説明

噴射装置と空気流量測定用の流量センサを使用することにより噴射装置の性能を改善する方法

基板上へ粘性媒質の細滴を噴射する噴射装置15と、該噴射装置の性能を改善する方法とを提供する。噴射装置15は、細滴を噴射する噴射口27と、噴射口27に溜まる粘性媒質残渣を除去するため、噴射口を通過する空気流を発生させる空気流発生器と、噴射口27から出る空気流によって運ばれる粘性媒質残渣を受容する残渣溜め55と、該残渣溜めを介して、噴射口27と空気流発生器との間に延びる空気流流路58とを含んでいる。流路58内には、空気流量を測定する流量センサ70が配置されている。それにより、空気流量を表す空気流量信号が得られ、該空気流量信号が評価され、噴射装置15の少なくとも1つの状態が検出でき、噴射装置の状態についての指示が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に粘性媒質を噴射し被着させる分野に関するものである。より具体的にいえば、本発明は、基板上に粘性媒質の細滴を噴射する噴射装置の性能を改善する方法と該噴射装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘性媒質、例えばはんだペースト又は接着剤の個別の細滴を基板、例えば電子回路板上へ制御噴射するためのシステム、デバイス、方法は、技術的に公知である。例えば次の特許刊行物、すなわちUS 6,450,416、US 2002/0043570、US 2002/0047052、US 2002/0014602、US 2002/0015780、US 2004/0118935、US 2004/0262824、US 2005/0092774、US 2005/0167519、WO 2005/048678を参照のこと。これらは、すべて、ここに引用することで、本明細書に取り入れられるものである。
【0003】
マイデータ・オートメーションABが提供するMY500・ジェット・プリンタの場合、粘性媒質を噴射するシステムは、ジェット印刷機と、噴射されるはんだペーストを内包するはんだペースト・チューブと、噴射過程で生じるはんだペーストの残渣捕集用の溜めと、はんだペーストを実際に噴射する噴射器と、ジェット印刷機と組み合わされたホールダとを含んでいる。ホールダ、噴射器、残渣容器、はんだペースト・チューブは、ジェット印刷機から取り外して、ジェット印刷機内に設けられた相互適合可能な保持部内に容易に配置できる単一の集合ユニットを形成するように構成されている。噴射器は、ステップ・モータによって駆動される給送スクリュー形式のフィーダーを含み、ステップ・モータは、ステップ・モータと噴射器間のインターフェース手段を介して相互適合可能なホールダ内に配置されている。
【0004】
先の引用により本明細書に取り入れられたUS 2004/0217193の場合にも、噴射装置と噴射装置の性能を改善するための方法とが開示されている。この噴射装置は、細滴が噴射される噴射口を含み、ガス流が噴射口を通過するようにすることで、噴射口に滞留する粘性媒質による噴射装置の性能への悪影響が防止される。言い換えると、噴射口にガス流を通過させることで、噴射口内の粘性媒質残渣が搬出される。そうしなければ、残留媒質が噴射ノズル壁に付着して有害な粘性媒質が形成され、噴射性能全体に悪影響を与えることになる。
US 2004/0217193に開示された噴射装置は、先行噴射装置に比較するとかなり改善されてはいるが、長時(期)間にわたる噴射過程では品質又は性能に変化が生じた。したがって、US 2004/0217193に開示された噴射方法及び噴射装置は、さらに改善する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、噴射作業を改善する方法及び装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的および他の目的は、本発明により、独立請求項に定義された特徴を有する方法及び装置によって達成された。従属請求項には、好適実施例が定義されている。
第1の観点により、基板上に粘性媒質の個々の細滴を噴射する噴射装置の性能を改善する方法が得られるが、その場合、前記噴射装置は、細滴が噴射される噴射口と、噴射口を通過させ噴射口に残留する粘性媒質を除去するための空気流を発生させる空気流発生器と、空気流により噴射口から搬出される粘性媒質残渣を受容する溜めと、前記噴射口と前記空気流発生器との間を前記溜めを介して流れる空気流の流路とを含んでいる。前記方法は、前記流路内の空気流量を測定し前記空気流量を表す信号を得る段階と、前記空気流量信号を評価して前記噴射装置の少なくとも1つの状態を検出する段階と、前記状態を指示する段階とを含んでいる。
【0007】
第2の観点によれば、基板上に粘性媒体の細滴を噴射する噴射装置が得られ、該噴射装置が、前記細滴を噴射する噴射口と、噴射口を通過することで噴射口に残留する粘性媒質残渣を除去する空気流の発生器と、噴射口から前記空気流によって搬出される粘性媒質残渣を受容する溜めと、前記噴射口と前記溜めとの間に設けられた前記空気流の流路とを含んでいる。噴射装置は、更に前記流路内の空気流量を測定する空気流量計を含み、該空気流量計が、噴射口と溜め間の空気流路内に配置された流量センサを含み、また前記空気流量計が、空気流路内の空気流量を表す空気流量信号を出力するように構成されており、更に、噴射装置がプロセッサを含み、該プロセッサが、空気流量計からの前記流量信号を受信し、評価し、噴射装置の状態を指示する。
【0008】
このように、本発明は、噴射口と残渣溜め間の空気流量を測定し、流量測定を評価して噴射装置の状態、例えば溜めの充填率を検出することが有用との認識に基づいている。充填率をモニタすることで、溜めが過剰充填されて、噴射口からの粘性媒質残渣の除去が不十分になるのを防止することができる。その場合、流量の減少は、溜めの充填率を指示するのに利用できよう。これにより、溜めの充填率が閾値に達したことや容器を交換する必要があることを指示する信号を操作員に提示することができる。あるいはまた、充填率の検出の結果として過剰充填のリスクが高いことが指示された場合には、全システムを停止することができる。しかし、更に後述するように、空気流量を測定することで、意外なことに、噴射過程の別の特性の指示が得られることが判明した。
【0009】
本出願の目的の場合に、注意すべき点は、「粘性媒質」という用語は、はんだペースト、フラックス、接着剤、導電性接着剤、基板への構成部材の取付けに関連して使用される他の種類の媒質、例えば導電性インク、抵抗ペースト等と解釈される点であり、また「被着物」という用語は、1つ以上の細滴の噴射の結果として基板上の或る位置に施される粘性媒質の結合量をいい、「基板」という用語は、プリント回路板(PCB)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・スケール・パック(CSP)、カッド・フラット・パック(QFP)、ウェーハ、フリップ−チップ等と解釈される点である。
また、注意すべき点は、「噴射」という用語は、流体ジェットを利用して噴射ノズルから基板上へ粘性媒質の細滴を、「流体ぬれ等の接触分与処理とは異なり、非接触分与する処理と解釈される点である。
