説明

唾液中における浸食可能性のない酸性固形口腔用組成物および唾液中の浸食可能性を測定する方法

図2のグレー色によって示された領域におけるカルシウム量およびpH値を有する酸性口腔用組成物は、唾液に不浸食性であり、唾液産生を促進することができる。当該組成物は、「口内乾燥症(dry mouth)」の患者においても使用できる。唾液における浸食可能性(erosive potential)を測定するための新規な多段階テスト法が、組成物を同定するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、唾液のような水性液体に溶解された場合に酸性反応を示す固形口腔用組成物に関する。より詳細には、本発明は、唾液中の低減された浸食可能性(erosive potential)を有する固形口腔用組成物、およびカルシウム成分と酸成分とを浸食可能性を低減するために特定の量で使用することに関する。また、本発明は、唾液産生を促進する方法、ならびに、唾液産生に障害のある個体の苦痛を緩和する酸性固形口腔用組成物を製造するためのカルシウム成分および酸成分の使用に関する。さらには、本発明は、唾液中の口腔用組成物の浸食可能性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙浸食は、バクテリアが関与しない化学プロセスによる歯の硬組織の欠損であり、そのため虫歯とは関係がない。歯牙浸食に関する最も重要なファクターの1つは、酸へ外部がさらされることである。歯牙浸食は歯の健康にとって脅威になりつつあることが示されてきており、ソフトドリンクの頻繁な消費ならびに酸含有食品(柑橘系果実および菓子)の消費は歯牙浸食の進展における重要なファクターである。歯牙浸食に対する一般の認識は急速に高まっている。よって、製造業者にとって、消費者の酸性刺激に対するニーズを満たし、同時に歯牙浸食を起こさない(または低減する)ような食品を開発する新しい方法を考えることは重要である。
【0003】
通常、口腔および歯の周りにおける低pHが歯牙浸食の主な原因である。ヒトの歯の硬部分はヒドロキシアパタイト結晶(HAp)(Ca10(PO4)6(OH)2)からなる。歯において、HAp結晶は体の中で一番硬い組織を構成する凝縮構造(condensed structure)で配列されている。しかしながら、歯が低pHの流体(酸性ソフトドリンクまたは酸性キャンディが溶解した唾液など)にさらされると、HAp結晶は溶解し、流体(HApの成分)中のCa2+、PO43-およびOH-イオンの不足によって歯牙浸食が進展する。
【0004】
栄養学的目的から、カルシウムを高レベルに補った飲料が、先行技術において提案されてきた。食事性カルシウムの不足は、少なくとも一部の集団において、骨粗鬆症の原因となる可能性がある。例えば、カルシウム摂取と骨量との間のポジティブな相関関係は多くの年齢で見られている。また、人生の早期におけるカルシウム摂取のレベルが、骨格成熟時に達成される最高骨量に直接影響を与えることも示唆されてきた。
【0005】
US5,028,446は、カルシウム強化飲料の製造に使用する、急速に可溶化されるカルシウムフマレートの調製方法を開示する。当該方法は、フマル酸およびカルシウム含有塩基の混合物(カルシウムのフマレートに対するモル比が1:2〜約1:1の範囲であるもの)の調製を含む。フマル酸とカルシウムの混合物が、お茶などのカルシウム強化飲料の製造に利用可能な高い溶解性を有することが示されている。
【0006】
別のカルシウム強化飲料がEP227174に開示されている。当該飲料は、実質的に糖アルコールを含まず、クエン酸、リンゴ酸およびリン酸の混合物に対して特定の重量比(1/4〜1/7)でカルシウムを含む。当該飲料は、満足のいく初期風味と口内感触を有し、実質的に嫌な後味がなく、そして望ましいカルシウム吸収性/バイオアベイラビリティ特性を有するといわれている。典型的には、製造される飲料のpHは約4.3である。
【0007】
クエン酸および1つ以上のカルシウム化合物を含む再構成用乾燥混合物がWO88/03762に開示されている。このインスタント飲料はカルシウム/クエン酸のモル比が0.6〜約3.0の間である。カルシウムおよびクエン酸を様々な比率で有する混合物の溶解性はpHによって決まる。溶解性はpH値2.0〜7.0の間で試験され、実際の飲料は4.15以上のpHを有するように調製された。該組成物は液体食事性カルシウムサプリメントとして使用される。
【0008】
US3,734,742は、少なくとも約80%の水を含有し、2.0〜3.4のpHを有し、アスコルビン酸含有量が0.056〜1.120mg/mlで、鉄イオンの含有量が0.008〜0.15mg/mlである、密封または缶詰した瓶入り水性飲料を開示している。この米国特許の目的は、鉄およびアスコルビン酸を補った飲料を得ることである。
【0009】
上記したいずれの引用文献も歯牙浸食に関するものではない。
【0010】
イントロダクションで述べたように、食用酸性組成物は歯の成分、特にヒドロキシアパタイトの含有量を浸食する傾向がある。いくつかの刊行物がこの問題を取り上げている。EP634110A2は、栄養、ビタミンおよびミネラルを強化した、果物ベースの液体食品であって、少なくとも5g/lの酸含量(酒石酸)および少なくとも2g/lのカルシウムホスフェート含量を有する食品に関する。pHは4.5未満(実値は3.9〜4.15の間)である。カルシウムホスフェートは酸性液体食品の歯質に対する悪影響を減らすといわれている。カルシウム化合物および酸性化合物を含む別の液体口腔用組成物が、WO97/30601に開示されている。当該液体組成物は、酸1モル当たり0.3〜0.8モルの範囲のカルシウムを含み、重要な特徴として、組成物中のカルシウムおよび酸の量は組成物のpHが3.5〜4.5となるように選択される。歯のエナメルの浸食を防ぐといわれているさらなる酸性飲料がUS5,108,761に開示されている。US5,108,761に記載の飲料は、歯牙浸食を減らすためにカルシウムシトレートマレートを含む。
