の劣化を防止することができる。
【0031】
続いて、図2を用いて本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の詳細な構成例について説明する。無線通信装置は、高周波信号の処理を行う高周波数帯モジュール21と、中間周波数帯モジュール22と、を備えている。高周波数帯モジュール21は、電圧制御発振器10と、混合器23と、混合器24と、電力増幅器(PA)25と、低雑音増幅器(LNA)26と、を有している。中間周波数帯モジュール22は、位相検出器11と、加算器12と、電源36と、増幅器37と、増幅器38と、を有している。位相検出器11は、PLL IC27とループフィルタ28とを有している。加算器12は、抵抗29乃至33と、オペアンプ34と、オペアンプ35と、を有している。
【0032】
電圧制御発振器10と、混合器23と、混合器24と、電力増幅器(PA)25と、低雑音増幅器(LNA)26とは、高周波数帯モジュール21用の筺体内に収納されている。ここで、高周波数帯モジュール21用の筺体は、金属によって形成され、電圧制御発振器10と、混合器23と、混合器24と、電力増幅器(PA)25と、低雑音増幅器(LNA)26とをシールドしている。また、高周波数帯モジュール21用の筺体の電位をGND1とする。位相検出器11と、加算器12と、電源36と、増幅器37と、増幅器38とは、中間周波数帯モジュール22用の筺体内に収納されている。ここで、中間周波数帯モジュール22用の筺体は、金属によって形成され、位相検出器11と、加算器12と、電源36と、増幅器37と、増幅器38とをシールドしている。また、筺体の電位を基準接地電位13とする。
【0033】
高周波数帯モジュール21用の筺体と、中間周波数帯モジュール22用の筺体とは、例えばそれぞれの筺体をネジ止めすることによって接続されている。もしくはそれぞれの筺体の間がコネクタにより接続されてもよい。従って、筺体間には抵抗14が発生する。すなわち、筺体の接続抵抗が、抵抗14となる。
【0034】
電圧制御発振器10は、加算器12から入力される入力電圧の変化に応じて変化する周波数信号を混合器23及び混合器24へ出力する。混合器23は、電圧制御発振器10から入力される周波数信号を用いて、中間周波数帯モジュール22の増幅器37から入力される中間周波数信号を、高周波信号へ変換する。PA25は、混合器23によって生成された高周波信号の電力を増幅し、外部装置へ出力する。PA25は、外部装置へ出力する信号がない場合は、OFF状態に設定され、外部装置へ出力する信号がある場合は、ON状態に設定される。LNA26には、外部装置から高周波信号が入力される。混合器24は、LNA26から出力された高周波信号を、中間周波数信号へ変換する。混合器24は、中間周波数信号を中間周波数帯モジュール22の増幅器38へ出力する。
【0035】
PLL IC27は、電圧制御発振器10から出力される出力周波数信号を取得する。PLL IC27は、取得した出力周波数信号の位相と、基準周波数信号の位相とを比較する。PLL IC27は、比較結果に応じた出力電圧を出力する。つまり、PLL IC27は、出力周波数信号の位相と、基準周波数信号の位相とが同一となるように、出力電圧を制御する。もしくは、PLL IC27は、出力周波数と、基準周波数とが同一となるように出力電圧を制御する。このように、PLL IC27は、出力周波数信号の位相と基準周波数信号の位相とを比較する位相比較器の機能と、出力電圧を変化させるチャージポンプ等の機能とを有する回路を備えている。さらに、PLL IC27は、電圧制御発振器10から出力される出力周波数信号を分周させる分周器の機能を有する回路を備えてもよい。この場合、位相比較器は、分周された周波数信号の位相と基準周波数信号の位相、もしくは分周された周波数と基準周波数とを比較する。このように分周器としての機能を有し、分周器の分周比率を変化させることで、電圧制御発振器10から出力される周波数信号の周波数を変化させることができる。PLL IC27は、ループフィルタ28へ電圧を出力する。ループフィルタ28は、出力された電圧を整流し、加算器12へ出力する。
【0036】
続いて、加算器12における回路の構成例について説明する。抵抗29と抵抗30とは並列に接続され、抵抗29と抵抗30との節点が、抵抗31に接続されている。さらに、抵抗31と、抵抗32と、抵抗33とは直列に接続されている。また、抵抗29乃至33は、全て同じ抵抗値Raを有する。ここで、オペアンプ34のマイナス端子は、抵抗29、30及び31の節点と接続されている。オペアンプ34のプラス端子は、GNDに接地されている。オペアンプ34の出力端子は、抵抗31及び32の節点と接続されている。オペアンプ35のマイナス端子は、抵抗32及び33の節点と接続されている。オペアンプ35のプラス端子は、GNDに接地されている。オペアンプ35の出力端子は、抵抗33及び電圧制御発振器10と接続されている。
【0037】
ループフィルタ28から出力される電圧Vtは、加算器12の抵抗30へ入力される。また、高周波数帯モジュール21の筺体は、加算器12の抵抗29の一端と接続される。すなわち、抵抗29の一端の電位は、GND1になる。オペアンプ34のマイナス端子は、仮想短絡によりプラス端子のGNDと同電位となる。そのため、抵抗29に流れる電流は、GND1/Raとなる。同様に、抵抗30に流れる電流は、Vt/Raとなる。オペアンプ34の入力インピーダンスは十分大きいため、抵抗29及び30に流れる電流は、全て抵抗31に流れるものとみなされる。そのため、オペアンプ34の出力OP34_outは、OP34_out=−Ra×{(GND1/Ra)+(Vt/Ra)}=−(GND1+Vt)となる。さらに、オペアンプ35のマイナス端子も仮想短絡によりプラス端子のGNDと同電位となるため、抵抗32に流れる電流は、−(GND1+Vt)/Raとなる。オペアンプ35の入力インピーダンスは十分大きいため、抵抗32に流れる電流は、全て抵抗33に流れるものとみなされる。そのため、オペアンプ35の出力OP35_outは、OP35_out=−Ra×{−(GND1+Vt)/Ra}=GND1+Vtとなる。つまり、加算器12は、ループフィルタ28の出力Vtと、高周波数帯モジュール21のGND1とを加算した結果を出力している。