【0010】
以下の説明では、噴射システム及び噴射方法の実施例が説明されるが、該実施例は、噴射装置、粘性媒質噴射器、粘性媒質容器、溜め、ホールダを含んでいる。
「噴射器」の用語は、粘性媒質を実際に噴射する素子を言う。
「容器」とは、噴射前には粘性媒質を蓄え、噴射時には粘性媒質を供給し、噴射器と流体連通している素子のことである。
「溜め」とは、圧縮空気によって噴射口から搬出される過剰の、又は残余の粘性媒質を受容し保留する容器を言う。
「ホールダ」とは、噴射装置との機械的、電気的なインターフェースを有する保持フレームを言い、噴射器、粘性媒質容器、溜めを保持し、噴射器、粘性媒質容器、溜めと結合することで集合ユニット又は集成装置を形成する。以下の説明では、このホールダを時には「カセット」と呼ぶことがある。
【0011】
「噴射装置」とは、前記集合ユニット又は集成装置が組み付けられる枠組みを言う。噴射装置は、噴射作業時にカセット用のトリガ信号を保留し、位置づけ、供給する手段と、粘性媒質が施される基板を保持し搬送する手段とを含んでいる。噴射装置は、更にソフトウェアと、粘性媒質全被着過程を制御しモニタする点検手段とを含んでいる。しかし、噴射装置と他の素子又はカセットとの間の相互作用が説明されない場合、噴射装置という用語は、以下では、既述の素子を含む全体システムを指すことがしばしばある。
噴射器は、粘性媒質の細滴が噴射される噴射ノズルと、噴射ノズルへ粘性媒質を供給するフィーダーと、衝撃子、すなわち粘性媒質の細滴がノズルから噴射されるようにフィーダーによって供給される粘性媒質に衝撃を与える衝撃素子とを含んでいる。粘性媒質に衝撃を与えた後、衝撃子は、直ちに次の衝撃用意位置に戻って、次に噴射される細滴用粘性媒質の供給を妨害しないようにするのが好ましい。
【0012】
噴射ノズルは、また、ここでは噴射口とも呼ばれるノズル口を含み、該ノズル口から基板へ向かって細滴が噴射される。ノズル口は、ノズルの一端に設けられている。更に、ノズルは、ノズル口と連通するノズル空間を形成する囲み内壁を有している。噴射器の噴射動作中、ノズル空間には、個々の細滴を噴射する前に、種々の度合いまで粘性媒質が充填されるが、その度合いは、噴射される細滴の目標量に応じて調節可能であるのが好ましい。
【0013】
噴射装置は、更に、過剰な粘性媒質残渣を受容し保留する残渣溜めを含んでいるが、この残渣は、例えば、噴射過程を妨害したり噴射精度に悪影響を与えるのを防止するために、ノズル口又は噴射口から除去された残渣である。粘性媒質残渣は、噴射器ハウジング内の流路を介してノズルに空気流を通すことでノズルから除去され、残渣溜めへ送られる。残渣溜めは、ノズル口を取り囲む区域に適宜に向けられた粘性媒質入口と、粘性媒質を保留する捕集チャンバと、空気流を生じさせる吸い込み力発生用のエゼクタ等に連通する出口とを含んでいる。好ましくは、残渣溜めには、また空気流を通す一方、空気流と一緒に粘性媒質が溜めから脱出しないようにするために、フィルタが配置されている。
【0014】
前述のように、空気流は噴射口を通過させられるが、それの大きさ及び速度は、空気流によって噴射口区域から粘性媒質残渣を除去するのに十分なものである。細滴の噴射後、微量の粘性媒質が噴射口表面に付着したままとなることがしばしばあるが、こうした残留物は望ましくないので、空気流によって前記表面から除去される。また、噴射口を通過する空気流は、一定量の粘性媒質残渣が前記表面に付着するのを始めから防止することができる。
【0015】
噴射口に粘性媒質残渣が溜まる可能性があれば、幾つかの理由から噴射性能に対して悪影響が生じよう。例えば、噴射される細滴が噴射口を通過する時、細滴の軌道に不都合な影響が及ぼされたり、粘性媒質残渣が、噴射される細滴を妨げ、細滴量を変化させたりする。例えば、噴射口に溜まる或る量の粘性媒質残渣が表面から離れ、噴射された細滴に加わるが、噴射された細滴が残渣と「衝突」すれば、残渣により粘性媒質がはね飛ばされる等のことが生じる。したがって、粘性媒質残渣が噴射口に残っていれば、結果的に生じる被着物の位置、形態、寸法のいずれかが、意図したものから外れる可能性がある。また、基板上に粘性媒質がはねかかり、そのはねが、はんだの球を形成し、リフロー処理中に基板上を自由に動き回り、それがまた橋絡、短絡、信頼性の低下を生じさせる結果となる。
【0016】
このように、粘性媒質残渣の滞留又は形成は、噴射性能に、ひいては噴射装置全体の性能に望ましくない影響を与える。特に、噴射口に性媒質残渣が不都合に滞留することで、特に或る時間にわたって、噴射口に望ましくない材料がランダムに形成されるため、装置の精度及び再現性が損なわれることになろう。また、作業員の不都合な介入が原因で、製造工程が中断したり、全体の製造速度が低下することもある。
【0017】
細滴の実際の噴射中にガス流又は空気流を供給する結果得られる別の利点は、粘性媒質の付随物を噴射口の近辺から除去して搬出できることである。これらの付随物とは、噴射中に粘性媒質の細滴又はジェットから不都合にも飛び出した微量の粘性媒質であり、それによって、いわゆる付随物(satellite)が形成される。付随物は、普通は、細滴又はジェットと全体的な方向は同じだが、角度がずれているので、所期の被着位置とは離れたところで基板に当ることになる。これらの付随物は、はんだの球を形成し、リフロー処理中に基板上を自由に動き回り、既述のように、橋絡、短絡等を発生させる結果となる。このため、粘性媒質の付随物を防止することで、基板上への粘性媒質の被着成績を改善し、それにより、完成基板の不合格率を低減することができる。
【0018】
本発明の実施例により、噴射装置は、溜めを介してノズル口と空気流発生器との間に延びる流路内の空気流量をモニタする空気流量計を含んでいる。この空気流量計は、空気流路内に、又は空気流路のところに直接配置されるセンサを含んでいる。前記空気流量の測定に使用される入手可能ないくつかの流量計がある。例えば、オムロン・エレクトロニック・コンポネント社(Omuron Electronic Cmponents)から入手できるMENS質量流量センサである。実際には、流路内又は流路への取付けに適した寸法を有し、かつ流路内の空気流量の大きさを測定するのに十分な精度を有するどのような種類の流量計も。もちろん、流量の大きさは、噴射装置の他の特徴、例えば細滴寸法や噴射頻度等に依存して変動する。
【0019】
好ましくは、空気流量計は、溜め又はエゼクタの外部に、例えば溜めと空気流発生器間の流路内に配置される。これによって、流量センサは、噴射装置内に事実上永久配置され、噴射組立体の、すなわち溜め及びエゼクタの流路内の空気流量を測定することができる。したがって、噴射組立体の外部で測定が行われても、噴射装置と噴射組立体とのインターフェースが気密であるため、空気流量は、溜めと噴射口との間の流路内と、溜め後方の流路内とで等しくなろう。しかし、流量センサは、本発明の枠内で他の位置に、例えば、噴射組立体内の流路に配置することも考えられる。
【0020】