【0011】
酸性医療製剤が米国特許4.080.440に開示されており、これは歯のエナメルにミネラル補給するための方法を開示している。該方法は、新鮮に調製した準安定性の水溶液を歯の表面に塗布することを示している。該溶液は約2.5〜約4.0のpHを有し、可溶性カルシウム塩と可溶性リン酸塩を、カルシウムイオンのリン酸イオンに対するモル比が非常に幅広い範囲:0.01〜100となるような量で含む。該製剤は消費するためのものではない。
【0012】
さらに、食用またはチュアブルの固形または半固形の組成物であって、歯の浸食を減らす傾向を示すものが先行技術に開示されている。WO98/13013は、例えば、歯の損傷にミネラル補給することができるチューイングガムまたはキャンディを開示している。問題の該組成物は、少なくとも1つの部分的に水溶性のカルシウム塩を含むカチオン成分、少なくとも1つの水溶性リン酸塩および分離成分を含む酸性成分を含む。水または唾液に溶解した場合の組成物のpHは約4.0より大きいものから、約10.0までである。カルシウム塩は部分的に水溶性なので、混合水性組成物中のカルシウムカチオンとリン酸アニオンは、カチオンとアニオンが歯の表面を通って表面下または象牙質に拡散するのに十分な期間、可溶性のまま維持される。そして、拡散したカチオンとアニオンは損傷上に不溶性の沈殿物を形成し、そのミネラル補給に働く。
【0013】
WO99/08550(発明者はWO97/30601と同じ)は、歯の浸食を減らす酸含有固形または半固形組成物を開示する。該組成物は、カルシウムを0.3〜0.8モル/1モルの酸の範囲で有し、組成物中のカルシウムと酸の割合は、水のような液体に溶解された場合に、組成物の有効pHが3.5〜4.5となるように選択される。この組成物を用いることにより、歯の保護は得られ得るが、比較的高いpH値のせいで唾液促進効果は制限され、そのため、味が損なわれる。このことは、ボンボン(boiled sweet)、キャンディ、ロリポップ、ゼリー、チューイングガム、ドロップ、トローチ、ロゼンジ、タブレット、アイスクリームおよびシャーベットなどの製品に関して特に重要である。
【0014】
WO97/30601およびWO99/08550の発明者を共同発明者とするUS2004/0091517A1においては、有効pH値が2.2まで低い酸性口腔組成物(特に、pHが2.2〜5.5の間である酸性飲料)が開示されている。この出願に係る発明は、ホスフェートポリマーであるポリホスフェートを歯浸食阻害剤として使用することに関するものであり、当該ホスフェート基の数(n)は少なくとも3である。ポリホスフェートは、酸味料1モル中0.8モルまでの量で存在するカルシウムを併用することができる。しかしながら、異なる観点、とりわけ熱にさらされるような固ゆでキャンディ(hard boiled candy)及びその他の製品の調製においては、ポリホスフェートは望ましくない。酸性組成物を熱することにより、ポリホスフェートがその他のホスフェートに変換される危険性があり、それは不快な味を有することが知られている。さらに、カルシウムおよびホスフェートを両方高濃度で有することにより、カルシウムが、有用でないカルシウムホスフェート化合物として沈殿する危険性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、よりよい風味および明確な唾液促進効果を得るためにpHを下げることを提案する。これは、US2004/0091517A1に開示されているようなポリホスフェートを用いることなく、唾液に非浸食性である組成物を維持しつつも可能である。
【0016】
唾液産生が上昇することにより、唾液自体の構成要素による保護効果が増す。さらに興味深いこととして、該組成物の非浸食性効果は、唾液分泌に障害のある「口内乾燥症(dry mouth)」の個体においても得られ得るようである。
【0017】
この驚くべき知見は、本発明者らによって実施された広範囲に及ぶ研究の結果であり、その中でも、浸食可能性のための新規な試験方法をもたらした。該方法は、シンプルかつ信頼性の高い方法において、キャンディのような酸性口腔用組成物が存在するヒトの口の中の唾液における複雑なコンディションを考慮に入れたものである。この試験方法は、本発明の特徴的な局面を表したものである。
【0018】
固形および半固形組成物を舐めた場合、唾液が組成物のマトリックスに達し、それによって、唾液は組成物が歯に対して有するすべての効果に影響する。本発明の方法は、物理化学に基づいた理論上の計算とは対照的に、ヒトの唾液に存在するすべての保護的な要因からなる独特の性質(有機的ならびに無機的)を提供する。これらの要因としては、唾液蛋白質(約2mg/ml)、唾液緩衝能、唾液カルシウムおよびホスフェート、唾液フッ化物、ならびに唾液中に存在するその他の微量のイオンが挙げられる。唾液蛋白質は、歯の表面に、獲得皮膜(acquired pellicle)として知られている保護コーティングを形成する能力を有する。この能力により、唾液蛋白質は歯および歯質を酸によって誘発される浸食から保護する。しかしながら、この歯の浸食に対する蛋白質コーティングの効果の個人差は、知られている計算方法では測定することができず、試験を受けなければならない。