【0038】
ここで、OP35_outは、電圧制御発振器10の電圧端子に印加される電圧である。高周波数帯モジュール21の接地電位は、GND1である。そのため、電圧制御発振器10における周波数制御電圧Vt(VCO)は、Vt(VCO)=OP35_out−GND1となる。OP35_out=GND1+Vtであるため、Vt(VCO)=Vtとなる。これより、PA25や、LNA26の電源がONからOFFもしくはOFFからONに切り替えられ、無線通信装置内の電流、つまり、抵抗14に流れる電流値が変化しても、周波数制御電圧Vt(VCO)が一定に保たれるように動作する。図3を用いて、PA25の電源がONからOFFに切り替えられた場合の、GND1、OP35_out、Vt(VCO)の変化の様子を説明する。
【0039】
PA25は、時間t_1にONからOFFに切り替えられる。PA25がON状態の場合、基準接地電位13に流れる電流は、2iであり、PA25がOFF状態の場合、基準接地電位13に流れる電流は、iとなる。そのため、GND1は、中間周波数帯モジュール22の基準接地電位13に対して、PA25がON状態の場合、2i×Rだけ高くなり、PA25がOFF状態の場合、i×Rだけ高くなる。OP35_outは、t_1においてGND1が減少した分だけ、PA25がOFF状態の場合に出力電圧が減少する。ループフィルタ28から出力される出力電圧Vtと、周波数制御電圧Vt(VCO)は、Vt(VCO)=Vtの関係にあるため、同じ値を有する。また、Vtは、電圧制御発振器10から出力される出力周波数と、基準周波数との位相差に対して出力される電圧であるため、PA25のON状態とOFF状態との切り替えにより、変化しない。そのため、Vt及びVt(VCO)は、時間t_1を境に値は変化せず、一定値を保っている。
【0040】
以上説明したように、電圧制御発振器10と、位相検出器11及び加算器12とが異なるモジュールとして構成される装置において、高周波数帯モジュール21と中間周波数帯モジュール22との接地電位の電位差が変動する場合、高周波数帯モジュール21の接地電位GND1と、出力電圧Vtとを加算した電圧を用いて、電圧制御発振器10の周波数制御を行うことにより、接地電位の電位差による周波数変動を抑えることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 電圧制御発振器
11 位相検出器
12 加算器
13 基準接地電位
14 抵抗
21 高周波数帯モジュール
22 中間周波数帯モジュール
23、24 混合器
25 PA
26 LNA
27 PLL IC
28 ループフィルタ
29〜33 抵抗
34、35 オペアンプ
36 電源
37、38 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に応じて出力周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力される出力周波数と基準周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力電圧を変化させる位相検出器と、
前記電圧制御発振器における接地電位と前記位相検出器における基準接地電位との間に発生する抵抗によって生じる電位差を、前記出力電圧に加算して前記電圧制御発振器へ出力する加算器と、を備える周波数制御回路。
【請求項2】
前記加算器は、
前記電圧制御発振器における接地電位と前記位相検出器における基準接地電位との間に発生する抵抗によって生じる電位差と、前記出力電圧とを、一方の入力端子に入力する演算増幅器を有する、請求項1記載の周波数制御回路。
【請求項3】
入力される中間周波数帯の周波数を用いた信号に、前記電圧制御発振器から出力される出力周波数をかけ合わせることにより、高周波信号を生成する混合器をさらに備える、請求項1又は2記載の周波数制御回路。
【請求項4】
前記電圧制御発振器における接地電位は、前記位相検出器とは異なるモジュールにおける接地電位であり、前記抵抗は、前記電圧制御発振器における接地電位と、前記位相検出器における基準接地電位とを接続することにより発生する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の周波数制御回路。
【請求項5】
入力電圧に応じて出力周波数を変化させる電圧制御発振器から出力される出力周波数と、基準周波数との位相差を検出し、当該位相差に応じて出力する出力電圧を変化させるステップと、
前記出力電圧と、前記電圧制御発振器における接地電位と当該接地電位に抵抗を介して接続される基準接地電位との間の電位差とを加算するステップと、
前記加算された電圧を前記電圧制御発振器へ出力するステップと、を備える出力周波数制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244139(P2011−244139A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113227(P2010−113227)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】