複数実施例によれば、既述のように、空気流量の測定値を評価することにより、溜めの充填率を検出できる。あるいはまた、フィルタの目詰まりの度合いを検出することができる。これは、同じ問題が2つの異なる原因から生じるためである。溜めの充填率が高くなれば、より多量の粘性媒質残渣が捕集チャンバを通過してフィルタに到達し、それによってフィルタの目詰まりが増大する。他方、フィルタが目詰まりして、空気流が減少すれば、空気流は、粘性媒質残渣に対する大きい搬出力を失い、残渣のより多くの部分が、粘性媒質を保留するチャンバ内に滞留し、捕集チャンバの充填率が高まる。
【0021】
充填率又は目詰まり度は、測定空気流量を、選択された閾値と比較することで検出できる。その場合、幾つかの閾値を使用することで、例えば、空の溜め、つまり「新しい」又は未使用の溜め、使用した溜め、残りの使用寿命、つまり過剰充填までの残り時間又は噴射細滴数が限られている溜め、過剰充填された溜めを区別することができる。過剰充填された溜めが検出された場合は、作業員に対し噴射過程停止の指示が出されて、噴射過程が中止されるか、又は好ましくは噴射装置制御システムに対し指示が出されて、噴射装置が自動的に動作を中止する。
【0022】
空気流量値と比較するために閾値を使用することに加えて、又は閾値を使用する代わりに、空気流量測定値を或る時間にわたって評価してもよい。その場合には、個別の空気流量の値を測定して個別に閾値と比較する代わりに、空気流量の変化を連続的に又は間欠的にモニタする。それによって、変化の割合を、異なる充填率又は目詰まり度を区別する指標として使用できる。例えば、充填率が過剰充填に近くなると、空気流量が、かなりそれまでより高い割合で減少する。一つの理由は、チャンバの充填度が高くなれば、それだけ多く粘性媒質残渣がチャンバを通過してフィルタへ到達するからである。このため、目詰まり度は、急激にではないが、かなり増大し、相応に空気流量が減少する。
【0023】
これと関連して注意すべき点は、空気流量の減少は、おそらく、チャンバの充填率及び/又はフィルタの目詰まり度の増大に終わるだけではない点である。空気流量が減少すると、粘性媒質残渣発生の確率が増大する。この残渣は、噴射口のところか、又は空気流路の種々の箇所、特に空気流が新たな方向をとるように案内される箇所に往々にして滞留する。その結果、空気流路の詰まりが生じ、それにより空気流量が減少し、更に問題が大きくなる。したがって、空気流量をモニタして充填率又はフィルタの目詰まりを検出することによって、流路の他の箇所の詰まりも検出できる。空気流量が高いレベルに維持されていれば、流路の詰まりや噴射口での粘性媒質の滞留は事実上防止される。
【0024】
別の実施例によれば、測定された空気流量の値は、流路の漏れの有無を検出するのに使用できる。予想よりかなり高い空気流量が測定された場合、正規の流路入口以外の箇所からの空気の流入、つまり流路への空気の漏入を指示している。この漏入は、往々、流路を形成する構造物の損傷部から、又は噴射組立体を構成する異なる素子の不適切な組立てから発生する。つまり、異なる素子間の流路インターフェースが適正な係合又は整合を欠くことから発生する。また、前記不適切な組立ては、往々、例えば寸法上の理由で、協働させるように意図されていない素子を作業員が互いに組付けようとすることに原因がある。漏れの理由とは関係なく、空気流量が著しい増大を示す場合は、空気が正規の流路内で流れず、おそらく噴射口を通過していないことを指示している。そのような場合、噴射口のところに粘性媒質残渣の有害な滞留が生じ、噴射性能を低下させる危険が差し迫っている。また、組立体を構成する素子が不適切に組付けられている場合、噴射は可能でも、噴射性能は、恐らく極めて低いものとなろう。したがって、著しく高い空気流量レベルが検出された場合には、噴射作業は中止するのが好ましい。
【0025】
他方、極めて低い空気流量、つまり予想レベルよりかなり低い空気流量、又は事実上ゼロレベルの空気流量が測定された場合、そのことは、別の実施例によれば、流路の妨害又は狭窄の指示として利用できる。流量が事実上検出されない場合は、保管や輸送中に噴射口の露出を防止し、噴射口のところで粘性媒質が乾燥するのを防ぐため、噴射口にかぶせてあるプラスチック製の蓋を作業員が取り忘れたためである可能性がある。つまり、プラスチック製カバーが、噴射口又は噴射口を通る流路の少なくとも入口にかぶせられている場合には、空気流は事実上検出されないだろう。そのような場合には、噴射作業は中止するのが好ましい。なぜなら、カバーは、細滴噴射を阻止するか、又は少なくともかなり障害になるからである。
【0026】
本発明の別の実施例では、空気流量の測定値は、噴射作業の実施と非実施とを指示し、かつ区別するのに利用できる。噴射作業中、噴射された細滴は空気流路を通って進む。このため、細滴の通過により空気流は影響を与えられ、言い換えると、空気流は、各細滴の噴射時に僅かに減少することになる。このため、制御システムが制御パルスを噴射器へ送って細滴を噴射する場合、細滴が、噴射装置の噴射器から実際に噴射されたかどうか、噴射口を通過したかどうかを、空気流量の変化を測定することで確認することができる。もし空気流量が、噴射細滴の流路通過を指示しない場合には、機能不全の可能性があることを示す信号が、制御システムに、また任意に作業員に送られる。
【0027】
更に別の実施例の場合、空気流量の一時的変化によって、流路の詰まり又は噴射口のところでの滞留による一時的な妨害が指示される。この妨害の指示は、流路容量の過剰負荷による場合もある。これとは無関係に、一時的変化が、噴射性能、例えば噴射された細滴の位置や量の精度を一時的に低下させることもある。この種の変化は、制御システムによって直ちに検出かつ対処され、例えば噴射パラメータを調節するか、噴射作業を中断して空気流路の一時的な過剰負荷を軽減するか、噴射作業を中止するか、作業員に警告することができる。特定の実施例の場合、空気流の一時的変化に関する情報が、空気流の一時的減少時に細滴が噴射されていた基板の情報と共に記憶され、基板の情報は、特に、それら基板の検査時に、欠陥又は不正確さが生じやすい区域の検査に利用される。
【0028】
また、別の実施例の場合、空気流量の減少度を利用して、噴射作業の成績、すなわち噴射器の状態を指示することができる。噴射動作中に付随物が増加するような状況が生じた場合、より多くの粘性媒質粒子が空気流中に存在することになり、それによって空気流量が僅かに減少するに至る。付随物の存在は、幾つかの異なる理由、例えば、はんだペースト等の粘性媒質の品質、噴射器の摩耗度、噴射動作の不完全な制御等に起因することがある。したがって、空気流量の測定値は、これらのパラメータのいずれかを指示するものとして利用できる。幾つかの例では、噴射パラメータを調節することで、噴射動作を最適化し、その結果、空気流量を相応に増すことができる。別の例では、空気流量減少の情報を利用して、粘性媒質又は噴射器の誤差が指示される結果、噴射動作が停止され、粘性媒質容器及び/又は噴射器を交換することができる。これと関連して、空気流量の測定値は、噴射器の残りの使用寿命の指示にも利用できる。
【0029】