唾液緩衝能は、唾液の重炭酸塩、ホスフェートおよび蛋白質に由来するものであるが、これも歯および歯質を酸によって誘発される浸食から保護する。そして、この効果も試験方法で調べなければならない。よって、酸性口腔組成物が唾液中に溶解した場合、pHは下がるが、そのpHの低下は3つの唾液緩衝システムによって中和され、その結果、唾液pHは上昇し、それによって浸食効果が弱まる。唾液はさらにカルシウムおよびホスフェートをいくらか含んでおり、それによってヒドロキシアパタイトに関する飽和度を上げるのを助け、酸によって誘発される浸食効果を下げる。これに関して、唾液はさらにフッ化物(主に、食品および歯磨き粉由来のもの)を含み、このフッ化物は歯質に関する有効な飽和度を上げ、それによって同様に酸によって誘発される浸食効果を下げる。最後に、食品および飲料水由来の、微量のその他のイオンもまた歯質溶解に対する効果を有する。合わせると、これらの3つの要因は、計算によって直接予測されないようなかなりの保護効果を有している可能性があり、そのため、さらに提供された方法によって試験される必要がある。本発明による方法は、ヒドロキシアパタイトの脱塩を測定するための効率の良い手段を提供し、それによって、唾液中に溶解した固形または半固形の組成物の浸食可能性を調べることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
本発明は、唾液中の低減された浸食可能性を有する酸性固形口腔用組成物であって、カルシウム成分および酸成分を含み、固形口腔用組成物中のカルシウム成分および酸成分の量が、
(i)固形口腔用組成物が等重量の高精製水中に溶解された場合、pHが2.2〜3.2の範囲であり、
(ii)酸性固形口腔用組成物中のカルシウム含量が以下の制限内:
175−50・pH≦カルシウム含量(mmol/kg)≦660−200・pH(pHは上記に示されたように決定される)、
となるように調整され、
但し、該組成物はホスフェートポリマーであるポリホスフェートを含まない(ホスフェート基の数(n)は少なくとも3である)、組成物を提供する。
【0020】
米国特許出願公開第2004/0091517 A1号明細書のような、いかなるポリホスフェートも使用せずに2.2〜3.2のpHを有する組成物によって低減された浸食可能性が得られ得ることが意外にも発見された。
【0021】
本発明の口腔用固形組成物と歯とが比較的長い時間接触すると、歯のヒドロキシアパタイトを損傷させ得ると予想されていた。本明細書中では、カルシウムの量がカルシウムに対して唾液中で不飽和である状況でも、比較的低いpH値の組成物についての特定量のカルシウム成分が唾液中の浸食可能性を減らすことが報告されている。
【0022】
飲料は、標準的には、飲み込む前の数秒間だけ歯と接触するが、舐めるかまたは噛むことを意図された口腔用組成物は、口腔内に数分間残る。本発明に記載の酸性固形口腔用組成物には、実質的な唾液刺激、良好な風味と同時に実質的に低減された浸食可能性という効果がある。風味は、1つ以上の甘味料および/または着香料の添加によりさらに改良され得る。このような添加物はまた、唾液産生を刺激することが知られている。
【0023】
本発明の態様において、この口腔用組成物の唾液刺激特性は、唾液産生に障害のある個体の苦痛を緩和するために使用される。唾液産生の障害は、例えばシェーグレン症候群、嚢胞性線維症、糖尿病もしくは摂食障害などの疾患かまたは医療処置もしくは放射線治療などの治療処置において観察され得る。
【0024】
口内乾燥症患者は、一般に不快感を軽減するために酸性のキャンディを使用するが、大量のキャンディの消費の深刻な欠点は、口内乾燥症患者の歯の浸食の危険性が高いことである。
【0025】
健康な個体がキャンディのような酸性固形口腔用組成物を食べるとき、唾液の緩衝能は口腔用組成物の溶解によって誘導される低pHを中和する。しかしながら、唾液産生の障害に苦しむ患者では、口内乾燥症患者の唾液中の緩衝液の濃度が低いために、低pHの深刻な影響を中和する能力が低い。
【0026】
そのため、唾液産生を促進する能力が高く、かつ浸食可能性のない酸性口腔用組成物が必要である。本発明は、この必要性に対する解決策を提案する。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「固形口腔用組成物」とは、硬度が高いかまたはガムのような硬度を有し、口腔内で食べるか、舐めるかまたは噛むことができる製品のことをいう。用語、固形とは使用温度での状態をいう。本発明は、特にボンボン、キャンディ、タブレット、ロゼンジ、ロリポップ、ゼリー、チューイングガム、ドロップなどの、口腔内プロセッシングについての固形または半固形の物質に関する。本発明の1つの局面において、半固形組成物はまた、アイスクリームおよびシャーベットなどの製品を含む。
【0028】
本発明に記載の固形口腔用組成物は、部分的または完全に水に可溶であり得る。ゼリーおよびキャンディのような菓子は、通常、水に完全に可溶であるが、チューイングガムは、通常、部分的にしか水に溶解しない。固形口腔用組成物のpHを測定する場合、ある量の組成物は等重量の高精製水(欧州薬局方)と混合される。必要であれば、口腔用組成物を、口腔用組成物から可溶成分が溶解される水相を得るために物理的に加工してもよい。固形組成物の残りの部分は、水相の飽和または組成物のいくつかの成分が不溶性のために、固相に残り得る。この方法で測定されたpHは、本明細書中において「有効pH」という。
【0029】
カルシウム成分および酸成分の実際の量は、本発明の固形口腔用組成物の処方による。例えば、カルシウム・ラクテート・ペンタハイドレートは、キャンディを作製するために1kgの質量中に10〜35グラムの量(カルシウム濃度33〜114mmol/kg(33〜114mM)に対応する)が含まれ得る。酸成分の量は、2.2〜3.2の範囲内の有効pHを得るように選択される。酸成分の特定量は、酸成分のタイプ、口腔用組成物の緩衝能などによる。例えば、酸成分の濃度は、1kgあたり5〜20gの酒石酸に対応して、33〜132mM(33〜132mmol/kg)の範囲であり得る。
【0030】
カルシウム成分は、概して非毒性であり、かつ食品サプリメントとして許容できる。さらに、カルシウム成分は、概して遊離カルシウムイオンの放出が可能になるように口腔内で十分に溶解される。適切には、カルシウム成分は、カルシウム・カーボネート、カルシウム・ヒドロオキサイド、カルシウム・シトレート、カルシウム・マレート、カルシウム・ラクテート、カルシウム・クロリド、カルシウム・グリセロホスフェート、カルシウム・アセテート、カルシウム・サルフェートおよびカルシウム・ホルメートまたはこれらのハイドレートから選択される。カルシウム成分はまた、上記の2つ以上の化合物の組み合わせであってもよい。好ましくは、カルシウム成分は、カルシウム・ラクテートである。
【0031】
本発明の酸成分は、植物または動物において天然に産生される可食の酸の群から適切に選択される。しかしながら、人工の酸もまた使用され得る。好ましくは、酸成分は、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、酢酸、フマル酸および乳酸からなる群より選択される。酸成分は、口腔用組成物の製造の間に加えられてもよく、または、口腔用組成物の製造にベースとして使用される果実の濃縮物または同様のものの中に存在してもよい。
【0032】
本発明の固形口腔用組成物の製造に使用される酸の量は、口腔用組成物が等重量の高精製水(例えば、Millipore(登録商標)水)に溶解される場合、特定の予め決められたpHを提供するように適切に選択される。Millipore(登録商標)水は、脱塩、蒸留、濾過およびイオン交換された水であり、さらに逆浸透にかけられている。このpH測定の目的では、水が緩衝塩を含まないことが重要である。本発明によれば、酸は、口腔用組成物において有効pHが2.2〜3.2であるような方法で調整される。好ましい態様において、有効pHは、2.5〜3.2であり、特に2.6〜3.1である。
【0033】
本発明に記載の酸性固形口腔用組成物は、カルシウム成分と酸成分とのモル比が0.1〜1.40の範囲内であり、好ましくは0.3〜0.8である。より好ましくは、カルシウム成分と酸成分とのモル比は、0.4〜0.7である。
【0034】
本発明の組成物は、カルシウムおよび酸成分のみからなり得る。しかしながら、適切には、カルシウムおよび酸成分は、担体中に含まれる。担体は、例えばガラス状、結晶性またはガムのような基本構造を形成し得る。担体の選択は、意図される製品による。例えば、キャンディを作製するときは、ガラス状または結晶性の構造を形成する担体が選択され得、製品がチューイングガムまたはゼリーであるときは、ガムのような構造を形成する担体が選択され得る。
【0035】
典型的にはキャンディを作製するとき、糖および/または糖の代用物が担体として選択される。適当な糖としては、スクロース、イソマルト、マルトース、グルコース、フルクトース、転化糖、シロップなどが挙げられる。糖の代用物、すなわち甘味料は、例えば、サッカリン、デキストロース、レブロース、ナトリウム・シクラメート、アセスルファム−Kおよびアセパルテームの中から選択され得る。糖成分は、糖と甘味料との混合物であり得る。糖成分はまた、様々な糖の組み合わせであってもよい。本発明の1つの局面によれば、キャンディは、水に糖成分を溶解し、次いで105〜160℃の温度が得られるほど大量の水が蒸発するまでその溶液を調理することによって作製される。混合物は、その時点で粘性が高く、そして生地と呼ばれる。酸成分およびカルシウム成分は、生地に加えられ、次いで混合される。通常、生地には着香料および色素も混合される。そして生地は、適当な断片に切断されて、冷却される。
【0036】
ゼリーは通常、ゼラチンベースである。しかしながら、天然起源である他のポリマーまたは合成ポリマーも使用され得る。はじめに、ゼラチンを水に溶解し、次いで糖成分(例えば、スクロースもしくはグルコースシロップまたは上記の他の任意の糖成分)を加える。そして均質混合物を、特定の乾物量が得られるまで、水を蒸発させるために沸騰させる。そして残った成分をカルシウムおよび酸成分を含む混合物に加える。フレーバーおよび色素は、通常この段階で加えられる。完全に混合した後、このブレンドは型にとられるかまたは、押し出して適当な形状に成形される。
【0037】
上述したように、唾液のような複雑な流体中の組成物の浸食可能性は、理論的に計算することができず、試験されなければならない。
【0038】
浸食可能性を試験するために、新規な試験方法が開発される。この方法は単純かつ信頼性のある方法で、インビボ条件での唾液の産生および組成への口腔用組成物の影響を考慮する。この新規な試験方法は、本発明の特定の局面を提示する。
【0039】
従って、本発明は、口腔用組成物の唾液中における浸食可能性を測定する方法であって、以下の工程、すなわち、
a)試験される口腔用組成物を口内において唾液と接触させること、
b)二酸化炭素がサンプルから漏れるのを防ぐような条件下で、唾液のサンプルを回収すること、
c)b)において回収したサンプルのpHを測定すること、
d)必要に応じて真空および/または非揮発性酸の添加により補助して、サンプルから二酸化炭素を除去すること、