更に別の実施例によれば、噴射器は、噴射口と同心的な噴射路内に配置された開口又はオリフィスを備えた壁部又はプレートを含み、該開口又はオリフィスが、流路の出発点及び粘性媒質残渣搬出用空気流の流入点として役立っている。噴射口と同心的であるため、噴射細滴はオリフィスを通って噴射される。この実施例の利点は、噴射細滴の周囲に層流が形成され、この層流が、噴射された細滴の軌道に対し安定化作用を及ぼすことである。更に、この実施例では、噴射された細滴は、噴射に直接伴う強い向かい風に直面する。このため、意図された軌道とは角度偏差のある軌道を運動する細滴が、僅かな横風を受ける。噴射された細滴に対する横風の影響は、角度偏差の大きさに依存しよう。結果として、角度偏差は、噴射された細滴がオリフィスを備えた壁部によって捕集される程度まで増すことがある。
【0030】
更に、発生するどの付随物も、既述の形式同様の形式で、角度偏差により横風を受け、この横風が角度偏差を高めることで、付随物は壁部によって捕集される。付随物は、粘性媒質細滴に比して低速かつかなり少量であるため、より横風の影響を受けやすい。当業者には理解されようが、壁部により捕集されるどの粘性媒質も、例えば噴射された細滴又は付随物等も、空気流を供給することによって除去され、搬出される。
また、既述のように、十分な空気流量を維持することで、噴射軌道を安定化する層流が得られ、付随物の発生が低減される。したがって、空気流量のモニタにより、付随物形成及び層流の安定化効果低下のリスク増大を検出できる。
注意すべき点は、既述の複数実施例は、どのような適切な組み合わせででも利用できる点である。したがって、空気流量の測定により、前記状態指示の幾つか又はすべてを利用することで、基板上への細滴噴射作業を制御かつ実施することができる。
【0031】
本発明の実施例によれば、溜めは、スタンドアロン・ユニット、粘性媒質容器を有する集成ユニット、例えばはんだペースト・チューブ等、エゼクタを有する集成ユニット、エゼクタ及びはんだペースト・チューブを有する集成ユニットのいずれかで構成できる。この場合、溜めが空で、使用されていないことを検出することにより、同時に、溜めが新しいか使用されていないか、及び/又はエゼクタが新しいか使用されていないかが検出できる。したがって、空気流量の測定により、エゼクタ及び/又は溜めに関連する検出も可能になる。
作業の構成及び方法の双方に関わる本発明の特徴は、本発明の目的及び利点と共に、添付図面を参照して行う以下の説明により、更によく理解されよう。図面は、図示及び説明目的のものであり、本発明を制限する意図のものではないことを明確に理解されたい。本発明により達成された既述の及び他の目的並びに利点は、以下で添付図面に関連して行われる説明により更に完全に明らになろう。
【0032】
図1は、基板上に粘性媒質の細滴を、分与すること、つまり噴射することにより基板に被着させるための、本発明による装置1の好適実施例を示す概観図である。説明を分かり易くするために、粘性媒質は、以下でははんだペーストと呼ぶが、これは既述の選択肢の1つである。同じ理由から、基板は、電気回路板と呼び、ガスは空気と呼ぶことにする。この実施例では、噴射装置1はX−ビーム3及びX−ワゴン4を含む種類であり、X−ワゴン4は、X−レール10を介してX−ビーム3に結合され、X−レール10に沿って往復動可能である。X−ビーム3は、また、Y−レール2と移動可能に結合されることで、X−レール10へ向って移動可能である。Y−レール2は、噴射装置1に剛性取り付けされている。概して、これらの運動はリニアモータ(図示せず)によって行われる。
【0033】
更に、噴射装置1は、噴射装置内でボードを運ぶための内部コンベア7と、噴射を行うさいに、ボードを固定するための固定装置とを含んでいる。
X−ワゴン4にはドッキング装置が付加され、ドッキング装置には組立体5を取外し可能に取付けることができる。組立体5は、はんだペーストの細滴を分与できるように、つまり噴射できるように配置され、細滴は、ボードに衝突し被着物が形成される。噴射装置1は、また少なくとも1視覚装置、例えばカメラを含んでいる。このカメラは、基板又はボードの位置及び回転を検出したり、ボード上の被着物を観察することによって分与過程の成績をチェックするのに使用できる。更に、噴射装置1の較正用に、カセット較正ユニット9とカメラ較正ユニット8とが備えられている。
【0034】
加えて、噴射装置1は、X−ワゴン4に配置された真空エゼクタ6(図5に略示)と、圧縮空気源(図示せず)とを含んでいる。真空エゼクタは、圧縮空気源同様、空気導管インターフェース手段を介してドッキング装置と接続されており、該手段は、ドッキング装置の相補的な空気導管インターフェース手段に接続可能である。
当業者には容易に理解されようが、噴射装置は、また装置操作用のソフトウェアを実行するプロセッサ又は制御装置80(図5に略示)を含んでいる。
簡単に言えば、噴射装置は以下のように作業する。ボードは、コンベア7に載置され噴射装置1内へ供給される。ボードは、X−ワゴン4下の正しい位置に置かれると、固定装置により固定される。カメラにより基準マーカーの位置が突き止められるが、これらの基準マーカーは、ボードの表面に予め設けられ、ボードの精密な位置を決定するのに使用される。次いで、X−ワゴンが予め定めた(予めプログラムされた)パターンでボード上方へ移動し、噴射組立体5を予め定めた箇所で動作し、はんだペーストが目標箇所でボード上に施される。
【0035】
図2a、図2b、図3を参照して、噴射組立体5の実施例を、より詳しく説明する。図2には、組立体5が、個別の部材を示す分解図と、組立てられた場合の集成ユニット形式とで示されている。噴射組立体5は、該組立体をドッキング装置の組立体支持体に結合するための保持手段12を有する組立体ホールダ11と、集成ユニットの組立体5を固定する保持部材13とを含んでいる。更に、この実施例では、噴射組立体5が、はんだペーストを供給する粘性媒質容器14と、噴射作業中に発生する粘性媒質残渣を受容する粘性媒質溜め15とを含んでいる。噴射組立体5は、空気式インターフェース50を介して真空エゼクタ6と圧縮空気源とに接続されている。該インターフェースについては、更に、後述する。加えて、噴射組立体5は、噴射器又は粘性媒質エゼクタ16と、粘性媒質を噴射器16の噴射チャンバ28内へ給送する部材、例えば回転可能な給送スクリューを駆動するモータ・ユニット17とを含んでいる。この実施例の場合、モータ・ユニット17は、ホールダ11に旋回可能に取付けられ、これにより、図2の分解図に示したように、ユニット11を外方へ旋回させることで組立体の素子を容易に組付けることができる。
【0036】
また、図3には、粘性媒質容器14と溜め15とが、噴射器16、モータ・ユニット17、ホールダ11とは別個の集成ユニットとして示されている。この実施例の場合、容器14と溜め15とは、ホールダ11に組付けて組立体5を形成する前に組立てられる。好ましくは、溜め15と容器14とは、既に組立て済みのユニットとして製造所へ送られ、ホールダ11、噴射器16、モータ・ユニット17と組立てられ、噴射作業を行う組立体5が形成される。
【0037】