e)非揮発性酸または必要に応じて非揮発性塩基を用いて、サンプルのpHをc)で測定した値に調整すること、
f)工程e)で得られたサンプルに歯質を加え、pHの上昇を観察すること、
g)工程f)においてpHの上昇が観察されたら、酸を用いてサンプルをc)で測定したpH値に滴定すること、および
h)工程g)において消費された酸の量に基づいて、浸食された歯質の量を計算すること、
を含む方法を提供する。
【0040】
工程c)でのpHの最初の測定は、任意の適当な方法で行われてもよい。例えば、サンプルを回収した時点でのpHを記録するために、pH電極が口腔内に存在してもよい。しかしながら、利用者の利便性を向上させるために唾液サンプルは、典型的にはサンプルから二酸化炭素が漏れるのを防ぐ閉鎖システム内で回収される。サンプルを回収する適当な方法は、適当な量の唾液を口腔からシリンジを用いて取り出すことである。被験者の口腔からの唾液のサンプルは、通常、口腔用組成物を投与する前に取り出される。そして試験される口腔用組成物が適切な期間、口内で唾液と接触する。固形口腔用組成物の場合は、口腔用組成物は、唾液サンプルが取り出される前に、適切な期間、いつものように舐められるか噛まれる。単一または複数のサンプルが回収され得る。複数のサンプルは、例えば、全体の5分間のうち、30秒ごとまたは1分ごとにサンプルを回収することによって回収され得る。試験中に1回のみサンプルが回収されるときは、口腔用組成物が十分に口の唾液中に溶解したことが確認された後(例えば、3分後)に適切に取り出され得る。試験期間全体にわたって、被験者は、口腔用組成物またはすべての唾液を飲み込まないように要請されている。
【0041】
pH測定後、二酸化炭素がサンプルから除去される。二酸化炭素の除去には、超音波、真空処置およびストリッピングを含む種々の方法が当業者にとって利用可能である。一般には真空が撹拌と一緒に用いられる。二酸化炭素除去は、非揮発性酸の添加によって助けられ得る。非揮発性酸は、通常、強酸である。強酸は、HClまたはHNOの水溶液からなる群より選択され得る。二酸化炭素が除去されたとき、サンプルのpHは、非揮発性酸または必要であれば非揮発性塩基を用いて初めに測定されたpHに調整される。例えば、二酸化炭素の除去を助けるために加えられた非揮発性酸の量が、サンプルのpHをc)で測定されたpH値より低くする場合には、後者が適切であり得る。
【0042】
唾液サンプルは、この時点で二酸化炭素含量が枯渇しているが、もとの酸性度を保持している。次に、任意の浸食が起きるか否かを試験するために歯質を加える。歯質は、ヒトまたは動物に由来してもよく、または、人工のものであってもよい。歯質がヒトまたは動物に由来する場合、通常、広い表面積を得るためにすり減らされている。しかしながら、個体間のバリエーションを避けるために人工の歯質(すなわち、歯由来でない物質)を使用することが好ましい。歯におけるエナメルおよび象牙質の主成分は、ヒドロキシアパタイトである。従って、好ましい実施形態において、ヒドロキシアパタイトは、歯質として選択される。特に、SATP(標準周囲温度および圧力)において約117.3(pK)の溶解性産物であるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))が選択される。
【0043】
歯質は、滴定が行われる前の特定の期間中に唾液中に放置され得る。ヒドロキシアパタイトの溶解性生成物の熱力学的性質のために、サンプルは、滴定が行われるまで、体温以下の温度および20℃以上の温度に維持するべきである。
【0044】
滴定に使用される酸の量は、溶解される歯質の量に等しい。よって、1mMのヒドロキシアパタイト(M 1005)は、以下の反応:Ca10(PO(OH)→10Ca2++6PO3−+2OH→10Ca2++6HPO+2HOのために、唾液中のpHが3〜5の範囲である場合、14mMのH(M 1)を必要とする。そのため、逆滴定のための14μlの1Nの酸(例えば、1M HCl(すなわち14μgのH))の使用は、1005μgのヒドロキシアパタイトの溶解を表し、1μlの1M HClの使用は、72μgのHAp(すなわち、1005/14)の溶解を表す。
【0045】
従って、キャンディ含有唾液における1分あたりのヒドロキシアパタイト結晶の損失量は、以下の等式:
μgHAp損失量=(使用した酸のμl×72)/溶解にかかった分
によって工程c)で得られたpHに達するのに必要とされる1M HClのμl数から逆算され得る。
【0046】
固形口腔用組成物が、工程f)におけるpHの上昇を全く引き起こさない場合、この方法は工程g)およびh)へ進まず、試験された口腔用組成物は、非浸食性であると結論付けられる。しかしながら、工程f)においてpHの上昇が観察された場合、工程g)およびh)において損失(または浸食)されたヒドロキシアパタイトの量が定量される。
【0047】
この方法は、ヒトの口内の歯の浸食について、唾液中の複雑な条件の影響を説明する独特の特徴を提供する。さらに、時間に伴ってサンプル中の二酸化炭素がpHを変化させてしまうことを避ける。pHが歯の浸食に関連する最も重要な単一のファクターであるので、本方法は、ヒドロキシアパタイトの脱塩を予測し、それによって唾液中の浸食可能性を評価するための、効果的な手段を提供する。
【0048】
無作為に選択された健康な被験者において本発明に記載の方法によって試験されるとき、被験者の少なくとも90%が5分の間に工程f)においてpHの上昇を全く生じない本発明に記載の酸性固形口腔用組成物は、好ましい局面を提示する。
【0049】
上記の説明から明らかなように、唾液中の組成物の浸食可能性は、理論的に計算することができず、試験されなければならない。しかしながら、組成物を用いた、非浸食性であることを示す実験に基づいて、以下のカルシウム成分の量と有効pHとの相関関係を初めて見出した:
カルシウム含量(mM)=650±10−200・pH
この相関関係を適用する実際のpH範囲は、最初は確立されていなかったが、少なくとも相関関係はpHが2.6〜3.1の範囲内に存在すると予想された。
【0050】
後の実験でこのpHの範囲を確認し、pHを2.2〜3.2に広げた。同様にカルシウム含量(mMまたはmmol/kg)の範囲も以下:
175−50・pH≦カルシウム含量(mmol/kg)≦660−200・pH
に広げた。
【0051】
このpH値は、固形口腔用組成物が等重量の高精製水に溶解されたときに得られるpH、すなわち「有効pH」である。
【0052】
有効pHとカルシウム含量(mmol/kg)との相関関係は、図2にグラフで示した。
【0053】
以下で実施例により本発明をさらに説明する。この実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされない。
【実施例】
【0054】
実施例1
固形キャンディの調製
小型の調理器具内の800mlの水に3kgのイソマルトおよび0.3mgの甘味料(アセスルファム−K)を撹拌しながら加える。均質な溶液が得られるまで撹拌を続ける。続いて温度を約162℃に上げ、この混合物を沸騰させる。温度が110℃に下がったら、撹拌を止め、生地を小型の調理器具から取り出し、熱したテーブルの上に置く。
【0055】
生地に4.5mlの赤色色素(カーマインE120)を加え、色素が均一に分散するように混練する。そして6mlの香料(イチゴとダイオウの比が2:1)を生地に加え、混練する。続いて、30gの酒石酸(モル重量:151g/mol)および49.5gのカルシウム・ラクテート・ペンタハイドレート(モル重量:308g/mol)を生地に加え、完全に混合する。生地を長いひも状にし、適切な小片のキャンディに切断する。キャンディを、室温まで冷却する。
【0056】
キャンディに等重量の水(Millipore(登録商標))を加えた。すなわちキャンディと水が1:1の比を成し、1時間放置した。1時間後、キャンディを完全に溶解した。生じた溶液のpHは、較正された電極で2.95と測定された。
【0057】
そしてカルシウム成分と酸成分とのモル比は、
【0058】
【数1】

【0059】
により計算され得る。
【0060】
実施例2
ゼリーの調製
8gのゼラチン(250 Bloom)を絶えず撹拌した状態で17g、80℃の水に完全に溶解する。4gのデキストロースを、混合物が均質になるまでゼラチン溶液に絶えず撹拌した状態で加える。そして、20gのスクロースおよび49gのグルコースシロップ(48 DE)を加え、混合物が均質になるまで撹拌を続ける。そして混合物をブリックスが75になるまで(108℃(0.6atmの真空度)で起きた)沸騰させる。沸騰工程の後、混合物に10gの酒石酸(モル重量:151g/mol)、16.5gのカルシウム・ラクテート・ペンタハイドレート(モル重量:308g/mol)、0.15mlの赤色色素(カーマインE120)および0.6mlの香料(イチゴとダイオウの比が2:1)を加え、均質な溶液が得られるまで混合する。この液体混合物のpHを、標準的なpH電極で測定したときpHが3.2になるよう酒石酸で調整する。サンプルを取り出し、等重量の水と混合した。この希釈サンプルのpHはpH3.2と測定された。カルシウム成分と酸成分とのモル比は、
【0061】
【数2】

【0062】
である。
この溶液は、適切な形状の型にとられ、そして室温まで冷却される。
【0063】
実施例3
口腔用組成物の浸食可能性についての試験
実施例1で作製したようなキャンディを使用して本実施例で浸食可能性を示した。カルシウム・ラクテート以外、実施例1のキャンディと同じ成分を含むコントロールキャンディも作製した。
【0064】
無作為に選択された10人の健康な被験者(男性5人および女性5人)は、5グラムのキャンディを5分間ずっと舐め、その間、彼らの刺激された口全体の唾液を5分間の30秒ごとに回収した。閉鎖唾液回収システムを用いて唾液の二酸化炭素の蒸発、すなわちpHの変化を回収の間防止した。
【0065】
回収後すぐに、唾液のpHを閉鎖系で測定し、pHを回収物ごとに(すなわち、1分、2分など)記録した。そして唾液を開放されたグラスに注ぎ、絶えず撹拌しながら唾液の二酸化炭素を真空にすることによって除去し、そしてサンプルを回収直後に得られたpHに達するまで酸性化した(1M HCl)。
【0066】
唾液1mlあたり2mg(すなわち、2mM HAp)に等しい純粋なヒドロキシアパタイト結晶(HAp)を各唾液サンプルに加えた。HAP結晶の粒子サイズは1μmで、メルク・クリスタルズ(Merck Crystals)によって供給された。pHが上昇した場合、室温で5分間、15秒間隔で連続して記録した。この試験手順は、インビボの条件に似せており、5グラムのキャンディを5分間インビボで舐めるときと同等である。
【0067】
pH上昇が認められない場合は、固ゆでキャンディは、非浸食性と評価された。
【0068】
pH上昇は、HAp結晶の溶解が起き、かつキャンディが浸食性であることを示唆した。溶解されたHApの量を定量するために、酸(1M HCl)を用いた逆滴定をHAP添加の5分後に行った。キャンディ含有唾液において1分あたりに失われたHAp結晶の量は、実施例2で述べた等式を用いて、唾液の回収後すぐに得られたpHに達するのに必要な1M HClのμl量から、計算できた。