更に図4−図7を参照して、噴射組立体5にまとめられる器材の内容及び機能を詳しく説明する。これらの断面図で分かるように、噴射組立体5は、アクチュエータを支持するための止めねじ20を含む粘性媒質エゼクタ又は噴射器16と、複数の薄手の圧電素子を積重ねて形成された圧電アクチュエータ21とを含み、圧電アクチュエータ21が止めねじ20に剛性結合されている。噴射器16は、更に、ハウジング19に剛性結合されたブッシュ25と、止めねじ20の位置と反対側の、圧電アクチュエータ21の端部に剛性結合されたプランジャ23とを含んでいる。プランジャ23は、軸線方向に可動であり、他方、ブッシュ25内の孔を貫通してスライド可能に延びている。ハウジング19に対しプランジャ23を弾性的に平衡化し、かつアクチュエータ21を付勢するために、皿ばね24が配置されている。噴射制御ユニット(図示せず)は、駆動電圧を間欠的に圧電アクチュエータ21へ印加することで、アクチュエータを間欠的に伸張させ、はんだのパターン印刷データに従ってハウジング19に対しプランジャの往復運動を生じさせる。
【0038】
更に、噴射器は、基板2に向けるように操作可能な噴射ノズル26を含み、基板上へはんだペーストの細滴を噴射する。ノズル26には、細滴を噴出する噴射オリフィス27が含まれている。噴射オリフィス27を取り巻き、基板2に向いたノズル26の表面は、噴射口と呼ばれる。プランジャ23は、ピストン孔35内をスライド可能かつ軸線方向に可動に貫通するピストン部分を含み、プランジャ23の該ピストン部分の端面は、前記ノズル26の近くに位置している。噴射チャンバ28は、前記プランジャ23の端面形状、ブッシュ25の内径、ノズルのオリフィス27によって輪郭付けられる。ノズル26方向へのプランジャ23の軸線方向運動は、圧電アクチュエータ21の間欠的な伸張によって生じるが、この運動は、噴射チャンバ28の容積を急激に減少させ、それによって、噴射チャンバ8内のはんだペーストの急激な圧縮とノズル・オリフィス27からの噴射とを生じさせる。
【0039】
はんだペーストは、給送装置を介して供給容器14(図2参照)から噴射チャンバへ供給される。給送装置は、モータ・ユニット17に配置された電動モータを含み、該モータ・ユニットは、部分的に管状孔30内に配置されたモータ軸29を有し、該管状孔は、ハウジング19を貫通して、管状孔31を介して前記ピストン孔35に連通する出口36のところまで延びている。モーター軸29の端部は、管状孔30内に該管状孔と同軸線的に配置された回動可能な給送スクリュー32を形成している。回転可能な給送スクリューの主要部分は、弾性的なエラストマー製Oリング33の列に取り囲まれ、該Oリングが管状孔30内にスクリューと同軸線的に配置され、給送スクリュー32のねじ山がOリング33の最も内側の部分と滑り接触している。
【0040】
既述の圧縮空気源(図示せず)から得られる圧縮空気は、供給容器12内のはんだペーストに対し圧力を加えるように構成され、これにより、管状孔30と連通する入口34へ前記はんだペーストが供給される。供給制御ユニット(図示せず)によりモータへ送られる電子制御信号は、モーター軸29を、したがって回転可能な給送スクリュー32を目標角度だけ回転させるか、又は目標速度で回転させる。回転可能な給送スクリュー32のねじ山とOリング33の内面との間に捕捉されたはんだペーストは、モータ軸29の回転運動によって、入口34から出口36及び管状孔31をへてピストン孔35へ移動する。ピストン孔35へ供給されるはんだペーストが、ピストン孔35から脱出してプランジャ23の動作を妨害することのないように、ピストン孔35及びブッシュ25の頂部には、シール用Oリング22が配置されている。
【0041】
はんだペーストは、次いで管状孔30の出口36から管状孔31と通路37とをへて噴射チャンバ28へ給送される。通路37は、プランジャ23のピストン部分に設けられ、この場合、前記通路37には、前記プランジャ内へ軸線方向に延び、管状孔31と連通する第1部分と、前記プランジャ23と同心的にプランジャ内部を、前記第1部分から噴射チャンバ28側の端面まで延びる第2部分とが含まれている。
図6から最もはっきり分かるように、噴射組立体5の噴射器15は、噴射方向で見て、ノズル・オリフィス27の下、つまり下流に支持板40が配置されている。この支持板40は貫通穴41を備え、該貫通穴を介して噴射細滴が、支持板40により妨げられることなく、つまり悪影響を受けることなく噴射される。したがって、貫通穴41はノズル・オリフィスと同心的である。
【0042】
この実施例では、噴射器16は、第1、第2、第3の各部分から構成された空気流路38を含み、前記第1部分が、ノズル・オリフィス27と、ノズル26と、支持板40とで形成され、ピストン孔35と同心的なディスク状空隙を形成し、前記第2部分は、ノズル26と支持板40とによって形成され、第1部分と接続され、ノズル26を中心として同軸線的に延び、前記第3部分は、ハウジング19とブッシュ25とにより形成され、ピストン孔35と平行に第2部と接続され、前記第3部分側のブッシュ25部分を中心として同軸線的に延びている。空気流路38は、更に、ピストン孔35の、管状孔31とは反対側に設けられた空気流導管39と連通している。空気流導管39は、空気流路38の第3部分と、粘性媒質残渣容器、つまり溜め15とから延びている。
【0043】
このように、噴射組立体5を組立てるさい、はんだペースト残渣を捕集する溜め15は、噴射器16に結合される。溜め15は、全体が略示された図5から最もよく知ることができる。溜め15は、噴射器16のインターフェースと溜め15の対応インターフェース50とを介して噴射器16に結合される。残渣容器15は、より詳しくは後述するが、別のインターフェース51を備え、噴射組立体5と真空エゼクタ6とを連通させている。これにより、真空エゼクタが発生させる負圧、つまり真空が、噴射器5と、噴射器に連通する空気流導管39及び空気流路38とへ運ばれる。
【0044】
溜め15は、その内部に空気流路又は通路を形成する空気導管53を含んでいる。空気導管53には、前記結合インターフェース50と連通し、かつ噴射組立体の空気導管39と整合する第1部分と、該第1部分から直角に延びる第2部分とが含まれている。空気導管53は、その端部のところが、噴射口から除去されたはんだペースト残渣を捕集する捕集チャンバ55に連通する案内管として形成されている。好ましくは、空気導管53は下向きの出口54を有し、この出口により、運ばれてきたはんだペースト残渣が捕集チャンバの底部へ向って案内される。捕集チャンバ55の頂部には細い空気導管52が配置され、捕集チャンバ55から出る空気流を案内している。これによって、空気導管53の出口から出た空気流は、捕集チャンバの頂部の空気導管52内へ流入する一方、はんだペースト残渣の主要部分は、空気流から解放され、その推進力及び重力により、捕集チャンバ内へ落下する。
【0045】
空気流により運ばれて来るはんだペースト残渣の大部分は、空気流から解放され捕集室に集められるが、残渣の小部分は空気流により外部へ運ばれる可能性がある。したがって、溜めには、更にフィルタ57が含まれ、前記細い空気導管が、このフィルタ内へ空気流を案内する。フィルタ57は、従来式のもので、捕集チャン55に捕集されなかったはんだペースト残渣が真空エゼクタに達するのを防止する。フィルタは、縦孔内に配置され、出口導管58と連通し、この出口導管が、真空エゼクタ6とのインターフェース用に備えられた出口インターフェース51と連通している。