【0069】
得られたデータから、浸食可能性(キャンディ含有唾液にさらされたHApの1分あたりに失われたμg)は、直線回帰による曲線の傾きとして算出され得る。本実験の結果は、図1に示しており、図中の本発明のキャンディ(candy acc.inv.)は、実施例1に記載のキャンディであり、コントロールキャンディは、カルシウム・ラクテートを含まないキャンディである。この結果は、本発明に記載のカルシウム改変キャンディが酸性であり、カルシウム成分と唾液の緩衝能と唾液の蛋白質保護との間の相互作用のために非浸食性であったことを示す。
【0070】
実施例4
表1に示した組成物のキャンディを実施例1と同様の方法により調製し、そして実施例3に記述した試験方法を用いて浸食可能性について試験した。またその結果を同様に表中に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
試験により非浸食性であることが分かった組成物のいくつかは、他の観点、すなわち、有効pHが適切な唾液刺激効果を与えるには高すぎるためか、または許容可能な風味にするにはカルシウム含量が多すぎるかのどちらかのために、不十分であることが分かった。
【0073】
試験1〜25での有効pHとカルシウム含量(mmol/kg)との間の相関関係を図2にグラフで示した。図中で、Y=660−200・Xの線とY=175−50・Xの線との間でX=2.2〜3.2の範囲の領域(灰色で標識)は、本発明に記載の組成物(+で標識)、すなわち上記の試験によってヒト唾液中において非浸食性として認められた組成物が、所望の唾液分泌刺激を提供するのに十分な酸性度を有し、カルシウム含量が快い風味を提供するのに十分低いことを示す。÷で標識された組成物は、浸食性であることが分かり、一方、++で標識された組成物は非浸食性であるがカルシウムの量が多すぎるために受け入れられない風味であることが分かる。そして+++で標識された組成物は非浸食性であるが、所望の唾液分泌刺激を提供するには酸性度が低すぎることが分かる。
【0074】
実施例5
唾液促進効果についての試験
20人の健康な個体の群に試験21に記載の組成物のキャンディを与え、キャンディを舐めることによって産生される唾液の量を記録した。キャンディを舐めることによって産生される唾液の量をいかなる唾液産生の刺激も受けずに同じ期間内に同じ個体が産生する唾液の量と比較した。この試験によりキャンディを舐めることによる唾液産生が10倍超に増加したことが示された。
【0075】
10人の口内乾燥症患者の群で行った対応する試験は、試験21に記載の組成物のキャンディを舐めることによって唾液産生が10倍増加したことを明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、歯の浸食により失われた歯質の量対本発明に記載のキャンディおよびコントロールキャンディの各試験時間を示す。
【図2】図2は、カルシウム含量(mmol/kg)対本発明に記載の組成物および本発明に記載のものではないいくつかの組成物についての有効pHをグラフ表示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液中の低減された浸食可能性(erosive potential)を有する酸性固形口腔用組成物であって、
カルシウム成分および酸成分を含み、
固形口腔用組成物中のカルシウム成分および酸成分の量が、
(i)固形口腔用組成物が等重量の高精製水中に溶解された場合、pHが2.2〜3.2の範囲であり、並びに
(ii)酸性固形口腔用組成物中のカルシウム含量が以下の制限内:
175−50・pH≦カルシウム含量(mmol/kg)≦660−200・pH(pHは上記に示されたように決定される)、
となるように調節され、
但し、該組成物はホスフェートポリマーであるポリホスフェートを含まない(ホスフェート基の数(n)は少なくとも3である)、組成物。
【請求項2】
カルシウム成分の酸成分に対するモル比が0.3〜0.8の範囲である、請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
カルシウム成分の酸成分に対するモル比が0.4〜0.7の範囲である、請求項2に記載の固形組成物。
【請求項4】
請求項1において示されるように決定されたpHが2.5〜3.2の間である、請求項1〜3のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項5】
請求項1において示されるように決定されたpHが2.6〜3.1の間である、請求項4に記載の固形組成物。
【請求項6】
カルシウム成分が、カルシウム・カーボネート、カルシウム・ヒドロオキサイド、カルシウム・シトレート、カルシウム・マレート、カルシウム・ラクテート、カルシウム・クロリド、カルシウム・グリセロホスフェート、カルシウム・アセテート、カルシウム・サルフェート、およびカルシウム・ホルメート、またはハイドレート、あるいはそれらの組み合わせより選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項7】
カルシウム成分がカルシウム・ラクテートである、請求項6に記載の固形組成物。
【請求項8】
酸成分が、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、酢酸、フマル酸および乳酸からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項9】
舐めるため、または噛むためのものである、請求項1〜8のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項10】