【0046】
溜め15は、溜め15を真空化するように構成された従来式の真空エゼクタ6と取外し可能に結合されている。真空エゼクタ6は、空気の出口導管58と、コネクタ60と、空気管61とを介して溜め15に接続されている。真空エゼクタ6は、はんだペースト噴射器16及び/又は溜め15とは別個のものとして説明されているが、言うまでもなく、真空エゼクタ6、はんだペースト噴射器16、溜め15の幾つかの別の配置又は組合わせも、本発明の枠内で考えることができる。しかし、真空エゼクタ6、コネクタ61、空気管61は、噴射装置1内に配置するのが好ましい。つまり、噴射組立体5を構成する素子とは別個に配置するのが好ましい。
【0047】
更に、流量センサ70は、空気管61内に位置決めされ、配置されている。この流量センサは、噴射装置内の空気流路の空気流量を測定するために配置されている。この流路には、噴射器の空気流導管39及び空気流路38、細い空気導管52、フィルタ57、溜め15の出口導管58、コネクタ60、空気管61が含まれる。流量計は、特定流量範囲の測定に好適な、空気管61の流路内に配置され、測定するのに適した寸法であれば、どのようなものでもよく、例えばオムロン・エレクトロニック・コンポネント・ヨーロッパB.V.から得られるMEMS質量流量センサでよい。
流量センサ70は電子式に制御ユニット80に接続されており、制御ユニット80は、また流量センサから出力される測定信号71を受信し、評価するように構成されている。
【0048】
作業時には、真空エゼクタ6が残渣溜め15を真空化するが、この真空化には、空気導管53、捕集空間55、細い空気導管52、フィルタ57、出口導管58コネクタ60、空気管61の真空化が含まれる。この真空化により、空気流は、図5に矢印で示すように、残渣溜めを通過する。結果として、噴射器16の空気導管39及び空気流路38も、それらのインターフェースを介して真空化される。したがって、空気は出口穴41から吸い込まれ、噴射される細滴とは逆方向に強力な空気流が発生する。この空気流は、噴射口を通過し、噴射口にはんだペースト残渣が付着していれば、望ましくないその残渣を、既述の理由で除去する。
【0049】
この好適実施例では、空気流が、各細滴の噴射前、噴射中、噴射後に連続的に供給される。空気流は、また予め定めた噴射時期後に、又は予め定めた数の細滴噴射後に、間欠的に供給してもよい。噴射口のところでの、はんだペースト残渣の滞留又は形成をモニタし、滞留が一定レベルに達した時に空気流を供給することも考えられる。しかし、空気流は、噴射過程中、常時供給するのが好ましい。
こうして、空気は、空気流路38を通過し、空気導管39を介して残渣溜め15へ流入し続ける。空気流の力によって、噴射口近くから除去されたはんだペースト残渣は、空気流路38、空気導管39を通って残渣溜め15内へ運ばれる。溜め15内では、空気は空気導管53を流れ、捕集チャンバ55内へ流入する。空気流によって運ばれてきたはんだペースト残渣の大部分は、重力によって捕集チャンバ55内へ落下する一方、空気流は、細い空気導管52へ流入し続ける。空気流と一緒に細い導管へ流入した残渣は、いずれもフィルタ57によって捕集されるので、はんだペースト残渣が出口導管58に達することはない。
【0050】
更に、噴射された細滴は、噴射に直ぐ続いて強い逆風を受けるので、どの細滴も、所期の噴射軌道から角度偏差を有する軌道をたどり、僅かの横風を受ける。噴射される細滴に対するこの横風の影響は、角度偏差の大きさに従属する。結果として、この角度偏差は、噴射された細滴が出口穴41から「出損ない」、支持板40によって捕集されるほどまで大きくなる可能性がある。このことは、また、既述のどの付随物にも当てはまる。付随物は、角度偏差により横風を受け、支持板40によって捕集されるからである。その場合、空気流路内に存在する空気流又はその後に流入した空気流が、支持板40によって捕集されたはんだペーストを運び出すだろう。付随物は、はんだペースト細滴と比較して低速かつかなり少量であるため、より横風に影響されやすい。
【0051】
次に図8を見ると、噴射装置の種々の状態の時に、空気流量を測定した結果を略示する線図が示されている。最初に、新しい又は未使用の、正しく組立てられた噴射組立体の正常の空気流量の測定値が、「I」で示されている。実際の測定値が個別の組立体間で僅かに異なっても、空気流量の最初の測定値が、噴射組立体の故障を指示するかどうか、選択閾値と比較される。その場合、極端に低い空気流量又は空気流量の不在は、空気流路の閉塞を指示している可能性がある。それは、おそらく流路入口にかぶせてある運搬用のカバーストリップが除去されていないためかもしれない。更に、極端に空気流量が高い場合は、噴射組立体の不適切な組み立て、又は漏れの形での欠陥を指示している可能性がある。
【0052】
「II」は、噴射作業中の空気流量を示している。噴射された細滴は流路を通過するので、空気流量の僅かな減少が検出される。この検出は、したがって、1細滴又は1連の細滴を噴射するように噴射器へ噴射制御インパルスが送られた結果、実際に1細滴又は一連の細滴が噴射されたかどうかを、制御システムに対し確認する作業に利用できる。
「III」は、噴射組立体を使用していて、噴射作業が行われていない時の空気流量を示している。この場合には、一定の粘性媒質残渣が噴射口又は噴射軌道から除去され、残渣溜めへ運ばれる。したがって、空気流量は、噴射中よりも増加するが、噴射組立体の不使用時よりは減少する。その理由は、言うまでもなく、粘性媒質残渣が、流路、少なくとも捕集チャンバや残渣溜めのフィルタに存在するからである。
【0053】
「IV」は、噴射組立体が使用され、再び、噴射が開始された場合の空気流量を示している。この場合に分かることは、測定空気量が「II」の場合のように安定していないことである。このことは、噴射作業が、「II」の場合のように完全には行われていないことを指示している。例えば、曲線中の落ち込みは、空気流量の一時的な減少を示している。この落ち込みは、例えば、往々にして、流路内の一時的な障害物又は渋滞を指示するか、又は噴射過程が、突然、不正確になり、付随物がより多く発生し、空気流量が減少したことを指示するものである。曲線の落ち込みは、噴射作業を停止する十分な理由となったり、作業員に警報を発したりするほど重大な指示ではないが、この空気流量の一時的減少の情報は、細滴が、どの基板上に、また基板上のどこに被着されたかの情報と共に記憶され、後の点検時に特に注意を要する特定基板区域を同定するのに利用される。
【0054】
「V」は、残渣溜めが満杯になり始めたこと、すなわちフィルタが次第に詰まりつつあること及び/又は捕集チャンバが満杯になりつつあることを指示している。このことは、空気流量の明瞭かつ連続的な減少として検出できる。減少速度は、噴射組立体又は残渣溜めの残りの使用可能時間を決定するのに利用できる。なぜなら、空気流量の減少速度は充填率が増すにつれて高くなるからである。
このことは、更に、「VI」でも示されている。この場合、充填率が高く、空気流量が、それに相応して極めて急激に減少している。この作業段階では、噴射成績を高品質に維持するためには、噴射作業を中止するのが好ましい。
以上の具体的な実施例は、本発明の実際を説明するためのものである。したがって、当業者には周知の別の手段、又はここに開示されたのとは別の手段も、特許請求の範囲に定義された本発明から逸脱することなしに採用できることを理解されたい。また、したがって、本発明は、ここに具体的に説明したのとは異なる形式で、本発明の範囲を逸脱することなく実現できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例による、はんだペースト被着用の装置の全体を示す斜視図。
【図2a】噴射組立体の一実施例を分解状態と組立て状態の双方の状態で示す斜視図。
【図2b】噴射組立体の一実施例を分解状態と組立て状態の双方の状態で示す斜視図。
【図3】粘性媒質容器と粘性媒質溜めとの集成体を示す斜視図。
【図4】本発明の実施例による噴射器及び溜めの一部を示す、噴射組立体の一実施例の断面図。
【図5】図4に示した実施例の別の断面図。
【図6】図4の実施例の一部を示す拡大断面図。
【図7】図4に示した実施例の噴射口のところに設けた空気流路を示す拡大断面図。
【図8】本発明の実施例による異なる作業状態での空気流量の測定成績を略示する線図。
【符号の説明】
【0056】
1 噴射装置
2 基板、ボード
2 X−レール
3 X−ビーム
4 X−ワゴン
5 噴射組立体
6 真空エゼクタ
7 コンベア
8 カメラ較正ユニット
9 カセット較正ユニット
10 X−レール
11 組立体ホールダ
12 保持部材
13 保持部材
14 粘性媒質容器、供給容器
15 残渣溜め
16 噴射器、粘性媒質エジェクタ
17 モータ・ユニット
19 ハウジング
20 止めねじ
21 アクチュエータ
22,33 Oリング
23 プランジャ
24 皿ばね
25 ブッシュ
26 噴射ノズル
27 噴射オリフィス
28 噴射チャンバ
29 モータ軸
30,31 管状孔
32 供給ねじ
34 入口
35 ピストン孔
36 出口
37 通路
38 空気流路
39 空気導管
40 支持板
41 出口穴
50,51 接続インターフェース
52 細い空気導管
53 空気導管
54 空気導管出口
55 捕集チャンバ
57 フィルタ
58 残渣容器の出口導管
60 コネクタ
61 空気管
70 流量センサ
71 測定信号
80 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上へ粘性媒質の個々の細滴を噴射する噴射装置の性能を改善する方法であって、前記噴射装置が、前記細滴を噴射する噴射口と、この噴射口に付着する粘性媒質残渣を除去するために噴射口を通過する空気流の発生器と、前記空気流により噴射口から運ばれてくる粘性媒質残渣を捕集する残渣溜めと、前記残渣溜めを介して前記噴射口と前記空気流発生器との間に延びる空気流路とを含む形式のものにおいて、前記方法が、
前記空気流路内の空気流量を測定し、前記空気流量を表す空気流量信号を得る段階と、
前記噴射装置の少なくとも1つの状態を検出するために、前記空気流量信号を評価する段階と、
前記状態の指示を得る段階とを含む、基板上へ粘性媒質の個々の細滴を噴射する噴射装置の性能を改善する方法。
【請求項2】
前記評価段階が、前記空気流量信号を1つ以上の閾値と比較する作業を含み、
各閾値が、前記噴射装置の少なくとも1つの状態を表すものである、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記評価段階が、前記空気流量の変化をモニタし、かつその変化を、噴射装置の少なくとも1つの状態を指示する閾値と比較する作業を含む、請求項1又は請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記評価段階が、前記空気流量信号を評価することで空気流量の漏れ状態を指示する作業を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項5】
前記評価段階が、前記空気流量信号を評価することで噴射作業の実施状態又は非実施状態を指示する作業を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
前記評価段階が、前記空気流信号を評価することで残渣溜めの一定充填率の状態を指示する作業を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項7】
前記残渣溜めが、残渣溜め内を案内される空気流が通過するフィルタを含み、前記評価段階が、前記空気流量信号を評価することで前記フィルタの一定度の目詰まり状態を指示する作業を含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項8】
前記評価段階が、その評価段階において、前記空気流量信号を評価することで空気流の妨害状態を指示する段階と、
噴射作業の精度が影響を受ける可能性にあるほど、空気流量が低いことを指示する段階とを含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項9】
前記空気流の妨害が、残渣溜めに粘性媒質残渣が事実上満杯の結果であるか、又は残渣溜めのフィルタが事実上粘性媒質で目詰まりを生じている結果である、請求項8に記載された方法。
【請求項10】
前記空気流量信号を評価することで空気流の一時的な小さな妨害状態を指示する段階を含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項11】
噴射作業実施中に前記空気流量信号を評価することで時限当り粘性媒質残渣発生量の状態を指示する段階を含む、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項12】
時限当り粘性媒質残渣発生量の前記状態が噴射作業の成績を表す、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
更に、空気流量の評価及び前記噴射装置の状態が、噴射作業の成績にとって危険であることを指示した場合、粘性媒質の噴射を中止する段階を含む、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項14】
噴射装置の前記状態が、流路の漏れと噴射装置の組立ての誤りの少なくとも一方の可能性を指示した場合、前記噴射が中止される、請求項13に記載された方法。
【請求項15】
噴射装置の前記状態が、前記残渣溜め内で空気流が著しく妨害されていることを指示する場合、前記噴射が中止される、請求項13に記載された方法。
【請求項16】
更に、1特定基板又は基板群に関する噴射作業の空気流量情報を得るために、前記空気流量信号を記憶する段階と、
前記空気流量情報を利用して1特定基板又は基板群に関する前記噴射作業の成績を点検することで、何時、またどの細滴の場合に、空気流量の変化による噴射性能低下の可能性が生じたかを指示する段階とを含む、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項17】
更に、噴射作業の空気流量情報を得るために前記空気流量信号を記憶する段階と、