ボンボン(boiled sweet)、キャンディ、ロリポップ、ゼリー、チューイングガム、ドロップ、トローチ、ロゼンジ、アイスクリーム、シャーベットまたはタブレットである、請求項1〜9のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の固形組成物を個体に経口投与することを含む、個体における唾液産生を促進する方法。
【請求項12】
治療によるヒトまたは動物の処置のためのものではない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
唾液中の酸性固形口腔用組成物の浸食可能性を低減するための、カルシウム成分および酸成分の使用であって、
固形口腔用組成物中のカルシウム成分および酸成分の量が、
(i)固形口腔用組成物が等重量の高精製水中に溶解された場合、pHが2.2〜3.2の範囲であり、
(ii)酸性固形口腔用組成物中のカルシウム含量が以下の制限内:
175−50・pH≦カルシウム含量(mmol/kg)≦660−200・pH(pHは上記に示されたように決定される)、
となるように調節され、
ホスフェートポリマーであるポリホスフェートを使用しない(ホスフェート基の数(n)は少なくとも3である)、使用。
【請求項14】
カルシウム成分の酸成分に対するモル比が請求項2または3に示した通りである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
唾液産生に障害を有する個体の苦痛を緩和するための固形口腔用組成物を製造するための、カルシウム成分および酸成分の使用であって、
固形口腔用組成物中のカルシウム成分および酸成分の量が、
(i)固形口腔用組成物が等重量の高精製水中に溶解された場合、pHが2.2〜3.2の範囲であり、
(ii)酸性固形口腔用組成物中のカルシウム含量が以下の制限内:
175−50・pH≦カルシウム含量(mmol/kg)≦660−200・pH(pHは上記に示されたように決定される)、
となるように調節され、
ホスフェートポリマーであるポリホスフェートの使用を含まない(ホスフェート基の数(n)は少なくとも3である)、使用。
【請求項16】
カルシウム成分の酸成分に対するモル比が請求項2または3に示した通りである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
唾液産生の障害が、シェーグレン症候群、嚢胞性線維症、糖尿病または摂食障害のような疾患によって引き起こされるものである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
唾液産生の障害が、医療処置または放射線治療などの治療処置によって引き起こされるものである、請求項15〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
口腔用組成物の唾液中における浸食可能性を測定する方法であって、以下の工程:
a)試験される口腔用組成物を口内において唾液と接触させること、
b)二酸化炭素がサンプルから逃げるのを妨げるような条件下で、唾液のサンプルを回収すること、
c)b)において回収したサンプルのpHを測定すること、
d)必要に応じて真空および/または非揮発性酸の添加により補助して、サンプルから二酸化炭素を除くこと、
e)非揮発性酸または必要に応じて非揮発性塩基を用いて、サンプルのpHをc)で測定した値に調節すること、
f)工程e)で得られたサンプルに歯質を加え、pHの上昇を観察すること、
g)工程f)においてpHの上昇が観察されたら、酸を用いてサンプルをc)で測定したpH値に滴定すること、および
工程g)において消費された酸の量に基づいて、浸食された歯質の量を計算すること、
を含む、方法。
【請求項20】
工程d)において必要に応じて用いられる非揮発性酸が強酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非揮発性酸がHClまたはHNOである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
歯質がヒドロキシアパタイトである、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ヒドロキシアパタイトが歯由来のものではない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
滴定に用いられる酸がHClである、請求項19〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれかに記載の固形組成物であって、ランダムに選択した健康な被験者を請求項19に記載の方法によってテストした場合に、5分間内に、被験者の少なくとも90%において、工程f)でpHの上昇をもたらさない、組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−507480(P2008−507480A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521797(P2007−521797)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000508
【国際公開番号】WO2006/007856
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507020853)
【Fターム(参考)】