噴射作業を調節し、噴射性能を改善するために前記空気流量情報を利用する段階とを含む、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項18】
基板上に粘性媒質の個別の細滴を噴射する噴射装置であって、前記細滴が噴射される噴射口と、該噴射口に溜まる粘性媒質残渣を除去するために噴射口を通過する空気流を発生させる空気流発生器と、前記空気流により噴射口から除去される粘性媒質残渣を受容する溜めと、該溜めを介して前記噴射口と前記空気流発生器との間に延びる前記空気流用の空気流路とを含む形式のものにおいて、
前記噴射装置が、前記空気流路内の空気流量を測定する空気流量計を含み、該空気流量計が空気流路に配置された流量センサを含み、前記流量計が空気流路内の空気流量を表す空気流量信号を出力するように構成されており、かつまた、
前記噴射装置が、空気流量計からの前記流量信号を受信し、その信号を評価し、噴射装置の状態を指示するように構成されたプロセッサを含んでいる、基板上に粘性媒質の個々の細滴を噴射する噴射装置。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を1つ以上の閾値と比較するように構成され、各閾値が前記噴射装置の少なくとも1状態を表すものである、請求項18に記載された噴射装置。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記空気流量の変化をモニタし、かつ該変化を噴射装置の少なくとも1状態を指示する選択閾値と比較するように構成されている、請求項18に記載された噴射装置。
【請求項21】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を評価することで空気流漏れの状態を指示するように構成されている、請求項18から請求項20までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項22】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を評価することで噴射作業の実施状態又は非実施状態を指示するように構成されている、請求項18から請求項21までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項23】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を評価することで残渣溜めの一定の充填率の状態を指示するように構成されている請求項18から請求項22までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項24】
更に、残渣溜め内に配置された粘性媒質フィルタを含み、しかも、空気流が残渣溜め内の該フィルタを通って案内され、
前記プロセッサが、前記空気流量信号を評価することで前記フィルタの一定の目詰まり度の状態を指示するように構成されている、請求項18から請求項23までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項25】
前記プロセッサが、前記評価段階で、前記空気量信号を評価することで空気流の妨害状態を指示するように構成され、かつまた
空気流量の低下により、噴射作業精度が悪影響を受ける可能性があることを指示するように構成されている、請求項18から請求項24までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項26】
空気流の前記妨害が、残渣溜めに粘性媒質が事実上満杯になった結果であるか、又は残渣溜めのフィルタが粘性媒質で事実上目詰まり状態になった結果である、請求項25に記載された噴射装置。
【請求項27】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を評価することで空気流の一時的な小さな妨害状態を指示するように構成された、請求項18から請求項26までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項28】
前記プロセッサが、前記空気流量信号を噴射作業の実施中に評価して、時限当りの粘性媒質残渣量発生状態を指示するように構成された、請求項18から請求項27までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項29】
時限当りの粘性媒質残渣量の前記発生状態が噴射作業の性能を表す、請求項28に記載された噴射装置。
【請求項30】
空気流量の前記評価と前記噴射装置の状態とが噴射作業の危険の可能性を指示している場合、前記プロセッサが、粘性媒質の噴射を中止するように構成されている、請求項18から請求項29までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項31】
噴射装置の前記状態が、流路の漏れと噴射装置の組立ての誤りとの少なくとも一方の可能性を指示している場合、前記プロセッサが、噴射を中止するように構成されている、請求項30に記載された噴射装置。
【請求項32】
噴射装置の前記状態が、前記残渣溜め内での空気流の著しい妨害を指示している場合、噴射を中止するように前記プロセッサが構成されている、請求項30に記載された噴射装置。
【請求項33】
前記噴射装置が、更に、1特定基板又は基板群に関する噴射作業の空気流量情報を得るために前記空気流量信号を記憶する手段と、
検査ユニットとを含み、該検査ユニットが、1特定基板又は基板群に関わる前記噴射作業の成績を前記空気流量情報を利用して検査し、何時、またどの単数又は複数の細滴に、空気流量変化による噴射性能低下の可能性が高まるかを指示するように構成されている、請求項18から請求項32までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項34】
前記プロセッサが、噴射作業の空気流量情報を得るために前記空気流量信号を記憶し、かつ
噴射作業を調節し噴射作業の成績を改善するために前記空気流量情報を利用するように構成されている請求項18から請求項33までのいずれか1項に記載された噴射装置。
【請求項35】
前記流量センサが、空気流発生器と残渣溜めとの間の空気流路内に配置されている、請求項18から請求項34までのいずれか1項に記載された噴射装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−515677(P2009−515677A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539366(P2008−539366)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010921
【国際公開番号】WO2007/054371
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(500563005)マイデータ オートメーション アクチボラグ (12)
【Fターム(参考)】